JP3722472B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンあるいはジメチルエーテルを燃料とするエンジンやガスエンジンなどの内燃機関の潤滑に有用な潤滑油組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、低灰分含量、低リン含量、低硫黄含量、そして低塩素含量でありながらも高温清浄性に優れ、パティキュレートフィルタや、未燃焼の煤および燃料や潤滑油を酸化するために自動車に装着されている酸化触媒などの排ガス浄化装置への悪影響が少なく、近い将来における実施が予測される排ガス規制にも充分対応できる内燃機関用潤滑油組成物に関する。本発明は特に、走行用燃料として、硫黄含有量約0.01重量%以下の炭化水素系燃料を用いる自動車、なかでも排ガス浄化装置(特にパティキュレートフィルタおよび酸化触媒)を備えたディーゼルエンジン搭載車において好適に用いられる、環境対応型の内燃機関用潤滑油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関、特にディーゼルエンジンに関し、パティキュレートおよびNOXなどの排ガス成分による環境汚染に対する対策が重要な課題となっている。その対策としては、自動車へのパティキュレートフィルタ及び酸化触媒などの排ガス浄化装置の装着があるが、従来の内燃機関用潤滑油を用いた場合、パティキュレートフィルタに付着した煤は、排ガス浄化装置中で、酸化、燃焼により取り除かれるものの、燃焼により生成した金属酸化物や硫酸塩、カルボン酸塩などによるフィルタ閉塞の問題は解決されない。
【0003】
一方、燃料中の硫黄分の存在は排ガス中への硫酸もしくは硫酸塩の混入につながり、特に酸化触媒への悪影響を考慮すると極力減らす必要があり、近い将来、燃料の低硫黄化は一段と進むものと考えられている。ディーゼルエンジン搭載自動車用の軽油を例にとれば、その含有硫黄分は、現在の硫黄分の約0.05重量%から0.01重量%以下、そしてさらには0.001重量%前後まで減らされるものと予測されている。燃料の低硫黄化が進めば、硫酸等を中和するために必要とされた潤滑油中の金属系清浄剤(金属含有清浄剤)の添加量を低減することができる。一方、潤滑油の一部はエンジン中で潤滑に使用されると同時に、燃焼し、排ガスの一部と排出される。従って、潤滑油中の金属分、硫黄分もまたできるだけ低くする方が好ましいことは当然である。さらに、潤滑油中のリン分も減らすことが触媒の劣化対策のうえで好ましい。またダイオキシン類の発生の可能性を考慮すると、潤滑油中の塩素分も極力低減することが好ましい。
【0004】
従来、自動車、建設機械、発電機等で用いられるディーゼル内燃機関は、硫黄分が約0.05重量%以上の燃料(軽油や重油)を用いて運転されることが一般的であって、ディーゼルエンジン用潤滑油としては、通常、硫酸灰分約1.3〜2重量%、硫黄分約0.3〜0.7重量%、リン分約0.1〜0.13重量%、のものが多くの場合用いられてきた。また、塩素分も50〜100重量ppm以上の潤滑油が一般的であった。
【0005】
特許第2922675号には、前記したような低硫黄含有量の燃料を用いたディーゼルエンジンの潤滑に適した潤滑油組成物として、(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)カルボン酸アルキルエステル、コハク酸イミド型無灰性分散剤、そしてアミン系またはフェノール系の無灰系酸化防止剤をそれぞれ特定量含有する無灰型潤滑油組成物が記載されている。
特許第2877887号には、特定の無灰系分散剤、油溶性酸化防止剤、そして油溶性ジヒドロカルビルジチオフォスフォレートとを含む、全硫酸灰分量が少ない重質ディーゼルエンジン用潤滑油組成物が記載されている。
特開平8−48989号公報には、高温清浄性に優れ、パティキュレートトラップや酸化触媒への悪影響が少なく、将来の排気ガス規制に対応できる潤滑油組成物として、基油に対してホウ素含有無灰性分散剤とジチオリン酸亜鉛、そして場合により、無灰性酸化防止剤を配合した潤滑油組成物であって、ホウ素含有量が0.1重量%以上、ホウ素/リン含有量被が0.8以上、そして全重酸灰分量が1.0重量%以下の潤滑油組成物が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来用いられている潤滑油組成物に比べて、低灰分含量、低リン含量、低硫黄含量かつ低塩素含量であって、パティキュレートフィルタや酸化触媒などの排ガス浄化装置への悪影響が低減され、一方では、従来用いられている潤滑油組成物と同等もしくはそれ以上の高温清浄性を示し、将来の排ガス規制に充分対応できる内燃機関用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
潤滑油組成物を研究する研究者や技術者にとって、一般的に知られていることであるが、内燃機関用潤滑油組成物の単なる低灰分化、低リン化、かつ低硫黄化は、従来の潤滑油組成物に一般的に用いられいる金属系清浄剤およびジチオリン酸亜鉛の添加量の削減を意味し、高温清浄性や酸化安定性の低下につながる。
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、低灰分化、低リン化、かつ低硫黄化を行ないながらも、潤滑油組成物中に、特定の無灰系酸化防止剤を添加し、さらに金属系清浄剤(特定の金属成分含有清浄剤)に含まれる有機酸金属塩(いわゆる石鹸成分もしくはソープ成分)を特定範囲の量にて存在させることにより、高温清浄性や酸化安定性を高いレベルに維持することを可能にする潤滑油組成物の配合を見出した。本発明は、この新規な知見に基づき完成されたものである。
従って、本発明は、鉱油からなる硫黄含有量0.1重量%以下の基油に少なくとも、組成物の全重量に基づき、
a)アルケニルもしくはアルキルこはく酸イミドあるいはその誘導体である無灰性分散剤が窒素含有量換算値で0.01〜0.3重量%、
