JP5171037B2 - マイクロアレイを用いた発現プロファイリング - Google Patents

マイクロアレイを用いた発現プロファイリング Download PDF

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Description

〔関連出願の相互参照〕
本発明は、2003年9月10日付け米国仮特許出願第60/502,108号明細書及び2004年1月21日付け米国仮特許出願第60/538,283号明細書の優先権及び利益を請求するものである。
該発明は、遺伝子発現分析の分野に関する。該発明は、マイクロアレイベースの技術を用いた遺伝子発現の分析のための新規組成物及び方法を提供する。
病状の遺伝的特徴を解説する速度は現在加速されてきている。例えば、研究者達は、癌を発生させる多数の遺伝的メカニズムならびに損傷応答、細胞周期、細胞増殖及び細胞死といったような癌に結びつけられる数多くの機能的経路を詳細に特徴づけし始めてきた。癌遺伝学の我々の基礎知識におけるこの指数的成長は、発癌作用において潜在的に中心的役割を果たしかつ/又は治療的介入のための潜在的ターゲットでありうる遺伝子、タンパク質及び経路の大きなアレイの同定を導いた。目下の課題は、これらの遺伝子がインビボ及びインビトロでいかに機能し相互に関係するかについてと同時に異なる化合物及び化合物クラスがこれらの遺伝子にいかに影響を及ぼすかについて、実験的により掘下げることである。
過去10年間にわたり、遺伝子発現分析は、異なる刺激及び環境に対する細胞及び特異的経路の応答の生理学的状態を監視するための極めて価値ある手段であることが証明されてきている。細胞活動を広く調査すると同時に示差的及び動的応答を追跡するこの能力は、発現手段が癌遺伝学への多大な洞察力を提供することができたということを示唆している。大規模遺伝子発現分析における今日の技術的現状はマイクロアレイである。
マイクロアレイは、小さい試料セットについて何千もの遺伝子の大規模な調査を可能にする。しかしながら、現行のマイクロアレイ試料標識方法は例えば試料1個あたり100ドルといったようにきわめて高コストであり、一定の予算でマイクロアレイフォーマット内で分析できる試料の数を制限している。現行の標識方法は同様に、比較的大量のRNA(例えば多マイクログラムのRNA)も必要とし、RNA分析を実施できる供給源のタイプを制限している。BDクローンテック(Clontech)(Palo Alto、カリフォルニア州)社製のSMART(商標)技術、NuGENテクノロジーズ(Technologies Inc.)(San Carlos、カリフォルニア州)社製のオベーション(Ovation)(商標)増幅及びアルクチュラス(Arcturus Inc.)(Mountain View、カリフォルニア州)からのRiboAmp(登録商標)増幅キットを含むいくつかの増幅スキームが、この試料サイズ制限を補償するために開発されてきたが、これらは全て、付加的な試料取扱いステップと、各試料についての試薬コストに対する費用を追加する。さらに、これらの方法は全て、試料内のRNA転写物の全てを無作為に増幅する全体的増幅スキームである。1つの試料中の全ての遺伝子(すなわち転写物)を増幅するこの全体的増幅の結果、各々個々の遺伝子は該試料中の残りの増幅された転写物の全てとの関係において比較的低い比率を占めることになる。
さらに、例えば数百〜数千の試料について数十〜数百の遺伝子をスクリーニングするといったようにあまり多くない遺伝子セットをスクリーニングする傾向が遺伝子発現分析において増々強くなっている。例えば、アポトーシス又は血管形成といったような機能的経路の活性を完全に捕捉するためには、50〜100個の遺伝子を追跡することが望ましい。実際、線形及び非線形の統計学的技術がうまくマイクロアレイデータ分析に応用されてきており、相関及びクラスタ分析が一般に、代表的遺伝子及び応答タイプのはるかに小さいセットへと何千もの遺伝子の応答を崩壊させることは明白である。例えば、トーマス(Thomas)ら(Molecular Pharmacology(2001年)、60号(6);1189−1194頁)はこのアプローチを用いて、5つの主要な毒物学的応答を予測的に追跡することのできる1200のうち12の主要転写物を同定している。同様に例えば、ファントフィア(van’t Vear)ら(Nature(2002年)415号;530−536頁)は、近年、テスト対象となった25,000のうち70の遺伝子セットが乳癌患者における転移についての予後診断シグネチャーを提供できること及び発現プロファイルは、疾病の転帰を予測するのに用いられるその他の臨床的パラメータをしのいでいるということを示唆した。
高速大量処理遺伝子発現検定のためのもう1つの主要な対象分野は、化合物ライブラリのスクリーニングである。今日使用されている優勢なスクリーニング検定フォーマットは、遺伝子特異的及び表現型という2つのカテゴリに入る。遺伝子特異的スクリーン例えばタンパク質結合検定及びレポータ遺伝子検定は、単一の遺伝子又はタンパク質終点に対する一定の与えられた化合物の効果の捕捉に焦点をあてているのに対し、表現型スクリーンは標準的にアポトーシス、細胞増殖又はイオン流といった大きな細胞変化を捕捉する。これらのスクリーニングアプローチは両方共、有意な値を有するが、化合物そして癌などの複雑な疾病に関与する数多くの遺伝子に対するその影響の及ぼし方をスクリーニングするためには最適ではない。遺伝子特異的スクリーンは、過度に焦点がしぼられており、摂動に対する多遺伝子応答を観察することができない。細胞ベースの表現型スクリーンは過度に広範で、表現型応答を生成するべく改変可能な多数の経路を識別するために使用することができず、又、化合物の開発を特異的な作用メカニズムに向かって効果的に最適化し誘導するために用いることもできない。例えば10〜100といった多数の遺伝子を並行して見ることのできるスクリーンの利用により、これらその他のスクリーニングアプローチの不足部分を克服することができる。
トーマス(Thomas)ら(Molecular Pharmacology(2001年)、60号(6);1189−1194頁 ファントフィア(van’t Vear)ら(Nature(2002年)415号;530−536頁
これらの重要な実験的分野においては、既存のマイクロアレイ方法を使用せざるを得ない可能性があるが、実際には、最少量のRNA及び多数の試料の分析に付随する実用上の経済性のためにこれらの使用は不可能である。本発明は、添付の開示を再考した時点で明らかになるように、これらの及びその他の問題に対処するものである。
発明の要約
該発明は、遺伝子発現プロファイリングのためのさまざまな新規の組成物及び方法を提供している。本書で教示されている発明は、マイクロアレイ技術を、1つの試料中の転写物の全て又は1サブセットを増幅する汎用プライマ、遺伝子特異的プライマ及びRNA試料中の転写物のサブセットを増幅するための技術と組合わせている。該発明の一部の実施形態は、RNA試料増幅産物内にバーコード配列を取込み、かくして「包括的アレイ」及び包括的標識付きプローブの使用(及び再利用)を可能にする強力な手段を追加する。該発明の組成物及び方法は同様に、多数の増幅されたRNA試料の同時分析をも可能にする。該発明の新規の組成物及び方法は同様に、増幅されたRNA試料を全体的に標識する必要性を無くするという点からみても、魅力的である潜在的なコスト節約を表わす。
該発明は、試料が特定されたバーコード配列を取込んでいる場合に、多数の増幅されたRNA核酸試料を並行分析するための方法を提供する。一部の態様においては、このバーコードは、核酸試料が発現プロファイリングのためアレイプラットフォーム上に核酸試料をアレイ化する手段である。これらの方法は、複数の生物試料からの複数の発現産物の同時検出を可能にし、ここで、該方法のステップには、(a)複数の生物試料の各々から複数のポリヌクレオチド配列(例えば発現済の遺伝子配列)を各々含む複数の発現済みRNA試料を得るステップ;(b)少なくとも発現済みRNA試料の前記複数のポリヌクレオチド配列のサブセットに対応する複数の複製核酸の中に少なくとも1つのバーコード配列を導入するステップ;(c)核酸アレイを産生するべく前記複数の複製核酸をアレイ化するステップ;(d)アレイ化した複製核酸に対応する複数のシグナルを検出するステップ、が含まれている。
一部の態様においては、同一のバーコードが、発現済みRNA試料の複数の複製核酸の各々の中に導入される。代替的には、サブセットの異なるポリヌクレオチド配列(例えば発現済み遺伝子配列)に対応する複製核酸の各々の中に異なるバーコードが導入される。複製核酸は、逆転写又は増幅に適したその他のあらゆる方法により産生可能である。一部の態様においては、複製核酸は、例えばPCR、TMA、NASBA及びRCAといった技術のうちの1つ以上のものにより、複数の発現済みRNA試料の選択的増幅により産生させられる。最も標準的には、選択的増幅を含めた増幅がPCRにより実施される。選択的増幅は、複数の遺伝子特異的プライマを用いて多重反応において実施可能である。任意には、遺伝子特異的プライマは、汎用プライミング配列(universal priming sequence)及び/又はバーコード配列を含む。任意には、汎用プライミング配列を有するプライマは同様に、蛍光標識といったような検出可能な部分をも担持している。
一部の実施形態においては、該発明は、(標準的にはプローブが固体基板(例えばガラス表面)に定着されている場合)確定配列プローブを使用することによって試料アレイを構築するための方法を提供している。一部の態様では、複製核酸(例えばRNA試料から誘導されたもの)のアレイは、確定配列プローブのアレイに対してそれらをハイブリッド形成することによってアレイ化される。一部の態様では、試料のアレイ化は、増幅された核酸試料内に導入されたバーコード配列に対しハイブリッド形成するポリヌクレオチド配列を含むアレイにそれらをハイブリッド形成することによる。一部の態様では、複製核酸はアレイ化され、任意にはアレイ化のためにプールされる。
一部の実施形態では、RNA試料の選択的増幅は、約5〜約100個の間のポリヌクレオチド配列、又任意には約10〜約50の間のポリヌクレオチド配列を増幅する。一部の態様では、各々の発現済みRNA試料は2つ以上のターゲット特異的増幅反応において増幅され、結果として得られた増幅産物を1つのアレイ上の2つ以上の場所で空間的にアレイ化される。一部の態様においては、2つ以上のバーコード配列が複数の複製核酸内に取込まれる。
本書に記述されている方法においては、アレイ化された核酸は、検出可能な部分を含む確定配列プローブをハイブリッド形成することによって検出することができる。この態様では、異なるポリヌクレオチド配列を伴う複数の確定配列プローブが核酸アレイにハイブリッド形成され、ここで各々のプローブは異なる検出可能なシグナルを生成する能力をもつ。一部の態様では、少なくとも1つのアレイ化された核酸が、検出可能部分を担持するバーコード特異的プローブをハイブリッド形成することによって検出される。検出可能部分は蛍光標識であり得る。複数のプローブが使用される場合には、各プローブは異なる蛍光標識を使用する。一部の態様では、アレイ化された核酸は、遺伝子特異的配列にハイブリッド形成する少なくとも1つの第1のサブ配列及びバーコード配列を担持する少なくとも1つの第2のサブ配列と共に連結オリゴヌクレオチドをハイブリッド形成させ、次にバーコード配列に対し検出可能部分を伴うプローブをハイブリッド形成させることにより、検出される。
一部の実施形態では、複数の発現済みRNA試料は、化合物ライブラリの少なくとも1つのメンバーと接触させられた生物試料由来のものである。一部の態様では、アレイ上のプローブからの検出済みシグナルは定量化され、任意には、定量化されたシグナルは対照シグナルに比較される。一部の態様では、定量化されたシグナルは、対照シグナルとの関係において増大又は減少させられる。対照シグナルとは異なる検出済みの定量化されたシグナルは、少なくとも1つの統計学的分析を用いて分析され得る。一部の態様では、生物試料は、培養中で成長した細胞、一次細胞単離物、組織又は組織抽出物であり得る。生物試料は、1つ以上の細胞系を内含することができる。多数の生物試料が使用される場合、各試料は、発現済みRNA試料の収集に先立って化合物ライブラリのメンバーと接触することができる。一部の態様においては、各々の生物試料は、化合物ライブラリの異なるメンバーと接触する。
一部の実施形態においては、RNA試料を誘導するために用いられる1つ以上の細胞系内の1つ以上の遺伝子の発現は、挿入突然変異、ゲノムDNAの欠失、ターゲティングされた遺伝子破壊、転写遮断、ゲノム又はエピソームベクター、アンチセンスDNA又はRNA、リボザイム、iRNA、DNA結合オリゴヌクレオチド及びジンクフィンガータンパク質の導入から選択された手順を用いて化合物ライブラリのメンバーで処理する前に人工的に改変される。
RNA試料を誘導するために用いられる生物試料は、真核生物又は原核生物の細胞を使用することができる。RNA試料を収集する前に細胞を処理するのに使用される化合物ライブラリは、化合物収集ライブラリ、組合せ化学ライブラリ、骨格集束型化学ライブラリ、ターゲット集束型化学ライブラリ、抗体ライブラリ、生物学的ライブラリ、天然産物ライブラリ、アンチセンス作用物質ライブラリ、iRNAライブラリ、siRNAライブラリ、リボザイムライブラリ、ペプチドライブラリ又は組合せ核酸オリゴマライブラリを使用することができる。一部の態様では、発現済みRNA試料は、少なくとも500個の生物試料、代替的には少なくとも1000個の生物試料、又は代替的には少なくとも10,000個の生物試料から得られる。一部の実施形態においては、発現済みRNA試料は、全細胞RNAを単離することによって収集される。代替的には、伝令RNA(mRNA)を単離することができる。一部の態様においては、発現済みRNA試料に対応する複数のRNA、cDNA又は増幅された核酸がアレイ化される。多数の試料がアレイ化される場合、増幅された核酸は、複数の発現済みRNA試料の選択的増幅によって産生可能である。
該発明の一部の実施形態においては、アレイ化及び遺伝子プロファイリング戦略は、(i)少なくとも1つの第1の確定配列プローブ及び少なくとも1つの第2の確定配列プローブをハイブリッド形成するステップであって、第1の確立配列プローブがハウスキーピング遺伝子にハイブリッド形成し、少なくとも第2の確定配列プローブがターゲット配列にハイブリッド形成するステップ;(ii)第1及び少なくとも第2の確定配列プローブのためのハイブリダイゼーションシグナルを定量化するステップ及び(iii)第1の確定配列プローブとの関係において少なくとも第2の確定配列プローブの発現を判定するステップを含んでいる。かかる方法においては、発現済みRNA試料に対応する核酸は、2つ以上のデュプリケートアレイの形にアレイ化され得、各アレイは、第1の確定配列プローブ及び少なくとも1つの第2の確定配列プローブにハイブリッド形成され、第1の確定配列プローブは2つ以上のデュプリケートアレイ間で同じであり、少なくとも第2の確定配列プローブは2つ以上のデュプリケートアレイ間で異なっている。
一部の実施形態においては、アレイ内で使用される複数の確定配列プローブは、疾病に関連するターゲット遺伝子セットを含み得る。さらに、当業者にとっては、さまざまなアレイフォーマット及び材料が周知である。一部の態様においては、核酸のアレイ化は、固相表面上で行なわれる。一部の態様では、核酸は、2次元固相表面上、複数の固相表面上にアレイ化され、例えばここで固相表面はビーズ、球又は光ファイバである。固相表面は、ガラス、コーティングされたガラス、シリコン、多孔質シリコン、ナイロン、セラミック又はプラスチックを包含することができる。同様にして、確定配列は、いずれかの特定の塩基配列又は核酸構造に制限されない。例えば、確定配列プローブは、1つ以上の合成プローブ、例えばオリゴヌクレオチド、cDNA、増幅産物又は制限断片であり得る。検出可能なシグナルを生成する能力をもつ確定配列プローブは、例えば、蛍光標識、発色団、エレクトロフォア、放射性核種、化学反応性部分、増幅可能なシグナル要素及び酵素に結合する能力をもつリガンドを包含することができる。一部の態様では、増幅可能なシグナル要素はオリゴヌクレオチドである。一部の態様では、オリゴヌクレオチド増幅可能なシグナル要素は、分枝DNA増幅(BDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ハイブリダイゼーションシグナル増幅方法(HSAM)、分岐増幅方法(RAM)及びDNAデンドリマープローブのうちの1つ以上のものにより検出される。一部の態様では、増幅可能なシグナル要素は、第2の増幅可能なシグナル要素に結合するリガンドを使用する。増幅可能なシグナル要素は酵素又は触媒を利用することができる。一部の態様では、検出可能なシグナルは、複製核酸に対応するシグナルを検出する前に増幅される。
該発明は、本書に記述されている方法の実施を容易にするためのキットを提供している。例えば、キットは、(a)各々(i)遺伝子特異的配列を含むサブ配列;(ii)バーコード配列を含むサブ配列;及び(iii)汎用プライミング配列を含むサブ配列、を含む複数のキメラプライマ;及び(b)汎用プライミング配列にハイブリッド形成する少なくとも1つの汎用プライマ、を含むことができる。キットは、核酸セットを含むマイクロアレイをさらに含み、ここで核酸セットの各メンバーは、アレイ内の異なる物理的場所に配置されている。任意には、キット内の遺伝子特異的配列は発現済みRNA試料内のポリヌクレオチド配列にハイブリッド形成することができる。
該発明は同様に、例えば遺伝子発現プロファイリングといった遺伝子発現分析のための方法も提供する。例えば、該発明は(a)RNA試料を提供するステップ;(b)逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(rtPCR)によりRNA試料のメンバーサブセットを選択的に増幅し、かつPCR産物セットを生成するステップであって、rtPCRが、少なくとも1つの遺伝子特異的プライマ対を含む反応混合物で実施され、該遺伝子特異的プライマがさらに少なくとも1つの汎用プライミング配列を含むステップ;(c)複数の遺伝子発現産物に対応する核酸メンバーセットを含むアレイを提供するステップであって、セットの核酸メンバーがアレイ内の目立たない物理的場所に位置づけされ、セットの少なくとも1つのメンバーがPCR産物セットの少なくとも1つの部分に相補的であるステップ;(d)アレイの相補的メンバー核酸に対しメンバーPCR産物をハイブリッド形成するステップ;(e)アレイ内の目立たない物理的場所においてハイブリッド形成されたメンバーPCR産物を検出し、かくして遺伝子発現プロファイルを決定するステップ、を伴う遺伝子発現プロファイルを決定するための方法を提供する。
本書中の方法において使用されるRNA試料は、生物試料例えば患者由来の組織試料又は細胞培養から得ることができる。一部の態様においては、RNA試料には対照RNA配列が含まれる。一部の態様では、RNA試料はメンバーリボ核酸の全体的増幅を用いて、又は代替的にはメンバーリボ核酸のサブセットの選択的増幅を用いて増幅される。一部の態様では、少なくとも1つの汎用プライミング配列を含むプライマはさらに検出可能な部分例えば蛍光標識を含み、かくして検出可能なPCR産物セットを生成する。代替的には、汎用プライマは、PCR産物のセットを生成する前に標識される。一部の態様では、汎用プライマは、PCR産物のセットを生成した後に標識される。一部の実施形態では、遺伝子特異的プライマは少なくとも1つのバーコード配列を包含する。一部の態様では、遺伝子特異的プライマはさらに第2のバーコード配列を含有し得る。
一部の実施形態では、増幅されたRNA試料は、2つ以上のPCR産物セットのプールされた試料である。一部の態様では、アレイはマイクロアレイである。一部の態様では、アレイはドットブロットアレイを使用する。一部の態様では、アレイは規則配列アレイ(ordered array)を含む。一部の態様では、該アレイは核酸の2次元アレイか、又は代替的には核酸の3次元アレイである。一部の態様では、競合的ハイブリダイゼーションが利用され、ここで第1の生物学的供給源由来の第1のRNA試料及び第2の生物学的供給源由来の第2のRNA試料が、アレイハイブリダイゼーションにおいて使用される。競合的ハイブリダイゼーションでは、第1又は第2のRNA試料から生成されたPCR産物が標識され得、又は代替的には、両方のRNA試料から生成されたPCR産物が標識される。アレイベースのハイブリダイゼーション及び発現プロファイリングは、例えば低ストリンジェンシー緩衝液でアレイを洗浄することによってアレイから未結合PCR産物を除去するステップを含むことができる。
任意には、増幅ステップの間、汎用プライミング配列を含む少なくとも1つのプライマは蛍光標識を担持することができ、ここで、ハイブリッド形成されたPCR産物を検出するステップには、蛍光標識の強度を判定するステップが関与する。代替的には、適切に標識されたPCR産物を、放射性標識を検出することによって検出することができる。任意には、ハイブリッド形成されたメンバーPCR産物の検出は定量的であり、ここではハイブリッド形成されたメンバーPCR産物の相対的量が決定される。
遺伝子発現プロファイルを決定するための代替的実施形態において、該発明は、(a)1つ以上の生物試料からRNAを得るステップ;(b)少なくとも1つの汎用プライマ及び少なくとも1つのキメラ遺伝子特異的バーコード化汎用プライマ対を用いてrtPCRによりRNAを増幅させ、バーコード化PCR産物セットを生成するステップ;(c)複数の遺伝子発現産物を表わす核酸メンバーセットを含むアレイを提供するステップであって、前記核酸セットのメンバーが前記アレイ内の目立たない物理的場所に位置づけされ、少なくとも1つのメンバー核酸が前記バーコード化PCR産物セットの1つのバーコード配列に相補的であるステップ;(d)前記アレイの相補的メンバー核酸に対し前記バーコード化PCR産物セットのメンバーをハイブリッド形成するステップ;(e)前記アレイを洗浄し、未結合バーコード化PCR産物を除去するステップ;及び(f)前記アレイ内の選択された場所にハイブリッド形成された一定量のバーコード化PCR産物を検出し定量化し、かくして前記遺伝子発現プロファイルを決定するステップ、を含む方法を教示している。
このプロトコルの変形形態が考慮される。例えば、蛍光標識又は放射性標識を用いて、少なくとも1つの汎用プライマを標識することができる。一部の態様では、ハイブリッド形成ステップは、少なくとも2つの異なる生物試料から誘導されたバーコード化PCR産物の少なくとも2つのセットをアレイに対し、するステップを含むことができる。
該発明は同様に上述の方法を容易にするためのキットをも提供している。かかるキットは、例えば、(a)選択された遺伝子セットを表わす核酸セットを含むアレイであって、核酸セットのメンバーがアレイ内の異なる物理的部位に目立たない形で配置されているアレイ;(b)少なくとも1つの汎用プライマ;及び(c)メンバープライマが汎用プライマと相補的な第1の配列部分及び選択された遺伝子セットのメンバーの配列に相補的な第2の配列部分を含む、複数の遺伝子特異的プライマ対、といった様々な成分を含み得るが、これらに制限されるわけではない。一部の態様では、選択された遺伝子セットを表わすキット内の核酸セットは、遺伝子の複数の部分に相補的な複数の核酸配列を含む。キット内の複数の遺伝子特異的プライマ対はさらに第3のバーコード配列部分を含み、ここで、選択された遺伝子セットを表わす核酸セットは、遺伝子特異的プライマ対の第3のバーコード配列に相補的な複数の核酸を含む。
該発明は同様に、疾病の診断又は予後診断のためのキットも提供している。これらのキットは例えば、(a)アレイ内の異なる物理的部位に目立たない形で配置されている疾病に結びつけられた選択された遺伝子セットを表わす核酸セットを含むアレイ;(b)少なくとも1つの汎用プライマ;及び(c)汎用プライマと相補的な第1の配列部分及び選択された遺伝子セットのメンバーの配列に相補的な第2の配列部分を有する複数のキメラ遺伝子特異的プライマ対を含んでいる。キット内の選択された遺伝子セットを表わす核酸セットは、メンバー遺伝子の複数の部分に相補的な複数の核酸配列を含むことができる。これらのキット内では、複数の遺伝子特異的プライマ対はさらに第3のバーコード配列部分を含むことができ、ここで、選択された遺伝子セットを表わす核酸セットは、遺伝子特異的プライマ対の第3のバーコード配列に相補的な複数の核酸を含む。
定義
本発明について詳述する前に、本発明が特定のデバイス又は生物学的システムに制限されず、これらは当然変動し得るということを理解すべきである。同様に、本書で使用する専門用語は特定の実施形態を記述することのみを目的としたものであり、制限の意図がないということも理解された。この明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用される通り、「a」、「an」、「the」という単数形態は、内容が明らかに相反する意味を与えているのでないかぎり、複数の指示対象を内含する。かくして、例えば「a probe」に対する言及には、同一の複数のプローブ分子も含まれ;「cells」には、複数の細胞を含むあらゆる形態の細胞が含まれる、といったようになる。
