JP5220976B2 - 分散剤及び該分散剤を含む潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
さらに、クランクケース潤滑剤のユーザー、とりわけOEM供給先の業者は、より厳しい性能基準を満たすことができる潤滑剤を要求している。この性能基準の一つにピストン清浄性がある。ピストン清浄性の厳しいテストとして、VW TDiテスト(VW−PV1452;CEC L−78−T−99)がある。このテストによって測定されるもう一つの性能基準は「ピストン固着」であり、これは圧縮着火式(ディーゼル)内燃機関の動作中におけるピストンリングの固着を指す。
米国特許第4234435号には、数平均分子量が1300〜5000のポリアルケンから誘導されたヒドロカルビル置換ジカルボン酸が記載されているが、これはポリアルケン一部位に対して少なくとも1.3個(例えば1.3〜4.5個)の割合でジカルボン酸基を有するものである。
また、カルボン酸アシル化剤とアミン、アルコール、アミノアルコール又はポリオールとの反応生成物をさらに硼素化合物と反応させた分散剤も知られているが、これは、分散剤の磨耗性、腐蝕性、ゴム材料との相性の向上を目的としている。窒素含有分散剤の硼化処理については、米国特許第3087936号及び第3254025号に概要が教示されている。上記に記載の米国特許第4234435号には、高官能価の分散剤に対する任意の硼化処理を含む後処理が開示されている。米国特許第6127321号には、適度なサクシネート化率を有する分散剤を含有した処方が開示されているが、この分散剤を硼化処理することもできる。
平均官能価が約1.0〜1.2の分散剤を一種又は複数使って処方した潤滑油組成物によると、十分なピストン清浄性は得られるが分散性のレベルが不十分であることがわかった。官能価がさらに高い分散剤を一種又は複数で使えば、分散性は向上するがピストン清浄性には悪影響を与える。つまり、分散性が改善され、同時にピストン清浄性にも優れている分散剤又は分散剤混合物を提供できれば有利である。本発明の発明者らは、潤滑油の処方に使用する分散剤組成物の分子量、官能価、及び硼素:窒素の比を同時に制御することによって、ススやスラッジに対する優れた分散性を維持しながらVWTDiテストで測定されるようなリング固着やピストン清浄性を向上させることができることを見出した。
本発明の第二の態様によると、大量の潤滑粘度のオイルと少量の硼化分散剤組成物とを含む潤滑油組成物を提供するもので、分散剤組成物は、求核性反応物との反応で誘導体化したポリアルケニル置換モノカルボン酸若しくはジカルボン酸、無水物又はエステルである分散剤を一種以上含有し、組成物中、少なくとも一種の分散剤は、数平均分子量が少なくとも約1800のポリアルケニル部位を有し、ポリアルケニル部位一個に対して約1.3個より多く約1.7個までの割合でモノカルボン酸又はジカルボン酸生成部位を有するもので、該分散剤組成物の窒素重量%に対する硼素重量%の比(B/N)は約0.05〜約0.24である。
本発明の第三の態様によると、通常液状の実質的に不活性な有機溶剤又は希釈剤を約20〜90重量%と、硼化分散剤組成物を約10〜約90重量%含む添加剤濃縮物を提供するもので、分散剤組成物は求核性反応物との反応で誘導体化したポリアルケニル置換モノカルボン酸若しくはジカルボン酸、無水物又はエステルである分散剤を一種以上含有し、組成物中、少なくとも一種の分散剤は、数平均分子量が少なくとも約1800のポリアルケニル部位を有し、ポリアルケニル部位一個に対して約1.3個より多く約1.7個までの割合でモノカルボン酸又はジカルボン酸生成部位を有するもので、該分散剤組成物の窒素重量%に対する硼素重量%の比(B/N)は約0.05〜約0.24である。
本発明のこの他の目的、有利性及び特徴は、以下の明細書から明らかになるであろう。
本発明の分散剤組成物は、ポリアルケニル置換モノカルボン酸若しくはジカルボン酸、無水物又はエステルから誘導した分散剤を少なくとも一種含有し、その分散剤は、数平均分子量が少なくとも約1800のポリアルケニル部位を有し、ポリアルケニル部位一個につき約1.3個より多く約1.7個以下、好ましくは約1.3個より多く約1.6個以下、さらに好ましくは約1.3個より多く約1.5個以下の割合で官能基(モノカルボン酸又はジカルボン酸生成部位)を有する(中間官能価分散剤)。官能価(F)は次式によって求めることができる。
