台所に設置されるシステムキッチン50は、図11に示すように、流し台キャビネット51と、これに互いに隣接して設置されるコンロ用キャビネット52と、それらを被覆する1枚の天板53とを備えている。このシステムキッチン50においては、天板53のうち流し台キャビネット51を被覆する流し台領域Aにはシンク54が形成されており、このシンク54に対して水栓61から湯水が供給されることになる。コンロ用キャビネット52を被覆するコンロ領域Bの前面部寄りには長方形の開口部56が切り抜かれて、その開口部56から1台のコンロ55がコンロ用キャビネット52上に落とし込まれている。また、この流し台領域Aと、コンロ領域Bの中間には、調理台ユニット領域Cが形成され、ユーザは、かかる調理台ユニット領域Cの上面に貼り渡されている天板53上において食物を調理し、或いは調理に必要な器具や食器等を載置する。
ここで一般的にシステムキッチンとは、収納用の各種フロアキャビネットを併設し、該フロアキャビネット上にはワークトップを有し、必要によってシンクあるいは加熱調理機器を配した、モジュール化されコーディネートされた組み合わせ型キッチンであり、広義には、間仕切り収納キャビネットやダイニングカウンターを含む。これらワークトップ又はカウンターを総称して、以下天板という。
図12は、かかるコンロ領域B並びに調理台ユニット領域Cにおける使用例を示している。
この図12に示す例において、先ずコンロ領域Bでは、コンロ55本体を構成する本体ケース81が天板上から落とし込み状態に固定装着されている。このコンロ55本体には、複数のガスバーナ84が配設されており、上面に設けられたカバー83には、該各ガスバーナ84が臨むバーナ用開口部85が開設されている。さらに、前記バーナ用開口部85上方には五徳86が配設され、バーナの炎や、炎により生じた熱気が五徳86の爪部に載置された調理鍋74等の底面に沿って五徳86の外側に放出されるようになっている。即ち、ガスバーナ84を燃焼させることにより、前記五徳86に載置した調理鍋74内の食材等を加熱調理することが可能となる。
また、調理台ユニット領域Cでは、実際に食物を切り刻み、加工するためのまな板91や、洗浄した食器類を乾燥させるためのステンレス製の食器篭92等が載置される。さらには、トースター65,ジューサー69,炊飯器71等のような実際の調理に必要な調理用機器等が所狭しと配置されることになる。これら各調理用機器は、コンセント61やプラグ67を介して電源が供給される。
これらトースター65やジューサー69、炊飯器71等の各種調理用機器の代替として、例えば泡立て器や食器洗い機等の各種調理用機器をこの調理台ユニット領域Cに配置する場合もあり、同じくコンセント61からの電源を供給することになる。
ところで、数多くのレシピが研究されつつある中、和洋東西多彩を極めた多岐にわたる調理が家庭においても実現可能となった昨今において、多くの調理用機器を同時に動作させる必要性も高まっている。
しかしながら、上述の如き従来のシステムキッチンにおいて多くの調理用機器を同時に動作させるためには、面積が限定された調理台ユニット領域Cにおいて、多くの調理用機器を配置しなければならない。このため、食器籠92を含め他の食器を置くスペースや、まな板91を使用して食物を加工するためのスペースが必然的に小さくなる。また、調理台ユニット領域Cに隣接するコンロ領域Bにおいてもガスコンロを利用して調理鍋に入れた食物等を同時に煮たりする場合もあるが、かかるガスコンロからの熱が調理台ユニット領域C上に置いてある調理用機器に伝熱することもあるため、かかる調理用機器の配置箇所において更なる制約がかかる。
一方、多くのガスコンロを用いて一度に多くの食物等を同時に煮炊きする場合には、ガスコンロを増設する必要があるところ、上述のガスコンロ領域Bにおける天板上の占有率を高く設定するとともに調理台ユニット領域Cの占有率を低く設定したい場合もある。また、図12に示す既存のシステムキッチンにおいては、本体ケースが天板上から落とし込み状態に固定装着されるものであり、ガスコンロを増設し、ガスコンロ領域を大幅に移動させることはできなかった。
従って、調理台ユニット領域Cやコンロ領域Bの天板上における占有比率をユーザの意思に応じて可変とすることにより、かかる調理をより効率的に実現ことが望まれている。
特にこのような要請に応えるためには、ガスコンロの配置の自由度をいかにして向上させるかが最重要課題となる。かかる課題を解決すべく、電磁誘導を利用して加熱調理する誘導加熱機器を上記ガスコンロの代替として用いる手法が従来において提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に示される誘導加熱機器100は、例えば図13に示すように、調理鍋等に代表される負荷部98とこの負荷部98を誘導加熱する磁気発生部99とを備え、この磁気発生部99は、上記負荷部98を載置するためのトッププレート103と、トッププレート103の下部に設けられ、上記誘導加熱を実行するための高周波磁界を発生する一次コイル104とこの一次コイル104を駆動するインバータ107とを備え、このインバータ107には電源コード109を介して電源が供給されることになる。