相反する定義づけのないかぎり、本書中に使用されている全ての技術的及び科学的用語は、該発明の関連技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の試験のための実践においては本書で記述されているものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を使用することが可能であるものの、ここでは好ましい材料及び方法が記述されている。本発明を記述し特許請求する上で、以下に記す定義に従って以下の専門用語が用いられることになる。
「発現産物」は、ゲノム又はその他の遺伝子要素からそれぞれ転写又は翻訳されたリボ核酸(RNA)又はポリペプチド産物である。一般に、発現産物は、生物学的特性をもつ遺伝子と結びつけられる。かくして、「遺伝子」という用語は、例えば、生理学的特性をもつ遺伝子産物をコードする生物学的特性と結びつけられた核酸配列を意味する。遺伝子は任意には、その遺伝子の発現のために必要とされる配列情報(例えばプロモーター、エンハンサなど)を含む。
「遺伝子発現」という用語は、RNA産物内への遺伝子の転写そして任意には1つ以上のポリペプチド配列への翻訳を意味する。「転写」という用語は、一般に鋳型としてDNAを用いるDNA依存性RNAポリメラーゼによって実施される、RNA産物への1つの遺伝子のDNA配列の複写プロセスを意味する。
「ヌクレオシド」とい用語は、例えばリボース又はデオキシリボースといった糖のC−1’炭素に連結された塩基から成る化合物を意味する。
「ヌクレオチド」という用語は、一般に、1つの単量体単位としての又は1つのポリヌクレオチド内部のヌクレオシドのリン酸エステルを意味する。「ヌクレオチド5’−トリホスファート」というのは、糖5’−炭素位に付着された三リン酸エステル基をもつヌクレオチドを意味し、時として、「NTP」、又は「dNTP」及び「ddNTP」と記される。修飾済みヌクレオチドというのは、標準的に塩基部分の修飾により化学的に修飾されたあらゆるヌクレオチド(例えばATP、TTP、GTP又はCTP)である。修飾済みヌクレオチドには例えば、メチルシトシン、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、5−ヨード−2’−デオキシウリジン及び6−チオグアニンが含まれるがこれらに制限されるわけではない。本書で使用される通り、用語「ヌクレオチド類似体」は、非天然に発生する任意のヌクレオチドを意味する。
本書で使用されている「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴマー」、「オリゴ」などという用語は、DNA(例えばcDNA)、RNA(例えばmRNA、rRNA、tRNA、核内低分子RNA)、ペプチド核酸(PNA)、RNA/DNA共重合体、その任意の類似体などといったヌクレオチド塩基の配列に対応させることのできる単量体サブユニットの重合体を意味する。ポリヌクレオチドは1本鎖又は2本鎖であり得、遺伝子配列のセンス又はアンチセンスストランドに対し相補的であり得る。ポリヌクレオチドは、ホモ2重鎖又はヘテロ2重鎖でありうる2重鎖を形成するべく、ターゲットポリヌクレオチドの相補的部分とハイブリッド形成することができる。ポリヌクレオチドの長さはいかなる点においても制限されない。ヌクレオチド間の連結はヌクレオチド間タイプのホスホジエステル連結であるか又はその他のあらゆるタイプの連結である。「ポリヌクレオチド配列」というのは、重合体に沿ったヌクレオチド単量体の配列を意味する。「ポリヌクレオチド」は、この用語が任意の長さのヌクレオチドの重合体形態を包含することから、ヌクレオチド配列の任意の特定の長さ又は範囲に制限されるものではない。ポリヌクレオチドは、生物学的手段によって(例えば酵素的に)産生されるか又は酵素を含まない系を用いて合成可能である。ポリヌクレオチドは酵素的に拡張可能であるか又は酵素的には拡張不能であるかのいずれでもあり得る。相反する指示のないかぎり、該発明の特定のポリヌクレオチド配列は、任意には、明示的に指示されている配列に加えて相補的配列を包含する。核酸は、例えば細胞抽出物、ゲノム又はゲノム外DNA、ウイルスRNA又はDNA、又は人工/化学合成された分子といったあらゆる供給源から得ることができる。
3’−5’ホスホジエステル連結によって形成されるポリヌクレオチドを作るように反応させられるヌクレオチド単量体は、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’ホスファートがホスホジエステル連結を介して1つの方向でその隣りのものの3’酸素(ヒドロキシル)に付着されるような形で統合されていることから、該ポリヌクレオチドは5’末端と3’末端を有すると言われている。かくして、ポリヌクレオチド分子の5’末端は、ヌクレオチドのペントース環の5’位に遊離ホスファート基又はヒドロキシルを有するが、一方該ポリヌクレオチド分子の3’末端はペントース環の3’位に遊離ホスファート又はヒドロキシル基を有する。ポリヌクレオチド分子の内部で、もう1つの位置又は配列との関係において5’に方向づけされている位置又は配列は「上流側」に配置されていると言われ、一方、もう1つの位置に対し3’である位置は、「下流側」であると言われる。この用語は、ポリメラーゼが鋳型ストランドに沿って5’から3’の形で進みポリヌクレオチド鎖を拡張させるという事実を反映している。相反する指示のないかぎり、ポリヌクレオチド配列が表わされている場合にはつねに、ヌクレオチドが左から右へ5’から3’の配位にあると理解すべきである。
本書で使用されているように、「ポリヌクレオチド」という用語は、天然に発生するポリヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド構造、天然に発生する主鎖又は天然に発生するヌクレオチド間連結に制限されるよう意図されていない。当業者であれば、該発明について使用できる多種多様なポリヌクレオチド類似体、人為的ヌクレオチド、非天然ホスホジエステル結合連結及びヌクレオチド間類似体を充分知っている。かかる人為的構造の制限的意味のない例としては、非リボース糖主鎖、3’−5’及び2’−5’ホスホジエステル連結、ヌクレオチド間逆転連結(例えば3’−3’及び5’−5’)、分枝構造及びヌクレオチド間類似体(例えばペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、C−Cアルキルホスホナート連結、例えばメチルホスホナート、ホスホルアミダート、C−Cアルキル−ホスホトリエステル、ホスホロチオアート及びホスホロジチオアートヌクレオチド間連結が含まれる。さらに、ポリヌクレオチドは完全に単一のタイプの単量体サブユニット及び1タイプの連結で構成され得、又は異なるタイプのサブユニット及び異なるタイプの連結の混合物又は組合せで構成され得る(ポリヌクレオチドはキメラ分子であり得る)。本書で使用される通りのポリヌクレオチド類似体は、それが天然に発生するポリヌクレオチドと類似の要領で1本鎖核酸ターゲットにハイブリッド形成するという点で天然ポリヌクレオチドの不可欠な性質を保持している。
リボ核酸の頭文字である「RNA」という用語は、リボヌクレオチドのあらゆる重合体を意味する。「RNA」という語は、天然、人為的又は修飾済みのリボヌクレオチド又はそのあらゆる組合せ(すなわちキメラRNA分子)を含む重合体を意味し得る。「RNA」という用語は、例えばmRNA(標準的にはポリARNA)、rRNA、tRNA及び核内低分子RNAを含む全ての生物学的形態のRNA、ならびにcRNA、アンチセンスRNA及び細胞系に内因性でないあらゆるタイプの人工(例えば組換え型)転写物を含む非天然発生形態のRNAを含んでいる。RNAという語は同様に、2−O−メチル化リボヌクレオチドといったような非天然リボヌクレオチド類似体を含むRNA分子をも包含する。RNAは、酵素的合成又は人工的(化学的)合成を含めたあらゆる方法によって産生可能である。酵素的合成には、無細胞インビトロ転写系、細胞系例えば原核生物細胞又は真核生物細胞内のものが含まれ得る。
「cDNA」という用語は、相補的又は「コピー」DNAを意味する。一般にcDNAは、あらゆるタイプのRNA分子(例えば標準的にはmRNA)を鋳型として用いて逆転写酵素活性をもつDNAポリメラーゼ(例えば相補的DNA分子を生成するためにRNA鋳型を用いる核酸ポリメラーゼ)により合成される。代替的には、有向化学合成によりcDNAを得ることもできる。
「増幅」、「増幅された産物」又は「増幅された核酸」という用語は、核酸増幅のあらゆる方法によって生成される核酸を意味する。一部の態様においては、「増幅された」という用語は一般に、混合物中の成分核酸の絶対濃度の増大を意味する。その他の態様においては、「増幅された」という用語は、(問題の核酸の絶対濃度の増加を伴う又は伴わない)混合物中のその他の核酸に比べた混合物中の1核酸成分の富化を意味する。本書で使用されているように、核酸の増幅プロセスには、異なる化学的構造を有するもののオリジナルの核酸に対応する一次塩基(ヌクレオチド)配列を保持している増幅された産物を結果としてもたらすことのできるプロセスが含まれる。例えば、本書で使用されているように、増幅されたmRNAはcDNA分子を含むことができ、ここで該cDNA分子は、オリジナルのmRNAの一次塩基配列の少なくとも一部分を保持している。一部の実施形態においては、増幅の後には任意には付加的なステップ、例えば(ただしこれらに制限されるわけではない)標識、配列決定、精製、単離、ハイブリダイゼーション、サイズ分解、発現、検出及び/又はクローニングが続く。
「相補的」又は「相補性」といった用語は、標準ワトソン−クリック相補的法則に従って塩基対合する能力又は比較的ストリンジェントな条件下で特定の核酸セグメントにハイブリッド形成する能力をもつ核酸配列を意味する。任意には、核酸重合体は、任意にはその配列全体の一部分のみを横断して相補的である。本書で使用されている用語「相補的な」は、ワトソン−クリック(及び任意にはホーグスティーン(Hoogsteen)タイプ)塩基対合法則によって関連づけされるポリヌクレオチドの逆平行鎖に関連して使用される。例えば、配列5’−AGTTC−3’は配列5’−GAACT−3’に相補的である。「完全に相補的な」又は「100%相補的な」などという用語は、逆平行鎖の間に完全なワトソン−クリック塩基対合を有する(ポリヌクレオチド2重鎖の不整合は全く無い)相補的配列を意味する。「部分的相補性」、「部分的に相補的な」、「不完全相補性」又は「不完全に相補的な」などという用語は、100%未満の完全性を有する(例えばポリヌクレオチド2重鎖内に少なくとも1つの不整合が存在する)逆平行ポリヌクレオチド鎖の間の塩基のあらゆる整列を意味する。さらに、2つの配列は、その整列に1つ以上の不整合、空隙又は挿入が存在する場合、それらの長さの一部分にわたり相補的であると言われる。
「ハイブリダイゼーション」という用語は、例えば2本鎖核酸を形成するための2つ以上のポリヌクレオチドの間の2重鎖形成を意味する。相補性をもつ2つの領域のハイブリッド形成し一緒にとどまる能力は、該相補的領域の長さ及び連続性及びハイブリッド形成条件のストリンジェンシーにより左右される。任意の2つの核酸の間(例えばアレイプローブとcDNAといったような増幅されたRNAターゲットの間)のハイブリダイゼーションについて記述するにあたっては、時として、ハイブリダイゼーションは、ターゲット又はプローブの「少なくとも一部分」を包含する。本書で使用される、「少なくとも一部分」という句及びハイブリダイゼーション反応に関する類似の句は、配列特異的ハイブリダイゼーションを可能にするのに充分大きい、例えばストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で安定した2重鎖形成を可能にする相補性をもつドメインを意味する。
「確定配列プローブ」というのは、単一のポリヌクレオチド配列を有する核酸プローブのことである。
「合成プローブ」という用語は、そのプローブが1つ以上の合成又は人工的操作、例えば化学的オリゴヌクレオチド合成、制限消化、増幅、cDNA合成などにより生成されることを標示するために用いられる。
「標識」という用語は、あらゆる検出可能な部分、又は、検出を可能にするもののそれ自体は検出可能でない部分を意味する。標識は、特定の核酸を標識されていないか又は異なる形で標識されているその他の核酸を識別するのに使用でき、そうでなければ検出を増強するために標識を使用することもできる。
「プライマ」という用語は、遊離3’ヒドロキシル末端が鋳型依存的に核酸ポリメラーゼにより拡張される能力をもつ、相補的又は部分的に相補的な核酸分子に対し少なくともその3’末端においてハイブリッド形成する能力をもつあらゆる核酸を意味する。
「鋳型」という用語は、例えばポリメラーゼ酵素の作用などによって、相補性配列内に複写され得る配列として役立ち得るあらゆる核酸重合体を意味する。
「ターゲット」「ターゲット配列」又は「ターゲット遺伝子配列」という語は、その存在、不在又は豊富さを判決しなければならない特異的核酸配列(又はその配列の相同性変異体)を意味する。該発明の好ましい実施形態においては、それは、発現済み遺伝子のmRNA内のユニーク配列である。
「ターゲット特異的プライマ」は、その他の非ターゲット配列を除外してその対応するターゲット配列とハイブリッド形成する能力をもつプライマを意味する。適切な条件の下では、該ハイブリッド形成されたプライマは、ターゲット配列の複製をプライミングすることができる。
「半汎用プライマ」という用語は、多重化反応の中で潜在的ターゲット配列の全てではなくそのうちの2つ以上のもの(例えばサブセット)とハイブリッド形成する能力をもつプライマを意味する。
「汎用プライマ」という用語は、汎用配列を含む複製プライマを意味する。
「汎用配列」、「汎用プライミング配列」又は「汎用プライマ配列」などという用語は、複数のプライマ内に含まれているものの(例えばターゲット配列といった)オリジナルの鋳型核酸に対する補体の中には含まれない配列を意味し、従って、完全に汎用な配列(例えば汎用プライマ)で構成されているプライマは該鋳型とハイブリッド形成する能力をもたない。
「基準配列」という用語は、検定のための対照を提供する試料内で増幅ターゲットとして役立つ核酸配列を意味する。該基準は該試料供給源の内部(つまり内因性)のものであり得、そうでなければ、試料に対し外部から添加され(つまり外因性)得る。外部基準は、逆転写に先立って試料に添加されるRNA又はPCR増幅に先立って添加されるDNA(例えばcDNA)のいずれかであり得る。
「多重反応」という用語は、単一の反応混合物内で同時に実施される複数の反応を意味し、例えば、多重増幅及び多重ハイブリダイゼーション反応を含む。
「多重増幅」という用語は、単一の反応混合物内で同時に実施される複数の増幅反応を意味する。
本発明の状況下では、「同時に」という用語は、2つ以上の反応(例えば複数のハイブリダイゼーション反応)が実質的に同時に発生することを意味する。例えば、多数の確定配列プローブといったようなハイブリッド形成されるべき試薬が、例えば核酸アレイといったターゲット核酸と同時にかつ/又は同じ溶液中で接触させられる。
本発明の状況下では、「増幅可能なシグナル要素」というのは、ターゲット配列に対するプローブのハイブリダイゼーションの後シグナルの増幅を容易にするプローブの1成分である。
「遺伝子発現データ」という用語は、遺伝子発現の異なる態様に関する情報を含む1つ以上のデータセットを意味する。該データセットは任意には、細胞又は細胞由来の試料内のターゲット−転写物の存在;ターゲット転写物の相対的及び絶対的豊富さレベル;特異的遺伝子の発現を誘発するさまざまな処理の能力;及び異なるレベルへと特異的遺伝子の発現を変えるさまざまな処理の能力に関する情報が含まれる。
「定量化する」という用語は、例えばハイブリダイゼーションシグナルに対し数値を割当てることを意味する。標準的には、定量化することには、シグナルの強度を測定し、線形又は指数的数字目盛上で対応する値を割当てることが関与する。
「相対的豊富さ」又は「相対的遺伝子発現レベル」という用語は、第2の種のものとの関係における一定の与えられた種の豊富さを意味する。任意には、第2の種は基準配列である。
「処理」という用語は、細胞、細胞系、組織又は生体の遺伝子発現プロファイルを改変させることのできる条件、物質又は作用物質(又はそれらの組合せ)に1つ以上の細胞、細胞系、組織又は生体を付す(すなわち処理する)プロセスを意味する。処理には一範囲の化学的濃度及び暴露時間が含まれる可能性があり、複製試料が生成され得る。「化学的処理」という用語は、その遺伝子発現プロファイルを改変させる潜在性を有する化学的又は生化学的化合物(又は化合物ライブラリ)に細胞、細胞系、組織又は生体を暴露する(又はそれらと接触させる)プロセスを意味する。
「プラットフォーム」という用語は、試料の準備、増幅、産物分離、産物検出、又は試料から得られたデータの分析のために使用される計装方法を意味する。
「マイクロプレート」、「培養皿」及び「多重ウエルプレート」という用語は、互換的に、多数の目立たない反応を同時に実施するのに一般に使用される、多数のチャンバ、受け器又はコンテナを有する表面を意味する。
「高速大量処理フォーマット」という用語は、一般的に、分析の比較的迅速な完了を意味する。1つの態様においては、「高速大量処理」という用語は、(例えば数多くの試料の同時分析などの)数多くの試料の高度に並行した分析を意味する。もう1つの態様においては、「高速大量処理分析」という用語は、一時間あたり約10個超、好ましくは一時間あたり約50個以上、より好ましくは一時間あたり約100個以上、最も好ましくは一時間あたり約250個、約500個、約1000個以上の試料の分析を完了することを意味する。
「小型化フォーマット」という用語は、マイクロ流体及びナノ流体の両方のプラットフォーム上を含めたサブマイクロリットル体積で実施される手順又は方法を意味する。
マイクロアレイ分析を使用する発現プロファイリングのための新規の方法
本書に記述されているのは、マイクロアレイ分析のための試料の調製に付随するコスト及び感度の主たる問題を克服する方法にある。標準的実施形態においては、記述されている発明は、例えば生物試料からの選択されたRNA転写物セットを増幅するために逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rtPCR)を使用している。マイクロアレイ分析に適している検出可能な部分(例えば蛍光標識)は、現行の大部分の増幅方法と異なり、増幅反応中に取込まれ、増幅及び標識を単一の1段階プロセスに転換させる。
PCR及びrtPCRを使用すると、非常に少量の材料を用いるだけで多重なターゲットを増幅することができる、ということが以前に実証されている。この利点は、遺伝子型特定及び遺伝子発現を含むさまざまな利用分野のために利用されてきた。数多くの場合、特に遺伝子発現において、異なる核酸ターゲットのために相対的発現レベルを定量化することが望ましい。しかしながら、標準多重rtPCRは標準的に定量性ではない。指数的増幅の間に多大な偏向が導入され得、その結果データは可変的かつ再現不能なものとなる。これらの偏向は、プライマ−プライマ間の相互作用、プライマ−産物間の交叉反応、そして温度サイクリングの後段又は安定期において最も顕著に見られる増幅効率の濃度及び配列依存性変動の結果もたらされるものである。これらの欠点を克服するために、該発明の方法は、配列増幅を駆動するのに、修正されたrtPCR及び汎用プライマを利用している。
修正されたrtPCRプロセスは、このプロセスを用いて得られる検出感度を危うくすることなくrtPCRの主要な欠点を克服する組合せ型遺伝子特異的汎用プライミング戦略を使用する。該戦略は、図1及び2に概略的に示されている。該プロセスには、数十個のプライマが関与するプロセスからわずか2つのプライマしか利用しないプロセス(すなわち汎用プライマ)へと多重増幅プロセスを転換させることが関与している。反応は、各ターゲットmRNA内の配列にハイブリッド形成する能力をもつ遺伝子特異的プライマ(遺伝子特異的プライマ順方向(GSP−F)及び遺伝子特異的プライマ逆方向(GSP−R))を用いて初期化する。これらの遺伝子特異的プライマはその5’末端上にコンセンサス又は汎用プライミング配列(汎用プライマ順方向(UP−F)及び汎用プライマ逆方向(UP−R))を担持している。最初の数回の増幅サイクル中、特異的遺伝子ターゲットはこれらのキメラプライマにより増幅され、汎用プライマ配列でテーリングされた産物を作り出す。その後続く増幅は、標準的に、汎用プライミング配列の補体にハイブリッド形成する汎用プライマの拡張の結果としてもたらされる。
或る種の実施形態においては、反応はキメラ遺伝子特異的プライマよりも高い濃度で存在する1対の汎用プライマを担持している。例えば、1つの実施形態においては、50:1という汎用:キメラ遺伝子特異的プライマ比(1μMの汎用:0.02μMの遺伝子特異的プライマ)が使用される。もう1つの実施形態では、この比は10:1〜100:1である。従って、PCRが進行するにつれて、増幅は単一の汎用プライマ対によって迅速に引き継がれる。数多くのプライマの使用からわずか2つのプライマの使用へのこの遷移は、反応の複雑性のレベルを崩壊させ、異なる遺伝子ターゲットの相対的濃度を固定する。汎用プライマ増幅反応においては、全ての産物は、実際に同じ化学種であり、示差的に増幅されない。PCR産物のサイズ範囲に関していくつかの潜在的制限が存在し、例えば、1つの好ましい実施形態においては、PCR産物の全てが長さ400塩基対未満であるが、相対的遺伝子比は反応が安定期に押し入った時点でさえ維持することができる。
汎用プライマrtPCR(UP−rtPCR)方法は、うまく機能し、ローレイン(Loehrlein)らに対する「遺伝子発現の分析方法(METHODS FOR ANALYSIS OF GENE EXPRESSION)」という題の米国特許第6,618,679号明細書の中で詳述されているように、電気泳動法、ABI毛管及びスラブ計器により分析されてきたPCR産物を生成することを実証した。増幅の後、各々の遺伝子は異なるサイズのPCR産物を生成するように設計されていることから、電気泳動によって産物を識別し定量化することができる。このサイズ識別には、ピーク高さ及び/又はピーク面積の測定を介して産物を定量化する目的で電気泳動プロセスにおいて各々の全く異なる産物の分解が関与する。標準的には、単一の電気泳動ランにおいては、制限された数の産物しか増幅及び検出できない。該発明の方法は、マイクロアレイ分析の使用を取込むことによって、多重化UP−rtPCR技術を著しく増大した数の異なる遺伝子にまで拡張する。
発現プロファイリングのためのマイクロアレイ分析には標準的に1つの表面上の1次元、2次元さらには3次元フォーマットでアレイ化された一連の核酸プローブの使用が関与しており、ここでプローブの各々は表面上に一意的な場所又はアドレスを有している。核酸プローブ(例えば全て配列特異的ハイブリダイゼーションの能力を有するオリゴヌクレオチド、PCR産物、cDNA、プラスミド又は核酸様合成重合体を含むがこれらに制限されるわけではない)は、分析すべき遺伝子の配列に対し相補的であるように作られている。単一のマイクロアレイ上の一意的なアドレス可能な場所にスポッティンクされ得る全く異なるプローブの数は数万個より多く、先端技術が改善していくにつれてつねに上向きに見直しされている。研究者にとっての問題の遺伝子の数、そして正に任意の1つのRNA試料中の発現済み遺伝子の合計数は、最先端のマイクロアレイ上のプローブ容量よりも小さい確率が高い。かくして任意の1つの分析に必要とされるプローブの数は、マイクロアレイのプローブ容量の上限内に充分入る確率が高い。一部の実施形態では、記述された方法は10〜1000個の異なるRNA転写物を増幅するために使用されている。一般に、記述された方法は、20〜500の異なるRNA転写物、例えば50〜200の異なるRNA転写物を増幅するために使用される。
UP−rtPCRと現行のマイクロアレイ増幅及び標識方法の関係
標準マイクロアレイプロトコルにおいては、mRNA集団は逆転写によりcDNAに転換され、例えばcy3又はcy5といったような蛍光染料で全体的に標識される。該標識ステップは、染料標識されたdNTPを用いた逆転写反応又は逆転写ステップの間に取込まれたアミノ−dUTPにカップリングする化学的に活性化された染料を用いた後逆転写の一部として実施される。標識された産物はこのとき、取込まれていない染料から精製され、次にアレイ上に置かれ、異なる遺伝子配列がその相補的プローブにハイブリッド形成できるようになる。標準的プロトコルでは、出発材料として例えば100μg〜1mgの全RNAといった大量のRNAが必要となる。RNA出発材料の使用量を少なくするために、付加的な全体的増幅ステップが頻繁に実施される。全体的増幅方法の例としては、BDバイオサインス・クローンテック(BD Biosciences−Clontech)(Palo Alto、カリフォルニア州)社製のSMART(商標)技術、NuGEN(商標)テクノロジーズ(NuGENTM Technologies,Inc.)(San Carlos、カリフォルニア州)社製のオベーション(Ovation)(商標)増幅技術及びアルクチュラス(Arcturus,Inc.)(Mountain View、カリフォルニア州)社製のRiboAmp(商標)RNA増幅キットが含まれる。全体的増幅ステップは、該方法に付加的なコストを追加する。例えば、数十ngの全RNAから増幅する能力をもつ全体的増幅方法についての表示価格は、試料1個あたり100〜200ドルである。このコストは、試料1個あたりの使用試薬の標識に関する50ドル〜100ドルに追加されるものである。これとは対照的に、UP−rtPCR反応の実施のための試薬は、試料1個あたり1〜3ドルの間である。
