JP5172070B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
性能基準に合う相手先商標製品製造会社(OEMs)の要求は、ますます、潤滑剤の特性に影響してきている。そのような性能基準の一つは、圧縮点火(ディーゼル)内燃エンジンの作動中のピストンの清浄性に関するものである。これは、VWTDi試験(CEC L-78-T-99)により測定されてもよい。
様々な基準は、使用してもよい添加剤成分及び量及びベースストックに関して、潤滑剤配合者を明らかに抑制している。
(A)少なくとも50、例えば少なくとも60質量%が鉱油である過半量(major amount)の潤滑粘性オイル;及び少量(minor amount)の:
(B)オイル組成物の質量をベースとして1〜15、好ましくは2〜10未満、例えば3〜8質量%の量の非水素化オレフィンポリマーであって、該ポリマーの数平均分子量が100〜5,000であるもの;
(C)分散剤、例えば無灰分散剤;
(D)金属清浄剤、例えばカルシウム及び/又はマグネシウム清浄剤;
(E)抗酸化剤、耐磨耗剤及び摩擦改質剤から選ばれる一つ又はそれより多い他の潤滑剤添加剤成分;及び
(F)粘性改質剤
を含むか又はそれらを混合することにより製造される上記組成物である。
第三の態様において、本発明は、圧縮点火内燃エンジンのピストン清浄性を向上させる方法であって、第一の態様による潤滑油組成物をエンジンに加えることを含む上記方法である。
第五の態様において、本発明は、圧縮点火内燃エンジンのピストン清浄性を向上させるための、マルチグレードクランク室潤滑油組成物における非水素化オレフィンポリマーの使用である。
第六の態様において、本発明は、第一の態様において定義されたマルチグレードクランク室潤滑油組成物を製造するための濃縮物であって、油性キャリヤー、非水素化オレフィンポリマー、分散剤、金属清浄剤及び、一つ又はそれより多い他の潤滑剤添加剤成分であって抗酸化剤、耐磨耗剤及び摩擦改質剤から選ばれるもの、を含む上記濃縮物である。
潤滑油組成物
本発明の潤滑油組成物は、内燃エンジン、好ましくは圧縮点火(ディーゼル)エンジン、より好ましくは圧縮点火乗用車エンジンのクランク室を潤滑にするためのものである。ディーゼル応用、具体的には乗用車用のクランク室潤滑油組成物は、そのような応用の性能要求に合うように特に配合されなければならない。
本発明の潤滑油組成物は、粘度グレードSAE 10W-X、SAE 5W-X及びSAE 0W-Xのマルチグレードオイル組成物であって、Xは、20、30及び40を表すものが好ましく、そのグレードの特徴は、SAE J300分類において提供される。潤滑油組成物の粘度グレードSAE 5W-X及びSAE 0W-Xであって、Xが20、30及び40、好都合には20及び30を示すものが、特に好ましい。
さらに、本発明の潤滑油組成物は、オイル組成物の質量をベースとして、好ましくは0.005〜0.08、例えば0.01〜0.07、具体的には0.03〜0.06質量%のリン、好ましくは一つ又はそれより多いジチオリン酸亜鉛添加剤から誘導されたものを有する。
他の態様とは関係なく、本発明の潤滑油組成物の硫黄含量は、オイル組成物の質量をベースとして、好ましくは0.05〜0.4、具体的には0.1〜0.3、好都合には0.15〜0.2質量%である。
潤滑油組成物は、また、オイル組成物の質量をベースとして、モリブデン含量300以下、好ましくは10〜200、具体的には50〜175質量ppmである。
また、ホウ素含有添加剤は、潤滑油組成物中に存在してもよく、そこでのホウ素の量は、好ましくはオイル組成物の質量をベースとして150以下、好ましくは10〜100、具体的には25〜75質量ppmである。
好ましくは、潤滑油組成物は、少なくとも性能要求ACEA B2-98、より好ましくは少なくともACEA B1-02、例えば少なくともACEA B3-02、具体的にはACEA B4-02及びACEA B5-02を、軽量ディーゼルエンジンに関して満足させる。
潤滑粘性オイルは、潤滑油組成物の主要な液体構成要素である。潤滑粘性オイルとしては、(a)添加剤濃縮物又は添加剤パッケージに添加されるオイル、及び(b)添加剤濃縮物又は添加剤パッケージ中に存在するいずれかのオイルが挙げられる。