ユーザは、この磁気発生部99を天板上の任意の位置に配置することができるため、調理台ユニット領域Cとコンロ領域Bとを区別することなく、誘導加熱機器100と調理用機器との間で自由な配置のバリエーションを楽しむことが可能となる。
特開平5−184471号公報
特開2006−230516号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態として、飲食店や家庭等において食物を調理する際に適用されるシステムキッチンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したシステムキッチン1は、少なくともワークトップ又はカウンター(以下、これらを天板という)を有するシステムキッチンであって、図1に示すように、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備えている。以下では、システムキッチン1を、キッチンの作業台を壁面から分離し、島(Island)型に設けたいわゆるアイランドキッチンとして適用する場合について説明をするが、かかる場合に限定されるものではなく、シンク、コンロのある作業台を1列に並べたいわゆる1列型キッチン、或いはシンク、コンロをL字型に並べたいわゆるL型キッチンとして適用するようにしてもよい。
キャビネット11は、例えば前面側に片開き可能に軸着されている図示しない扉や収納用引出を設けてもよく、これら各扉や収納用引出内には、主として台所用具や食器等を収納可能な棚やケース等を設けるようにしてもよい。
シンク14には、水切り用の凹み部等が形成されており、底面には排水口が設けられている。このシンク14において、凹み部並びに排水口は、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等の方法により互いに一体に成形されている。シンク14の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性のある樹脂やステンレス鋼板等の金属を用いることも可能である。
天板13は、表面が平滑なガラス板で構成されている。この天板13上には、食材等を加熱調理するための調理鍋やポット等に代表される調理用容器や、実際に食材を切り刻み、加工するためのまな板がユーザ任意の位置に載置可能な構成とされている。この天板13は、全ての領域が同素材で構成される場合に限定されるものではなく、後述するコイルユニットを配置する範囲について上述の如きガラス板等で構成されていればよい。
この天板13上には、調理用容器が複数に亘り任意の位置に載置される場合もあるし、まな板以外に、図示しない食器篭や炊飯器、ジューサー等といった各種調理用容器20がそれぞれ任意の位置に載置される場合もある。即ち、この天板13は、調理用容器20が載置される可能性があることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるところ、通常、耐熱ガラスやセラミックス等で構成される。
ちなみに、本発明を適用したシステムキッチン1では、天板13上に載置された調理用容器20につき、IHヒーターを利用して誘導加熱する。実際にこの誘導加熱は、天板13の下部に配設されたコイルユニット3を介して実行していくことになる。また、このシステムキッチン1では、ユーザがこれらコイルユニット3を操作するための操作部357が天板13側方に配設されてなるとともに、この操作部357を介してユーザの操作を受けてコイルユニット3に制御信号を送信するための中央制御ユニット358が内部に実装されている。
コイルユニット3は、少なくとも1箇所に亘り移動自在に配置されてなる平板状のベースプレート4に搭載されている。以下では、図1に示すように、天板13の長手方向Xに4列のベースプレート4a〜4dを配列させた場合を例にとり説明をする。このとき、ベースプレート4a〜4dを天板13上に載置された調理用容器20へ向けて自動的に移動制御するものとする。各ベースプレート4a〜4dには、第1の近接センサ群156、第2の近接センサ群57が図中幅方向Yにコイルユニット3を挟んで両端にそれぞれ設けられている。即ち、この図1の形態において、第1の近接センサ群156は、一方向(幅方向Y)にコイルユニット3を挟んで一端側に設けられた複数の近接センサからなり、第2の近接センサ群57は、一方向(幅方向Y)にコイルユニット3を挟んで他端側に設けられた第2のセンサ群57とが示されている。
