JP5189715B1 - 優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
0.2〜1.2質量%のMgと0.001〜0.2質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板において、表面の結晶配向が、{110}結晶面のX線回折強度をI{110}とし、純銅標準粉末の{110}結晶面のX線回折強度をI0{110}とした場合に、4.0≦I{110}/I0{110}≦6.0であり、{100}結晶面のX線回折強度をI{100}とし、純銅標準粉末の{100}結晶面のX線回折強度をI0{100}とした場合に、I{100}/I0{100}≦0.8であり、{111}結晶面のX線回折強度をI{111}とし、純銅標準粉末の{111}結晶面のX線回折強度をI0{111}とした場合に、I{111}/I0{111}≦0.8であり、平均結晶粒径が1.0〜10.0μmである
【選択図】図1
Description
この文献では、Cu−Mg−P系銅合金の板面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成されており、他の結晶面からのX線回折強度は、これらの結晶面からのX線回折強度に比べて非常に小さく、通常の製造方法によって製造されたCu−Mg−P系銅合金の板材では、{420}面からのX線回折強度は、無視される程度に弱くなるが、この文献による銅合金板材の製造方法の実施の形態によれば、{420}を主方位成分とする集合組織を有するCu−Mg−P系銅合金板材を製造することができ、この集合組織が強く発達している程、曲げ加工性の向上に有利となることが開示されている。
従来の諸特性とは、出願人の商品名「MSP1」の1/4H材、1/2H材、H材、EH材、SH材に該当する物理的、機械的、各種特性を意味する。
また、従来のCu−Mg−P系銅合金銅合金板は、150℃にて1000時間保持した後では、その耐疲労特性は常温時より、20%を超えて25%程度低下するが、本発明のCu−Mg−P系銅合金銅合金板は、15〜20%の低下で抑えられる。
更に、本発明者らは、その製造方法は、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、仕上げ冷間圧延、テンションレベリングをこの順序で行う工程で上述の銅合金板を製造するに際し、熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施し、連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施し、テンションレベリングを、ラインテンション;10〜140N/mm2で実施することにより、上述のI{110}/I0{110}、I{100}/I0{100}、I{111}/I0{111}、平均結晶粒径が各々の規定値内に収まり、従来の諸特性を維持しながら、耐疲労特性、特に150℃にて1000時間保持した後の耐疲労特性が向上することも見出した。
銅合金板の表面の結晶配向の{110}結晶面を4.0≦I{110}/I0{110}≦6.0の範囲に調整し、{100}結晶面をI{100}/I0{100}≦0.8とし、{111}結晶面をI{111}/I0{111}≦0.8とする、即ち、この2つの結晶面({100}と{111})の形成を極力抑制し、更に、銅合金板の平均結晶粒径を1.0〜10.0μmとすることにより、従来の諸特性を維持しながら、耐疲労特性(特に150℃にて1000時間保持した後の耐疲労特性)が向上することを見出した。
即ち、従来のCu−Mg−P系銅合金銅合金板は、150℃にて1000時間保持した後では、その耐疲労特性は常温時より、20%を超えて25%程度低下するが、本発明のCu−Mg−P系銅合金銅合金板は、15〜20%の低下で抑えられるのである。
これらの4つの条件({110}、{100}、{111}、平均粒径)を全て満たしていないと、その効果は得られない。
Cu−Mg−P系銅合金板面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成され、{100}面は非常に小さいが、本発明では、この{100}面に着目し、この発生を極力抑制し、更に、{111}結晶面をI{111}/I0{111}≦0.8に抑制することにより、従来の諸特性を維持しながら、耐疲労特性の向上が可能となり、また、銅合金板の平均結晶粒径が1〜10μmであると、この効果を増長させることができる。I{100}/I0{100}とI{111}/I0{111}は、極力小さくしたいが、製造方法を工夫しても0.2より小さくすることは難しい。
X線回折強度(X線回折積分強度)の測定は、条件によりかなり異なる場合もあり、本発明では、その銅合金板の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げした試料を用意し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧60kV、管電流200mAの条件で、試料の研磨仕上げ面について、各々の面のX線回折強度Iを測定した。純銅標準粉末も同様に測定した。
Cは、純銅に対して非常に入りにくい元素であるが、微量に含まれることにより、Mgを含む酸化物が大きく成長するのを抑制する作用がある。しかし、その含有量が0.0001質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.0013質量%を越えて含有すると、固溶限度を越えて結晶粒界に析出し、粒界割れを発生させて脆化し、曲げ加工中に割れが発生することがあるので好ましくない。より好ましい範囲は、0.0003〜0.0010質量%である。
酸素は、Mgとともに酸化物を作り、この酸化物が微細で微量存在すると、打抜き金型の摩耗低減に有効であるが、その含有量が0.0002質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.001質量%を越えて含有するとMgを含む酸化物が大きく成長するので好ましくない。より好ましい範囲は0.0003〜0.008質量%である。
また、本発明の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板は、更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有することを特徴とする。
Zrは、0.001〜0.03質量%の添加により、引張強さ及びばね限界値の向上に寄与し、その添加範囲外では、効果は望めない。
また、特許文献6には、Cu−Mg−P系銅合金板の製造方法として、900℃〜300℃における熱間圧延として900℃〜600℃で最初の圧延パスを行った後に600℃未満〜300℃で圧延率40%以上の圧延を行い、次いで、圧延率85%以上で冷間圧延を行い、その後、400〜700℃における再結晶焼鈍と、圧延率20〜70%の仕上げ冷間圧延を順次行うことにより、銅合金板材を製造することが開示されている。
