JP5188111B2 - アニリン誘導体、並びに、これを用いる試料中の定量すべき成分の定量方法、定量用試薬及び定量用キット - Google Patents
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Description
しかしながら、酸化発色剤を用いた色素の形成反応は、試料中に含まれるビリルビンなどの還元性物質の影響を受けやすいという問題点が存在する。還元性物質の影響を回避する方法としては、例えば、過剰の4−アミノアンチピリンを添加する方法、フェロシアン化カリウムを添加する方法等が知られている。
[1] 下記の一般式(I)
[3] R3が、置換若しくは非置換のアルコキシル基であり、R6が置換若しくは非置換のアルキル基である、[1]又は[2]に記載のアニリン誘導体又はその塩。
[5] 2−アミドエチル基が、2−(サクシニルアミノ)エチル基である、[4]に記載のアニリン誘導体又はその塩。
[6] R5が、水素原子である[1]〜[5]のいずれかに記載のアニリン誘導体又はその塩。
[9] 過酸化活性物質が、ペルオキシダーゼである、[7]又は[8]記載の定量方法。
[10] [1]〜[6]のいずれかに記載のアニリン誘導体又はその塩、カップラー、過酸化活性物質、及び、試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬を含有することを特徴とする試料中の定量すべき成分の定量用試薬。
[12]過酸化活性物質が、ペルオキシダーゼである[10]又は[11]記載の定量用試薬。
[13] 第1試薬及び第2試薬を含有する、試料中の定量すべき成分の定量用キットであって、[1]〜[6]のいずれかに記載のアニリン誘導体又はその塩が第1試薬に含有され、カップラーが第2試薬に含有され、過酸化活性物質、及び、試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬が、それぞれ第1試薬、第2試薬のいずれか又は両方に含有されることを特徴とする定量用キット。
[15] 過酸化活性物質が、ペルオキシダーゼである[13]又は[14]記載の定量用キット。
本発明の化合物(I)の具体例としては、N−[2−(サクシニルアミノ)エチル]−2−メトキシ−5−メチルアニリン(MASE)、N−エチル−N−[2−(サクシニルアミノ)エチル]−2−メトキシ−5−メチルアニリン(Et−MASE)等があげられる。
本定量方法における反応は、例えば10〜50℃で、好ましくは20〜40℃で、1〜60分間、好ましくは2〜30分間行う。化合物(I)の濃度は、0.05〜20mmol/Lが好ましく、0.1〜5mmol/Lがより好ましい。カップラーの濃度は、0.05〜20mmol/Lが好ましく、0.1〜5mmol/Lがより好ましい。また、過酸化活性物質の濃度は、過酸化活性物質としてペルオキシダーゼを使用する場合、1〜100kU/Lが好ましく、2〜50kU/Lがより好ましい。
本発明の定量すべき成分の定量方法において使用される試料としては、例えばヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液、ヒト若しくは動物の膵臓、肝臓等の臓器、毛髪、皮膚、爪、筋肉、又は神経組織等の抽出液、ヒト若しくは動物の糞便の抽出液又は懸濁液、細胞の抽出液、植物の抽出液等があげられる。
本発明におけるカップラーとしては、例えば4−アミノアンチピリン又はその誘導体、フェニレンジアミン誘導体、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)等があげられるが、4−アミノアンチピリンが好ましい。
酵素反応により直接過酸化水素に変換される成分としては、例えば1つの酵素反応により過酸化水素に変換されるようなオキシダーゼの基質等が挙げられる。本発明における、試料中の定量すべき成分を直接、過酸化水素に変換する試薬としては、例えば該オキシダーゼを含有する試薬等が挙げられる。
酵素反応により間接的に過酸化水素を生成させる成分としては、例えば2つ以上の反応により過酸化水素を生成させるような酵素等が挙げられる。本発明における、試料中の成分から間接的に過酸化水素を生成させる試薬としては、例えば該酵素の基質、該酵素と該基質との反応により生成する物質を対応するオキシダーゼが存在する物質へ変換する酵素又は酵素とその基質、及び、該オキシダーゼを含有する試薬等が挙げられる。
定量すべき成分が、オキシダーゼが作用する基質の場合は、該基質と該基質のオキシダーゼとの反応により過酸化水素を生成させることにより、該基質を直接過酸化水素に変換することができる。