記載したように、潤滑粘性オイルの少なくとも50質量%は、鉱油であり;群I、II及びIIIのベースストック及びそれらの混合物から選ばれてもよい。そのバランスは、群IV及びVベースストック及びそれらの混合物から選ばれる合成ベースストックを含んでいてもよい。例えば、潤滑粘性オイルの少なくとも60、70、80、90又は95質量%又はすべてが鉱油であってもよい。
米国石油協会(API)1509「Engine Oil Licensing and Certification System」第四版、1996年12月は、すべてのベースストックが5つの一般的なカテゴリーに分類されることを述べている:
群Iのベースストックは、飽和度が90%未満であり、及び/又は、硫黄が0.03%より多く、粘度指数が80と等しいかそれより高く120未満である;
群IIのベースストックは、飽和度が90%と等しいかそれより高く、硫黄が0.03%と等しいかそれ未満であり、粘度指数が80と等しいかそれより高く120未満である;
群IVのベースストックは、ポリαオレフィン(PAO)であり;また
群Vのベーストックは、群I、II、III又はIVに含まれない他の全てのベースストックを含み、例えば商標名Pennzoilとして販売されるアルキルシクロペンタンが挙げられる。
群IVのベースストック、即ち、ポリアルファオレフィン(PAO)は、上記のように、一般的に、α-オレフィンの水素化オリゴマーであり、オリゴマー化の最も重要な方法は、フリーラジカル方法、チーグラー触媒反応、カチオン性及びフリーデルクラフト触媒反応である。
好ましくは、潤滑粘性オイルは、オイルの質量をベースとして、0.1以下、例えば、0.05以下、より好ましくは0.005〜0.03質量%の硫黄を含む。
好ましい態様において、潤滑粘性オイルは、群IIIベースストック及び群Vベースストックをエステルの形態において含む。エステルの形態の群Vベースストックの量は、オイル組成物の質量をベースとして、好ましくは15以下、例えば0.5〜15、より好ましくは1又は2〜15、具体的には3〜15、より具体的には3〜10、好都合には3〜8、例えば5〜8質量%である。群I、群II又は群IVベースストック又はそれらのいずれかの混合物は、少量で、本発明の潤滑油組成物を製造するのに使用される添加剤成分及び添加剤濃縮物用の希釈剤又はキャリヤー液として、潤滑粘性オイル中に存在してもよい。より好ましくは、潤滑粘性オイルは、エステルの形成において、群IIIベースストック及び群Vベースストックから本質的になるが、少量、例えば、全オイルの質量をベースとして25以下、例えば20以下、好ましくは10以下、好都合には5質量%以下の他のベースストック、例えば群I、群II又は群IVのベースストック又はそれらのいずれかの混合物を含んでいてもよい。
非水素化オレフィンポリマー
非水素化オレフィンポリマーは、好ましくは、一つ又はそれより多い非環式オレフィンモノマーのポリマーである。一般的に、本発明に有用な非水素化オレフィンポリマーは、ポリマー鎖当たり、約一つの二重結合、好ましくは一つの二重結合を有する。
二重結合を含むことを意味しており、また、それは、本発明に使用されるポリマーを、潤滑剤関連において、α-オレフィン、例えばα-デセンの水素化オリゴマーであるポリαオレフィン(又はPAO)と一般的に呼ばれものとは区別している。
Mortier and Orszulikにより編集された「Chemistry and Technology of lubriants」、33〜40頁(第二版)は、PAO及びポリブテンについて論じ、また、本発明に使用してもよいポリイソブチレン(又はPIB)が、「PAO-型潤滑剤とは実質的に異なる特性を示す」、ことを示している。
好ましくは、ポリマーは、炭素数2〜10、例えば3〜8の一つ又はそれより多いオレフィンの重合から誘導される。特に好ましいオレフィンは、ブテン、好都合にはイソブテンである。
ある態様において、数平均分子量200〜2400、100℃での動粘度200〜2500mm2s-1を有するポリイソブチレンポリマーは、有益な特性を示すことが見出された。
分散剤(又は分散剤添加剤)、例えば無灰(即ち、金属非含有)分散剤は、使用の間、サスペンションにおいて酸化から生じる固体及び液体汚染物質を保持し、従って、金属部分へのスラッジの凝結及び沈殿又は堆積を妨ぐ。それらは、長鎖炭化水素を含み、分散されるべき粒子と結合することができる極性先端部に油溶性を与える。注目すべきグループは、炭化水素置換コハク酸イミドにより供給される。
