JP2013253267A - 機械的な成形性に優れたCu−Mg−P系銅合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Mg:0.2〜1.2%、P:0.001〜0.2%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて圧延面に平行な表面の結晶面の回折強度分布(逆極点図形)を測定し、測定面積内の{123}面の回折強度をI1、{110}面の回折強度をI2、{100}面の回折強度をI3とした場合、I1/I3が15.0〜20.0であり、I2/I3が15.0〜20.0であり、測定面積内の結晶粒の粒径が10μm以下であり、粒径が5μm以下である結晶粒の面積比率が75%以上である。
【選択図】なし
Description
最近の複雑で多様な端子及びコネクタの形状に対応するために、Cu−Mg−P系銅合金板も、曲げ加工性やプレス打ち抜き性と共に、複雑な機械加工に対する更なる成形性(プレス加工時の絞り、或いは、張出し成形性等)の良さが求められている。特に、張出し成形性には高い寸法精度が求められることが多く、低コスト化と共に、その成形性を示すエリクセン値の良好なCu−Mg−P系銅合金板が求められている。
本発明では、出願人の商品名「MSP1」を改良し、その優れた諸特性を保持しながら、機械的な成形性、特にエリクセン値が良好で優れた張出し成形性を有するCu−Mg−P系銅合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
即ち、この張出し成形性を向上させるには、Cu−Mg−P系銅合金の表面の組織を最適な条件に緻密化する必要があり、[{110}面及び{123}面の形成を増加し、{100}面の形成を減じて、{110}面及び{123}面と{100}面との回折強度比を最適な範囲内に収め、更には、結晶粒の粒径が10μm以下であり、粒径が5μm以下である結晶粒の面積比率が75%以上であることにより達成される。
(1)所定成分の銅合金を溶解・鋳造して銅合金鋳塊板を作製し、その銅合金鋳塊板の熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施することにより、{123}面及び{110}面と{100}面の回折強度比、結晶粒径が規定値内に収まる素地を作る(特に、{110}の形成を増長させる)。
(2)連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施することにより、焼鈍での再結晶化を極力抑えて、{100}面の形成を抑制して規定値内に収める。
(3)テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2で実施することにより、{110}面の形成を増加して規定値内に収め、ローラーレベラーのロールの表面粗さ(Ra);0.01〜0.10μmで実施することにより、ローラーレベラーのロールと銅合金板との摩擦を抑えて、銅合金板のローラーレベラーのロールと接触している側の圧縮ひずみを大きくすることにより、銅合金板表面の組織を緻密化し、{123}面の形成を増加して規定値内に収め、結晶粒径も規定値内に収める。
Mgは、Cuの素地に固溶して導電性を損なうことなく、強度を向上させる。また、Pは、溶解鋳造時に脱酸作用があり、Mg成分と共存した状態で強度を向上させる。これらMg、Pは、上記範囲内で含有することにより、その特性を有効に発揮することができる。
この文献では、Cu−Mg−P系銅合金の板面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成されており、他の結晶面からのX線回折強度は、これらの結晶面からのX線回折強度に比べて非常に小さく、通常の製造方法によって製造されたCu−Mg−P系銅合金の板材では、{420}面からのX線回折強度は、無視される程度に弱くなるが、この文献による銅合金板材の製造方法の実施の形態によれば、{420}を主方位成分とする集合組織を有するCu−Mg−P系銅合金板材を製造することができ、この集合組織が強く発達している程、曲げ加工性の向上に有利となることが開示されている。
これらの3つの条件(I1/I3、I2/I3、結晶粒径)を全て満たしていないと、その効果は得られない。
従来の諸特性とは、出願人の商品名「MSP1」の1/4H材、1/2H材、H材、EH材、SH材に該当する物理的、機械的、各種特性を意味する。
また、{110}面は、張出し成形性のみでなく、出願人のPCT/JP2012/ 59257で開示されるように、高温での耐疲労特性の向上にも関与する重要な因子でもある。
I1/I3及びI2/I3の値は大きいことが好ましいが、抑制したい{100}面の形成を皆無にすることは、製造技術の問題点から難しく、I1/I3及びI2/I3が20を超えることはない。
