JP5181152B2 - サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
サーマルヘッドの高効率化においては、発熱抵抗体の下層に断熱層を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。発熱抵抗体で発生した熱量のうち、発熱抵抗体上方の耐摩耗層に伝達される上方伝達熱量の方が発熱抵抗体下方の絶縁基板に伝達される下方伝達熱量よりも大きくなるので、印字時に必要とされるエネルギー効率が良好となる。
また、基板とアンダーコートとの接合面積が大きくなってしまうので、アンダーコートと基板との間に接着不良箇所が発生し、基板とアンダーコートとが製造工程の途中で剥がれて、歩留まりが低くなってしまうおそれもあった。
本発明に係るサーマルヘッドの製造方法は、支持基板の表面に、空洞部となり得る凹部を間隔をあけて複数加工する工程と、前記支持基板の表面の、前記凹部の配列方向に沿って、複数個の凹部を跨ぐ領域毎に、凹所を加工する工程と、前記凹所内に、薄板ガラスからなる絶縁被膜をそれぞれ載置する工程と、前記支持基板と前記絶縁被膜とを接合する工程と、前記支持基板に接合された前記絶縁被膜上の前記凹部に対向する位置に発熱抵抗体を形成する工程とを備えている。
また、絶縁被膜を支持基板の表面全体に形成させていた従来の製造方法に比べて、支持基板と絶縁被膜との接合面積を大幅に低減させることができるので、絶縁被膜と支持基板との間に発生する接着不良箇所を低減させることができ、支持基板と絶縁被膜とが製造工程の途中で剥がれてしまうことを防止することができて、高い歩留まりを確保することができる。
図1は本実施形態に係る発熱抵抗素子部品の製造方法により製造された発熱抵抗素子部品であるサーマルヘッドの平面図であり、保護膜を取り除いた状態を示す図、図2は図1のII−II矢視断面図、図3(A)から図3(C)は本実施形態に係る発熱抵抗素子部品の製造方法を説明するための工程図、図4は本実施形態に係る発熱抵抗素子部品の製造方法を説明するための図であって、図3(B)の工程を上方から見た平面図である。
図2に示すように、サーマルヘッド1は、支持基板(以下、「基板」という。)2と、基板2の上に形成されたアンダーコート(絶縁皮膜)3とを備えている。また、図1および図2に示すように、アンダーコート3の上には複数の発熱抵抗体4が一方向に間隔をあけて形成され、発熱抵抗体4には配線5が接続されている。配線5は、発熱抵抗体4の配列方向に直交する印刷対象物送り方向(搬送方向:配列方向)の一端に接続される共通配線5aと、他端に接続される個別配線5bとから構成されている。さらに、図2に示すように、サーマルヘッド1は、発熱抵抗体4および配線5の上面を被覆する保護膜6を備えている。
なお、発熱抵抗体4が実際に発熱する部分(以下、「発熱部」という。)は、配線5と重ならない部分である。
凹部8は発熱抵抗体4毎に空洞部(中空断熱層)7を形成するように設けられており、凹部8と凹部8との間はドット間隔壁9で隔てられている(仕切られている)。そして、凹部8の底面(基板2の表面に平行な面)および壁面(基板2の表面と直交する面)と、アンダーコート3の裏面(図2において下側の面)とで形成される(密閉される)空間は、それぞれ空洞部7を構成している。
また、基板2の表面に、複数の凹部8が形成されることにより、凹部8と凹部8との間に位置するドット間隔壁9の表面(図2において上側の面)全体がアンダーコート3の裏面と接触することとなる。すなわち、凹部8と凹部8とは、ドット間隔壁9によって区画される(仕切られる)こととなる。
まず、図3(A)に示すように、一定の厚さを有する基板2の表面の、発熱抵抗体4が形成される領域毎に、空洞部7を形成する凹部8を加工する。基板2の材料としては、例えば、ガラス基板、単結晶シリコン基板等が用いられる。また、基板2の厚みは、300μm〜1mm程度である。
凹部8は、例えば、基板2の表面に、サンドブラスト、ドライエッチング、ウェットエッチング、レーザー加工等を施すことによって形成される。
エッチングによる加工を施す場合には、同様に、基板2の表面に凹部8を形成する領域にエッチング窓が形成されたエッチングマスクを形成し、この状態で、基板2の表面にエッチングを施すことで、所定深さの凹部8を得る。このエッチング処理には、単結晶シリコンの場合、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、KOH溶液、フッ酸と硝酸の混合液によるエッチング液等によるウェットエッチングが、また、ガラス基板の場合、フッ酸系のエッチング液等を用いたウェットエッチングが行われる。そのほか、リアクティブイオンエッチング(RIE)やプラズマエッチング等のドライエッチングが用いられる。
なお、ガラスからなる基板2と薄板ガラスからなるアンダーコート3とを接合する場合は、接着層を用いない熱融着で接合する。ガラスからなる基板2と薄板ガラスからなるアンダーコート3との接合処理は、ガラスからなる基板2および薄板ガラスからなるアンダーコート3の徐冷点以上で、かつ、軟化点以下の温度で行われる。そのため、基板2およびアンダーコート3の形状精度を保つことができ、信頼性が高い。
ここで、図5に示すような方法で、ある寸法(長さL(mm)、幅B(mm)、および板厚t(mm))を有する薄板ガラスの長手方向中央部に0.1(N)の荷重Pを加え、その薄板ガラスが割れるか否かの3点曲げ試験を行った。図6はその試験結果を示す図表であり、図6中のσは式3PL/2Bt2により得られる発生応力(MPa)、判定「○」は薄板ガラスが割れなかったこと、判定「×」は薄板ガラスが割れてしまったことを示している。そして、図6から、σの値が1000以下であれば薄板ガラスは割れず、1000を超えると薄板ガラスは割れると考えられる。