本発明の分散剤におけるポリアルケニル部位の数平均分子量は、少なくとも1800、好ましくは1800〜3000、例えば2000〜2800、さらに好ましくは約2100〜2500、最も好ましいのは約2200〜約2400である。分散剤の正確な分子量の範囲は、分散剤を誘導するのに使用されるポリマーの種類、官能基の数、用いられる求核性基の種類等の非常にたくさんのパラメーターによって変化するので、分散剤の分子量は、通常、ポリアルケニル部位の分子量で表す。
ポリマーの分子量、具体的にはMnは、既知の様々な方法によって求めることができる。簡便な方法の一つとしてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)があるが、これによると分子量分布情報も付加的に得ることができる(W.W. Yau、J.J. Kirkland、D.D. Bly "Modern Size Exclusion Liquid Chromatography" John Wiley and Sons, New York, 1979 参照)。分子量を求める際に、とりわけ低分子量ポリマーの分子量を求めるのに有用なもう一つの方法として、蒸気圧浸透圧測定法が挙げられる(ASTMD 3592参照)。
本発明の分散剤を形成するのに用いられる炭化水素化合物またはポリマー類として適したものには、ホモポリマー、インターポリマー又は低分子量の炭化水素化合物が含まれる。このようなポリマーのグループの一つとして、エチレン及び/又は少なくとも一個の式H2C=CHR1で表される炭素数3〜28のα−オレフィンを含むポリマーで、上記式中、R1は炭素原子1〜26個を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基で、このポリマーは炭素−炭素不飽和を含み、末端のエテニリデン不飽和の度合いが高いものが好ましい。好ましくは、このようなポリマーには、エチレンと上記式で表される少なくとも一つのα−オレフィンとからなるインターポリマーで、式中R1が炭素原子1〜18個のアルキル基、より好ましくは炭素原子1〜8個のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子1〜2個のアルキル基であるものが含まれる。すなわち、有用なα−オレフィンモノマーとコモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、デセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、及びこれらの混合物(例えばプロピレンとブテン−1との混合物等)が挙げられる。このようなポリマーの例としては、プロピレンホモポリマー、ブテン−1ホモポリマー、エチレンープロピレン共重合体、エチレンーブテン−1共重合体、プロピレンーブテン共重合体等が挙げられるが、このポリマーは少なくとも末端及び/又は内部に不飽和を含む。エチレンとプロピレン、及びエチレンとブテン−1の不飽和共重合体が好ましいポリマーである。本発明で使うインターポリマーは、炭素数4〜18の共役ではないジオレフィンコモノマーを少量、例えば0.5〜5モル%含んでいてもよい。しかし、本発明のポリマーはα−オレフィンホモポリマー、α−オレフィンコモノマーのインターポリマー、及びエチレンとα−オレフィンコポリマーのインターポリマーのみを含むことが好ましい。本発明で用いられるポリマーにおけるエチレン含有量は、0〜80モル%が好ましく、さらに好ましくは0〜60%である。プロピレン及び/又はブテン−1がコモノマーとしてエチレンと一緒に用いられる場合、この共重合体におけるエチレン含量は、15〜50%の範囲が最も好ましいが、エチレン含量はこれより多くても少なくてもよい。
使用できるポリイソブチレンは、通常約1800〜3000の炭化水素鎖を基本構造としている。ポリイソブチレンの製造方法は公知である。ポリイソブチレンは、下記に示すようなハロゲン化(例えば塩素化)、熱による「エン」反応、又は触媒(例えば過酸化物)を使った遊離基グラフトによって官能基化することができる。