かくして、UP−rtPCRとマイクロアレイ分析を合わせた本書に記述されている方法は、現行のマイクロアレイ試料調製方法に比べて全く異なるいくつかの利点を提供する。これらの利点には、(1)1試料あたり極少量の全RNAの使用が可能である、(2)単一ステップでのcDN転換、増幅及び標識、(3)分析のためにターゲティングされているような遺伝子のみの選択的増幅及び(4)プロセスが単純であることを理由とする労働及び試薬コストの削減、が含まれる。
少量のRNAで作業することは、数多くの研究及び臨床環境において非常に価値のあることである。例えば10ng以下といったように1試料あたり非常に少量の全RNAを使用できることによって、小さい臨床用試料の分析にUP−rtPCR方法を応用することができる。例えば、癌について走査するか又は1つの器官又は組織の健康を監視するための針生検は、典型的に、標準的マイクロアレイ分析にとっては極端に少ない数十ナノグラムの全RNAしか生み出さない非常に少数の細胞しか抽出しない。
同様にして化学的ライブラリの高速大量処理スクリーニングには、複数の化合物での細胞培養中で成長した細胞の処理が関与する。これらの処理はマイクロタイタープレートフォーマットで日常的に実施される。これらのスクリーンにおいては、例えば96ウエル、384ウエル及び1536ウエルのプレートといった高密度のマイクロタイタープレートを使用することにより検定1回あたりのコストを削減することがきわめて望ましい。より高密度で低容積のプレート内での実施というのは、1回の処理あたり使用される各々の化合物が少ないことを意味し、これは、一部の化合物の供給が非常に制限されておりかつ/又は合成したりその他の形で獲得するコストが高い可能性があることから、有利なことである。より小さい細胞培養を使用することは同様に、存在する細胞がより少なく、これらが発現分析に利用可能な数ナノグラムの全RNAしか生成しないことをも意味している。
UP−rtPCRで可能である単一ステップのcDNA転換、増幅及び標識は既存の方法よりも根本的に単純なプロセスを作り出す。マイクロアレイ分析のための増幅及び標識に対する最も単純なアプローチの1つを表わしているヌーゲン(Nugen)が開発したオベーション方法にさえ、増幅、精製及び標識のための多数の独立したステップが関与している。
ターゲティングされた遺伝子増幅のためのUP−rtPCRの利用は、感度の大幅上昇についてと同時にそれがアレイ上で分析すべき試料の複雑性を低減することからも、改善を提供する。全体的RNA増幅方法の1つに比べて小さい遺伝子セットのターゲティングされた増幅の使用により、最大の弁別レベルが確保され、異なるプローブのクロスハイブリダイゼーションを1つ以上の増幅された相同な又は部分的に相同な遺伝子に制限する。そして該増幅は小さい遺伝子セットに焦点を合わせたものであることから、標識は全てこれらの分析すべき遺伝子のみの中に取込まれ、全体的方法に比べこれらの遺伝子のシグナル対ノイズ比の潜在的に大きな増大を導く。
プロセスの単純性は、実施コストの削減を導く。UP−rtPCRプロセスを使用した増幅及び標識における最小限のステップは、異なるステップの各々について試料を調製することに付随する時間及び労働の削減を導く。2ステップ標識化学反応を削除することは、試薬のコストを削減する。UP−rtPCRプロセスにおいては、標識の全てが、10,000個以上の試料のために使用可能な1つの標識合成しか必要としない1つ又は両方の汎用プライマ上に担持される。rtRCRプロセス内で使用するための多数の供給メーカーからの既製のrtPCR試薬の選択も又同様に、試薬コストが低くなることを意味している。
UP−rtPCRプロセスは、マイクロアレイ分析のための一定数の異なるアプローチの影響を受けやすい。これらのアプローチには、(i)単一試料、単一色のハイブリダイゼーション;(ii)2色、2試料の競合的ハイブリダイゼーションならびに(iii)複数の試料/色の競合的ハイブリダイゼーションが含まれる。複数の試料(例えば3つ以上のオリジナルのRNA供給源)の同時の(すなわち並行した)分析を実施する場合、分析可能な試料の数の上限は、一般に、使用される検出可能部分(例えば標識)のタイプ及び検出システムによって制限され、UP−rtPCRプロセスによっては制限されない。
例えば、標準的な放射性標識ベースの検出システムは、1つの標識に制限されており、一方蛍光ベースのシステムは、日常的に2つの標識を使用し、一部のシステムは5個という数多くの標識を取込んでいる。当業者であれば、比色分析、化学発光、表面プラズモン共鳴及び光子放出及び急冷システムの使用を含む組合せ標識システムを含め、UP−rtPCR及びマイクロアレイ分析の状況下でのさまざまな異なる標識及び検出スキームのいずれかを利用することができる。一部の実施形態においては、検出可能部分は、UP−rtPCRプロセスで使用される1つ又は両方の汎用プライマに連結される。
「バーコード」配列の導入
UP−rtPCRプロセスのその他の実施形態には、UP−rtPCRプロセスの間に取込まれ得る付加的な核酸「バーコード」配列を含み入れるべくキメラ遺伝子特異的プライマを修飾することが関与する。このような実施形態においては、増幅すべき遺伝子の各々は、バーコード配列に連結される。試料に添加されるバーコード配列は、試料特異的(例えば多数の試料が同時に分析される場合)でも又は遺伝子特異的(各遺伝子は異なるバーコードを受ける)でもあり得る。代替的には、UP−rtPCRプロセス中、遺伝子の任意の特定のサブセットが同じバーコードを受け取ることができる。試料又は遺伝子識別のためのバーコード戦略を利用するさまざまな実施形態が図3及び4に例示されている。本書の図中に例示されている実施形態は、単なる一例として役立つように意図されている。該発明を本書で例示されているいずれかの特定のバーコードスキームに制限することは、意図されていない。該発明の記述を読んだ上で、当業者にはさまざまな実施形態が明らかになると思われ、これらは全て特許請求対象の発明の範囲に包含される。
一部の実施形態においては、例えばRNA転写物に対応する複数の異なる核酸配列を産生するために増幅プロセスが使用される。異なるキメラプライマ配列の使用を通して、増幅された産物内にバーコード配列を取込むことが可能である。取込まれるバーコードのタイプ及びバーコードを含む集団は、使用される異なるオリゴヌクレオチドプライマの配列組成に応じて変動する。例えば、PCRの使用には、増幅されるべき各々の遺伝子又は核酸領域についての一対のオリゴヌクレオチドプライマの使用が関与する。各遺伝子は独自のオリゴヌクレオチドプライマ対に連結されることから、各遺伝子に結びつけられることになるバーコード配列を一意的に選択することが可能である。従って、3つの異なるカテゴリの1つに入るバーコードを取込むことが可能である。これらのカテゴリとは、(a)各々の異なる増幅済み遺伝子又は核酸領域が一意的バーコードを有するカテゴリ、(b)1つの基を含む2つ以上の異なる増幅済み遺伝子又は核酸領域が、異なる基と結びつけられた1つ以上のバーコードと1つのバーコードを共有し得るカテゴリ、又は(c)異なる増幅された遺伝子又は核酸領域の全てが同じバーコードを有するカテゴリである。同様に、増幅された産物1つあたり2つ以上のバーコードを含み入れ、従って、上述のカテゴリのうちの1つ以上からのバーコードを同時に結びつけるという選択肢も存在する。該発明の1実施形態においては、汎用プライマ又は半汎用プライマは同様に、カテゴリ(b)及び(c)に入るバーコード配列としても機能し得る。
1実施形態においては、遺伝子特異的バーコード(GS−BC)配列はキメラ汎用/遺伝子特異的プライマ内に取込まれる。特定的には、遺伝子特異的コードは、汎用プライマ(UP)配列と遺伝子特異的プライマ(GSP)配列の間に置かれる。例えば、図3及び4では、GS−BC配列は、順方向プライマ内に取込まれる。GS−BC配列は次に全ての増幅済み産物内に取込まれる。
1つ以上のバーコード配列の発現済みRNA試料に対応する核酸内への取込みを用いる該発明の制限的意味のない実施形態が、図6〜10に概略的に例示されている。
図6は、試料特異的バーコードを用いたマイクロアレイベースの発現プロファイリングを例示している。さまざまな試料からのRNAが逆転写され増幅される。この増幅は標準的に(ただし排他的にではなく)遺伝子特異的プライマを使用するが、全体的RNA増幅も同様に可能である。増幅は、各試料からの全ての増幅済み産物内にバーコードを同時に取込む(すなわち試料特異的な形で;試料1のためのバーコードは、試料2のためのバーコードとは異なり、試料2のためのバーコードは試料3のためのバーコードとも異なる)ことになるプライマを使用するように設計される。
増幅の後、増幅済み産物をプールし適切なアレイに対し適用することができる。1つの実施形態(図6に描かれている)においては、該アレイは、さまざまな試料バーコードに特異的な(すなわちこれに相補的な)定置プローブ(すなわち付着部分)を含む。かかるアレイ構成は、包括アレイとみなすことができる。結果として得られたハイブリダイゼーション複合体を次に、標識された可溶性(すなわち貼付された)遺伝子特異的プローブを用いて視覚化することができる。代替的には、アレイは遺伝子特異的捕捉プローブを使用でき、結果として得られたハイブリッド形成複合体は、試料特異的バーコードと相補的な標識された可溶性プローブを用いて検出することが可能である。この方法(及び図6〜10に記述されているその他の方法)の実践的応用では、処理量を最大にするためのアレイのうちのアレイが使用されることになると思われる。同様にしてこれらの方法の全てにおいて、各々の標識付き可溶性視覚化プローブは、異なるハイブリダイゼーション複合体の識別を可能にする異なる部分で標識され得る(すなわち各プローブは、その他のプローブ上のその他の標識との関係において独自の励起/放出スペクトルを有する標識にカップリングされている)。このタイプの標識戦略は、数多くの試料及び数多くの遺伝子のきわめて高度な並列処理を可能にする。
図7は、遺伝子特異的バーコードを用いたマイクロアレイベースの発現プロファイリングを例示している。さまざまな試料からのRNAが選択的に逆転写され、遺伝子特異的プライマを用いて増幅され、同時に遺伝子特異的にバーコードを取込む(すなわち、遺伝子−1アンプリコンはバーコード−1を含む、遺伝子−2アンプリコンはバーコード−2を含む等々。多数の供給源からのRNA試料が増幅された時点でターゲット遺伝子アンプリコンは複数の試料を横断して同じバーコードを受けとる。この状況は、図3及び4に類似している(ただしこれらの数字は単に単一の転写物についての(図3)そして単一の試料からの(図4)増幅産物を示しているにすぎない。
選択的増幅の後、増幅済み産物は、適切なアレイに適用される。1つの実施形態(図7に描かれている)においては、該アレイは、さまざまな、遺伝子配列に特異的な(すなわちこれに相補的な)定量プローブ(すなわち付着部分)を含む。結果として得られたハイブリダイゼーション複合体を次に、標識された可溶性(すなわち貼付された)バーコード視覚化プローブを用いて視覚化することができる。代替的には、アレイはバーコード特異的捕捉プローブを使用でき、結果として得られたハイブリッド形成複合体は、特異的な遺伝子配列と相補的な標識された可溶性プローブを用いて検出することが可能である。
図8は、試料特異的であると同時に遺伝子特異的であるバーコードを用いたマイクロアレイベースの発現プロファイリングを例示している。さまざまな試料からのRNAが逆転写され増幅される。増幅は、各試料からの全ての増幅済み産物内にバーコードを同時に取込み(すなわち試料特異的な形で;試料1のためのバーコードは、試料2のためのバーコードとは異なり、試料2のためのバーコードは試料3のためのバーコードとも異なる)かつ複数の試料を横断して各々のターゲティングされた遺伝子について1つの遺伝子特異的バーコードを取込む(すなわち遺伝子−1についての全てのアンプリコンは、試料1、2、及び3からのアンプリコンを含む遺伝子バーコード−1を受理し、遺伝子−2についての全てのアンプリコンは、試料1、2及び3からのアンプリコンを含む遺伝子バーコード−2を受理する)ことになるプライマを使用するように設計される。この標識及び検出戦略は図5Aに示されている状況と類似している。
増幅の後、増幅済み産物をプールし適切なアレイに対し適用することができる。1つの実施形態(図8に描かれている)においては、該アレイは、さまざまな試料バーコード(アレイバーコード−1、アレイバーコード−2、アレイバーコード−3など)に特異的な(すなわちこれに相補的な)定量プローブ(すなわち付着部分)を含む。かかるアレイ構成は、包括アレイとみなすことができる。結果として得られたハイブリダイゼーション複合体を次に、標識された可溶性(すなわち貼付された)遺伝子特異的バーコードプローブを用いて視覚化することができる(かかるプローブは包括的標識付きプローブとみなすことができる)。代替的には、アレイは遺伝子特異的捕捉プローブを使用でき、結果として得られたハイブリダイゼーション複合体は、試料特異的バーコードと相補的な標識された可溶性プローブを用いて検出することが可能である。
図9は、遺伝子特異的リンカーオリゴヌクレオチド(オリゴ)と組合せた形で試料特異的バーコードを用いたマイクロアレイベースの発現プロファイリングスキームを例示している。さまざまな試料からのRNAが選択的に逆転写され遺伝子特異的プライマを用いて増幅され、同時に、試料特異的な形でバーコードを取込む(すなわち、試料1からの全てのアンプリコンのためのバーコードは、試料2からの全てのアンプリコンのためのバーコードとは異なり、このバーコードも今度は、試料3からの全てのアンプリコンのためのバーコードとは異なる等々)。
選択的増幅の後、増幅済み産物は、適切なアレイに対し適用される。1つの実施形態(図9に描かれている)においては、該アレイは、さまざまな試料特異的バーコード配列に特異的な(すなわちこれに相補的な)定量プローブ(すなわち付着部分)を含む。結果として得られたハイブリダイゼーション複合体は次に、問題の遺伝子に相補的な配列と同様に適切な標識付き可溶性バーコードプローブに相補的な配列も含む適切なリンカーオリゴとハイブリッド形成される。リンカーオリゴのハイブリダイゼーションの後、リンカーオリゴを有する束縛されたハイブリダイゼーション複合体は、リンカーオリゴ上のバーコードに相補的な標識付き可溶性バーコードプローブを用いて視覚化される。この状況は図5Bに描かれている。
図10は、2重バーコード戦略を使用するという点を除いて、図9に記述されたリンカーオリゴプロトコルと類似のマイクロアレイベースの発現プロファイリングスキームを例示している。さまざまな試料からのRNAは選択的に転写され、遺伝子特異的プライマを用いて増幅され、2つのバーコードのアンプリコンに同時に取込む。1つのバーコードは、試料特異的な形で取込まれ(すなわち試料1からの全てのアンプリコンのためのバーコードは試料2からの全てのアンプリコンのためのバーコードと異なり、これは今度は試料3からの全てのアンプリコンのためのバーコードと異なる)、同様に、遺伝子特異的な形で1つのバーコードを取込む(すなわち遺伝子−1アンプリコンはバーコード−1を含有し、遺伝子−2アンプリコンはバーコード−2を含有し、遺伝子−3アンプリコンはバーコード−3を含有する等々)。
選択的増幅の後、増幅済み産物をプールしその後適切なアレイに対し適用することができる。1つの実施形態(図10に描かれている)においては、該アレイは、さまざまな試料特異的バーコード配列に特異的な(すなわちこれに相補的な)定量プローブ(すなわち付着部分)を含む。結果として得られたハイブリダイゼーション複合体は次に2つのバーコードを含有する適切なリンカーオリゴとハイブリッド形成される。すなわち、遺伝子特異的バーコードに相補的なバーコード配列と同時に適切な標識付き可溶性バーコードプローブに対し相補的な配列。リンカーオリゴのハイブリダイゼーションの後、リンカーオリゴを有する束縛されたハイブリダイゼーション複合体は、リンカーオリゴ上の第2のバーコードに対し相補的な標識付き可溶性バーコードプローブを用いて視覚化される。
包括アレイ
一部の実施形態においては、増幅されるべき異なる遺伝子転写物の各々は、各々の遺伝子の特異的で一意的なバーコード配列を取込むことができる。これらの配列はその後、マイクロアレイ(すなわち付着部分)とのハイブリダイゼーション点として使用可能であり、ここで、該マイクロアレイは、異なるバーコード配列の各々に対し相補的である複数のオリゴヌクレオチドプローブを含有する。このプロセスの利点は、プライマセット内及びマイクロアレイ上の両方でバーコード配列の包括的セットを利用でき、異なる遺伝子の発現プロファイル(発現パターンと同義である)を監視するべく何度もくり返し使用可能な包括的マイクロアレイを作り出す機会を提供するという点にある。
物理的アレイは、物理的アレイ上の2つ以上の場所で空間的にアレイ化されている複数のオリゴヌクレオチド配列から成る。各々の包括アレイについて各包括アレイが同一又はほぼ同一のコピーである状態で複数のオリゴヌクレオチド配列がくり返される。包括アレイの多重コピーは複数の包括アレイ又はアレイのアレイを表わす。包括アレイの単数又は複数のアレイの一例としては、Beckman SNPstream(商標)の96−ウエルプレートがあり、ここで、包括アレイは各々マイクロタイタープレートの1つのウエル内に閉じ込められており、各ウエルは複数のオリゴヌクレオチド配列、例えば52の異なる配列から成る。これらの同じ52の配列は、マイクロタイタープレートの96のウエルの各々の中に同じ空間的順序でアレイ化されている。当業者であればその他のフォーマットも想像することができる。例えば、2003年7月16日付けのモンフォルテ(Monforte)による米国特許出願第10/622,010号明細書中に記述されているようなマイクロアレイパラダイムの「フリッピング」が関与する方法の状況下で、包括アレイを利用することができる。
この実施形態においては、生物試料から誘導された発現済みRNA試料に対応する核酸の試料内の少なくとも1つの配列サブセットの各々の中にバーコード配列が導入される。増幅プロセス中にこのようなバーコードを取込むことが一般に好都合ではあるものの、当業者であれば、転写酵素認識配列の上流側にバーコード配列を含むプライマを用いた逆転写酵素媒介型プロセスといったような代替的方法を用いて核酸内にバーコードを取込むことができるということがわかるだろう。試料中のユニークなRNA種の一定の与えられたサブセットの各々について、異なるバーコード配列が導入される。このとき、生物試料の発現済みRNAに対応する核酸は、包括アレイに対しハイブリッド形成される。包括アレイの個々の要素をプローブ探査して、ターゲット遺伝子配列に対応する確定配列プローブを用いて、又は代替的には、図5Aに示されているように増幅済み核酸内に取込まれた第2のバーコードに対応する標識されたバーコード特異的プローブで、ユニークな遺伝子配列を検出することが可能である。
包括プローブ
標識付きバーコードプローブというのは、標識を有するオリゴヌクレオチド配列である。一定の与えられた実験セットについて、各々ユニークオリゴヌクレオチド配列を伴う複数のバーコードプローブを調製することができ、ここで、各々のユニーク配列は、(例えばその吸光/発光特性によって一意的に同定され得る蛍光標識で異なるプローブを標識することによって)異なる標識と結びつけられる。代替的には、図5Bに示されているように、遺伝子特異的配列と相補的な第1のサブ配列(又はセグメント)及びバーコードを含む第2のサブ配列を有する連結用オリゴヌクレオチドを、標識付きバーコードプローブを用いて検出することができる。
ハイブリダイゼーションによる試料の選別
スクリーニング方法の1実施形態は、物理的アレイ内の異なる空間的にアレイ化された場所に対し異なる増幅済み産物を誘導するための包括アレイの使用を包含している。例えば分析すべき異なるRNA又は核酸試料の各々は、特定の試料中の全ての産物が1つのバーコードで標識されるすなわち、試料1で増幅された産物がバーコード1を含み、試料2で増幅された産物がバーコード2を含み、試料3で増幅された産物がバーコード3を含むといったような形で増幅される。別々の反応の中で増幅される試料1、2、3などをプールし、その後包括アレイに同時ハイブリッド形成することができ、ここで包括アレイ内の空間的位置1はバーコード1に相補的なオリゴヌクレオチドを有し、包括アレイ内の空間的位置2は、バーコード2に相補的なオリゴヌクレオチドを有し、包括アレイ内の空間的位置3は、バーコード3に相補的なオリゴヌクレオチドを有する、等々。該方法は、ハイブリダイゼーションに先立ち試料を精製又は単離する必要性が全く無く全体的プロセスを単純化するという点で、試料1、2、3などの直接的スポッティングに比べて著しい利点を提供する。
標識の複雑性の削減
遺伝子発現及び核酸検出のためのマイクロアレイタイプの検定の使用における有意なコストが1つ以上の標識を含むオリゴヌクレオチドの合成と結びつけられる。コストを削減するために、一部の実施形態は、包括プローブセットを利用しており、ここで該プローブはバーコード配列を含んでいる(図5A及び5Bを参照のこと)。これらのバーコードプローブ配列は、(i)増幅の間に増幅済み遺伝子又は核酸産物内に取込まれているか又は(ii)ハイブリダイゼーションを介してバーコード取込み用染料標識付き包括プローブを結びつけるために仲介又は連結用オリゴヌクレオチドを利用するバーコード配列に対し相補的なものにされている。
図5Aに例示されている筋書(i)の1つの実施形態においては、遺伝子特異的配列及び2つのユニークなバーコードつまりバーコードA及びバーコードBを含む増幅された遺伝子又は核酸産物が産生される。バーコードAは、適切な相補的付着済みバーコードプローブを介してアレイ表面に付着するためのターゲットとして役立つ。増幅済み産物上のバーコードBは、検出のためのターゲットとして役立ち、ここでバーコードB配列は、適切な標識された相補的バーコードBプローブとハイブリッド形成される。代替的には、バーコードB配列に特異的な標識付きプローブを用いる代りに、増幅済み遺伝子配列に相補的な標識付きプローブを合成することができる。
図5Bに例示されている筋書(ii)の1実施形態においては、遺伝子特異的配列及び1つのユニークバーコードAを含む増幅された遺伝子又は核酸産物が産生される。増幅済み産物上のバーコードAは、バーコードAに相補的な適切な付着プローブを介してアレイ表面に対し付着するためのターゲットとして役立つ。該ターゲットは次に遺伝子特異的配列を含む連結用オリゴヌクレオチド及び第2のユニークバーコード(図5B中のバーコードB)にハイブリッド形成される。このとき、バーコードBは、バーコードBに相補的な標識付き包括プローブにより検出され視覚化される。仲介(又は橋かけ又は連結用)オリゴヌクレオチドが使用される場合、バーコードプローブは、増幅されたRNA/核酸及び包括プローブの両方に対し相補的な配列を含む。
包括アレイ及び包括プローブは組合せた形でも別々にでも使用可能であり、プロセスを単純化し(検定の開発及び検定の性能)、検定のコストを削減するという利点を提供する。
生物試料
本発明の方法において使用するための発現済みRNA試料は、一定数の生物学的供給源から得られる。生物試料は、原核生物又は真核生物のいずれかに由来し得る。例えば、発現済みRNA試料は、動物、植物、酵素、真菌、細菌及びウイルス及び/又はウイルス感染した細胞といった生物学的供給源から得ることができる。任意には、発現済みRNA試料は、化合物ライブラリの1つ以上のメンバーで処理された細胞から収集可能である。本発明の状況下での生物試料は、脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばマウス、ラット、ハムスタ、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、霊長類、ヒト、及び非哺乳動物脊椎動物、例えば両生類、例えばカエル、ヒキガエル、及び魚例えばゼブラフィッシュ及びその他の科学的に有利な種、ならびに非脊椎動物種例えば線虫及び昆虫例えばショウジョウバエ(Drosophila)を含む。該発明は、任意の特定の生体又は細胞型からのRNA試料に制限されるように意図されていない。
最も頻繁には、生物学的供給源又は試料は、培養で成長させられる細胞系、すなわち、多細胞生体から得られた細胞の不死化された菌株である。該発明の方法において有用である細胞系は、例えば、過渡的及び/又は安定した遺伝子修飾などを受けた1つ以上の異なるタイプの組織又は腫瘍、一次細胞系、細胞から誘導された細胞系を含む。任意には、該細胞は、例えばマウス、ゲッ歯類、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、霊長類又はヒト細胞といった哺乳動物細胞である。代替的には、細胞は、例えばカエル、両生類又はゼブラフィッシュといったようなさまざまな魚から誘導された非哺乳動物由来のものであり得る。