図2(a)は、第1の近接センサ群156、第2の近接センサ群57それぞれについて2つの近接センサを設けた場合について示している。即ち、第1の近接センサ群156は、近接センサ156a、近接センサ156bの2つからなる。また、第2の近接センサ57は、近接センサ57a、近接センサ57bの2つからなる。
図2(b)は、第1の近接センサ群156、第2の近接センサ群57それぞれについて3つの近接センサを設けた場合について示している。即ち、第1の近接センサ群156は、近接センサ156a、近接センサ156b、近接センサ156cの3つからなる。また、第2の近接センサ57は、近接センサ57a、近接センサ57b、近接センサ57cの3つからなる。
近接センサ156、57は、調理用容器が載置されているか否かを判別するためのものであり、例えば赤外線センサ、レーザーセンサ、超音波センサ、近接センサ及び変位センサ等を使用することができ、これらを組み合わせて使用することもできる。
以下の説明においては、図2(a)に示すように近接センサ156、57を2つずつ設けた場合について説明をする。
以下、加熱調理台領域Dの具体的な構成について説明する。図3に示すように、本実施形態のシステムキッチン1におけるコイルユニット3は、夫々縦方向Yに伸びるレール2156に係合するベースプレート4上に載置されている。このベースプレート4は、駆動モーター260及びギアボックス258等からなる移動制御部によってレール2156上を移動する。
図4は、中央制御ユニット358やコイルユニット3a〜3dの駆動部を示すブロック図であり、図5はコイルユニット3a〜3dの構造を示す断面図である。
中央制御ユニット358は、CPU等で構成される制御部401と、液晶パネル等を介してユーザに対して所定の情報を表示する表示部363とを備え、この制御部401から、駆動モーター260やギアボックス258に制御信号を送信可能としているとともに、操作部357を介したユーザからの入力信号を制御部401を介して受け付ける。
操作部357には、ユーザが実際にコイルユニット3a〜3dを操作するためのキー及びボタン等が設けられている。この操作部357においてユーザから入力された内容は、制御部401へ通知され、制御部401は、接続された制御回路347へこれを通知し、制御回路347はかかる入力された内容に基づいてコイルユニット3a〜3dの各構成要素を制御していくことになる。なお、この操作部357は、液晶のタッチパネル等を想定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、無線通信でユーザからの入力内容を送信するためのリモートコントローラで構成されていてもよい。
コイルユニット3a〜3dの駆動部は、インバータブロック331と、制御ブロック332に大別されて構成されている。このインバータブロック331は、実際に誘導加熱する高周波磁界を制御するためのブロックであり、制御ブロック332は、コイルユニット3全体を制御するためのブロックである。
インバータブロック331は、家庭用のAC200V(50/60Hz)の電源を電源プラグ329から電源コード330を介して受給する整流回路333と、この電源コード330と整流回路333との間に配設された電流検知コイル344と、この整流回路333に接続されてなり、鉄心にコイルを巻回すことにより構成されるチョークコイル334と、このチョークコイル334との間で直列LC回路を構成するコンデンサ335と、整流回路333の出力端子間を直列に接続するようにして配設される第1のスイッチング素子336並びに第2のスイッチング素子337と、これらスイッチング素子336,337に対して並列に接続される2つの共振コンデンサ338,339と、これら共振コンデンサ338,339の接続点に短絡されるカーレントトランス340と、インバータブロック331の内部の何れかに実装される回路保護サーモ341とを備えている。このインバータブロック331におけるカーレントトランス340の一端側と、上記スイッチング素子336,337の接続点には、さらに誘導加熱コイル342が接続され、この誘導加熱コイル342の略中心付近には鍋温度検知サーミスタ350が設けられている。
制御ブロック332は、インバータブロック331における電流検知コイル344に接続される一次電流検知回路345と、整流回路333へ供給される電流を検知するための電源電圧検知回路346と、少なくとも一次電流検知回路345並びに電源電圧検知回路346に接続されてなり、この制御ブロック332全体を制御するための中央演算ユニットとしての役割を担う制御回路347と、この制御回路347と上記スイッチング素子336,337とに接続されるインバータ駆動回路348と、接続された回路保護サーモ341からの検知情報を制御回路347へ送信するための温度検知回路349と、カーレントトランス340並びに制御回路347に夫々接続されるコイル電流検知回路351と、温度検知サーミスタ350並びに制御回路347に夫々接続される鍋温度検知回路352とを少なくとも備えている。また、この制御ブロック332は、制御回路347に対して更に冷却ファン354と、アラーム362と、表示部363と、操作部357とを接続して構成されている。