高分子炭化水素を不飽和カルボン酸、無水物又はエステル類と反応させる方法及びそのような化合物から誘導体を得る方法については、米国特許第3087936号、第3172892号、第3215707号、第3231587号、第3272746号、第3275554号、第3381022号、第3442808号、第3565804号、第3912764号、第4110349号、第4234435号、第5777025号及び第5891953号、さらにはEP0382450B1、CA−1335895及びGB−A−1440219に開示されている。ポリマー又は炭化水素に官能基を与えるには、例えば、カルボン酸生成部位(好ましくは酸又は無水物)を使って、官能基部位または官能化剤、即ち、酸、無水物、エステル部位等がポリマー又は炭化水素頭上の基本的には炭素−炭素不飽和(エチレン性不飽和又はオレフィン性不飽和とも呼ぶ)の場所に付加される条件のもとで、ハロゲンによる官能基化プロセス(例えば塩素化)又は熱を用いた「エン」反応を用いてポリマー又は炭化水素を反応させればよい。
通常、出発物質のオレフィンポリマーの単不飽和官能基化反応物との反応性は塩素化することによって高まるが、本発明に用いることができるポリマーや炭化水素類のなかで、特に、末端結合が多く反応性も高く推奨されているものにとっては塩素化の必要はない。そのため、主鎖と単不飽和官能基化反応物(例えばカルボン酸反応物)とを高温で接触させ、最初に熱による「エン」反応を起こさせることが好ましい。エン(ene)反応は公知である。
使用できる遊離基開始剤としては、過酸化物、ヒドロペルオキシド及びアゾ化合物が挙げられ、沸点が約100℃を超えグラフト化の温度範囲で熱分解し遊離基を生じるものが好ましい。これらの遊離基開始剤の代表的なものとしては、アゾブチロニトリル、2,5−ジメチルヘクセ−3−エン−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキサイド及びジクメンパーオキサイドが挙げられる。開始剤を使用する際は、反応混合物溶液の重量を基準として0.005〜1重量%の範囲の量を一般的に用いる。通常、前記の単不飽和カルボン酸反応物と遊離基開始剤は、重量比で約1.0:1〜30:1の範囲、好ましくは3:1〜6:1の範囲で用いる。グラフト化は、窒素ガスブランケットのような不活性ガス雰囲気下で行うとよい。こうして得たグラフトポリマーは、カルボン酸(又はエステル、無水物)部位がポリマー鎖に沿って無作為に結合し、即ち、ポリマー鎖のなかには当然のことながらグラフト化していないところもあるという特徴を有する。上記の遊離基グラフト重合は、本発明による別のポリマーや炭化水素に使うことができる。
必要な官能価を得るには、単不飽和カルボン酸反応物、好ましくは無水マレイン酸であるが、これを一般的にはポリマー又は炭化水素のモル数を基準としておよそ等モルから約100重量%過剰、好ましくは5〜50重量%過剰の量で使用する。未反応の単不飽和カルボン酸反応物過剰分は、分散剤最終製品から例えばストリップによって、通常は必要に応じて真空下で取り除くことができる。
推奨される分散剤組成物は、少なくとも一種のポリアルケニルコハク酸イミドを含有する組成物で、ポリアルケニルコハク酸イミドはポリアルケニル置換無水コハク酸(例えばPIBSAとする)と、カップリング比が約0.65〜約1.25、好ましくは約0.8〜約1.1、最も好ましくは約0.9〜約1となるポリアミンとの反応生成物である。この開示の文意における「カップリング比」は、ポリアミン反応物中の第一アミン基に対するPIBSA中のスクシニル基の比として定義される。
本発明の分散剤は高分子でないことが好ましい(たとえば、モノコハク酸イミド又はビスコハク酸イミドであることが好ましい)。
分散剤又は他の添加剤を希釈剤中で潤滑油や添加剤濃縮物に添加することはよく行われるが、この場合、添加された重量分のみが有効成分(A.I.)を表す。例えば、分散剤を同じ重量の希釈剤と一緒に添加すれば、この場合の「添加剤」は、50%の有効成分の分散剤ということになる。本明細書で使われている重量%という用語を、分散剤又は他の添加剤、或いは分散剤組成物に適用する場合、それは有効成分の重量をさしている。
本発明の分散剤組成物においては、窒素の重量%に対する硼素の重量%の比(B/N)は約0.05〜約0.24、好ましくは約0.07〜約0.20、最も好ましくは約0.10〜約0.15である。窒素の重量%は、分散剤窒素の重量をさす。硼素の方は、硼化した分散剤によって得られる硼素であるが、分散剤以外の硼素供給源から得られるものもよい。本発明の分散剤組成物は、分散剤組成物中の分散剤有効成分の全重量を基準として、例えば、約0.1〜約0.8重量%、好ましくは約0.2〜約0.4重量%の硼素を含有してもよい。