本発明の方法で使用され得る細胞系としては、American Type Culture Collection(ワールドワイドウェブatcc.org)、World Data Center on Microorgnisms(ワールドワイドウェブwdcm.nig.ac.jp)、European Collection of Animal Cell Culture(ワールドワイドウェブecacc.org)及びJapanese Cancer Research Resources Bank(ワールドワイドウェブcallbank nihs.go.jp)といった細胞貯蔵機関から入手可能なものが含まれるがこれらに制限されるわけではない。これらの細胞系には、293、293Tet−Off、CHO−AA8Tet−Off、MCF7、MCF7Tet−Off、LNCap、T−5、BSC−1、BHK−21、Phinx−A、3T3、HeLa、PC3、DU145、ZR75−1、HS 578−T、DBT、Bos、CV1、L−2、RK13、HTTA、HepG2、BHK−Jurkat、Daudi、RAMOS、KG−1、K562、U937、HSB−2、HL−60、MDAHB231、C2C12、HTB−26、HTB−129、HPIC5、A−431、CRL−1573、3T3L1、Cama−1、J774A.1、HeLa229、PT−67、Cos7、OST7、HeLa−S、THP−1、及びNXAといった細胞系が含まれるがこれらに制限されるわけではない。付加的な細胞系は、例えば、クローンテック(Clonetics Corporation)(Walkersville、メリーランド州;ワールドワイドウェブclonetics.com)といったような細胞系プロバイダから得ることができる。任意には、発現済みRNA試料は、例えば癌、炎症、心臓血管疾患、感染性疾患、増殖性疾患、免疫系障害(例えば多発性硬化症、糖尿病、アレルギー)又は中枢神経系障害(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病)といった問題の特定の疾病部域の分析のために最適化された培養細胞から誘導される。
問題の細胞を培養状態に維持するためのさまざまな細胞培地については、The Handbook of Microbiological Media、アトラス(Atlas)及びパークス(Parks)(編)(1993年、CRC Press、Boca Raton、フロリダ州)内に記述されている。細菌及び動物の細胞培地に関与する技術について記述している参考文献としては、サンブルック(Sambrook)ら、Molecular Clorning−A Laboratory Manual(第2版)、第1〜3巻(1989年、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York);Current Protocols in Molecular Biology、F.M.アウスベル(Ausubel)ら、編、Current Protocols、John Wiley & Sons,Inc.、2002年までに補足);フレシュネー(Freshney)、Culture of Animal Cells,a Mannal of Basic Technique、第3版(1994年、Wiley−Liss、New York)及びその中の引用参考文献;ヒューマソン(Humason)、Animal Tissue Techniques、第4版(1979年、W.H.Freeman and Company、New York);及びリキアルデリ(Ricciardelli)ら、(1989年)In Vitro Cell Dev.Biol.25巻;1016−1024頁がある。植物細胞培養に関する情報はパイヌ(Pyne)らによるPlant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems(1992年、John Wiley & Sons,Inc.、New York、ニューヨーク州);ゲムボルク(Gamborg)及びフィリップス(Phillips)編によるPlant Cell,Tissue and Organ Culture: Fundamental Methods(1995年、Springer Lab Manual、Springer−Verlag、ベルリン)の中に見られるシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich,Inc)(St.Louis、ミズーリ州)(Sigma−LSRCCC)からの、Life Science Research Cell Culture Catalogue(1998年)及び同じくシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich,Inc)(St.Louis、ミズーリ州)(Sigma−PCCS)からのPlant Culture Catalogue及び追補(1997)といったような商業用文献の中でも入手可能である。
例えば、一次又は不死化された(又はその他の)細胞系がマスターフラスコ内で成長させられ、次にトリプシン処理され(接着性である場合)、96ウエルのプレートに移され、各ウエルを10〜10個の細胞/ウエルの密度で播種する。化学的処理に応答しての遺伝子発現プロファイルが求められている場合、選択した化学的作用物質は、一定の濃度範囲内で調製される(化合物又は化学的ライブラリなどでの処理に関するさらなる詳細は以下で提供されている)。細胞系にとって適切であるような回収及び成長時間の後、細胞を一定の時間、化学物質又は化合物に暴露する。好ましくは、化学物質又は化合物に対する暴露時間は、細胞の生存可能性に対し不利な影響を及ぼさない。好ましくは、検定には、一定範囲の化学的濃度及び暴露時間が含まれ、複製試料が含まれる。処理の後、標準的には、媒質は除去され、発現済みRNA試料が細胞から調製される。
上述の例では、細胞の培養のためにマスターフラスコと96ウエルのプレートが用いられるが、該発明は細胞培養のためのこれらの又はその他のいずれかのフォーマット、構成又は容器に制限されるよう意図されていない。当業者であれば、当該技術分野において多種多様な細胞培養器具が知られており細胞培養のために利用可能であるということを認識することだろう。実際、適切な培養条件の選択は、細胞型に左右されることになり、目前の実験の性質にも左右されることになる。例えば6、12、48、384及び1536ウエルのプレートといったその他のマルチウエルプレートを利用できるが、これらに制限されるわけではない。従来のフラスコを用いない培養フォーマット(例えばローラーボトル、プレート、バイオリアクタなど)ならびにマイクロタイターフォーマットも同様に考慮されている。
本発明の方法の中で利用された細胞系の選択は、研究目的、修飾対象の所望の生物活性、問題の疾病部域及び利用可能な該当する細胞系の数といったような一定数の要因に基づいて変動することになる。例えば潜在的な薬物ターゲットについて化合物ライブラリをスクリーニングするための付加的な考慮事項としては、さまざまな細胞型の表示(例えば癌阻害化合物のスクリーニングのためのさまざまな癌細胞型の使用)、類似の化合物の研究における以前の使用及び薬物治療に対する感度又は耐性が含まれるがこれらに制限されるわけではない。任意には、該方法は、高速大量処理マルチウエルフォーマットで実施される。
一部の状況においては、生化学又は遺伝学的経路内に1つ以上の修飾を有する細胞系が利用される。修飾された(娘)細胞系と親(例えば野生型)細胞系の間の差異は、例えばタンパク質又は核酸などの少なくとも1つの生体分子の「機能的活性」の変化から発生する可能性がある。生体分子の機能的活性の差異というのは、その分子の活性及び/又は濃度の改変を意味し、転写活性、翻訳活性、触媒活性、結合又はハイブリダイゼーション活性、安定性、豊富さ、輸送、区画化、分泌の変化又はこれらの組合せを含むが、これらに制限されるわけではない。1生体分子の機能的活性は、アデニル化、グリコシル化、リン酸化反応、アセチル化、メチル化、ユビキチン化などを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)その分子の1つ以上の化学的修飾の変化による影響を受ける可能性もある。
少なくとも1つの生体分子の活性又は濃度の改変は、同様に、親細胞系の処理の結果としてももたらされ得る。さらに、活性の改変は、処理に対する一時的応答であり得、そうでなければ、細胞生理機能に対する永久的変化を結果としてもたらす可能性がある(例えば突然変異又は不可逆的構造修飾)。改変されている特定の活性又は影響を受けている特定の細胞成長特性は、いかなる形であれ制限されない。例えば、細胞の処理又は修飾は、細胞成長刺激、細胞成長阻害、又はいずれかの特定の酵素活性又は生化学的経路の刺激又は阻害を結果としてもたらす可能性がある。一時的改変は、さまざまな化学的刺激及び阻害分子での処理によって、ならびに誘発可能な遺伝子特異的ノックイン及びノックダウン技術を利用するベクター及び/又は、細胞表面受容体リガンド、抗体、オリゴヌクレオチド、リボザイムなどといったタンパク質によって生成可能である。代替的には、細胞を、臭化エチジウムといったような挿入剤;エチルニトロソ尿素及びメチルメタンスルフォナートといったようなアルキル化剤;過酸化水素;UV照射及びガンマ照射といったDNA損傷作用物質で処理することもできる。酸化的ストレス剤の例としては、過酸化水素、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシル遊離ラジカル、ペルヒドロキシルラジカル、ペロキシルラジカル、アルコキシルラジカルなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。代謝性遮断及び/又はエネルギー遮断剤の例としては、アジドチミジン(AZT)、イオン(例えばCa++、K、Na)チャンネル遮断薬、α及びβアドレナリン受容体遮断薬、ヒスタミン遮断薬などが含まれる。化学的阻害剤の例としては、受容体拮抗薬及び阻害性代謝産物/異化生成物(例えば、今度はHMG−CoA還元酵素活性を阻害するその産物であるメバロナート(mavelonate))が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
一部のケースでは、任意には、化合物ライブラリでの処理に先立ち遺伝子発現に影響を及ぼす1つ以上の環境刺激に細胞系(又はその他の生物試料)を付すことが望まれる。例えば、細胞系は任意には、活性化又は抑制又は1つ以上の遺伝的又は生化学的経路を結果としてもたらす環境条件(又は環境条件の変化)に暴露され得る。環境刺激の例としては、成長培地及び栄養状態の変化、温度、pHの変化、酸素圧の変化、二酸化炭素圧の変化、ガス組成の変化、大気圧の変化又は例えば可視光、紫外線又は赤外線放射といった光に対する暴露が含まれる。代替的には、環境刺激には、例えば溶媒を含めた、遺伝子発現に直接的又は間接的に影響を及ぼす作用物質が含まれる。
或る種のケースにおいては、生物試料(例えば細胞、組織又は生体)内の1つ以上の遺伝子の発現は、試料を化合物ライブラリのメンバーで処理するのに先立ち、人工的に改変される。標準的には、かかる改変は、化合物ライブラリのメンバーにより誘発される生理学的効果についてその中でテストすべきモデル系としてのその生物試料の有用性を高めるために誘発される。
例えば、挿入突然変異、ゲノムDNAの欠失、ターゲティングされた遺伝子破壊、ゲノム又はエピソームベクターの導入などといったような永久的に生物試料のゲノムを改変する手順を使用して、例えば化合物ライブラリスクリーニングのためのモデルとしてのその有用性を増大させるやり方で生物試料内の1つ以上の遺伝子の発現を改変させることができる。類似の要領で、化合物ライブラリのメンバーで試料を処理する前に生物試料内の1つ以上の遺伝子の発現に影響を及ぼすために、転写遮断、アンチセンスDNA又はRNA、iRNA、リボザイム、DNA結合オリゴヌクレオチド及びジンクフィンガータンパク質といったようなDNA又はRNAと相互作用させることで発現を改変するプロセスを使用することが可能である。
例えば突然変異体又は変異体細胞系を生成するために、周知のさまざまな突然変異誘発手順により永久的遺伝子改変を生成することが可能である。ウイルスベースの突然変異技術、相同性組換え技術、遺伝子トラップ戦略、不正確複製戦略及び化学的突然変異誘発といったようなさまざまな突然変異誘発プロトコルが当該技術分野において利用可能であり記述されている。これらの手順は、本発明の方法において使用するため修飾済み細胞系を産生するべく別々に及び/又は組合わせた形で使用可能である。例えばアムステルダム(Amsterdam)ら、「A large−scale insertional mutagenesis screen in zebrafish」Genes Dev 1999年10月13日:2713−2724頁;カーター(Carter)(1986年)「Site−directed mutagenesis」Biochem.J.237号:1−7頁;クラメリ(Crameri)及びステンマー(Stemmer)(1995年)「Combinatorial multiple cassette mutagenesis creates all the permutations of mutant and wildtype cassettes」BioTechniques 18号:194−195頁;イナムダ(Inamdar)「Functional genomics the old−fashioned way:chemical mutagenesis in mice」Bioessays2001年2月23日:116−120頁;リン(Ling)ら、(1997年)「Approaches to DNA mutagenesis:an overview」Anal Biochem.254号(2):157−178頁;ナポリタノ(Napolitano)ら、「All three SOS−inducible DNA polymerases(Pol II、Pol IV and Pol V)are involved in induced mutagenesis」EMBO J.、2000年11月19日:6259−6265頁;及びラスコルブ(Rathkolb)ら、「Large−scale N−ethyl−N−nitrosourea mutagenesis of mice−from phenotypes to genes」Exp Physiol、2000年11月85号:635−44頁を参照のこと。さらに、突然変異誘発及び関連する技術のためのキットも数多くの商業的供給源から入手可能である(例えばストラタジーン(Stratagene)(La Jolla、カリフォルニア州;ワールドワイドウェブサイトstratagene.com/vectors/index2.htm)、BDバイオサイエンス・クロ−ンテック(BD Biosciences Clontech)(Palo Alto、カリフォルニア州);ワールドワイドウェブサイト clontech.com/retroviral/index.shtml)、及びInvitrogen(商標)社製のゲートウェイ(Gateways)(登録商標)クローニングシステム(Carlsbad、カリフォルニア州;ワールドワイドウェブサイト invitrogen.com)を参照のこと)。突然変異誘発を含む修飾された細胞系の生成において有用な分子生物学的技術について記述する一般的テキストとしては、ベルゲル(Berger)及びキンメル(Kimmel);サンブルック(Sambrook)ら、及びアウスベル(Ausubel)ら、全て前掲書中、が含まれる。修飾済み細胞系の生成に関するさらなる詳細は、例えば「応答メカニズム分析への系統的アプローチ(A SYSTEMATIC APPROACH TO MECHANISM−OF−RESPONSE ANALYSES)」という題のモンフォルテ(Monforte)によるPCT国際公開第02/08466号パンフレット及び「遺伝子機能の分析に対する系統的アプローチ(A SYSTEMATIC APPROACH TO THE ANALYSIS OF GENE FUNCTION)」という題のモンフォルテらによる国際公開第01/71023号パンフレットの中に見出すことができる。
代替的には、ターゲティングされた遺伝子突然変異を行なうための手順を利用して、化合物ライブラリのメンバーでの処理の前に細胞系を修飾することができる。例えば、細胞内のDNAレベルでの遺伝子又は遺伝子のための転写促進要素の欠失を含めた数多くのプロセスを介して、遺伝子がいずれかのタンパク質を発現するのを防止することができる(ノックアウト)。ノックアウト修飾には一般に、ゲノム内部での遺伝子の修飾が関与する(例えばゴンザレス(Gonzalez)(2001年)「The use of gene knockout mice to unravel the mechanisms of toxicity and chemical carcinogenesis」Toxicol Lett.120号:199−208頁)を参照のこと)。ノックアウトは、異型接合(例えば遺伝子の1つのコピーのみを不活性化する)又は同型接合(遺伝子の両方のコピーを不活性化する)のいずれかであり得る。マウスノックアウトの1つのデータベース例は、ワールドワイドウェブresearch.bmn.com(BioMedNetマウスノックアウト及び突然変異データベース)に見出すことができる。ノックアウト表現型は、同様に、全て該発明と共に使用できるアンチセンス遺伝子発現及びRNAi技術によっても模倣することができる。
任意には、突然変異誘発手順の後(又はそれと併用して)、所望の修飾を伴う細胞系が、標準的には、所望の要領で改変された細胞を同定し単離するため1つ以上の実験的技術を用いて選択される。例えば、該選択プロセスは、異なる環境、ストレス及び/又は刺激の下で存続するかつ/又は成長し続ける細胞;(例えば特定の細胞表面受容体を過剰発現している細胞を選別するためにフローサイトメトリを使用して)改変されたタンパク質レベルをもつ細胞を選別又は分離するために使用可能である特定のタンパク質の発現を増大又は減少させた細胞;及び同定され選択され得る改変された表現型をもつ細胞、例えば特定のサイクル段階で拘束された細胞、障壁を進攻する又は転位する能力を改変させた細胞、異なる形状を有するか又は異なる細胞型へと分化した又はしなかった細胞を同定することを含み得るがこれに制限されるわけではない。当業者にとっては、数多くの付加的な選択方法が周知であり、本発明の方法において使用するための細胞系を提供するために利用可能である。
発現済みRNA試料の単離
発現済みRNA試料は、一定数の周知の手順のいずれかを用いて生物試料から単離される。例えば、RNAを安定化するため任意には付加的な成分を含有するグアニジウムベースの溶解緩衝液の中で生物試料を溶解させることができる。本発明の一部の実施形態においては、溶解緩衝液は同様に、細胞培養からのRNAの回収及び安定性を監視するための対照として精製済みRNAを含有する。対照RNA種として使用するための精製されたRNA鋳型の例としては、プロメガコーポレーション(Promega Corporation)(Madison、ウイスコンシン州)からのカナマイシン陽性対照RNA、及びギブコ/ライフテクノロジー(Gibco/Life Technologies)(Rockville、メリーランド州)からの7.5kbのポリ(A)−テールドRNAが含まれる。溶解物を直ちに使用することも、又は例えば−80℃で凍結保存することもできる。
任意には、RNeasy(登録商標)精製プラットフォーム(キアゲン(Qiagen,Inc.);Valencia、カリフォルニア州)といったような自動化互換性ある96ウエルフォーマット内でのシリカベースの単離を用いて、細胞溶解物(又はその他のタイプの試料)から全RNAが精製される。代替的には、マイクロビーズ又はセルロースカラムに結合されたオリゴ−dTを用いる固相オリゴ−dT捕捉を使用してRNAが単離される。この方法は、ゲノムDNA及び全RNAからmRNAを単離し、mRNA−捕捉培地の逆転写酵素反応内への直接的移送を可能にするという付加的な利点を有する。例えばシリカコーティングされたビーズでの抽出といった(ただしこれに制限されるわけではない)付加的なRNA分離方法も同様に考慮されている。RNA単離及び調製のためのさらなる方法は周知であるか又は当業者が考案できるものである。
代替的には、本発明の方法は、粗製細胞溶解物を用いて実施され、RNAを単離する必要性を無くする。任意には、粗製試料に対してRNAse阻害物質が添加される。粗製細胞溶解物を使用する場合、ゲノムDNAが、試料に応じて例えば遺伝子といったターゲット配列の1つ以上のコピーを提供できるということを指摘しておくべきである。ターゲット配列が1つ以上の高度に発現された遺伝子から誘導されている状況においては、ゲノムDNAから発生するシグナルは、有意でない可能性がある。しかし非常に低レベルで発現された遺伝子については、適切なDNアーゼで試料を処理するか又はcDNA又は増幅産物のその後のプライミングのためスプライス部位をターゲティングするプライマを使用することによって、背景を除去することができる。例えば、2つのターゲット特異的プライマのうちの一方を、スプライス部位にまたがるように設計して、鋳型としてDNAを排除することができると思われる。もう1つの例としては、2つのターゲット特異的プライマは、スプライス部位をフランキングするように設計され、処理済みmRNA鋳型に比べて大きいDNA用PCR産物又はスプライシングを受けていないmRNA鋳型を生成する。当業者であれば、本発明の目的のための試料としての粗製抽出物の使用を容易にすることになるさまざまな専門化されたプライミングの応用を設計できることだろう。
本発明は、いずれかの特定のRNA単離方法、RNA単離用試薬、逆転写及び増幅(rtPCR)用RNA供給源、又は標準化又は陽性対照用RNA供給源にも制限されるべく意図されたものではない。当業者であれば、当該技術分野において既知のさまざまな代替的プロトコル、及び試薬が全て該発明と使用でき、さらに該発明の範囲から逸脱することなく使用可能であるということを認識することだろう。
発現済みRNA試料に対応する核酸
本発明の一部の実施形態においては、RNA試料から誘導された核酸は、論理的又は空間的にアレイ化された核酸プローブ(例えば固体支持体上に固定化された核酸プローブ)を含むアレイ、又はアレイのアレイに対して適用される。発現済みRNA試料を例えばガラスマイクロアレイスライドの表面上で直接アレイ(又はアレイのアレイ)に適用することが可能であるが、一般には、安定性を改善し取扱いを容易にするため、発現済みRNA試料に対応するDNA産物を利用することが望ましい。一部のケースでは、例えばサンブルック、アウスベルなどの中で記述されているような確立した手順に従って行なわれた試料中の発現済みRNAの逆転写により生成されたcDNA産物が検定される。より標準的には、発現済みRNA試料に対応するDNA産物は、検定の感度及びダイナミックレンジを改善するべく検定に暴露する前に増幅される。
発現済みRNA試料は、定着したオリゴ−dTプライマ又はランダム配列プライマといったような非特異的プライマを用いて逆転写され得る。このアプローチの1つの利点は、プライミング部位が特異的でない、すなわちこのRT反応の産物がその後のPCR増幅におけるあらゆる所望のターゲットのための鋳型として役立つことになるため、mRNAが「未分画」の品質を維持するという点にある。このアプローチの付加的な利点は、アーカイブすべき試料がRNAよりも分解に対する耐性がより高いDNAの形で保管されるという点にある。或る種の方法(例えばチェンシック(Chenchik)らに対する「3’末端に任意ヌクレオチド配列を有する全長cDNAを生成するための方法及び組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR GENERATING FULL−LENGTH cDNA HAVING ARBITRARY NUCLEOTIDE SEQUENCE AT THE 3’−END)」という題の米国特許第5,962,271号明細書に記述されているもの)及び例えばクローンテック(Palo Alto、カリフォルニア州)により供給される市販のキットにおいては、全長mRNAの逆転写は、オリゴ−dTプライマを用いて開始される。キャップスイッチングオリゴヌクレオチドプライマが、mRNA鋳型の終りに近づくにつれて発生期ストランドのための鋳型として役立つmRNAの5’キャップにアニールされる。キャップスイッチングオリゴヌクレオチドプライマは、それをキャップに結合できるようにする配列に加えて、その後の増幅反応内でプライマアニーリング部位として役立つポリヌクレオチド配列を含んでいる。
代替的には、RNAは、発現データが望まれる各々の遺伝子ターゲットについて、RNAに相補的なターゲット特異的プライマを用いてcDNAに転換される。逆転写方法には、当該技術分野において記述されている通り、熱安定性DNAポリメラーゼの使用も含まれる。一実施態様例としては、鳥類の骨髄芽細胞症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)又はマロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MoMLV−RT)が使用されるが、その他の酵素も考慮されている。RT反応においてターゲット特異的プライマを使用することの利点は、所望の(例えばターゲティングされた)配列のみが増幅され、その後、アレイに暴露されるか又任意には後続する増幅反応において使用されるという点にある。
