JP2012052146A - ディーゼル微粒子除去装置付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】DPFのフィルターにおける灰分詰まりを減少させ得ると共に、DPFのフィルターで捕集されたPMの燃焼性を向上させ、該PMを低温で安定して燃焼させることができ、その除去効率を高め、かつDPFの長寿命化を図ることのできるDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】硫酸灰分が1.0重量%以下、硫黄分含有量が0.3重量%以下及びモリブデン含有量が100ppm以上であるDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ディーゼル微粒子除去装置(ディーゼル・パティキュレート・フィルター、以下「DPF」と略記する。)付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物、さらに詳しくは、DPFのフィルターにおける灰分詰まりを減少させ得ると共に、DPFのフィルターで捕集された微粒子状物質(パティキュレート・マター、以下「PM」と略記する。)の燃焼性を向上させ、該PMを低温で安定して燃焼させることができ、その除去効率を高め、かつDPFの長寿命化を図ることのできるDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物に関するものである。
ディーゼルエンジン車は、ガソリンエンジン車に比べて、燃費効率がよく、二酸化炭素の削減に有効である上、燃料油として用いられる軽油は、ガソリンに比べてコストが低いというメリットがある。しかしながら、ディーゼル車から排出される燃焼ガス中に含まれるPMが、近年、環境汚染の問題で大きくとりあげられている。このPMは、すすなどの燃料油の細かな燃えかすであって、人体に入ると呼吸器系に悪影響を与えることが知られている。したがって、排出ガス中のPMの削減がディーゼル車の最大の課題となっている。
そのため、わが国においては、2005年に達成をめざす新規制では、メーカー各社は現行規制の1/3までPM排出量を削減しなければならず、また、東京都においては2003年を目途に都内を走るディーゼル車にDPFの装着を義務づけることを検討しており、他の自治体にも広がる可能性が大きい。
このような事情から、効率がよく、実用的なDPFの開発が積極的に行われており、現在数種の形式のDPF、具体的には(1)交互再生式DPF、(2)NO2 酸化方式による連続再生式DPF、(3)触媒酸化方式による連続再生式DPF、(4)間欠再生式DPFなどが提案されている。
上記(1)の交互再生式DPFは、炭化ケイ素繊維不織布の両面を金網状ヒーターと保護金網で挟んでなるフィルターユニットを2個用い、捕集と再生を交互に行う切り替え方式のものである。このDPFは、硫黄分の高い現行軽油にも対応できるが、PMを燃焼させるために、大電流が必要であり、専用の大容量発電機の搭載を必要とする上、急激な燃焼によりフィルターが損傷するおそれがあるなどの問題を有している。
(2)のNO2 酸化方式による連続再生式DPFは、フィルターとしてウオールフローハニカム構造のコージェライトからなる多孔質セラミックを用い、その上流側に設けた酸化触媒により、NOxをNO2 に酸化し、このNO2 の強い酸化力を利用して、低温でフィルターに捕集されたPMを燃焼させる連続再生式装置である。しかしながら、この方式では、排ガス中の硫黄分により、該酸化触媒の活性が劣化し、充分に機能を発揮しないため、燃料油中の硫黄分を低下させる必要があり、現行の軽油には適用できにくいという問題がある。
(3)の触媒酸化方式による連続再生式DPFは、二種類の金属触媒をコーティングしたウオールフローハニカム構造のコージェライトからなる多孔質セラミックフィルターを用い、ヒーターなどの加熱装置は必要ではなく、金属触媒の作用のみで該フィルターに捕集されたPMを燃焼させる連続再生式装置である。この方式では、該金属触媒は排ガス中の硫黄分の影響を比較的受けにくいため、現行軽油に適用可能であるが、リンにより影響を受けやすく、また、硫黄分が少ないほど高性能を発揮する。さらに、排気温度が300℃程度以上となる走行が一定比率以上必要であるため、低速で長時間走行する車両や乗用車には適用が困難である。