図5に示すように、上述した各構成要素は、筐体305内部に実装されている。特に、インバータブロック331及び制御ブロック332は、載置台306上に載置されて取り付けられることになる。また、この筐体305には、冷却用ファン354の配設位置近傍の底面に吸気口358が形成されており、さらに一の側面には排気口359が形成されている。
次に、インバータブロック331の各構成要素について詳細に説明する。整流回路333は、接続された電源プラグ329からの電源用電流を整流するために配設されたものであって、供給された交流としての電源用電流を直流に変換する。チョークコイル334とコンデンサ335とにより構成されるLC直列回路は、いわゆる平滑回路を構成する。スイッチング素子336,337は、例えばトランジスタ等で構成され、各スイッチング素子336,337のエミッタとコレクタには逆導通用のダイオード362,363がそれぞれ並列接続される。スイッチング素子336のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QAが供給され、スイッチング素子337のベースにはインバータ駆動回路348からの駆動信号QBが供給される。即ち、インバータ駆動回路348は、この駆動信号QAと駆動信号QBとを交互に供給することにより、共振コンデンサ338,339と誘導加熱コイル342に共振電流を流すことが可能となる。
誘導加熱コイル342は、図5に示すように、筐体305の上面305aに対向させて配設されている。この誘導加熱コイル342における巻き数は、上記調理用容器20を加熱する際における電力を支配するものであり、調理用容器20における底板の表皮抵抗や共振電流の大きさとの関係において最適に調整されている必要がある。この誘導加熱コイル342は、上記供給される共振電流に基づいて共振されることになり、その結果、高周波磁界を発生させることが可能となる。
回路保護サーモ341は、温度の変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ等で構成されており、主としてインバータブロック331や制御ブロック332を構成する空間の温度を測定するものである。
温度検知サーミスタ350は、回路保護サーモ341と同様にサーミスタで構成されている。この鍋温度検知サーミスタ350は、天板13を介して調理用容器20の温度を検知するためのものであり、上述の如く誘導加熱コイル342の中心付近に配設される。更にまた、カーレントトランス340は、誘導加熱コイルに流れる共振電流の電流値を検知するためのコイル等である。
次に、制御ブロック332の各構成要素について詳細に説明する。一次電流検知回路345は、接続された電流検知コイル344を介して、電源プラグ329を介して供給される電源用電流の電流値を検知する。そして、一次電流検知回路345は、検知した電流値を制御回路347へと通知する。
電源電圧検知回路346は、電源プラグ329からの電源用電流に基づく電圧を検知し、この検知した電圧を制御回路347へ通知するものである。
制御回路347は、例えばCPU等で構成される中央制御ユニット358内に設けられている。そして、制御回路347には、上述した一次検知回路345により検知された電流値が通知され、電源電圧検知回路346により検知された電圧が通知された場合には、これらを参照しつつ、設定された電力となるようにインバータ駆動回路348を制御する。また、制御回路347は、操作部357を介したユーザからの命令を解釈し、これに基づいてインバータ駆動回路348、冷却ファン354及びアラーム362を制御すると共に、表示部363を介して所定の情報を表示する。
制御回路347は、近接センサ156、57にそれぞれ接続されており、この近接センサ156、57による調理用容器20の検出の有無に関する検出情報が送られてくる。制御回路347は、この送られてきた検出情報を中央制御ユニット358へと送信する。中央制御ユニット358は、この検出情報を取得し、駆動モーター260、ギアボックス258を制御する。その結果、調理用容器の検出情報に基づいてベースユニット4を移動制御することが可能となる。
インバータ駆動回路348は、正弦波信号を発振させるための発振回路であり、制御回路347による制御に基づいて、上記駆動信号QA又は駆動信号QBを生成するものである。