結晶粒の粒径が10μm以下であり、粒径が5μm以下である結晶粒の面積比率を75%以上とすることにより、結晶粒が最適範囲となり表面の緻密化されるが、面積比率が75%未満であると、表面の緻密化が充分ではなく、期待する効果は得られない。この場合、面積比率とは、測定面積内の全結晶粒に占める粒径が5μm以下の結晶粒の割合である。
各結晶面の分布等を表示する方法としては、正極点図形と逆極点図形とがあり、正極点図形は、測定試料の試料軸を固定した平面図形表示であり、結晶面の3次元的な状態を読み取ることができる。逆極点図形は、測定試料の結晶軸を固定した平面図形表示であり、本発明では、この逆極点図形を用い、{123}面、[110}面、{100}面の回折強度に着目した。
また、本発明では、張出し成形性の評価をエリクセン値(銅合金薄膜を円環状の台において、中心を球状の突起で押し、銅合金薄膜が破壊するまでに球状突起が侵入した深さをmm単位で表した数値)にて評価した。
Cは、純銅に対して非常に入りにくい元素であるが、微量に含まれることにより、Mgを含む酸化物が大きく成長するのを抑制する作用がある。しかし、その含有量が0.0001質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.0013質量%を越えて含有すると、固溶限度を越えて結晶粒界に析出し、粒界割れを発生させて脆化し、曲げ加工中に割れが発生することがあるので好ましくない。より好ましい範囲は、0.0003〜0.0010質量%である。
酸素は、Mgとともに酸化物を作り、この酸化物が微細で微量存在すると、打抜き金型の摩耗低減に有効であるが、その含有量が0.0002質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.001質量%を越えて含有するとMgを含む酸化物が大きく成長するので好ましくない。より好ましい範囲は0.0003〜0.008質量%である。
また、本発明の優れた耐疲労特性を有するCu−Mg−P系銅合金板は、更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有することを特徴とする。
Zrは、0.001〜0.03質量%の添加により、引張強さ及びばね限界値の向上に寄与し、その添加範囲外では、効果は望めない。
また、特許文献6には、Cu−Mg−P系銅合金板の製造方法として、900℃〜300℃における熱間圧延として900℃〜600℃で最初の圧延パスを行った後に600℃未満〜300℃で圧延率40%以上の圧延を行い、次いで、圧延率85%以上で冷間圧延を行い、その後、400〜700℃における再結晶焼鈍と、圧延率20〜70%の仕上げ冷間圧延を順次行うことにより、銅合金板材を製造することが開示されている。
テンションレベリングとは、ローラーレベラー(千鳥にならぶロールに銅合金板を挿入して繰り返し逆方向に曲げ加工する装置)に対して、前後方向に張力を与えることにより、銅合金板の平坦度を矯正する加工であり、ラインテンションとは、入側および巻取側テンション負荷装置によりローラーレベラー内の銅合金板に負荷される張力である。このラインテンションと共に、ローラーレベラーの各ロールの表面粗さ(Ra)も、銅合金の表面組織の緻密化に大きな影響を及ぼす。
(1)所定成分の銅合金を溶解・鋳造して銅合金鋳塊板を作製し、その銅合金鋳塊板の熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施することにより、{123}面及び{110}面と{100}面の回折強度比、結晶粒径が規定値内に収まる素地を作る(特に、{110}の形成を増長させる)。
(2)連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施することにより、焼鈍での再結晶化を極力抑えて、{100}面の形成を抑制して規定値内に収める。
(3)テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2で実施することにより、{110}面の形成を増加して規定値内に収め、ローラーレベラーのロールの表面粗さ(Ra);0.01〜0.10μmで実施することにより、ローラーレベラーローのロールと銅合金板との摩擦を抑えて、銅合金板のローラーレベラーのロールと接触している側の圧縮ひずみを大きくすることにより、銅合金板表面の組織を緻密化し、{123}面の形成を増加して規定値内に収め、結晶粒径も規定値内に収める。
これらの熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、テンションレベリングの製造条件の何れか一つが外れても、3つの条件(I1/I3、I2/I3、結晶粒径)を全て満たした機械的な成形性に優れたCu−Mg−P系銅合金板を得ることはできない。
[銅合金板の成分組成]