一般的に、無灰分散剤は、金属含有(及び従って灰形成)清浄剤とは対照的に、燃焼において実質的に無灰を形成する。ボレート化金属非含有分散剤は、ここにおいて無灰分散剤とみなされる。「実質的に無灰」とは、分散剤が、燃焼において微量の灰を与えてもよいが、その量において、分散剤の性能に実際的な又は有意な影響を与えないものを意味する。
本発明の無灰分散剤は、分散されるべき粒子と結合することができる官能基を有する油溶性重合性長鎖主鎖を含む。一般的にそのような分散剤は、大抵、架橋基を介して、ポリマー主鎖に結合されるアミン、アミン-アルコール又はアミド極性成分を有する。無灰分散剤は、例として以下のものから選ばれてもよい;長鎖炭化水素置換モノ-及びポリカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノ-エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;それらに直接結合されるポリアミン成分を有する長鎖脂肪族炭化水素;及び長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンで縮合することにより形成されるマンニッヒ縮合生成物。好適な分散剤としては、例えば、長鎖ヒドロカルビル-置換カルボン酸の誘導体であって、そのヒドロカルビル基の数平均分子量は15,000未満、例えば5,000未満であり、そのような誘導体の例は、高分子量ヒドロカルビル置換コハク酸の誘導体である。そのようなヒドロカルビル置換カルボン酸は、例えば、窒素含有化合物、好都合にはポリアルキレンポリアミン又はアミン-アルコール又はアミド又はエステルで誘導体化されていてもよい。特に好ましい分散剤は、アルケニルコハク酸無水物とポリアルキレンアミンの反応生成物である。最後に述べた方の分散剤を開示している明細書の例としては、US-A-3 202 678、US-A-3 154 560、US-A-3 172-892、US-A-3 024 195、US-A-3 024 237、US-A-3 219 666、US-A-3 216 936及びBE-A-662 875が挙げられる。
本発明の分散剤は、所望によりボレート化されていてもよい。そのような分散剤は、U.S. 3,087,936、U.S. 3,254,025及びU.S.5,430,105に一般的に教示されるような従来の方法によりボレート化することができる。分散剤のボレート化は、アシル化窒素組成物の各モル当たりのホウ素原子比0.1〜20を提供するのに十分な量で、アシル窒素含有分散剤を、ホウ素化合物、例えば酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素ホウ酸(boron halide boron acid)及びホウ酸のエステルと処理することにより容易に達成される。
分散性(dispersancy)は、粘度指数向上性及び分散性を提供できる重合性化合物により提供されてもよい。そのような化合物は、分散剤粘度指数向上剤添加剤又は多機能性粘度指数向上剤として公知である。そのようなポリマーは、粘度指数向上剤に加え、性能特性、例えば分散性及び/又は抗酸化性を提供することにおいて、従来の粘度指数向上剤とは異なる(以下の、粘性改質剤での多機能性粘性改質剤のさらなる議論を参照されたい)。もし、分散剤粘度指数向上剤添加剤が本発明に使用されるならば、分散剤添加剤も存在する。
一般的に、一つ又はそれより多い分散剤は、潤滑剤組成物中に、オイル組成物の質量をベースとして0.01〜0.12、好ましくは0.03〜0.09、具体的には0.05〜0.07質量%の窒素を提供する量において使用される。
清浄剤(又は清浄剤添加剤)は、ピストン堆積物、例えば高温ワニス及びラッカー堆積物の形成を、エンジンのサスペンション中の微細な固形物を保持することにより低減させる;それは、また、酸中和性を有していてもよい。清浄剤は、有機酸の金属塩を含み、それはここでは石鹸又は界面活性物質と呼ばれる。
有機酸の例としては、スルホン酸、フェノール及び硫化したそれらの誘導体及び芳香族カルボン酸を含むカルボン酸が挙げられる。
好ましいフェノールは以下の一般式で表される;
フェノールは、しばしば硫化された形態において使用される。硫化方法の詳細は、当業者に公知であり;例えばUS-A-4,228,022及びUS-A-4,309,293を参照されたい。
上記のように、ここに使用される用語「フェノール」は、例えば、アルデヒドとの化学反応により修飾されたフェノール及びマンニッヒ塩基縮合フェノールを含む。
