JP2007131792A - エンジン油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】還元触媒の硫黄、リンによる被毒を少なくでき、摩耗防止性能に優れたエンジン油を提供する。
【解決手段】(A)硫黄分 0.05質量%未満の基油、(B)グリセリン脂肪酸部分エステル0.3〜5質量%、および(C)炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛 0.2質量%以上かつ0.6質量%未満を含有し、硫黄分が
0.2質量%以下、リンが0.05質量%以下であることを特徴とするエンジン油組成物とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、エンジン油組成物に関し、詳しくは、排気ガス後処理装置の窒素酸化物還元触媒被毒防止に有効な、硫黄分
0.2質量%以下、リン0.05質量%以下のであり、かつ優れた摩耗防止性能を有するエンジン油組成物に関する。
近年、ディーゼル車の排気ガスの浄化に対する強い要望がある。従来から、ディーゼル車の排気ガス中の粒子状物質の除去はディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと示す。)にて行なわれている。長時間使用すると、エンジン油中のカルシウム、亜鉛を含む添加剤などがDPFに蓄積し、排気ガス中の粒子状物質除去性能が低下する懸念がある。これを解消するためには、DPFの性能低下の原因であるエンジン油中のカルシウム、亜鉛を含む添加剤を減らすことがDPFの性能を維持するために必要であるとされている。
一方、排気ガス中の窒素酸化物を減ずることについては、燃焼の改善やクールドEGR装着、更には吸蔵還元法、尿素選択還元法などが開発されている。これらの方法には還元触媒が用いられているが、長時間使用すると、その還元触媒は硫黄、リンにより被毒を受け、能力の低下が懸念されている。
従来、エンジン油に配合されている添加剤のうち、硫黄、リンを含む添加剤として広く用いられている添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛であり、この配合量を低減しなくてはならないが、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の配合量を低減していくと、摩耗防止性能が低下する問題がある。
また、摩耗防止性能を向上させるには、ジチオリン酸モリブテン、ジチオカルバミン酸モリブテンなどを配合する技術や、モリブデン酸アミン、モリブデン酸アミドなどと有機ポリサルファイド化合物を組み合わせて配合する技術が提案されているが(特許文献1参照)、これらの物質中には硫黄やリンが含まれている。
特開2000−119680号公報
本発明は、還元触媒の被毒物質である硫黄、リンを低減し、かつ摩耗防止性能に優れたエンジン油を提供することを目的とする。
本発明者は上記状況に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、グリセリン脂肪酸部分エステルと特定の構造を持つジアルキルジチオリン酸亜鉛とを組合せて配合することで、硫黄分とリンの含有量を低減しつつも、摩耗防止性能に優れたエンジン油が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)硫黄分 0.05質量%未満の基油、(B)グリセリン脂肪酸部分エステル0.3〜5質量%、および(C)炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛 0.2質量%以上かつ0.6質量%未満を含有し、硫黄分が
0.2質量%以下、リンが0.05質量%以下であることを特徴とするエンジン油組成物を提供するものである。
本発明のエンジン油組成物は、還元触媒の被毒物質である硫黄、リンが低減されており、かつ摩耗防止性能に優れている。
本発明のエンジン油組成物において、(A)成分の基油は、鉱油系潤滑油基油及び合成油系潤滑油基油の中から選ばれる1種以上の基油である。鉱油系潤滑油基油としては、例えば原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製など適宜組み合わせて精製したものが挙げられる。
合成系潤滑油基油としては、例えば炭素数3〜12のα−オレフィンの重合体であるα−オレフィンオリゴマー、2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルセバケートを始めとするセバケート、アゼレート、アジペートなどの炭素数4〜12のジアルキルジエステル類、1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールと炭素数3〜12の一塩基酸から得られるエステルを始めとするポリオール類、炭素数9〜40のアルキル基を有するアルキルベンゼン類、ブチルアルコールをプロピレンオキシドと縮合させることにより得られるポリグリコールなどのポリグリコール類、約2〜5個のエーテル連鎖及び約3〜6個のフェニル基を有するポリフェニルエーテルなどのフェニルエーテル類などが挙げられる。
上記鉱油系潤滑油基油及び合成系潤滑油基油は1種単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。また、鉱油系潤滑油基油及び合成系潤滑油基油を任意の割合で混合した基油も使用することができる。
(A)成分の基油は、硫黄分が0.05質量%未満である。硫黄分 0.05質量%以上であると、本発明のエンジン油組成物中の硫黄分
0.2質量%以下を満足できないおそれがある。
なお、複数の基油成分を混合する場合は、各基油成分の硫黄分が0.05質量%を超えていても、最終的に混合後の基油の硫黄分が0.05質量%未満であればよい。
(B)成分のグリセリン脂肪酸部分エステルにおける脂肪酸は、炭素数が10〜30であることが好ましく、14〜20がより好ましく、16〜18が特に好ましい。脂肪酸は直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよいし、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよいが、好ましくは末端が炭素数3の第二級アルキル基を有する直鎖の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは末端が炭素数3の第二級アルキル基を有する飽和の直鎖脂肪族炭化水素基である。
