JP5173752B2 - 圧電磁器及びその製造方法並びに圧電素子 - Google Patents
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1.AサイトにPbを含み、且つBサイトにZr及びTiを含むペロブスカイト型結晶構造を有する第1複酸化物と、Li及びWを含む第2複酸化物とを含有し、該第2複酸化物はLi2WO4及びLi2W2O7のうちの少なくとも一方であることを特徴とする圧電磁器。
2.上記第2複酸化物に含まれるLiのモル数(ML1)と、上記第1複酸化物に含まれる上記Pbのモル数(MP1)との比(ML1/MP1)が0.010〜0.060である上記1.に記載の圧電磁器。
3.圧電歪定数(d33)が200pC/N以上である上記1.又は2.に記載の圧電磁器。
4.上記第1複酸化物となる原料粉末を混合し、その後、仮焼し、次いで、仮焼粉末を成形して成形体とし、その後、該成形体を焼成し、次いで、焼成体を分極処理する上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の圧電磁器の製造方法であって、上記仮焼粉末に上記第2複酸化物の粉末を配合することを特徴とする圧電磁器の製造方法。
5.上記焼成の温度は880〜950℃である上記4.に記載の圧電磁器の製造方法。
6.上記第2複酸化物の粉末に含まれるLiのモル数(ML2)と、上記仮焼粉末に含まれるPbのモル数(MP2)との比(ML2/MP2)が0.010〜0.060である上記4.又は5.に記載の圧電磁器の製造方法。
7.上記成形体の表面に一対の未焼成導体層が設けられており、該未焼成導体層は該成形体の該表面にCuを含有する導電ペーストを塗布することにより形成されている上記4.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の圧電磁器の製造方法。
8.上記焼成は酸素分圧が0.001Pa以下の雰囲気下になされる上記7.に記載の圧電磁器の製造方法。
9.上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の圧電磁器からなる圧電体と、該圧電体の表面に設けられた一対の電極とを備えることを特徴とする圧電素子。
また、第2複酸化物に含まれるLiのモル数(ML1)と、第1複酸化物に含まれるPbのモル数(MP1)との比(ML1/MP1)が0.010〜0.060である場合は、未焼成成形体を焼成して第1複酸化物とするときに、第2複酸化物が焼結助剤として十分に作用し、低温焼成が可能であるとともに、優れた圧電特性を有する圧電磁器とすることができる。
更に、圧電歪定数(d33)が200pC/N以上である場合は、この圧電磁器を圧電体として備え、優れた圧電特性を有する各種の圧電素子とすることができる。
本発明の圧電磁器の製造方法によれば、仮焼粉末に配合されたLiとWとを含む第2複酸化物が焼結助剤として有効に作用し、第2複酸化物を配合しないときと比べて200〜300℃程度も低い温度で焼成することができ、且つ第2複酸化物が有するLi及びWは第1複酸化物に固溶しないため、優れた圧電特性を有する圧電磁器を製造することができる。
また、焼成の温度が880〜950℃である場合は、圧電磁器を圧電素子、特に積層型圧電素子の圧電体として使用するときに、電極材料としてAg等の低融点、且つ安価な導電材を用いることができ、焼成時のエネルギーコストを低減させることもできる。
更に、第2複酸化物の粉末に含まれるLiのモル数(ML2)と、仮焼粉末に含まれるPbのモル数(MP2)との比(ML2/MP2)が0.010〜0.060である場合は、第2複酸化物が焼結助剤として十分に作用し、低温焼成であっても十分に焼結された圧電磁器を製造することができる。
また、成形体の表面に一対の未焼成導体層が設けられており、未焼成導体層は成形体の表面にCuを含有する導電ペーストを塗布することにより形成されている場合は、融点の低いCuを含有する導電ペーストであっても、成形体と同時焼成することができる。
更に、焼成時の酸素分圧が0.001Pa以下の雰囲気下に制御される場合は、第1複酸化物に含まれるPbの還元を抑えるとともに、Cuの酸化を抑えることができ、未焼成成形体とCuを含有する未焼成導体層とを同時焼成により一体に形成することができる。
本発明の圧電素子によれば、圧電体となる未焼成成形体を低温で焼成することができるため、AgやCu等の低融点の導電材を用いて同時焼成により電極を形成することができる。
[1]圧電磁器
本発明の圧電磁器は、AサイトにPbを含み、且つBサイトにZr及びTiを含むペロブスカイト型結晶構造を有する第1複酸化物と、Li及びWを含む第2複酸化物とを含有し、第2複酸化物はLi2WO4及びLi2W2O7のうちの少なくとも一方であることを特徴とする。
この第2複酸化物は、低融点であるため、圧電磁器の焼成時に液相となって焼結助剤として有効に作用し、焼結後は焼成前の組成そのままで圧電磁器に含有される複酸化物である。
本発明の圧電磁器の製造方法は、第1複酸化物となる原料粉末を混合し、その後、仮焼し、次いで、仮焼粉末を成形して成形体とし、その後、成形体を焼成し、次いで、焼成体を分極処理する圧電磁器の製造方法であって、仮焼粉末に第2複酸化物の粉末を配合することを特徴とする。