b)非硫化のアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩およびマンニッヒ塩基構造を有する非硫化のアルキルフェノール誘導体のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる硫黄含有量が3%以下で全塩基価10〜350mgKOH/gの金属含有清浄剤が硫酸灰分換算値で0.1〜1重量%、
c)ジアルキルジチオリン酸亜鉛が、リン含有量換算値で0.01〜0.1重量%、そして
d)酸化防止性のフェノール化合物および/または酸化防止性のアミン化合物が0.01〜5重量%、
の量にて溶解もしくは分散されていて、組成物の全重量に基づき、硫酸灰分量が0.1〜1重量%の範囲、リン含有量が0.01〜0.1重量%の範囲、そして硫黄含有量が0.01〜0.3重量%の範囲にあって、塩素含有量が40ppm以下であり、さらに金属含有清浄剤に含まれる有機酸金属塩が組成物中に0.2〜7重量%存在することを特徴とする潤滑油組成物にある。
【0009】
本発明の潤滑油組成物において、そのb)成分の金属含有清浄剤は、全塩基価30〜300mgKOH/g(特に、30〜100mgKOH/g)の非硫化のアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であることが好ましい。また、本発明のb)成分の金属含有清浄剤は、マンニッヒ塩基構造を有する非硫化のアルキルフェノール誘導体のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であることも好ましい。
【0010】
本発明の潤滑油組成物において、そのa)成分の無灰性分散剤は、塩素含有量が30重量ppm以下の無灰性分散剤であることが好ましく、特に、ポリブテンと無水マレイン酸とを原料とし、塩素もしくは塩素含有化合物を接触させることのない熱反応法により得られるポリブテニルこはく酸無水物をポリアミンと反応させて得られるこはく酸イミドあるいはその誘導体であることが好ましい。
【0011】
本発明の潤滑油組成物において、組成物の全重量に基づくリン含有量は、0.06重量%以下であることが好ましく、また組成物の全重量に基づく硫黄含有量が0.15重量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の潤滑油組成物において、そのd)成分は、ヒンダードフェノール化合物および/またはジアリールアミン化合物であることが好ましく、またさらに、モリブデン含有化合物を0.01〜5重量%および/または、アルカリ金属ホウ酸塩水和物を0.01〜5重量%を含有することが好ましい。そして、本発明の潤滑油組成物は、さらに粘度指数向上剤を添加してマルチグレードエンジン油として用いることが有利である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の潤滑油組成物における基油としては、通常、100℃における動粘度が2〜50mm2/sの鉱油や合成油が用いられる。この鉱油や合成油の種類、あるいはその他の性状については特に制限はないが、基油として、硫黄含有量が0.1重量%以下である必要がある。この硫黄含有量は0.03重量%以下であることが望ましく、特に0.005重量%以下であることが望ましい。
【0014】
鉱油系基油は、鉱油系潤滑油留分を溶剤精製あるいは水素化処理などの処理方法を適宜組み合わせて利用して処理したものであることが望ましく、特に高度水素化精製(水素化分解)基油(例えば、粘度指数が100〜150、芳香族含有量が5重量%以下、窒素および硫黄の含有量がそれぞれ50ppm以下である基油)が好ましく用いられる。この中には、鉱油系スラックワックス(粗ろう)あるいは天然ガスから合成された合成ワックスを原料として異性化および水素化分解のプロセスで作られる高粘度指数基油が含まれる。水素化分解基油は、低硫黄分、低蒸発性、残留炭素分が少ないなどの点から、本発明の目的上好ましいものである。
【0015】
本発明の潤滑油組成物におけるa)成分としての無灰性分散剤としては、ポリオレフィンから誘導されるアルケニルもしくはアルキルこはく酸イミドあるいはその誘導体が用いられる。
【0016】
その添加量は、組成物の全重量に基づき、窒素含有量換算値で、0.01〜0.3重量%の範囲である。
【0017】
代表的なこはく酸イミドは、高分子量のアルケニルもしくはアルキル基で置換された、こはく酸無水物と1分子当り平均4〜10個(好ましくは5〜7個)の窒素原子を含むポリアルキレンポリアミンとの反応により得ることができる。
【0018】
高分子量のアルケニルもしくはアルキル基は、数平均分子量が約900〜3000のポリブテンであることが好ましい。
【0019】
ポリブテンと無水マレインとの反応により、ポリブテニルこはく酸無水物を得る工程では、多くの場合、塩素を用いる塩素化法が用いられている。しかし、この方法では、こはく酸イミド最終製品中に多量の塩素(例えば約2000〜3000ppm)が残留する結果となる。一方、塩素を用いない熱反応法では、最終製品中に残る塩素を極めて低いレベル(例えば0〜30ppm)におさえることができる。従って、潤滑油組成物中の塩素含有量を0〜30重量ppmの範囲の量に抑えるためには、熱反応法によって得られたポリブテニルこはく酸無水物からのこはく酸イミドを用いることが望ましい。こはく酸イミドは更にホウ酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸等と反応させ、いわゆる変性こはく酸イミドにして用いることができる。特に、ホウ酸あるいはホウ素化合物との反応で得られるホウ素含有アルケニル(もしくはアルキル)こはく酸イミドは、熱・酸化安定性の面で有利である。
【0020】
本発明の潤滑油組成物は、アルケニルもしくはアルキルこはく酸イミドあるいはその誘導体を必須成分として含有するが、これら以外の無灰性分散剤であるアルケニルベンジルアミン系やアルケニルこはく酸エステル系の無灰性分散剤も適宜組合わせて用いられる。
【0021】