テンションレベリングとは、千鳥状に並ぶロールに材料を通して繰り返し逆方向に曲げ加工するローラーレベラーに前後方向に張力を与えることにより材料の平坦度を矯正する加工である。ラインテンションとは、入側および巻取側テンション負荷装置によりローラーレベラー内の材料に負荷される張力である。
即ち、熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、前記冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施することにより、I{110}/I0{110}、I{100}/I0{100}、I{111}/I0{111}、平均結晶粒径の4条件が規定値内に収まる素地を作り(特に、{110}の形成を増長させる)、連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施することにより、焼鈍での再結晶を極力抑えて、I{100}/I0{100}とI{111}/I0{111}の形成を抑制して規定値内に収め、テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2で実施することにより、I{110}/I0{110}を増加させて規定範囲内に収め、平均結晶粒径も規定範囲内に収める。
これらの製造条件の何れか一つが外れても、I{110}/I0{110}、I{100}/I0{100}、I{111}/I0{111}、平均結晶粒径の4条件は、規定値内に収まらない。
[銅合金板の成分組成]
本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、0.2〜1.2質量%のMgと0.001〜0.2質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する。
Mgは、Cuの素地に固溶して導電性を損なうことなく、強度を向上させる。また、P
は、溶解鋳造時に脱酸作用があり、Mg成分と共存した状態で強度を向上させる。これら
Mg、Pは上記範囲で含有することにより、その特性を有効に発揮することができる。
また、本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、上記の基本組成に対して、更に0.0002〜0.0013質量%のCと0.0002〜0.001質量%の酸素を含有しても良い。
Cは、純銅に対して非常に入りにくい元素であるが、微量に含まれることにより、Mgを含む酸化物が大きく成長するのを抑制する作用がある。しかし、その含有量が0.0001質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.0013質量%を越えて含有すると、固溶限度を越えて結晶粒界に析出し、粒界割れを発生させて脆化し、曲げ加工中に割れが発生することがあるので好ましくない。より好ましい範囲は、0.0003〜0.0010質量%である。
酸素は、Mgとともに酸化物を作り、この酸化物が微細で微量存在すると、打抜き金型の摩耗低減に有効であるが、その含有量が0.0002質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.001質量%を越えて含有するとMgを含む酸化物が大きく成長するので好ましくない。より好ましい範囲は0.0003〜0.008質量%である。
また、本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、上記の基本組成に対して、或いは、上記の基本組成に上記のC及び酸素を含む組成に対して、更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有しても良い。
Zrは、0.001〜0.03質量%の添加により、引張強さ及びばね限界値の向上に寄与し、その添加範囲外では、効果は望めない。
本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、銅合金板の表面の結晶配向が、{110}結晶面のX線回折強度をI{110}とし、純銅標準粉末の{110}結晶面のX線回折強度をI0{110}とした場合に、4.0≦I{110}/I0{110}≦6.0であり、{100}結晶面のX線回折強度をI{100}とし、純銅標準粉末の{100}結晶面のX線回折強度をI0{100}とした場合に、I{100}/I0{100}≦0.8であり、{111}結晶面のX線回折強度をI{111}とし、純銅標準粉末の{111}結晶面のX線回折強度をI0{111}とした場合に、I{111}/I0{111}≦0.8であり、銅合金板の平均結晶粒径が1〜10μmである。
即ち、従来のCu−Mg−P系銅合金銅合金板は、150℃にて1000時間保持した後では、その耐疲労特性は常温時より、20%を超えて25%程度低下するが、本発明のCu−Mg−P系銅合金銅合金板は、15〜20%の低下で抑えられる。
これらの4つの条件({110}、{100}、{111}、平均粒径)を全て満たしていないと、その効果は得られない。
従来の諸特性とは、出願人の商品名「MSP1」の1/4H材、1/2H材、H材、EH材、SH材に該当する物理的、機械的、各種特性を意味する。
従来の諸特性を維持しながら、耐疲労特性の向上が可能となり、また、銅合金板の平均結晶粒径が1〜10μmであると、この効果を増長させることができる。I{100}/I0{100}とI{111}/I0{111}は、極力小さくしたいが、製造方法を工夫しても0.2より小さくすることは難しい。
X線回折強度(X線回折積分強度)の測定は、条件によりかなり異なる場合もあり、本発明では、その銅合金板の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げした試料を用意し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧60kV、管電流200mAの条件で、試料の研磨仕上げ面について、各々の面のX線回折強度Iを測定した。純銅標準粉末も同様に測定した。
本発明の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板の製造方法は、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、仕上げ冷間圧延、テンションレベリングをこの順序で含む工程で前記銅合金板を製造するに際し、前記熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、前記冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施し、前記連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施し、テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2にて実施することを特徴とする。
