JP5176124B2 - 塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、海藻を利用した塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、当該システムによって生産された非成熟性の紅藻類大型海藻、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を使用して生産された外洋性生物、及び塩水中の栄養塩類の濃度低減装置に関する。なお、本発明でいう塩水とは、海藻を生育可能であればよく海水と汽水を含む。
魚類養殖場は、窒素、リンなどの重要な汚染負荷源であるが、その水質浄化技術は未確立である。
従来の魚類養殖では、過剰投与された肥料による沿岸の富栄養化(水質汚染)を引き起こしていた。その後、肥料の改良が行われ、肥料由来の沿岸富栄養化はずいぶん低減されてきている。大豆など植物性の餌の開発や、生餌からモイストペレットへの餌料の転換などがその改良例である(非特許文献1)。しかし、魚類からの排泄物が依然沿岸海域の汚染原因として残っている。魚類からの排泄物として環境に負荷される窒素・リンが富栄養化を引き起こす。
配合飼料を魚に与えた場合、約30%が魚体の増重量として同化され、残り約70%は溶解成分(60%)と沈殿成分(10%)として魚から糞や尿として排泄され、環境に負荷される。配合飼料には約7%の窒素が含まれていることから、養殖場から海への窒素の負荷量は、約900万人分のし尿や雑排水中の全窒素量の排出量に相当すると見積もられる(海面養殖魚類収穫量:268,000トン/年、必要な配合飼料:804,000トン/年、窒素排出量:39,400トン/年、1991年)。この値は、環境基準法(生活環境項目海域4類型)の全窒素基準値が1mg/リットル以下であることから考えても高い値である。ある下水処理場排水の高濃度栄養塩類濃度が処理前で無機態窒素10〜20mg/リットルである。養殖場の水質浄化に関して決め手になる技術はなく、現在その技術の確立が早急に求められている(非特許文献2)。
一方、近年のBSE(いわゆる狂牛病)や鳥インフルエンザの流行により、陸上家畜の食糧としての安全性への低下が起こっており、食糧確保のための魚類収穫量増産手段として沿岸魚類養殖は重要性を増してきている。そのため、魚類からの排泄物による沿岸海域汚染の高効率防止技術の構築が早急に求められている。
魚類養殖場の窒素、リンの浄化技術として好気性微生物、嫌気性微生物や微細藻類等を用いた研究が検討されてきたが、いずれも成功していない。好気性微生物はアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変える「硝化処理」に利用されている微生物であるが、硝酸態窒素の除去は出来ない。硝酸態窒素の除去(脱窒処理)は嫌気性微生物により可能であるが、脱窒処理工程では有機物の添加や嫌気性条件の制御など操作が煩雑で普及していない。微細藻類は光照射下で生長が加速され多量の窒素、リンを吸収できるが、増殖した微細藻類を回収し塩水中から取り出すことが難しい。これらの生物に共通していることは、窒素、リンの吸収速度は速いが、環境中への再変換速度も速いことである。魚類養殖場の窒素、リンの除去には環境からこれら汚染物質を取り上げて陸上へ長時間にわたって隔離することが大切である。
一方、大型海藻による窒素、リンの除去量(例えば、ある種の紅藻類オゴノリでは海藻湿重量1kgの硝酸態窒素に対する日最大負荷許容量は0.12g程度である)は海洋学
的見地からは少ない。しかし、富栄養化海水で海藻は大量培養(窒素、リンの吸収材料として使用)後、増殖した藻体を海から陸へ上げることで、養殖場の窒素、リンを分離除去することができる。この観点に立って、魚類養殖場の富栄養化された塩水を生物で浄化する技術の分野では、現在大型海藻を用いた窒素、リンの浄化技術に注目が集まっている。大型海藻を用いた研究としては、網生け簀養殖場システム(開放型システム:負荷削減効果5%)、循環―換水型システム(イスラエル方式など:負荷削減効果50%未満)、閉鎖循環式システム(環境負荷なし)などが研究されてきている。
水中の栄養塩類除去すなわち水質浄化を目的とした海藻水槽を海藻バイオフィルターと呼ぶことがある。なお、本明細書では、水中の栄養塩類を海藻が吸収するための海藻の入った水槽あるいは装置を栄養塩類低減槽、栄養塩類の濃度低減装置、あるいは栄養塩類吸収槽ともいう。また、海藻が塩水中の栄養塩類を低減する過程で、海藻が増殖することから、本明細書では、水中の栄養塩類を海藻が吸収するための海藻の入った水槽あるいは装置を海藻培養槽、あるいは海藻培養装置ともいう。
網生け簀養殖場システム(開放型システム)は、洋上養殖のため海藻の生産量増加、酸素供給ならびに海面の有効利用の観点から見ると評価できるが、魚類養殖由来の栄養塩類の負荷削減効果は低く、窒素では5%程度しかできない。
循環―換水型システムに緑藻類アオサを導入した海藻バイオフィルターを利用することよる養殖排水の負荷量は最大でも50%までしか削減できない。これは養魚池の物質収支、緑藻類アオサの生長および窒素吸収能力に関する知見をもとに合理的な手法で設計したイスラエルシステムでの値である。
近年多く研究されているのは閉鎖循環式システムであり、このシステムでは環境への負荷は生じない。紅藻類オゴノリを導入した海藻バイオフィルターを装備した閉鎖式循環式魚類飼育システムで飼育水中の窒素とリンの濃度上昇を抑制した例が報告されている。しかしこの方式では、海藻バイオフィルターに導入するオゴノリとして、養殖放養量の10倍近い藻体が必要となり、脱窒プロセスと比較してかなり大型の飼育システムが必要となる欠点がある。メジナ6匹(150g)による栄養塩放出を食い止めるために、約1kgのオゴノリが必要であった。10日間のシステム稼働でオゴノリの重量は約100g増加した。増殖した海藻の使用方法を考案しないと、海藻が廃棄物として貯まってしまうという欠点がある。緑藻類アオサでの実験も報告されている。
最近、緑藻類アオサを導入した海藻バイオフィルターを装備した閉鎖循環式システム(泡沫分離・硝化システム)が開発され、90〜150日間、換水なしでヒラメの養殖に成功している。ヒラメの重量増加などのデータは報告されていない。この報告ではヒラメ飼育水をその中の窒素、リン濃度を低減して再度ヒラメ水槽に循環している。海水中には、生物の増殖を促進する微量成分が含まれている。この方法では、生物によって使用されたこれら微量成分の補給は出来ない。したがって海水を供給した養殖方法に比べて、魚類の成長や海藻の生長が遅いと考えられる。このことが、海藻の生長を遅くし、バイオフィルターへ導入する海藻必要量を押し上げ、最終的にシステムを大型化させている一因と考えられている。
海面養殖から閉鎖的システムへの魚類養殖の全面的移行を提唱している研究者もいるが、食糧供給事情を考慮すると海面養殖を避けることは出来ない。また、閉鎖循環式システムはコストが高くなる。
そこで、海水供給型システムで魚類由来の富栄養化海水の負荷が低減できるシステムの開発が求められている。
海藻バイオフィルターに導入するのに適した海藻とは、高栄養塩類濃度(高硝酸イオン濃度、高アンモニウムイオン濃度、高リン酸イオン濃度など)に耐性で、栄養塩類吸収能に優れ、藻体が丈夫で大量培養が容易で、環境状態が変化しても藻体のステージのままで栄養増殖することが求められる。海藻が増殖を続けている間は栄養塩類の吸収が行われる。これまで、養殖場の浄化あるいは養殖廃水の処理目的として検討されてきた海藻として紅藻類ツノマタやオゴノリ、褐藻類コンブや緑藻類アオサが例に挙げられる。これらは栄養塩類吸収能の高い大型海藻であり、その中で圧倒的に緑藻類アオサの研究例が多い。
上記条件に加えて、海藻バイオフィルターに導入し使用する海藻として最も重要なことは、海藻自体が有用種であり、生態系リサイクルが可能でなければならないことである。生態系リサイクルとは、魚類が養殖槽内で稚魚から成魚まで飼育された後、食用として捕獲され養殖槽内が一時空になるのと同様に、海藻も海藻バイオフィルターへ導入された若い藻体が、塩水中の栄養塩類の吸収、水質浄化に伴い増殖した後、収穫され食用、医薬品、魚類や家畜の餌料などへ有効利用され、海藻バイオフィルター内を一時空にすることができることである。魚類由来の栄養塩を海藻が吸収するという生態系の一部で起こっている現象を、塩水中の栄養塩類の濃度低減に有効に利用しているのであり、塩水中の栄養塩類を吸収して増殖した海藻が廃棄物として余ってしまえば本システムでの生態系利用サイクルが滞ってしまう。海藻が死んで腐敗すれば、海藻自身が水質汚染の源になってしまう。そのため、この生態系リサイクルによる水質浄化には増殖した海藻が有用種であり、その利用法が確立されていることが非常に重要である。以上の条件を満足した海藻は今まで見つかっていなかった。富栄養海域で大繁殖する不稔性アオサ(成熟しにくいアオサ)は、優れた水質浄化能力を備えているが、有効利用法については未だ産業的実用化に至っていない。
そこで、現在、海藻バイオフィルターに導入し使用する海藻として生態系リサイクルが達成可能な海藻が必要となっている。
前述した緑藻類アオサ属海藻には、海藻バイオフィルターに導入し使用する海藻としての観点から、以下の欠点が指摘されている。
緑藻類アオサ属海藻は、フラットな形状、膜状をしており以下の(1)〜(4)の欠点を有している。(1)膜状なので、多層重ねて培養できない。(2)円筒形の紅藻類オゴノリに比較して藻体が弱く、ちぎれやすい。(3)藻体がちぎれやすいため、担体に固定して培養できない。回収が容易でなく、水質浄化へ利用する際に、ちぎれ藻が汚染の原因になる。(4)30cm四方を超えるとアオサの折れ曲がりや撹拌による分散が困難になり太陽光の受光損失を生じ、生長速度の低下を引き起こすため、生長速度回復のためには藻体を回収し、裁断しなければならない(特許文献1、特許文献2)
また、一般に緑藻類は紅藻類海藻よりも生長に強い光強度が必要である。海藻の生長、新陳代謝が活発になると海藻による栄養塩類の吸収速度も上昇すると考えられる。そうすると一般に、緑藻類海藻での水質浄化は、紅藻類海藻での水質浄化よりも強い光強度を保つ設備あるいは条件が必要となる。
不稔性アオサは腐って、分解され消失し、一部が残って、次の年、栄養塩が高くなると増殖、異常繁殖する。毎年この繰り返しが起こっていると考えられている。実際に海浜にたまった不稔性アオサが公害になっている。
水分を含むアオサは比較的腐り易く、例えば一日で腐敗するため、早急に脱水、乾燥することが必要であることが指摘されている(特許文献1,特許文献2)。この指摘された欠点は、アオサを栄養塩類吸収槽に導入して、塩水中の栄養塩類低減、たとえば水質浄化
のために用いる上で大きな問題となる。
そこで、現在、緑藻類アオサ属海藻の持つ欠点を克服した緑藻類アオサ属海藻に代わる海藻が求められている。
一方、生物学的手法以外に、水中の栄養塩類低減技術として、栄養塩類を吸着する吸着剤を用いる技術が研究されている。生物が一定濃度以下の栄養塩類濃度で生物自体の新陳代謝が低下し、水中の栄養塩類濃度低減能力(栄養塩類吸収速度など)が低下するのに対して、吸着剤は、一定濃度以下の栄養塩類濃度でもその栄養塩類低減能力の低下がほとんどない。さらに吸着剤は、栄養塩類低減速度が生物学的手法より早い。しかしこれらの吸着剤には、吸着容量があり、栄養塩類低減能力、つまり栄養塩吸着除去量は生物学的手法より劣っている。水中の栄養塩類低減を吸着剤のみで行う場合は、大量の吸着剤が必要となり実用的ではないことが大きな問題となっている。
また、水中の栄養塩類吸着剤の開発事例は、非塩水を対象とした事例が多い。他種類の塩類が混在する塩水、例えば、汽水や海水では、吸着剤に高い吸着選択性が要求される。塩水中の栄養塩類を効率よく吸着し、塩水中の栄養塩類低減能力の高い吸着剤が求められている。
特開2000−254685号公報 特開2004−97003号公報 特開2004−130200号公報 特願2004−89760号公報 米国特許第4,479,877号 特公昭60−18605号公報 特開平5−15776号公報 特開平7−238113号公報 特開平3−68445号公報 特開昭63−39632号公報 特開平5−261378号公報 特開2000−24658号公報 特開2001−9470号公報
日野明徳、丸山俊明、黒倉寿 編、「水産養殖とゼロエミッション研究」恒星社厚生閣、1999年、p.9−31 能登谷正浩 編著、「アオサの利用と環境修復(改訂版)」、成山堂書店、2001年、p.76−93
本発明は、このような事情のもと、海藻を利用した塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、当該システムによって生産された生物、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を使用して生産された生物、及び塩水中の栄養塩類の濃度低減装置を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者は、特定の紅藻類大型海藻を使用することで、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。さらに本発明者は、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置として特定の装置を使用することで、本発明の効果を格段に向上できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の海藻を利用した塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、当該システムによって生産された生物、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を使用して生産された生物、及び塩水中の栄養塩類の濃度低減装置を提供するものである。
1. 塩水中で海藻を生育させることにより前記塩水中の栄養塩類を海藻に吸収させて、塩水中に含まれる栄養塩類の濃度を低減する方法であって、前記海藻が非成熟性の紅藻類大型海藻であることを特徴とする塩水中に含まれる栄養塩類の濃度低減方法。
2. 非成熟性の紅藻類大型海藻が、以下(1)〜(3)の性質を有するオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖するオゴノリ属紅藻類)]由来の海藻胞子が生長した非成熟性単藻培養株、あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体であることを特徴とする項1に記載の栄養塩類
の濃度低減方法。
3. 非成熟性の紅藻類大型海藻がオゴノリ(Gracilaria verrucosa)又はツルシラモ(Gracilaria chorda)あるいはそれらの亜種であることを特徴とする項1または2に記載の栄養塩類の濃度低減方法。
4. 海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減の前及び/又は後及び/又は同時に吸着剤による栄養塩類の吸着工程をおこなうことを特徴とする項1ないし3のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減方法。
5. 栄養塩類を吸着する吸着剤がリンを含む栄養塩類及び/又は窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤であることを特徴とする項1ないし4のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減方法。
6. 低減された栄養塩類濃度が栄養塩類濃度の環境基準値以下であることを特徴とする項1ないし5のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減方法。
7. 前記環境基準値が、全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下であることを特徴とする項6に記載の栄養塩類の濃度低減方法。
8. 低減される対象である塩水中に含まれる栄養塩類が、魚類養殖に由来する栄養塩類であることを特徴とする項1ないし7のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減方法。
9. 栄養塩類を含む塩水並びに該栄養塩類を吸収する海藻を含む栄養塩類低減装置及び栄養塩類を含む塩水を前記低減装置に供給する供給装置を備えた塩水中の栄養塩類の濃度低減システムであって、前記海藻が、非成熟性の紅藻類大型海藻であることを特徴とする塩水中に含まれる栄養塩類の濃度低減システム。
10. 非成熟性の紅藻類大型海藻が、以下(1)〜(3)の性質を有するオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖するオゴノリ属紅藻類)]由来の海藻胞子が生長した非成熟性単藻培養株、あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体であることを特徴とする項9記載の栄養塩類の濃度低減システム。
11. 非成熟性の紅藻類大型海藻がオゴノリ(Gracilaria verrucosa)又はツルシラモ(Gracilaria chorda)あるいはそれらの亜種であることを特徴とする項9または10に記載の栄養塩類の濃度低減システム。
12. 海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減の前及び/又は後及び/又は同時に吸着剤による栄養塩類の吸着工程をおこなうことができる栄養塩類の除去装置を備えていることを特徴とする項9ないし11のいずれかに記載の塩水中に含まれる栄養塩類の濃度低減システム。
13. 前記吸着剤がリンを含む栄養塩類及び/又は窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤であることを特徴とする項9ないし12のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減システム。
14. 低減された栄養塩類濃度が栄養塩類濃度の環境基準値以下であることを特徴とする項9ないし13のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減システム。
15. 前記環境基準値が、全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下であることを特徴とする項14に記載の栄養塩類の濃度低減システム。
16. 栄養塩類低減装置が、上部が開放された水槽を含むことを特徴とする項9ないし15のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減システム。
17. 栄養塩類低減装置に含まれる塩水が魚類養殖槽由来の海水であり、前記供給装置が魚類養殖槽由来の海水を栄養塩類低減装置に供給する装置であることを特徴とする項9ないし16のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減システム。
18. 魚類養殖槽が、洋上にあり、かつ、上部のみが開放された水槽で海域と隔てられている洋上半閉鎖型魚類養殖システムであることを特徴とする項17記載の栄養塩類の濃度低減システム。
19. システム全体が塩水域上にあることを特徴とする項9ないし18のいずれかに記載の栄養塩類の濃度低減システム。
20. 硝化菌を定着させた硝化槽、酸素供給槽、泡沫分離槽、沈殿槽、pH調製水槽、水温調整槽、ろ過槽、循環ポンプ、生物飼育槽のうち1種類以上をさらに含むことを特徴とする項9ないし19のいずれかに記載の塩水中に含まれる栄養塩類の濃度低減システム。
21. 項1〜8のいずれかに記載の方法あるいは、項9〜20記載のいずれかに記載のシステムを用いることを特徴とする、海藻を利用して得た塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水。
22. 項9〜20記載のいずれかに記載のシステムによって生産された非成熟性の紅藻類大型海藻。
23. 項21に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で生産された外洋性生物。
24. 流路切り替え弁と該流路切り替え弁に接続された複数の海藻培養ユニットを備えた塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
25. 海藻培養ユニットが塩水流入側培養部と塩水流出側培養部を備える項24に記載の濃度低減装置。
26. 濃度低減する栄養塩類が、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、尿素態窒素、有機態リン、無機態リン(オルトリン酸など)、珪素(珪酸など)のうち1種類以上であることを特徴とする項24または25に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
27. 藻類を装置内に導入することを特徴とする項24ないし26のいずれかに記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
28. 藻類が非成熟性の紅藻類大型海藻であることを特徴とする項24ないし27のいずれかに記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
次に本発明を更に詳細に説明する。
現在の研究は閉鎖循環式システムでの浄化処理装置の開発が中心であり、栄養塩吸収して増殖した海藻の利用法の開発は未確立であり、かつ研究例も少ない。海藻を導入した栄養塩類吸収槽による水中の栄養塩類低減、例えば水質浄化において、増殖した海藻の利用法を確立しないと、海藻が廃棄物として蓄積する欠点がある。本発明者らは、海藻の利用法の開発が養殖場の水質浄化技術の開発において非常に重要であるという認識を持ち、有用海藻の探索から研究を開始した。その結果、栄養塩類吸収槽に導入し使用する海藻として従来必要とされていた条件(栄養塩高吸収能、高栄養塩濃度耐性、栄養生長など)に加えて、有用成分である光阻害免疫能力回復剤(特願2004−318566)など免疫増強成分の生産機能を有する非成熟性の有用紅藻類大型海藻(特願2005−029818)を見出した。
紫外線その他の放射線により損なわれた皮膚の免疫能力を回復して健常状態の皮膚にするための光阻害免疫能力回復剤及びそれを紅藻類大型海藻、中でもオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)を原料として、製造する方法に関する発明により得られる光阻害免疫能力回復剤は、臨床分野、医療分野、生化学工業分野における治療用、検査用材料など、及び化粧品分野の添加剤として有用である(特願2004−318566)。本発明では、紫外線その他の放射線などにより損なわれた皮膚の免疫能力を回復する成分のことを自己免疫増強成分、自己免疫増強剤、光阻害免疫能力回復成分、光阻害免疫能力回復剤あるいは、光阻害免疫活性回復成分、光阻害免疫活性回復剤などともいう。
また本発明者らは、紅藻類大型海藻からの単藻培養株について種々研究を重ねた結果、非成熟性の紅藻類大型海藻、特に以下(1)〜(3)の性質を有する紅藻類大型海藻[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖する紅藻類)]由来の海藻胞子が生
長した非成熟性単藻培養株は長期間にわたって成熟せず、しかも長期間にわたって継続培養した後でも、他の藻類が極めて付着しにくいことを見出した。長期間にわたって保存あるいは培養を継続しても成熟せず、他の藻類が極めて付着しにくい紅藻類型海藻由来の新規な単藻培養株、その製造方法及びそれが増殖した藻体に関する発明により得られる非成熟性単藻培養株及びそれが増殖した藻体は、赤血球凝集剤のような生理活性物質の製造に好適に有用である(特願2005−029818)。しかし、この先行発明(特願2005−029818)で得られる海藻が塩水中の栄養塩類の濃度低減、たとえば、水質浄化に利用できることは知られていない。本発明では、栄養塩類吸収槽に導入する海藻として、有用種である非成熟性の紅藻類大型海藻、中でも非成熟性オゴノリ属紅藻類海藻を使用する点が、従来の海藻を用いた水中の栄養塩類の濃度低減技術と大きく異なる点である。有用種である海藻を用いることで、塩水中の栄養塩類を吸収して増殖した海藻がたまることなく、利用されるため、生態系リサイクルが達成できる。
本発明においてオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)とは、(1)オゴノリ属海藻(Gracilaria sp.)に分類される海藻、あるいは、(2)Gracilariopsis sp.に分類される海藻、あるいは、(3)Gracilariopsis sp.に過去に分類された海藻を含む。
例えば、日本産海藻では、オゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)とは、「新日本海藻誌日本産海藻類総覧、吉田忠生著、内田老鶴圃発行、1998年」においてオゴノリ目(Gracilariales:グラシラリアレス)オゴノリ科(Gracilariaceae:グラシラリアシー)に分類されている海藻を含む。これらの紅藻類は、寒海にも存在するが、特に暖海に多く、わが国ではほとんどすべての海岸地帯に分布しており、寒天の増量物や刺身のつまなどに用いられている。
本発明の好ましい実施形態において、例えばこのオゴノリ属紅藻類から、非成熟性単藻培養株を製造するには、例えば、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖しているオゴノリ属紅藻類の成熟胞子体の成熟部分を2〜5cm、好ましくは3〜4cmの長さに切断し、滅菌した水又は海水で洗浄後、滅菌海水中に6〜15時間放置し、胞子を放出させる。
次に、この放出された胞子を分離し、培養液の入った容器に移植し、温度10〜30℃において露光下及び暗所で10〜15時間ずつ交互に静置培養する。この際の培養液としては、例えば滅菌した海水に普通の海水強化栄養剤を添加したものが用いられる。
このようにして、15〜25日間静置培養後、胞子が発芽して生長した海藻直立体の中から、太く、色が濃い直立体を選び、50〜80日間、引き続き静置培養すると、長さ10mmに生長する。
直立体を培養容器の底からピンセットではずしフラスコに移植し、保存培養条件下で培養することにより、藻体が増殖し、その結果一定量以上の単藻培養株を得ることができる。
この培養条件は、例えば、温度が15〜30℃、光強度が50〜120μmol/msec、光周期は8時間明期−16時間暗期〜24時間明期−0時間暗期が挙げられる。必要であれば、振とう(50〜200rpm程度)やエアレーションを行ってもよい。培養液としては、天然海水でもよいし、人工海水でもよい。場合によっては培養液に、Provasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤[西澤一俊、千原光雄編集、藻類研究法、共立出版、東京(1979)、pp.281−305]など海藻生長促進成分を添加してもよい。
本発明では、分離された胞子が発芽して直立体に生長し、その直立体が増殖培養により増殖した藻体を単藻培養株という。
また、直立体あるいは単藻培養株は、低栄養あるいは低温あるいは低光強度など非増殖培養条件下に置くことによって、藻体生長速度を抑えることができ、保存や低増殖培養が可能である。保存や低増殖培養は、直立体あるいは単藻培養株の使用予定のない場合あるいは、藻体増殖量の調節をしたい場合に便利である。
この低栄養あるいは低温あるいは低光強度など非増殖培養条件とは、例えば(1)硝酸態窒素とアンモニア態窒素の濃度が3μM以下、リン酸イオン濃度が1μM以下などの栄養塩濃度条件、(2)温度が5〜14℃の低温条件、(3)光強度が20〜40μmol/msecの低光強度条件、及び(4)[(1)〜(3)の組み合わせ]などが例に挙げられる。
一般に、海藻は、成熟し、胞子、遊走子の放出あるいは藻体消失を起こし、これらが、塩水中の汚染の原因となる。胞子放出により、付着できなかった胞子、付着したが発芽できなかった胞子、発芽したが直立体になる前に枯れてしまった藻体からは、藻体に含まれるリンと窒素が海域に戻される。一方、胞子放出後の藻体はもろくなるため、他の生物に補食されたり、腐ってしまい、結果として水質悪化の原因の一つになる。しかし、本発明者らは、非成熟性の海藻を用いることで、上記海藻の成熟を用いた場合の問題点を解決できることを見出した。
先行発明は(特願2005−029818)、以下(1)〜(3)の性質を有する紅藻類大型海藻[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖する紅藻類大型海藻)]
由来の海藻胞子が生長した非成熟性単藻培養株、以下(1)〜(3)の性質を有する紅藻類大型海藻[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖する紅藻類大型海藻)]の成熟胞子体を採取し、この胞子体を切断して放置することにより胞子を放出させ、放出された胞子を培養し、発芽した胞子から直立体が生育した後も増殖培養することを特徴とする非成熟性単藻培養株の製造方法及び上記の非成熟性単藻培養株が増殖した藻体を提供するものである。
この先行発明で、非成熟性単藻培養株とは、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、海藻から単藻培養株作成直後の培養株と同様の生理活性物質を少なくとも1種類以上生産するものを意味する。また、低栄養あるいは低温あるいは低光強度など非増殖培養条件で3年以上の単藻培養株の保存を行っても、その後、培養条件に戻すと、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、海藻から単藻培養株作成直後の培養株と同様の性質、すなわち少なくとも1種類以上の生理活性物質の生産量が高いという性質、藻体の生長速度が早いという性質、栄養塩の吸収能力が高いという性質のうちの少なくとも1つを有しているものを意味する。