定量すべき成分が、オキシダーゼが作用する基質でない場合には、該基質と、該基質と反応する酵素との反応により生成した物質を、対応するオキシダーゼが存在する物質へ変換した後、該対応するオキシダーゼが存在する物質と該オキシダーゼとの反応により過酸化水素を生成させることにより、該基質を間接的に過酸化水素に変換することができる。
試料中の定量すべき成分と、試料中の定量すべき成分を直接、過酸化水素に変換する試薬との組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせを挙げることができる。
・コリン:コリンオキシダーゼを含有する試薬
・尿酸:ウリカーゼを含有する試薬
・グルコース:グルコースオキシダーゼを含有する試薬
・ピルビン酸:ピルビン酸オキシダーゼを含有する試薬
・乳酸:乳酸オキシダーゼを含有する試薬
・グリセロール:グリセロールオキシダーゼを含有する試薬
・ザルコシン:ザルコシンオキシダーゼを含有する試薬
・アシルCoA:アシルCoAオキシダーゼを含有する試薬
・キサンチン:キサンチンオキシダーゼを含有する試薬
・フルクトシルアミノ酸:フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含有する試薬
・L−アスパラギン酸:L−アスパラギン酸オキシダーゼを含有する試薬
・遊離型コレステロール:コレステロールオキシダーゼを含有する試薬
・各種リポタンパク中の遊離型コレステロール:コレステロールオキシダーゼを含有する試薬
なお、各種リポタンパクとは、HDL、LDL、VLDL、IDL、レムナントリポタンパク、sdLDL等をいう。以下、同様である。
・コリンオキシダーゼ:コリンを含有する試薬
・尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ):尿酸を含有する試薬
・グルコースオキシダーゼ:グルコースを含有する試薬
・ピルビン酸オキシダーゼ:ピルビン酸を含有する試薬
・乳酸オキシダーゼ:乳酸を含有する試薬
・グリセロールオキシダーゼ:グリセロールを含有する試薬
・ザルコシンオキシダーゼ:ザルコシンを含有する試薬
・アシルCoAオキシダーゼ:アシルCoAを含有する試薬
・キサンチンオキシダーゼ:キサンチンを含有する試薬
・フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ:フルクトシルアミノ酸を含有する試薬
・モノアミンオキシダーゼ:アリルアミンを含有する試薬
・ポリアミンオキシダーゼ:ポリアミンを含有する試薬
・コレステロールオキシダーゼ:遊離型コレステロールを含有する試薬
・コレステロールオキシダーゼ:各種リポタンパク中の遊離型コレステロールを含有する試薬
試料中の定量すべき成分と、試料中の定量すべき成分を間接的に過酸化水素に変換する試薬との組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせを挙げることができる。
・クレアチニン:クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、及び、ザルコシンオキシダーゼを含有する試薬
・クレアチン:クレアチナーゼ、及び、ザルコシンオキシダーゼを含有する試薬
・シアル酸:ノイラミニダーゼ、N−アセチルノイラミン酸アルドラーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、及び、無機リンを含有する試薬
・総コレステロール(全てのリポタンパク中の遊離型コレステロールとエステル型コレステロールとを合わせたもの):コレステロールエステラーゼ、及び、コレステロールオキシダーゼを含有する試薬
・各種リポタンパク中のコレステロール(各種リポタンパク中の遊離型コレステロールとエステル型コレステロールとを合わせたもの):コレステロールエステラーゼ、及び、コレステロールオキシダーゼを含有する試薬
・総エステル型コレステロール(全てのリポタンパク中のエステル型コレステロール):コレステロールエステラーゼ、及び、コレステロールオキシダーゼを含有する試薬
・各種リポタンパク中のエステル型コレステロール:コレステロールエステラーゼ、及び、コレステロールオキシダーゼを含有する試薬
・総トリグリセライド:リポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ、及び、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼを含有する試薬
