JP5169548B2 - 溶接溶け込み深さ評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、密閉型電池における溶接部の溶接溶け込み深さを評価する溶接溶け込み深さ評価方法に関する。
従来、金属材料から成る被溶接材の溶接部における接合材の溶融状態の検査は、該溶接部を切断して、該溶接部の断面を観察することにより行われている。例えば、図8に示すように、密閉型電池においては、従来から切断した溶接部の断面を観察することにより溶接溶け込み深さを検査している。このように溶接部の断面を観察することにより、接合材の被溶接材に対する溶接溶け込み深さなどの、溶接状態の良・不良の評価を行うことができる。
一方、超音波を用いて金属材料から成る被溶接材の溶接部の非破壊検査を行う方法が知られている。例えば、特許文献1には、ホイールを水中に浸漬してホイールリブ部の溶接品質を評価するため超音波入射角5°のセンサでワークを回転(センサは固定)させて超音波探傷測定を行う溶接部の超音波測定法が記載されている。
特開平11−44675号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているようにセンサは固定でホイールを回転させて同心円部のみ計測しても溶接溶け込み深さは評価できない。
すなわち、このような検査では、溶接部内の亀裂等の欠陥有無は判定可能だが、溶接溶け込み深さ及び被溶接材に対して溶接部の全容を一度に把握できない。
また、生産現場等においては抜き取り検査により生産品を評価することが多く、評価スピードの観点からも従来のように評価対象物である抜き取り品を上述したように直接切断して断面観察するという評価方法は時間がかかり過ぎるとともに破壊検査となるため、抜き取り検査の方法として適するものでなかった。
さらに、密閉型電池の一例である2次電池(例えば、Liイオン電池)の製造等においては、所定の内圧に耐えられる溶接溶け込み深さが予め決られており、レーザ溶接による封缶後の溶接溶け込み深さを把握することは、特に安全性確保(内圧による溶接部破損防止)から非常に重要である。
また、Liイオン電池のような密閉型電池における溶接においては、電池要素を収納する缶体の内周側まで溶接溶け込み深さが拡大した場合、スパッタが缶体の内部に侵入する虞がある。すなわち、缶体の内部へのスパッタ侵入による電池性能の低下が起こる虞がある。そのため、電池外装を形成する缶体と蓋部材との当接部全周を外側から溶接する際には、溶接溶け込み深さが缶体の内周側まで到達していないかどうかを電池外装全周にわたって評価できるようにすることが求められている。
そこで、本発明は、レーザ溶接による封缶後に超音波を用いて溶接溶け込み深さを評価する溶接溶け込み深さ評価方法を提供することを目的とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、
開口端部を有する缶体と、該缶体の開口端部を閉塞する蓋部材とをレーザ溶接により封止することで形成される密閉型電池における溶接部の溶接溶け込み深さを評価する溶接溶け込み深さ評価方法であって、
前記密閉型電池に対して超音波を送信しつつ走査して前記密閉型電池の所定部位に対応するエコー信号を取得するエコー信号取得工程と、
前記エコー信号取得工程により取得したエコー信号のうち前記蓋部材表面及び前記缶体と前記蓋部材との界面のそれぞれに対応するエコー信号を、表面エコー画像と界面エコー画像へと画像化する画像化工程と、
前記画像化工程により画像化された表面エコー画像と界面エコー画像のそれぞれを2値化された画像にする2値化工程と、
前記2値化工程により2値化された表面エコー画像から2値化された界面エコー画像を減算する減算工程と、
前記減算工程により減算された画像から前記溶接部の輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、
前記輪郭抽出工程により抽出された前記輪郭に基づいて前記溶接溶け込み深さを算出して前記溶接部の良否判定を行う判定工程と、を有するものである。
請求項2においては、
開口端部を有する缶体と、該缶体の開口端部を閉塞する蓋部材とをレーザ溶接により封止することで形成される密閉型電池における溶接部の溶接溶け込み深さを評価する溶接溶け込み深さ評価方法であって、
前記密閉型電池に対して超音波を送信しつつ走査して前記密閉型電池の所定部位に対応するエコー信号を取得するエコー信号取得工程と、
前記エコー信号取得工程により取得したエコー信号のうち前記蓋部材表面及び前記缶体と前記蓋部材との界面のそれぞれに対応するエコー信号を、表面エコー画像と界面エコー画像へと画像化する画像化工程と、
前記画像化工程により画像化された表面エコー画像の濃淡を調整して、該調整後の表面エコー画像に前記界面エコー画像を加算するとともに、予め設定されている溶接溶け込み深さを示す基準線を加算して構成された画像を目視することにより良否判定を行う判定工程と、を有するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、溶接部を切断したり研磨したりする必要がなく非破壊で検査することができ、かつ瞬時に溶接部の溶接溶け込み深さを算出して評価できる。