非成熟性あるいは不稔性海藻として緑藻類の不稔性アオサが知られているが、不稔性アオサには前述した欠点があった(特許文献1,特許文献2)。
これに対し、紅藻類大型海藻例えばオゴノリは、藻体が丈夫で、切断されにくいため担体に固定して大量に培養することができ、管理、回収が容易であり、藻類寸法が大きくなっても受光損失は起こりにくいし、弱い光でも生長する上に腐敗しにくく、環境汚染を生
じにくいし、藻体が糸状で藻体が重なっていても培養し得るので、塩水中の栄養塩類の濃度低減、たとえば、水質浄化を目的として、栄養塩類吸収装置に導入し使用する海藻として適している。
これらの観点で、緑藻類アオサ属海藻の持つ欠点を克服した緑藻類アオサ属海藻に変わる海藻を探索した結果、本発明者らは、非成熟性の紅藻類大型海藻、中でもオゴノリ属海藻由来の非成熟性単藻培養株及び当該非成熟性単藻培養株が増殖した藻体が、塩水中の栄養塩類の濃度低減、たとえば、水質浄化を目的として、栄養塩類吸収装置に導入し使用する海藻として好ましいことを見出した。
生物学的手法以外で、水中の栄養塩類低減技術として、塩水中の栄養塩類を効率よく吸着し、塩水中の栄養塩類低減能力の高い吸着剤が求められている。窒素、リンの吸着剤として公知の吸着剤を広く使用してもよいが、中でも妨害イオンが多い塩水中での栄養塩類吸着を目的としたオキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれている)である窒素吸着剤あるいはリン吸着剤を使用することが好ましい。オキソ陰イオン吸着剤は、塩水中で他の共雑イオン存在下でも、吸着速度が速く、高吸着容量で、かつ吸着した窒素やリンを効率的に脱着できる性質を有している。オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれている)で硝酸吸着剤としては、例えば、複合金属水酸化物の結晶の加熱処理物を有効成分とするNi−Feを含む水酸化物から合成した層状複水酸化物(LDH)を有効成分とする硝酸吸着剤(特許文献3)を、リン酸吸着剤としてはMII 1−xIII (OH)n− ・mHOで表わされる複合金属水酸化物の結晶の加熱処理物を有効成分とするリン吸着剤(特許文献4)を例に挙げることができる。アンモニウムイオン吸着剤としては、ホランダイト型マンガン酸化物を有効成分とするアンモニウムイオン吸着剤を例に挙げることが出来る。
栄養塩類として硝酸を吸着する公知の硝酸吸着剤としては、例えば、トリブチルアミノ基含有のイオン交換樹脂(特許文献5)、黒鉛と硝酸の層間化合物(特許文献6)、三次元架橋高分子を基本骨格とし、基本骨格に二級アミン型置換基、および、三級アミン型置換基を化学結合した合成高分子吸着剤(特許文献7)、スチレンとジビニルベンゼンの三次元共重合体を基本骨格とし、そのベンゼン核の少なくとも一部に、リン酸エステル基とアミノ基を有することを特徴とするスチレン系三次元共重合体(特許文献8)などを用いることができる。またアンモニウムイオン吸着剤としてはゼオライトなどを用いることができる。
栄養塩類としてリンを吸着する公知のリン酸吸着剤としては、例えば、産業廃棄物の溶融処理で生成したスラグを鉄除去処理後、微粉砕し、その中の酸化カルシウムをアルカリ処理して除去し、多孔状にしたリン除去用無機吸着材(特許文献9)、アロフェンを主成分とする物質を成形し、300〜600℃で焼成してなるリン除去材(特許文献10)、流動床ボイラーから排出される灰を主成分とする硬化体よりなる汚水の脱リン材(特許文献11)、ハイドロタルサイト類を有効成分とする水に溶存しているリンの除去剤(特許文献12)、石灰質原料、珪酸質原料及びゼオライトの反応生成物からなる脱リン材(特許文献13)、などを用いることができる。
吸着剤は、一定濃度以下の栄養塩類濃度でもその栄養塩類低減能力の低下がほとんどなく、適切な吸着剤を用いれば水中の栄養塩類濃度を迅速に環境基準値以下(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)に低下させることができる。しかし、これらオキソ陰イオン吸着剤も、水中の栄養塩類低減を吸着剤のみで行う場合は、大量の吸着剤が必要となり実用的ではない。
本発明者らは、吸着剤を用いた水中の栄養塩類低減を行う際に、あらかじめ栄養塩類を含む塩水を、海藻を導入した栄養塩類吸収装置に通して塩水中の栄養塩類を海藻に吸収させ、水中の栄養塩類濃度を一定濃度まで低減させたのち、吸着剤へ塩水を注入することにより、(1)水中の栄養塩類低減に必要となる吸着剤の使用量を、吸着剤単独で使用した場合よりも少なくすることができる、(2)最終段階で吸着剤を使用しているため、海藻を導入した栄養塩類吸収装置のみで塩水中の栄養塩類濃度を環境基準値まで低減するよりも、栄養塩類低濃度の影響をほとんど受けずに、環境基準値まで迅速に低減することができる。以上少なくとも2つの利点が得られることを見出した。これは、栄養塩濃度低減処理をする塩水の栄養塩類濃度が1000ppb〜100ppbの場合、特に顕著であることも見出した。
本発明によれば、特定の非成熟性の紅藻類大型海藻、特に非成熟性のオゴノリ属紅藻類を使用したことで、胞子の発生による汚染がなく、海藻を導入した栄養塩類吸収装置において密に海藻を増殖させることができ、生物養殖装置での塩水中の高濃度栄養塩類、例えば、魚類養殖槽において魚の糞や尿、配合飼料由来の富栄養化物質を極めて効率的に低減することができる。
また、一定時間内に海藻により栄養塩類の濃度低減された塩水中に、生物養殖槽、例えば、魚類養殖槽よりは富栄養化物質を大きく低減できているが、依然として環境基準を上回る窒素やリンが含まれている場合には、窒素ないしリンを除去可能な吸着剤を併用することにより、これらの成分を迅速に環境基準以下として、海域に戻すことが可能になる。
さらに、本発明の特定の紅藻類大型海藻は、それ自体、光阻害免疫能力回復剤など免疫賦活物質を生産するだけでなく、寒天などの抽出原料や食用にも使用可能であり、本発明のシステム及び方法は実用化の点でも優れている。
本発明の海藻を利用した塩水中の栄養塩類の濃度低減システムによって生産された生物は、例えば、塩水中の栄養塩類の濃度低減に寄与し増殖した特定の非成熟性の紅藻類大型海藻、中でも特定の非成熟性のオゴノリ属海藻は、光阻害免疫能力回復剤など自己免疫活性成分として有用利用されることにより、生態系リサイクルが成立し、廃棄物の出ない生物生産システム例えば魚類養殖システムが可能になる。本発明のシステムの一例を図1に示す。
生物養殖については、本発明により生態系リサイクル型の海藻を導入した新規栄養塩類吸収装置によるシステム技術「洋上半閉鎖式生物養殖、特に魚類養殖システム」が構築されることにより生物養殖場からの環境への栄養塩類負荷(窒素、リン)を大幅削減でき、生物特に魚類の高効率生産と環境への配慮の両立が実現する。
本発明の海藻を用いた塩水中の栄養塩類の濃度低減に伴い増殖した生物から得られた光阻害免疫能力回復剤など免疫活性成分はクリーム、化粧水など美容製品としての需要が見込まれ、本システムの経済的成立性を引き上げることになる。その結果当該海藻を導入した新規栄養塩類吸収装置を用いた塩水中の栄養塩類の濃度低減システムの普及が促進され、最終的にはゼロエミッション型の養殖システムの普及、水環境保全に繋がる。
本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水は、塩水中の栄養塩類濃度が高いと増殖が困難である生物、たとえば、外洋性の紅藻類大型海藻のキリンサイなどの飼育水として有用である。本発明で製造される外洋性生物としては、貝類、藻類、原生動物、海綿動物、刺胞動物、有櫛動物などが挙げられる。
本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を使用して生産された生物は、観賞用として用いることも出来るし、有用物質の原料として利用することもできる。例えば、外洋性の紅藻類大型海藻のキリンサイからは、有用なタンパク質や糖質などが得られる。
本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置は、塩水中の栄養塩類の濃度低減用として用いることも出来るし、藻類培養用として用いることもできる。また本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置は、方法あるいはシステムの方式として、バッチ式(バッチ方式)、間欠流れのかけ流し方式、連続かけ流し方式、あるいはそれらが組み合わさった方式、のいずれの方式の方法あるいはシステムにおいても使用することができる。吸着剤処理を行わないバッチ方式の一例を図2aに、吸着剤処理を行うバッチ方式を図2bに、吸着剤処理を行わないかけ流し方式の一例を図3aに、吸着剤処理を行うかけ流し方式の一例を図3bに示す。本発明においては、海藻等を導入して塩水中の栄養塩類の濃度低減を実施するために、海藻等を導入した容器あるいは海藻等を導入した水槽あるいは海藻等を導入した装置の一部分を、濃度低減ユニットあるいは塩水中の栄養塩類の濃度低減ユニットあるいは海藻を導入する濃度低減ユニットあるいは海藻を導入する塩水中の栄養塩類の濃度低減ユニットあるいはユニットともいい、Uという略字で記載することもある。図4(a)に濃度低減ユニットの一例を示す。
本発明の好ましい実施形態において、濃度低減装置は、図3(a)に記載されるような8
つの濃度低減ユニット(U1〜U8)を備えたものであってもよく、図3(b)に記載されるよ
うな4つの濃度低減ユニット(U1〜U4)を備えたものであってもよい。なお、図3(a),(b)では、各々U7とU4が接続されていない実施形態が示されているが、これらを接続してもよいことは言うまでもない。
濃度低減ユニットの1例は、例えば図4(a)に記載されているように、2つの水槽(培養装置に相当)が海水送液用チューブで連結され、好ましくはさらに逆流防止弁、海藻流出防
止用フィルターが備えられている。濃度低減ユニットは、複数存在し、これらユニットが流路切り替え弁により流路を変更できるように構成されている。例えば4つのユニット(U1〜U4)が存在する場合、U1→U2→U3→U4の順に常に栄養塩類を含む塩水を流すと、U1の海藻は栄養塩類濃度が高く海藻の生長が速く、U2〜U4に流れるに従って塩水中の栄養塩類濃度が低くなるため、海藻の生長が遅くなる。栄養塩類を含む塩水を最初に流入させるユニットを、例えば一定時間ごとにU1→U2→U3→U4(U1→U4→U2→U3、U1→U3→U2→U4等でもよい)の順に切り替えれば、各ユニットにおける栄養塩類濃度は平均され、海藻の生長(栄養塩類濃度の低減)を最も効率よく行うことができるので好ましい。本発明の濃度低減装置では、複数の濃度低減ユニットと流路切り替え弁を組み合わせることで、海藻の生長(栄養塩類濃度の低減)を速やかに行うことができる。
濃度低減ユニットは、複数を組み合わせて使用することで、海藻の生長(栄養塩類濃度の低減)を速やかに行うことができ、例えば2〜16個、好ましくは4〜8個のユニット
を組み合わせて使用することができる。
濃度低減ユニットが海水流入側培養装置と海水流出側培養装置に分かれているのは、このように分けることで、海水の流れる方向を自在に制御できるためである。
本発明のシステムの一つの例を示す概念図である。 本発明のシステムのバッチ方式の一例を示す図である。 本発明のシステムのかけ流し方式の一例を示す図である。 本発明の栄養塩類濃度低減装置の一例を示す図である。 本発明の流路切り替え弁(電磁弁でも手動弁でもよい)の一例を示す図である。 本発明のシステムの栄養塩類濃度低減装置の一例を示す図である。 本発明のシステムの栄養塩類濃度低減装置の一例を示す図である。
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
本発明では、海藻を利用した塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、当該システムによって生産された生物、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、及び塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を使用して生産された生物を提供するために、海藻を導入した栄養塩類吸収装置を装備、更に必要であれば、新規オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれる)による栄養塩類低減工程を併設する。
この場合、海藻を導入した栄養塩類吸収装置は、水上、陸上のどちらに設置しても良いが、生物の養殖あるいは栽培に起因する塩水中の高濃度栄養塩類の低減、例えば魚類養殖由来の富栄養化海水の負荷低減、の目的で発明を実施する場合は、特に、水上(洋上)に設置することが望ましい。
魚類養殖槽は、陸上に設置するよりも洋上に設置した方が、供給し利用できる海水量が豊富である利点がある。さらに食糧確保のための魚類収穫量増産手段として魚類養殖を考えると、養殖場所を全て陸に移行するのは不可能であり、海面養殖が主流となる。したがって、海藻を導入した栄養塩類吸収装置は洋上に設置することが望ましい。
また、洋上に、海藻を導入した栄養塩類吸収装置を設置する方が、陸上に設置するよりも海水、酸素の供給、海面の有効利用の観点から優れている。
生物の養殖あるいは栽培などに起因する塩水中の高濃度栄養塩類の濃度低減の形態として、魚類養殖槽中の高濃度栄養塩類の濃度低減を例に挙げて説明する。
本発明の1つの好ましい実施形態において、魚類養殖槽は、塩水により魚類を養殖するための槽であり、魚類養殖に伴う栄養成分を直接海域に負荷しないために、上部のみ開放された水槽(半閉鎖型水槽ともいう)である。
また、本発明において魚類養殖槽は、1個に限定されず、2個以上の魚類養殖槽を用いることも可能である。
魚類養殖により栄養塩類濃度が上昇した養殖槽内の塩水は、海藻を導入した栄養塩類吸収装置にポンプで送液され、海藻により塩水中の栄養塩類濃度が低減され、最終的に環境基準法基準値以下まで低減した後、海域に戻される。所望であれば、海藻を導入した栄養塩類吸収装置内で塩水中の栄養塩類濃度を環境基準法基準値以下まで低減する代わりに、海藻を導入した栄養塩類吸収装置内の塩水中の栄養塩類濃度が環境基準法基準値以上のある一定の濃度になった段階で、塩水をポンプで取り出し、オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれる)あるいはアンモニウムイオン吸着剤に注入し栄養塩類低減を行う工程を行ってもよい。海藻を導入した栄養塩類吸収装置のみによる栄養塩類低減に比較して、海藻を導入した栄養塩類吸収装置による栄養塩類低減工程に、オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれる)あるいはアンモニウムイオン吸着剤による栄養塩類低減工程を併設する方が、栄養塩低減処理時間の短縮が可能である。なお、海藻を導入した栄養塩類吸収装置の形態は、完全閉鎖型あるいは半閉鎖型のどちらを用いても良い
が、養殖槽同様に上部が開放された装置で海域とは隔てられている半閉鎖型栄養塩類吸収装置を用いた方が、酸素の供給、光強度の維持などの海藻の生長に利点があり好ましい。
また、本発明において栄養塩類低減装置は、1個に限定されず、2個以上の栄養塩類低減装置を用いることも可能である。
本発明で、栄養塩類の濃度低減を行う塩水としては、生物養殖水由来の塩水(あるいは生物栽培水由来の塩水)、海洋表層水(単に海水あるいは表層海水ともいう)、海洋深層水、汽水、塩分を含む河川水、塩分を含む工場排水、発電所由来の塩分を含む温排水や塩分を含む排水、塩分を含む地下水、塩分を含む生活雑排水、その他の塩水のいずれでもかまわないが、海藻が生育できる塩分濃度が必要である。
一方、非成熟体として長期間(少なくとも数年間)生育可能な特定の紅藻類大型海藻、例えばオゴノリ属紅藻類は、本発明者により初めて見出されたものである。
この非成熟体として長期間生育可能なオゴノリ属紅藻類は、例えば徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中から、以下(1)〜(3)の性質を有するオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖するオゴノリ属紅藻類)]の成熟胞子体を採取し、その海藻胞子を培養液の入った容器に移植し、生長させることにより、非成熟性単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体として得ることができる。本発明で使用される特定の紅藻類大型海藻、例えばオゴノリ属紅藻は、シリンダー状の細長い藻体が多数並んだ形状を有し、高密度でしかも速やかに生長させることができ、魚類養殖槽に由来するアンモニア等の有害物質に対しても十分な耐性を有する。高密度で速やかに増殖できるため、海藻を導入した栄養塩類吸収装置内の富栄養化成分(リン、窒素を含む)の濃度を非常に低く抑えることができる。また、特定の紅藻類大型海藻、例えばオゴノリ属紅藻類は、寒天などの抽出原料或いは光阻害免疫抑制回復剤など免疫増強物質(特願2004−318566参照)の製造原料にもなる有用な藻類であり、オゴノリ属紅藻の成熟などにより富栄養化成分が海水中に戻されるおそれも極めて低い(特願2005−029818参照)。
なお、本発明で使用する特定のオゴノリ属紅藻類『例えば、徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中から採取した以下(1)〜(3)の性質を有するオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)[(1)天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、(2)四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、(3)淡水混入天然海水域で繁殖するオゴノリ属紅藻類)]の成熟胞子体から、その海藻胞子を培養液の入った容器に移植し、生長させることにより得た非成熟性単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体、あるいはツルシラモ(徳島県勝浦川河口産)由来の非成熟性単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体、ツルシラモ(徳島県勝浦川産)由来の非成熟性単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体など』のような大型の藻類は寄託できないため、本出願人が保存し、請求により分譲できる状態にある。
本発明において一定の栄養塩低減処理時間内で海藻を導入した栄養塩類吸収装置内の栄養塩類の濃度が規制値を超える場合には、リン、窒素吸着剤などを使用して処理を行い、迅速に栄養塩類の濃度を規制値以下にして、環境例えば海洋に戻すことが可能になる。リン、窒素吸着剤としては、公知の吸着剤が広く使用できるが、一般にイオンの大きさは0.05nm〜0.5nmであるのでウルトラナノ空間(1nm以下の細孔)の精密設計思想に基づき開発された、妨害イオンが多い塩水中での栄養塩類吸着を目的としたオキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれている)である窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を使用することが好ましい。
オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれている)は、従来の吸着剤よりも選択性が高く、高吸着容量を持ち、再生可能であるという独自性を有する。例えば、オキソ陰イオン吸着剤のうち、硝酸イオン吸着剤の硝酸イオン吸着量は約23mg/吸着剤1gと既存吸着剤の約4倍以上であり、リン酸イオン吸着剤のリン酸イオン吸着容量は約8mg/吸着剤1g以上と既存吸着剤の約5倍以上である(特許文献3,特許文献4)。
なお、富栄養化に関与する栄養塩類の中でリン成分としては、無機態リン(オルトリン酸など)や有機態リンなどが挙げられ、富栄養化に関与する栄養塩類の中で窒素成分としては、硝酸イオン(硝酸態窒素)、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン(アンモニア態窒素)などが挙げられる。
本発明のシステムの一例を図1に示す。
本発明で使用する特定の非成熟性の紅藻類大型海藻、例えば非成熟性のオゴノリ属紅藻類は、藻体のステージのままで栄養増殖することができ、海藻を導入した栄養塩類吸収装置内がオゴノリ属紅藻類で満たされた場合には、当該紅藻類を取り出し、その先端を切除して再び海藻を栄養塩類吸収装置内に再導入することで、連続的に富栄養化成分(富栄養化に関与する栄養塩類)の吸収除去を行うことが可能になる。
また、魚類養殖槽内から海藻を導入した栄養塩類吸収装置内へ、或いは、海藻を導入した栄養塩類吸収装置内から、必要に応じて栄養成分の吸着処理を行った後の塩水の例えば海水の環境(例えば海洋)への投入、環境(例えば海洋)からの塩水(例えば海水)の魚類養殖槽内への投入は一連の操作として行われており、この操作により魚類養殖槽で生じる富栄養化成分は大部分をオゴノリ属紅藻類に吸収されて回収されるので、環境例えば海洋への負荷は非常に低く、また、吸着剤を使用して海藻を導入した栄養塩類低減装置内の塩水(例えば海水)を処理する場合であっても、その負荷は非常に少なくなる。
参考例1
紅藻類大型海藻由来の非成熟性単藻培養株あるいは当該非成熟性単藻培養株が増殖した藻体の生長率、非成熟性、有用成分生産能力と日最大窒素負荷許容量を求めた。
(1)単藻培養株調製用の胞子採取及び胞子植え付け;
原料としては、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもつオゴノリ属紅藻類として徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中の汽水域(塩分濃度0.5質量%)で採取したオゴノリ属大型海藻ツルシラモ(Gracilaria chorda)の成熟胞子体を用いた。
本明細書中において、徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中で生育しているオゴノリ属紅藻類を徳島県勝浦川河口産オゴノリ属紅藻類あるいは徳島県勝浦川産オゴノリ属紅藻類という。オゴノリ属紅藻類がツルシラモであれば、ツルシラモ(徳島県勝浦川河口産)あるいはツルシラモ(徳島県勝浦川産)という。
成熟胞子体の成熟部分を30mmの長さに切断し、滅菌海水で洗浄後、滅菌海水中で一晩放置することにより胞子を放出させた。放出された胞子を滅菌したパスツールピペットで吸い上げ、保存培養用培養液30mlの入ったスクリュー管に分離し、14時間明期、10時間暗期の周期で光を与えて静置培養を行った。1つのスクリュー管に植え付ける胞子は20個ずつとした。スクリュー管は全部で1000個使用した。静置培養は、(i)光強度60μmol/msecの一定条件で温度6条件(10℃から30℃まで4℃変動)、(ii)温度18℃の条件で光強度5条件(20μmol/msecから100μmol/msecまで20μmol/msec変動)の合計10条件で行った。
この海水培地は、香川県高松市屋島湾水深約1.5mで採取した海水を0.20μmのセルロースアセテートメンブランフィルター(アドバンテック東洋社製)でろ過後、1/10容量の蒸留水を添加し混合した後で、100℃30分間滅菌し、あらかじめ滅菌処理したProvasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤を添加して調製した。
(2)直立体選別;
21日間の静置培養をした時点で、胞子の発芽が観察された実験群の中から、直立体が太く、赤色色素が鮮やかで、培養液中の浮遊物がない実験条件を選ぶ。参考例1では、「温度18℃、光強度40μmol/msec」の条件で発芽した直立体を実験材料に選んだ。
選ばれた直立体は、静置培養により直立体の長さが10mmになるまで培養を続ける。この際、培地交換は4週間に1度の割合で行った。このようにして約70日間で10mmの長さの直立体を得た。
(3)直立体の増殖培養;
約10mmに生長した直立体をスクリュー管底からピンセットではずしフラスコに移植し、直立体の増殖培養を行った。直立体の増殖培養は、培養液1リットルの入った1リットル丸底フラスコ中で温度16℃、光強度40μmol/msec(14時間明期、10時間暗期の光周期)の条件でエアレーションをしながら行った。培養液交換は2週間に1度行った。増殖培養を70日間行い、直立体を増殖させた。この工程は、直立体の保存にも適応できるので、直立体の保存培養工程ともいう。1個の丸底フラスコ内で増殖した直立体を数個の培養液1リットルの入った1リットル丸底フラスコ中へ分割することにより、保存培養工程期間を延長することができる。
(4)単藻培養株の予備培養;
前工程で増殖させた直立体を、培養液1リットルの入った1リットル丸底フラスコ中で温度18℃、光強度40μmol/msec(14時間明期、10時間暗期の光周期)の条件でエアレーションをしながら行った。培養液交換は2週間に1度行った。予備培養を35日間行い、単藻培養株を得た。
参考例2
(5)単藻培養株の成熟性評価と生長速度評価;
温度制御(温度分布±0.5℃)、光強度制御(無断階調光)、日長時間制御などが可能な藻類培養試験器を使用し、単藻培養株の成熟性を評価した。なお、本装置は500ml三角フラスコ50個を同時に培養できる(槽内寸法1250W×720D×900Hmm)。大型海藻ツルシラモの単藻培養株から長さ4mmのアピカルフラグメントを調製し、培養海水400mlの入った三角フラスコ1本当りフラグメント6本を添加した。照射条件は14時間明期、10時間暗期の条件で行い、培養液交換は1週間ごとに行った。同一培養条件での実験点数は5点とした。
次いで、単藻培養株の成熟性評価を、(i)光強度60μmol/msecの一定条件で温度6条件(10℃から30℃まで4℃変動)、(ii)温度22±0.5℃の条件で光強度5条件(20μmol/msecから100μmol/msecまで20μmol/msec変動)の合計10条件でエアレーションしながら行った。
また、培養液交換と海藻湿質量測定を、クリーンブース内で行った。このようにして、フラスコ1本当りの海藻湿質量を記録するとともに、海藻表層での嚢果や四分胞子嚢あるいは精子嚢果などの生殖器官の形成の有無を顕微鏡で観察することにより、成熟の有無を判断した。
この結果、12週間の培養においても成熟した実験区は認められなかった。1個の40
0ml三角フラスコ内の海藻湿質量が0.2gに達した時点で、0.02gまで間引きして培養を継続したが、培養開始[(5)工程開始]より3年を経過しても成熟しなかった。
生長率
相対的生長率(Relative growth rate:RGR)をRとして表す。培養開始時の海藻湿質量をW、培養t日後の海藻湿質量をWとすると、R=(lnW−lnW)/tにより相対生長率が求められる。生長率(%/day)はRに100を乗じて算出した。
培養2週間から3週間にかけてのツルシラモ(勝浦川河口産)単藻培養株の生長率は、実験区の中で、温度22℃、光強度60μmol/msecの条件で最大の生長率であり、その値は14.4%/dayであった。
20リットル培養液での生長と成熟評価
ツルシラモ(勝浦川河口産)単藻培養株を1リットルの平底フラスコ10本で培養し、湿質量4g以上まで増殖させる。400ml規模培養で最大生長率が得られた条件「温度22℃、光強度60μmol/msec、光周期は14時間明期−10時間暗期、終日エアレーション、培地交換1週間毎」をこのときの培養条件に設定した。この培養条件を増殖培養条件という。
なお、培養液(海水培地)は、香川県高松市屋島湾水深1.5mで採取した海水を0.20μmのセルロースアセテートメンブランフィルター(アドバンテック東洋社製)でろ過後、1/10容量の蒸留水を添加し混合した後で、100℃30分間滅菌し、予め滅菌処理したProvasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤を添加して調製した。以下この培養液(海水培地)を増殖培養用海水という。
増殖培養して得たツルシラモ(勝浦川河口産)単藻培養株4gを増殖培養用海水20リットルが入っている30リットルの培養容器に移植し、増殖培養条件で4週間培養した。4週間後に海藻湿質量は約12倍の約47gに増加した。
12週間の培養でも成熟した実験区は見られなかった。その後、増殖培養海水20リットルが入っている20リットル培養液内の海藻湿質量が300gに達した時点で、10gまで間引きして培養を継続した。培養開始より3年を経過しても、成熟しなかった。400ml培養液及び20リットル培養液での単藻培養株の生長率、海藻収量及び成熟の有無を表1に示す。
(6)単藻培養株の生理活性物質活性量の評価;
(a)水溶性画分の抽出;
培養4週目で得られたツルシラモ(勝浦川河口産)湿質量25gを0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、−30℃で凍結した。30mM塩化カリウムと3μM硫酸亜鉛、5mM 2−メルカプトエタノールを含んだ0.5Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン−塩酸緩衝液(pH8.2)を抽出用緩衝液として使用し、細かく粉砕した凍結海藻(ツルシラモ湿質量500g相当)に対し、抽出用緩衝液40mlを加えてホモゲナイズしたのち、このホモゲナイズした液を4℃で6時間放置後、遠心分離して上澄である粗抽出液を得た。