本発明の潤滑油組成物におけるb)成分である金属系清浄剤としては、硫黄含有量3%以下で全塩基価10〜350mgKOH/gの金属系清浄剤を硫酸灰分換算値で0.1〜1重量%の範囲で用いる。
【0022】
一般に金属系清浄剤としては、硫化フェネート、石油もしくは合成系スルホネート、サリシレートなどが用いられてきた。本発明の特徴である低灰分、低硫黄を実現し、高温清浄性を維持するためには、金属系清浄剤として、▲1▼硫黄含有量が小さい、▲2▼過塩基化度があまり高くない、▲3▼金属成分として原子量が小さい金属(例えば有利な方からLi、Mg、Ca、Baの順)を含む、▲4▼金属に由来する塩基価以上の塩基価が期待できる(例えばアミン反応物)などの性状を持つ金属系清浄剤を用いること望ましい。本発明者は、これらの観点から鋭意検討し、特に、全塩基価が30〜300mgKOH/gの非硫化のアルキルサリシレート(アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩)が本発明の目的に有効であることを見出した。金属サリシレートは、通常、平均炭素原子数が約8〜30のα−オレフィンとフェノールの反応で得られるアルキルフェノールからコルベ・シュミット反応を利用して製造されるアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩である。アルカリ土類金属塩は、通常、Na塩もしくはK塩を複分解法あるいは硫酸分解法等により、Ca塩、Mg塩に転換する。塩化カルシウム(CaCl2)等を用いる複分解法は、残留塩素が多くなるので、その点で好ましくない。
【0023】
また、アルキルフェノールを直接中和してCa塩にし、炭酸化工程で直接カルシウムサリシレートを得る方法もあるが、サリシレートへの変換率がコルベ・シュミット法に比べ劣る。本発明者は、コルベ・シュミット法−硫酸分解法を経て製造される、全塩基価が30〜300mgKOH/g(更に好ましくは、30〜100mgKOH/g)の非硫化のアルキルサリシレートが本発明の目的に特に有効であることを見出した。
【0024】
一方、金属系清浄剤として、炭素−窒素結合を有する有機酸あるいはフェノール誘導体のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩も本発明に有効であることを見出した。一般にアミン化合物を反応させることにより、塩基性の窒素に由来する塩基価が得られ、低灰分でも高い塩基価が得られ有利となる。例えば、アミノカルボン酸の金属塩等のさまざまなものが考えられるが、特に、マンニッヒ塩基構造を有する非硫化のアルキルフェネート(アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩)が本発明に有効であることを見出した。この化合物は、通常、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、アミンあるいはアミン化合物を用い、マンニッヒ反応により合成し、フェノールの環のアミノメチル化により得られる反応物を水酸化カルシウム等の塩基で中和し、金属塩にすることによって得ることができる。具体的には、例えば、次の一般式で表される化合物(Rは炭素原子数8〜30のアルキル基であり、nは0あるいは正の整数である)が本発明に有効である。
【0025】
【化1】
【0026】
上記一般式の化合物の性状の一例としては、Ca=2.5重量%、N=1.6重量%、全塩基価=135mgKOH/gのものがあり、塩基性の窒素に由来する塩基価が全体の50%近いことを示している。
【0027】
これまでに述べた金属系清浄剤の他に、石油スルホン酸あるいはアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であるスルホネートは併用することができる。高温清浄性の面からは、硫酸灰分を一定にしたとき、過塩基価度の小さいスルホネートが併用に有利であることを見出した。この場合、過塩基価度の小さいスルホネートは添加量が多くなり、硫黄含有量を増加させ、又添加量の割には全塩基価が大きくならないので、この点は注意を要する。先に述べたような非硫化のサリシレートと組合わせると、効果的である。
【0028】
従来用いられてきた硫化フェネートは、硫化アルキルフェノールのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であって、通常、Ca塩あるいはMg塩が知られている。硫化フェネートは、耐熱性が良好であるが、硫化反応に起因する硫黄含有量が約3重量%を越えるものが多い。本発明においては、先に述べたような金属系清浄剤と組合わせて、部分的に用いることができる。特に非硫化のサリシレートと組合わせて用いると効果的であることを見出した。
【0029】
潤滑油添加剤の代表的成分のひとつとして知られている金属系清浄剤(金属含有清浄剤)は、基油中に、有機酸金属塩(一般的に石鹸成分あるいはソープ分と呼ばれている)と、その有機酸金属塩の周囲に凝集している塩基性無機塩微粒子(例、炭酸カルシウム微粒子)を分散状態で含む油性分散物である。本発明者の研究によると、潤滑油組成物への金属含有清浄剤の添加量を減らしても、その潤滑油組成物中の有機酸金属塩の存在量が一定レベル以上に維持されていれば、その潤滑油組成物の高温清浄性(高温環境下でエンジンの内部を清浄に維持する能力)の低下は少ないことが判明した。
【0030】
本発明の潤滑油組成物におけるc)成分のジアルキルジチオリン酸亜鉛は、リン含有量換算値で0.01〜0.1重量%の範囲で用いるが、低リン含量と低硫黄含量の観点からは、0.01〜0.06重量%の範囲の量で用いることが好ましい。