本発明の圧電素子は、本発明の圧電磁器からなる圧電体と、この圧電体の表面に設けられた一対の電極とを備える。
導電材としては、Ag、Cu等の金属の粉末、2種以上の金属粉末の混合粉末、2種以上の金属、例えば、AgとPdとを含む合金の粉末などを用いることができる。導電材の平均粒径も特に限定されないが、スクリーン印刷等による成膜、並びに焼き付け及び同時焼成などを容易にするためには、20μm以下、特に10μm以下、更に1〜5μmであることが好ましい。また、導電ペーストにおける導電材の含有量も特に限定されないが、通常、導電ペーストに含まれる固形分の70〜99質量%となるように配合する。
実施例1〜6及び比較例1〜4
(1)圧電磁器(圧電素子)の製造
市販のPbO粉末、ZrO2粉末、TiO2粉末を使用し、ペロブスカイト型結晶構造を有する第1複酸化物であるPb(ZrxTi1−x)O3のxが0.53となるように秤量し、振動ミルを用いて3時間乾式粉砕して混合粉末とした。その後、この混合粉末を大気雰囲気下650〜900℃で1〜10時間仮焼し、整粒して仮焼粉末とした。次いで、この仮焼粉末、Li2WO4粉末(実施例2及び4〜6、Liが表1に記載のモル比となる配合量)、Li2W2O7粉末(実施例1、3、Liが表1に記載のモル比となる配合量)、又はLi2CO3粉末(比較例1、Liが表1に記載のモル比となる配合量)有機バインダ、分散剤及び溶媒をボールミルに投入し、湿式混合してセラミックスラリーを調製した。
密度はアルキメデス法により測定した。また、圧電特性のうち、比誘電率(ε33 T/ε0)及び誘電損失(tanδ)は、室温(25℃)にて、インピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製、型式「HP4194A」)を用いて測定し、1kHzにおける静電容量の値から算出した。また、電気機械結合係数(kr;径方向振動モード及びkt;厚み縦振動モード)及び圧電歪定数[d33(pC/N)]はEMAS−610に従い共振反共振法により求めた。更に、キュリー点[Tc(℃)]は試験片を電気炉で加熱しながらインピーダンスアナライザを用いて測定し、圧電性が消失してΔf(fp−fs)=0となる温度として求めた。
結果は表2のとおりである。
一方、Li2WO4を用いなかった他は実施例5と同様の成形体を用いた比較例3,及びLi2WO4を用いなかった他は実施例6と同様の成形体を用いた比較例4は,いずれも焼結不可であった。
実施例3、4及び比較例1の圧電磁器の結晶相を、X線回折測定装置を用いて同定した。各々の結果はそれぞれ図2〜4の回折チャートのとおりである。これらの回折チャートによれば、いずれの圧電磁器にもペロブスカイト型結晶が含まれることが分かる。また、図2の回折チャートにはLi2WO4の回折ピーク(下向きの黒色の三角形が指すピーク)、図3にはLi2W2O7の回折ピーク(下向きの黒色の三角形が指すピーク)、が明瞭に表れており、これらの複酸化物が含有されていることが確認された。更に、図4では、矢印のように、ペロブスカイト型結晶の回折ピークがスプリットしており、正方晶が菱面体晶になっている。このことから、配合したLi2CO3が仮焼粉末と反応し、ペロブスカイト型結晶にLiが固溶していることが分かる。
Claims (9)
- AサイトにPbを含み、且つBサイトにZr及びTiを含むペロブスカイト型結晶構造を有する第1複酸化物と、Li及びWを含む第2複酸化物とを含有し、該第2複酸化物はLi2WO4及びLi2W2O7のうちの少なくとも一方であることを特徴とする圧電磁器。
- 上記第2複酸化物に含まれるLiのモル数(ML1)と、上記第1複酸化物に含まれる上記Pbのモル数(MP1)との比(ML1/MP1)が0.010〜0.060である請求項1に記載の圧電磁器。
- 圧電歪定数(d33)が200pC/N以上である請求項1又は2に記載の圧電磁器。
- 上記第1複酸化物となる原料粉末を混合し、その後、仮焼し、次いで、仮焼粉末を成形して成形体とし、その後、該成形体を焼成し、次いで、焼成体を分極処理する請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の圧電磁器の製造方法であって、
上記仮焼粉末に上記第2複酸化物の粉末を配合することを特徴とする圧電磁器の製造方法。 - 上記焼成の温度は880〜950℃である請求項4に記載の圧電磁器の製造方法。
- 上記第2複酸化物の粉末に含まれるLiのモル数(ML2)と、上記仮焼粉末に含まれるPbのモル数(MP2)との比(ML2/MP2)が0.010〜0.060である請求項4又は5に記載の圧電磁器の製造方法。
- 上記成形体の表面に一対の未焼成導体層が設けられており、該未焼成導体層は該成形体の該表面にCuを含有する導電ペーストを塗布することにより形成されている請求項4乃至6のうちのいずれか1項に記載の圧電磁器の製造方法。
- 上記焼成は酸素分圧が0.001Pa以下の雰囲気下になされる請求項7に記載の圧電磁器の製造方法。
- 請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の圧電磁器からなる圧電体と、該圧電体の表面に設けられた一対の電極とを備えることを特徴とする圧電素子。
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