次いで、この粗抽出液に、最終濃度35質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行った。硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で1時間放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して除去した。この操作で色素などの夾雑物が沈殿画分として除去された。次に、遠心分離で得た上澄に、最終濃度70質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で一晩放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して分別した。分別した沈殿画分を、0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝
液(pH6.9)で再溶解し、次いで0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)に対して透析し、粗活性画分を得た。得られた粗活性画分のウサギ赤血球に対する赤血球凝集活性は512単位であり、比活性は6948単位/mgプロテインであった。ここで、凝集活性の単位は、凝集活性が検出できる試料の最大希釈率の逆数と定義した。
培養3年目で得られたツルシラモ(勝浦川河口産)湿質量25gを0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、−30℃で凍結した。30mM塩化カリウムと3μM硫酸亜鉛、5mM 2−メルカプトエタノールを含んだ0.5Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン−塩酸緩衝液(pH8.2)を抽出用緩衝液として使用し、細かく粉砕した凍結海藻(ツルシラモ湿質量500g相当)に対し、抽出用緩衝液40mlを加えてホモゲナイズしたのち、このホモゲナイズした液を4℃で6時間放置後、遠心分離して上澄である粗抽出液を得た。
次いで、この粗抽出液に、最終濃度35質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行った。硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で1時間放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して除去した。この操作で色素などの夾雑物が沈殿画分として除去された。次に、遠心分離で得た上澄に、最終濃度70質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で一晩放置した後、生成した沈殿を遠心分離して分別した。分別した沈殿画分を、0.15塩化ナトリウム含有100Mリン酸緩衝液(pH6.9)で再溶解し、次いで0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)に対して透析し、粗活性画分を得た。得られた粗活性画分のウサギ赤血球に対する赤血球凝集活性は512単位であり、比活性は6810単位/mgプロテインであった。結果を表2に示す。
粗活性画分を温度100℃で10分間加熱処理を行い、遠心分離により夾雑タンパク質を除去し、粗活性画分の熱処理物を得た。
粗活性画分の熱処理物についてマイトジェン活性を測定した。ヒトリンパ球幼若化試験を行った。
次に、H−チミジンの取り込みによる、ヒトリンパ球幼若化試験を行って、粗活性画分の熱処理物についてのマイトジェン活性を測定した。この場合、すべての細胞培養に要する材料、例えば、マイクロプレート、セルハーベスター、グラスファイバーフィルター、カウンティングバイアル、H−チミジン、トルエンシンチレーター(POPO 0.1g+PPO 5g/リットルトルエン)、液体シンチレーションカウンターの準備およびこれらを用いて行う操作はいずれも無菌的に行った。
次に、培養液として純粋100mlに対してRPMI 1640 1.05g、NaHCO 0.2g、ペニシリン10000Unit、ストレプトマイシン10mg、ウシ胎児血清10mlの割合で溶解した水溶液を準備し、フィルターでろ過滅菌後、使用量にあわせて小びんにつめ、密栓して−20℃で保存した。この状態で2か月は保存使用可能であった。使用時は閉栓して使い切るようにし、凍結融解は繰り返さないようにした。
リンパ球は、ヘパリン添加血液からフィコール・コンレイ法により分離した。次いでCMF−PBS(pH7.0)で3階洗浄したのち、培養液1mlに懸濁し、リンパ球数を算定した。次いで培養液で5×10個/mlに調整した。
リンパ球の培養は、マイクロプレートの各ウェルに、リンパ球浮遊液を200μlずつ分注して行った。次いでリンパ球の入ったマイクロプレートを30分間クリーンブース内
に放置後、マイトジェン溶液として、粗活性画分の熱処理物、リン酸緩衝液(PES)を各ウェルに20μlずつ分注した。粗活性画分の熱処理物は、緩衝液で希釈した希釈液(10倍希釈から320倍希釈)を調整し、実験に供した。粗活性画分の熱処理物でのH−チミジンの取り込み量(cpm)は、希釈液での測定値に希釈倍率を乗じて原液に換算した値を算出することにより求めた。
次いで5%CO含有空気中37℃の湿潤状態で、3日間培養した。次いで培養終了8時間前にH−チミジンを培養液当りの最終濃度が1μCi/mlになるように各ウェルに分注した。
活性の測定は次のように行った。Labo−MASH等を用いて食塩水でウェル内をハーベストしつつ、細胞をグラスファイバーフィルター上に集め、これを連続吸引してフィルター上の細胞を洗浄した(約20秒間、生理食塩水約1.5ml)。次いでグラスフィルター上の細胞固着部を剥離し、カウンティングバイアルに入れた。次いで十分乾燥させたのち、液体シンチレーター5mlをディスペンサーを用いて各バイアルに分注し、シンチレーションカウンターにて計測した。培養4週間目の単藻類培養株から得た粗活性画分の熱処理物の評価には3人の検体(以下、検体I、検体II及び検体IIIという)からのリンパ球を用いて実験した。ある実験条件での実験数を3回とし、平均は3回の測定の平均値を示す。結果を表3に示す。また、培養3年目の単藻類培養株から得た粗活性画分の熱処理物の評価には3人の検体(以下、検体IV、検体V及び検体VIという)からのリンパ球を用いて実験した。ある実験条件での実験数を3回とし、平均は3回の測定の平均値を示す。結果を表3、表4に示す。
大型海藻は、栄養塩類を吸収する能力がある。栄養塩類とは、硝酸態窒素、リン酸イオン、アンモニア態窒素などが挙げられる。単藻培養株の栄養塩吸収能として、硝酸態窒素の1日当りの最大吸収量を評価した。
勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)の胞子から調製した単藻培養株の培養4週間目の単位湿質量当りの硝酸イオン最大負荷量は約0.4mg窒素/海藻湿質量g・日であった。結果を表5に示す。培養3年目の単位湿質量当りの硝酸イオン日最大負荷量も約0.4mg窒素/海藻湿質量g・日であった。
比較例1
原料として徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中の汽水域(塩分濃度0.5質量%)で採取したオゴノリ属大型海藻ツルシラモ(Gracilaria chorda)「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」の代わりに、ツルシラモ(吉野川河口域産)を用いた以外は参考例1と同様にして、単藻培養株を得た。ツルシラモ(吉野川河口域産)は、徳島県徳島市川内町の海岸(一級河川である吉野川の河口に隣接した海岸)で生育している海藻ツルシラモのことである。ツルシラモ(吉野川河口域産)は、汽水域への適応性は、勝浦川産ツルシラモよりも低い。
本明細書において、徳島県徳島市川内町の海岸(一級河川である吉野川の河口に隣接した海岸)で生育しているオゴノリ属紅藻類を徳島県徳島市川内町沖産オゴノリ属紅藻類あるいは徳島県徳島市沖の瀬戸内海産オゴノリ属紅藻類あるいは徳島県吉野川河口域産オゴノリ属紅藻類という。吉野川河口域産オゴノリ属の汽水域への適応性は勝浦川産オゴノリ属より低い。オゴノリ属紅藻類がツルシラモであれば、ツルシラモ(徳島県吉野川河口域産)あるいはツルシラモ(徳島県徳島市沖の瀬戸内海産)あるいはツルシラモ(徳島県吉野川河口域産)という。
ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株について、成熟性の評価と生長
速度を測定した結果、400ミリリットルの培養でも20リットルの培養でも12週間で成熟が認められた。また、生長率は、8.2%/dayであり、4gの海藻の培養4週間後の質量も12gと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表1)。含まれている赤血球凝集活性は粗活性画分で256単位、比活性3204単位/mgプロテインと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表2)。マイトジェン活性は、3人の検体とも、「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表3)。日最大窒素負荷許容量は、0.2mg窒素/海藻湿質量g・日と「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株の2分の1の値であった(表5)。
比較例2
原料として徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中の汽水域(塩分濃度0.5質量%)で採取したオゴノリ属大型海藻ツルシラモ(Gracilaria chorda)「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」の代わりに、小松島沖産ツルシラモを用いた以外は参考例1と同様にして、単藻培養株を得た。小松島沖産ツルシラモは、徳島県小松島市和田島沖の瀬戸内海で生育している海藻ツルシラモである。
本明細書において、徳島県小松島市和田島沖の瀬戸内海で生育しているオゴノリ属紅藻類を徳島県小松島沖産オゴノリ属紅藻類あるいは徳島県小松島沖の瀬戸内海産オゴノリ属紅藻類という。オゴノリ属紅藻類がツルシラモであれば、ツルシラモ(徳島県小松島市沖産)あるいはツルシラモ(徳島県小松島市沖の瀬戸内海産)という
小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株について、成熟性の評価と生長速度を測定した結果、400ミリリットルの培養でも20リットルの培養でも11週間で成熟が認められた。また、生長率は、7.7%/dayであり、4gの海藻の培養4週間後の質量も11gと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表1)。含まれている赤血球凝集活性は粗活性画分で256単位、比活性3063単位/mgプロテインと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表2)。マイトジェン活性は、3人の検体とも、「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表3)。日最大窒素負荷許容量は、0.1mg窒素/海藻湿質量g・日と「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株の4分の1の値であった(表5)。
それぞれの結果から、勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)の胞子から調製した単藻培養株は、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、しかも(1)生理活性物質の生産量が高い、(2)藻体の生長速度が早い、(3)栄養塩の吸収能力が高い、以上(1)から(3)の性質のうち少なくとも一つ以上の性質を有しているオゴノリ属紅藻類であることが分かる。
勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)の胞子から調製した単藻培養株は、ツルシラモ(吉野川河口域産)の胞子から調製した単藻培養株あるいは、小松島沖産ツルシラモの胞子から調製した単藻培養株に比べ次の点で優れている。(1)成熟しない。(2)生長量が高い。(3)生理活性物質含有量が高い。(4)栄養塩吸収能力が高い。これらの長所は、産業的に有利である。
Figure 0005176124
Figure 0005176124
Figure 0005176124
Figure 0005176124
Figure 0005176124
参考例3
魚からの排出量
魚類から飼育水に蓄積する窒素量とリン量を見積もった。
窒素排出量とリン排出量;
メジナ150g(6尾)を40リットルの水槽内で飼育した。給餌量は一日2gとし、給餌した配合飼料が全て摂取される様に与えた。2gの試料の内、窒素分は約7%の約1
40mgであった。全窒素の負荷量は、体外への総負荷量が全給餌窒素の約75%であった。メジナ体内への蓄積は約25%であった。体外への総負荷量約75%のうち、溶解成分約62%と沈殿分約13%であった。窒素の負荷は主に尿によるものであった。溶解成分約86.8mgは、ほとんどがアンモニアおよび尿素であった。
一方、2gの試料の内、リン分は約1.6%の約32mgであった。全リンの負荷量は、給餌量の約77%であった。体外への総負荷量約77%のうち、溶解成分約11%と懸濁物約66%であった。リンの負荷は主に糞(懸濁物)によるものであった。溶解成分は約3.52mgであった。
海藻の高濃度栄養塩耐性と栄養塩類吸収能力
参考例1記載のオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体の栄養塩類の各種濃度による生長(湿重量増加)を評価した。
ベース人工海水の調製;
塩化ナトリウム(NaCl)21.9g、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO)10.0g、塩化カルシウム二水和物(CaCl・2HO)1.4g、塩化カリウム(KCl)0.63g、硫酸ナトリウム(NaSO)3.7g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)0.18g、臭化カリウム(KBr)90mg、四ホウ酸ナトリウム十水和物(Na・10HO)36mg、塩化ストロンチウム(SrCl)13mg、塩化鉄六水和物(FeCl・6HO)5μgを混合し、蒸留水に溶解して全量を1リットルに調整した。本発明ではこの溶液をベース人工海水という。ベース人工海水は滅菌処理後に使用した。
25倍濃度金属混液;
Provasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤のレシピを参考に25倍濃度金属混液を調製した。
塩化鉄六水和物(FeCl・6HO)1.210g、塩化マンガン四水和物(MnCl・4HO)3.604g、塩化亜鉛(ZnCl)261mg、塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)101mgを混合し、蒸留水に溶解して全量を1リットルに調整した。本発明ではこの溶液を25倍濃度金属混液という。
海水補強栄養剤;
海水補強栄養剤は次のようにして調製した。
まず、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(C1014Na・2HO)1.00g、オルトホウ酸(HBO)200mgを蒸留水500ミリリットルに溶解し、次に25倍濃度金属混液40ミリリットルを加えたあと蒸留水を加えて全量を800ミリリットルとする。更にこの液に硝酸ナトリウム(NaNO)適量(あるいは未添加)、グリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物(CNaP・5.5HO)適量(あるいは未添加)、エチレンジアミン四酢酸鉄二ナトリウム・三水和物(C1012Fe・3HO)760mgを加え、溶解し、水酸化ナトリウムでpHをpH7.8〜pH8.2に調整後、蒸留水を加えて、全量を1リットルに調製した。本発明ではこの溶液を海水補強栄養剤という。添加する硝酸ナトリウム(NaNO)とグリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物(CNaP・5.5HO)の量により、様々な窒素濃度あるいはリン濃度の海水補強栄養剤を得ることが出来る。海水補強栄養剤は滅菌処理後に使用した。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムなどを使用すればアンモニア態窒素を含む人工海水を作ることも可能である。
リン源としてグリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の代わりに、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO・12HO)などを使用すれば、無機態リン酸を含む人工海水を調製することも可能である。
人工海水;
滅菌処理済みのベース人工海水1リットル当たり、滅菌処理済みの海水補強栄養剤5ミリリットルを加えて混合することにより、人工海水を調製した。添加する海水補強栄養剤により様々な窒素濃度あるいはリン濃度の人工海水を得ることが出来る。表6に例を示す。
Figure 0005176124
非成熟性単藻培養株の栄養塩類濃度耐性試験;
非成熟性単藻培養株の栄養塩類濃度耐性と成熟の有無を調べた。
参考例2で得たオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株から長さ5mmの生長端切片(アピカルフラグメントという)を切り出した。人工海水400mlの入った三角フラスコにフラスコ当り海藻切片6本を添加した。培養条件は、温度20℃、光強度60μmol/cms、光周期は14時間明期10時間暗期に設定した。培養液である人工海水の交換と各三角フラスコ内の海藻切片6本の合計の湿質量測定は1週間ごとに行い、培養中は100rpmmの速度でフラスコを撹拌した。培養3週間後の海藻湿質量を表7に示す。この数値は実験回数5回の平均値である。
Figure 0005176124
表7から明らかなように、海藻切片6本の合計の湿質量は、培養時間とともに増加している。例えば、人工海水IIを用いた培養実験では、海藻生長端試料では培養開始前の6本の生長端の湿質量が1.4mgであるのに対して、培養3週目での6本の生長端の湿質量が26.20mgと湿質量が培養開始時の18.7倍に増加している。また、人工海水I、II、III、IV、V、VI及びVIIの全ての場合において、日間生長率は、2週目と3週目の間で11%〜14%と高かった。この結果から、オゴノリ属海藻由来の非成熟性単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体は、高濃度の栄養塩類にも耐性があること、塩水中の栄養塩類濃度の広い範囲で増殖が可能であることが明らかである(少なくとも窒素濃度は0.287〜45.93mg/リットルの範囲で当該海藻の増殖が可能であり、少なくともリン濃度は0.049〜3.912mg/リットルの範囲で当該海藻の増殖が可能である)。オゴノリ属海藻由来の非成熟性単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体は、塩水中の栄養塩類を低減するために使用する海藻として適している性質を有することが分かる。
また、培養時間を延長して成熟の有無を調べた結果、培養実験12週間を通じて、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株は、成熟することがなかった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムを使用してアンモニア態窒素含有人工海水を調製して非成熟性単藻培養株の栄養塩濃度耐性と成熟の有無を調べた。その結果、表7の実験と同様に広い範囲で当該海藻は増殖可能であり、かつ12週間培養を行っても成熟しなかった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに尿素を使用して尿素態窒素含有人工海水を調製して非成熟性単藻培養株の栄養塩濃度耐性と成熟の有無を調べた。その結果、表7の実験と同様に広い範囲で当該海藻は増殖可能であり、かつ12週間培養を行っても成熟しなかった。
リン源としてグリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の代わりに、リン酸水素二ナトリウムを使用して無機態リン酸含有人工海水を調製して非成熟性単藻培養株の栄養塩濃度耐性と成熟の有無を調べた。その結果、表7の実験と同様に広い範囲で当該海藻は増殖可能であり、かつ12週間培養を行っても成熟しなかった。
次に、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体の栄養塩類の吸収能力を評価した。
窒素吸収能力;
栄養塩類を含む塩水としては人工海水III、IV、Vのうち一種類の人工海水を用いた。
人工海水400ミリリットルが入ったフラスコにオゴノリ属海藻由来の非成熟性単藻培養株を添加し培養開始した。人工海水中の栄養塩類の濃度低減のために導入する海藻は、同一の人工海水で少なくとも1週間培養した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)を用いた。培養条件は、温度20℃、光強度60μmol/cms、光周期は14時間明期10時間暗期に設定した。培養中は100rpmの速度でフラスコを撹拌した。
培養開始後、24時間毎にフラスコの撹拌を一時中断し海藻を培養している培養水(人工海水)0.2ミリリットルを取りだし、培養水中の栄養塩類の濃度を測定した。培養水の取り出し後、フラスコの撹拌を再開した。
培養水中の硝酸イオン濃度は、イオンクロマトグラフィーで定量した。ガードカラムAG9−HC(ダイオネックス社製)と分析カラムAS9−HC(ダイオネックス社製)をHPLC装置(ダイオネックス社製)に装着して分析した。移動相は、9.0mM NaCOを流速1ミリリットル/分で送液して使用した。標準試料として陰イオン混合標準液IV(関東化学株式会社製)を使用し、各種海水中の硝酸イオン濃度を定量した。
培養1日目から2日目までの24時間での硝酸態窒素の吸収量と培養2日目から3日目までの24時間での硝酸態窒素の吸収量などを表8に示す。この数値は実験回数5回の平均値である。表8から明らかなように、非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)は、硝酸態窒素に対して高い吸収能力を有していることが分かる。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムを使用してアンモニア態窒素含有人工海水を調製して非成熟性単藻培養株のアンモニア態窒素に対する吸収能力を調べた。その結果、表8の結果と同様に、アンモニア態窒素に対しても非成熟性単藻培養株は高い吸収能力を有することが明らかになった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに尿素を使用して尿素態窒素含有人工海水を調製して非成熟性単藻培養株の尿素態窒素に対する吸収能力を調べた。その結果、表8の結果と同様に、尿素態窒素に対しても非成熟性単藻培養株は高い吸収能力を有することが明らかになった。
Figure 0005176124
全リン吸収能力;
栄養塩類を含む塩水としては人工海水III、IV、Vのうち一種類の人工海水を用いた。
人工海水400ミリリットルが入ったフラスコにオゴノリ属海藻由来の非成熟性単藻培養株を添加し培養開始した。人工海水中の栄養塩類の濃度低減のために導入する海藻は、同一の人工海水で少なくとも1週間培養した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)を用いた。培養条件は、温度20℃、光強度60μmol/cms、光周期は14時間明期10時間暗期に設定した。培養中は100rpmの速度でフラスコを撹拌した。
培養開始後、24時間毎にフラスコの撹拌を一時中断し海藻を培養している培養水(人工海水)6.0ミリリットルを取りだし、培養水中の栄養塩類の濃度を測定した。培養水の取り出し後、フラスコの撹拌を再開した。
培養水中のリン濃度は、簡易型全窒素・全リン計TNP−24RC型(HACH製)を用いた。測定器としてDR/2400型測定器(HACH製)、分解器としてリアクター45600型(HACH製)を用い、試薬として全リン分析試薬(HACH製)を使用した。全リン測定は、(1)サンプルを酸と過硫酸による加熱により、有機物および縮合した形で存在するリン酸塩をオルトリン酸に変化させる前処理工程、(2)オルトリン酸(無機態リン酸)塩を酸性下でモリブデン酸と反応し、リン酸/モリブデン酸化の錯体を形成させる工程、(3)錯体を還元しモリブデンの青い色を880nmの波長で測定する工程から構成される。
培養1日目から2日目までの24時間での全リンの吸収量と培養2日目から3日目までの24時間での全リンの吸収量などを表9に示す。この数値は実験回数5回の平均値である。表9から明らかなように、非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)は、リンに対して高い吸収能力を有していることが分かる。
リン源としてグリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の代わりに、リン酸水素二ナトリウム・12水和物を使用して無機態リン酸含有人工海水を調製して非成熟性単藻培養株の無機態リン(PO 3−:オルトリン酸など)に対する吸収能力を調べた。その結果、表9の結果と同様に、無機態リンに対しても非成熟性単藻培養株高い吸収能力を有することが明らかになった。
Figure 0005176124
比較例3
比較例1と同様にして、ツルシラモ(吉野川河口域産)の単藻培養株を得た。ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株について、実施例1と同様に、単藻培養株の栄養塩類の吸収能力を評価した。硝酸態窒素吸収能力を測定するために、栄養塩類を含む塩水としては人工海水III、IV、Vのうち一種類の人工海水を用いて、硝酸態窒素吸収
能力を測定した。その結果、ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株の硝酸態窒素吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大で0.400 mg窒素/g海藻湿質量・日であり、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の最低値0.844 mg窒素/g海藻湿質量・日の50%未満と低かった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムを使用してアンモニア態窒素含有人工海水を調製してツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株のアンモニア態窒素吸収能力を測定した。その結果、ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株のアンモニア態窒素吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大でも、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)のアンモニア態窒素吸収速度の最低値の50%未満と低かった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに尿素を使用して尿素態窒素含有人工海水を調製してツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株の尿素態窒素吸収能力を測定した。その結果、ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株の尿素態窒素
吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大でも、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の尿素態窒素吸収速度の最低値の50%未満と低かった。
比較例4
比較例2と同様にして、小松島沖産ツルシラモの単藻培養株を得た。小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株について、実施例1と同様に、単藻培養株の栄養塩類の吸収能力を評価した。硝酸態窒素吸収能力を測定するために、栄養塩類を含む塩水としては人工海水III、IV、Vのうち一種類の人工海水を用いて、硝酸態窒素吸収能力を測定した。
その結果、小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株の硝酸態窒素吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大で0.240 mg窒素/g海藻湿質量・日であり、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の最低値0.844 mg窒素/g海藻湿質量・日の30%未満と低かった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムを使用してアンモニア態窒素含有人工海水を調製して小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株のアンモニア態窒素吸収能力を測定した。その結果、小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株のアンモニア態窒素吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大でも、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)のアンモニア態窒素吸収速度の最低値の30%未満と低かった。