分散剤組成物が、数平均分子量が少なくとも約1800のポリアルケニル部位を有し官能価がおよそ1.3より多く約1.7以下の分散剤と、官能価が1.2以下の分散剤との混合物を含む場合は、分散剤全重量の少なくとも30%、例えば50%、好ましくは少なくとも約70%を官能価がおよそ1.3より多く約1.7以下の分散剤にするとよい。高官能価(1.7以上)の分散剤を相当量(例えば、分散剤全重量を基準として10重量%以上、例えば30重量%)用いることは避けたほうがよい。
アルカリ金属やアルカリ土類金属の硼酸塩は、通常水和した粒状の金属硼酸塩であり、これはこの分野では公知である。アルカリ金属硼酸塩には、アルカリ金属とアルカリ土類金属の硼酸塩の混合物が含まれる。これらの金属硼酸塩は市販されている。好適なアルカリ金属やアルカリ土類金属の硼酸塩、またそれらの製造方法を記載した代表的な特許として、米国特許第3997454号、第3819521号、第3853772号、第3907601号、第3997454号及び第4089790号が挙げられる。
硼化脂肪エポキシドは、一般に一種以上の上記の硼素化合物と少なくとも一種のエポキシドとの反応生成物である。エポキシドとは、通常炭素原子を8〜30個、好ましくは10〜24個、より好ましくは12〜20個有する脂肪族エポキシドである。有用な脂肪族エポキシドの例として、ヘプチルエポキシドとオクチルエポキシドがある。エポキシドの混合物も使用でき、例えば、炭素数が14〜16個と14〜18個のエポキシドの混合物が市販されている。硼化脂肪エポキシドについては公知であり、米国特許第4584115号に記載されている。
硼酸エステルは、一種以上の上記の硼素化合物と好適な親油性を有する一種以上のアルコールとを反応させることによって生成される。このアルコールは、通常炭素数が6〜30個、又は8〜24個である。このような硼酸エステルを得る方法はこの分野では公知である。
硼酸エステルは硼化リン脂質にできる。このような化合物について、またその製造方法はEP−A−0684298に記載されている。
硼化過塩基性金属洗浄剤はこの分野では公知であり、この洗浄剤においては、核の中の一部或いは全体の炭酸塩が硼酸塩に置き換わっている。
天然油としては、動物油と植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、液状石油系オイル、及びパラフィン、ナフテンさらにはパラフィン−ナフテン混合型の水素化精製された溶媒処理又は酸処理による鉱物油がある。石炭やシェール(ケツ岩)から誘導された潤滑粘度のオイルも有用な基油の役目をする。
合成潤滑油には炭化水素油とハロゲン置換の炭化水素油が挙げられ、例えば重合オレフィンや共重合オレフィン類(例としては、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン類(例としては、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル類(例としては、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);及びアルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化した硫化ジフェニル類、及びその誘導体、類似体と同族体がある。
合成油として有用なエステルには、炭素数5〜12のモノカルボン酸とポリオールから作られるエステル、並びにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、及びトリペンタエリトリトールなどのポリオールエステルが含まれる。
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シリコーンオイルやシリケートオイル等の珪素系オイルが、合成潤滑油の有用なもう一つ別のグループを形成している。このようなオイルには、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(p−ターシャリーブチル−フェニル)シリケート、ヘキサ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成潤滑油として、リン含有の酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及び高分子量テトラヒドロフランがある。