温度検知回路349は、回路保護サーモ341における抵抗値の変化を検出するものである。この温度検知回路349は、検出した回路保護サーモ341の抵抗値の変化に基づき、筐体305の内部の温度を検知する。この温度検知回路349は、検知した筐体305内部の温度を制御回路347へ通知する。制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して筐体305内部の温度を随時認識することが可能となる。これにより、例えば運転中において冷却ファン等が停止した場合、及び吸気口358又は排気口359が詰まった場合等のように冷却性能が低下し、筐体305の内部の温度が急激に上昇した場合には、制御回路347は、温度検知回路349を介してこれを認識し、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させることも可能となる。
コイル電流検知回路351は、カーレントトランス340により検知された共振電流の電流値を読み取り、これを制御回路347へ通知するものである。この制御回路347は、コイル電流検知回路351を介して共振電流の電流値を随時認識することができる。これにより、制御回路347は、例えば、調理用容器20の材質や形状に応じて決定される誘導加熱に必要な電力に対して、必要以上の共振電流が流れるのを抑制することが可能となり、更には、誘導加熱中において調理用容器20が外された場合において、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させるとともに、アラーム362を介してこれをユーザに通知することも可能となる。
鍋温度検知回路352は、鍋温度検知サーミスタ350における抵抗値の変化を検出し、この検出した鍋温度検知サーミスタ350の抵抗値の変化に基づき、調理用容器20の温度を検知するものである。そして、鍋温度検知回路352は、検知した調理用容器20の温度を制御回路347へ通知する。これにより、制御回路347は、温度検知回路349からの通知を介して調理用容器20の温度を随時認識することが可能となり、例えば調理用容器20の底部の温度が規定値以上に上昇した場合には、コイルユニット3a〜3dの動作を停止させることも可能となる。
冷却ファン354は、制御回路347による制御に基づいて回転し、この冷却ファン354の回転に応じて、吸気口358から冷却風が吸い込まれる。そして、この吸い込まれた冷却風は、インバータブロック331や制御ブロック332上を通過することによりこれらを冷却し、排出口359から外部へと排出される。
アラーム362は、制御回路347による制御に基づいて所定の音を発生させる音声発振器で構成される。
次に、コイルユニット3a〜3dの動作、即ち、上述の如く構成されたコイルユニット3a〜3dにより、調理用容器20を誘導加熱する方法について説明する。
先ず、天板13上の任意の位置に鍋等の調理用容器20を載置し、この調理用容器20の直下域にコイルユニットを移動させる。次に、調理用容器20の直下域に配置されたコイルユニットにより、調理用容器20を誘電加熱する。具体的には、先ず、電源プラグ329から電源コード330を介して電源用電流を受給する。この受給した電源用電流は、整流回路333において整流されることになる。このとき、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御の下で、スイッチング素子336,337に供給する駆動信号QA、QBを調整する。
図6(a)は誘導加熱コイル342に流れる共振電流を示す図であり、図6(b)スイッチング素子336に対して供給される駆動信号QAを示す図であり、図6(c)は、スイッチング素子337に対して供給される駆動信号QBを示す図である。図6(a)〜(c)に示すように、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御下で、時点t0から時点t1に至るまで駆動時間がT1である駆動信号QAをON出力する。この駆動時間T1の間では、スイッチング素子336及びダイオード362と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ338とで形成される閉回路で共振することになる。そして、インバータ駆動回路348は、時点t1となったときに駆動信号QAをOFFにする。
次に、インバータ駆動回路348は、制御回路347による制御下で、時点t2から駆動時間がT2である駆動信号QBをON出力する。この駆動時間T2の間では、スイッチング素子337及びダイオード363と、誘導加熱コイル342と、共振コンデンサ339とで形成される閉回路で共振することになる。なお、この駆動時間T2は、上記駆動時間T1と同一である。
このように閉回路を変えて誘導加熱コイル342を共振させることにより、誘導加熱コイル342において高周波磁界を発生させることができる。この発生させられた高周波磁界は、天板13を介して調理用容器20の底板を通過していくことになる。この調理用容器20の底板は、金属製であるため、この高周波磁界を金属製の底板に通すことにより、渦電流が発生することになる。この渦電流と調理用容器20の持つ電気抵抗によりジュール熱が生じ、調理用容器20自体が発熱することになる。その結果、調理用容器20内にある食物を加熱調理することが可能となる。