発現済みRNA試料に対応するDNA産物の増幅は、米国特許第4,683,195号明細書(ムリス(Mullis)ら)、同第4,683,202号明細書(ムリス(Mullis))及び同第4,800,159号明細書(ムリス(Mullis)ら)及びPCR Protocols A Guide to Methods and Applications(イニス(Innis)ら編)アカデミックプレス(Academic Press Inc.)San Diego、カリフォルニア州(1990年)の中で詳述されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて達成可能である。同じくサンブルック(Sambrook)、アウスベル(Ausubel)も参照のこと。PCRは、ターゲット核酸の相対するストランドに相補的な配列を有し、プライマが集合するように位置づけられたプライマ対を利用する。プライマは、選択的ハイブリダイゼーションを可能にする条件の下で鋳型DNAとインキュベートされる。プライマは、2本鎖又は1本鎖形態で提供できるが、1本鎖が好ましい。ターゲット遺伝子配列が試料中に存在する場合、プライマはハイブリッド形成して、核酸:プライマ複合体を形成する。余剰のデオキシヌクレオシド三リン酸が熱安定性DNAポリメラーゼ例えばTaqポリメラーゼと共に添加される。ターゲット遺伝子:プライマ複合体が形成された場合、該ポリメラーゼはヌクレオチドを添加することによりターゲット遺伝子配列に沿ってプライマを拡張することになる。重合の後、新たに合成されたDNAストランドは反応混合物の温度を上昇させることによってその相補的鋳型ストランドから解離される。温度がその後低下した時点で、新しいプライマは、これら2つのDNAストランドの各々に結合することになり、プロセスは反復される。充分な量の増幅産物が生成されるまで各サイクル中に複製ラウンドを伴って、温度を上昇及び下降させる多重サイクルが実施される。
一部の実施形態においては、RNA試料中のRNAは逆転写されてcDNAを生成し、次に、一般に「rtPCR」と呼ばれるプロセスである逆転写とPCRを統合した単一の反応の中で増幅される。rtPCRを利用するプロトコルは、特定の遺伝子配列を選択的に増幅するために遺伝子特異的プライマを使用するか又は特定の配列又は配列モチーフの存在に基づきmRNAの全体的集団又は一部のサブセットを増幅するためにランダム又は半ランダムプライマを使用する(例えば「3’−末端に任意のヌクレオチド配列を有する全長cDNAを生成するための方法及び組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR GENERATING FULL−LENGTH cDNA HAVING ARBITRARY NUCLEOTIDE SEQUENCE AT THE 3’−END)」という題のチェンシック(Chenchik)らに対する米国特許第5,962,271号明細書を参照のこと)。米国特許第5,962,271号明細書に記されている技術は、非常に高いレベルで多重化する能力を提供する。
発現済みRNA試料に対応する核酸を増幅するための代替的方法としては、例えば、最初にコー(Kwoh)ら、(Proc.Natl.Acad.Sci.(1989年)86号(4):1173−7頁)、により記述されたもののような転写ベースの増幅システム(TAS)又は3SR(Self−Sustained Sequence Replication;グアテーリ(Guatelli)ら、(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.87号:1874−1878頁)又はNASBA(nucleic acid sequence based amplification;キービッツ(Kievits)ら、(1991年)J Virol Methods 35号(3):273−86頁)といったような等温転写ベースのシステムが含まれる。これらの方法においては、問題の1つ以上のmRNAターゲットは逆転写酵素によりcDNA内に複写される。cDNA合成のためのプライマには、鋳型と相同なプライマ領域に対し指定されたDNA依存性RNAポリメラーゼ5’のプロモータ配列が含まれる。一部の手順においては、当初合成されたcDNAストランドにより形成されたヘヤピンループ構造などを用いて、第2の相補的cDNAストランドが合成される(例えば、ファンゲルダー(Van Gelder)らに対する「単一のプライマープロモータ複合体を用いたターゲットポリヌクレオチド配列を増幅するためのプロセス」という題の米国特許第5,545,522号号明細書を参照のこと)。代替的には、第2のストランドが、全長mRNAの5’キャップ構造にアニールするオリゴヌクレオチドに鋳型スイッチングすることにより添加されたプライマ配列に相補的なプライマから合成されるチェンシック(Chenchik)らの米国特許第5,962,271号明細書に記述されているSMART(商標)増幅)。結果として得られたcDNA産物は次に、適切なRNAポリメラーゼによる多数の転写ラウンドのための鋳型として役立つことができる。cDNA鋳型の転写は、オリジナルのターゲットmRNAからのシグナルを迅速に増幅する。等温反応は、DNAにハイブリッド形成されたRNAを分解させるべくRNAseHを含み入れることにより、そのRNA鋳型からcDNAストランドを変性させる必要性を回避する。例えば米国特許第6,251,639号明細書中に記述されている方法を含む等温増幅を用いたその他の方法も同様に、本発明の状況下で有利に利用される。
代替的には、増幅は、欧州特許出願第320,328号明細書(バックマン(Backman)及びワング(Wang))で開示されているリガーゼ連鎖反応(LCR)を用いて又は、米国特許第4,883,750号明細書(ホイットレー(Whiteley)ら)で開示されているリガーゼ検出反応(LDR)によって達成される。LCRにおいては、互いに及びターゲットの両ストランド上の隣接配列に対し相補的である2つのプローブ対が調製される。各対に、それらが隣接するような形でターゲットの相対するストランドに結合することになる。2つのプローブ対の各々は、このとき連結して熱安定性リガーゼを用いて単一のユニットを形成することができる。PCRの場合と同様、温度サイクリングによって、結合したライゲート済みユニットはターゲットから解離し、その後両方の分子共、余剰のプローブ対のライゲーションのための「ターゲット配列」として役立ち指数的増幅を提供する。LDRはLCRに非常に類似している。この変形形態では、ターゲットの1本のストランドのみに相補的なオリゴヌクレオチドが使用され、オリジナルのターゲットDNAのみがハイブリダイゼーション鋳型として役立ち得ることから、ライゲーション産物の線形増幅を結果としてもたらす。それは、シグナルを増大させる目的で、ターゲットのPCR増幅の後に使用される。
付加的な適切な方法には、ストランド置換増幅(ウォーカー(Walker)ら(1992年)Nucleic Acids Res 20号;1691−1696頁)、修復連鎖反応(REF)、環状プローブ反応(REF)、橋かけ増幅(メータ(Mehta)及びシング(Singh)(1999年)Bio Techniqies26(6):1082−1086頁)を含む固相増幅、ローリングサークル増幅(クール(Kool)米国特許第5,714,320号明細書、cDNA末端の高速増幅(フローマン(Frohman)(1988年)Proc.Natl.Acad.Sci.85号:8998−9002頁)、「インベーダ検定」(グリフィン(Griffin)ら(1999年)Proc.Natl.Acad.Sci.96:6301−6306頁)及び例えば米国特許第5,914,230号及び同第6,365,346号明細書に記述されている通りの同時増幅及び検出方法が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
発現済みRNA試料の増幅は、発現産物のさまざまな集団を全体的に増幅するべくランダム又は半ランダムプライマを使用して実施可能であるか、そうでなければ、1つ以上の選択された発現産物を増幅するべくターゲット特異的プライマを用いて実施可能である。ターゲット特異的プライマを用いた発現産物の選択的増幅は、単一の産物を増幅する又は複数の産物を増幅する反応、すなわち多重増幅反応において実施可能である。単一の反応で1つの又は少数の発現産物が増幅される場合、望ましくは、多数の反応の産物をアレイ化のために組合せるか又はプールすることができる。同様にして、単一の発現済みRNA試料(すなわち単一の生物試料由来のもの)を、1つのアレイの2つ以上の場所で次にアレイ化される多数のターゲット特異的反応の中で増幅することができる。これらの変形形態は両方共、単一の物理的アレイで分析され得るプローブの数を増大させる。
多重増幅戦略
本発明の方法の1実施形態には、ターゲット特異的(例えば遺伝子特異的)及び汎用プライマの組合せ利用により可能となるさまざまなPCR多重化戦略の使用が関与する。これらの手順は、1つ以上の発現済みRNA種に対応する1本鎖又は2本鎖DNA鋳型の逆転写とそれに続くPCRにおける増幅が関与するRT−PCR検定に対する変形形態である。多重PCR戦略に関する付加的な詳細は、例えばローレイン(Loehrein)らによるPCT国際公開第01/55454号パンフレット及びチェンシック(Chenchik)らに対する米国特許第5,962,271号明細書の中に見出される。
複数のターゲット配列の多重増幅には標準的に、複数のターゲット特異的プライマ(すなわち、逆転写されたcDNAターゲット配列の少なくとも1つのストランドに相補的なプライマ)及び1つ以上の汎用プライマとこの複数のターゲット配列を組合せて複数の増幅産物を産生することが関与する。ターゲット配列の多重セットは、任意には約2個と約100個の間のターゲットを含む。本発明の1実施形態においては、多重反応は少なくとも5個のターゲット配列を含むが、好ましくは少なくとも10個のターゲット又は少なくとも15個のターゲットを含む。はるかに大きい数(例えば約20、約50、約75以上)の多重鎖も同様に考慮されている。
本発明の方法の1実施形態においては、多重セット内の増幅ターゲットの少なくとも1つは、試料に対し内因性でありかつかなり一定の安定した発現レベル(例えば「ハウスキーピング」遺伝子、β−アクチン)を細胞処理又は化合物か刺激に対する細胞暴露の間に呈することが独立して示されてきた転写物である。この内因性基準配列からのシグナルは、その他の遺伝子ターゲットのシグナルを相対的発現レベルに転換するための対照を提供する。任意には、互いに対する対照として役立つべく多重化された増幅の中に、比較的変動しない発現レベルをもつ複数の対照mRNAターゲット/基準配列を含み入れることができる。代替的には、例えば溶解試薬と共に、多重反応又は細胞に対し外因性の精製済みRNA種が規定の量添加される。例えば前述のカナマイシン陽性対照RNA又は7.5kbのポリ(A)−テールトRNAといったほぼあらゆる精製済みの無傷のRNA種を使用することができる。この外因的に添加された増幅ターゲットは、細胞培養からのRNAの回収及び安定性を監視する方法を提供する。これは同様に、試料mRNAから得られたシグナルを相対的発現レベルへと転換するための外因性基準シグナルとしても役立ち得る。さらにもう1つの実施形態においては、試料mRNAターゲットから得たシグナルを相対的発現レベルに転換するための外因性基準ターゲットを提供するべく、規定量の精製済みDNA種がPCRに添加される。
本発明の1実施形態においては、多重セットを含むターゲットがひとたび決定された時点で、ターゲット特異的及び汎用プライマを両方共含む各ターゲット配列に相補的なプライマ対が設計される。これは、OLIGO(モレキュラー・バイオロジー・インサイツ(Molecular Biology Insights,Inc.、コロラド州))、ジーンランナー(Gene Runner)(ヘイスティング・ソフトウエア(Hastings Software Inc.ニューヨーク州))、又はプライマー3(Primer3)(ホワイトヘッド・インスティチュート(The Whitehead Institute)、マサチューセッツ州)といったようなプライマ配列を設計する複数のソフトウェア製品のいずれかを用いて達成できる。遺伝子特異的プライマ(GSP)には、少なくとも2つの部分が含まれる。第1の部分には、選択された「汎用配列」に相補的な領域が含まれる。汎用配列は、同じプライマ(例えばUP)を使用する一方で多数のターゲット(発散配列をもつ)の増幅を可能にするために利用される。汎用配列は、プライマの中にのみ含まれ、好ましくは、テスト対象の試料により提供されるいかなる核酸(又はその補体)の中にも存在しない。該配列の3’領域内部のGSPの第2の部分が、複数の指定されたターゲット配列の1つと相補的であり、それとハイブリッド形成することになる。上述の例では単一の汎用プライマが記述されているものの、本発明の方法では、異なる又は独自の配列は標識を有する多数の汎用プライマを利用することが可能である。単一のUPが使用される場合、汎用配列は全てのGSP内で同じとなる。UP対を使用すべきである場合、該汎用配列はGSPの順方向及び逆方向プライマにおいて異なるものとなる。該UPは、同様に、蛍光発色団(chromaphore)といったような、プライマのうちの少なくとも1つの上の検出可能な標識を含有していてもよい。
ターゲット特異的及び汎用配列は共に、安定した特異的2重鎖を形成するのに充分な長さ及び配列複雑度を有し、ターゲット遺伝子の増幅及び検出を可能にする。増幅の早期ラウンドにおいて、複製は主としてGSPによりプライミングされる。第1ラウンドは、増幅産物の5’領域に汎用配列を添加することになる。第2サイクルは、相補的ストランドの3’領域の中で汎用配列に相補的な配列を生成して、汎用プライマだけによって増幅され得る鋳型を作り上げることになる。任意には、該反応は、制限量の各GSP及びモル余剰のUPを含有し、かくしてその相補的配列が鋳型内でひとたび確立された時点でUPが一般に複製をプライミングすることになるように設計される。GSPに比べたUPのモル余剰は、約5:1から約100:1の範囲であり得る;任意には、該反応は各GSPの量に比べ約10:1のモル余剰のUPを利用する。全てのGSPが同じ汎用配列を含有することから、同じ汎用プライマは、多重鎖内の全てのターゲットを増幅し、異なるプライマから増幅の結果としての量的変動を無くする。
鋳型は当初1本鎖mRNA分子であるが、場合によっては、大部分がその後のサイクルにおいて鋳型として役立つDNA増幅産物である。ターゲット特異的逆方向プライマ又は発現済みRNA試料の成分の全体的逆転写を結果としてもたらすランダム又は縮重プライマからの逆転写酵素重合の作用によって、伝令RNAがcDNAに転換される。1本鎖cDNA鋳型が合成された場合、cDNAの第2ストランドを生成するため熱安定性ポリメラーゼと共にターゲット特異的順方向プライマ及び汎用順方向及び逆方向プライマが添加され、その後PCR増幅が起こる。UPは、その相補的汎用配列が遺伝子特異的プライマ(GSP)の5’領域を横断する複製を通して反対側のストランドに添加された後でのみ、ターゲットDNAにアニールできる。
各プライマとその結合パートナ(すなわちターゲット配列又は汎用配列の間)の相補的配列の長さは、PCRのために用いられるアニーリング温度で複合試料内のそのターゲットにのみプライマがハイブリッド形成できるように充分なものでなくてはならない。例えば、プライマのターゲット特異的及び汎用の両方の領域について、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25個以上ヌクレオチドの相補的配列が好ましい。各々の相補的領域の特に好ましい長さは、約20塩基であり、これはプライマとターゲットの間の安定した特異的ハイブリッドの形成を促進することになる。
任意には、プライマは、汎用配列のアニーリング温度がターゲット特異的配列のものよりも高く/大きくなるように設計される。これらのプライマを利用する方法にはさらに、最初の数ラウンドの増幅の後、反応のアニーリング温度を上昇させるステップが含まれる。反応温度のこの上昇は、GSPによる試料核酸のさらなる増幅を抑制し、UPによる増幅を駆動する。想定される利用分野に応じて、当業者は、ターゲット配列に向かってのプライマの選択性の可変的度合を達成するべく、変動するハイブリダイゼーション条件を利用することができる。例えば、プライマハイブリダイゼーションの位置又はハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変動させることで、遺伝子ファミリ内の発散度を顕示することができる。
任意には、各々の候補プライマが多重反応で使用されるその他のプライマと相容性があることが示されている又は証明されている。好ましい実施形態においては、各々のターゲット特異的プライマ対は、多重鎖のターゲットの全てを最低限含む試料からそしてより好ましくは粗製RNA混合物からの予測されたサイズの単一の増幅産物を産生する。好ましくは、その対応するプライマによる各々個々のターゲットの増幅は、多重鎖内のその他のあらゆるプライマの内含により阻害されない。プライマのいずれも、個別であれ組合せた形であれ、偽の産物を産生してはならない。この問題は、過度の実験の必要なく、当業者により容易に対処される。
オリゴヌクレオチドプライマは標準的に、ホスホルアミダイト法により調製される。この自動化された固相手順では、各々のヌクレオチドは、成長するオリゴヌクレオチド鎖の5’末端に個別に付加され、このオリゴヌクレオチド鎖はそれ自体固体支持体の3’末端で付着される。付加されたヌクレオチドは5’位置でジメチトキシトリチル(「DMT」)基により重合から保護されている3価の3’−ホスホルアミダイトの形をしている。塩基により誘発されたホスホルアミダイトのカップリングの後、5価のホスホトリエステル中間体及びDMT除去を与えるための穏やかな酸化がオリゴヌクレオチド延長のための新たな部位を提供する。これらの合成は例えば、パーキンエルマー(Perkin Elmer)/アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)部門DNA合成装置上で実施可能である。オリゴヌクレオチドプライマは、このとき固体支持体から分割され、ホスホジエステル及び環外アミノ基が水酸化アンモニウムで脱保護される。
プライマアニーリング効率の変動の除去
プライマ長及び配列の変動は、プライマがそのターゲットにアニールし複製をプライミングする効率に対し大きな衝撃をもち得る。各産物が独特のプライマ対により増幅される標準的な多重化反応においては、増幅された産物の相対量は、アニーリング効率の差に起因してターゲットの相対量から有意に改変され得る。ターゲット特異的プライマ及び汎用プライマの使用を統合する本発明の方法の実施形態は、この偏向を無くし、相対的mRNAレベルを正確に反映する増幅産物を産生する。
強いシグナルの減衰
多重反応に含み入れられるターゲットセットは一般に全て、遺伝子発現の計量が正確になるように用いられる検出プラットフォームのダイナミックレンジ内のシグナル強度を生み出す。一部の実施形態では、多重検定の中に高度に発現された遺伝子(すなわち、その他の遺伝子よりもさらに高度に発現されている遺伝子)を内含することが望ましい又は必要である可能性がある。しかしながら、高度に発現された遺伝子は、この遺伝子のそのシグナルが減衰されない場合、非常に低いレベルで発現されたその他の遺伝子についての計量と干渉する可能性がある。当業者であれば、全て該発明と共に使用できるものであるこの技術的問題を回避するためのさまざまな方法が存在することを充分に承知している。多重増幅反応の中に高度に転写された遺伝子を取込むという技術的問題を扱うための何らかの特別な戦略に該発明を制限することは意図されていない。
一部の実施形態では、この技術的問題に対する最も正攻法である解決策は、単にrtPCR増幅ステップ内のあの豊富な転写物のための増幅プライマ(例えば遺伝子特異的プライマ)の濃度を制限することである。代替的には、その他の技術も同様に知られており、該発明は、多重化されたセットの計量の精度に影響を及ぼすことなく該セットの中に内含され得るような形で増幅反応中に比較的豊富なターゲットのシグナルを減衰させるための方法を教示している。
例えば、任意にはプライマの3’末端のポリメラーゼ拡張を遮断する増幅プライマが使用される。1つの好ましい実施形態は、ホスファート基の添加によるオリゴヌクレオチドプライマの3’−ヒドロキシルの修飾である。もう1つの好ましい実施形態は、3’−3’連結を介した末端ヌクレオチドの付着である。当業者であれば、この目的で使用できるその他の化学的構造又は修飾を考えつくことができる。きわめて豊富なターゲットのための修飾された及び対応する未修飾のプライマは、多重鎖のその他のターゲットのダイナミックレンジ内に入るような形でそのターゲットのシグナルを低減させるように経験的に決定された比率で混合される。好ましくは、逆方向ターゲット特異的プライマが修飾され、かくして、逆転写酵素内に作り出される鋳型の量を削減することによってシグナルを減衰させる。
シグナル減衰のためのもう1つの実施形態は、ターゲット特異的配列を含むものの汎用プライマ配列は全く含んでいないターゲット特異的プライマの使用を必要とする。この短縮されたプライマ(汎用配列が欠如している)及び5’領域内に汎用配列を含有する対応するプライマは、そのとき多重鎖のその他のターゲットのダイナミックレンジ内に入るような形で、そのターゲットのシグナルを低減させるように経験的に決定された比率で混合される。
rtPCR産物の精製
汚染物質及び塩の存在に起因して、アレイ上への被着に先立ち、発現済みRNA試料(例えばrtPCR産物)に対応する核酸の集団を「精製する」ことが望ましい場合が多い。PCR産物といったような核酸を精製することに対する数多くのアプローチが存在しているが、主要な2つの高速大量処理アプローチは、マイクロタイタープレートフォーマットにおけるろ過及び磁気ビーズの捕捉及び洗浄である。例えば、本発明の状況下では、ミリポア・モンタージュ(Millipore Montage)PCR96DNA精製プレート(及びこのプレートの匹敵する384ウエルバージョン)が有利に利用される。使用プロトコルには、PCR産物の単一の1ステップ真空ろ過と溶出が関与しており、ビオメック・マルチメック(Biomek Multimek)システムといったような自動化されたシステムと互換性がある。代替的には、磁気ビーズの捕捉及び洗浄アプローチを自動プラットフォームのために適合させることができる。該発明の核酸(例えば増幅済みrtPCR産物)を精製するためにいずれかの特定の技術に該発明を制限することは意図されていない。当業者であれば、全て該発明と共に使用できる、核酸精製用のさまざまな代替的技術を充分に承知している。
アレイフォーマット
RNA、cDNA又は増幅産物(例えば増幅済みrtPCR産物)のいずれであろうと、発現済みRNA試料に対応する核酸セットが、一般に、核酸プローブの固定化され、空間的又は論理的にアレイ化された集合(一般にアレイ又はマイクロアレイと呼ばれる)に適用(すなわちハイブリッド形成)され、ここで該アレイは、発現済みRNA試料(又はその増幅産物)のセットのメンバーに相補的である核酸プローブを含んでいる。核酸アレイを用いた高速大量処理発現分析を実施するための数多くの技術的プラットフォームが利用可能である。共通のアレイフォーマットは、液相及び固相の両方のアレイを含んでいる。例えば、核酸のハイブリダイゼーションなどのための液相アレイを利用する検定は、マルチウエル又はマイクロタイタープレート内で実施可能である。96、384又は1536ウエルを伴うマイクロタイタープレートが広く利用可能であり、さらに数多くのウエル、例えば3456及び9600のウエルを使用することもできる。一般に、マイクロタイタープレートの選択は、試料調製及び分析に用いられるロボット利用の取扱い及び投入システムなどの方法及び機器により決定される。システム例としては、例えば、ベックマン−クールター(Beckman−Coulter Inc)(Fullerton、カリフォルニア州)製のORCA(商標)システム及びザイマーク(Zymark Corporation)(Hopkinton、マサチューセッツ州)製のザイメイト(Zymate)システムが含まれる。