【0031】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、炭素原子数3〜18のアルキル基もしくは炭素原子数3〜18のアルキル基を含むアルキルアリール基を有することが望ましい。特に好ましいのは、摩耗の抑制に特に有効な、炭素原子数3〜18の第二級アルコールから誘導されたアルキル基、あるいは炭素原子数3〜18の第一級アルコールと炭素原子数3〜18の第二級アルコールとの混合物から誘導されたアルキル基を含むジアルキルジチオリン酸亜鉛である。第一級アルコールからのジアルキルジチオリン酸亜鉛は耐熱性に優れる傾向がある。これらのジチオリン酸亜鉛は、単独で用いてもよいが、第二級アルキル基タイプのものおよび/または第一級アルキル基タイプのものを主体とする混合物で用いることが好ましい。
【0032】
本発明の潤滑油組成物は、d)成分として、酸化防止性のフェノール化合物および/または酸化防止性のアミン化合物を0.01〜5重量%(好ましくは0.1〜3重量%)の範囲で含むことを特徴とする。一般に、低灰分、低リンかつ低硫黄の潤滑油組成物は、金属系清浄剤およびジチオリン酸亜鉛の低減を意味し、高温清浄性や酸化安定性あるいは耐摩耗性の低下につながる。これらの性能を維持するためにd)成分が必要となる。このd)成分としては、ジアリールアミン系酸化防止剤及び/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は高温清浄性の向上にも効果的である。特にジアリールアミン系酸化防止剤は、窒素に由来する塩基価を有しているので、この点で有利である。一方、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、NOx酸化劣化の防止に有利である。
【0033】
ヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、そして3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチル、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルなどのヒンダードフェノール類を挙げることができる。
【0034】
ジアリールアミン酸化防止剤の例としては、炭素原子数が4〜9の混合アルキルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミン、そしてアルキル化−フェニル−α−ナフチルアミンなどのジアリールアミン類を挙げることができる。ヒンダードフェノール酸化防止剤とジアリールアミン系酸化防止剤とは、それぞれ単独で使用することができるが、所望により組合せて使用する。また、これら以外の油溶性酸化防止剤を併用してもよい。
【0035】
本発明の潤滑油組成物はさらに、多機能添加剤に属するモリブデン含有化合物および/またはアルカリ金属ホウ酸塩水和物を各々5重量%以下、特に0.01〜5重量%含有することができる。これらの化合物は灰分あるいは硫黄分等を含むものが多いが、本発明の潤滑油組成物全体の性状を考慮しながら、添加量を調整し効果的に使用することができる。
【0036】
上記のモリブデン含有化合物は、潤滑油組成物中で、主として摩擦調整剤、酸化防止剤あるいは摩耗防止剤として機能し、また高温での清浄性の向上に寄与する。モリブデン含有化合物の潤滑油組成物中の含有量は、モリブデン金属含有量換算で10〜2500ppmの範囲にあることが望ましい。モリブデン含有化合物の例としては、こはく酸イミドの硫黄含有モリブデン錯体(特公平3−22438号公報に記載)、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、アミンモリブデン錯体化合物、オキシモリブデンジエチラートアミド、そしてオキシモリブデンモノグリセリドを挙げることができる。特に、こはく酸イミドの硫黄含有モリブデン錯体は高温での清浄性向上に効果的である。
【0037】
一方、アルカリ金属ホウ酸塩水和物の添加も、高温清浄性あるいは塩基価の付与の点で効果的である。本発明でいうアルカリ金属ホウ酸塩水和物は、米国特許3929650および4089790に記載されている方法により合成される化合物に代表される化合物を表す。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属中性スルホネートをアルカリ金属水酸化物の存在下で炭酸化して過塩基性スルホネートを得、これにホウ酸を反応させて得られるアルカリ金属ホウ酸塩の微粒子分散体(炭酸化反応の時、こはく酸イミドのような無灰性分散剤を共存させるのが望ましい)を挙げることができる。ここでアルカリ金属としては、カリウム、ナトリウムなどが望ましい。具体例として、中性カルシウムスルホネートおよびこはく酸イミド系に分散させた組成式:KB305・H2Oで表される粒径約0.3μm以下の微粒子分散体を挙げることができる。耐水性の点からは、カリウムをナトリウムで置換したものも良好に用いられる。
【0038】
本発明の潤滑油組成物は更に、粘度指数向上剤を20重量%以下(好ましくは1〜20重量%の範囲)の量で含むことが望ましい。粘度指数向上剤の例としては、ポリアルキルメタクリレート、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、そしてポリイソプレンなどの高分子化合物を挙げることができる。あるいは、これらの高分子化合物に分散性能を付与した分散型粘度指数向上剤もしくは多機能型粘度指数向上剤を用いることができる。これらの粘度指数向上剤は単独で用いることができるが、任意の粘度指数向上剤を二種以上を組合せて使用しても良い。
【0039】
本発明の潤滑油組成物は更に、各種の補助的な添加剤を含んでいてもよい。そのような補助的な添加剤の例としては、酸化防止剤あるいは摩耗防止剤として、亜鉛ジチオカーバメート、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、油溶性銅化合物、硫黄系化合物(例、硫化オレフィン、硫化エステル、ポリスルフィド)、リン酸エステル、亜リン酸エステル、有機アミド化合物(例、オレイルアミド)などを挙げることができる。また金属不活性剤として機能するベンゾトリアゾール系化合物やチアジアゾール系化合物などの化合物を添加することもできる。また、防錆剤あるいは抗乳化剤として機能するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体などのポリオキシアルキレン非イオン性の界面活性剤を添加することもできる。また、摩擦調整剤として機能する各種アミン、アミド、アミン塩、およびそれらの誘導体、あるいは多価アルコールの脂肪酸エステル、あるいはそれらの誘導体を添加することもできる。さらにまた、消泡剤や流動点降下剤として機能する各種化合物を添加することもできる。なお、これらの補助的な添加剤は、潤滑油組成物に対して、それぞれ3重量%以下(特に、0.001〜3重量%の範囲)の量にて使用することが望ましい。