窒素源として、硝酸ナトリウムの代わりに尿素を使用して尿素態窒素含有人工海水を調製して小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株の尿素態窒素吸収能力を測定した。その結果、小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株の尿素態窒素吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大でも、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の尿素態窒素吸収速度の最低値の30%未満と低かった。
比較例5
比較例1と同様にして、ツルシラモ(吉野川河口域産)の単藻培養株を得た。ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株について、実施例1と同様に、単藻培養株の栄養塩類の吸収能力を評価した。リン吸収能力を測定するために、栄養塩類を含む塩水としては人工海水III、IV、Vのうち一種類の人工海水を用いて、リン吸収能力を測定し
た。その結果、ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株のリン吸収速度(mg窒素/g海藻湿質量・日)は最大で0.040 mgリン/g海藻湿質量・日であり、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の最低値0.091 mgリン/g海藻湿質量・日の50%未満と低かった。
リン源として、グリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の代わりに、リン酸水素二ナトリウム・12水和物を使用して無機態リン酸含有人工海水を調製してツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株の無機態リン(PO 3−:オルトリン酸など)に対する吸収能力を調べた。その結果、表9の結果と同様に、ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株の無機態リンに対する吸収速度の最大値も、非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の無機態リンに対する吸収速度の最低値の50%未満と低かった。
比較例6
比較例2と同様にして、小松島沖産ツルシラモの単藻培養株を得た。小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株について、実施例1と同様に、単藻培養株の栄養塩類の吸収能力を評価した。リン吸収能力を測定するために、栄養塩類を含む塩水としては人工海水III、IV、Vのうち一種類の人工海水を用いて、リン吸収能力を測定した。その結果、小
松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株のリン吸収速度(mgリン/g海藻湿質量・
日)は最大で0.020 mgリン/g海藻湿質量・日であり、実施例1で測定した非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の最低値0.091 mgリン/g海藻湿質量・日の30%未満と低かった。
リン源として、グリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の代わりに、リン酸水素二ナトリウム・12水和物を使用して無機態リン酸含有人工海水を調製して小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株の無機態リン(PO 3−:オルトリン酸など)に対する吸収能力を調べた。その結果、表9の結果と同様に、小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株の無機態リンに対する吸収速度の最大値も、非成熟性単藻培養株(オゴノリ属海藻由来)の無機態リンに対する吸収速度の最低値の50%未満と低かった。
実施例1、比較例3〜6の結果から、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体は、高濃度の栄養塩類にも耐性があること、塩水中の栄養塩類濃度の広い範囲で増殖が可能であることが明らかである。また、当該非成熟性の単藻培養株あるいはその単藻培養株が増殖した藻体は、栄養塩類吸収能力が高いことがわかり、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株あるいはその非成熟性単藻培養株が増殖した藻体は、塩水中の栄養塩類の濃度低減のために、適した性質を有していることが明らかである。
バッチ方式(吸着剤を用いない場合)
メジナ150g(6尾)を40リットルの水槽内で飼育する際に環境に負荷される魚類養殖槽由来の栄養塩類の濃度低減をバッチ方式で行った。オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を、塩水中の栄養塩類の濃度低減の目的で栄養塩類濃度低減装置内に導入した。
バッチ方式の一例を図2aに示す。
魚類養殖槽A(40リットル)、魚類養殖槽B(40リットル)、栄養塩類濃度低減装置A(40リットル)、栄養塩類濃度低減装置B(40リットル)、海水くみ上げポンプ、魚類養殖槽Aから栄養塩類濃度低減装置Aへの送液ポンプ、魚類養殖槽Bから栄養塩類濃度低減装置Bへの送液ポンプ、栄養塩類濃度低減装置から環境(海域)へ濃度低減した塩水を返還するポンプを洋上の筏上に設置した。魚類養殖は、参考例3に示したように、魚類養殖は、給餌量は一日2gとし、給餌した配合飼料が全て摂取される様に与えた。魚類養殖槽及び栄養塩類濃度低減装置ではエアレーションを行った。栄養塩類濃度低減装置(40リットル)は、タンクのような深さの深いものではなく、深さの浅いものを用いた。
魚類養殖槽に導入した海水(環境海水)の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.048mg/リットル、アンモニア態窒素は0.0015mg/リットル以下(定量下限値0.0015mg/リットル以下)、リン0.006mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
<養殖1日目>養殖一日目に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Aに魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。
<養殖2日目>24時間後に魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Bに移した。養殖24時間後の魚類養殖槽Aの栄養塩類濃度測定のため槽内の海水を少量サンプリングした後、魚類養殖槽Aの残りの海水を沈殿分が吸い込まれないようにフィルターを通して栄養塩類濃度低減装置Aに送液した。魚類養殖槽A内の沈殿分は、魚類の糞
が主である。一般に、糞からの窒素とリンの溶出は、1日放置することにより窒素の21%とリンの30%が溶出し、27日間放置すると窒素の44%とリンの77%が溶出する(非特許文献1)。溶出速度がかなり速いので速やかな沈殿の回収が求められている。そのため、魚類養殖槽Aの海水を送液後、同槽内の沈殿を回収した。
次いで、40リットルの栄養塩類濃度低減装置Aにオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量を投入した。養殖24時間後の魚類養殖槽Aの窒素濃度は2.10mg窒素/リットル、リン濃度は0.088mgリン/リットルであった。魚類養殖槽Aの窒素濃度は、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)をすでに上回っていた。魚類養殖槽Aのリン濃度は、環境基準値ぎりぎりの値であった。
養殖2日目に、魚類養殖槽Bで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。
<養殖3日目>海藻導入後24時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置A内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.80mg窒素/リットル以下、0.050mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、栄養塩類濃度低減装置A内の海水は、海域へポンプを使って返還した。栄養塩類濃度低減装置Aで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。
魚類養殖槽B内の海水の栄養塩類濃度は、養殖2日目の魚類養殖槽A内の海水の栄養塩類濃度と同等のレベルまで上昇していた。魚類養殖槽B内の魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Aに移した。魚類養殖槽Bの海水をフィルターで沈殿分が吸い込まれないようにして栄養塩類濃度低減装置Bに送液した。魚類養殖槽Bの海水を送液後、魚類養殖槽B内の沈殿を回収した。次いで、栄養塩類濃度低減装置Bに先ほど栄養塩類濃度低減装置Aで使用したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の増殖藻体を投入した。
養殖3日目に、魚類養殖槽Aで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。
<養殖4日目>海藻導入後24時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置B内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.80mg窒素/リットル以下、0.050mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、栄養塩類濃度低減装置B内の海水は、海域へポンプを使って返還した。栄養塩類濃度低減装置Bで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。
魚類養殖槽A内の海水の栄養塩類濃度は、養殖2日目の魚類養殖槽A内の海水の栄養塩類濃度と同等のレベルまで上昇していた。魚類養殖槽A内の魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Bに移した。魚類養殖槽Aの海水をフィルターで沈殿分が吸い込まれないようにして栄養塩類濃度低減装置Aに送液した。魚類養殖槽Aの海水を送液後、魚類養殖槽A内の沈殿を回収した。次いで、栄養塩類濃度低減装置Aに先ほど栄養塩類濃度低減装置Bで使用したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の増殖藻体を投入した。
養殖4日目に、魚類養殖槽Bで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。
<養殖の継続>魚類養殖期間中この操作の繰り返しにより、魚類養殖槽由来の栄養塩類による環境基準値を超えた環境への負荷を、海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置を用いることによって制御しながらメジナを養殖することができた。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻は、光免疫抑制回復成分の原料として有効に利用でき、生態系リサイクルが達成できた。実施例2の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。
参考例4
栄養塩類吸着剤の性質
新規オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤)である硝酸イオン吸着剤;
ニッケルと鉄を含む水酸化物である硝酸イオン吸着剤を次のように合成した(特許文献3)。FeClとNiClの混合溶液にNaOHを加えて共沈させ、120℃で1日熟成した後、沈殿物を濾過洗浄し、50℃で1日間乾燥した。合成により得られた硝酸吸着剤の海水中での硝酸イオン吸着容量を測定した。本発明では、この合成した硝酸吸着剤をNi−Fe型硝酸吸着剤という。海水に硝酸ナトリウムを添加し、硝酸イオン濃度が1.86mg/リットルの海水を調製した。本発明では、この海水を硝酸添加海水という。硝酸添加海水1リットル中にNi−Fe型硝酸吸着剤0.1gを添加し、25℃で72時間放置した。72時間放置後の硝酸添加海水中の硝酸イオンを
低濃度硝酸塩試薬セット(HACH製)を用いてカドミウム還元法により測定した。Ni−Fe型硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は、4.203mg硝酸態窒素/g吸着剤であった。同様にして、市販されているアクアリウム用硝酸吸着剤イオン交換樹脂などの硝酸態窒素吸着容量を測定した。その結果、市販されているアクアリウム用硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は1.47mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、イオン交換樹脂の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、マグネシウムとアルミニウムからなる吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、マグネシウムと鉄からなる吸着剤の硝酸吸着容量は1.12mg硝酸態窒素/g吸着剤、亜鉛とアルミニウムからなる吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、市販されている硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、Zr(OH)からなる吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下であった。これらの結果から、Ni−Fe型硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は、評価した他の吸着剤の硝酸吸着容量と比較して、約3倍以上高く、硝酸吸着能力が優れていることが分かる。
また、海水中での硝酸イオン吸着速度を測定したところ、Ni−Fe型硝酸吸着剤は反応2時間で吸着容量の80%の硝酸イオンを吸着するという結果が得られ、この結果からNi−Fe型硝酸吸着剤は非常に早い硝酸吸着速度を有していることが分かった。なお、反応4時間で吸着容量のほぼ100%の硝酸イオンを吸着していた。
Ni−Fe型硝酸吸着剤の硝酸イオン吸着量のpH依存性はHClおよびNaOHでpHを調整したNaNOが1.86mg/Lの海水1Lに吸着剤0.1gを添加し、25℃で3日間行った。硝酸イオンの吸着量は海水のpHに大きく依存し、pH8付近で最大となった。これらの結果から、Ni−Fe型硝酸吸着剤は海水から硝酸イオンを選択的に除去する吸着剤として有望である。
参考例5
栄養塩類吸着剤の性質
新規オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤)であるリン吸着剤;
MgClとMnClを混合し、マグネシウムとマンガンからなる吸着剤を得た。本発明では、この合成したマグネシウムとマンガンからなる吸着剤をMgMn型リン吸着剤という。海水にリン酸水素二ナトリウム・12水和物を添加し、リン濃度が0.31mg
/リットルの海水を調製した。本発明では、この海水をリン添加海水という。リン添加海水2リットル中にMgMn型リン吸着剤0.1gを添加し、25℃で72時間放置した。72時間放置後のリン添加海水中の全リンを簡易型全窒素・全リン計TNP−24RC型(HACH製)を用いて測定した。測定器としてDR/2400型測定器(HACH製)、分解器としてリアクター45600型(HACH製)を用い、試薬として全リン分析試薬(HACH製)を使用した。MgMn型リン吸着剤のリン吸着容量は、8.06mgリン/g吸着剤であった。同様にして、市販されているハイドロタルサイト用化合物(LDH)からなる吸着剤などのリン吸着容量を測定した。その結果、市販されているハイドロタルサイト吸着剤の硝リン吸着容量は0.01mgリン/g吸着剤以下、市販されているアクアリウム用リン吸着剤のリン吸着容量は0.47mgリン/g吸着剤以下、市販されているイオン交換樹脂のリン吸着容量は0.07mgリン/g吸着剤以下であった。これらの結果から、MgMn型リン吸着剤のリン吸着容量は、評価した他の吸着剤のリン吸着容量と比較して、約19倍以上高く、リン吸着能力が優れていることが分かる。
また、海水中でのリン吸着速度を測定したところ、MgMn型リン吸着剤は、反応4時間で吸着容量の33%のリンを吸着するという結果が得られた。なお、反応48時間で吸着容量のほぼ100%のリンを吸着していた。
MgMn型リン吸着剤のリン吸着量のpH依存性をHClおよびNaOHでpHを調整したリン添加海水2リットルに吸着剤0.1gを添加し、25℃で3日間行った。リンの吸着量は海水のpHに大きく依存し、pH8付近で最大となった。これらの結果から、MgMn型リン吸着剤は海水からリンを選択的に除去する吸着剤として有望である。
バッチ方式(吸着剤を用いる場合)
実施例2記載のバッチ方式の洋上システム(図2aに一例を表示)では用いなかった、吸着剤処理槽を追加装備したほかは、実施例2と同様のバッチ方式の洋上システム(図2bに一例を表示)を用いた。
メジナ150g(6尾)を40リットルの水槽内で飼育する際に環境に負荷される魚類養殖槽由来の栄養塩類の濃度低減をバッチ方式で行った。オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を、塩水中の栄養塩類の濃度低減の目的で栄養塩類濃度低減装置内に導入した。
バッチ方式の一例を図2bに示す。
魚類養殖槽A(40リットル)、魚類養殖槽B(40リットル)、栄養塩類濃度低減装置A(40リットル)、栄養塩類濃度低減装置B(40リットル)、MgMn型リン吸着剤とアンモニア態窒素吸着剤を導入した吸着剤処理槽A(40リットル)、MgMn型リン吸着剤とアンモニア態窒素吸着剤を導入した吸着剤処理槽B(40リットル)、海水くみ上げポンプ、魚類養殖槽Aから栄養塩類濃度低減装置Aへの送液ポンプ、魚類養殖槽Bから栄養塩類濃度低減装置Bへの送液ポンプ、栄養塩類濃度低減装置Aから吸着剤処理槽Aへの送液ポンプ、栄養塩類濃度低減装置Bから吸着剤処理槽Bへの送液ポンプ、吸着剤処理槽から環境(海域)へ濃度低減した塩水を返還するポンプを洋上の筏上に設置した。魚類養殖は、参考例3に示したように、魚類養殖は、給餌量は一日2gとし、給餌した配合飼料が全て摂取される様に与えた。魚類養殖槽及び栄養塩類濃度低減装置ではエアレーションを行った。
魚類養殖槽に導入した海水(環境海水)の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.048mg/リットル、アンモニア態窒素は0.0015mg/リットル以下(定量下限値0.00
15mg/リットル以下)、リン0.006mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
<養殖1日目>養殖1日目に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Aに魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。
<養殖2日目>24時間後に魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Bに移した。養殖24時間後の魚類養殖槽Aの栄養塩類濃度測定のため槽内の海水を少量サンプリングした後、魚類養殖槽Aの残りの海水を沈殿分が吸い込まれないようにフィルターを通して栄養塩類濃度低減装置Aに送液した。魚類養殖槽Aの海水を送液後、同槽内の沈殿を回収した。
次いで、40リットルの栄養塩類濃度低減装置Aにオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量を投入した。養殖24時間後の魚類養殖槽Aの窒素濃度は2.10mg窒素/リットル、リン濃度は0.088mgリン/リットルであった。魚類養殖槽Aの窒素濃度は、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)をすでに上回っていた。魚類養殖槽Aのリン濃度は、環境基準値ぎりぎりの値であった。
海藻導入後12時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置A内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、1.50mg窒素/リットル、0.070mgリン/リットルまで低減されていたが、窒素に関しては環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていない。
次に、海藻導入後12時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置A内の海水をポンプで、MgMn型リン吸着剤2gと窒素吸着剤25gを導入した吸着剤処理槽A(40リットル)へポンプで送液した。
栄養塩類濃度低減装置Aで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。
吸着剤処理槽Aに栄養塩類濃度低減装置Aからの海水が導入されてから4時間後時点での栄養塩類濃度低減装置A内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.80mg窒素/リットル以下、0.050mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、吸着剤処理槽A内の海水は、海域へポンプを使って返還した。
このことから、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置と吸着剤処理槽の両方を用いる方法あるいはシステムは、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置のみを用いた方法あるいはシステムで塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うよりもより短時間で塩水中の栄養塩類の濃度低減ができることが明らかである。また、吸着剤処理槽のみを用いた方法あるいはシステムで塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うよりも、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置と吸着剤処理槽の両方を用いる方法あるいはシステムは、使用する吸着剤の使用量を低くできる利点があることが明らかである。
養殖2日目に、魚類養殖槽Bで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。
<養殖3日目>魚類養殖槽B内の海水の栄養塩類濃度は、養殖2日目の魚類養殖槽A内の海水の栄養塩類濃度と同等のレベルまで上昇していた。魚類養殖槽B内の魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Aに移した。魚類養殖槽Bの海水をフィルタ
ーで沈殿分が吸い込まれないようにして栄養塩類濃度低減装置Bに送液した。魚類養殖槽Bの海水を送液後、魚類養殖槽B内の沈殿を回収した。次いで、栄養塩類濃度低減装置Bに先ほど栄養塩類濃度低減装置Aで使用したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の増殖藻体を投入した。
海藻導入後12時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置B内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、1.50mg窒素/リットル、0.070mgリン/リットルまで低減されていたが、窒素に関しては環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしておらず、リンに関してはぎりぎりで満たしている状態であった。
次に、海藻導入後12時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置B内の海水をポンプで、MgMn型リン吸着剤2gと窒素吸着剤25gを導入した吸着剤処理槽B(40リットル)へポンプで送液した。
栄養塩類濃度低減装置Bで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。
吸着剤処理槽Bに栄養塩類濃度低減装置Bからの海水が導入されてから4時間後時点での栄養塩類濃度低減装置B内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.80mg窒素/リットル以下、0.050mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、吸着剤処理槽B内の海水は、海域へポンプを使って返還した。
養殖3日目に、魚類養殖槽Aで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。
<養殖4日目>魚類養殖槽A内の海水の栄養塩類濃度は、養殖2日目の魚類養殖槽A内の海水の栄養塩類濃度と同等のレベルまで上昇していた。魚類養殖槽A内の魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Bに移した。魚類養殖槽Aの海水をフィルターで沈殿分が吸い込まれないようにして栄養塩類濃度低減装置Aに送液した。魚類養殖槽Aの海水を送液後、魚類養殖槽A内の沈殿を回収した。次いで、栄養塩類濃度低減装置Aに先ほど栄養塩類濃度低減装置Bで使用したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の増殖藻体を投入した。
海藻導入後12時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置B内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、1.50mg窒素/リットル、0.070mgリン/リットルまで低減されていたが、窒素に関しては環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしておらず、リンに関してはぎりぎりで満たしている状態であった。
次に、海藻導入後12時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置A内の海水をポンプで、MgMn型リン吸着剤2gと窒素吸着剤25gを導入した吸着剤処理槽A(40リットル)へポンプで送液した。
栄養塩類濃度低減装置Aで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。
吸着剤処理槽Aに栄養塩類濃度低減装置Aからの海水が導入されてから4時間後時点での栄養塩類濃度低減装置A内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.80mg窒素/リッ
トル以下、0.050mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、吸着剤処理槽A内の海水は、海域へポンプを使って返還した。
養殖4日目に、魚類養殖槽Bで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。
<養殖の継続>魚類養殖期間中この操作の繰り返しにより、魚類養殖槽由来の栄養塩類による環境基準値を超えた環境への負荷を、海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置を用いることによって制御しながらメジナを養殖することができた。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻は、光免疫抑制回復成分の原料として有効に利用でき、生態系リサイクルが達成できた。実施例3の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。
MgMn型リン吸着剤と窒素吸着剤の組み合わせの代わりに、MgMn型リン吸着剤、Ni−Fe型硝酸態窒素吸着剤、アンモニア態窒素吸着剤、尿素態窒素吸着剤、を使用して塩水中の栄養塩類の濃度低減効果を調べた。その結果、MgMn型リン吸着剤、Ni−Fe型硝酸態窒素吸着剤、アンモニア態窒素吸着剤、尿素態窒素吸着剤、を使用した場合も、海藻を導入した栄養塩濃度低減装置のみを使用するよりも短時間で、塩水中の栄養塩類の濃度低減が達成できた。
MgMn型リン吸着剤、Ni−Fe型硝酸態窒素吸着剤、アンモニア態窒素吸着剤、尿素態窒素吸着剤の中なら、1種類以上を組み合わせて、塩水中の栄養塩類の濃度低減効果を調べた。その結果、海藻を導入した栄養塩濃度低減装置のみを使用するよりも短時間で、塩水中の栄養塩類の濃度低減が達成できた。