本実施形態のシステムキッチン1においては、加熱調理台領域Dの横方向Xに複数個のコイルユニットを配列し、これらのコイルユニットを加熱調理台領域Dの縦方向Yに移動可能としているため、コイルユニットを移動させることにより、ユーザは、天板13上の任意の位置に加熱調理容器20を配置することができ、調理内容によって、適宜都合のよい場所で加熱調理することができる。また、加熱調理を行っていない領域は、全て調理台として使用可能であるため、調理台スペースの位置が限定されず、従来のシステムキッチンに比べて、調理台スペースを広くとることができる。更に、このシステムキッチン1においては、加熱調理台領域Dにおける略全ての領域が、誘電加熱領域でありかつ調理台領域であるため、調理台スペース及び加熱スペースの広さを適宜、フレキシブルに変更させることが可能となり、限られた天板13上のスペースを効率的に利用することが可能となる。
なお、本実施形態のシステムキッチン1においては、加熱部となるコイルユニットを4台配設しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、横方向Xに複数個のコイルユニットが配列されていればよく、その数はキャビネット11の横方向Xにおける長さに応じて変えることができる。また、本実施形態のシステムキッチン1においては、Y方向に複数個のコイルユニットを配列させる構成としてもよい。
更に、本実施形態はアイランドタイプのシステムキッチンを例に説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の構成は、流し台領域Aが設けられた作業台と加熱調理部Dが設けられた作業台とを1列に並べたいわゆる1列型キッチン、及び流し台領域Aが設けられた作業台と加熱調理部Dが設けられた作業台とをL字型に並べたいわゆるL型キッチンにも適用することができる。更にまた、コイルユニットの初期状態の位置も、縦方向Yにおける中央部に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、1列型キッチンに適用する場合は、コイルユニットを壁面側に寄せた状態を初期状態をとすることもできる。
なお、本発明では、天板13上に載置されている調理用容器20を近接センサ156、57を介して検出し、この検出した調理用容器20の載置位置へ向けてこのコイルユニット3(ベースプレート4)を自動的に移動させるようにしてもよい。以下、この自動的な移動動作を実行する例について説明をする。
図7におけるa−1に示すように、ベースプレート4を幅方向Yへと移動させる。このベースプレート4のY方向への移動時においては、近接センサ57により、天板13上に載置された調理用容器20の有無を随時検出していくことになる。
次にa−2に示すように、近接センサ群156のうち、近接センサ57bによりステンレス製の洋食器を検出することができ、もう一方の近接センサ156aでは、何ら検出することができない場合には、調理用容器20を検出することができなかったものとして、そのままベースプレート4の幅方向Yへの移動を継続させていくことになる。
次にa−3に示すように、近接センサ群57のうち、近接センサ57a、近接センサ57bの双方により物体を同時に検出することができた場合に、初めて調理用容器20を検出することができたものとし、実際の調理用容器20の中心位置へとこのベースプレート4を移動させていくことになる(a−4)。その後、上述した方法に基づきコイルユニット3を用いて調理用容器20を誘導加熱していくことになる。
このように、本発明では、近接センサ群156、57として、複数の近接センサにより構成し、片方の近接センサにより何らかの物体を検出することができた場合には、これは調理用容器20以外の鉄製の器具(例えば、スプーン、フォーク、ナイフ等の洋食器)を検出したものと仮定し、特段の加熱処理等に入ることなく、そのまま調理用容器20を探索するためにベースプレート4を移動させていくことになる。
これに対して、近接センサ群156(57)のうち少なくとも2以上の近接センサにより物体を検出することができた場合には、調理用容器20を検出することができたものと仮定する。そして、この調理用容器20の載置位置へ向けてさらにこのベースプレートを自動的に移動させ、更に位置調整を行うことにより、調理用容器20の直下にコイルユニットを近接させる。
特に調理用容器20は、鍋、やかん、フライパン等のように、洋食器と比較して殆どが径の大きい円形状に構成される。このため、これら調理用容器20は、近接センサ群156のうち2以上の近接センサ又は近接センサ群57のうち2以上の近接センサにより、同時に捉えることが可能となる。
これに対して、洋食器は、調理用容器20と比較して小さく、近接センサ群156のうち2以上の近接センサ又は近接センサ群57のうち2以上の近接センサにより、同時に捉えることが困難となる。