代替的には、さまざまな固相アレイを利用して、本発明の状況下で発現プロファイルを決定することが有利にも可能である。フォーマット例としては、膜又はフィルタアレイ(例えばニトロセルロース、ナイロン)、ピンアレイ、及びビードアレイ(例えば液体「スラリー」)が含まれる。標準的には、発現されたRNA試料に対応する核酸が固体支持体に対し例えば直接的又は間接的架橋によって固定化される。基本的には、特定の発現検定を実施するのに必要な試薬及び条件に耐える能力をもつあらゆる固体支持体を利用することができる。例えば、官能化されたガラス、シリコン、二酸化ケイ素、改質シリコン、さまざまな重合体のいずれか、例えば(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、ポリカルボナート又はそれらの組合せが全て、固相アレイのための基板として役立ち得る。これらの材料のコーティングされた形態(例えばポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリチミジン又はその他の官能化によりコーティングされたガラス)は、非共有又は共有結合の改善を導く。基板は、単一の隣接表面、例えばプレート又は多数の個別的表面例えばエッチングされたプレート、フィルター、又は光ファイバ端部であり得る。代替的には、アレイは、一定数の色分けスキーム(例えばルミネックス(Luminex Corporation)、Austin、テキサス州が製造する製品を参照のこと)及びフローサイトメトリ又は一つの表面上にビーズを物理的に捕捉するための手段(例えば、イリュミナ(Illumina,Inc.)、San Diego、カリフォルニア州;及びリンクス・セラプティックス(Lynx Therapeutics,Inc.)Hayward、カリフォルニア州)が製造する製品を参照)を介して個別的に同定され得る一連のビーズで構成され得る。これらのアレイの新規作製及び使用のための技術は、当業者にとって既知である。
好ましい実施形態においては、アレイは、「チップ」又は「スライド」、例えばガラスマイクロアレイスライドといった以上で規定した材料の1つから成る。最も一般的には、発現済みRNA試料に対応する核酸試料はチップ又はスライド上に「スポッティング」などで被着させられ、中で(例えば異なる生物試料から誘導される)異なる発現済みRNA試料に対応する各々の全く異なる核酸集団にマイクロアレイ表面上の一意的場所が割当てられている空間的アレイを生成する。
基板対する核酸試料の適用は、自動化された装置を用いて、又は例えば整列用装置(ガラススライド上に最高768個の6nlのスポットを被着しうるキセノポア(Xenopore))と共に例えばマルチピン、例えば32ピン工具を用いて手作業で、実施可能である。基板に対し核酸を連結させる方法についての詳しい論述は、例えば、1998年11月17日付けのチー(Chee)らに対する米国特許第5,837,832号明細書「生物学的チップ上の核酸プローブアレイ(Arrays of Nucleic Acid Probes on Biological Chips)」、2000年7月11日付けのデイル(Dale)に対する米国特許第6,087,112号明細書「修飾されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド組成物を伴うアレイ(Arrays with Modified Oligonucleotide and Polynucleotide Compositions)」;1993年6月1日付けのバール(Bahl)ら、に対する米国特許第5,215,882号明細書「核酸ハイブリダイゼーション検定で使用するための固体基質上での核酸不動化方法(Method of Immobilizing Nucleic Acid on a Solid Substrate for Use in Nucleic Acid Hybridization Assays)」;1998年1月13日付けのカトー(Kato)に対する米国特許第5,707,807号明細書「発現済み遺伝子分析用の分子インデキシング(Molecular Indexing for Expressed Gene Analysis」; 1998年9月15日付けのブラウン(Brown)ら、に対する米国特許第5,807,522号明細書「生物試料マイクロアレイの製造方法(Methods for Fabricating Microarrays of Biological Samples)」; 1999年9月28日付けのギャンブル(Gamble)ら、に対する米国特許第5,958,342号明細書「ジェット液滴装置(Jet Droplet Device)」;1999年11月30日付けのチェンシック(Chenchik)らに対する米国特許第5,994,076号明細書「示差的発現の検定方法(Methods of Assaying Differential Expression)」;1999年12月21日付けのワン(Wang)に対する米国特許第6,004,755号明細書「定量的マイクロアレイハイブリダイゼーション検定(Quantitative Microarray Hybridization Assays)」;2000年4月11日付けのブラッドレー(Bradley)ら、に対する米国特許第6,048,695号明細書「化学的に修飾された核酸及び核酸を固体支持体にカップリングさせる方法(Chemically Modified Nucleic Acids and Methods for Coupling Nucleic Acids to Solid Support)」;2000年5月9日付けのカーム(Kamb)ら、に対する米国特許第6,060,240号明細書「複合混合物中の核酸相対量を測定する方法及びそこからの特定の配列の取出し(Methods for Measuring Relative Amounts of Nucleic Acids in a Complex Mixture and Retreival of Specific Sequences Therefrom)」;2000年7月18日付けのカトー(Kato)に対する米国特許第6,090,556号明細書「遺伝子発現の定量的判定方法(Method for Quantitatively Determining the Expression of a Gene)」;2000年3月21日付けのロックハート(Lockhart)らに対する米国特許第6,040,138号明細書「高密度オリゴヌクレオチドアレイに対するハイブリダイゼーションによる発現監視(Expression Monitoring by Hybridization to High Density Oligonucleotide Arrays)」;NHGRIマイクロアレイ・プロジェクト・プロトコル(NHGRI Microarray Project Protocols):ワールドワイドウェブサイトnhgri.nih.gov/DIR/Microarray/protocols.html;マグレガー、P(MacGregor、P)、マイクロアレイプロトコル(Microarray protocol):ワールドワイドウェブサイトuhnres.utoronto.caservices/microarray/download/protocols/procol_edward.pdf;及びヘッジ(Hedge)ら、(2000年)Biotechniques 29号:548−562頁、の中に見出される。
ハイブリッド形成すべきプローブの数(すなわち分析されるべき遺伝子又は配列の数)が増大するにつれて、マイクロアレイの複製又はコピーを製造することが往々にして望ましい。以下では、例えば生物試料からのRNA発現産物に対応する核酸のコピーを包含する複製マイクロアレイを産生するための、自動化可能なアレイ複写フォーマットの一例を示す。例えば、確定配列プローブの反復的ハイブリダイゼーション及び洗浄がオリジナルのアレイからの核酸の回収又は検出を問題あるものにしている場合(例えば実施すべきプロセスがオリジナルの核酸を破壊するか又はシグナルを減衰する場合)などは、デュプリケートアレイ、マスターアレイ、増幅済みアレイなどを生成するため自動フォーマットでアレイをコピーすることが可能である。マスターアレイ、反応混合物アレイ又はそれらの任意のデュプリケートからコピーを作ることができる。
例えば、核酸(例えば生物学的供給源からの複数の発現済みRNA試料)を1つ以上のマスターマルチウエルプレート内に送り出し、標準的には増幅済み核酸のマスターアレイを(例えばPCRにより)生成して増幅産物アレイを生成するべく増幅させることが可能である。このときアレイコピーシステムは、1つ以上のマスターマルチウエルプレートのウエルから1つ以上のコピーマルチウエルプレートまでアリコートを移送する。標準的には、流体取扱いシステムが目的の場所に複写済みアレイメンバーを被着させることになるが、非流体ベースのメンバー輸送(例えば固体又は気体相での移送)も同じく実施可能である。
核酸集団からマスターアレイ及びデュプリケートアレイの両方を生成するためのアレイ化技術には、さまざまな方法のうちのいずれかが関与しうる。例えば、固相アレイを(例えば液相アレイのコピーとしてか又はオリジナウアレイとして)形成する場合、集団のメンバーを固体表面上で凍結乾燥又は焼成して固相アレイすることもでき、そうでなければ、固体表面に対し化学的にカップリング又はプリンティング(例えばインクジェットプリント又はチップマスキング及び光活性化合成方法を用いて)することができる。
発現プロファイリング
分析のために選択される複数のプローブ(例えば遺伝子セット又は遺伝子産物)は、例えば既知の科学的文献を再考することによってか又は実証的研究を実施することにより選択可能である。1実施形態においては、プローブは、(a)生物試料内で検出可能なレベルで発現されておりかつ(b)1つ以上のメンバー組成物に対する暴露の結果として変化する確率の高い遺伝子(又は遺伝子産物)の中から選択される。2つのタイプの遺伝子(又はそのそれぞれの遺伝子産物)が標準的に遺伝的応答プロファイルの生成中に監視される。すなわち、経験的応答者である遺伝子(すなわちマーカー遺伝子)と問題の経路又は疾病部域に関与するものとして知られているか又は疑いがもたれている遺伝子(すなわち疾病関連遺伝子)である。任意には、化合物又は化学物質セット内の少なくとも1つの組成物による影響を受けるものとして知られている1つ以上の遺伝子が監視される(例えば正の対照)。
標準的には、中程度の数〜多数の遺伝子(すなわち発現済みRNA)が分析のため、すなわち発現(又は応答)プロファイリングのために選択される。かかる遺伝子セットは一般的には少なくとも3個のポリヌクレオチド配列、より一般的には約10〜約20個の配列、往々にして約50個の配列、時として約100そして場合によっては約1000個ものポリヌクレオチド配列、又は例えば異なる又は全く異なる遺伝子に対応するより個別のポリヌクレオチドを含んでいる。本発明の方法において監視可能な核酸配列には、GenBank(登録商標)データベース中に国立生化学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(ワールドワイドウェブサイトncbi.nlm.nih.gov上)と共に列挙されているもの、及びその他の公共の又は商業的に入手可能なデータベース(例えば、NCBI EST 配列データベース、EMBLヌクレオチド核酸配列データベース(EMBL Nucleotide Sequence Database);インサイト(Incyte)(Palo Alto、カリフォルニア州)のLifeSeq(商標)データベース及びセレラ(Celera)(ロックビル(Rockville)メリーランド州)「ディスカバリーシステム(Discovery System)(商標)」データベースなど)によって提供される配列が含まれるが、これらに制限されるわけではない。例えば本発明の方法に従って監視可能な核酸(例えば遺伝子応答プロファイルの一部として)には、シグナリングタンパク質、調節タンパク質、経路特異的タンパク質、受容タンパク質及び1つ以上の生化学経路に関与するその他のタンパク質が含まれるが、これらに限定されるわけではない核酸コードタンパク質が含まれる。
遺伝子発現データの分析
発現済みRNA試料内の遺伝子発現プロファイルは、定性的及び定量的測定のいずれか(又は両方)により評価可能である。(RNA又はタンパク質産物としての)遺伝子発現を評価するための上述の技術のうちのいくつかは、事実上大部分が定性的であるデータを生み出す。すなわち、該方法は、発現の量的面に関して有意な情報を提供することなく全く異なる様式に発現を分類する発現の差異を検出する。例えば、候補遺伝子の発現の有無すなわち発現のオン/オフプロファイルを検出する場合、その技術は定性的技術として記述することができる。代替的には、定性的技術は、遺伝子産物の異なる対立遺伝子又は変異体の存在(及び/又は不在)を測定する。
これとは対照的に、一部の方法は、定量的に発現を特徴づけするデータを提供する。すなわち、該方法は、例えば0〜5、1〜10、+〜+++、グレード1〜グレード5、グレードa〜zなどの目盛といった数字目盛で発現を関係づけする。提供されている数値及び記号例は任意であり、遺伝子発現の量的差異を記述するために本発明の状況下であらゆる刻み目盛(又は刻み目盛のあらゆる記号表現)を利用することができる、ということが理解されることだろう。標準的には、かかる方法は、発現の相対的増加又は減少に対応する情報を生成する。
(例えば疾病関連遺伝子といったような遺伝子に対応する)確定配列プローブとアレイ化された核酸試料の間のハイブリダイゼーションに対応するシグナルを評価するためには、定量的又は定性的のいずれかの発現データを生成するあらゆる方法が適している。一部の実施形態においては、その他の発現産物及び/又は対照配列との関係における1つの遺伝子の発現レベルを定量化することが有用である。1つのアレイ上の発現産物間ならびに物理的アレイ間の相対的発現及びハイブリダイゼーションレベルを決定する1つの適切な広く応用可能な方法は、問題の1つ以上の遺伝子の発現をハウスキーピング遺伝子(例えばHSP70、β−アクチンなど)といったような対照遺伝子の発現と比較することにある。問題の遺伝子に特異的な1つ以上の確定配列プローブが、選択されたハウスキーピング遺伝子に特異的なプローブと共に、ハイブリッド形成させられる。各プローブに対するハイブリダイゼーションが検出され定量化される。その後、問題の遺伝子に対応するハイブリダイゼーションシグナルは、該ハウスキーピング遺伝子についてのハイブリダイゼーションシグナルと比較される。このとき、試料内部及び試料間でほぼ恒常であるものと予想されているハウスキーピング遺伝子の発現との関係において、発現を表現することができる。
観察された発現データ、例えば生物試料の1つ以上の処理に応答した発現プロファイルの変化が有意なものであり、単なる実験ノイズや集団の不均一性の産物ではないことを確かめるために、各々の生物試料中の各々の遺伝的及び表現型終点について確率分布の推定を構築することができる。推定上の集団分布の構築には、各処理について多数の独立した実験を実施することが関与する。たとえば、全ての実験がデュプリケート、トリプリケート、クァドルプリケート等々で実施される。
データの分析には、変化のタイプ、変化の方向、変化内の曲線の形状、変化のタイミング及び変化の振幅に基づいて、生物試料の1つ以上の処理の結果としてもたらされる応答及び変化などのハイブリダイゼーションシグナルから外挿されるような測定上の発現を評価するための一定数の統計学的手段を使用することが関与する。
1つ以上の関係パターンについて多数の変数を同時に検討するためには、主成分分析(PCA)、要因分析、クラスタ分析、n次元分析、差額分析、多次元スケーリング、判別分析及び対応分析などといった多変量統計を利用することができる(全体的再考のためには、チャトフィールド(Chatfield)及びコリンス(Collins)、「Introduction to Multivariate Analysis」、1980年、Chapman and Hall刊、New York;及びホスクルドソン・アグナー(Hoeskuldsson Agnar)、「Predictions Methods in Science and Technology」、1996年、John Wiley and Sons刊、New York)を参照のこと)。品質管理、プロセス最適化及び処方決定を含めたこれらの多数の因子が関与するさまざまな利用分野のために、多変量データ解析が使用される。該解析は、収集したデータ内に何らかの傾向が存在するか否か、測定された特性又は応答が互いに関係するか否か及び一定の与えられた状況下(例えば疾病状態)でどの特性が最も適切かを決定するために使用可能である。統計学的分析のためのソフトウェアが一般に、例えばパーテック(Partek Inc.)(St.Peters、ミズーリ州; www.partek.com参照)から入手可能である。
変量解析の1つの一般的な方法は、主成分解析(PCA、Karhunen−Loeve拡張又はEigen−XY解析としても知られている)である。「主成分」と呼ばれるより少ない数の未相関変数へと多数の(場合によって)相関された変数を変換するために、PCAを使用することができる。PCAといったような多変量解析は、当業者にとっては既知であり、例えばロヴァイス(Roweis)及びソウル(Saul)(2000年)Science290号:2323−2326頁及びテネンボウム(Tenenbaum)ら、(2000年)Science290号:2319−2322頁の中に見出すことができる。例えば多変量解析を含めた複数のデータ空間構築・解析方法が利用可能である。例えばヒンチリッフ(Hinchliffe)(1996年)「Modeling Molecular Structures」、John Wiley and Sons、NY、ニューヨーク州;ギバス(Gibas)及びジャムベック(Jambeck)(2001年)「Bioinformatics Computer Skills」、O’Reilly、Sebastopol、カリフォルニア州;ペヴズナー(Pevzner)(2000年)「Computational Molecular Biology and Algorithmic Approach」、The MIT Press、Cambridge、マサチューセッツ州;ダーバン(Durbin)ら(1998年)「Biological Sequence Analysis:Probabilistic Models of Proteins and Nucleic Acids」、Cambridge University Press、Cambridge、英国;ラシディ(Rashidi)及びビューラー(Buehler)(2000年)「Bioinformatic Basics:Applications in Biological Science and Medicine」、CRC Press LLC、Boca Raton、フロリダ州;及びマウント(Mount)(2001年)「Bioinformatics : Sequence and Genome Analysis」、Cold Spring Harbor Press、New Yorkを参照のこと。
多数の生物試料からの発現データを、多変量統計を用いてグループ分け又は、クラスタ化することができる。各々の異なる刺激(処理)及び観察(検出)実験のためのクラスタが比較され、二次的相関/非相関セットが作られる。これらの異なる相関セットに基づいて、異なる遺伝的要素の相関的関係ならびにそれらが一斉に作用し得る方法を確立することのできるネットワークマップを作り上げることが可能である。さらに、図表表現を用いて、データを視覚化することが可能である。かくして、遺伝的に関係する細胞系群内部の異なる生化学及び遺伝的要素が示す時間的変化を、一定の与えられた環境内での細胞の機能を反映する情報へと変換することが可能である。
生成された発現プロファイルのパターンの類似性により、異なる実験的成果が比較される。この類似性は、例えばクラスタ化解析を用いて明らかにされる。このタイプの研究のためには、一定数のクラスタ化アルゴリズムが一般的に使用される(JA ハーティガン(JA Hartigan)(1975年)「Clustering Algorithms」、Wiley、NY参照)。個々の遺伝子、特定の経路又はメカニズムに関与するものとして知られている遺伝子のクラスタ、個々の細胞系のレベルで、又は実験データセット全体について、プロファイル間の比較を実施することができる。例えば、2つの異なる組成物処理セットといった各々の実験対について、ρを発現プロファイル間の相関係数としてD=1−ρとして距離関数を定義づけすることができる。Dの値は、2つの実験対の間の類似性レベルを表わしている。この要領で、類似のプロファイルを生成する化学物質が密にクラスタ化している、つまりDが小さいマトリクスを作り上げることができ、発散性プロファイルをもつものは大きなD値を有することになる。このタイプの分析は、例えば、さまざまな化学物質の応答メカニズムの類似性を明らかにすることができる。その上、一定の与えられた化学物質に暴露された場合にどの細胞、組織、器官又は腫瘍タイプがより弱い又は強いと考えられるかを決定するためには、類似の細胞型間及び異なる細胞型間の分析が使用される。
核酸ハイブリダイゼーション
発現されたRNA産物に対応する核酸アレイの産生の後、1組のプローブについて発現が評価される。セット内のプローブの各々は、独自の確定されたポリヌクレオチド配列から成る。プローブセットの異なるメンバーは、関係するポリヌクレオチド配列又は無関係のポリヌクレオチド配列のいずれでもあり得、一般に、疾病関連遺伝子又はターゲットと結びつけられたポリヌクレオチド配列に対応する。往々にして、確定配列プローブは合成オリゴヌクレオチドであるが、例えばcDNAプローブで、制御断片、増幅産物などといった代替的合成プローブも同様に適している。該複数の確定配列プローブのハイブリダイゼーションは、単一の反応混合物(ハイブリダイゼーション混合物)内で発生する。
一般に(ただし排他的にではなく)、確定配列プローブはそれ自体標識されていない。一般に、標準的にはハイブリダイゼーション反応に先立ち増幅されたRNA産物の全体的標識によって、アレイに対する増幅済みRNA試料の適用の後に形成されたハイブリダイゼーション産物が視覚化される。この一般化に対する1つの例外は、分子ビーコンタイプのプローブの使用である(例えばジェン・プローブ(Gen−Probe,Inc.)、San Diego、カリフォルニア州により製造されている産物を参照のこと)。当業者であれば、全て請求対象の発明と共に使用できその範囲内に入るものであるマイクロアレイ技術の数多くの変形形態を認識することになる。
一部のマイクロアレイ実施形態においては、同じマイクロアレイ上で複数の標識された種が同時に分析される。異なる標識済みハイブリダイゼーション複合体の示差的検出が、異なる標識又はシグナル生成部分の内含により可能となる。例えば、単一のハイブリダイゼーション反応において同時に分析されるべき異なる確定配列プローブが、その発光スペクトルに基づいて区別できる異なる蛍光標識を内含し得る。代替的には、各々の確定配列プローブは、増幅可能なシグナル要素例えば蛍光又はその他の検出可能な部分を取込む後続する増幅反応の中で増幅され得るオリゴヌクレオチド配列を取込むことができる。
核酸は、標準的には溶解状態で会合するときに「ハイブリッド形成」する。核酸は、水素結合、溶媒排除、塩基の積み重ねなどといったような充分に特徴づけされたさまざまな物理化学的力に起因してハイブリッド形成する。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な指針は、ティッセン(Tijssen)(1993年)「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes」、第I部、第2章、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、(Elsevier、New York)、並びにアウスベル中、上掲書、に見出される。ヘイムス(Hames)及びヒギンズ(Higgins)(1995年)「Gene Probes 1」、IRL Press at Oxford University Press、Oxford、英国 (ヘイムスとヒギンズ1) 及びヘイムス(Hames)及びヒギンズ(Higgins)(1995年)「Gene Probes 2」、IRL Press at Oxford University Press、Oxford、英国(ヘイムスとヒギンズ2)は、オリゴヌクレオチドを含めたDNA及びRNAの合成、標識、検出及び定量化についての詳細を提供している。
サザン及びノーザンハイブリダイゼーションといったような核酸ハイブリダイゼーション実験の状況下での「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列に依存し、異なる環境パラメータの下で異なっている。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な指針は、ティッセン(1993)、上掲書、及びヘイムスとヒギンズ1及びヘイムスとヒギンズ2、上掲書中に見出される。
本発明では、一般に「きわめてストリンジェントな」ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、定義されたイオン強度及びpHにおける特定の配列についての熱融点(T)よりも約5℃以下だけ低くなるように選択される(以下で記すように、きわめてストリンジェントな条件は、匹敵する用語においても同じく言及される)。Tというのは、テスト配列の50%が、完全に整合したプライマに対してハイブリッド形成する温度(定義されたイオン強度及びpHの下での)である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプライマについてTに等しくなるように選択される。