したがって、凹所10内に載置される(嵌め込まれる)アンダーコート3の寸法としては、σ≦1000の条件(より好ましくは、σ≦500の条件)を満たす必要がある。
なお、EL−L=0.1(mm)、EB−B=0.1(mm)であれば、アンダーコート3は凹所10内にがたつきなくすっぽりと嵌り込むこととなり、0.1(mm)<EL−L≦0.4(mm)、0.1(mm)<EB−B≦0.4(mm)であれば、多少のがたつき(ずれ)はあるものの何ら問題なく製造することができることとなる。
これら発熱抵抗体4、個別配線5b、共通配線5a、保護膜6は、従来のサーマルヘッドにおけるこれら部材の製造方法を用いて作製することができる。具体的には、スパッタリングやCVD(化学気相成長法)、蒸着等の薄膜形成法を用いて絶縁皮膜上にTa系やシリサイド系等の発熱抵抗体材料の薄膜を成膜し、この発熱抵抗体材料の薄膜をリフトオフ法やエッチング法等を用いて成形することにより所望の形状の発熱抵抗体を形成する。
同様に、アンダーコート3の上に、Al、Al−Si、Au、Ag、Cu、Pt等の配線材料をスパッタリングや蒸着法等により成膜してこの膜をリフトオフ法、もしくはエッチング法を用いて形成したり、配線材料をスクリーン印刷した後に焼成する等して、所望の形状の個別配線5bおよび共通配線5aを形成する。
このようにして発熱抵抗体4、個別配線5b、および共通配線5aを形成した後、アンダーコート3の上にSiO2、Ta2O5、SiAlON、Si3N4、ダイヤモンドライクカーボン等の保護膜材料をスパッタリング、イオンプレーティング、CVD法等により成膜して、保護膜6を形成する。
また、本実施形態に係るサーマルヘッド1の製造方法によれば、凹所10内に、凹所10よりも小さい(例えば、一回り小さい)薄板ガラスからなるアンダーコート3が一枚ずつ嵌め入れられることとなるので、従来の製造方法で必要とされていた基板2とアンダーコート3との精確な位置合わせおよび位置ずれ防止のための仮固定を不要とすることができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
さらに、本実施形態に係るサーマルヘッド1の製造方法によれば、アンダーコート3を基板2の表面全体に形成させていた従来の製造方法に比べて、基板2とアンダーコート3との接合面積を大幅に低減させることができるので、アンダーコート3と基板2との間に発生する接着不良箇所を低減させることができ、基板2とアンダーコート3とが製造工程の途中で剥がれてしまうことを防止することができて、高い歩留まりを確保することができる。
図8は本実施形態に係るサーマルヘッドの製造方法を説明するための図であって、図3(B)の工程に対応する工程を上方から見た平面図である。
図8に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッドの製造方法では、基板2の表面に、凹部8の配列方向に沿って、四製品分に対応する複数個(本実施形態では52個)の凹部8を跨ぐ領域毎に、平面視矩形状(本実施形態では長方形状)の凹所20が形成される段階を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の点については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその他の点についての説明は省略する。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
図9は本実施形態に係るサーマルヘッドの製造方法を説明するための図であって、図3(B)の工程に対応する工程を上方から見た平面図である。
図9に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッドの製造方法では、基板2の表面に、凹部8の配列方向および搬送方向(配列方向と直交する方向)に沿って、八製品分に対応する複数個(本実施形態では104個)の凹部8を跨ぐ領域毎に、平面視矩形状(本実施形態では長方形状)の凹所30が形成される段階を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の点については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその他の点についての説明は省略する。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
例えば、上述した実施形態では、基板2の表面に凹部8を形成した後、凹所10,20,30を形成させるものについて説明したが、凹所10,20,30を形成した後、凹部8を形成させるようにしてもよい。
2 基板(支持基板)
3 アンダーコート(絶縁被膜)
7 空洞部
8 凹部
10 凹所
20 凹所
30 凹所
Claims (2)
- 支持基板の表面に、空洞部となり得る凹部を間隔をあけて複数加工する工程と、
前記支持基板の表面の、前記凹部の配列方向に沿って、複数個の凹部を跨ぐ領域毎に、凹所を加工する工程と、
前記凹所内に、薄板ガラスからなる絶縁被膜をそれぞれ載置する工程と、
前記支持基板と前記絶縁被膜とを接合する工程と、
前記支持基板に接合された前記絶縁被膜上の前記凹部に対向する位置に発熱抵抗体を形成する工程とを備えているサーマルヘッドの製造方法。 - 前記凹所の長さEL(mm)から前記絶縁被膜の長さL(mm)をひいた値、および前記凹所の幅EB(mm)から前記絶縁被膜の幅B(mm)をひいた値が、それぞれ0.1〜0.4(mm)となるように、前記凹所の長さEL(mm)および前記凹所の幅EB(mm)を設定した請求項1に記載のサーマルヘッドの製造方法。
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