本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、0.2〜1.2質量%のMgと0.001〜0.2質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である基本組成を有する。
Mgは、Cuの素地に固溶して導電性を損なうことなく、強度を向上させる。また、Pは、溶解鋳造時に脱酸作用があり、Mg成分と共存した状態で強度を向上させる。これらMg、Pは上記の範囲で含有することにより、その特性を有効に発揮することができる。
また、本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、上記の基本組成に対して、更に0.0002〜0.0013質量%のCと0.0002〜0.001質量%の酸素を含有するのが好ましい。
Cは、純銅に対して非常に入りにくい元素であるが、微量に含まれることにより、Mgを含む酸化物が大きく成長するのを抑制する作用がある。しかし、その含有量が0.0001質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.0013質量%を越えて含有すると、固溶限度を越えて結晶粒界に析出し、粒界割れを発生させて脆化し、曲げ加工中に割れが発生することがあるので好ましくない。より好ましい範囲は、0.0003〜0.0010質量%である。
酸素は、Mgとともに酸化物を作り、この酸化物が微細で微量存在すると、打抜き金型の摩耗低減に有効であるが、その含有量が0.0002質量%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.001質量%を越えて含有するとMgを含む酸化物が大きく成長するので好ましくない。より好ましい範囲は0.0003〜0.008質量%である。
また、本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、上記の基本組成に対して、或いは、上記の基本組成に上記のC及び酸素を含む組成に対して、更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有するのが好ましい。
Zrは、0.001〜0.03質量%の添加により、引張強さ及びばね限界値の向上に寄与し、その添加範囲外では、効果は望めない。
本発明のCu−Mg−P系銅合金板は、質量%で、Mg:0.2〜1.2%、P:0.001〜0.2%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて圧延面に平行な表面の結晶面の回折強度分布(逆極点図形)を測定し、測定面積内の{123}面の回折強度をI1、[110}面の回折強度をI2、{100}面の回折強度をI3とした場合、I1/I3が15.0〜20.0であり、I2/I3が15.0〜20.0であり、測定面積内の結晶粒の粒径が10μm以下であり、粒径が5μm以下である結晶粒の面積比率が75%以上である。
この文献では、Cu−Mg−P系銅合金の板面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成されており、他の結晶面からのX線回折強度は、これらの結晶面からのX線回折強度に比べて非常に小さく、通常の製造方法によって製造されたCu−Mg−P系銅合金の板材では、{420}面からのX線回折強度は、無視される程度に弱くなるが、この文献による銅合金板材の製造方法の実施の形態によれば、{420}を主方位成分とする集合組織を有するCu−Mg−P系銅合金板材を製造することができ、この集合組織が強く発達している程、曲げ加工性の向上に有利となることが開示されている。
これらの3つの条件(I1/I3、I2/I3、結晶粒径)を全て満たしていないと、その効果は期待できない。
従来の諸特性とは、出願人の商品名「MSP1」の1/4H材、1/2H材、H材、EH材、SH材に該当する物理的、機械的、各種特性を意味する。
また、[110}面は、張出し成形性のみでなく、出願人のPCT/JP2012/ 59257で開示されるように、高温での耐疲労特性の向上にも関与する重要な因子でもある。
I1/I3及びI2/I3の値は大きいことが好ましいが、抑制したい{100}面の形成を皆無にすることは、製造技術の問題点から難しく、I1/I3及びI2/I3が20を超えることはない。
結晶粒の粒径が10μm以下であり、粒径が5μm以下である結晶粒の面積比率を75%以上とすることにより、結晶粒が最適範囲となり表面の緻密化されるが、面積比率が75%未満であると、表面の緻密化が充分ではなく、期待する効果は得られない。この場合、面積比率とは、測定面積内の全結晶粒に占める粒径が5μm以下の結晶粒の割合である。
本発明では、各結晶面の回折強度分布(逆極点図形)の測定は、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて実施した。