・各種リポタンパク中のトリグリセライド:リポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ、及び、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼを含有する試薬
・総トリグリセライド:リポプロテインリパーゼ、及び、グリセロールオキシダーゼを含有する試薬
・各種リポタンパク中のトリグリセライド:リポプロテインリパーゼ、及び、グリセロールオキシダーゼを含有する試薬
・デンプン:アミラーゼ、及び、グルコースオキシダーゼを含有する試薬
・マルトース:アミラーゼ、及び、グルコースオキシダーゼを含有する試薬
・リン脂質:ホスホリパーゼD、及び、コリンオキシダーゼを含有する試薬
・遊離脂肪酸:アシルCoAシンテターゼ、及び、アシルCoAオキシダーゼを含有する試薬
・無機リン酸:イノシン、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及び、キサンチンオキシダーゼを含有する試薬
・グリコアルブミン:プロテアーゼ、及び、ケトアミンオキシダーゼを含有する試薬
・HbA1c:プロテアーゼ、及び、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ若しくはフルクトシルペプチドオキシダーゼを含有する試薬
試料中の定量すべき成分と、試料中の定量すべき成分から間接的に過酸化水素を生成させる試薬との組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせを挙げることができる。
・コリンエステラーゼ:2,4−ジメトキシベンゾイルコリン、及び、コリンオキシダーゼを含有する試薬
・グアナーゼ:グアニン、キサンチンオキシダーゼ、及び、ウリカーゼを含有する試薬
・GOT:L−アスパラギン酸、α−ケトグルタル酸、オキザロ酢酸脱炭酸酵素、ピルビン酸オキシダーゼ、及び、無機リンを含有する試薬
・GPT:L−アラニン、α−ケトグルタル酸、ピルビン酸オキシダーゼ、及び、無機リンを含有する試薬
・N−アセチルグルコサミニダーゼ:p−ニトロフェニル−N−アセチルグルコサミニド、及び、N−アセチルグルコサミンオキシダーゼを含有する試薬
・ピルビン酸キナーゼ:ホスホエノールピルビン酸、ADP、及び、ピルビン酸オキシダーゼを含有する試薬
本発明の、試料中の定量すべき成分の定量用試薬は、化合物(I)、カップラー、過酸化活性物質、並びに、試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬を含有することを特徴とする。
第1試薬と第2試薬とからなる2試薬系の定量用キットにおいては、化合物(I)とカップラーとは別々の容器に収納されたキットの形態が好ましい。すなわち、化合物(I)が第1試薬に含有される場合には、カップラーは第2試薬に含有され、化合物(I)が第2試薬に含有される場合には、カップラーは第1試薬に含有される形態が好ましい。
本発明の定量用試薬及び定量キットにおけるカップラー、試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬、並びに、過酸化活性物質としては、それぞれ、前述のカップラー、前述の試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬、並びに、前述の過酸化活性物質が挙げられる。
本発明の試薬及びキットには、必要に応じて、水性媒体、安定化剤、防腐剤、干渉物質消去剤、反応促進剤、界面活性剤等が含有されてもよい。水性媒体としては、例えば脱イオン水、蒸留水、緩衝液等があげられるが、緩衝液が好ましい。緩衝液のpHとしては、pH4.0〜10.0であり、pH6.0〜8.0が好ましい。緩衝液に用いる緩衝剤としては、例えばリン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、グッドの緩衝剤等があげられる。
安定化剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シュークロース、塩化カルシウム、フェロシアン化カリウム、牛血清アルブミン(BSA)等があげられる。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、抗生物質等があげられる。干渉物質消去剤としては、例えばアスコルビン酸の影響を消去するためのアスコルビン酸オキシダーゼ等があげられる。反応促進剤としては、例えばコリパーゼ、ホスホリパーゼ等の酵素、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、等の塩類があげられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン(POE)系界面活性剤等が挙げられる。