マンニッヒ塩基縮合フェノールは、フェノール、アルデヒド及びアミンの反応により製造される。好適なマンニッヒ塩基縮合フェノールの例は、GB-A-2 121 432に記載されている。
一般的に、フェノールは、上記のもの以外の置換基を含んでいてもよい。そのような置換基の例としては、メトキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
好ましいフェノールは、それらの硫化誘導体である。
カルボン酸としては、モノ-及びジカルボン酸が挙げられる。好ましいモノカルボン酸は、炭素数8〜30、具体的には8〜24のものである。(本明細書が、カルボン酸中の炭素数を示す場合、カルボキシル基中の炭素原子は、その数に包含される)。モノカルボン酸の例としては、イソ-オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸及びベヘン酸が挙げられる。所望により、イソ-オクタン酸は、Exxon Chemicalにより商標名「Cekanoic」として販売される、炭素数8の酸異性体の混合物の形態において使用されてもよい。他の好適な酸は、α-炭素原子での三級置換基を有するもの及びカルボキシル基を隔てる二つ又はそれより多い炭素原子を有するジカルボン酸である。さらに、炭素数が35より多い、例えば炭素数36〜100のジカルボン酸も好適である。不飽和カルボン酸は硫化され得る。
カルボキシル成分は、芳香族成分に直接又は間接的に結合してもよい。好ましくは、カルボン酸基は、芳香族成分の炭素原子、例えばベンゼン環上の炭素原子に直接結合されている。
芳香族カルボン酸の好ましい例は、サリチル酸及びそれらの硫化誘導体、例えばヒドロカルビル置換したサリチル酸及びそれらの誘導体である。
例えば、ヒドロカルビル置換したサリチル酸の硫化方法は、当業者に公知である。
一般的に、サリチル酸は、フェノキシドのカルボキル化、例えば、Kolbe-Schmitt法により製造され、その場合、通常、希釈剤中、非カルボキシル化フェノールとの混合物において一般的に得られるであろう。
金属清浄剤は、中性又は過塩基性であってもよく、その用語は当技術分野において公知である。清浄剤添加剤成分は、一つ又はそれより多い清浄剤添加剤を含んでいてもよく、それは中性清浄剤、過塩基性清浄剤又は両方の混合物であり得る。
本発明の清浄剤は、一つのタイプの有機酸の塩又は一つより多いタイプの有機酸の塩、例えばハイブリッド複合清浄剤(hybrid complex detergent)であってもよい。
ハイブリッド複合清浄剤は、清浄剤内の、塩基性材料、例えばコロイド金属カーボネートが、一つより多いタイプの有機酸の金属塩により安定化されている清浄剤である。単一のタイプの有機酸が、同じタイプの有機酸の混合物を含んでもよいということは、当業者に評価されるであろう。例えば、スルホン酸は、多様な分子量のスルホン酸の混合物を含んでいてもよい。そのような有機酸組成物は、一つのタイプと考えられる。従って、複合清浄剤は、二つ又はそれより多い別々の清浄剤の混合物とは区別され、例えば、そのような混合物は、過塩基性カルシウムサリチレート清浄剤と過塩基性カルシウムフェナート清浄剤との混合物である。
清浄剤添加剤組成物は、二つ又はそれより多い清浄剤、例えばアルカリ金属、例えばナトリウム、清浄剤及びアルカリ土類金属、例えばカルシウム及び/又はマグネシウム、清浄剤を含む。疑いを回避するため、清浄剤添加剤組成物は、無灰分散剤、即ち、金属非含有清浄剤を、一般的に、有機酸の有機塩の形態で含んでいてもよい。好ましくは、その清浄剤は、金属含有であり、1属及び2属の金属が好ましく、より好ましくはカルシウム及びマグネシウム、具体的にはカルシウムである。
硫黄を含有しない一つ又はそれより多い有機酸、例えばカルボン酸、サリチル酸、アルキレン架橋フェノール及びマンニッヒ塩基縮合フェノールをベースとした、少なくとも一つの金属清浄剤を含む、好ましくはそれらから本質的になる清浄剤添加剤組成物が好ましい。具体的には、サリチル酸ベース清浄剤は、特に有効であることが見出された。従って、単に金属を含む清浄剤、好ましくはカルシウム、サリチレートベース清浄剤組成物が、中性又は過塩基性のどちらであっても、好都合である。
一般的に、一つ又はそれより多い清浄剤は、TBNが3〜15、好ましくは5〜12、具体的には7〜10を提供する量において、潤滑油組成物中に使用される。
他の添加剤
他の添加剤の例としては、耐磨耗剤、抗酸化剤、摩擦改質剤、錆防止剤、腐蝕防止剤、流動点降下剤、消泡剤及び粘性改質剤が挙げられる。