本発明におけるベースストック及び基油の定義は、アメリカ石油協会(API)の刊行物、「Engine Oil Licensing and Certification System」Industry Services Department 14版、1996年12月、付録1、1998年12月に示されているものと同じである。この刊行物によると、ベースストックは以下のように分類されている。
b)グループIIのベースストックは、90%以上が飽和化合物を含み、硫黄含量が0.03%以下、表E−1に規定したテスト方法を用いた場合の粘度指数が80以上、120未満となる。
c)グループIIIのベースストックは、90%以上が飽和化合物を含み、硫黄含量が0.03%以下、表E−1に規定したテスト方法を用いた場合の粘度指数が120以上となる。
d)グループIVのベースストックはポリアルファオレフィン(PAO)。
e)グループVのベースストックは、グループI、グループII、グループIII、又はグループIVに含まれない他のすべてのベースストックを含む。
金属含有又は灰形成洗浄剤は、堆積するカスを削減又は除去する洗浄剤として、又、酸中和剤又は防錆剤としても機能するので、磨耗や腐蝕を低減させエンジンの寿命を延ばすことができる。通常、洗浄剤は極性の頭に疎水性の長い尾を有する。極性の頭は酸性有機化合物の金属塩を含む。その塩は、実質的に化学量論の金属を含有しているとよく、この場合の塩を一般に正塩又は中性塩と呼び、全塩基価又はTBN(ASTM D2896で測定することができるが)は、0〜80になるであろう。過剰の金属化合物(例えば酸化物又は水酸化物)と酸性ガス(例えば二酸化炭素)とを反応させることによって、大量の金属塩基を混入させてもよい。こうして得られた過塩基性洗浄剤は、中和された洗浄剤を金属塩基(例えばカーボネート)のミセルの外層として含む。このような過塩基性洗浄剤は、TBNが150以上であるとよいが、通常250〜450以上となる。
スルホネートは、石油の分留から得られるようなアルキル置換芳香族炭化水素化合物をスルホン化したり、又は芳香族炭化水素化合物をアルキル化することによって通常得られるスルホン酸から調達すればよい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル、又はクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロナフタレン等のハロゲン誘導体をアルキル化して得られたものが挙げられる。アルキル化は触媒の存在下、炭素原子を約3個〜70個を超えて有するアルキル化剤を使って行えばよい。アルカリールスルフォネート(alkaryl sulfonates)は、アルキル置換芳香族部位1つにつき通常約9〜約80個以上、好ましくは約16〜約60個の炭素原子を含む。
フェノールや硫化フェノールの金属塩は、酸化物又は水酸化物などの適当な金属化合物との反応によって生成され、中性又は過塩基性生成物をこの分野で既知の方法で得ればよい。硫化フェノールは、フェノールを硫黄又は硫化水素、一ハロゲン化硫黄又は二ハロゲン化硫黄等の硫黄含有化合物と反応させることによって生成すればよく、二種以上のフェノールが硫黄含有橋かけ基によって連結している化合物の混合物である生成物が形成される。
好ましいジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性の塩で下記の式で表されるものがよい。
少なくとも二つの芳香族基が窒素に直接結合している芳香族アミン類は、酸化防止用に頻繁に使用される化合物のもう一つのグループを構成している。これらの化合物は少量で使用してもよいが、本発明の推奨する実施例ではこれらの化合物は使っていない。好ましくは、これらの化合物は少量、即ち0.4重量%まででしか使用しないほうがよい。より好ましくは、組成物の他の成分からの不純物程度の量でない限り、その使用をそっくり避けるほうがよい。