尚、本実施例、比較及び試験例においては、下記メーカーの試薬及び酵素を使用した。
PIPES(同仁化学研究所社製)、HEPES(BDH ラボラトリー社製)、4−アミノアンチピリン(埼京化成社製)、EMSE{N−エチル−N−[2−(サクシニルアミノ)エチル]−3−メチルアニリン;ダイトーケミックス社製}、DOSE{N−[2−(サクシニルアミノ)エチル]−3,5−ジメトキシアニリン ナトリウム;ダイトーケミックス社製}、HDAOS[N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン ナトリウム;同仁化学研究所社製]、ATP・二ナトリウム塩(協和発酵工業社製)、硫酸ナトリウム(関東化学社製)、カチオンBB(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド;日本油脂社製)、デキストラン硫酸ナトリウム(分子量50万)(ファルマシア社製)、ウシ血清アルブミン(BSA;プロライアント社製)、フェロシアン化カリウム(関東化学社製)、アジ化ナトリウム(和光純薬工業社製)、エマルゲン709(POE高級アルコールエーテル;花王社製)、トリトンDF−16(POEオクチルフェニルエーテル;シグマ社製)、アデカトールPC−8(特殊フェノールエトキシレート;旭電化工業社製)、エマルゲンA−60(POEジスチレン化フェニルエーテル;花王社製)、エマルゲンA−90(POEジスチレン化フェニルエーテル;花王社製)、BLAUNON L205(POEラウリルアミン;青木油脂社製)、ペルオキシダーゼ(東洋紡績社製)、アスコルビン酸オキシダーゼ(旭化成社製)、リポプロテインリパーゼ(東洋紡社製)、グリセロールキナーゼ(東洋紡績社製)、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ(東洋紡績社製)、EST“Amano”2(コレステロールエステラーゼ;天野エンザイム社製)、CHO−PEL(コレステロールオキシダーゼ;キッコーマン社製)。
(1)N−{2−[N−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)アミノ]エチル}フタルイミド
2−メトキシ−5−メチルアニリン(25g;0.18mol;東京化成工業社製)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(100mL;東京化成工業社製)に、炭酸カリウム(37.8g;0.274mol;和光純薬工業社製)及びN−(2−ブロモエチル)フタルイミド(46.3g;0.182mol;東京化成工業社製)を加え、溶液を約110℃で2.5時間加熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、全体物を酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、N−{2−[N−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)アミノ]エチル}フタルイミドを含有する残渣(57g)を得た。
(2)N−(2−アミノエチル)−2−メトキシ−5−メチルアニリン
(1)で得た反応混合物(57g)をエタノール(100mL;和光純薬工業社製)に溶解し、ヒドラジン・1水和物(9.12g;0.182mol)を加え、混合液を約80℃で2時間加熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、5mol/Lの塩酸(200mL)を注ぎ、全体物を酢酸エチルで抽出した。抽出後の水層を氷冷後、5mol/Lの水酸化ナトリウム(250mL)をゆっくりと添加した。添加後、全体物をジエチルエーテルで抽出し、得られた抽出液を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。ジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、N−(2−アミノエチル)−2−メトキシ−5−メチルアニリンを含有する残渣(30g)を得た。
(3)N−[2−(サクシニルアミノ)エチル]−2−メトキシ−5−メチルアニリン(MASE)