このことから、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置と吸着剤処理槽の両方を用いる方法あるいはシステムは、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置のみを用いた方法あるいはシステムで塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うよりもより短時間で塩水中の栄養塩類の濃度低減ができることが明らかである。また、吸着剤処理槽のみを用いた方法あるいはシステムで塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うよりも、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置と吸着剤処理槽の両方を用いる方法あるいはシステムは、使用する吸着剤の使用量を低くできる利点があることが明らかである。
かけ流し方式(吸着剤を用いない場合)
連続かけ流し方式;
メジナ150g(6尾)を40リットルの水槽内で飼育する際に環境に負荷される魚類養殖槽由来の栄養塩類の濃度低減を連続かけ流し方式で行った。オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を、塩水中の栄養塩類の濃度低減の目的で栄養塩類濃度低減装置C内に導入した。
連続かけ流し方式の一例を図3aに示す。
魚類養殖槽C(40リットル)、栄養塩類濃度低減装置C(80リットル)、海水くみ上げポンプ、魚類養殖槽Cから栄養塩類濃度低減装置Cへの送液ポンプ、栄養塩類濃度低減装置から環境(海域)へ濃度低減した塩水を返還するチューブを洋上の筏上に設置した。魚類養殖は、参考例3に示したように、魚類養殖は、給餌量は一日2gとし、給餌した配合飼料が全て摂取される様に与えた。魚類養殖槽及び栄養塩類濃度低減装置ではエアレ
ーションを行った。
魚類養殖槽に導入した海水(環境海水)の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.048mg/リットル、アンモニア態窒素は0.0015mg/リットル以下(定量下限値0.0015mg/リットル以下)、リン0.006mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
海藻を収納する水槽の材質、海藻を収納する水槽の形状、大きさ、容量、ユニットの形状、大きさ、容量、大ユニットを形成するユニットの数などは自由に選択できるが、海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減を効率的に行うには、効率的に行うには、海藻を導入(収納)する容器あるいは海藻を導入(収納)する水槽あるいは海藻を導入(導入)する装置の一部分は、1リットルから10リットル程度の容量が好ましい。
魚類養殖槽Cへの海水くみあげ速度は、40リットル/日で行った。魚類養殖槽から栄養塩類濃度低減装置Cへの海水の送液流速は、40リットル/日で行った。
海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置として、様々な容器あるいは様々な槽あるいは様々な装置の一部がかけ流し方式で使用可能である。海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置の一例を図4に示す。
幅10cm(内側の寸法)、高さ20cm(内側の寸法)、長さ50cm(内側の寸法)、厚さ0.5cmの容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽を、開放されている側を上にして、ユニットを作る。図4aに示すように、容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽2つを、チューブでつなぎ、一つのユニットを作る。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間にフィルターを装着し、海藻がポリカーボネート水槽から流出するのを防いだ。ポリカーボネート水槽中でエアレーションを行った。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間には、逆流防止弁を挿入し、海水の逆流を防ぐのが好ましい。
栄養塩類濃度低減装置Cは、上述したユニットを8つ連結した大ユニット構造を採用した(図4b)。塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで海水を注入後、海藻を投入した。すなわち魚類養殖槽Cからの海水を栄養塩類濃度低減装置Cに流す前に、前もって栄養塩類濃度低減装置Cの各ポリカーボネート製の水槽には環境海水(海水)5リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体15g湿質量を投入した。したがって、一つのユニット(Uとも表記する。)あたり、環境海水10リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体30g湿質量が含まれるようにする。魚類養殖槽Cからの海水を栄養塩類濃度低減装置Cに流し始めてからは、6時間毎に電磁弁、8方バルブが切り替わり、魚類養殖槽C由来の海水の流路を換えることにより、栄養塩類濃度低減装置Cに導入した海藻が入ったそれぞれの水槽に、魚類養殖槽からの高い濃度の栄養塩類を含んだ海水が接触するようにした(図4c)。
図4に示したようなユニット水槽を束ねた大ユニット構造は、海水面の表面積が大きいため、海藻に必要な酸素や光強度を十分に確保できる利点があった。また、それぞれの水槽の容積と数は、導入する海藻の種類により至適な条件に換えることが可能であった。
魚類養殖槽C由来の海水が流れ込む流路は、8方バルブAにより、8つのユニットの入り口側(流入口ともいう)と接続されている。各ユニットの流入口側は(1)右隣のユニットの流出口側、あるいは(2)魚類養殖槽C由来の海水が流れ込む流路のどちらか一方と接続する二股構造になっており、電磁弁により制御されている(手動式の弁を用いて制
御してもよい)。ユニット1(U1と表記)の右隣のユニットは図4ではユニット2(U2)となる。電磁弁は2つの3方切り替え弁により構成されている(図5)。各ユニットの流入口と流出口に3方切り替え弁は1個ずつ接続されている。電磁弁は手動の流路切り替え弁で代用してもよい。弁の流路切り替え操作の前あるいは後あるいは前と後でポンプを一旦停止してもよい。
一方、環境(周辺海域)への海水の返還のための流路は、8方バルブBにより、8つのユニットの出口側(流出口ともいう)と接続されている。各ユニットの流出口側は(1)左隣のユニットの流入口側、あるいは(2)環境(周辺海域)への海水の返還のための流路のどちらか一方と接続する二股構造になっており、電磁弁により制御されている(手動式の弁を用いて制御してもよい)。ユニット1(U1と表記)の左隣のユニットは図4ではユニット8(U8)となる。切り替えバルブとしては8方バルブを用いる代わりに6方バルブなど多方向バルブを組み合わせて用いてもよい。バルブの流路切り替えは電動式でも手動式でもよい。バルブの流路切り替え操作の前あるいは後あるいは前と後でポンプを一旦停止してもよい。
塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の1日前に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Cに魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。魚類に配合飼料を与えた後、24時間経過するまで間は、止水条件で魚類養殖を行った。魚類に配合飼料を与えてから1日経過した時点で、流水条件での養殖を開始した。
魚類養殖槽Cからの海水を栄養塩類濃度低減装置Cに流し始めてから6時間経過するまでは、ユニット1の出口側にユニット8、ユニット7、ユニット6の3つのユニットを連結して、ユニット1から流出した海水が環境(周辺海域)へ直接放出されないようにすると共に、ユニット6の流出口の先に、水槽を設置し、流出する海水をためた。
栄養塩類濃度低減装置Cでの塩水中の栄養塩類の濃度低減開始から24時間経過後には、低減開始時にユニット1に注入された海水が、栄養塩類濃度低減装置Cの中で24時間経過し、ユニット8,7,6を通過した。ユニット6の流出口での海水中の窒素及びリン濃度を測定し、窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.84mg窒素/リットル以下、0.052mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていることを確認してから、栄養塩類濃度低減装置Cから流出する海水を直接へ返還するようにした。また、一時ためていたユニット6から流出した海水も海域へ戻した。塩水中の栄養塩類の濃度低減開始から24時間経過後から30時間経過までの6時間の間、ユニット6は大ユニットから切り離される。ユニット6に入っている海水は海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を18時間以上24時間未満行った海水である。この海水の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.84mg窒素/リットル以下、0.052mgリン/リットル以下に低減されていた。したがって、所望であれば、大ユニットから切り離されている間にユニット6内の海水を環境海水と交換してもよい。
その後、6時間毎に、電磁弁(手動式の弁でも代用できれば用いてもよい)、8方バルブ(6方バルブなど多方向バルブを組み合わせでも代用できれば用いてもよい)で海水の流入口からの連結、各ユニット間の連結、周辺海域への海水の流出口への連結を換えて塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行った(図4c)。
栄養塩類濃度低減装置Cから流出する海水中の窒素及びリン濃度を測定し続けた結果、窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.84mg窒素/リットル以下、0.052mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たし
ていた。
ユニット1は、塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し始めてから(図4cI)、42時間経過後から48時間経過するまでの6時間の間(図4cVII)に流路から一時切り離さ
れる。この時、ユニット1に導入され、栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。空になったユニット1には、新たに、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体30g湿質量を導入し、実験を継続した結果、連続的に、塩水中の栄養塩類の濃度低減と光免疫抑制回復成分の生産を並行して行うことができた。
ユニット1は、塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し始めてから(図4cI)、42時間経過後から48時間経過するまでの6時間の間(図4cVII)に増殖したオゴノリ属海
藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収しないで、ユニット1内にいれたまま、次のサイクル(48〜96時間)での栄養塩類の濃度低減処理を行った。ユニット1内の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体が、1サイクル目(0から48時間)よりも2サイクル目(48から96時間)では増殖していたため、2サイクル目の栄養塩類濃度低減効率は、1サイクル目の栄養塩類濃度低減効率よりも高かった。塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し始めてから(図4cI)、90時間経過後から96時間経過するまでの6時間の間に再び、ユニット1が流路から一時切り離された時に、栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。
実施例4は海藻による栄養塩の吸収時間が最小で18時間である。実施例4のメリットは、それぞれのユニットが48時間毎に大ユニットから一時的に切り離されるため、栄養塩類を吸収し増殖した海藻の回収及び新規海藻の投入作業が楽なことである。
ユニット1について説明したが、ユニット1以外のユニットにおいても同様であった。
このように、本発明によれば、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体の回収の回数、間隔を変えても、塩水中の栄養塩類の濃度低減が効率よく達成できることが明らかである。
連続かけ流し方式の代わりに、間欠かけ流し方式(一定時間海水の流れを止めて塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行う方式)で同様の実験を行った結果、連続かけ流し方式で得られた結果と同様に、連続的に、塩水中の栄養塩類の濃度低減と光免疫抑制回復剤の生産を並行して行うことができた。
かけ流し方式でのユニットの数、ユニットの容量、流速は任意に選ぶことができた。
<養殖の継続>魚類養殖期間中この操作の繰り返しにより、魚類養殖槽由来の栄養塩類による環境基準値を超えた環境への負荷を、海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置を用いることによって制御しながらメジナを養殖することができた。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻は、光免疫抑制回復成分の原料として有効に利用でき、生態系リサイクルが達成できた。実施例4の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。
海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Cを、洋上かけ流し方式のシステムに組み込んで使用する代わりに、塩水源(塩水を含んだ水槽など)から塩水送液ポンプにより供給して使用した。海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Cは、図4bの大ユニットを使用し
た。栄養塩類の濃度低減装置Cから流出する塩水を一定量毎にため、窒素濃度およびリン濃度を測定した。その結果、洋上以外でも、塩水中の栄養塩類の濃度低減が達成できていることが明らかになった。栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。魚類養殖のように豊富な海水、酸素、栄養塩などを必要とする生物養殖由来の塩水を処理する場合以外であれば、本発明の海藻を利用した塩水中の栄養塩類濃度低減方法あるいはシステムは、洋上以外でも使用可能であることが分かる。
かけ流し方式は、バッチ方式よりも手間がかからない利点がある。魚類や海藻を網ですくって別の水槽へ移動させる必要がない。かけ流し方式を可能にしたのは、電磁弁(手動式の弁でも代用できれば用いてもよい)や8方バルブ(6方バルブなど多方向バルブを組み合わせでも代用できれば用いてもよい)など流路切り替え機能付きの栄養塩類濃度低減装置を用いているからである。
実施例4の変法;
実施例4では、栄養塩類の濃度低減開始時に、栄養塩類濃度低減装置Cの各ユニット(ユニット1、2、3、4、5、6、7、8)には、環境海水10リットルとオゴノリ属海藻が投入されている。所望とあれば、図3(a)のユニット2、3、4、5には栄養塩類の濃度低減開始時に、環境海水10リットルの代わりに環境海水よりも栄養塩類濃度が高い塩水(たとえば、餌さの摂取後24時間止水条件で魚類養殖した養殖水)10リットルを大型海藻ともにユニット内に投入しておいてもよい。その手順の一例を以下に示す。
(1)魚類養殖槽Cのほかにもう一つ魚類養殖槽C‘(40リットル)を準備した。
(2)<塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の48時間前(養殖1日目)>養殖1日目に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽C‘に魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。
(3)<塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の24時間前(養殖2日目)>24時間後に魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Cに移した。養殖24時間後の魚類養殖槽C‘の栄養塩類濃度測定のため槽内の海水を少量サンプリングした後、魚類養殖槽C’の残りの海水を沈殿分が吸い込まれないようにフィルターを通しての栄養塩類濃度低減装置Cのユニット2、ユニット3、ユニット4、ユニット5に約10リットルずつ送液した。この操作により環境海水よりも栄養塩類濃度が高い塩水40リットルを得ることができる。
(4)<塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の28時間前(養殖2日目)>養殖2日目に、魚類養殖槽Cで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。魚類に配合飼料を与えた後、24時間経過するまで間は、止水条件で魚類養殖を行った。魚類に配合飼料を与えてから1日経過した時点で、流水条件での養殖を開始した。
(5)栄養塩類濃度低減装置Cのユニット1、ユニット6、ユニット7、ユニット8に約10リットルずつ環境海水を注いだ。
(6)次いで、栄養塩類濃度低減装置Cのユニット1〜8にオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を各ユニットに30g湿質量ずつを投入した。
(7)以降は、実施例4と同様の操作を行った。
かけ流し方式(吸着剤を用いる場合)
連続かけ流し方式;
実施例4記載の連続かけ流し式システムでは用いなかった、吸着剤処理槽を追加装備し、栄養塩類濃度低減装置Cの代わりに栄養塩類濃度低減装置Dを用いた他は、実施例2と同様のかけ流し式の洋上システム(図3bに一例を表示)を用いた。
メジナ150g(6尾)を40リットルの水槽内で飼育する際に環境に負荷される魚類養殖槽由来の栄養塩類の濃度低減をかけ流し式で行った。オゴノリ属海藻由来の非成熟性
の単藻培養株が増殖した藻体を、塩水中の栄養塩類の濃度低減の目的で栄養塩類濃度低減装置D内に導入した。
かけ流し方式の一例を図3bに示す。
魚類養殖槽D(40リットル)、栄養塩類濃度低減装置D(40リットル)、MgMn型リン吸着剤とアンモニア態窒素吸着剤を導入した吸着剤処理槽(40リットル)、海水くみ上げポンプ、魚類養殖槽Dから栄養塩類濃度低減装置Dへの送液ポンプ、栄養塩類濃度低減装置Dから吸着剤処理槽への送液するチューブ、吸着剤処理槽から環境(海域)へ濃度低減した塩水を返還するポンプを洋上の筏上に設置した。魚類養殖は、参考例3に示したように、魚類養殖は、給餌量は一日2gとし、給餌した配合飼料が全て摂取される様に与えた。魚類養殖槽D及び栄養塩類濃度低減装置ではエアレーションを行った。
魚類養殖槽Dに導入した海水(環境海水)の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.048mg/リットル、アンモニア態窒素は0.0015mg/リットル以下(定量下限値0.0015mg/リットル以下)、リン0.006mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
魚類養殖槽Dへの海水くみあげ速度は、40リットル/日で行った。魚類養殖槽Dから栄養塩類濃度低減装置Dへの海水の送液流速は、40リットル/日で行った。
海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置として、様々な容器あるいは様々な槽あるいは様々な装置の一部がかけ流し方式で使用可能である。海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置の一例を図4に示す。
幅10cm(内側の寸法)、高さ20cm(内側の寸法)、長さ50cm(内側の寸法)、厚さ0.5cmの容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽を、開放されている側を上にして、ユニットを作る。図4aに示すように、容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽2つを、チューブでつなぎ、一つのユニットを作る。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間にフィルターを装着し、海藻がポリカーボネート水槽から流出するのを防いだ。ポリカーボネート水槽中でエアレーションを行った。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間には、逆流防止弁を挿入し、海水の逆流を防ぐのが好ましい。
栄養塩類濃度低減装置Dは、上述したユニットを4つ連結した大ユニット構造を採用した(図3b)。塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで海水を注入後、海藻を投入した。すなわち魚類養殖槽Dからの海水を栄養塩類濃度低減装置Dに流す前に、前もって栄養塩類濃度低減装置Dの各ポリカーボネート製の水槽には環境海水(海水)5リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体15g湿質量を投入した。したがって、一つのユニット(Uとも表記する。)あたり、環境海水10リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体30g湿質量が含まれるようにする。魚類養殖槽Dからの海水を栄養塩類濃度低減装置Dに流し始めてからは、6時間毎に電磁弁(手動式の弁でも代用できれば用いてもよい)、4方バルブ(2方バルブなど多方向バルブを組み合わせでも代用できれば用いてもよい)が切り替わり、魚類養殖槽由来の海水の流路を換えることにより、栄養塩類濃度低減装置Dに導入した海藻が入ったそれぞれの水槽に、魚類養殖槽からの高い濃度の栄養塩類を含んだ海水が接触するようにした。
図4に示したようなユニット水槽を束ねた大ユニット構造は、海水面の表面積が大きいため、海藻に必要な酸素や光強度を十分に確保できる利点があった。また、それぞれの水
槽の容積と数は、導入する海藻の種類により至適な条件に換えることが可能であった。
魚類養殖槽D由来の海水が流れ込む流路は、4方バルブにより、4つのユニットの入り口側(流入口ともいう)と接続されている。各ユニットの流入口側は(1)右隣のユニットの流出口側、あるいは(2)魚類養殖槽D由来の海水が流れ込む流路のどちらか一方と接続する二股構造になっており、電磁弁により制御されている(手動式の弁を用いて制御してもよい)。ユニット1(U1と表記)の右隣のユニットは図3bではユニット2(U2)となる。電磁弁は2つの3方切り替え弁により構成されている(図5)。各ユニットの流入口と流出口に3方切り替え弁は1個ずつ接続されている。電磁弁は手動の流路切り替え弁で代用してもよい。弁の流路切り替え操作の前あるいは後あるいは前と後でポンプを一旦停止してもよい。
一方、環境(周辺海域)への海水の返還のための流路は、4方バルブにより、4つのユニットの出口側(流出口ともいう)と接続されている。各ユニットの流出口側は(1)左隣のユニットの流入口側、あるいは(2)吸着剤処理槽への海水が流出する流路のどちらか一方と接続する二股構造になっており、電磁弁により制御されている(手動式の弁を用いて制御してもよい)。ユニット1(U1と表記)の左隣のユニットは図3bではユニット4(U4)となる。
塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の1日前に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Dに魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。魚類に配合飼料を与えた後、24時間経過するまで間は、止水条件で魚類養殖を行った。魚類に配合飼料を与えてから1日経過した時点で、流水条件での養殖を開始した。
栄養塩類濃度低減装置Dを用いた魚類養殖槽Dの海水中の栄養塩類の濃度低減開始から6時間ごとに、栄養塩類濃度低減装置Dの流路を以下のように切り替えた。
(1)魚類養殖海水中の栄養塩類の濃度低減開始時から開始後6時間経過直前まで:ユニット1とユニット4が連結されており、ユニット2とユニット3は塩水の流路から切り離されている。魚類養殖槽Dの海水は、ユニット1へ流れ、ついでユニット4を通り、一時的に海水をためるために設置した水槽に流入した。
(2)魚類養殖海水中の栄養塩類の濃度低減開始後6時間経過から12時間経過直前まで:ユニット2とユニット1とユニット4が連結されている。ユニット3は塩水の流路から切り離されている。魚類養殖槽D海水は、ユニット2からユニット1へ流れ、ついでユニット4を通り、一時的に海水をためるために設置した水槽に流入した。
(3)魚類養殖海水中の栄養塩類の濃度低減開始後12時間経過から18時間経過直前まで:ユニット3とユニット2とユニット1が連結されている。ユニット4は塩水の流路から切り離されている。魚類養殖槽Dの海水は、ユニット3からユニット2へ、ついでユニット2からユニット1へ流れ、ユニット1から吸着剤処理槽に流入した。図3(b)の図面
の挿入図[栄養塩類濃度低減装置Dを上から見た概略図(一例)]は、この時点での栄養塩類濃度低減装置Dの流路の状態の一例である。
(4)魚類養殖海水中の栄養塩類の濃度低減開始後18時間経過から24時間経過直前まで:ユニット4とユニット3とユニット2が連結されている。ユニット1は塩水の流路から切り離されている。魚類養殖槽Dの海水は、ユニット4からユニット3へ、ついでユニット3からユニット2へ流れ、ユニット2から吸着剤処理槽に流入した。
(5)魚類養殖海水中の栄養塩類の濃度低減開始後24時間経過から30時間経過直前まで:ユニット1とユニット4とユニット3が連結されている。ユニット2は塩水の流路から切り離されている。魚類養殖槽Dの海水は、ユニット1からユニット4へ、ついでユニット4からユニット3へ流れ、ユニット3から吸着剤処理槽に流入した。
魚類養殖槽Dからの海水を栄養塩類濃度低減装置Dに流し始めてから6時間経過するま
では、ユニット1の出口側にユニット4を連結して、ユニット1から流出した海水が吸着剤処理槽へ直接流れないようにすると共に、ユニット4の流出口の先に、水槽を設置し、流出する海水をためた。
栄養塩類濃度低減装置Dでの塩水中の栄養塩類の濃度低減開始から12時間経過後には、低減開始時にユニット1に注入された海水が、栄養塩類濃度低減装置Dの中で12時間経過し、ユニット4を通過した。ユニット4の流出口での海水中の窒素及びリン濃度を測定し、窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、1.52mg窒素/リットル以下、0.071mgリン/リットル以下に低減されていた。その後、栄養塩類濃度低減装置Dから流出する海水を吸着剤処理槽へ直接流れるようにした。吸着剤処理槽では、栄養塩類濃度低減装置Dから流出する海水を10リットル毎に処理槽にためた。それぞれの10リットルの海水を含む処理槽にMgMn型リン吸着剤0.5gと窒素吸着剤7gを投入し、4時間処理をした。4時間処理した後の吸着剤処理槽内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、0.85mg窒素/リットル以下、0.052mgリン/リットル以下に低減されており、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、吸着剤処理槽内の海水は、海域へポンプを使って返還した。
このことから、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置と吸着剤処理槽の両方を用いる方法あるいはシステムは、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置のみを用いた方法あるいはシステムで塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うよりもより短時間で塩水中の栄養塩類の濃度低減ができることが明らかである。また、吸着剤処理槽のみを用いた方法あるいはシステムで塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うよりも、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置と吸着剤処理槽の両方を用いる方法あるいはシステムは、使用する吸着剤の使用量を低くできる利点があることが明らかである。
MgMn型リン吸着剤と窒素吸着剤の組み合わせの代わりに、MgMn型リン吸着剤、Ni−Fe型硝酸態窒素吸着剤、アンモニア態窒素吸着剤、尿素態窒素吸着剤、を使用して塩水中の栄養塩類の濃度低減効果を調べた。その結果、MgMn型リン吸着剤、Ni−Fe型硝酸態窒素吸着剤、アンモニア態窒素吸着剤、尿素態窒素吸着剤、を使用した場合も、海藻を導入した栄養塩濃度低減装置のみを使用するよりも短時間で、塩水中の栄養塩類の濃度低減が達成できた。
MgMn型リン吸着剤、Ni−Fe型硝酸態窒素吸着剤、アンモニア態窒素吸着剤、尿素態窒素吸着剤の中なら、1種類以上を組み合わせて、塩水中の栄養塩類の濃度低減効果を調べた。その結果、海藻を導入した栄養塩濃度低減装置のみを使用するよりも短時間で、塩水中の栄養塩類の濃度低減が達成できた。