他の公知の摩擦調整剤として油溶性有機モリブデン化合物がある。この有機モリブデン摩擦調整剤も、潤滑油組成物に対して酸化防止と磨耗防止の効果をもたらす。このような油溶性有機モリブデン化合物の例として、ジチオカルバミン酸塩、ジチオリン酸塩、ジチオホスフィン酸塩、キサントゲン酸塩、チオキサントゲン酸塩、硫化物等、及びそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、アルキルキサントゲン酸モリブデン、及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデンである。
本発明の組成物において有用なモリブデン化合物に、次式の有機モリブデン化合物がある。
(式中、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシアルキル基からなる群から選ばれる通常炭素数1〜30個、好ましくは2〜12個の有機基を、特に好ましくは炭素数2〜12のアルキル基を表す。)なかでもモリブデンのジアルキルジチオカルバミン酸塩が特に好ましい。
配位子は以下のグループからそれぞれ独立して、又はこれらの混合物が選択される。
「ヒドロカルビル」という用語は、本発明の文意においては、その炭素原子が配位子の残りの部分に直接結合している置換基を指し、特性としてヒドロカルビル優位であることを示す。そのような置換基としては以下のものが含まれる。
2.置換された炭化水素置換基。本発明においては、置換基のヒドロカルビル優位な特性を変えない炭化水素基以外のものを含んでいる置換基である。好適な基(例えば、ハロゲン、とりわけクロルとフルオル、アミノ基、アルコキシル基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフォキシ基等)については当業者の知るところであろう。
3.ヘテロ置換基。即ち、本発明においては、ヒドロカルビル優位な特性であるが、鎖又は環が炭素原子だけからなるのでなく炭素以外の原子が存在する置換基である。
重要なのは、化合物がオイルに溶解又は分散されるように配位子の有機基が十分な数の炭素原子を含んでいることである。例えば、各基の炭素数は、通常は約1〜約100個、好ましくは約1〜約30個、より好ましくは約4〜約20個であろう。好ましい配位子としては、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート、及びジアルキルジチオカルバメートがあるが、このなかでジアルキルジチオカルバメートがさらに好ましい。上記の官能基を2個以上含む有機配位子は、配位子として働くこともでき、また一つ以上のコアに結合することもできる。本発明中の化合物を形成させるには、コアの電荷の均衡をとるために最適な電荷を有する配位子を選択することが必要であることは当業者の理解のかぎりであろう。
式Mo3SkLnQzで表される化合物は、陰イオンの配位子に囲まれた陽イオンのコアを有し、陽イオンのコアは次のような構造式で表され、
ここで使用している「油溶性」又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤がオイルにどんな比率で含有されていても、オイルに可溶性である、溶解される、混和性がある、あるいは懸濁されうるということを必ずしも指すのではない。これらの用語は、例えば、オイルの使用環境の中で化合物や添加剤が意図した効果を十分に発揮できる程度にオイルに溶解又は安定して分散されることを意味しているのである。また、他の添加剤をさらに混入させることによって、必要であれば特定の添加剤の含有量をより増やして混入させることもできる。
潤滑油組成物のもう一つの推奨される実施例においては、本発明の分散剤組成物を油溶性有機モリブデン化合物と一緒に使用するものである。
流動点降下剤、または潤滑油流れ向上剤(LOFI)としても知られているが、これは流体が流動し流出し始める最低温度を下げる。このような添加剤はよく知られている。流体の低温流動性を向上させるこの添加剤の代表として、炭素数8〜18のジアルキルフマル酸エステル/酢酸ビニル共重合体、及びポリメタクリレートが挙げられる。気泡を制御するには、ポリシロキサン系の消泡剤、例えばシリコーン油又はジメチルシロキサンで行える。