(2)で得た反応混合物(30g)をジクロロメタン(100mL;和光純薬工業社製)に溶解し、無水コハク酸(16.6g;0.166mol;東京化成工業社製)を添加し、混合液を約60℃で2時間過熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、そこへ、5mol/Lの水酸化ナトリウム(200mL)を添加し、全体物をジクロロメタンで抽出した。抽出後の水層を氷冷し、5mol/Lの塩酸(250mL)をゆっくり注ぎ、全体物をジエチルエーテルで抽出した。抽出後のジエチルエーテル溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。ジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、N−[(2−サクシニルアミノ)エチル]−2−メトキシ−5−メチルアニリン(MASE)(40g;0.143mol;通算収率78%)を無色アメ状物質として得た。
(1)2−メトキシ−5−メチルトリフルオロアセトアニリド
約−20℃に冷却した2−メトキシ−5−メチルアニリン(25g;0.18mol;東京化成工業社製)のピリジン溶液(50mL;東京化成工業社製)に、無水トリフルオロ酢酸(50mL;0.36mol)を滴下し、混合物を室温(25℃)にて2時間攪拌した。反応混合液を氷水にゆっくりと注いだ後、全体物をジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、2−メトキシ−5−メチルトリフルオロアセトアニリドを含有する残渣(45g)を得た。
(2)1−[(N−エチル−N−トリフルオロアセチル)アミノ]−2−メトキシ−5−メチルベンゼン
(1)で得た2−メトキシ−5−メチルトリフルオロアセトアニリドを含有する残渣(45g)をアセトン(100mL;和光純薬工業社製)に溶解し、炭酸カリウム(37.8g;0.274mol;和光純薬工業社製)及びヨードエタン(30mL;0.37mol;東京化成工業社製)を加え、溶液を約110℃で2時間加熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、全体物を酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、1−[(N−エチル−N−トリフルオロアセチル)アミノ]−2−メトキシ−5−メチルベンゼンを含有する残渣(48g)を得た。
(3)2−メトキシ−5−メチル−N−エチルアニリン
(2)で得た1−[(N−エチル−N−トリフルオロアセチル)アミノ]−2−メトキシ−5−メチルベンゼンを含有する残渣(48g)をメタノール(100mL;和光純薬工業社製)に溶解し、炭酸カリウム(63g;0.46mol;和光純薬工業社製)を加え、溶液を室温(25℃)で5時間攪拌した。反応後、反応液を氷水に注ぎ、全体物をジエチルエーテルで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、2−メトキシ−5−メチル−N−エチルアニリンを含有する残渣(32g)を得た。この残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル:n−ヘキサン=10:1)で精製し、2−メトキシ−5−メチル−N−エチルアニリン(28g;収率93%)を淡黄オイル状物質として得た。
(4)N−{2−[N−エチル−N−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)アミノ]エチル}フタルイミド
(3)で得た2−メトキシ−5−メチル−N−エチルアニリン(28g;0.17mol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(100mL;東京化成工業社製)に、炭酸カリウム(35.1g;0.254mol;和光純薬工業社製)及びN−(2−ブロモエチル)フタルイミド(43.1g;0.170mol;東京化成工業社製)を加え、溶液を約110℃で2.5時間加熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、全体物を酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、N−{2−[N−エチル−N−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)アミノ]エチル}フタルイミドを含有する残渣(58g)を得た。
(5)N−(2−アミノエチル)−N−エチル−2−メトキシ−5−メチルアニリン