は、核酸2重鎖の温度であり、2重鎖が一定の与えられた条件下で50%変性させられる温度を標示し、核酸ハイブリッドの安定性の直接的尺度を表わす。かくして、Tは、ヘリックスからランダムコイルへの転移における中間点に対応する温度に対応する。それは、ヌクレオチドの長いストレッチについての長さ、ヌクレオチド組成及びイオン強度によって左右される。
ハイブリダイゼーションの後、ハイブリッド形成されなかった核酸材料を一連の洗浄によって除去することができ、これらの洗浄のストリンジェンシーは所望の結果に応じて調整可能である。(例えばより高次の塩及びより低い温度を用いた)低ストリンジェンシーの洗浄条件は感度を増大させるが、非特異的ハイブリダイゼーションシグナル及び高い背景シグナルを生成し得る。(例えばより低次の塩及びハイブリダイゼーション温度にさらに近いより高い温度を用いて)ストリンジェンシー条件が高くなればなるほど背景シグナルは低くなり、標準的には特異的シグナルのみが残っている。全ての目的でその全体が本明細書に参照により援用されているラプレイ、R(Rapley、R.)及びウォーカー、J.M.(Walker、J.M.)編、「Molecular Biomethods Handbook」(Humana Press,Inc.1998年)(以下「ラプレイ及びウォーカー」と呼ぶ)を参照のこと。
かくして、ストリンジェントハイブリダイゼーションの1つの尺度は、きわめてストリンジェントな条件下でターゲット核酸(又はその相補的ポリヌクレオチド配列)のうちの1つ以上のものにハイブリッド形成するプローブの能力である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、あらゆるテスト核酸について実験的に容易に決定され得る。
例えば、きわめてストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件を決定する上で、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、選択された基準セットが満たされるまで(例えばハイブリダイゼーション又は洗浄において温度を上昇させ、塩濃度を低下させ、洗浄剤濃度を増大させかつ/又はホルマリンといったような有機溶媒の濃度を上昇させることによって)、漸進的に増大させられる。例えば、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、ターゲット核酸及びその相補的ポリヌクレオチド配列が完全に整合した相補的核酸に対し結合するまで、漸進的に増大させられる。
ターゲット核酸は、それが完全に整合した相補的ターゲットに対するものの少なくとも1/2程度プローブに対してハイブリッド形成する場合、すなわち、不整合ターゲット核酸のいずれかに対するハイブリッド形成について見られたものの少なくとも約2.5倍〜10倍、標準的には5倍〜10倍高いシグナル対ノイズ比で完全に整合した相補的ターゲットに対し完全に整合したプローブが結合する条件の下でのターゲットに対するプローブのハイブリダイゼーションの少なくとも1/2程度のシグナル対ノイズ比でハイブリッド形成する場合、プローブ(又はプライマ)核酸に対し特異的にハイブリッド形成すると言われる。
標識
本発明の方法においては、各々確定配列のものでありかつ各々が異なる検出可能なシグナルを発生させる能力をもつ多数のプローブは、同時に、すなわち単一の反応において、核酸アレイに対しハイブリッド形成される。1つの有利な実施形態においては、プローブは各々異なる蛍光発色団で標識されている。蛍光標識は、共有結合により付着されるか、非共有結合的に挿入されてよく、又、エネルギー転移標識であってもよい。その他の有用な標識としては、増幅産物内に取込まれ検出のための反応の後に放出されるマス標識、化学発光標識、電気化学及び赤外線標識、同位体誘導体、ナノ結晶、又は適切な酵素反応によって検出されるさまざまな酵素連結又は基板連結された標識のいずれかが含まれる。
本発明の方法の1つの好ましい実施形態には、1つ以上の蛍光標識の使用及び検出が含まれる。一般に、蛍光分子は各々全く異なる発光スペクトルを表示し、かくして、単一の混合プローブ反応内で複数の蛍光標識を利用しかつその後混合データをスペクトル分離によりその成分シグナルへと分離することを可能にする。本発明の方法において使用するための蛍光標識例としては、検出中の分子に共有結合によって付着させられる単一の染料、産物DNA内に非共有結合的に挿入される単一の染料、又はエネルギー転移蛍光標識、が含まれる。当該技術分野においては、蛍光標識の数多くの適切な組合せが知られており、商業的供給源(例えばモレキュラープローブス(Molecular Probes)、Eugene、オレゴン州;シグマ(Sigma)、St.Louis、ミズーリ州)から入手可能である。
例えば、Alexa Fluor350、Alexa Fluor405、Alexa Fluor430、Alexa Fluor488、Alexa Fluor532、Alexa Fluor532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor555、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor647、Alexa Fluor660、Alexa Fluor680、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、カルボキシフルオレセイン、カスケードブルー、Cy3、Cy5、Cy5.5、6−FAM、フルオレセイン、HEX、6−JOE、リサミン・ローダミンB、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、REG、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ROX、SpectrumAqua、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、及びテキサスレッドを含む蛍光部分が一般に当該技術分野において知られており、配列決定反応といったような目立たない核酸種の同定のために日常的に使用されている。当業者であれば、異なる発光スペクトルをもち同じ核酸アレイに対しハイブリッド形成された異なる形で標識されたプローブの検出を可能にする染料を容易に選択することができる。数多くの共通のレーザー及びフィルターと相容性ある1つの適切な組合せとしては、メーカーの指示事項(モレキュラープローブス(Molecular Probes)、Eugene、オレゴン州))に従った例えばアレックス・フラワー(Alex Fluor)染料の組合せ又は例えばフルオレセイン、テキサスレッド、Cy3及びCy5が含まれる。
蛍光染料から得られるシグナル強度は、エネルギー転移(ET)蛍光染料と呼ばれる関連する化合物の使用を適して増幅可能である。光を吸収した後、ET染料は、発出された光を吸収し低エネルギーの蛍光シグナルを発出することになる二次「アクセプタ」染料に対する「ドナー」として役立つことができるようにするような発光スペクトルを有している。これらのカップリングされた染料の使用は、蛍光シグナルを著しく増幅し得る。ET染料の例としては、核酸分析における応用のためにパーキンエルマー(Perkin−Elmer Corporation)(Foster City、カリフォルニア州)により近年商品化されたABI PRISM BigDyeターミネータがある。これらの発色団は、単一の分子内にドナー及びアクセプタ染料を取込み、エネルギー転移リンカーがドナーフルオレセインをジクロロローダミンアクセプタ染料にカップリングし、複合体はDNA複製プライマに付着される。代替的には、核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションに対応する信号を、抗染料抗体又はチラミドシグナル増幅及び酵素標識蛍光(ELF)技術(モレキュラープローブス、Eugene、オレゴン州:付加的な詳細はモレキュラー・プローブス便覧及び製品文献中に見出すことができる)といった酵素媒介型増幅戦略を用いて増幅することが可能である。
酵素連結反応は理論的には、酵素活性によるシグナルの増幅に起因して強いシグナルを生成する。この実施形態においては、酵素が、問題の分子に対し強い結合親和力をもつ2次基に連結させられる。酵素連結プローブの核酸アレイに対するハイブリダイゼーションの後、会合した酵素を触媒とした化学反応によりハイブリダイゼーションが検出される。ビオチンとアビジン、抗体と抗原又は糖とレクチンの間のものといったような一般的に当該技術分野において既知の充分特徴づけされた相互作用を利用して、さまざまなカップリング戦略が可能である。さまざまなタイプの酵素を利用することができ、比色、蛍光、化学発光、リン光又はその他のタイプのシグナルを生成する。酵素連結プローブに対するハイブリダイゼーションの後、反応生成物を監視することにより結合した酵素を検出する化学反応が実施される。二次親和性基は同様に、未結合酵素とのインキュベーションにより検出される酵素基質にカップリングされ得る。当業者であれば、酵素連結された標識方法に対して可能な数多くの変形形態を考え出すことができる。
代替的には、蛍光DNA標識としてのナノ結晶の使用といったような技術(アリヴィサトス(Alivisatos)ら(1996年) Nature382号:609−11頁)を本発明の方法において利用することができる。マザムダー(Mazumder)ら(Nucleic Acids Res.(1998年)26号:1996−2000頁)によって記述されているもう1つの方法は、ハイブリッド形成されていないプローブからの物理的分離の無い標識されたオリゴヌクレオチドプローブのそのターゲットに対するハイブリダイゼーションについて記述している。この方法では、プローブは、未結合形態では亜硫酸ナトリウム処理によって破壊されるもののターゲット配列に対しハイブリッド形成したプローブ内では保護されている化学発光分子で標識される。
その他の標識実施形態には、増幅産物内に取込まれ検出のため反応の後に放出されるマス標識;化学発光、電気化学及び赤外線標識;放射性標識;及び適切な酵素反応によって検出可能であるさまざまな酵素連結された又は基基連結された標識のいずれか、が含まれる。当該技術分野においては数多くの有用な標識が知られており、当業者であれば、本発明の増幅産物を標識するための付加的な戦略を想像することができる。
代替的には、マイクロアレイシステム内での使用に適したプローブには、例えば、ローリングサークル増幅(RCA);分岐増幅(RAM)、分枝DNA増幅(BDA);ハイブリダイゼーションシグナル増幅方法(HSAM)及び3DNAデンドリマープローブ(ジェニスフェア(Genisphere)、Hatfield、ペンシルバニア州)といったような後続増幅反応内で鋳型として役立ち得るポリヌクレオチド配列などの増幅可能なシグナル要素が含まれる可能性がある。シグナルを増幅するための付加的な方法としては、例えば米国特許第6,251,139号明細書及び同第5,545,522号明細書中に記述されたものが含まれる。増幅可能なシグナル要素を取込んだ確定配列プローブの使用は、発現済み核酸に対応するRNA又はcDNAをアレイが含んでいる場合に特に有利となる。
検出方法
核酸アレイに対する確定配列プローブのハイブリダイゼーションの後、アレイの核酸とプローブ間のハイブリダイゼーションが検出され、かつ/又は検出され任意には定量化される。本発明の方法の一部の実施形態は、産物の直接的検出を可能にする。その他の実施形態は、1つ以上のプローブと結びつけられた標識を介して反応産物を検出する。
例えば光学及び蛍光検出器、光学及び蛍光顕微鏡、平板読取り装置、CCDアレイ、ホスホイメージャー、シンチレーションカウンタ、光電管、フォトダイオードなど及びソフトウェアを含めたさまざまな市販の検出器が、例えばPC(Intel x86又はペンティアムチップコンパチブルDOS(商標)、OS2(商標)WINDOWS(商標)、WINDOWS NT(商標)又はWINDOWS95(商標)ベースのマシン)、MACINTOSH(商標)、又はUNIXベース(例、SUN(商標)ワークステーション)のコンピュータを用いて、デジタルビデオ又はデジタル光学その他の検定結果をデジタル化、記憶及び分析するために利用可能である。
蛍光を定量化するための1つの記述されたアプローチは、レーザー光スキャナと組合わされた光電子増倍管検出器を使用することにある。蛍光画像形成は同様に、UV光又はキセノンアーク光源などと組合わされた電荷結合素子カメラを用いても実施可能である。2モード励起スペクトルを伴う蛍光染料を広範囲の分析画像形成デバイス上で広く実現させて、半自動分析環境内での発現データ(例えば発現産物に対応するアレイ化された核酸と標識されたプローブの間のハイブリダイゼーションに対応するシグナル)の分析に対しそれらを広く応用できるようにすることが可能である。
例えばパーキンエルマースキャンアレイエクスプレス(Perkin Elmer Scan Array Express)マイクロアレイスキャナは、最高5つの染料を同時に監視する能力をもち、本発明の方法において有利に利用される。
組成物ライブラリのスクリーニング
本発明の方法は、細胞(例えば培養中の細胞系)、例えば組織又は生体といったような生物系において1つ以上の生理学的プロセスに対する生理学的効果を有する化学物質などの化合物を同定する目的で有利に利用される。1つの有利な実施形態においては、化学物質又は化合物ライブラリが本発明の方法に従ってスクリーニングされる。本発明の1つの有利な利用分野は、潜在的な治療上の利用分野例えば疾病状態又は身体条件の予防又は治療に関係する生理学的、代謝的又は遺伝的経路に関連する活性をもつ作用物質を同定する目的での大きい化合物ライブラリのスクリーニングにある。代替的な実施形態には、1つの疾病状態に関係しない生物学的系に対する効果をもつ作用物質などの治療薬の同定以外の目的で化合物について化合物ライブラリをスクリーニングすることが含まれる。標準的には、培養中の細胞系の試料といったような生物試料が、化学物質又は化合物ライブラリのメンバーに対し暴露されるか又はこれにより処理される例えばこれと接触させられる。暴露の後、発現済みRNA試料が各々の処理済み試料から回収され、本書で記述されている通りに分析される。標準的には、例えば各々化合物ライブラリの異なるメンバーで処理されてきた同じ細胞系の集団に各々対応する多数の試料などの、生物試料から誘導された多数の発現済みRNA試料が、例えばガラスマイクロアレイスライド上に空間的にアレイ化され、例えば問題の生化学経路の化合物をコードする遺伝子に対応する複数の問題のプローブにハイブリッド形成される。通常は、各々が組成物ライブラリの1つ(又はそれ以上)のメンバーに暴露されている細胞系の試料(集団)に対応する約100(又は200又は500)から数千までのいずれかの数、例えば約10,000、約20,000個の異なる発現済みRNA試料が、本発明の方法に従ってアレイ化され分析される。
例えば、細胞又は細胞系は、例えば医薬品、汚染物質、DNA損傷剤、酸化的ストレス誘発剤、pH改変剤、膜分断剤、代謝遮断薬、化学的阻害物質、細胞表面受容体リガンド、抗体、転写、プロモータ/エンハンサー/阻害物質、翻訳プロモータ/エンハンサー/阻害物質、タンパク質安定化又は不安定化剤、さまざまな毒素、発癌性物質又はテトラゲン、タンパク質、脂質又は核酸といった1つ以上の特徴づけされた又は特徴づけされていない化学物質ライブラリ(化学物質化合物ライブラリ)、化学成分又は生化学成分で処理されるか又はこれらに対し暴露され得る。該ライブラリには、組合せ化学物質ライブラリ、骨格−集束化学物質ライブラリ、ターゲット集束化学物質ライブラリ、生物学的ライブラリ、天然産物ライブラリ、アンチセンス作用物質ライブラリ、iRNAライブラリ、siRNAライブラリ、リボザイムライブラリ、ペプチドライブラリ及び組合せ核酸オリゴマライブラリなどが含まれる。当業者であればわかるように、生物試料に対する生理学的効果についてスクリーニングされ得る化合物及び/又は化合物類似体の種類は数多く、以下の化合物群を含むが、これらに制限されるわけではない:ACE阻害剤;抗炎症剤;抗喘息薬;抗糖尿病薬;抗感染症薬(抗菌剤、抗生物質、抗真菌剤、駆虫剤、抗マラリア薬及び抗ウイルス剤を含むがこれに制限されるわけではない);鎮痛剤及び複合鎮痛剤;アポトーシス誘発剤又は阻害剤;局所及び全身麻酔薬;心臓及び/又は循環器官用調製物(狭心症及び高血圧治療薬、抗凝血剤、抗不整脈剤、強心剤、心抑制剤、カルシウムチャンネル遮断薬及びベータ遮断薬、血管拡張剤、及び血管収縮剤を含む);様々な抗腫瘍薬を含む化学療法剤;免疫活性化合物、例えば免疫剤、免疫調整剤、免疫抑制薬;食欲抑制剤、アレルギー治療薬、関節炎治療薬、抗酸化剤、薬草調製薬及び活性成分単離物;アルツハイマー及びパーキンソン病治療薬を含む神経活性剤、片頭痛治療薬、アドレナリン受容体作動薬及び遮断薬、コリン受容体作動薬及び遮断薬、抗不安症調製物、抗不安薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、鎮痙薬、精神刺激薬、睡眠薬、鎮静剤及び精神安定剤など。
一部の利用分野においては、生物試料の処理に用いられる化合物の選択は、問題の分野における文献及び専門家の知識に基づいて行なわれる。1つの薬物又は組成物に関する応答メカニズムを識別し新しい組成物を同定するための比較分析アプローチを充分に活用するためには、一範囲の治療薬(認可済みのもの又は現在臨床試験中のもの)、治療薬候補、研究用化学物質、合成組成物ライブラリ、天然の又は生物学的化合物、薬草組成物及び、1つ以上のターゲット分子と潜在的に相互作用するか又は細胞を比較可能な表現型へと駆動すると思われるその他の化学物質を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)一連の選択された組成物を分析することが有用である。
本発明の状況下で細胞を処理するために数多くの手段及び技術を使用することができる。これらの技術には、概して活性を刺激しかつ/又は一般に細胞内の環境を摂動させる化学物質での過渡的な処理が含まれるがこれに制限されるわけではない。「刺激」というのは、細胞の生化学及び/又は遺伝的経路の平衡状態の摂動を意味し、濃度又は生物活性の増大に制限するべく意図されたものではない。刺激性作用物質、化学物質及び処理の例としては、酸化的ストレス、pHストレス、pH改変剤、DNA損傷剤、膜分断剤、代謝遮断薬及びエネルギー遮断薬が含まれるが、これらに制限されるわけではない。付加的には、細胞の摂動は、誘発可能な遺伝子特異的ノックイン及びノックダウン技術を利用して化学的阻害物質、細胞表面受容体リガンド、抗体、オリゴヌクレオチド、リボザイム及び/又はベクターでの処理により達成できる。刺激性作用物質、化学物質及び処理のアイデンティティー及び使用は、当業者にとっては既知のものである。
DNA損傷剤の例としては、臭化エチジウムといったような挿入剤;メタンスルホン酸メチルといったアルキル化剤;過酸化水素;UV照射及びガンマ照射が含まれるがこれらに制限されるわけではない。酸化的ストレス剤の例としては、過酸化水素、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシル遊離ラジカル、ペルヒドロキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、アルコキシルラジカルなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。膜分断剤の例としては、電圧電位の適用、トリトンX−100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びさまざまな洗浄剤が含まれるが、これらに制限されるわけではない。代謝遮断及び/又はエネルギー遮断薬としては、アジドチミジン(AZT)、イオン(例えば手羽、Ca++、K、Na)チャンネル遮断薬、α及びβアドレナリン受容体遮断薬、ヒスタミン遮断薬などが含まれるがこれらに制限されるわけではない。化学的阻害物質の例としては、受容体拮抗薬及び阻害性代謝産物/異化生成物(例えばそれ自体HMG−CoA還元酵素活性を阻害するその産物であるメバロナート)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
細胞表面受容体リガンドの例としては、さまざまなホルモン(エストロゲン、テストステロン、その他のステロイド)、成長因子、及びG−タンパク質結合受容体リガンドが含まれるがこれらに制限されるわけではない。抗体の例としては、TNFα、TRAIL又はHER2成長因子に向けられた抗体が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
本発明において試料を処理するのに使用可能なオリゴヌクレオチドの例としては、リボザイム、アンチ−センスオリゴヌクレオチド、iRNA、siRNAなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。例えば、リボザイムは、配列特異的RNA分子に対する酵素又は触媒活性を有するRNA分子である(例えば、Intracellular Ribozyme Applications:Principles and Protocols、J.ロッシ(J.Rossi)及びL.クチュール(L.Couture)編(1999年、Horizon Scientific Press、Norfolk、英国)を参照のこと)。リボザイムは、カルレチニン、TNFα、HIV−1インテグラーゼ及びヒトインターロイキンを含む一定数のターゲットmRNAについて文献中で示されているように、任意の数のRNA配列に対して生成可能である。
本発明の1実施形態においては、生物試料の処理には、可変的濃度の複数の化合物を複数の生物試料(例えば培養中で成長した細胞系の小集団)に対し投与して、用量応答を生成することが関与する。応答は、単一の時点又は複数の時点のいずれかで測定可能である。任意には、膜組成物での処理に先立ち少なくとも1つの測定値が収集される。一般に、この「ゼロ時点」試料は1つの基準又は対照として役立つ。代替的に又は付加的に、基準又は対照を目的として、別々ではあるが比較可能な生物試料(例えば処理済み試料のために使用されるものと同じ細胞系の小集団)が未処理のままに、又はいかなる外因性化合物にも暴露されない状態に放置される。
遺伝子発現分析用システム
本発明は同様に、遺伝子発現を評価するための統合型システムを提供している。該統合型システムは標準的には、例えば細胞系、組織、器官生検、生体などの多数の生物学的供給源又は生物試料から誘導された複数の発現済みRNA産物に対応する核酸試料を組込んだ、ガラススライド上で組織されたマイクロアレイなどの論理的又は空間的アレイを含んでいる。任意には、該統合型システムは、例えば最も一般的には多重ウエル平板例えば96、384、768又は1536ウエル平板(VWRサイエンティフィックプロダクツ(Scientific Products)、West Chester、ペンシルバニア州といったさまざまな供給業者から入手可能)の中で細胞培養といった機能を提供するこのような生物試料の調製及び収集のためのさまざまなコンポーネントを内含することができる。例えば試料及び試薬のピペット採取、液体送り出し、時限インキュベーション、及び検出器内のマイクロプレートの最終的読取りなどのプロセス全体を自動化するためのコンポーネント及びシステムが市販されており、本発明のシステムの状況下で利用可能である(例えばザイマーク(Zymark Corp.)、Hopkinton、マサチューセッツ州;エアー・テクニカル・インダストリーズ(Air Technical Industries)、Mentor、オハイオ州;ベックマン・インスツルメント(Beckman Instruments,Inc.)、Fullerton、カリフォルニア州;プレシジョン・システムズ(Precision Systems,Inc.)、Natick、マサチューセッツ州、など)を参照のこと)。これらの設定可能なシステムは、高い処理能力及び高速始動ならびに高度の柔軟性及びカスタマイズ化を提供する。同様にして、アレイ及びアレイ読取り装置が、例えばアフィメトリックス(Affymetrix)、PEバイオシステム(PE Biosystems)その他からの入手可能である。
かかるシステムのメーカーは、さまざまな高速大量処理の詳細なプロトコルを提供している。かくして例えば、ザイマークは遺伝子転写、リガンド結合などの変調を検出するためのスクリーニングシステムを記述する技術広報を提供している。
例えば、該システムは有利には、RNA単離用モジュールを内含している。本発明の状況下で有用である2つの市販のものには、キアゲン(Qiagen)及びジェノ・ビジョン(GenoVision)により市販されているプラットフォームが含まれる。96ウエルのRNeasy製品及び真空ろ過を用いたキアゲンのプロトコルは、例えばビオメク(Bio Mek)のマルチメク(Multimek)96−チップピペット採取システムを用いて実施可能である。この製品及びプロトコルは、全RNAを単離する。代替的には、一度に48又は96の試料のためにポリT−接合型磁気ビーズを用いてmRNAを単離する能力をもつジェノ・ビジョンGeno M−48及びGeno M−96システムを生物試料からのRNA単離のために利用することができる。平板を交換するためにユーザーの介入を必要とするキアゲンプロセスとは異なり、ジェノ・ビジョンプロセスは完全に自動化されている。