モリブデン-硫黄化合物を油溶性又は油分散性にするために、一つ又はそれより多いリガンドを、化合物中のモリブデン原子に結合させる。リガンドの結合は、対イオンの場合、静電的相互作用による結合及び共有及び静電的結合の中間の結合の形態を含む。同じ化合物内のリガンドは、異なって結合されていてもよい。例えば、リガンドは、共有結合されていてもよく、また、他のリガンドは静電的に結合されていてもよい。
モリブデン-硫黄化合物の例としては、二核(dinuclear)モリブデン-硫黄化合物及び三核(trinuclear)モリブデン-硫黄化合物が挙げられる。
好ましいモリブデン-硫黄化合物は、(I)又は(II)において表される構造のコアを有する:
kは、少なくとも1の整数であり;
Eは、酸素及びセレンから選ばれる非金属原子を表し:
xは、0又は整数であることが可能であり、好ましくはk+xは少なくとも4、より好ましくは4〜10、例えば4〜7、最も好ましくは4又は7である;
Lは、モリブデン-硫黄化合物における油溶性又は油分散性を与えるリガンドを表し、好ましくは、Lは、モノアニオン性リガンドであり;
nは、1〜4の整数であり;
Aは、もしLがアニオン性リガンドであるならば、L以外のアニオンを表し;
pは、0又は整数であることが可能であり;
Qは、中性の電子供与化合物を表し:また
Zは、0〜5であり、非理論量の値を含む。
Aの例としては、いずれの原子価、例えば、一価及び二価であってもよく、ジスルフィド、水酸化物、アルコキシド、アミド及びチオシアネート又はそれらの誘導体が挙げられ;好ましいAは、ジスルフィドイオンを表す。
ある態様において、他の態様とは無関係に、kは4又は7、nは1又は2のいずれかであり、Lは、モノアニオン性リガンドであり、pは、A上のアニオン電荷をベースとした化合物上に電気的中性を与える整数であり、各x及びzは、0である。
モリブデン-硫黄コア、例えば上記(I)及び(II)に示した構造は、一つ又はそれより多い、多座配位リガンド、即ち、モリブデン原子に結合可能な一つより多い官能基を有するリガンドにより相互に連結し、オリゴマーを形成してもよい。そのようなオリゴマーを含むモリブデン-硫黄添加剤は、本発明の範囲内と考えられる。
化合物を含有するモリブデンの他の例としては、モリブデンカルボキシレート及びモリブデン窒素複合体が挙げられ、その両方とも硫黄化されていてもよい。
ホウ素は、本発明の潤滑油組成物中に存在してもよい。ホウ素含有添加剤は、ホウ素化合物を、油溶性又は油分散性添加剤又は化合物と反応させることにより製造してもよい。ホウ素化合物としては、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三酸化二ホウ素(boron trioxide)、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ボロン酸(boron acid)、例えばボロン酸(boronic acid)、ホウ酸、四ホウ酸及びメタホウ酸、ホウ化水素、ホウ化アミド(boron amide)及びホウ酸の様々なエステルが挙げられる。ホウ素含有添加剤の例としては、ボレート化分散剤;ボレート化分散剤VI向上剤;アルカリ金属又は混合アルカリ金属又はアルカリ土類金属ボレート;ボレート過塩基性金属清浄剤;ホウ酸エポキシド;ホウ酸エステル;硫化ホウ酸エステル;及びホウ酸アミドが挙げられる。好ましいホウ素含有添加剤は、ボレート化(borated)分散剤である。
銅及び鉛支持腐蝕防止剤を使用してもよいが、それらは本発明の組成に一般的に要求されない。一般的に、そのような化合物は、炭素数5〜50のチアジアゾールポリスルフィド、それらの誘導体及びそれらのポリマーである。1,3,4-チアジアゾールの誘導体、例えば、米国特許第2,719,125号、第2,719,126号及び第3,087,932号に記載されているものが一般的である。他の同様の材料は、米国特許第3,821,236号、第3,904,537号、第4,097,387号、第4,107,059号、第4,136,043号、第4,188,299号及び第4,193,882号に記載されている。他の添加剤は、チアジアゾールのチオ及びポリチオスルフェンアミド、例えば英国特許明細書第1,560,830号に記載されているものである。また、ベンゾトリアゾール誘導体は、このクラス内の添加剤に含まれる。これらの化合物が潤滑剤組成物に含まれる場合、それらは、0.2質量%活性成分を超えない量において好ましく存在する。