また、特許文献6には、Cu−Mg−P系銅合金板の製造方法として、900℃〜300℃における熱間圧延として900℃〜600℃で最初の圧延パスを行った後に600℃未満〜300℃で圧延率40%以上の圧延を行い、次いで、圧延率85%以上で冷間圧延を行い、その後、400〜700℃における再結晶焼鈍と、圧延率20〜70%の仕上げ冷間圧延を順次行うことにより、銅合金板材を製造することが開示されている。
テンションレベリングとは、千鳥状に並ぶロールに材料を通して繰り返し逆方向に曲げ加工するローラーレベラーに前後方向に張力を与えることにより材料の平坦度を矯正する加工である。ラインテンションとは、入側および巻取側テンション負荷装置によりローラーレベラー内の材料に負荷される張力である。
図1に示すように、アンコイラー9に巻かれた銅合金板6は、テンションレベラ10の入側テンション負荷装置11を通過し、複数のロールが千鳥状に並ぶローラーレベラー13により繰り返し曲げ加工されて銅合金板7となり、巻取側テンション負荷装置12を通過後、銅合金板8となりリコイラー14に巻き取られる。この際、ラインテンションLは入側テンション負荷装置11と巻取側テンション負荷装置12の間の銅合金板7に負荷される(ローラーレベラー13内では均一な張力である)。
これらの製造条件の何れか一つが外れても、I{110}/I0{110}、I{100}/I0{100}、I{111}/I0{111}、平均結晶粒径の4条件は、規定値内に収まらず、期待される耐疲労効果は得られない。
X線回折強度の測定は、RIGAKU RINT 2500回転対極型X線回折装置を使用し、逆極点図測定にて、各試料の銅合金板の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げし、Mo−Kα線、グラファイト製湾曲モノクロメータ、管電圧60kV、管電流200mAの条件で、その試料面につき、各々の結晶面のX線回折強度Iを測定した。純銅標準粉末は、2mm厚にプレス成形した後に同様の測定を実施した。
その結果を表2に示す。
また、各試料の平均結晶粒径は、銅合金板の板面(圧延面)を研磨した後にエッチング
し、その面を光学顕微鏡で観察して、JISH0501の切断法により測定した。
その結果を表2に示す。
導電率は、JISH0505の導電率測定方法に従って測定した。
引張り強さは、LD(圧延方向)およびTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の引張試験用の試験片(JISZ2201の5号試験片)をそれぞれ5個ずつ採取し、それぞれの試験片についてJISZ2241に準拠した引張試験を行い、平均値によってLDおよびTDの引張強さを求めた。
応力緩和率は、幅12.7mm、長さ120mm(以下、この長さを120mmをL0とする)の寸法を持った試験片を使用し、この試験片を長さ:110mm、深さ:3mmの水平縦長溝を有する治具に前記試験片の中央部が上方に膨出するように湾曲セットし(この時の試験片の両端部の距離:110mmをL1とする)、この状態で温度:170℃にて1000時間保持し、加熱後、前記治具から取り外した状態に置ける前記試験片の両端部間の距離(以下、L2とする)を測定し、計算式:(L0−L2)/(L0−L1)×100%によって算出することにより求めた。
ばね限界値は、JIS−H3130に基づき、モーメント式試験により永久たわみ量を測定し、R.T.におけるKb0.1(永久たわみ量0.1mmに対応する固定端における表面最大応力値)を算出した。
これらの結果を表3に示す。
その結果を表4に示す。
7 銅合金板
8 銅合金板
9 アンコイラー
10 テンションレベラ
11 入側テンション負荷装置
12 巻取側テンション負荷装置
13 ローラーレベラー
14 リコイラー
L ラインテンション
Claims (5)
- 0.2〜1.2質量%のMgと0.001〜0.2質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板において、表面の結晶配向が、{110}結晶面のX線回折強度をI{110}とし、純銅標準粉末の{110}結晶面のX線回折強度をI0{110}とした場合に、4.0≦I{110}/I0{110}≦6.0であり、{100}結晶面のX線回折強度をI{100}とし、純銅標準粉末の{100}結晶面のX線回折強度をI0{100}とした場合に、I{100}/I0{100}≦0.8であり、{111}結晶面のX線回折強度をI{111}とし、純銅標準粉末の{111}結晶面のX線回折強度をI0{111}とした場合に、I{111}/I0{111}≦0.8であり、平均結晶粒径が1.0〜10.0μmであることを特徴とする優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板。
- 更に、0.0002〜0.0013質量%のCと0.0002〜0.001質量%の酸素を含有することを特徴とする請求項1に記載の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板。
- 更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有することを特徴とする請求項1に記載の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板。
- 更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有することを特徴とする請求項2に記載の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板。
- 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板の製造方法であって、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、仕上げ冷間圧延、テンションレベリングをこの順序で行う工程で前記銅合金板を製造するに際し、前記熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、前記冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施し、前記連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施し、テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2にて実施することを特徴とするCu−Mg−P系銅合金板の製造方法。
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