各結晶面の分布等を表示する方法としては、正極点図形と逆極点図形とがあり、正極点図形は、測定試料の試料軸を固定した平面図形表示であり、結晶面の3次元的な状態を読み取ることができる。逆極点図形は、測定試料の結晶軸を固定した平面図形表示であり、本発明では、この逆極点図形を用い、{123}面、{110}面、{100}面の回折強度に着目した。
また、本発明では、張出し成形性の評価をエリクセン値(銅合金薄板を円環状の台において、中心を球状の突起で押し、銅合金薄板が破壊するまでに球状突起が侵入した深さをmm単位で表した数値)にて評価した。
本発明のCu−Mg−P系銅合金板の製造方法は、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、仕上げ冷間圧延、テンションレベリングをこの順序で行う工程で前記銅合金板を製造するに際し、前記熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、前記冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施し、前記連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施し、テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2、ローラーレベラーのロールの表面粗さ(Ra);0.01〜0.10μmにて実施することを特徴とする。
また、特許文献6には、Cu−Mg−P系銅合金板の製造方法として、900℃〜300℃における熱間圧延として900℃〜600℃で最初の圧延パスを行った後に600℃未満〜300℃で圧延率40%以上の圧延を行い、次いで、圧延率85%以上で冷間圧延を行い、その後、400〜700℃における再結晶焼鈍と、圧延率20〜70%の仕上げ冷間圧延を順次行うことにより、銅合金板材を製造することが開示されている。
テンションレベリングとは、千鳥に並ぶロールに材料を通して繰り返し逆方向に曲げ加工するローラーレベラーに前後方向に張力を与えることにより、材料の平坦度を矯正する加工である。このテンションレベリングでは、材料に、バックテンション、ラインテンション、フロントテンションの張力が負荷される。バックテンションとは、アンコイラーと入側テンション負荷装置との間の材料に負荷される張力であり、ラインテンションとは、入側および巻取側テンション負荷装置によりローラーレベラー内の材料に負荷される張力であり、フロントテンションとはリコイラーと巻取側テンション負荷装置との間の材料に負荷される張力である。
図1に示すように、アンコイラー9に巻かれた銅合金板6は、テンションレベラ10の入側テンション負荷装置11を通過し、ローラーレベラー13により繰り返し曲げ加工されて銅合金板7となり、巻取側テンション負荷装置12を通過後、銅合金板8となりリコイラー14に巻き取られる。この際、バックテンションB1はアンコイラー9と入側テンション負荷装置11との間の銅合金板6に負荷される。ラインテンションLは入側テンション負荷装置11と巻取側テンション負荷装置12の間の銅合金板7に負荷される(ローラーレベラー13内では均一な張力である)。フロントテンションF1はリコイラー14と巻取側テンション負荷装置12との間の銅合金板8に負荷される張力である。
このラインテンションLと共に、ローラーレベラー13の各ロールの表面粗さ(Ra)が、銅合金の表面組織の緻密化に大きな影響を及ぼす。
(1)所定成分の銅合金を溶解・鋳造して銅合金鋳塊板を作製し、その銅合金鋳塊板の熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施することにより、{123}面及び{110}面と{100}面の回折強度比、結晶粒径が規定値内に収まる素地を作る(特に、{110}の形成を増長させる)。
(2)連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施することにより、焼鈍での再結晶化を極力抑えて、{100}面の形成を抑制して規定値内に収める。
(3)テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2で実施することにより、{110}面の形成を増加して規定値内に収め、ローラーレベラーのロールの表面粗さ(Ra);0.01〜0.10μmで実施することにより、ローラーレベラーローのロールと銅合金板との摩擦を抑えて、銅合金板のローラーレベラーのロールと接触している側の圧縮ひずみを大きくすることにより、銅合金板表面の組織を緻密化し、{123}面の形成を増加して規定値内に収め、結晶粒径も規定値内に収める。