本発明では、かかる現象に着目し、近接センサ群156(57)のうち少なくとも2以上の近接センサにより物体を検出することができた場合には、調理用容器20を検出することができたものと仮定することにより、調理用容器20を他の洋食器等と誤認することなく高精度に検出することが可能となり、調理用容器20以外の器物に対して誘導加熱をしてしまう等の誤動作の発生を防止することができる。なお、近接センサ156a、156b間の間隔や、近接センサ57a、57b間の間隔は、検出すべき調理用容器20のサイズに応じて予め最適化されていてもよいし、事後的に調整可能とされていてもよい。
また図2(b)に示すように、第1の近接センサ群156、第2の近接センサ群57それぞれについて3つの近接センサを設けた場合には、これらのうち2以上の近接センサにより物体を識別することができた場合に、調理用容器20を検出することができたものと仮定する。同様に、第1の近接センサ群156、第2の近接センサ群57について4以上の近接センサを設けた場合についても同様にこれらのうち2以上の近接センサにより物体を識別することができた場合に、調理用容器20を検出することができたものと仮定するようにしてもよい。
なお本発明では、図8に示すように、コイルユニット3が搭載されたベースプレート4を少なくとも空間19内を互いに直交する二方向へ往復移動自在に構成するようにしてもよい。かかる実施形態においては、レール機構250によりコイルユニット3を移動させる。このレール機構250は、略平板状の底板28上にx方向へ延長されるようにして取り付けられた互いに平行な2本の第1のレール251,252と、この2本の第1のレール251,252にそれぞれ係合される第1のレール係合部材253、254と、両端が第1のレール係合部材253、254上面に固着され、y方向へ架設された第2のレール2156と、この第2のレール256に係合するベースプレート4とを備え、ベースプレート4上にコイルユニット3が搭載されている。
第1のレール係合部材253,254は、第1のレール251,252に沿ってx方向へスライドする。この第1のレール係合部材253,254は、中央制御ユニット358を介して送信されてきた識別信号に基づき駆動する図示しない駆動モータにより駆動制御されることになる。また、ベースプレート4は、第2のレール256に沿ってy方向へスライドする。このベースプレート4は、中央制御ユニット358を介して送信されてきた識別信号に基づき駆動する図示しない駆動モータにより駆動制御されることになる。即ち、この第1のレール係合部材253,254と、第2のレール係合部材256は、互いに直交するようにして配置されていることから、ベースプレート4を互いに直交するx、y方向に移動させることができる。その結果、当該ベースプレート4に搭載されたコイルユニット3を天板13下の任意の位置へ導くことが可能となる。
なお、この図8に示すベースプレート4の駆動制御方法では、あくまで直交する2軸方向へスライドさせる場合を想定しているが、これに限定されるものではなく、互いに異なる2軸方向へスライドさせるものであればいかなる形態で具体化されていてもよい。
なお、互いに直交する2軸方向にベースプレート4を移動させるレール機構250においては、近接センサ群59をコイルユニット3を中心とした周囲に設けるようにしてもよい。近接センサ群59は、複数の近接センサからなる。複数の近接センサは、コイルユニット3を中心とした周囲において円弧状に所定間隔で設けられている。
この図8に示すレール機構において、調理用容器20の載置位置を識別する際には、先ずベースプレート4をランダムに、又は規則的に移動させることにより、近接センサ群59を構成する2以上の近接センサにより同時に検出することができる物体が存在するか否かを確認していくことになる。仮に洋食器の如き小さい物体は、図9に示すように小さい影501しか形成することができず、近接センサ群59のうち1の近接センサで捉えることができる程度であり、2以上の近接センサで同時にこれを捉えることができない。
これに対して、調理用容器20は洋食器等と比較して径の大きい円形状に構成される。このため、ベースプレート4をレール機構250を介して駆動させてサーチすることにより、図10に示すように調理用容器20を、近接センサ群59を構成する2以上の近接センサにより同時に捉えることが可能となる。2以上の近接センサにより物体を識別することができた場合に、調理用容器20を検出することができたものと仮定し、レール機構250は、調理用容器20の検出位置に向けて、ベースプレート4を自動的に移動させるようにしてもよい。
特にこの図8に示す形態においては、近接センサ群59を構成する近接センサがコイルユニット3を中心とした周囲において円弧状に所定間隔で設けられている。このため、特に調理用容器20のような円形の物体を高精度に捉えることが可能となる。