ユニット1は、塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し初めてから、18時間経過後から24時間経過するまでの6時間の間に流路から一時切り離される。この時、ユニット1に導入され、栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。空になったユニット1には、新たに、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体30g湿質量を導入し、実験を継続した結果、連続的に、塩水中の栄養塩類の濃度低減と光免疫抑制回復成分の生産を並行して行うことができた。
ユニット1は、塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し初めてから、18時間経過後から24時間経過するまでの6時間の間に増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収しないで、ユニット1内にいれたまま、次のサイクル(24〜48時間)での栄養塩類の濃度低減処理を行った。ユニット1内の非成熟性の単藻培養株が
増殖した藻体が、1サイクル目(0から24時間)よりも2サイクル目(24〜48時間)では増殖していたため、2サイクル目の栄養塩類濃度低減効率は、1サイクル目の栄養塩類濃度低減効率よりも高かった。塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し初めてから、42時間経過後から48時間経過するまでの6時間の間に再び、ユニット1が流路から一時切り離された時に、栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。
ユニット1について説明したが、ユニット1以外のユニットにおいても同様であった。
このように、本発明によれば、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体の回収の回数、間隔を変えても、塩水中の栄養塩類の濃度低減が効率よく達成できることが明らかである。
<養殖の継続>魚類養殖期間中この操作の繰り返しにより、魚類養殖槽由来の栄養塩類による環境基準値を超えた環境への負荷を、海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置を用いることによって制御しながらメジナを養殖することができた。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻は、光免疫抑制回復成分の原料として有効に利用でき、生態系リサイクルが達成できた。実施例5の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。
連続かけ流し方式の代わりに、間欠かけ流し方式(一定時間海水の流れを止めて塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行う方式)で同様の実験を行った結果、連続かけ流し方式で得られた結果と同様に、連続的に、塩水中の栄養塩類の濃度低減と光免疫抑制回復成分の生産を並行して行うことができた。
かけ流し方式でのユニットの数、ユニットの容量、流速は任意に選ぶことができた。
海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Dを、洋上かけ流し方式のシステムに組み込んで使用する代わりに、塩水源(塩水を含んだ水槽など)から塩水送液ポンプにより供給して使用した。海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Dは、ユニット4つから構成される大ユニットを使用した。吸着剤処理槽から流出する塩水を一定量毎にため、窒素濃度およびリン濃度を測定した。その結果、洋上以外でも、塩水中の栄養塩類の濃度低減が達成できていることが明らかになった。栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。魚類養殖のように豊富な海水、酸素、栄養塩などを必要とする生物養殖由来の塩水を処理する場合以外であれば、本発明の海藻を利用した塩水中の栄養塩類濃度低減方法あるいはシステムは、洋上以外でも使用可能であることが分かる。
海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置は、塩水中の栄養塩類の濃度を低減することを主目的として使用することもできるし、藻類を増殖させることや藻類を保存することを主目的として使用することもできた。
実施例5の変法;
実施例5では、栄養塩類の濃度低減開始時に、栄養塩類濃度低減装置Dの各ユニット(ユニット1、2、3、4)には、環境海水10リットルとオゴノリ属海藻が投入されている。所望とあれば、ユニット2、3には栄養塩類の濃度低減開始時に、環境海水10リットルの代わりに環境海水よりも栄養塩類濃度が高い塩水(たとえば、餌さの摂取後24時間止水条件で魚類養殖した養殖水)10リットルを大型海藻ともにユニット内に投入しておいてもよい。その手順の一例を以下に示す。
(1)魚類養殖槽Dのほかにもう一つ魚類養殖槽D‘(40リットル)を準備した。
(2)<塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の48時間前(養殖1日目)>養殖1日目に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽D‘に魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。
(3)<塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の24時間前(養殖2日目)>24時間後に魚類を網ですくい、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Dに移した。養殖24時間後の魚類養殖槽D‘の栄養塩類濃度測定のため槽内の海水を少量サンプリングした後、魚類養殖槽C’の残りの海水を沈殿分が吸い込まれないようにフィルターを通しての栄養塩類濃度低減装置Dのユニット2及びユニット3に約10リットルずつ送液した。この操作により環境海水よりも栄養塩類濃度が高い塩水40リットルを得ることができる。残りの20リットルは流路からユニットが切り離された際に使用することが出来る。
(4)<塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の28時間前(養殖2日目)>養殖2日目に、魚類養殖槽Dで養殖されている魚類に配合飼料2gを与えた。魚類に配合飼料を与えた後、24時間経過するまで間は、止水条件で魚類養殖を行った。魚類に配合飼料を与えてから1日経過した時点で、流水条件での養殖を開始した。
(5)栄養塩類濃度低減装置Dのユニット1及びユニット4に約10リットルずつ環境海水を注いだ。
(6)次いで、栄養塩類濃度低減装置Dのユニット1〜4にオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を各ユニットに30g湿質量ずつを投入した。
(7)以降は、実施例5と同様の操作を行った。
栄養塩類の濃度低減水を利用した生物
トゲキリンサイの人工培養;
紅藻類キリンサイと呼ばれる大型海藻は、医学用原料、化学用原料、食品原料として有用である。キリンサイには、コットニタイプのキリンサイ(学名Kappaphycus
alvarezii、旧名Eucheuma cottonii)、トゲキリンサイ(Eucheuma serra)、スピノーサムタイプのキリンサイ(学名Eucheuma denticulatum、旧名Eucheuma spinosum)などがある。このうち、コットニタイプとスピノーサムタイプは養殖が可能であるが、トゲキリンサイは難しい。トゲキリンサイが外海に面した海域の比較的深い箇所に生息していることが養殖の難しい理由の一つとして考えられている。トゲキリンサイが生育している環境は、沿岸海域に比較して貧栄養の環境であり、沿岸で生息する海藻(沿岸性海藻あるいは内湾性海藻ともいう)の培養手法ではうまく増殖しない。本発明では、トゲキリンサイのように外洋に面した比較的深い、貧栄養条件の場所に生育している生物を外洋性生物あるいは外海性生物、その中で海藻を外洋性海藻あるいは外海洋海藻という。
キリンサイは、カラギーナンという多糖を生産する。キリンサイの種類により、生産されるカラギーナンの主成分が大きく異なる。コットニタイプの主生産物はカッパー型カラギーナンであり、スピノーサタイプの主生産物はイオタ型カラギーナンであるが、トゲキリンサイは主にラムダ型カラギーナンを生産する。このラムダ型カラギーナンは、他の型のカラギーナンよりも強い生理活性を有していることが報告され、トゲキリンサイに注目が集まっている。また、ある種のキリンサイは生理活性物質であるレクチン(赤血球凝集素ともいう)と呼ばれる有用物質を含んでいる。トゲキリンサイは、他の種類のキリンサイが含有するレクチンの10倍以上もレクチンを含んでいることが報告されている。トゲキリンサイは四国周辺では、徳島県宍喰付近の太平洋に面した海域で水深10m程度のやや水深が深い場所にしか集団で生息していないため、トゲキリンサイの大量採取が難しい。
そのため、トゲキリンサイの養殖技術の確立が求められている。
塩水中の栄養塩類の濃度低減水;
実施例4で海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Cを、洋上かけ流し方式のシステム
に組み込んで使用する代わりに、塩水源(塩水を含んだ水槽など)から塩水送液ポンプにより塩水を海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Cに供給した。海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Cは、ユニット(図4a)が8つ連結した大ユニットを使用した。塩水源(塩水を含んだ水槽など)として、高知県室戸市で取水された海洋深層水を入れた水槽を用いた。海洋深層水を入れたタンク(100リットル)、栄養塩類濃度低減装置C(80リットル)、海洋深層水タンクから栄養塩類濃度低減装置Cへの送液ポンプ、栄養塩類濃度低減装置Cから栄養塩類濃度低減水用タンク(100リットル)へ濃度低減した塩水を返還するチューブを設置した。
海洋深層水100リットルが入った塩ビ製タンクから海洋深層水を流速40リットル/日で、栄養塩類濃度低減装置Cに連続的に送液した。オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を、塩水中の栄養塩類の濃度低減の目的で栄養塩類濃度低減装置C内に導入した。栄養塩類濃度低減装置ではエアレーションを行い、温度20℃、光強度60μmol/cms、光周期は14時間明期10時間暗期に設定した。海洋深層水を入れたタンク(100リットル)へ、24時間毎に海洋深層水40リットルを補充した。
海洋深層水の栄養塩類濃度は、窒素0.423mg/リットル、リン0.062mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。一方、高知県室戸市の海洋表層水は、栄養塩類濃度は、窒素0.060mg/リットル、リン0.008mg/リットルであった。また、塩分は、海洋深層水が34.3‰、海洋表層水が33.7‰であった。
海藻を導入(収納)する容器あるいは海藻を導入(収納)する水槽あるいは海藻を導入(導入)する装置の一部分の材質、海藻を導入(収納)する容器あるいは海藻を導入(収納)する水槽あるいは海藻を導入(導入)する装置の一部分の形状、大きさ、容量、ユニットの形状、大きさ、容量、大ユニットを形成するユニットの数などは自由に選択できるが、海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減を効率的に行うには、海藻を導入(収納)する容器あるいは海藻を導入(収納)する水槽あるいは海藻を導入(導入)する装置の一部分は、1リットルから10リットル程度の容量が好ましい。
海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置として、様々な容器あるいは様々な槽あるいは様々な装置の一部がかけ流し方式で使用可能である。海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置の一例を図4に示す。幅10cm(内側の寸法)、高さ20cm(内側の寸法)、長さ50cm(内側の寸法)、厚さ0.5cmの容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽を、開放されている側を上にして、ユニットを作る。図4aに示すように、容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽2つを、チューブでつなぎ、一つのユニットを作る。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間にフィルターを装着し、海藻がポリカーボネート水槽から流出するのを防いだ。ポリカーボネート水槽中でエアレーションを行った。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間には、逆流防止弁を挿入し、海水の逆流を防ぐのが好ましい。
塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで海洋深層水を注入後、海藻を投入した。すなわち海洋深層水タンクからの海水を栄養塩類濃度低減装置Cに流す前に、前もって栄養塩類濃度低減装置Cの各ポリカーボネート製の水槽には海洋深層水5リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体5g湿質量を投入した。したがって、一つのユニット(Uとも表記する。)あたり、海洋深層水10リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体10g湿質量が含まれるようにする。海洋深層水タンクからの海水を栄養塩類濃度低減装置Cに流し始めてからは、6時間毎に電磁弁(手動式の弁でも代用できれば用いてもよい)、8方バルブ(6方バルブなど多方向バルブを組み合わせでも代用できれば用いてもよい)が切り替わり、海洋深層水タンク由来の海水の流路を換えることにより、栄養塩類濃度低減
装置Cに導入した海藻が入ったそれぞれの水槽に、海洋深層水タンク由来の高い濃度の栄養塩類を含んだ海水(海洋深層水)が接触するようにした。
図4に示したようなユニット水槽を束ねた大ユニット構造は、海水面の表面積が大きいため、海藻に必要な酸素や光強度を十分に確保できる利点があった。また、それぞれの水槽の容積と数は、導入する海藻の種類により至適な条件に換えることが可能であった。
海洋深層水タンクからの海水が流れ込む流路は、8方バルブAにより、8つのユニットの入り口側(流入口ともいう)と接続されている。各ユニットの流入口側は(1)右隣のユニットの流出口側、あるいは(2)海洋深層水タンクからの海水が流れ込む流路のどちらか一方と接続する二股構造になっており、電磁弁により制御されている(手動式の弁を用いて制御してもよい)。ユニット1(U1と表記)の右隣のユニットは図4ではユニット2(U2)となる。電磁弁は2つの3方切り替え弁により構成されている(図5)。各ユニットの流入口と流出口に3方切り替え弁は1個ずつ接続されている。電磁弁は手動の流路切り替え弁で代用してもよい。弁の流路切り替え操作の前あるいは後あるいは前と後でポンプを一旦停止してもよい。
一方、塩水中の栄養塩類の濃度低減水用のタンクへの海水の流路は、8方バルブBにより、8つのユニットの出口側(流出口ともいう)と接続されている。各ユニットの流出口側は(1)左隣のユニットの流入口側、あるいは(2)塩水中の栄養塩類の濃度低減水用のタンクへの海水の流路のどちらか一方と接続する二股構造になっており、電磁弁により制御されている。ユニット1(U1と表記)の左隣のユニットは図4ではユニット8(U8)となる。
海洋深層水タンクからの海水を栄養塩類濃度低減装置Cに流し始めてから24時間経過するまでは、ユニット1の出口側にユニット8、ユニット7、ユニット6の3つのユニットを連結して、ユニット6の流出口の先を、排海水用タンクに注入する。
栄養塩類濃度低減装置Cでの塩水中の栄養塩類の濃度低減開始から24時間経過した地点で、低減開始時にユニット1に注入された海水が、栄養塩類濃度低減装置Cの中で24時間経過し、ユニット8、7、6を通過した。この時点から、栄養塩類濃度低減装置Cから流出する塩水中の栄養塩類の濃度低減水は、塩水中の栄養塩類の濃度低減水用タンクに一定量ずつ分取を開始した。分取開始時に栄養塩類濃度低減装置Cから流出する海水中の窒素及びリン濃度を測定した。その結果、窒素濃度は、0.060mg窒素/リットルと海洋表層水のレベルまで低減した。リン濃度は0.025mgリン/リットルまで低減されていることが明らかになった。
その後、6時間毎に、電磁弁(手動式の弁でも代用できれば用いてもよい)、8方バルブ(6方バルブなど多方向バルブを組み合わせでも代用できれば用いてもよい)を用いた流路切り替えにより、海水の流入口からの連結、各ユニット間の連結、周辺海域への海水の流出口への連結を換えて塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行った。この操作は、実施例4で栄養塩類濃度低減装置Cへの塩水流入元が魚類養殖槽である代わりに海洋深層水タンクを用い、栄養塩類濃度低減装置Cから塩水が流出する先が、環境(周辺海域)の代わりに、塩水中の栄養塩類の濃度低減水用タンクであること以外は、図4cに示した手順で行った。
実施例4と同様に、ユニット1は、塩水中の栄養塩類の濃度低減に使用し初めてから(図4cI)、42時間経過後から48時間経過するまでの6時間の間(図4cVII)に流
路から一時切り離される。この時、ユニット1に導入され、栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。空になったユニット1には、新たに、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体10g湿質量を導入し、実験を継続した結果
、連続的に、塩水中の栄養塩類の濃度低減と光免疫抑制回復成分の生産を並行して行うことができた。
ユニット1について説明したが、ユニット1以外のユニットにおいても同様であった。
連続かけ流し方式の代わりに、間欠かけ流し方式(一定時間海水の流れを止めて塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行う方式)で同様の実験を行った結果、連続かけ流し方式で得られた結果と同様に、連続的に、塩水中の栄養塩類の濃度低減と光免疫抑制回復成分の生産を並行して行うことができた。
かけ流し方式でのユニットの数、ユニットの容量、流速は任意に選ぶことができた。
この操作の繰り返しにより、海洋深層水から栄養塩類の濃度低減水を得ることが出来た。
栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。実施例6の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。得られた海洋深層水の栄養塩類の濃度低減水を一度海水タンクにためて、使用まで遮光冷蔵した。1週間以内に使用する場合は、室温遮光安置しても良い。
塩水中の栄養塩類の濃度低減水を用いたトゲキリンサイの培養;
遮光冷蔵保存していた海洋深層水の栄養塩類の濃度低減水あるいは、室温遮光安置していた海洋深層水の栄養塩類の濃度低減水を培養温度条件の20℃に温度調節する。30リットル容量のポリカーボネート製タンクに海洋深層水の栄養塩類の濃度低減処理水30リットルを加え、ついで、トゲキリンサイ湿質量500gを添加した。培養条件は、温度20℃、光強度40μmol/msec、光周期は12時間明期−12時間暗期、終日エアレーション、培地交換2日間毎に設定してトゲキリンサイの培養を行った。6日毎にトゲキリンサイの湿質量をクリーンブース内で測定した。その結果の一部を表10に示す。
トゲキリンサイは、30日間の培養期間を通じて、藻体の色も鮮やかな赤みのかかった色をしており変色や枯れなどを起こすことなく、アイスアイス病も発症せずに元気であった。また培養タンク内での珪藻類や藍藻類や他の大型海藻の異常繁殖も見られなかった。トゲキリンサイは、オゴノリ属海藻に比較して生長速度は低かったが、人工培養によって30日間で培養開始時の約1.5倍の湿質量まで増殖した。増殖したトゲキリンサイより、ラムダカラギーナンを得ることが出来た。また増殖したトゲキリンサイより赤血球凝集素を得ることができた。
キリンサイのアイスアイス病は、キリンサイに微生物が異常繁殖する病気で、キリンサイの色素が落ちてその藻体表面が真っ白くなる症状がその特徴である。一端この病気が出た藻体は回復することが困難である。これまでに海洋深層水で培養した場合は、キリンサイにアイスアイス病がでないことが知られていた。この原因は未だ解明されていないが、海洋深層水中に、抗菌作用を示す成分あるいは海藻の免疫力を増進する成分が含まれている可能性を示唆している。しかし、一般の海水に比べて栄養塩類を高濃度に含有する海洋深層水で培養した場合、培養タンク内でのキリンサイよりも生長速度の速い珪藻類や藍藻類が異常繁殖し、その結果、キリンサイの生長が妨害され、最終的には生存できなくなることが知られていた。そこで、海洋深層水のアイスアイス病への抵抗性をキリンサイ培養に有効に活かす方法の開発が求められていた。
本発明で得られる海洋深層水中の栄養塩類の濃度低減処理水で培養することによって、キリンサイのアイスアイス病も発症せず、かつ培養タンク内での珪藻類や藍藻類の異常繁
殖も起きずに、これまで人工培養が困難であるとされていた紅藻類大型海藻キリンサイの培養が可能になった。本発明で得られる海洋深層水中の栄養塩類の濃度低減処理水は、有用外洋性生物やそれら外洋生成物が生産する有用物質の生産に適した生物飼育水であることが明らかである。
Figure 0005176124
備考:
比較例7:18日目で珪藻、藍藻が異常繁殖。
比較例8:18日目でアイスアイス病発生。
比較例9:18日目でアイスアイス病発生。
得られた海洋深層水の栄養塩類の濃度低減処理水を一度海水タンクにためて、使用まで遮光冷蔵し、使用前に培養温度に調節してトゲキリンサイの培養をする代わりに、得られた海洋深層水の栄養塩類の濃度低減処理水を直接トゲキリンサイの培養タンクに導いて、連続かけ流し培養を行った。その結果、海洋深層水の栄養塩類の濃度低減処理水を一度海水タンクに保存した場合と同様に、連続かけ流し培養においても、珪藻や藍藻の異常繁殖や、大型海藻の変色や枯れなどを起こすことなく、トゲキリンサイを増殖させることができた。このことから、得られた海洋深層水の栄養塩類の濃度低減処理水は、即時使用も保存後使用も可能なことが分かる。
連続かけ流し方式で塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う代わりに、バッチ方式で塩水中の栄養塩類の濃度低減を行い、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を得た。この塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を用いて、トゲキリンサイの培養を行ったところ、連続かけ流し方式で得た塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を用いてトゲキリンサイを培養したときと同様の結果を得た。
比較例7
実施例6で培養液として海洋深層水中の栄養塩類の濃度低減処理水使用した代わりに、海洋深層水を培養液として用いたほかは実施例6と同様にしてトゲキリンサイの培養を行
った。培養18日目で培養タンク内に珪藻、藍藻が異常繁殖しだし、30日目には最初のキリンサイ湿質量よりも減ってしまった。
比較例8
実施例6で培養液として海洋深層水中の栄養塩類の濃度低減処理水使用した代わりに、海洋深層水と栄養塩濃度を同じにした人工海水を培養液として用いたほかは実施例6と同様にしてトゲキリンサイの培養を行った。人工海水は、実施例1記載の調製方法で、添加する硝酸ナトリウムとグリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の量を調整して作った。24日目でアイスアイス病発生し、30日目には藻体の回収が困難であった。
比較例9
実施例6で培養液として海洋深層水中の栄養塩類の濃度低減処理水使用した代わりに、海洋深層水中の栄養塩類の濃度低減処理水と栄養塩濃度を同じにした人工海水を培養液として用いたほかは実施例6と同様にしてトゲキリンサイの培養を行った。人工海水は、実施例1記載の調製方法で、添加する硝酸ナトリウムとグリセロリン酸二ナトリウム5.5水和物の量を調整して作った。24日目でアイスアイス病発生し、30日目には藻体の回収が困難であった。24日目でアイスアイス病発生し、30日目には藻体の回収が困難であった。
培養する海藻としてトゲキリンサイを用いる代わりに別の外洋性海藻である紅藻類大型海藻トサカノリを用いて同様に培養を試みた結果、トゲキリンサイの培養と同様に、珪藻や藍藻の異常繁殖や、大型海藻の変色や枯れなどを起こすことなく、トサカノリを増殖させることができた。さらに、塩水中の栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。
外洋性海藻であるトサカノリは暖海域の水深10m以深の深さにある岩礁域に繁殖する海藻であり、海藻サラダの素材として使用されている有用海藻である。しかし、これまでトサカノリの養殖が困難であり、天然海域に生息しているトサカノリ海藻を採取する方法しかなかった。
本発明において塩水中の栄養塩類を海藻が吸収するにより、得られる塩水中の栄養塩類の濃度低減水を生物の生育水として利用することによって、トゲキリンサイやトサカノリなどの外洋性生物を供給することが可能であることが明らかである。
実施例4と異なる流路切り替えプログラムを持つ栄養塩類濃度低減装置E(図6a)を用いて塩水中の栄養塩類の濃度低減を行った。
図4bと異なり、魚類養殖槽からの海水が8方バルブAを通してU1の流入口と接続し
、またU2の流出口から海水が8方バルブBを通して環境への返還されている(図6a,図6b)。
塩水中の栄養塩類の濃度低減実施の1日前に、海水40リットルを入れた魚類養殖槽Cに魚類を投入し、配合飼料2gを与えた。魚類に配合飼料を与えた後、24時間経過するまで間は、止水条件で魚類養殖を行った。魚類に配合飼料を与えてから1日経過した時点で、流水条件での養殖を開始した。
I 海水送液開始から0〜6時間後
あらかじめ各ユニットには、環境海水10リットルと海藻30gが入っている。
各ユニットの流出口は、左となりのユニットの流入口と2つの流路切り替えバルブ(電
磁弁でもよい)をはさんで接続されている(例えば、U1流出口はU8流入口と接続されている。)。ただし、U1流入口とU2流出口との間は切断されており、U1流入口は、8方バルブAを通して、魚類養殖槽とつながっている。
U2流出口は、8方バルブAを通して処理水用水槽につながっている。
この状態で、魚類養殖槽Cから海水を栄養塩類濃度低減装置Eに流速40リットル/日で流し始める。魚類養殖槽CからU1へ流し始めて6時間経過するまで、U2から流出する海水は処理水用水槽にためられる。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
II 海水送液開始から6〜12時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて6時間経過した時点で、II-1〜4の操作をほぼ同時に
行う。
(II-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU1流入口からU2流入口へ変更する。
(II-2)U1流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U1流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U1流入口とU2流出口との流路を接続する。
(II-3)U3流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U3流出口とU2流入口との流路を切断し、U3流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(II-4)8方バルブBを切り替えてU3流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
III 海水送液開始から12〜18時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて12時間経過した時点で、III-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(III-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU2流入口からU3
流入口へ変更する。
(III-2)U2流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU3流出口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U2流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U2流入口とU3流出口との流路を接続する。