(4)で得た反応混合物(58g)をエタノール(100mL;和光純薬工業社製)に溶解し、ヒドラジン・1水和物(8.5g;0.17mol)を加え、混合液を約80℃で2時間加熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、5mol/Lの塩酸(200mL)を注ぎ、全体物を酢酸エチルで抽出した。抽出後の水層を氷冷後、5mol/Lの水酸化ナトリウム(250mL)をゆっくりと添加した。添加後、全体物をジエチルエーテルで抽出し、得られた抽出液を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。ジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、N−(2−アミノエチル)−N−エチル−2−メトキシ−5−メチルアニリンを含有する残渣(30g)を得た。
(6)N−エチル−N−[2−(サクシニルアミノ)エチル]−2−メトキシ−5−メチルアニリン(Et−MASE)
(5)で得た反応混合物(30g)をジクロロメタン(100mL;和光純薬工業社製)に溶解し、無水コハク酸(14.4g;0.144mol;東京化成工業社製)を添加し、混合液を約60℃で2時間過熱した。反応後、溶液を室温にまで放冷後、反応液を氷水に注ぎ、そこへ、5mol/Lの水酸化ナトリウム(200mL)を添加し、全体物をジクロロメタンで抽出した。抽出後の水層を氷冷し、5mol/Lの塩酸(250mL)をゆっくり注ぎ、全体物をジエチルエーテルで抽出した。抽出後のジエチルエーテル溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。ジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)で乾燥後、硫酸ナトリウムをろ過により除去し、ろ液を減圧下で留去し、N−エチル−N−[(2−サクシニルアミノ)エチル]−2−メトキシ−5−メチルアニリン(Et−MASE)[40 g;0.13 mol;(4)〜(6)の通算収率77%]を無色アメ状物質として得た。
以下の第1試薬(試薬A)及び第2試薬(試薬a)からなる総トリグリセライド測定用キットを調製した。
第1試薬(試薬A)
PIPES(pH6.25) 50 mmol/L
MASE 0.3 g/L
ATP・二ナトリウム塩 2.5 g/L
グリセロールキナーゼ 1 kU/L
グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ 8 kU/L
アスコルビン酸オキシダーゼ 3 kU/L
エマルゲン709 0.1%
トリトンDF−16 0.067%
アデカトールPC−8 0.1%
第2試薬(試薬a)
PIPES(pH6.25) 10 mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.5 g/L
ペルオキシダーゼ 20 kU/L
リポプロテインリパーゼ 1 kU/L
エマルゲンA−60 0.30%
エマルゲンA−90 0.35%
比較例1
以下の第1試薬(試薬B)及び第2試薬(試薬a)からなる総トリグリセライド測定用キットを調製した。
第1試薬(試薬B)
PIPES(pH6.25) 50 mmol/L
EMSE 0.3 g/L
ATP・二ナトリウム塩 2.5 g/L
グリセロールキナーゼ 1 kU/L
グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ 8 kU/L
アスコルビン酸オキシダーゼ 3 kU/L
エマルゲン709 0.1%
トリトンDF−16 0.067%
アデカトールPC−8 0.1%
第2試薬(試薬a)
PIPES(pH6.25) 10 mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.5 g/L
ペルオキシダーゼ 20 kU/L
リポプロテインリパーゼ 1 kU/L
エマルゲンA−60 0.30%
エマルゲンA−90 0.35%
比較例2
以下の第1試薬(試薬C)及び第2試薬(試薬a)からなる総トリグリセライド測定用キットを調製した。
第1試薬(試薬C)
PIPES(pH6.25) 50 mmol/L
DOSE 0.3 g/L
ATP・二ナトリウム塩 2.5 g/L
グリセロールキナーゼ 1 kU/L
グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ 8 kU/L
アスコルビン酸オキシダーゼ 3 kU/L
エマルゲン709 0.1%
トリトンDF−16 0.067%
アデカトールPC−8 0.1%
第2試薬(試薬a)
PIPES(pH6.25) 10 mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.5 g/L
ペルオキシダーゼ 20 kU/L
リポプロテインリパーゼ 1 kU/L
エマルゲンA−60 0.30%
エマルゲンA−90 0.35%