本発明において、配合物の粘度を安定に保つための添加剤を加える必要があるかもしれない。というのは、極性基含有添加剤は調合する前の段階では粘度を好適に低くすることができるが、組成物によっては長い間の保存中にその粘度が上昇するものが認められている。このような粘度上昇をおさえるのに効果的な添加剤としては、本願明細書ですでに開示したように、無灰分散剤の調製の際に使用するモノカルボン酸若しくはジカルボン酸又は無水物との反応によって官能基化した長鎖の炭化水素化合物が含まれる。
潤滑油組成物に上記の添加剤が一種以上含まれる場合、基油の量をそれぞれの添加剤がその所望の機能を果たせるような量にして調合するのが一般的である。このような添加剤をクランクケース潤滑油で使用する場合の添加剤の代表的な有効量を下記に挙げる。列挙されている値は、すべて有効成分の質量%で記載されている。
必須ではないが、添加剤を含有した一種以上の添加剤濃縮物(濃縮物は添加剤パッケージと称する場合もある)を作っておくことが望ましい。これによって、潤滑油組成物を完成するために数種の添加剤をオイルに同時に添加することができる。
最終組成物中、濃縮物を5〜25質量%、好ましくは5〜18質量%、通常10〜15質量%の割合で使用すればよく、残りは潤滑粘度のオイルとなる。
以下の実施例を参照することによって本発明の理解をさらに深めることとする。実施例においては、特に記載がない限り、「部」はすべて「重量部」を示し、実施例には本発明の推奨する実施態様が含まれる。
VW TDiエンジンテストとは、一連の「ディーゼルのデポジットテスト」の厳しさの度合いを増した最新版のテストである。業界内では潤滑油の性能を調べる非常に厳しいテストとして認知され、このテストに合格すれば、その潤滑油の処方が多くの点において選ばれることになるほどである。
TDiは、4気筒1.9リットル、81kWの乗用車用ディーゼルエンジンである。これは直接噴射系エンジンで、ユニットの出力を上げるために使用するターボチャージャが付いている。この工業用テスト方法は、いわゆるPKサイクルと呼ばれる高温と低温のランニング条件の繰り返しサイクルからなる。ゼロ負荷で30分間のアイドリング期間(K(Kalt)部)、その後に続く全負荷をかけての毎分回転数4150rpmでの150分間(P(power)部)を伴う。この全サイクルが合計で54時間にわたり繰り返される。この54時間の期間中、テストに供されている潤滑油の最初に充填した4.5リットルを満タンにすることはしない。つまり、蒸発、燃焼、そのたの物理的損失となるメカニズムによって失われた分は問わない。
ピストンはDIN評価法にてらしあわせて等級付けするもので、この評価法はカスの堆積している範囲の面積を調べ等級付けするが、堆積しているカスの種類を制限して評価する。三箇所のピストングルーブ(溝)とグルーブ間のピストンランド二箇所を堆積カスについて段階ごとに等級付けし、100の中から段階をつける。この数がおおきくなればなるほど良好であり、100は完全清浄状態を指し、0は堆積物カスで完全に覆われていることを指す。五箇所の等級の平均値がだされることによってピストン清浄度の総合的等級が与えられる。さらに四本のピストンそれぞれのスコアの平均値がだされ、このテストにおける総合的ピストン清浄度がでる。
カスが堆積していくメカニズムによりしっかりした見通しを与え、性能が影響している部分をより正確に評価するために、VW TDi法は中間時点でのピストンの評価ができるよう変更できる。そのようにするには、エンジンを12時間ごとに止めて中のオイルを空にして、取りはずして評価してから戻し、最初のテスト用オイルをエンジンに戻し入れ運転を再開する。このようにテストを変更してみると、カスはグルーブ1にすぐに堆積していることがわかり(これがリング固着につながる)、また、グルーブ3が54時間のテスト全体にわたって実質的に清浄なままであることは珍しくはないことがわかった。そのため、このテストで観察すべき重要な点はグルーブ2であり、このグルーブ2にはカスがたまるがリング固着問題を引き起こすほどのカスの堆積は被っていない。しかしながら、基本のVW TDiテスト法ではピストンの五箇所全体の結果から平均を出すので、上記の明瞭となった結果が実質的には曖昧にされてしまう。このため、改変したVW TDiテスト法において、エンジンを36時間(基準オイル間での差別化が最高になるテスト時間)動かし、グルーブ2の結果のみを考察する。
*別の製造会社の市販品であり、このMWDは不明であり容易に求めることがで きなかったが、2.0より大きいと思われる。
上記の分散剤又はその混合物を使用して、潤滑油を下記表2に示すように処方した。