(III-3)U4流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU3流入口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U4流出口とU3流入口との流路を切断し、U4流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(III-4)8方バルブBを切り替えてU4流出口からの流水が処理水用水槽にたまるよう
に接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
IV 海水送液開始から18〜24時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて18時間経過した時点で、IV-1〜4の操作をほぼ同時
に行う。
(IV-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU3流入口からU4流入口へ変更する。
(IV-2)U3流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU4流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U3流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U3流入口とU4流出口との流路を接続する。
(IV-3)U5流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU4流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U5流出口とU4流入口との流路を切断し、U5流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(IV-4)8方バルブBを切り替えてU5流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように
接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
V 海水送液開始から24〜30時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて24時間経過した時点で、V-1〜4の操作をほぼ同時
に行う。
(V-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU4流入口からU5流入口へ変更する。
(V-2)U4流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU5流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U4流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U4流入口とU5流出口との流路を接続する。
(V-3)U6流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU5流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U6流出口とU5流入口との流路を切断し、U6流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(V-4)8方バルブBを切り替えてU6流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
Vにおいて、U6流出口から溶出する海水は、海藻による塩水中の栄養塩類濃度低減装置の中に24時間滞留した海水である。Vにおいて(魚類養殖槽から海水を流し始めて24経過して)、Iにおいて最初にU1に流入した海水が栄養塩類濃度低減装置から溶出する。
VI 海水送液開始から30〜36時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて30時間経過した時点で、VI-1〜4の操作をほぼ同時
に行う。
(VI-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU5流入口からU6流入口へ変更する。
(VI-2)U5流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU6流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U5流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U5流入口とU6流出口との流路を接続する。
(VI-3)U7流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU6流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流出口とU6流入口との流路を切断し、U7流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VI-4)8方バルブBを切り替えてU7流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
VII 海水送液開始から36〜42時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて36時間経過した時点で、VII-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(VII-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU6流入口からU7
流入口へ変更する。
(VII-2)U6流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU7流出口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U6流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U6流入口とU7流出口との流路を接続する。
(VII-3)U8流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU7流入口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流出口とU6流入口との流路を切断し、U8流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VII-4)8方バルブBを切り替えてU7流出口からの流水が処理水用水槽にたまるよう
に接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
VIII 海水送液開始から42〜48時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて42時間経過した時点で、VIII-1〜4の操作をほぼ同
時に行う。
(VIII-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU7流入口からU8流入口へ変更する。
(VIII-2)U7流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU8流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U7流入口とU8流出口との流路を接続する。
(VIII-3)U1流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU8流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U8流出口とU7流入口との流路を切断し、U1流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VIII-4)8方バルブBを切り替えてU1流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
IX 海水送液開始から48〜54時間後
魚類養殖槽から海水を流し始めて48時間経過した時点で、IX-1〜4の操作をほぼ同時
に行う。
(IX-1)8方バルブAを切り替えて魚類養殖槽Cからの海水流路をU8流入口からU1流入口へ変更する。
(VIII-2)U8流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU1流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U8流入口とU1流出口との流路を接続する。
(VIII-3)U2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU1流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U1流出口とU8流入口との流路を切断し、U2流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VIII-4)8方バルブBを切り替えてU2流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
海水の流れについていえば、IXの状態は元のIの状態と同じである。
X 海水送液開始から54時間後以降
6時間毎に切り替えバルブ(電磁弁でも良い)2個と8方バルブAとB8方バルブBを切り替えることを繰り返し、塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う。
各ユニット中で栄養塩類を吸収して増殖した海藻は、任意の時間に海水中から隔離することができ、増殖した海藻の代わりに新しい海藻を各ユニット内に投入することができる。その時期は海藻の増殖や海藻成分の含有量によって決めることもできる。
海藻の入ったユニットに魚類養殖槽からの海水が導入されてから(Iの状態)、当該ユニットが8方バルブを通して処理水用水槽にたまるように接続されるまで(IXの状態)をめどとして海藻の交換をした場合、新規に導入された海藻は48時間にわたって塩水中の栄養塩類濃度低減に利用されることとなる。
実施例7は、海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減処理の時間が48時間であり、実施例4の18時間に比較して長いため、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理槽Eよりでる処理海水の栄養塩濃度は、実施例4の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理槽Cよりでる処理海水の栄養塩濃度よりも低い。そのため、塩水中の栄養塩濃度が高濃度の場合に実施例4よりも有効な手段と考えられる。
栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。
海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置は、塩水中の栄養塩類の濃度を低減することを主目的として使用することもできるし、藻類を増殖させることや藻類を保存することを主目的として使用することもできた。
比較例10
実施例4で、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置C(流路切替え装置のついた濃度低減装置)を用いる代わりに、魚類養殖槽へ海藻を導入して、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行った。
比較例10では、塩水中の栄養塩類の濃度低下は、実施例4よりもわずかであった。
実施例4の結果と比較例10の結果から、魚類養殖槽と海藻水槽は別にしたほうが塩水中の栄養塩類の濃度低減効果が高いことが明らかである。魚類養殖槽は、魚類を生育させるため、タンクのような深さの深い水槽が必要である。しかし、深さの深い水槽よりも深さの浅い海面表面積の大きい水槽あるいは容器あるいは装置の一部分の方が海藻の生長は早くなる。図4に示したようなユニット水槽を束ねた大ユニット構造は、海水面の表面積が大きいため、海藻に必要な酸素や光強度を十分に確保できる利点があった。
比較例11
実施例7で、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置C(流路切替え装置のついた濃度低減装置)を用いる代わりに、流路切替え装置のついていない水槽(塩水中の栄養塩類の濃度低減水槽F)を用いて、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行った。
比較例11では、塩水中の栄養塩類の濃度低下は、実施例7よりもわずかであった。
例えば4つのユニット(U1〜U4)が存在する場合、U1→U2→U3→U4の順に常に栄養塩類を含む塩水を流すと、U1の海藻は栄養塩類濃度が高く海藻の生長が速く、U2〜U4に流れるに従って塩水中の栄養塩類濃度が低くなるため、海藻の生長が遅くなる。栄養塩類を含む塩水を最初に流入させるユニットを、例えば一定時間ごとにU1→U2→U3→U4(U1→U4→U2→U3、U1→U3→U2→U4等でもよい)の順に切り替えれば、各ユニットにおける栄養塩類濃度は平均され、海藻の生長(栄養塩類濃度の低減)を最も効率よく行うことができるので好ましい。本発明の濃度低減装置では、複数の濃度低減ユニットと流路切り替え弁を組み合わせることで、海藻の生長(栄養塩類濃度の低減)を速やかに行うことができる。
濃度低減ユニットは、複数を組み合わせて使用することで、海藻の生長(栄養塩類濃度の低減)を速やかに行うことができ、例えば2〜16個、好ましくは4〜8個のユニットを組み合わせて使用することができる。
実施例7の結果と比較例11の結果から、流路切り替え機を装備した塩水中の栄養塩類の濃度低減処理槽の方が、流路切替え装置を装備しない塩水中の栄養塩類の濃度低減処理槽よりも、効率的に塩水中の栄養塩類の濃度低減が可能なことが明らかである。また、実施例4の結果と比較例11の結果から、流路切り替え機を装備した塩水中の栄養塩類の濃度低減処理槽の方が、流路切替え装置を装備しない塩水中の栄養塩類の濃度低減処理槽よりも、塩水中の栄養塩類を吸収して増殖した海藻の量も高いことがわかる。
栄養塩類濃度低減装置の海藻導入部(栄養塩類濃度低減装置の海藻導入容器あるいは栄養塩類濃度低減装置の海藻導入槽ともいう場合がある)の形状が塩水中の栄養塩類の濃度低減効果に及ぼす影響を評価した。
マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水;
以下の様な操作で、マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水を調製した。
環境海水(実施例2、3、4、5、7とは違う海水)1000リットルの入ったアルテミア孵化槽A(容量1000リットル、最大直径1370mm、高さ1530mm、深さ1240mm)にマダイ36尾(36尾の合計質量約4.0kg)を投入しマダイの養殖を止水条件で実施した。エアレーションをして養殖した。餌(配合飼料)を乾燥重量約40g与えてから24時間経過するまで、3時間ごとに養殖海水80ミリリットル(サンプル管1本につき養殖海水20ミリリットルを分取した。つまり3時間ごとのサンプル数は4点である)を分取した。分取した養殖海水を0.45ミクロンのフィルターで濾過後、オートアナライザー(BRAN+LUEBBE社製)を用いて時間ごとに分取した養殖海水の栄養塩
類濃度を定量した。
アルテミア孵化槽Aに導入した環境海水の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.044mg/リットル、アンモニア態窒素0.008mg/リットル、リン0.007mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
餌(配合飼料)を与えてから24時間後にマダイを網ですくい、環境海水(実施例2、3、4、5、7とは違う海水)1000リットルの入ったもう一つのアルテミア孵化槽B(容量1000リットル、最大直径1370mm、高さ1530mm、深さ1240mm)に移した。養殖24時間後のアルテミア孵化槽Aの栄養塩類濃度測定のため槽内の海水を少量サンプリングした後、マダイを移した後のアルテミア孵化槽Aの海水を沈殿分が吸い込まれないようにしてアルテミア孵化槽C(容量1000リットル、最大直径1370mm、高さ1530mm、深さ1240mm)に移した。アルテミア孵化槽Cは魚類を投入せず、「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」の保存のために使用した。
餌を与えてから24時間経過するまで、養殖時間が長くなるにしたがって魚類養殖水中のアンモニア態窒素濃度およびリン濃度が上昇した。硝酸態窒素濃度の上昇は、アンモニア態窒素濃度の上昇に比べて低かった。マダイ36尾に餌(配合飼料)を約40g与えてから24時間経過後のアルテミア孵化槽A中の魚類養殖水の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.068mg/リットル、アンモニア態窒素1.202mg/リットル、リン0.096mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
マダイ36尾に餌(配合飼料)を約40g与えてから24時間経過後のアルテミア孵化槽A中の魚類養殖水を、本発明では「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」ともいう。マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水の窒素濃度およびリン濃度は、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)をすでに上回っていた。
直列8連ユニット(栄養塩類濃度低減装置F)でのバッチ方式での栄養塩類の濃度低減;
幅10cm(内側の寸法)、高さ20cm(内側の寸法)、長さ50cm(内側の寸法)、厚さ0.5cmの容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽を、開放されている側を上にして、ユニットを作る。図4aに示すように、容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽2つを、チューブでつなぎ、一つのユニットを作る。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間にフィルターを装着し、海藻がポリカーボネート水槽から流出するのを防いだ。ポリカーボネート水槽中でエアレーションを行った。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間には、逆流防止弁を挿入し、海水の逆流を防ぐのが好ましい。
栄養塩類濃度低減装置Fは、上述したユニット[ユニットのことをUと記載することもある。]8個から構成されている。ユニット同士はチューブで直列に連結されている(U1−U2−U3−U4−U5―U6―U7−U8)。塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う
際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」を注入後、海藻を投入した。すなわち栄養塩類濃度低減装置Fの各ポリカーボネート製の水槽には「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」5リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体7.5g湿質量を投入した。したがって、一つのユニットあたり、「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」10リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体15g湿質量が含まれる。栄養塩類濃度低減装置Fには「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」80リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量が含まれる。
栄養塩類濃度低減装置Fではエアレーションを行い、「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」の栄養塩類の濃度低減をオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を用いて行った。栄養塩類の濃度低減開始後、24時間経過した時点で栄養塩類濃度低減装置Fの塩水中の栄養塩類濃度を測定した。
栄養塩類濃度の低減開始後24時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置Fの塩水中の硝酸態窒素濃度は0.020mg/リットル、アンモニア態窒素濃度は0.579mg/リットル、リン濃度は0.047mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。窒素濃度、リン濃度はそれぞれ環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていた。栄養塩類濃度の低減開始後24時間経過後のオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の湿質量は130gであり、塩水中の栄養塩類の濃度低減開始時の120gから増加していた。
栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。実施例8の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。
図4に示したようなユニット水槽を束ねた栄養塩類濃度低減装置の構造は、海水面の表面積が大きいため、海藻に必要な酸素や光強度を十分に確保できる利点があった。また、それぞれの水槽の容積と数は、導入する海藻の種類により至適な条件に換えることが可能であった。
実施例8の変法(バッチ方式の魚類養殖);
実施例8で環境海水(実施例2、3、4、5、7とは違う海水)1000リットルの入ったアルテミア孵化槽A(容量1000リットル、最大直径1370mm、高さ1530mm、深さ1240mm)を使用した代わりに環境海水(実施例8と同様の海水)80リットルの入ったアルテミア孵化槽D(容量100リットル、最大直径550mm、高さ1030mm、深さ800mm)を、実施例8でマダイ36尾(36尾の合計質量約4.0kg)を投入した代わりにマダイ3尾(3尾の合計質量約320g)を投入した以外は、実施例8と同様にしてマダイの止水養殖を行った。餌(約3.2g)は一日に1回与え、エアレーションしながらマダイを養殖した。
餌(配合飼料)を与えてから24時間後にマダイを網ですくい、環境海水(実施例8と同様の海水)80リットルの入ったもう一つのアルテミア孵化槽E(容量100リットル、最大直径550mm、高さ1030mm、深さ800mm)に移した。養殖24時間後のアルテミア孵化槽Dの栄養塩類濃度測定のため槽内の海水を少量サンプリングした後、魚類養殖槽Dの残りの海水を沈殿分が吸い込まれないようにフィルターを通して栄養塩類濃度低減装置Fに移したのち、アルテミア孵化槽D内の沈殿を回収した。
次いで、80リットルの栄養塩類濃度低減装置Fにオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量を投入し、塩水中の栄養塩類の濃度低減を行った

マダイ3尾に餌(配合飼料)を約3.2g与えてから24時間経過後のアルテミア孵化槽D中の魚類養殖水の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.068mg/リットル、アンモニア態窒素1.200mg/リットル、リン0.095mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。なお、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった。アルテミア孵化槽Dの窒素濃度およびリン濃度は、環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)をすでに上回っていた。
養殖2日目に、アルテミア孵化槽Eで養殖されているマダイに配合飼料約3.2gを与えた。
<養殖3日目>海藻導入後24時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置F内の塩水中の硝酸態窒素濃度は0.020mg/リットル、アンモニア態窒素濃度は0.577mg/リットル、リン濃度は0.046mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。窒素濃度、リン濃度はそれぞれ環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、栄養塩類濃度低減装置F内の海水は、海域へポンプを使って返還した。栄養塩類濃度低減装置Fで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の湿質量は、栄養塩類濃度の低減開始時の120gから、24時間経過後では130gに増加していた。
アルテミア孵化槽E内の海水の栄養塩類濃度は、養殖2日目(最初に餌を与えてから24時間経過後)のアルテミア孵化槽D内の海水の栄養塩類濃度と同等のレベルまで上昇していた。アルテミア孵化槽E内のマダイを網ですくい、環境海水80リットルを入れたアルテミア孵化槽Dに移した。アルテミア孵化槽Eの海水をフィルターで沈殿分が吸い込まれないようにして栄養塩類濃度低減装置Fに送液した。アルテミア孵化槽Eの海水を送液後、アルテミア孵化槽E内の沈殿を回収した。次いで、栄養塩類濃度低減装置Fに先ほど栄養塩類濃度低減装置Fで使用したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の増殖藻体130gを投入した。
養殖3日目に、アルテミア孵化槽Dで養殖されているマダイに配合飼料3.2gを与えた。
<養殖4日目>海藻導入後24時間経過した時点での栄養塩類濃度低減装置F内の窒素濃度、リン濃度はそれぞれ、硝酸態窒素濃度は0.017mg/リットル、アンモニア態窒素濃度は0.528mg/リットル、リン濃度は0.043mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。窒素濃度、リン濃度はそれぞれ環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていたので、栄養塩類濃度低減装置F内の海水は、海域へポンプを使って返還した。栄養塩類濃度低減装置Fで増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を網ですくって集めて、次回の使用に備えた。
アルテミア孵化槽D内の海水の栄養塩類濃度は、養殖2日目のアルテミア孵化槽D内の海水の栄養塩類濃度と同等のレベルまで上昇していた。アルテミア孵化槽D内のマダイを網ですくい、海水80リットルを入れたアルテミア孵化槽Eに移した。アルテミア孵化槽Dの海水をフィルターで沈殿分が吸い込まれないようにして栄養塩類濃度低減装置Fに送液した。アルテミア孵化槽Dの海水を送液後、アルテミア孵化槽D内の沈殿を回収した。
次いで、栄養塩類濃度低減装置Fに先ほど栄養塩類濃度低減装置Fで使用したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の増殖藻体を投入した。
養殖4日目に、アルテミア孵化槽Eで養殖されているマダイに配合飼料3.2gを与えた。
<養殖の継続>魚類養殖期間中この操作の繰り返しにより、魚類養殖槽由来の栄養塩類による環境基準値を超えた環境への負荷を、海藻を導入した栄養塩類の濃度低減装置Fを用いることによって制御しながらマダイを養殖することができた。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻は、光免疫抑制回復成分の原料として有効に利用でき、生態系リサイクルが達成できた。実施例8の変法の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。オゴノリ属紅藻類は栄養塩類を吸収するとともに増殖した。
実施例8で栄養塩類濃度低減装置Fを用いるかわりにアルテミア孵化槽F(容量100リットル、最大直径550mm、高さ1030mm、深さ800mm)を用いた以外は、実施例8と同様にして、エアレーションを行い、「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」の栄養塩類の濃度低減をオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を用いて行った。アルテミア孵化槽F(容量100リットル、最大直径550mm、高さ1030mm、深さ800mm)に「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」80リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量をいれ、エアレーションをしながら栄養塩類濃度低減を行った。濃度低減開始後、24時間経過した時点でアルテミア孵化槽Fの塩水中の栄養塩類濃度を測定した。