実施例3のキットを用いて、以下の手順により試料中の総トリグリセライドを定量した。
(1)検量線の作成
標準液として、生理食塩水(総トリグリセライド濃度:0.0mg/dL)及び血清(総トリグリセライド:228.0mg/dL)を用いて、実施例3のキットを用いて、日立7170S形自動分析装置により測定し、総トリグリセライド濃度と「吸光度」との間の関係を示す検量線を作成した。
反応セルへ標準液(2.5μL)と第1試薬(0.15mL)とを添加し37℃で5分間加温し、反応液の吸光度(E1)を主波長600nm、副波長700nmで測定し、次いで、この反応液に第2試薬(0.05mL)を添加しさらに37℃で5分間加温し、反応液の吸光度(E2)を主波長600nm、副波長700nmで測定した。
(2)ヒト血清検体における「吸光度」の測定
(1)の検量線の作成において用いた標準液の代わりにヒト血清検体(50検体)を用いる以外は(1)の「吸光度」の算出方法と同様の方法により、それぞれの検体に対して、「吸光度」を測定した。
(3)ヒト血清検体中の総トリグリセライド濃度の決定
(2)で測定した「吸光度」と、(1)で作成した検量線とから、各検体中の総トリグリセライド濃度を決定した。
以下の第1試薬(試薬D)及び第2試薬(試薬b)からなるHDL−C測定用キットを調製した。
第1試薬(試薬D)
HEPES(pH7.6) 50 mmol/L
BSA 2 g/L
硫酸ナトリウム 5 g/L
デキストラン硫酸ナトリウム 1 g/L
カチオンBB 0.12 g/L
ペルオキシダーゼ 10 kU/L
MASE 0.3 g/L
第2試薬(試薬b)
MES(pH6.7) 50 mmol/L
BLAUNON L205 0.16 g/L
4−アミノアンチピリン 0.3 g/L
フェロシアン化カリウム 0.03 g/L
ペルオキシダーゼ 20 kU/L
CHO−PEL 1 kU/L
EST“Amano”2 100 kU/L
BSA 2 g/L
比較例3
以下の第1試薬(試薬E)及び第2試薬(試薬b)からなるHDL−C測定用キットを調製した。
第1試薬(試薬E)
HEPES(pH7.6) 50 mmol/L
BSA 2 g/L
硫酸ナトリウム 5 g/L
デキストラン硫酸ナトリウム 1 g/L
カチオンBB 0.12 g/L
ペルオキシダーゼ 10 kU/L
EMSE 0.3 g/L
第2試薬(試薬b)
MES(pH6.7) 50 mmol/L
BLAUNON L205 0.16 g/L
4−アミノアンチピリン 0.3 g/L
フェロシアン化カリウム 0.03 g/L
ペルオキシダーゼ 20 kU/L
CHO−PEL 1 kU/L
EST“Amano”2 100 kU/L
BSA 2 g/L
実施例5のキットを用いて、以下の手順により試料中のHDL−Cを定量した。
(1)検量線の作成
標準液として、生理食塩水(HDL−C:0mg/dL)及び血清(HDL−C:78.0mg/dL)を、実施例5のキットを用いて、日立7170S形自動分析装置により、HDL−C濃度と「吸光度」との間の関係を示す検量線を作成した。
反応セルへ標準液(2.0μL)と第1試薬(0.15mL)とを添加し37℃で5分間加温し、反応液の吸光度(E1)を主波長540nm、副波長700nmで測定し、次いで、この反応液に第2試薬(0.05mL)を添加しさらに37℃で5分間加温し、反応液の吸光度(E2)を主波長540nm、副波長700nmで測定した。
(2)ヒト血清検体における「吸光度」の測定
(1)の検量線の作成において用いた標準液の代わりにヒト血清検体(40検体)を用いる以外は(1)の「吸光度」の算出方法と同様の方法により、それぞれの検体に対して、「吸光度」を測定した。
(3)ヒト血清検体中のHDL−C濃度の決定
(2)で測定した「吸光度」と、(1)で作成した検量線とから、各検体中のHDL−C濃度を決定した。
試験例1 ビリルビンの影響
実施例3及び比較例1のキットを用いて、以下の手順により、色原体によるビリルビンの影響抑制効果の相違を比較、検討した。
(1)ビリルビン添加試料の調製
ヒト血清(8mL)に、ビリルビン濃度が200mg/dLの干渉チェックA・ビリルビンC(国際試薬社製)(2mL)を混合し、ビリルビン添加試料(ビリルビンC:40mg/dL)を調製した。
(2)対照試料の調製
(1)で用いたヒト血清(8mL)と純水(2mL)とを混合して、対照試料を調製した。
(3)ビリルビンの影響
定量キットとして、実施例3及び比較例1のキットを用いて、検体として、(1)のビリルビン添加試料及び(2)の対照試料を用いて、実施例4に記載の方法と同様の方法により、それぞれの検体中の総トリグリセライド濃度を決定した。その結果を第2表に示す。
試験例2 アジ化ナトリウムに起因する試薬の着色