他に潤滑油向上剤として公知の流動点降下剤は、液体が流れるか注ぐことができる最低温度を低下させる。そのような添加剤は公知である。液体の低温流動性を向上させる一般的なそれら添加剤は、炭素数8及び18のジアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキルメタクレート等である。
粘度指数向上剤(又は粘性改質剤)は、潤滑油に高温及び低温操作性を与え、高温での剪断安定性を残すことを可能にし、また、低温で許容可能な粘性又は流動性を示す。粘性改質剤としての使用のための好適な化合物は、一般的に、高分子量炭化水素ポリマー、例えばポリイソブチレン、エチレン及びプロピレン及び高次α-オレフィンのコポリマー;ポリエステル、例えばポリメタクリレート;水素化ポリ(スチレン-コ-ブタジエン又は-イソプレン)ポリマー及び修飾物(modification)(例えば、スターポリマー);及びエステル化ポリ(スチレン-コ-マレイン酸無水物)ポリマーである。一般的に、油溶性粘性改質ポリマーの数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ又は光散乱法により測定した場合、少なくとも15,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜600,000である。R.M.Mortier 及びS.T.Orzulikにより編集された「Chemistry & Technology of Lubricants」第一版、1992年、Blackie Academic & Professionalの第5章の開示はここに含まれる。使用されるVMは、その単一の機能を有していてもよいか、又は多機能性、例えば粘度指数向上剤特性及び分散剤特性を示すものであってもよい。分散剤オレフィンコポリマー及び分散剤ポリメタクリレートは、分散剤粘度指数向上剤添加剤の例である。分散剤粘度指数向上剤添加剤は、様々な機能部分、例えばポリマー上にアミン、アルコール及びアミドを化学的に付着させることにより製造され、そのポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィ又は光散乱法により測定した場合、好ましくは、その数平均分子量が少なくとも15,000、例えば20,000〜600,000である傾向がある。使用されるポリマーは、粘性改質剤に関して以下に記載されるものであってもよい。従って、アミン分子は、分散性及び/又は抗酸化特性を与えるために組み込まれてもよく、一方、フェノール分子は、抗酸化性を向上させるために組み込まれてもよい。従って、具体的な例は、活性モノマー、例えば無水マレイン酸でポストグラフトし、その後、例えばアルコール又はアミンで誘導体化したエチレン-プロピレンの共重合体である。分散剤粘性改質剤を本発明に使用した結果、また、潤滑油組成物の窒素含有物は、分散剤粘性改質剤から誘導されたものを含む。分散剤粘性改質剤の例は、Hitec(登録商標)5777であり、それは、Ethyl Corpにより製造販売されている。EP-A-24146及びEP-A-0 854 904は、分散剤粘度指数向上剤の例を記載しており、それらは従ってここに含まれるものとする。一般的に、粘性改質剤は、多機能性であってもそうでなくても、潤滑油組成物の所望の粘度グレード(例えば、SAE 10W-40)による量、例えば、オイル組成物の質量をベースとして、0.001〜2、好ましくは0.01〜1.5、例えば0.1〜1質量%のポリマー量において使用される。
添加剤濃縮物は、それらの使用前に二つ又はそれより多い添加剤を取扱う、及び潤滑剤組成中の添加剤の溶解又は分散を促進する、好都合な手段を構築している。一タイプの添加剤(時々「添加剤成分」と呼ばれる)より多くを含有する潤滑剤組成物を製造する場合、それぞれの添加剤は、別々に組み込まれる。しかし、多くの場合、二つ又はそれより多い添加剤を含む添加剤濃縮物(いわゆる添加剤「パッケージ」(また、「アドパック(adpack)」と呼ばれる))として添加剤を組み込むことが好都合である。
従って、本発明による潤滑油組成物の製造方法は、潤滑粘性オイルを一つ又はそれより多い添加剤又は添加剤濃縮物であって、二つ又はそれより多い添加剤を含むものと混合すること、及び、その後、他の添加剤成分、例えば粘性改質剤、所望により多機能性粘性改質剤及び流動点降下剤を混合することを含むことが可能である。