栄養塩類の濃度低減開始後24時間経過した時点でのアルテミア孵化槽Fの塩水中の硝酸態窒素濃度は0.022mg/リットル、アンモニア態窒素濃度は0.593mg/リットル、リン濃度は0.049mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。窒素濃度、リン濃度はそれぞれ環境基準値(例えば、生活環境項目海域4類型では環境基準値は全窒素1mg/リットル以下、全リン0.09mg/リットル以下)を満たしていた。オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株の湿質量は128gであった。以上のことから栄養塩類の濃度低減効果は、実施例8の方が実施例9よりも高いことが明らかである。また、装置に導入した海藻の生長効果も、実施例8の方が実施例9よりも高いことが明らかである。
栄養塩類濃度低減に利用した非成熟性のオゴノリ属海藻から、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。実施例9の実施期間中、オゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体は成熟しなかった。
実施例8で用いた栄養塩類濃度低減装置Fの様な深さの浅い濃度低減装置の方が、実施例9で用いたアルテミア孵化槽Fの様な深さの深い装置よりも、大型海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減を格段に効率的に実施できることがわかる。実施例8、実施例9の結果から、大型海藻を導入して塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うために、大型海藻などを導入して用いる栄養塩類濃度低減装置の形状は、深さの深い装置よりも深さの浅い装置の方が、塩水中の栄養塩類濃度低減のための装置として効果が高いことが明らかである。
一方、一般に魚類養殖には、深さの深い水槽、たとえばアルテミア水槽あるいは網生け簀のような形状の水槽が適している。塩水への栄養塩類の負荷源である養殖魚類と、負荷された栄養塩類を吸収する大型海藻など生物を同一の水槽で生育させて塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う場合は、魚類養殖を優先するため深さの深い水槽を使用しなければならなくなる。実施例8と実施例9の結果からもわかるように、海藻による塩水中の栄養塩類の濃度低減を効率的に行うには、海藻を導入する培養部(あるいは海藻を導入する培養容器あるいは海藻を導入する槽ともいう場合がある)と養殖魚類を導入する養殖水槽を一緒にするよりも(言い換えれば、海藻と養殖魚類を同一の培養部あるいは容器あるいは槽で生育させるよりも)、海藻と養殖魚類を別々の培養部あるいは容器あるいは槽に導入した方が、さらに海藻を深さの浅い装置に導入した方が、塩水中の栄養塩類濃度低減の効率が格段に上昇することが明らかである。
深さの浅い装置は、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置として使用したときの濃度低減効率が高いと同時に、海洋生物培養装置、特に海藻培養装置として使用したときの海藻生長率も高いことが明らかである。
実施例8の変法では、毎日、養殖マダイを網ですくってアルテミア孵化槽Dとアルテミア孵化槽Eの間を移動させなければならない。この作業は養殖魚類にストレスを与えてしまうことが懸念される。したがって、養殖魚類の移動作業無しで魚類養殖できることが望ましい。バッチ方式の魚類養殖よりもかけ流し方式の魚類養殖の方が好ましい。
栄養塩類濃度低減装置の海藻導入部(栄養塩類濃度低減装置の海藻導入容器あるいは栄養塩類濃度低減装置の海藻導入槽ともいう場合がある)への塩水の送液において、栄養塩類濃度低減装置の流路切り替え弁により流路を切り替えながら栄養塩類の濃度低減操作を行うことが塩水中の栄養塩類の濃度低減効果に及ぼす影響を評価した。
栄養塩類濃度低減装置Gでのかけ流し式での栄養塩類の濃度低減;
流路切り替え弁を装備している栄養塩類濃度低減層Gに海藻を導入して、マダイ養殖海水中の栄養塩類の除去を行った。マダイ養殖海水としては、実施例6記載の「マダイ養殖によって得られる高栄養塩類を含む海水」を実施例8と同様にして調製した。調製した「マダイ養殖によって得られる高栄養塩類を含む海水」はアルテミア孵化槽C(容量1000リットル、最大直径1370mm、高さ1530mm、深さ1240mm)にため、栄養塩類濃度低減装置Gに流速40リットル/日で送液した。「マダイ養殖によって得られる高栄養塩類を含む海水」の栄養塩類濃度は、硝酸態窒素0.068mg/リットル、アンモニア態窒素1.202mg/リットル、リン0.096mg/リットル、亜硝酸態窒素濃度は0.004mg/リットルであった(オートアナライザーによって分析した定量値)。
海藻を導入する装置の位置(あるいは海藻を導入する容器あるいは海藻を導入する槽ともいう)は、以下のようなユニットから構成したものを使用した。幅10cm(内側の寸法)、高さ20cm(内側の寸法)、長さ50cm(内側の寸法)、厚さ0.5cmの容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽を、開放されている側を上にして、ユニットを作る。図4aに示すように、容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽2つを、チューブでつなぎ、一つのユニットを作る。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間にフィルターを装着し、海藻がポリカーボネート水槽から流出するのを防いだ。ポリカーボネート水槽中でエアレーションを行った。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間には、逆流防止弁を挿入し、海水の逆流を防ぐのが好ましい。
栄養塩類濃度低減装置Gは、上述したユニット8個から構成されている。塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」を注入後、海藻を投入した。すなわち栄養塩類濃度低減装置Fの各ポリカーボネート製の水槽には「マダイ養殖によって得られる高濃度栄
養塩類を含む塩水」5リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体7.5g湿質量を投入した。したがって、一つのユニットあたり、「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」10リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体15g湿質量が含まれる。栄養塩類濃度低減装置Fには「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」80リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量が含まれる。
各ユニット間の流路は流路切り替えにより接続されている。栄養塩類濃度低減装置の流路切り替え弁の拡大図の一例を図5に示す。栄養塩濃度低減装置Gの構造は、図6aに示した栄養塩類濃度低減装置Eの一例と同様である。栄養塩類の濃度低減開始後は、栄養塩濃度低減装置Gの流路切り替え弁は、図6bに示した栄養塩類濃度低減装置Eの流路切り替えの一例と同様に行った。
以下の手順で流路切り替え弁を切り替えて、マダイ養殖によって得られた高濃度栄養塩類を含む塩水から海藻による栄養塩の低減を行った。アルテミア孵化槽C(容量1000リットル、最大直径1370mm、高さ1530mm、深さ1240mm)からの海水が8方バルブAを通してU1の流入口と接続し、またU2の流出口から海水が8方バルブBを通して環境への返還されている(図6a,図6b)。
I 海水送液開始から0〜6時間後
あらかじめ各ユニットには、「マダイ養殖によって得られる高栄養塩類を含む海水」10リットルと海藻15gが入っている。 各ユニットの流出口は、左となりのユニットの流入口と2つの流路切り替えバルブ(電磁弁でもよい)をはさんで接続されている(例えば、U1流出口はU8流入口と接続されている。)。ただし、U1流入口とU2流出口との間は切断されており、U1流入口は、8方バルブAを通して、アルテミア孵化槽Cとつながっている。U2流出口は、8方バルブAを通して低減処理済み海水タンクにつながっている。
低減処理済み海水タンクの海水は、フィルターで濾過後、栄養塩類濃度をオートアナライザーを用いて定量した。この状態で、アルテミア孵化槽Cから「マダイ養殖によって得られる高栄養塩類を含む海水」を栄養塩類濃度低減装置Gに流速40リットル/日で流し始める。アルテミア孵化槽CからU1へ流し始めて6時間経過するまで、U2から流出する海水は処理水用水槽にためられる。低減処理済み海水タンクの水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
II 海水送液開始から6〜12時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて6時間経過した時点で、II-1〜4の操作をほ
ぼ同時に行う。
(II-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU1流入口からU2流入口へ変更する。
(II-2)U1流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U1流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U1流入口とU2流出口との流路を接続する。
(II-3)U3流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U3流出口とU2流入口との流路を切断し、U3流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(II-4)8方バルブBを切り替えてU3流出口からの流水が低減処理済み海水タンクにたまるように接続する。低減処理済み海水タンク海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
III 海水送液開始から12〜18時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて12時間経過した時点で、III-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(III-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU2流入口か
らU3流入口へ変更する。
(III-2)U2流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU3流出口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U2流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U2流入口とU3流出口との流路を接続する。
(III-3)U4流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU3流入口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U4流出口とU3流入口との流路を切断し、U4流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(III-4)8方バルブBを切り替えてU4流出口からの流水が処理水用水槽にたまるよう
に接続する。低減処理済み海水タンク海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
IV 海水送液開始から18〜24時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて18時間経過した時点で、IV-1〜4の操作を
ほぼ同時に行う。
(IV-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU3流入口からU4流入口へ変更する。
(IV-2)U3流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU4流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U3流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U3流入口とU4流出口との流路を接続する。
(IV-3)U5流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU4流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U5流出口とU4流入口との流路を切断し、U5流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(IV-4)8方バルブBを切り替えてU5流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
V 海水送液開始から24〜30時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて24時間経過した時点で、V-1〜4の操作を
ほぼ同時に行う。
(V-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU4流入口からU5流入口へ変更する。
(V-2)U4流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU5流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U4流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U4流入口とU5流出口との流路を接続する。
(V-3)U6流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU5流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U6流出口とU5流入口との流路を切断し、U6流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(V-4)8方バルブBを切り替えてU6流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
Vにおいて、U6流出口から溶出する海水は、海藻による塩水中の栄養塩類濃度低減装置の中に24時間滞留した海水である。Vにおいて(アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて24経過して)、Iにおいて最初にU1に流入した海水が栄養塩類濃度低減装置から溶出する。
VI 海水送液開始から30〜36時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて30時間経過した時点で、VI-1〜4の操作を
ほぼ同時に行う。
(VI-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU5流入口からU6流入口へ変更する。
(VI-2)U5流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU6流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U5流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U5流入口とU6流出口との流路を接続する。
(VI-3)U7流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU6流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流出口とU6流入口との流路を切断し、U7流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VI-4)8方バルブBを切り替えてU7流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
VII 海水送液開始から36〜42時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて36時間経過した時点で、VII-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(VII-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU6流入口か
らU7流入口へ変更する。
(VII-2)U6流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU7流出口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U6流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U6流入口とU7流出口との流路を接続する。
(VII-3)U8流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU7流入口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流出口とU6流入口との流路を切断し、U8流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VII-4)8方バルブBを切り替えてU7流出口からの流水が処理水用水槽にたまるよう
に接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
VIII 海水送液開始から42〜48時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて42時間経過した時点で、VIII-1〜4の操作
をほぼ同時に行う。
(VIII-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU7流入口からU8流入口へ変更する。
(VIII-2)U7流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU8流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U7流入口とU8流出口との流路を接続する。
(VIII-3)U1流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU8流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U8流出口とU7流入口との流路を切断し、U1流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VIII-4)8方バルブBを切り替えてU1流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
海水送液開始から48〜54時間後
アルテミア孵化槽Cから海水を流し始めて48時間経過した時点で、IX-1〜4の操作を
ほぼ同時に行う。
(IX-1)8方バルブAを切り替えてアルテミア孵化槽Cからの海水流路をU8流入口からU1流入口へ変更する。
(VIII-2)U8流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU1流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U8流入口とU1流出口との流路を接続する。
(VIII-3)U2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU1流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U1流出口とU8流入口との流路を切断し、U2流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VIII-4)8方バルブBを切り替えてU2流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺海域(環境)へ返還する。
海水の流れについていえば、IXの状態は元のIの状態と同じである。
X 海水送液開始から54時間後以降
6時間毎に切り替えバルブ(電磁弁でも良い)2個と8方バルブAとB8方バルブBを切り替えることを繰り返し、塩水中の栄養塩類の濃度低減をさらんに継続して行うことが出来る。各ユニット中で栄養塩類を吸収して増殖した海藻は、任意の時間に海水中から隔離することができ、増殖した海藻の代わりに新しい海藻を各ユニット内に投入することができる。その時期は海藻の増殖や海藻成分の含有量によって決めることもできる。
海藻の入ったユニットにアルテミア孵化槽Cからの海水が導入されてから(Iの状態)、当該ユニットが8方バルブを通して処理水用水槽にたまるように接続されるまで(IXの状態)をめどとして海藻の交換をした場合、新規に導入された海藻は48時間にわたって塩水中の栄養塩類濃度低減に利用されることとなる。
流路切り替え弁を装備している栄養塩類濃度低減装置Gに海藻を導入して、マダイ養殖海水中の栄養塩類の濃度低減(除去ともいうことがある)を行う直前、及び実施期間中及び終了時点において、栄養塩類濃度低減装置内の各ユニットの栄養塩類の濃度分析(3時間毎)を行った。いくつかの場合ではさらに、各ユニットに導入したオゴノリ属海藻の湿質量も24時間毎に測定した。
流路切り替え弁により流路切り替えをする工程を含んだ栄養塩濃度低減においては、海藻の生長速度が各ユニットでそろっており、かつ良好であった。8つのユニットにおけるオゴノリ属海藻の生長率は栄養塩濃度低減開始1日目が8〜10%/日、2日目での生長率も同様に8〜10%/日を維持していた。ユニット間の生長率の大きな差はみられなかった。栄養塩類の低減も良好に行えた。このことは、アルテミア孵化槽Cからの海水を栄養塩類濃度低減装置Gに流し始めてから、6時間毎に電磁弁、多方バルブが切り替わり、アルテミア孵化槽C由来の海水の流路を換えることにより、栄養塩類濃度低減装置Gに導入した海藻が入ったそれぞれの水槽に、アルテミア孵化槽Cからの高い濃度の栄養塩類を含んだ海水が接触するようにした効果であることは明らかである。このことから、流路切り替え弁を装備した栄養塩類濃度低減装置は、流路切り替え弁のない装置よりも、栄養塩類の低減効果が飛躍的に高いことが明らかである。海藻が良好に生育していることから、当該流路切り替え弁を装備した栄養塩類濃度低減装置は、流路切り替え弁のない装置よりも、海洋生物培養装置、特に海藻培養装置としても非常に効果的な装置であることがわかる。
栄養塩類の濃度低減に利用され増殖したオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体を回収し、光免疫抑制回復成分を得ることが出来た。実施例10の実施期間において非成熟性のオゴノリ属紅藻類は成熟しなかった。
海藻を導入する栄養塩類の濃度低減装置は、塩水中の栄養塩類の濃度を低減することを主目的として使用することもできるし、藻類を増殖させることや藻類を保存することを主目的として使用することもできた。
実施例10は、流路切り替え弁の装備された栄養塩類濃度低減装置Gに、非成熟性の紅藻類大型海藻の単藻培養株が増殖した藻体を導入し、一度ためた魚類養殖海水中の栄養塩類濃度削減を達成できた例である。また、魚類養殖槽からオンラインで流路切り替え弁の装備された栄養塩類濃度低減装置Gに養殖水を送り、非成熟性の紅藻類大型海藻の単藻培養株が増殖した藻体により塩水中の栄養塩類を濃度低減することも可能である。
特に、かけ流し式で行う栄養塩類濃度低減には、流路切り替え弁を用いることで栄養塩類の濃度低減効果が飛躍的に上昇することがあきらかである。
実施例10で栄養塩類濃度低減装置Gの流路切り替え弁を作動して、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理を行った代わりに、濃度低減処理期間中は、流路切り替え弁の流路を換えないで、海藻を導入した栄養塩類濃度低減装置Gを用いてマダイ養殖海水中の栄養塩類の除去を行った。
栄養塩類濃度低減装置Gに海藻を導入して、マダイ養殖海水中の栄養塩類の濃度低減(除去ともいうことがある)を行う直前、及び実施期間中及び終了時点において、栄養塩類濃度低減装置内の各ユニットの栄養塩類の濃度分析(3時間毎)を行った。いくつかの場合ではさらに、各ユニットに導入したオゴノリ属海藻の湿質量も24時間毎に測定した。
実施例11では、栄養塩類濃度低減装置Gの流路を変化させないで栄養塩類の濃度低減を行った。流路は、図6bのIに示されている様な流路に固定した。この流路は、アルテミア孵化水槽C〜ユニット1へマダイ養殖海水が注入され、順次、ユニット1からユニット8へ、ユニット8からユニット7へ、ユニット7からユニット6へ、ユニット6からユニット5へ、ユニット5からユニット4へ、ユニット4からユニット3へ、ユニット3からユニット2へ、最後にユニット2から低減処理済み海水タンクへ流れる流路である。
栄養塩類濃度低減装置Gは、上述したユニット[ユニットのことをUと記載することもある。]8個から構成されている。塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」を注入後、海藻を投入した。すなわち栄養塩類濃度低減装置Fの各ポリカーボネート製の水槽には「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」5リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体7.5g湿質量を投入した。したがって、一つのユニット(Uとも表記する。)あたり、「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」10リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体15g湿質量が含まれる。栄養塩類濃度低減装置Fには「マダイ養殖によって得られる高濃度栄養塩類を含む塩水」80リットルとオゴノリ属海藻由来の非成熟性の単藻培養株が増殖した藻体120g湿質量が含まれる。
濃度低減開始後1日目の海藻生長率はどのユニットとも変化なく7から8%/日であった。しかし濃度低減開始後2日目の海藻生長率は、先頭にユニット1では、1日目とか割らず約7.5%/日と高い生長率を維持していたが、一番後に接続したユニット2の海藻生長率は5%を切っていた。
この結果から、流路切り替え弁を使用した装置が優れていることが明らかになった。
本発明は、メジナあるいはマダイ以外にも、ハマチ(ツバス期の魚や幼魚も含む)、マアジ、カンパチ、ヒラメ、クロダイ、スズキ、ブリ、ヒラマサ、サケ、トラフグ、タイ類等海洋魚類、エビ(クルマエビも含む)、エビなど海洋生物の養殖由来の栄養塩類の濃度低減にも適応可能である。
また本発明は、海藻が生育できる塩分濃度に調製すれば、淡水中の栄養塩類の濃度低減にも利用できる。つまり、海藻が生育できる塩分濃度に淡水を調製すれば、淡水魚類、たとえば、マス類、ウナギ、ニジマス、コイ、アユ、チョウザメ、テラピア、イワナ、ヒメマス、ギンザケ、レンギョ等の養殖場由来の栄養塩類の低減、工場排水中の塩類の濃度低減、家庭排水中の塩類の濃度低減等にも利用可能である。
これら水中の栄養塩類を海藻で吸収することにより水中の栄養塩類の濃度低減が達成できる。この海藻による水中の栄養塩類の濃度低減工程は、海藻の増殖工程でもあり、本発明により、産業的に利用可能な海藻が大量に提供できることが明らかである。
本発明の塩水中の栄養塩類濃度低減装置を用いることにより、栄養塩類の低減の達成や、栄養塩類低減によって増殖した有用生物を獲ることができるとともに、生物の成育に有用な栄養塩類の濃度低減処理水を得ることが可能になる。
環境に係わる技術の一つである塩水域の水質浄化は、生態系の保護や人間の生活空間の改善上重要であり、かつ、さまざまな産業と関わり合いを持っているため、本発明は、非常に利用価値の高い発明である。

Claims (4)

  1. 流路切り替え弁と該流路切り替え弁に接続された複数の海藻培養ユニットを備えた塩水中の栄養塩類の濃度低減装置であって、
    該装置はさらに流入用多方向バルブと流出用多方向バルブとを備え、
    各ユニットの塩水流入口は、他のユニットからの流入か流入用多方向バルブからの流入かを選択する流路切り替え弁に接続され、
    各ユニットの塩水流出口は、他のユニットへの流出か流出用多方向バルブへの流出かを選択する流路切り替え弁に接続され、
    栄養塩類を含む塩水を最初に流入させる海藻培養ユニットを切り替えることができるように構成された装置
  2. 海藻培養ユニットが塩水流入側培養部と塩水流出側培養部を備える請求項1に記載の濃度低減装置。
  3. 濃度低減する栄養塩類が、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、尿素態窒素、有機態リン、無機態リン(オルトリン酸など)、珪素(珪酸など)のうち1種類以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
  4. 藻類を装置内に導入することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
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