該システムは標準的には、発現済みRNA産物(例えば生物試料から得られた発現済みRNA産物)のプールから複数の増幅産物を生成するための増幅モジュール;複数の増幅産物の1つ以上のメンバーを検出し1組の遺伝子発現データを生成するための検出モジュール;及びデータセット内のデータポイントを組織しかつ/又は分析するための分析モジュールを内含している。これらのモジュールのいずれか又は全てが高速大量処理技術及び/又はシステムを含むことができる。
例えば、本発明のシステムの増幅モジュールは、発現済みRNA試料から複数の増幅産物を産生する。任意には、該増幅モジュールは、以上で記述された通り、増幅プロセス内で使用するための少なくとも1つの汎用プライマ対と少なくとも1つのターゲット特異的プライマ対を内含する。その上、該増幅モジュールは、以下の反応のうちの1つ以上のものを実施するためのコンポーネントを内含できる。すなわちポリメラーゼ連鎖反応(rtPCR、多重鎖PCRなど)、転写ベースの増幅、自立式配列複製、核酸配列ベースの増幅、リガーゼ連鎖反応、リガーゼ検出反応、ストランド置換増幅、修復連鎖反応、環状プローブ反応、cDNA末端の高速増幅、インベーダ検定、架橋増幅、ローリングサークル増幅、液相及び/又は固相増幅など。
システムは同様に、複数の異なる形で標識された確定配列プローブを核酸マイクロアレイと接触させるためのハイブリダイゼーションモジュールも含んでいる。該ハイブリダイゼーションモジュールは一般に、マイクロアレイ上に被着させられた核酸と複数のプローブの溶液中でのハイブリダイゼーションに適した条件を維持するためのインキュベーションチャンバ又はカバースリップを内含する。任意には、ハイブリダイゼーションモジュールは、ハイブリダイゼーションシグナルを増幅するための付加的な試薬及び反応を収容する。代替的には、別のモジュールが該ハイブリダイゼーションシグナルを増幅させる目的で含まれている。
検出モジュールは、複数のプローブ及びマイクロアレイの間のハイブリダイゼーションの存在、不在又は数量を検出する。さらに、検出モジュールは一般に複数のデータポイントの形で、一組の遺伝子発現データを生成する。最も一般的には、データポイントはデータベース内に記録される。標準的には、該データポイントは、コンピュータベースのデータベースを生成するべく、コンピュータ読取り可能な媒体内に記録される。
本発明のシステムの第3のコンポーネントつまり分析用モジュールは、検出モジュールと作動的連絡状態にある。該システムの分析用モジュールは、検出システムによって生成された複数のデータポイントを分析するため例えば1つ以上の論理的命令を有するコンピュータ又はコンピュータ読取り可能媒体などを含む。分析システムは任意には多数の論理命令を含む。例えば、論理命令は、複数のデータポイントをデータベースの形に組織する1つ以上の命令及び複数のデータポイントを分析する1つ以上の命令を含み得る。命令には、複数のデータポイント上で1つ以上の統計的分析を実施するためのソフトウェアが含まれ得る。付加的(又は代替的)に、該命令は、複数のデータポイントの図形表現を生成するためのソフトウェアを内含するか又はその形で実施され得る。例えば、シリコン・ジェネティクス(Silicon Genetics)社のGeneSpringソフトウェアは、本発明の状況下で使用するための1つの適切なソフトウェアプログラムである。
本発明の分析用モジュール内で利用されるコンピュータは、例えば、PC(Intel x86又はペンティアムチップ−コンパチブルDOS(商標)、OS2(商標)WINDOWS(商標)、WINDOWS NT(商標)、WINDOWS95(商標)、WINDOWS98(商標)、又はWINDOWS ME(商標))、リナックス(LINUX)ベースのマシン、MACINTOSH(商標)、Power PC、又はUNIXベースのマシン(例、SUN(商標)ワークステーション)又は当業者にとって既知のものであるその他の商業上一般的なコンピュータであり得る。計算用分析のためのソフトウェアは入手可能であるか、又はビジュアルベーシック、フォートラン、ベーシック、C、C++ジャバなどといった標準プログラミング言語を用いて当業者が容易に構築することができる。ワードプロセシングソフトウェア(例えばMicrosoft Word(商標)又はCorel WordPerfect(商標))及びデータベースソウトウェア(例えばMicrosoft Excel(商標)、Corel Quattro Pro(商標)、といった表計算ソフトウェア又はMicrosoft Access(商標)又はParadox(商標)といったようなデータベースプログラム)といったような標準的デスクトップアプリケーションも同様に、本発明の分析用システム内で使用可能である。
コンピュータは任意には、往々にして陰極線管(「CRT」)ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ(例えばアクティブ・マトリクス液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ)又はその他であるモニターを含む。コンピュータ回路は往々にして、マイクロプロセッサ、メモリー、インターフェース回路及びその他といったような数多くの集積回路チップを内含するボックス内に設置される。このボックスも、任意に、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、書込み可能CD−ROMといった高容量取り出し可能ドライブ及びその他の一般的な周辺素子を含んでいる。キーボード又はマウスといった入力デバイスが、任意にはユーザーからの入力を提供する。
コンピュータは標準的には、例えばGUI内などのセットパラメータフィールド内へのユーザー入力の形か、又は例えばさまざまな異なる特定のオペレーションのために予めプログラミングされた予備プログラム済み命令の形で、ユーザーの命令を受信するための適切なソフトウェアを内含する。該ソフトウェアは次に、これらの命令を、所望のオペレーションを実施するべく流体の方向及び輸送コントローラーの動作を命令するための適切な言語へと変換する。
ソフトウェアは同様に、粗データ、メッセージデータ又は遺伝子発現データセットの分析に関与する1つ以上の計算プロセスからの提案された結果を表示しかつ/又はさらに分析するための出力素子をも含んでいる。
キット
さらなる態様においては、本発明は、本書で記述されている通りの遺伝子発現の分析のための方法、組成物及びシステムを実施するキットを提供している。例えば、本発明のキットは、例えば化合物ライブラリのメンバーで処理された試料といった生物試料から得た発現済みRNA試料に各々対応している複数の異なる核酸試料が上に被着された1つ以上のマイクロアレイスライド(又は代替的マイクロアレイフォーマット)を含み得る。キットは同様に複数の標識されたプローブを内含することもできる。代替的には、キットは、プローブとして適した複数のポリヌクレオチド配列、及び内含されたポリヌクレオチド配列又は医師の裁量でその他のポリヌクレオチド配列をカストマイズするのに適した選択された標識を含むことができる。一般に、少なくとも1つの内含されたポリヌクレオチド配列は対照配列、例えばβ−アクチン、「ハウスキーピング」遺伝子などに対応する。標識の例としては、核酸プライマ自体に連結されるフルオロフォア、染料、放射性標識、酵素タグなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。
1実施形態においては、発現済みRNA試料に対応する核酸を増幅するのに適したキットが提供される。かかるキットは、上述の増幅方法のいずれかにおいて使用するのに適した試薬及びプライマを含む。代替的又は付加的に、該キットは、プローブとターゲット核酸試料(例えばマイクロアレイ上に被着されているもの)の間のハイブリダイゼーションに対応するシグナルを増幅するのに適している。
さらに、遺伝子発現分析のための生物試料を調製するために必要とされる1つ以上の材料及び/又は試薬が、任意にこのキットの中に含まれている。さらに、キットの中に任意に含まれているのは、増幅のための必要な反応混合物を提供するべくさまざまなポリメラーゼ(RT、Taqなど)、1つ以上のデオキシヌクレオチド及び緩衝液を含む、核酸を増幅するのに適した1つ以上の酵素である。
標準的には、該キットは、出発鋳型としてmRNAを用いて遺伝子発現プロファイルを分析するために利用される。mRNA鋳型は、全細胞RNA又は単離mRNAのいずれかとして提示され得る。両方のタイプの試料共、比較可能な結果を生成する。その他の実施形態では、本発明において記述されている方法及びキットは、tRNA、rRNA又はその他の転写産物を含めたその他の遺伝子発現産物の定量化を可能にする。
任意には、本発明のキットはさらに、データの生成、分析及び/又は記憶を迅速に処理しデータベースへのアクセスを容易にするためのソフトウェアを含んでいる。該ソフトウェアには、データの収集、記憶及び/又は分析において使用可能な論理的命令、命令セット又は適切なコンピュータプログラムが含まれる。提供されたソフトウェアを用いたデータの比較及び関係分析が可能である。
キットは任意には、各々個々の試薬及び/又は酵素成分のための全く異なるコンテナを含んでいる。各成分は、一般にそのそれぞれのコンテナ内にアリコートされた状態で適したものとなる。キットのコンテナは任意には、少なくとも1つのバイアル、アンプル又は試験管を含む。試薬を入れかつ/又はアリコートするフラスコ、びん及びその他のコンテナ機構も同じく可能である。キットの個々のコンテナは、好ましくは、商業的販売用に密封された状態に保たれる。より大きな適切なコンテナは、所望のバイアルを中に保持する射出成形又はブロー成形プラスチックコンテナを含み得る。本発明のキットの使用を詳述する書面での指示又はビデオテープの実演といった取扱い説明が、任意にはキットと共に提供される。
さらなる態様においては、本発明は、本書中のあらゆる組成物又はキットの使用、本書中のあらゆる方法又は検定の実践、及び/又は本書中のあらゆる検定又は方法を実践するためのあらゆる器具又はキットの使用を提供している。
以下の例は、特許請求対象の発明を例示するために提供されるが、これを制限するものではない。
実施例1
多重汎用プライマ駆動のPCRを用いたRNAターゲットの増幅
全RNAを、RNA単離キット(RNeasy)(登録商標)、キアゲン(Qiagen);Valencia、カリフォルニア州)を用いて培養細胞から得た。20ngの単離RNAを次にまずは逆転写反応で、そして続いてPCR増幅中で使用した。これらの反応条件は以下の通りであった。
逆転写試薬
反応体積:20μL
遺伝子特異的逆プライマ濃度:0.05μM(各プライマ)
緩衝液条件:1×PCR緩衝液II(10mMのトリス−HCl、pH8.3:50mMのKCl)
MgCl:2.5mM
dNTP:1mM
DTT:0.01M
RNase阻害物質:0.1U
MMLV逆転写酵素:1U
サーマルサイクラ条件
48℃ 1分
37℃ 5分
42℃ 60分
95℃ 5分
4℃ 終了
PCR試薬
反応体積:20μL
使用されたcDNAの量:10μL(20中)
キメラ遺伝子特異的、汎用順方向プライマ濃度:0.02uM(各プライマ)
緩衝液条件:1×PCR緩衝液II(l0mMトリス−HCl、pH8.3;50mM KCl)
MgCl:7mM
dNTP’s:0.3mM
汎用順方向プライマ濃度:1μM(蛍光染料;例えばCy3又はCy5で標識された)
汎用逆方向プライマ濃度:1μM
Taqポリメラーゼ:2.5U
サーマルサイクラ条件
95℃ 10分
94℃ 30秒
55℃ 30秒
68℃ 1分
ステップ2−4を35サイクル反復する
4℃ 終了
マイクロアレイプリンティング
オリゴヌクレオチドプローブを、凍結乾燥状態で受取り、これを無菌水中で100μMの原液となるまで希釈した。各オリゴヌクレオチドプローブを96ウエルの平板フォーマット内で10μMの作業原液になるまで希釈した。10μLのDMSO及び10μLの10μMのオリゴヌクレオチドプローブを384ウエル平板の各ウエル中にピペット採取し、ピペットで混合した。スポッティングピンがウエル中に浸漬する予定のウエルの底面/中心に50%のDMSO/オリゴヌクレオチドプローブ溶液が確実に入るようにするため、平板をカウンタトップ上で軽くたたく。
調製したオリゴヌクレオチドプローブを、短時間保管の場合には4℃、長時間保管の場合は−20℃で保管した。
作業用オリゴヌクレオチドを次に、手動式又は自動式マイクロアレイプリンティングツールを用いてマイクロアレイ表面上にプリントした。プリンティング後ハイブリダイゼーションに先立ち、スライド上にオリゴヌクレオチドDNA(1本鎖)を固定化するためプリントしたマイクロアレイスライドを1時間850℃で焼成した。この処理段階で、後日使用するべくスライドを室温に維持した。その後マイクロアレイを振とう機上で室温で1時間プレハイブリダイゼーション溶液(5×SSC、0.1%のSDS、1%のBSA)中でインキュベートした。その後アレイを純水及びイソプロパノールで洗浄した。マイクロアレイを次に乾燥させた。
マイクロアレイに対するUP−rtPCR反応のハイブリダイゼーション
メーカー(キアゲン又はプロメガ)の指示事項に従って螢光標識されたPCR産物を精製し、水中に溶出させ、1倍のハイブリダイゼーション緩衝液(4×SSC、0.02%Tween−20)及び90%のグリセロールと5:39:6の比率で混合した。その後95℃で5分間ハイブリダイゼーション混合物を加熱してUP−rtPCR産物を変性させ、氷上で30秒間スナップ冷却した。多数のUP−rtPCR反応をこれらのステップ中にプールした。
マイクロアレイにUP−rtPCR産物を添加し、カバーし、その後1時間50℃でインキュベートした。
ハイブリダイゼーション後の洗浄
ハイブリダイゼーションの後、マイクロアレイをまず最初に低ストリンジェンシーの緩衝液(1×SSC及び0.2%SDS)中で55℃で30分間、そして次に高ストリンジェンシーの緩衝液(0.1×SSC及び0.2%SDS)中で55℃で3分間洗浄した。マイクロアレイを次に水で洗浄し、走査の準備として乾燥させた。
スライド走査
メーカーにより推奨された標準プロトコルを用いて、マイクロアレイ走査計器(例えばアクソン・インスツルメンツ(Axon Instruments)、Union City、カリフォルニア州、ジーンピックス(GenePix)(登録商標)マイクロアレイスキャナ(microarray scanner)を使用して走査を実施した。その後データを例えばジーンスプリング(GeneSpring)(登録商標)(Silicon Genetics, Redwood City、カリフォルニア州)といったマイクロアレイデータ分析ソフトウェアパッケージ内にインポートした。
本書で記述した実施例及び実施形態は例示を目的としたものであるにすぎず、当業者にはそれに照らしたさまざまな修正又は変更が示唆されることになると思われ、これらの修正及び変更は、本出願の精神及び視野内及び添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきものであるということがわかる。
上述の発明は、明確さ及び理解を目的として幾分か詳細に記述されてきたが、本開示を読めば当業者にとっては、形態及び詳細におけるさまざまな変更を該発明の真の範囲から逸脱することなく加えることができるということは明白であろう。例えば、上述の技術及び器具は全てさまざまな組合せで使用可能である。本出願中で引用された全ての刊行物、特許、特許出願及び/又はその他の文書は、各々個々の刊行物、特許、特許出願及び/又はその他の文書が全ての目的のために参照により援用されると個別に指示されていた場合と同じ程度で、全ての目的のためその全体が参照により援用される。
RNAプール内の単一のRNA転写物、mRNA1のための汎用プライマUP−rtPCRプロセスの概略的例示を提供する。ステップ1、キメラ逆遺伝子特異的汎用プライマ(GSP−R1_UP−R)は、mRN1転写物に対しハイブリッド形成される。ステップ2、GSP−R1_UP−Rプライマは、逆転写酵素により拡張されてcDNA産物を生成する。ステップ3、変性後、キメラ順方向遺伝子特異的汎用プライマ(GSP−F1_UP−F)は、cDNA補体にハイブリッド形成する。ステップ4、GSP−F1_UP−F−プライマは、DNAポリメラーゼにより拡張されてcDNAに対する相補的ストランドを産生し、最後にUP−Rを取込む。この配列はここで、逆汎用プライマ(UP−R)のための鋳型として作用できる。ステップ5、変性、ハイブリダイゼーション及び重合の付加的なサイクルの後、UP−rtPCR反応は、汎用プライマ配列により両端がテーリングされているPCR産物を生成する。これらのストランドはこのとき変性でき、順方向及び逆方向の両方の汎用プライマのハイブリダイゼーションのための鋳型(それぞれUP−F及びUP−R)を提供する。ステップ6、温度サイクリングが続行するにつれて、優勢な産物は、汎用プライマ−テーリングを受けた2本鎖PCR産物である。 4つの異なるmRNAターゲット(mRNA1、mRNA2、mRNA3及びmRNA4)とのUP−rtPCR多重反応における特異的核酸試薬の概略的例示を提供している。mRNAには、4つの異なるキメラ遺伝子特異的汎用プライマ対セット(GSP−F1_UP−F及びGSP−R1_UP−R;GSP−F2_UP−F及びGSP−R2_UP−R;GSP−F3_UP−F及びGSP−R3_UP−R;並びにGSP−F4_UP−F及びGSP−R4_UP−R)及び汎用プライマ対(UP−F&UP−R)が付加される。このプライマとmRNAの混合物は、各々汎用プライミング配列でテーリングされた4つの異なるPCR産物を生成する。 遺伝子特異的バーコード配列、GS−BC1を取込むべくGSP−F1_UP−Fの修飾を伴う点を除いて図1に記述されている通りのプロセスの概略的例示を提供している。GS−BC1配列はその結果、最終的PCR産物セット内に取込まれ、マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションのために使用可能である。 4つの異なるmRNAターゲット配列(GS−BC1、GS−BC2、GC−BC3及びGS−BC4)の各々について遺伝子特異的バーコード配列GS−BCを取込むべくGSP−F_UP−Fプライマの修飾を伴う点を除いて、図2に記述されている通りの核酸成分の概略的例示を提供している。GS−BC配列は、その結果として、最終PCR産物セット内に取込まれ、マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションのために使用可能である。 5Aはバーコードマイクロアレイ内に標識付きの可溶性二次プローブ及び/又は可溶性連結用オリゴマを取込む該発明の一態様の概略的表現を提供している。可溶性二次標識付きプローブの使用を例示するダイヤグラムを提供する。この図では、増幅された遺伝子又はその他の核酸産物、例えばcDNAPCR産物が、2つのバーコード配列を含んでいる。1つのバーコード(バーコードA)は、アレイ表面に付着した相補的バーコードプローブ(すなわち包括的アレイ内部の特異的空間位置における特異的包括的プローブ)にハイブリッド形成し、第2のバーコード(バーコードB)は、標識を担持する包括的可溶性オリゴヌクレオチドプローブにハイブリッド形成する。5Bはバーコードマイクロアレイ内に標識付きの可溶性二次プローブ及び/又は可溶性連結用オリゴマを取込む該発明の一態様の概略的表現を提供している。バーコードマイクロアレイ内の可溶性連結用オリゴマと併わせた可溶性二次標識付きプローブの使用を例示するダイヤグラムを提供する。この図では、増幅された遺伝子又はその他の核酸産物、例えばcDNAPCR産物は、1つのバーコード配列しか含んでいない(バーコードA)。PCR産物上のこの1つのバーコード(バーコードA)は、アレイ表面に付着した相補的バーコードプローブ(すなわち包括的アレイ内部の特異的空間位置における特異的包括的プローブ)にハイブリッド形成する。連結用オリゴは増幅済み産物に相補的な遺伝子特異的配列を含み、さらに第1のバーコード配列と異なるバーコード配列(バーコードB)を含む場合、ハイブリダイゼーション反応に連結用オリゴヌクレオチドが添加される。このとき、包括的可溶性バーコードB特異的標識付きプローブが連結用オリゴにハイブリッド形成され、かくして、増幅された産物の検出が可能となる。 該発明の一非制限的実施形態を例示するダイヤグラムを提供する。多重試料からの増幅済み核酸の選択的局在化及び検出のための複数の標識を使用する二次的可溶性遺伝子特異的標識付きプローブ、及び試料特異的バーコード配列、試料特異的バーコード配列プローブ(すなわち付着部分)を含むアレイの使用を例示するダイヤグラムを提供する。 該発明の一非制限的実施形態を例示するダイヤグラムを提供する。多重試料からの増幅済み核酸の選択的局在化及び検出のための二次的可溶性バーコード特異的標識付きプローブ、及び遺伝子特異的バーコード配列、遺伝子配列付着部分を含むアレイの使用を例示するダイヤグラムである。 該発明の一非制限的実施形態を例示するダイヤグラムを提供する。多重試料からの増幅済み核酸の選択的局在化及び検出のための二次的可溶性標識付きバーコードプローブ及び、同時に取込まれた遺伝子特異的及び試料特異的バーコード配列、試料特異的配列付着部分を含むアレイの使用を例示するダイヤグラムである。 該発明の一非制限的実施形態を例示するダイヤグラムを提供する。多重試料からの増幅済み核酸の選択的局在化及び検出のための二次的可溶性標識付きバーコードプローブ及び、試料特異的バーコード配列、バーコード配列付着部分を含むアレイ、遺伝子特異的及びバーコードプローブ特異的配列を含むリンカーオリゴヌクレオチドの使用を例示するダイヤグラムである。 該発明の一非制限的実施形態を例示するダイヤグラムを提供する。多重試料からの増幅済み核酸の選択的局在化及び検出のための二次的可溶性標識付きバーコードプローブ及び、同時に取込まれた遺伝子特異的及び試料特異的バーコード配列、バーコード配列付着部分を含むアレイ、遺伝子特異的及びバーコード及びプローブバーコード配列を含むリンカーオリゴヌクレオチドの使用を例示するダイヤグラムである。

Claims (8)

  1. 2つ以上の遺伝子発現プロファイルを決定する方法において、
    2つ以上の生物試料から複数のRNA試料を提供するステップ;
    少なくとも1つの汎用プライマと、前記汎用プライマと相同な汎用プライミング配列を含む第1の配列部分、対象遺伝子に相補的な第2の配列部分、及びバーコード配列を含む第3の配列部分を有する少なくとも1対のキメラ遺伝子特異的バーコード化プライマとを用いて、2つ以上の生物試料の各々から前記RNAを増幅し、かくして2以上のバーコード化PCR産物を生成するステップ;
    複数の遺伝子発現産物を表す複数の核酸を含むアレイを提供するステップであって、前記複数の核酸の各々が前記アレイ内の別々の離れた物理的場所に位置づけされ、前記複数の核酸のうち少なくとも1つの核酸が、前記2以上のバーコード化PCR産物が有するバーコード配列に相補的であるステップ;
    前記アレイに対し前記2以上のバーコード化PCR産物をハイブリッド形成するステップであって、前記バーコード配列を含む第3の配列部分が前記アレイに存在する前記バーコード配列に相補的な核酸にハイブリッド形成するステップ;
    前記アレイを洗浄すると共に、未結合バーコード化PCR産物を除去するステップ;及び
    前記アレイ内の選択された場所にハイブリッド形成されたバーコード化PCR産物の量を検出し、定量し、かくして2つ以上の生物試料の各々についての前記遺伝子発現プロファイルを決定するステップ、
    を含んで成る方法。
  2. 前記RNA試料を提供するステップが、細胞培養又は患者からの組織試料からRNAを得るステップを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記RNA試料を提供するステップがさらに対照RNA配列を提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 記少なくとも1つの汎用プライマが検出可能な部分を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記汎用プライマが前記PCR産物の生成に先立って又は前記PCR産物を生成した後に標識される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記アレイがマイクロアレイ、ドットブロットアレイ又は規則配列アレイを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記アレイを提供するステップが、核酸の2次元アレイ又は核酸の3次元アレイを提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記検出可能な部分が蛍光標識を含む、請求項4に記載の方法。
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