【0040】
【実施例】
(1)潤滑油組成物の製造
本発明に従う潤滑油組成物と比較用の潤滑油組成物を、下記の添加剤成分と基油成分とを用いて製造した。これらの潤滑油組成物は、粘度指数向上剤の添加により、10W30の粘度グレード(SAE粘度グレード)を示すように調製された。
【0041】
(2)添加剤及び基油
分散剤A:こはく酸イミド系分散剤(窒素含量:1.6重量%、塩素含量:5重量ppm未満、数平均分子量が約1300のポリブテンと無水マレイン酸とから熱反応法で製造したものに、平均窒素原子数が6.5個(1分子当り)のポリアルキレンポリアミンを反応させて得たもの)
【0042】
分散剤B:ホウ素含有こはく酸イミド系分散剤(窒素含量:1.5重量%、ホウ素含量:0.5重量%、塩素含量:5重量ppm未満、数平均分子量が約1300のポリブテンと無水マレイン酸とから熱反応法で製造し、これを平均窒素原子数6.5個(1分子当り)のポリアルキレンポリアミンと反応させ、ついで得られたこはく酸イミドをホウ酸で反応処理したもの;特開平7−150166号公報の実施例8に従って製造したもの)
【0043】
分散剤C:炭酸エチレン反応処理こはく酸イミド系分散剤(窒素含量:0.85重量%、塩素含量:30重量ppm、数平均分子量約2200のポリブテンと無水マレイン酸とから熱反応法で製造し、これを平均原子数6.5個(1分子当り)のポリアルキレンポリアミンと反応させ、ついで得られたこはく酸イミドを炭酸エチレンで反応処理したもの;特開平7−150166号公報の実施例17に従って製造)
【0044】
清浄剤A:カルシウムサリシレート(Ca:2.1重量%、S:0.13重量%、TBN:60mgKOH/g、オスカ化学(株)製OSCA431B)
清浄剤B:カルシウムサリシレート(Ca:8.2重量%、S:0.13重量%、TBN:230mgKOH/g、オスカ化学(株)製OSCA435B)
清浄剤C:マグネシウムサリシレート(Mg:6.0重量%、S:0.22重量%、TBN:280mgKOH/g、シェルジャパン(株)製SAP008)
清浄剤D:カルシウムスルホネート(Ca:2.4重量%、S:2.9重量%、TBN:17mgKOH/g、オロナイトジャパン(株)OLOA246S)
清浄剤E:カルシウムスルホネート(Ca:12.8重量%、S:2.0重量%、TBN:325mgKOH/g、オロナイトジャパン(株)製OLOA247Z)
清浄剤F:カルシウムスルホネート(Ca:15.5重量%、S:1.6重量%、TBN:410mgKOH/g、オロナイトジャパン(株)製OLOA249S)
清浄剤G:硫化カルシウムフェネート(Ca:4.3重量%、S:5.5重量%、TBN:120mgKOH/g、オロナイトジャパン(株)製OLOA216Q)
清浄剤H:硫化カルシウムフェネート(Ca:9.3重量%、S:3.4重量%、TBN:255mgKOH/g、オロナイトジャパン(株)製OLOA219)
清浄剤I:マンニッヒ塩基カルシウムフェネート(Ca:2.5重量%、N:1.6重量%、S:0.1重量%、TBN:135mgKOH/g、オロナイトジャパン(株)製OLOA224)
【0045】
ZnDTP:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(P:7.2重量%、Zn:7.85%、S:14.4%、原料として炭素原子数3〜8の第二級アルコールを使用)
酸化防止剤A:アミン系化合物〔ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基:C4とC8の混合)、N:4.6重量%、TBN:180mgKOH/g〕
酸化防止剤B:フェノール系化合物〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチル〕
Mo化合物:硫黄を含有するオキシモリブデン−こはく酸イミド錯体化合物(Mo:5.4重量%、S:3.7重量%、TBN:45mgKOH/g)
アルカリ金属ホウ酸塩:ホウ酸カリウム水和物の微粒子分散体(実験式KB3O5・H2O、K:8.3重量%、B:6.8重量%、S:0.26重量%、TBN:125mgKOH/g)
【0046】
VII:粘度指数向上剤(非分散型のエチレンプロピレン共重合体、Paratone8057)
PPD:流動点降下剤(ポリメタクリレート系)
【0047】
基油A:100℃における動粘度が6.5mm2/sで、粘度指数が132、硫黄含有量が0.001重量%未満の高度水素化精製基油
基油B:100℃における動粘度が11.0mm2/sで、粘度指数が104、硫黄含有量が0.001重量%未満の水素化精製基油
基油C:100℃における動粘度が5.3mm2/sで、粘度指数が101、硫黄含有量が0.21重量%の溶剤精製基油
【0048】
(3)潤滑油組成物の高温清浄性の評価
下記の方法に従うホットチューブ試験(KES−07−803)により、潤滑油組成物の高温での清浄性能を評価した。
内径2mmのガラス管に垂直にヒーターブロックにセットし、試料油を0.31cc/時間、そして空気を10cc/分の割合で、それぞれガラス管の下部より送り込む。この操作を、ヒーター部の温度を290℃あるいは300℃に保ちながら、16時間続ける。試験終了後のガラス管内部に付着したデポジット(堆積物)を10点満点で評価する(10点がデポジットの堆積がない状態を意味する。)
(4)有機酸金属塩含量(石鹸分)の測定