これらの熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、テンションレベリングの製造条件の何れか一つが外れても、3つの条件(I1/I3、I2/I3、結晶粒径)を全て満たした機械的な成形性に優れたCu−Mg−P系銅合金板を得ることはできない。
また、各試料の結晶粒径は、銅合金板の板面(圧延面)を研磨した後にエッチンし、その面を光学顕微鏡で観察して、JISH0501の切断法により測定した。
その結果を表2に示す。
導電率は、JISH0505の導電率測定方法に従って測定した。
引張り強さは、LD(圧延方向)およびTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の引張試験用の試験片(JISZ2201の5号試験片)をそれぞれ5個ずつ採取し、それぞれの試験片についてJISZ2241に準拠した引張試験を行い、平均値によってLDおよびTDの引張強さを求めた。
応力緩和率は、幅12.7mm、長さ120mm(以下、この長さを120mmをL0とする)の寸法を持った試験片を使用し、この試験片を長さ:110mm、深さ:3mmの水平縦長溝を有する治具に前記試験片の中央部が上方に膨出するように湾曲セットし(この時の試験片の両端部の距離:110mmをL1とする)、この状態で温度:170℃にて1000時間保持し、加熱後、前記治具から取り外した状態に置ける前記試験片の両端部間の距離(以下、L2とする)を測定し、計算式:(L0−L2)/(L0−L1)×100%によって算出することにより求めた。
ばね限界値は、JIS−H3130に基づき、モーメント式試験により永久たわみ量を測定し、R.T.におけるKb0.1(永久たわみ量0.1mmに対応する固定端における表面最大応力値)を算出した。
次に、各試料の張り出し加工性を、JISZ2247A法により、エリクセン値にて評価した。
これらの結果を表3に示す。
この結果、引張り強さは510〜575N/mm2、ばね限界値は385〜389Kb0.1と高く、一方、応力緩和率は12〜18と低く、エリクセン値は8.8以上の高い値を有している。
一方、比較例1〜7は、I1/I3およびI2/I3の回折強度が何れも15.0未満であり、最大結晶粒径が10μmより大きく、粒径5μm以下の結晶粒の面積比率が75%未満である。このため、引張り強さは515N/mm2以下、ばね限界値は386Kb0.1以下であり、応力緩和率は比較例1を除き何れも20以上であり、このためエリクセン値は8.6以下にとどまる。
7 銅合金板
8 銅合金板
9 アンコイラー
10 テンションレベラ
11 入側テンション負荷装置
12 巻取側テンション負荷装置
13 ローラーレベラー
14 リコイラー
B1 バックテンション
F1 フロントテンション
L ラインテンショ
Claims (4)
- 質量%で、Mg:0.2〜1.2%、P:0.001〜0.2%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて圧延面に平行な表面の結晶面の回折強度分布(逆極点図形)を測定し、測定面積内の{123}面の回折強度をI1、{110}面の回折強度をI2、{100}面の回折強度をI3とした場合、I1/I3が15.0〜20.0であり、I2/I3が15.0〜20.0であり、測定面積内の結晶粒の粒径が10μm以下であり、粒径が5μm以下である結晶粒の面積比率が75%以上であることを特徴とするCu−Mg−P系銅合金板。
- 更に、0.0002〜0.0013質量%のCと、0.0002〜0.001質量%の酸素とを含有することを特徴とする請求項1に記載のCu−Mg−P系銅合金板。
- 更に、0.001〜0.03%質量%のZrを含有することを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載のCu−Mg−P系銅合金板。
- 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のCu−Mg−P系銅合金板の製造方法であって、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍、仕上げ冷間圧延、テンションレベリングをこの順序で行う工程で前記銅合金板を製造するに際し、前記熱間圧延を、圧延開始温度;700℃〜800℃、総熱間圧延率;80%以上、1パス当りの平均圧延率;15%〜30%にて実施し、前記冷間圧延を、圧延率;50%以上にて実施し、前記連続焼鈍を、温度;300℃〜550℃、時間;0.1分〜10分にて実施し、テンションレベリングを、ラインテンション;10N/mm2〜140N/mm2、ローラーレベラーのロールの表面粗さ(Ra);0.01〜0.10μmにて実施することを特徴とするCu−Mg−P系銅合金板の製造方法。
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