(4)の間欠再生式DPFは、ウオールフローハニカム構造の炭化ケイ素からなる多孔質セラミックフィルターを用い、PMを捕集し、再生時には燃料を噴射して排ガス温度を上昇させ、酸化触媒により炭化水素や一酸化炭素を酸化してさらに温度を上げ、PMを燃焼させる方式である。なお、この方式においては、燃料油中にセリウム化合物を添加し、PM発生量を低減させる。この方式は、現行軽油に適用可能であるが、再生用の電源設備が必要であり、また、PMの燃焼後酸化セリウムが残り、フィルターに堆積し、DPFの寿命を低下させるという問題がある。
このように、現在開発が進められているDPFは、いずれも一長一短があり、必ずしも充分に満足し得るものではない。
工業的には、DPFの機能を効果的に発揮させ、かつその長寿命化を図ることが重要であり、そのためには、PMをできるだけ低温で燃焼させると共に、フィルターの詰まりをできるだけ低減させることが肝要である。フィルターが詰まると背圧が上昇するため、ディーゼル機関の効率を低下させる。このフィルターの詰まりにはPMの燃焼残詰まりと潤滑油灰分の詰まりがある。
本発明は、このような状況下で、DPFのフィルターにおける灰分詰まりを減少させ得ると共に、DPFのフィルターで捕集されたPMの燃焼性を向上させ、該PMを低温で安定して燃焼させることができ、その除去効率を高め、かつDPFの長寿命化を図ることのできるDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記の好ましい性質を有するDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、硫酸灰分及び硫黄分含有量がそれぞれある値以下であり、かつモリブデン含有量がある値以上である潤滑油組成物が、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、硫酸灰分が1.0重量%以下、硫黄分含有量が0.3重量%以下及びモリブデン含有量が100ppm以上であることを特徴とするDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物を提供するものである。
本発明のDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物は、DPFのフィルターにおける灰分詰まりを減少させ得ると共に、DPFのフィルターで捕集されたPMの燃焼性を、排出ガス中の硫黄化合物やリン化合物の影響を受けることなく向上させ、該PMを低温で安定して燃焼させることができ、その除去効率を高め、かつDPFの長寿命化を図ることができる。
本発明のDPF付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物(以下、「本発明の潤滑油組成物」と称すことがある。)は、DPFを装着したディーゼルエンジンに潤滑油として用いられるものであり、その基油としては、通常、鉱油や合成油が用いられる。この鉱油や合成油の種類、その他については、特に制限はないが、通常は100℃における動粘度が1.5〜30mm2 /sの範囲にあるものが用いられる。
ここで、鉱油としては、例えば、溶剤精製、水添精製などの通常の精製法により得られたパラフィン基系鉱油、中間基系鉱油又はナフテン基系鉱油などが挙げられる。
また、合成油としては、例えば、ポリブテン、ポリオレフィン〔α−オレフィン(共)重合体〕、各種のエステル(例えば、ポリオールエステル、二塩基酸エエステル、リン酸エステルなど)、各種のエーテル(例えば、ポリフェニルエーテル)、シリコーン油、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどが挙げられる。
本発明においては、基油として、上記鉱油を一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記合成油を用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。さらには、鉱油一種以上と合成油一種以上とを組み合わせて用いてもよい。
本発明の潤滑油組成物においては、硫酸灰分は1.0重量%以下であることが必要である。この硫酸灰分とは、試料を燃やして生じた炭化残留物に硫酸を加えて加熱し、恒量にした灰分をいい、通常潤滑油組成物中の金属系添加剤の大略の量を知るために用いられる。
この硫酸灰分量が1.0重量%を超えるとDPFのフィルターに堆積する灰分量が多く、該フィルターの灰分詰まりの原因となり、DPFの寿命が短くなる。また、後述のモリブデン化合物によるPMの燃焼性向上効果が発揮されにくくなる。これらの点から、該硫酸灰分量は0.9重量%以下が好ましい。
また、硫黄分含有量は0.3重量%以下であることが必要である。この硫黄分含有量が0.3重量%を超えると、DPFに硫黄が触媒毒となる金属系触媒を用いている場合、該触媒の活性劣化が生じ、DPFの機能が充分に発揮されにくくなる。この点から、硫黄分含有量は0.25重量%以下が好ましい。