通常のゴム膜透析法により、金属系清浄剤中の鉱油分および低分子量成分を透析させ、ゴム膜中に残存する清浄剤有効成分である透析残渣(A)を得る。一方、金属系清浄剤中の炭酸塩に由来する二酸化炭素の測定を行い、これと金属分析をもとに、炭酸カルシウムあるいは炭酸マグネシウム等の過塩基性成分(B)を求める。この(A)と(B)の差から有機酸金属塩(石鹸分)を求めた。
【0049】
[実施例1]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:7.0mgKOH/g)
(1)無灰性分散剤:
分散剤B(添加量:4重量%、窒素量換算添加量:0.06重量%)
分散剤C(添加量:1.2重量%、窒素量換算添加量:0.01重量%)
(2)金属系清浄剤:
清浄剤A(添加量:6.9重量%、硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:2.5重量%)
(3)ZnDTP
(添加量:0.42重量%、リン量換算添加量:0.03重量%)(4)酸化防止剤
酸化防止剤A(添加量:0.7重量%)
酸化防止剤B(添加量:0.7重量%)
(5)他の添加剤
Mo化合物(添加量:0.1重量%)
アルカリ金属ホウ酸塩(添加量:0重量%)
VII(添加量:2.0重量%)
PPD(添加量:0.3重量%)
(6)基油
基油A(使用量:62.4重量%)
基油B(使用量:20.8重量%)
【0050】
[実施例2]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:6.9mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aの代わりに清浄剤Bを、添加量:1.8重量%(硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.7重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ66.4重量%と22.2重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0051】
[実施例3]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:7.5mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aの代わりに清浄剤Cを、添加量:1.7重量%(硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.4重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ66.8重量%と22.3重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0052】
[実施例4]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:14.7mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aの代わりに清浄剤Iを、添加量:5.8重量%(硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:2.3重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ63.3重量%と21.1重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0053】
[実施例5(本発明に含まれない参考例である)]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:3.9mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aの代わりに清浄剤Dを、添加量:6.1重量%(硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:2.9重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ63.0重量%と21.0重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0054】
[実施例6(本発明に含まれない参考例である)]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:6.5mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aの代わりに清浄剤Eを、添加量:1.1重量%(硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.2重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ67.0重量%と22.3重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0055】
[実施例7]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:7.5mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aを、添加量:5.9重量%(硫酸灰分換算添加量:0.42重量%、有機酸金属塩換算添加量:2.1重量%)にて、そして清浄剤Iを、添加量:0.82重量%(硫酸灰分換算添加量:0.07重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.3重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ62.5重量%と20.9重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0056】