分散剤組成物とは無関係に、基油のNoack揮発度がVW TDiテスト結果に及ぼす影響を示すために、同一の市販のDI添加剤パッケージと粘度調整剤、及びNoack揮発度が13.5%前後の基油を使ってサンプルを調製した。結果を表4に示す。
本発明の潤滑油組成物には、定義ずみの個々の、即ち、独立した成分が含まれており、これらは混合の前後で化学的に同一であっても変わってもよいということに留意しておかなければならない。つまり、組成物の様々な成分は、任意で用いる成分や従来から用いられている成分だけでなく必須成分も、処方、保存或いは使用の条件下で反応してもよいということがわかる。並びに、本発明がこのような反応の結果により得られる、又は得られた生成物に向けられたものであり、このようなものに関するものであることが理解できる。
Claims (15)
- ポリイソブテンコハク酸無水物とポリアミンとの反応生成物である分散剤を一種以上含む硼素含有分散剤組成物であって、該分散剤の少なくとも一種が、数平均分子量が少なくとも1800のポリアルケニル部位を有し、ポリアルケニル部位一個に対して1.3個より多く1.7個までの割合でジカルボン酸生成部位を有し、該分散剤組成物の窒素重量%に対する硼素重量%の比(B/N)が0.10〜0.15である分散剤組成物。
- ポリアミンが一分子中に平均して6〜7個の窒素原子を有する請求項1記載の分散剤組成物。
- 少なくとも一種の分散剤が、ポリアルケニル部位一個に対して1.3個より多く1.6個までの割合でジカルボン酸生成部位を有する請求項1記載の分散剤組成物。
- ポリアミンが少なくとも一個の第一アミン部位を有し、少なくとも一種の分散剤が、前記のポリアミンの第一アミン部位一個に対して0.8から1.0個の割合でスクシニル部位を有する請求項1記載の分散剤組成物。
- 硼化分散剤以外の硼素供給源によって硼素が該組成物に供給されている請求項1記載の分散剤組成物。
- 該硼素供給源が、硼化した分散粘度指数向上剤;アルカリ金属硼酸塩、混合アルカリ金属の硼酸塩、又はアルカリ土類金属硼酸塩;硼化した過塩基性の金属洗浄剤;硼化したエポキシド;硼酸エステル;及び硼酸アミドからなる群から選ばれる請求項5記載の分散剤組成物。
- 数平均分子量が少なくとも1800のポリアルケニル部位を有し、ポリアルケニル部位一個に対して1.3個より多く1.7個までの割合でジカルボン酸生成部位を有する分散剤を、分散剤組成物の少なくとも30重量%含む請求項1記載の分散剤組成物。
- 一種以上の分散剤のうち、少なくとも一種の分散剤のポリアルケニル部位は数平均分子量(Mn)が1800〜3000である請求項1記載の分散剤組成物。
- 該ポリアルケニル部位の分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜2.0である請求項8記載の分散剤組成物。
- 多量の潤滑粘度のオイルと少量の請求項1記載の分散剤組成物とを含有する潤滑油組成物であって、潤滑粘度のオイルのNoack揮発度が13.5%以下であり、粘度指数(VI)が少なくとも120である潤滑油組成物。
- 潤滑油組成物が、さらにモリブデン含有摩耗防止剤、摩擦調整剤又は酸化防止剤、サリチル酸カルシウム洗浄剤、窒素含有摩擦調整剤、及び多機能型粘度調整剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の補助的添加剤を少量含有している請求項10記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油組成物中のリン含有量が、潤滑油組成物の全重量を基準として0.08重量%以下である請求項10記載の潤滑油組成物。
- 多量の潤滑粘度のオイルと、請求項1記載の分散剤組成物有効成分を潤滑油組成物の全重量を基準として0.5〜7重量%含有する潤滑油組成物。
- 液体の不活性な有機溶剤又は希釈剤を40〜90重量%と、請求項1記載の分散剤組成物を含む添加剤有効成分を10〜60重量%含有する添加剤濃縮物。
- 作動中の内燃機関のピストンの清浄度を改善する方法であって、該内燃機関を多量の潤滑粘度のオイルと少量の請求項1記載の分散剤組成物とを含有する潤滑油組成物を使って潤滑するステップを含む方法。
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