グリセリン脂肪酸部分エステルとしては、ジエステルであってもモノエステルであってもよいが、特にグリセロールモノオレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノイソステアレート、モノグリセライドステアリン系化合物、モノクリセライドオレイン系化合物などのモノエステルが好ましいものとして挙げられる。グリセリン脂肪酸部分エステルの配合割合は通常、組成物全体に対して、0.3〜5質量%、好ましくは1〜3質量%である。0.3質量%未満では本発明の目的とする効果が得られない。また、5質量%を越えて配合しても配合割合に見合う効果が増加せず、5質量%を越えて配合しても経済的に不利である。
また、(C)成分である炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛は、アルキル基を2つ有するジチオリン酸基が2つ亜鉛に配位している構造を有しており、1分子中にアルキル基が4つあるが、これらのアルキル基のうち、少なくとも1つは、炭素数3の第二級アルキル基である。また、本発明のエンジン油組成物においては、炭素数3の第二級アルキル基を有しないジアルキルジチオリン酸亜鉛が含まれていてもよい。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛における炭素数3の第二級アルキル基の含有割合は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の各分子の集合体である全体として、全アルキル基の25モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛における炭素数3の第二級アルキル基の含有割合の上限値は、特に制限ないが、全アルキル基の60モル%以下が好ましい。
他のアルキル基の炭素数は、8以下が好ましく、第一級又は第二級のいずれであってもよい。炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛の本発明への配合割合は、0.2質量%以上、かつ0.6質量%未満である。配合割合が0.6質量%以上であると、組成物中の硫黄分とリンが本発明の範囲を超える場合があり好ましくない。一方、配合割合を0.2質量%以上とすることで、炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛が金属表面に良好な化学皮膜を生成することから、良好な摩耗防止性能を得ることができる。
本発明のエンジン油組成物は、硫黄分が 0.2質量%以下、リンが0.05質量%以下である。これにより、排気ガス後処理装置の窒素酸化物還元触媒被毒を防止することができる。
本発明のエンジン油組成物には、さらに所望により各種添加剤を配合することができるが、その際、組成物中の硫黄分、リンが本発明の範囲を超えないように留意する必要がある。各種添加剤としては、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、防錆剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、泡消剤などエンジン油性能を付与するのに効果的な添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、清浄剤として、スルホネート、フェネート、サリシレートなどであるが、本発明のエンジン油組成物においては、硫黄分が0.2質量%以下としていることから、サリシレートを主体とし、これに、スルホネート、フェネートを配合することが望ましい。分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、流動点降下剤として、ポリメタクリレート、粘度指数向上剤として、ポリメタクリレート、オレフィンコポリマーなどが挙げられる。
次に本発明を実施例および比較例に基づいて説明する。
(実施例1〜4)
表1に記載された成分を、その含有割合で混合し、エンジン油組成物を得た。得られたエンジン油組成物の評価結果を表1の下段に示した。
(比較例1〜7)
表2及び表3に記載された成分を、その含有割合で混合し、エンジン油組成物を得た。得られたエンジン油組成物の評価結果を表2及び表3の下段に示した。
なお、表中の評価結果を出すための試験は以下の方法により実施した。
(1)最大非焼付き荷重
以下の条件によるJPI−5S−40−93「潤滑油の耐荷重能試験方法(シェル四球式)」の修正法により、最大非焼付き荷重(N)を求めた。
試験条件 試験機:シェル四球式耐荷重能試験機を用いる。
回転条件:毎分1800回転速度で60秒回転させる。
試験温度:常温より成り行き。
このJPI−5S−40−93[潤滑油の耐荷重能試験方法(シェル四球式)]の修正法より求められる最大非焼付き荷重(N)はエンジン試験および実車試験と密接な関係があり、774N以上であればよい。
Figure 2007131792
Figure 2007131792
Figure 2007131792
第1〜3表の注書
1)鉱油1 硫黄分0.04質量%、飽和分
77%、粘度指数 100
2)鉱油2 硫黄分 0.01質量%以下、飽和分 99% 粘度指数
120
3)炭素数3の第二級アルキル基及び第一級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛の組成
炭素数3の第二級アルキル基:30モル%,
炭素数4の第一級アルキル基:30モル%,
炭素数5の第一級アルキル基:40モル%
4) 炭素数3の第二級アルキル基を有する第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の組成
炭素数3の第二級アルキル基:50モル%,
炭素数6の第二級アルキル基:50モル%
5)炭素数4,5のアルキル基を含む第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛
炭素数4の第二級アルキル基:60モル% ,

炭素数5の第二級アルキル基:40モル%
いずれの実施例も良好な最大非焼付き荷重値を示した。
比較例1に示す硫黄0.2質量%以上、リン0.05質量%以上のものは良好な最大非焼付き荷重値を示すが、硫黄、リンを減ずると、最大非焼付き荷重は低い値を示し、摩耗防止性能が劣る (比較例2,3) 。
グリセリン脂肪酸部分エステル、炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛のどちらかを除くと、最大非焼付き荷重は低下し、摩耗防止性能は劣る (比較例4,5,6,7) 。

Claims (1)

  1. (A)硫黄分 0.05質量%未満の基油、
    (B)グリセリン脂肪酸部分エステル0.3〜5質量%、および
    (C)炭素数3の第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛 0.2質量%以上かつ0.6質量%未満を含有し、硫黄分が
    0.2質量%以下、リンが0.05質量%以下であることを特徴とするエンジン油組成物。
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