アジ化水素の発生源であるアジ化ナトリウム含有試薬及び本発明の測定キットの組み合わせにおける、気化して発生するアジ化水素の溶け込みによる測定試薬の発色、劣化の程度を確認した。
(1)アジ化ナトリウム含有試薬の調製
以下の成分からなるアジ化ナトリウム含有溶液を調製した。
アジ化ナトリウム 0.5 g/L
(2)試薬の保存
実施例3で調製した試薬A及び比較例2で調製した試薬Cを、それぞれ試料カップ(自動分析機使用)に分注し、(1)で調製したアジ化ナトリウム含有試薬を底面に散布したフリージングラックに静置した状態で、ポリ袋(26.0mm×16.5mm;チャック付き)に入れ、チャックを閉めて密封し、10℃にて10日間保存した。なお、各試料カップの口に栓はしなかった。
(3)保存試薬の安定性の判定
保存開始時及び保存10日後に、試薬A及び試薬Cが発色しているか否かを試薬の吸収スペクトルを測定して判定した。
(4)安定性の判定結果
アジ化ナトリウム含有試薬の無い状態で保存した各試薬を対照として、アジ化ナトリウム含有試薬の存在下で保存した各試薬の500nmにおける吸光度を測定した結果を第3表に示す。
以上から、本発明の化合物(I)を含有する定量用試薬では、アジ化ナトリウム含有試薬から気化して発生するアジ化水素が本発明の測定試薬に溶け込んでも試薬の劣化を防ぐことが出来ることが示された。
試験例3 ビリルビンの影響
実施例5及び比較例3のキットを用いて、以下の手順により、色原体によるビリルビンの影響抑制効果の相違を比較、検討した。
(1)ビリルビン添加試料の調製
ヒト血清(7mL)に、ビリルビン濃度が200mg/dLの干渉チェックA・ビリルビンC(国際試薬社製)(3mL)を混合し、ビリルビン添加試料(ビリルビンC:60mg/dL)を調製した。
(2)対照用試料の調製
(1)で用いたヒト血清(7mL)と純水(3mL)とを混合して、対照試料を調製した。
(3)ビリルビンの影響
定量キットとして、実施例5及び比較例3のキットを用いて、検体として、(1)のビリルビン添加試料及び(2)の対照試料を用いて、実施例6に記載の方法と同様の方法により、それぞれの検体中のHDL−C濃度を決定した。ただし、比較例3のキットを用いた測定においては、測定波長の主波長を600nmとした。その結果を第4表に示す。
Claims (12)
- 下記の一般式(I)
- アルカノイルアミノ置換アルキル基が、2−(アルカノイルアミノ)エチル基である、請求項1記載のアニリン誘導体又はその塩。
- 2−(アルカノイルアミノ)エチル基が、2−(サクシニルアミノ)エチル基である、請求項2記載のアニリン誘導体又はその塩。
- 試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換し、又は、試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させ、過酸化活性物質の存在下、該過酸化水素を、請求項1〜3のいずれかに記載のアニリン誘導体又はその塩、及び、カップラーと反応させ、生成する色素を測定することを特徴とする試料中の定量すべき成分の定量方法。
- カップラーが、4−アミノアンチピリンである、請求項4記載の定量方法。
- 過酸化活性物質が、ペルオキシダーゼである、請求項4又は5記載の定量方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のアニリン誘導体又はその塩、カップラー、過酸化活性物質、及び、試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬を含有することを特徴とする試料中の定量すべき成分の定量用試薬。
- カップラーが、4−アミノアンチピリンである請求項7記載の定量用試薬。
- 過酸化活性物質が、ペルオキシダーゼである請求項7又は8記載の定量用試薬。
- 第1試薬及び第2試薬を含有する試料中の定量すべき成分の定量用キットであって、請求項1〜3のいずれかに記載のアニリン誘導体又はその塩が第1試薬に含有され、カップラーが第2試薬に含有され、過酸化活性物質、及び、試料中の定量すべき成分を直接若しくは間接的に過酸化水素に変換する試薬又は試料中の定量すべき成分から直接若しくは間接的に過酸化水素を生成させる試薬が、それぞれ第1試薬、第2試薬のいずれか又は両方に含有されることを特徴とする定量用キット。
- カップラーが、4−アミノアンチピリンである請求項10記載の定量用キット。
- 過酸化活性物質が、ペルオキシダーゼである請求項10又は11に記載の定量用キット。
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