[実施例8]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:6.9mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aを、添加量:5.9重量%(硫酸灰分換算添加量:0.42重量%、有機酸金属塩換算添加量:2.1重量%)にて、そして清浄剤Gを、添加量:0.49重量%(硫酸灰分換算添加量:0.07重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.2重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ62.8重量%と20.9重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0057】
[実施例9]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:6.5mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aを、添加量:5.9重量%(硫酸灰分換算添加量:0.42重量%、有機酸金属塩換算添加量:2.1重量%)にて、そして清浄剤Dを、添加量:0.88重量%(硫酸灰分換算添加量:0.07重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.4重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ62.5重量%と20.8重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0058】
[実施例10]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:7.0mgKOH/g)
Mo化合物の添加量を0.2重量%に変え、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ62.3重量%と20.8重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0059】
[実施例11]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:7.3mgKOH/g)
さらに、アルカリ金属ホウ酸塩を0.3重量%加え、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ62.2重量%と20.7重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0060】
[実施例12]本発明の潤滑剤組成物の配合(TBN:7.3mgKOH/g)
分散剤Bを分散剤A(添加量:4重量%、窒素量換算添加量:0.06重量%)に変え、基油Aと基油Bとをそれぞれ62.2重量%と20.7重量%用いた以外は実施例11と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0061】
[比較例1]比較用の潤滑剤組成物の配合(TBN:6.6mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Aの代わりに清浄剤Fを、添加量:0.93重量%(硫酸灰分換算添加量:0.49重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.1重量%)にて添加し、基油として、基油Aと基油Bとをそれぞれ67.1重量%と22.4重量%用いた以外は実施例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0062】
[参考例1]潤滑剤組成物(高硫酸灰分、高リン、高硫黄)の配合
(TBN:13.0mgKOH/g)
分散剤Bの添加量を2.8重量%(窒素量換算添加量:0.04重量%)そして、分散剤Cの添加量を2.4重量%(窒素量換算添加量:0.02重量%)に変え、金属系清浄剤として、清浄剤Dを、添加量:1.8重量%(硫酸灰分換算添加量:0.14重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.8重量%)にて、そして清浄剤Hを、添加量:4.6重量%(硫酸灰分換算添加量:1.43重量%、有機酸金属塩換算添加量:1.8重量%)にて添加し、ZnDTPをリン量換算で0.12重量%、VIIを5.2重量%、PPDを0.3重量%添加し、基油として基油Cを単独で82.4重量%用いて潤滑油組成物を調製した。
【0063】
[参考例2]潤滑剤組成物(高硫酸灰分、高リン、高硫黄)の配合
(TBN:12.8mgKOH/g)
金属系清浄剤として、清浄剤Dを、添加量:1.8重量%(硫酸灰分換算添加量:0.14重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.8重量%)、清浄剤Eを、添加量:1.1重量%(硫酸灰分換算添加量:0.48重量%、有機酸金属塩換算添加量:0.2重量%)にて、そして清浄剤Hを、添加量:3.0重量%(硫酸灰分換算添加量:0.95重量%、有機酸金属塩換算添加量:1.2重量%)にて添加し、基油として基油Cを単独で81.9重量%用いた以外は参考例1と同じ配合にて潤滑油組成物を調製した。
【0064】
[参考例3] 市販潤滑剤組成物(TBN:12.1mgKOH/g)
市販の代表的なAPI−CFのディーゼルエンジン用潤滑剤(10W30)を購入した。
【0065】
【表1】
[評価試験結果]
────────────────────────────────────
試験用 硫酸灰分 リン含量 硫黄含量 塩素含量 石鹸分 テスト評点
潤滑油 (wt.%) (wt.%) (wt.%) (ppm) (wt.%) 290℃ 300℃
────────────────────────────────────