潤滑油組成物のリン及び硫黄含有物は、潤滑油組成物中の添加剤、例えばジチオリン酸亜鉛から都合よく誘導される。
(A) 潤滑粘性オイルであって、少なくともその50質量%が鉱油であり、そのオイルが、群III及び群IVから選ばれるベースストックを過半量で含み、また所望により、エステルの形態において群Vベースストックを少量で含むもの;
(B) オイル組成物の質量をベースとして10質量%より少ない量の非水素化脂肪族オレフィンポリマー、例えばポリイソブテンであって、該ポリマーの数平均分子量が100〜5,000の範囲にあるもの;
(C) ボレート化及び非ボレート化コハク酸イミドを含有する分散剤添加剤組成物;
(D) (i)カルシウム及びマグネシウム清浄剤及び(ii)硫黄を含有しない一つ又はそれより多い有機酸、例えばサリチル酸カルシウムをベースとした一つ又はそれより多いカルシウム清浄剤から選択される、清浄剤添加剤組成物;
(E) 過半量のジチオリン酸亜鉛を含有する耐磨耗組成物であって、二級アルキル基を有するもの、一つ又はそれより多い芳香族アミン及びヒンダードフェノール化合物から選ばれる抗酸化剤組成物、及びジチオカルバミン酸モリブデン及びカルボン酸エステル化合物からなる摩擦改質剤組成物;及び
(F) オレフィンコポリマー及び水素化ポリ(スチレン-コ-イソプレン)ポリマー及びそれらの修飾物から選ばれる粘性改質剤。
ここに使用した場合、用語「含んでいる」又は「含む」は、述べた特徴、整数、工程又は成分の存在を特定するために用いられるが、一つ又はそれより多いそれらの他の特徴、整数、工程、成分又は基の存在又は添加を除外しない。用語「含んでいる」又は「含む」がここで使用される場合、用語「から本質的になる」及びその同族言語は好ましい態様であり、一方、「からなる」及びその同族言語は、用語「から本質的になる」の好ましい態様である。
「少量」は、組成物の50質量%未満、例えば30未満、例えば3〜25、好ましくは5又は10〜20質量%を意味する。
略語SAEは、自動車技術者協会を表し、それは粘度グレードにより潤滑剤を分類している。
潤滑油組成物の製造
二つの潤滑油組成物(オイル1及びオイルA)を当技術分野に公知の方法により、添加剤パッケージ、群IIベースストック(4.5質量%)及び群IIIベースストック(それぞれ75.0及び78.5質量%)を含有するベースストック混合物、及び粘性改質剤及び流動点降下剤を混合することにより、SAE 5W-30グレードに調製した。各オイルは、同じタイプ及び量の添加剤成分を含むが、オイル1は、数平均分子量が2225(4質量%)のポリイソブテンポリマー及び少量の粘性改質剤を含んでいた。各オイルは、リン含量0.050質量%を有し、また灰分0.721質量%を示した。
サンプルのそれぞれのオイルA及び1を、VWTDi CEC-L-78-T-99試験を特にベースとした、また、PV1452試験としても公知な、堆積物形成の調査に使用されるエンジン試験にかけた。その試験は、潤滑剤作業能力(performance capabilities)の工業規格及び厳しい評価に関するものである。
示したように、これらの結果を、工業基準オイル(RL206)に関連して判断し、合格性能を定めた。以下の表1に、二つのオイルの結果を示した。
追加の潤滑油組成物を、変更した試験方法(以下の表2を参照されたい)において、それらの性能について評定し、ここではエンジンを12時間ごとに止め、排液し、解体し、評価し、再び組み立てた;最初の試験オイルをエンジンに戻し、その後再スタートさせた。48時間での評価を、表2に示した。SAE 2002-01-2678は、使用した変更方法を記載している。
Claims (26)
- マルチグレードクランク室潤滑油組成物であって、以下のもの:
(A)過半量の潤滑粘性オイルであって、その少なくとも50質量%が群IIIの鉱油で、かつ、その25質量%以下が群I、群II又は群IVのベースストックである潤滑粘性オイル;及び少量の:
(B)オイル組成物の質量をベースとして1〜15質量%の量の、炭素数3〜8のオレフィンから誘導される非水素化オレフィンポリマーであって、該ポリマーの数平均分子量が100〜5,000であるもの;
(C)分散剤;
(D)金属清浄剤;
(E)抗酸化剤、耐磨耗剤及び摩擦改質剤から選ばれる一つ又はそれより多い他の潤滑剤添加剤成分;及び
(F)粘性改質剤