さらに、モリブデン含有量は、100ppm以上であることが必要である。このモリブデンは、モリブデン酸化物やモリブデンと他の元素との複合酸化物となって、DPFのフィルターで捕集されたPM中に混入する。その結果、該PMの燃焼性を向上させて、燃焼温度を40〜50℃程度低下させ、DPFの寿命を延長させる働きをする。この作用は、排出ガス中の他の成分、例えば硫黄化合物やリン化合物の影響を受けることなく、安定に発揮される。
モリブデン含有量が100ppm未満では上記作用が充分に発揮されず、本発明の目的が達せられない。特に、モリブデン含有量は300ppm以上が好ましい。なお、モリブデン含有量の上限は、前述の硫酸灰分量の規定により、制限される。
このモリブデン源となるモリブデン化合物としては、本発明の潤滑油組成物に分散又は溶解し得るものであればよく、特に制限されず、無機及び有機モリブデン化合物のいずれも用いることができるが、該潤滑油組成物に溶解する油溶性のものが好適である。油溶性モリブデン化合物としては、例えばアルキルリン酸モリブデン塩、カルボン酸モリブデン塩などの有機酸のモリブデン塩、さらにはモリブデン酸やリンモリブデン酸、ケイモリブデン酸などのアルキルアミン塩、モリブデンのチオカルバミン酸塩(MoDTC)やチオリン酸塩(MoDTP)などが挙げられる。なお、MoDTCやMoDTPを用いる場合には、前述の硫黄分含有量の制限を満たすことが必要である。なお、燃焼残分としてMoO3 又はリンモリブデン酸となるものが好ましい。
本発明の潤滑油組成物には、従来ディーゼルエンジン用潤滑油に慣用されている各種添加剤を含有させることができる。この添加剤としては、例えば金属系清浄剤、無灰分散剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、金属腐食防止剤、消泡剤、界面活性剤などが挙げられる。
ここで、金属系清浄剤としては、Ca−スルホネート、Ca−サリチレート、Ca−フィネート、Mg−スルホネート、Mg−サリチレートなどが挙げられる。これらの金属系清浄剤の含有量は、前述の硫酸灰分量が1.0重量%を超えないように制限される。また、スルホネートを用いる場合は、さらに、硫黄分含有量が3重量%を超えないように制限される。
無灰分散剤としては、通常ホウ素系イミドやビスイミドなどが用いられ、また、耐摩耗剤としては、例えばチオリン酸亜鉛(ZnDTP)系や硫黄系のものなどが挙げられる。これらの硫黄含有耐摩耗剤を用いる場合は、前述の硫黄分含有量の条件を満たすことが必要である。また、チオリン酸亜鉛系のものを用いる場合は、さらに硫酸灰分量の条件を満たすことが必要である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
参考例
PMとしてカーボンブラック〔三菱化学(株)製「MA100」〕を用い、この100重量部に対し、燃焼残分として第1表に示すモリブデン化合物及び他の金属化合物の粉末を10重量部の割合で混合し、その混合物の燃焼温度をDT−TGA(示差熱−熱重量分析)により、空気中、10℃/分の昇温速度の条件で測定した。なお、カーボンブラックのみの燃焼温度も同様にして測定した。結果を第1表に示す。
Figure 2012052146
第1表から明らかなように、モリブデン化合物が存在すると、PMの燃焼温度を下げることが分かる。
実施例1〜4及び比較例1〜7
第2表に示す組成の潤滑油組成物を調製し、下記の方法に従って、灰分を生成させ、その灰分を混合して燃焼温度を参考例と同様にして測定した。その結果を第2表に示す。
<灰分の生成>
潤滑油をルツボに入れて引火点以上の温度に加熱し、点火する。点火した火種が燃えつきるのを待ち、ルツボごと500℃の炉に3時間入れて熱処理した後放冷して調製した。
Figure 2012052146
Figure 2012052146
〔注〕
TBN:全塩基価
粘度指数向上剤:OCP(オレフィンコポリマー)
第2表から分かるように、実施例のものは、比較例のものに比べて、PMの燃焼温度が約40〜50℃低い。

Claims (2)

  1. 硫酸灰分が1.0重量%以下、硫黄分含有量が0.3重量%以下及びモリブデン含有量が100ppm以上であることを特徴とするディーゼル微粒子除去装置付きディーゼルエンジン用潤滑油組成物。
  2. モリブテン源として、油溶性モリブデン化合物を含む請求項1記載の潤滑油組成物。
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