実施例1 0.6 0.03 0.08 <5 2.5 8.5 4.5
実施例2 0.6 0.03 0.07 <5 0.7 7.0 3.5
実施例3 0.6 0.03 0.07 <5 0.4 7.0 6.0
実施例4 0.6 0.03 0.08 <5 2.3 8.5 5.5
実施例5 0.6 0.03 0.25 40 2.9 7.5 6.5
実施例6 0.6 0.03 0.09 <5 0.2 6.5 5.5
実施例7 0.6 0.03 0.08 <5 2.4 8.5 6.0
実施例8 0.6 0.03 0.11 <5 2.3 8.5 5.5
実施例9 0.6 0.03 0.10 10 2.5 8.5 6.0
実施例10 0.6 0.03 0.08 <5 2.5 8.5 6.0
実施例11 0.65 0.03 0.08 <5 2.5 9.0 8.5
実施例12 0.65 0.03 0.08 <5 2.5 8.0 7.0
────────────────────────────────────
比較例1 0.6 0.03 0.09 <5 0.1 5.5 3.0
────────────────────────────────────
参考例1 1.8 0.12 0.65 20 2.6 7.0 6.0
参考例2 1.8 0.12 0.62 20 2.2 6.5 6.5
参考例3 1.7 0.11 0.54 120 − 7.5 6.0
────────────────────────────────────
【0066】
上記の評価試験結果から明らかなように、本発明の潤滑油組成物(実施例1乃至4、そして7乃至12)は、低硫酸灰分含量、低リン含量、かつ低硫黄含量であるにもかかわらず、現在一般的に利用されている高硫酸灰分、高リン含量かつ高硫黄含量のディーゼルエンジン油(参考例1乃至3)と同等もしくはそれ以上の高温清浄性を示している。
【0067】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物は、低硫酸灰分含量、低リン含量、かつ低硫黄含量であるにもかかわらず、現在一般的に利用されている高硫酸灰分、高リン含量かつ高硫黄含量のディーゼルエンジン油と同等もしくはそれ以上の高温清浄性を示している。従って、本発明の潤滑油組成物はは、走行用燃料として、硫黄含有量が約0.01重量%以下の炭化水素系燃料を用いる自動車、なかでも排ガス浄化装置(特にパティキュレートフィルタおよび酸化触媒)を備えたディーゼルエンジン搭載車においても好適に用いられる。
Claims (11)
- 鉱油からなる硫黄含有量0.1重量%以下の基油に少なくとも、組成物の全重量に基づき、
a)アルケニルもしくはアルキルこはく酸イミドあるいはその誘導体である無灰性分散剤が窒素含有量換算値で0.01〜0.3重量%、
b)非硫化のアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩およびマンニッヒ塩基構造を有する非硫化のアルキルフェノール誘導体のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる硫黄含有量が3%以下で全塩基価10〜350mgKOH/gの金属含有清浄剤が硫酸灰分換算値で0.1〜1重量%、
c)ジアルキルジチオリン酸亜鉛が、リン含有量換算値で0.01〜0.1重量%、そして
d)酸化防止性のフェノール化合物および/または酸化防止性のアミン化合物が0.01〜5重量%、
の量にて溶解もしくは分散されていて、組成物の全重量に基づき、硫酸灰分量が0.1〜1重量%の範囲、リン含有量が0.01〜0.1重量%の範囲、そして硫黄含有量が0.01〜0.3重量%の範囲にあって、塩素含有量が40ppm以下であり、さらに金属含有清浄剤に含まれる有機酸金属塩が組成物中に0.2〜7重量%存在することを特徴とする潤滑油組成物。 - b)成分の金属含有清浄剤が、全塩基価30〜300mgKOH/gの非硫化のアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1の記載の潤滑油組成物。
- 金属含有清浄剤が、全塩基価30〜100mgKOH/gの非硫化のアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項2の記載の潤滑油組成物。
- a)成分の無灰性分散剤が、塩素含有量が30重量ppm以下の無灰性分散剤であることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 無灰性分散剤が、ポリブテンと無水マレイン酸とを原料とし、塩素もしくは塩素含有化合物を接触させることのない熱反応法により得られるポリブテニルこはく酸無水物をポリアミンと反応させて得られるこはく酸イミドあるいはその誘導体であることを特徴とする請求項4に記載の潤滑油組成物。
- 組成物の全重量に基づくリン含有量が0.06重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- 組成物の全重量に基づく硫黄含有量が0.15重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- d)成分がヒンダードフェノール化合物および/またはジアリールアミン化合物であることを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- さらに、モリブデン含有化合物を0.01〜5重量%含有することを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- さらに、アルカリ金属ホウ酸塩水和物を0.01〜5重量%を含有することを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
- さらに粘度指数向上剤を含有するマルチグレードエンジン油である請求項1乃至10のうちのいずれかの項に記載の潤滑油組成物。
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