を含むか又はそれらを混合することにより製造される上記組成物。 - 非水素化オレフィンポリマーが、末端二重結合を有するポリマー鎖を10%以下有する、請求項1に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーが、末端二重結合を有するポリマー鎖を5〜10%有する、請求項2に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーの数平均分子量が、300〜3000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーの数平均分子量が、800〜2500である、請求項4に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーが、ブテンから誘導される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーが、イソ-ブテンから誘導される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーが、ポリイソブチレンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーの、100℃での動粘度が、少なくとも9mm2s-1である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーの、100℃での動粘度が、200〜2200mm2s-1である、請求項9に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーが、2〜10質量%の量である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
- 非水素化オレフィンポリマーが、3〜8質量%の量である、請求項11に記載の組成物。
- 分散剤が、無灰分散剤を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
- 金属洗浄剤が、カルシウム及び/又はマグネシウム洗浄剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
- 組成物が、オイル組成物の質量をそれぞれベースとして、リン含量0.005〜0.08質量%;硫黄含量0.05〜0.4質量%を有し;硫酸灰分含量1.0質量%以下を与える、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
- リン含量が0.01〜0.07質量%である、請求項15に記載の組成物。
- リン含量が0.03〜0.06質量%である、請求項16に記載の組成物。
- 硫黄含量が0.1〜0.3質量%である、請求項15に記載の組成物。
- 硫黄含量が0.15〜0.2質量%である、請求項18に記載の組成物。
- 硫酸灰分含量が0.2〜0.8質量%である、請求項15に記載の組成物。
- 硫酸灰分含量が0.3〜0.6質量%である、請求項20に記載の組成物。
- 圧縮点火内燃エンジンの潤滑方法であって、エンジンを作動すること及び請求項1〜21のいずれか1項に記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑にすることを含む、上記方法。
- 圧縮点火内燃エンジンのピストン清浄性を向上させる方法であって、請求項1〜21のいずれか1項に記載の潤滑油組成物をエンジンに加えることを含む、上記方法。
- 請求項1〜21のいずれか1項に記載の潤滑油組成物で潤滑された圧縮点火内燃エンジン。
- 圧縮点火内燃エンジンのピストン清浄性を向上させるための、
過半量の潤滑粘性オイルを含み、潤滑粘性オイルは少なくとも50質量%が群IIIの鉱油で、かつ、25質量%以下が群I、群II又は群IVのベースストックであるマルチグレードクランク室湿潤油組成物における、炭素数3〜8のオレフィンから誘導され、かつ、数平均分子量が100〜5,000である非水素化オレフィンポリマーの使用。 - 請求項1〜21のいずれか1項に規定したマルチグレードクランク室潤滑油組成物を製造するための濃縮物であって、油性キャリヤー、炭素数3〜8のオレフィンから誘導され、かつ、数平均分子量が100〜5,000である非水素化オレフィンポリマー、分散剤、金属清浄剤及び、一つ又はそれより多い他の潤滑剤添加剤成分であって抗酸化剤、耐磨耗剤及び摩擦改質剤から選ばれるもの、を含む上記濃縮物。
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