請求項2においては、溶接部を切断したり研磨したりする必要がなく非破壊で溶接部の溶接溶け込み深さを可視化することができる。溶接溶け込み深さを可視化することによって、評価者が目視にて溶接部の溶接溶け込み深さの良否判定を行うことができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る超音波検査装置の全体構成を示す図、図2は超音波センサによる検査の概要を示す断面図、図3は溶接溶け込み深さ評価方法のフローを示す図、図4はワークのエコー画像の一部を示す図であり(a)は界面エコー画像を示す図(b)は表面エコー画像を示す図である。図5は減算工程後の出力画像の一部を示す図、図6は溶接溶け込み深さ算出の概念を示す図であり(a)は直線部の算出の概念を示す図(b)は角部の算出の概念を示す図である。図7は目視にて溶接部不具合を検査する場合の画像を示す図、図8はワークにおける溶接部の溶接溶け込み深さを示す断面図である。
本発明に係る溶接溶け込み深さ評価方法は、図1に示す超音波検査装置1により、密閉型電池、例えば、Liイオン電池などの二次電池の筐体である缶体9と蓋部材10とをレーザ溶接にて封止した際に形成される溶接部11(図2)の溶接溶け込み深さD(図2)を計測したり、目視により良否判定を評価するためのものである。
ここで、溶接部11の溶接溶け込み深さDとは、図2又は図8に示すように、缶体9と蓋部材10との当接部をレーザ溶接した際に缶体9の開口端部の側壁厚さ方向に溶け込んだ部分(溶融した部分)の幅長さのことをいう。また、缶体9の開口端部の側壁厚さ方向の溶接されない部分を隙間12という。
まず、本発明に係る溶接溶け込み深さ評価方法を適用することができる超音波検査装置の構成について図1、図2を用いて説明する。
超音波検査装置1は、密閉型電池(以下、ワーク2という)の内部を、超音波を用いて非破壊で検査する手段であり、ワーク2に対して超音波の送受信を行う超音波センサ3と、ワーク2を底部に配置可能である水を貯留した水槽4と、前記超音波センサ3と接続される超音波測定器5と、走査手段6と、制御装置7と、画像処理装置8と、から主に構成されている。超音波検査装置1は、本発明に係る溶接溶け込み深さ評価方法を適用することで、密閉型電池全周の溶接部11の溶接状態を画像化(可視化)して、図2に示すように溶接部11(溶接溶け込み深さD)と未溶接部(缶体9と蓋部材10との隙間12の幅長さG)との割合等の溶接状態を評価するためのものである。
ワーク2は、その外形が直方体形状の密閉型2次電池の一例であるLiイオン電池である。ワーク2の筐体は、有底状の缶体9と、平面視略長方形状の板状部材であり前記缶体9の開口端部を閉塞する蓋部材10と、から構成されている。ワーク2は、前記缶体9内に図示しない電池要素を収納し、缶体9の開口端部を前記蓋部材10の周縁部により閉塞し、缶体9と蓋部材10との当接部を外側から全周にわたってレーザ溶接により封止することで形成されている。
超音波センサ3は、該超音波センサ3を水槽4内の水中において自在(前後上下左右)に移動させるために、走査手段6の一端に支持されている。また、超音波センサ3は、ケーブルを介して超音波測定器5に接続されている。超音波センサ3は、その内部に振動子である圧電素子(図示せず)を内蔵している。本実施形態における超音波センサ3としては、例えば、複数の圧電素子を有する多チャンネル型のアレイプローブ、もしくは、1つの圧電素子を有するシングルプローブ等を用いることができる。前記超音波センサ3内の圧電素子と前記超音波測定器5内に具備される後述するパルス送受信手段とが、ケーブルを介して接続されており、パルス送受信手段は圧電素子に対して所定周波数(本実施形態においては、75MHz)の送信パルスを与えることで、超音波センサ3(圧電素子)がワーク2に対して超音波を送信(照射)することが可能となっている。また、超音波センサ3の探傷深さは可変であり、後述する画像処理装置8により探傷深さを所定範囲に設定することが可能である。
また、超音波センサ3内の圧電素子は、ワーク2に対して送信された超音波の反射波であるワーク2表面からの反射エコーである表面エコー、缶体9と蓋部材10との界面である隙間12(図2)からの反射エコーである界面エコー、缶体9の底面からの反射エコー等を受信することが可能となっている。
なお、図2に示す隙間12は理解に供しやすくするために模式的に図示したものであり、レーザ溶接後に溶接部11が形成された後にできる隙間12はほとんど目視できない程度のものである。
超音波測定器5は、前述した超音波センサ3内の圧電素子に所定周波数の送信パルスを与えることで超音波の送信と、反射エコーの受信を行うことが可能であるパルス送受信手段(図示せず)と、該パルス送受信手段により受信した反射エコーをアナログ信号からデジタル信号へと変換して、後述する画像処理装置8に送信することが可能である変換手段(図示せず)と、を備えている。
具体的には、超音波測定器5は、図2に示すように、前記超音波センサ3の一端を、蓋部材10に対向配置して、蓋部材10上面近傍に近づけた状態で、超音波センサ3の一端からワーク2に向けて超音波を送信(照射)することで、超音波がワーク2表面やワーク2内部の所定部位で反射されて反射エコーとして戻ってくるが、この反射エコーを超音波センサ3にて受信して、この受信された反射エコーを信号として画像処理装置8の後述する演算処理部13に送り、該演算処理部13で所定の演算処理をすることで、前記所定部位の位置や深さを検出することができる。
走査手段6は、前記超音波センサ3をワーク2上方にて前後上下左右に走査するための手段であり、ケーブルを介して制御装置7に接続されており、制御装置7によって作動制御がなされる。また、制御装置7は画像処理装置8に接続しており、走査手段6(超音波センサ3)の位置情報を、制御装置7を介して画像処理装置8に送る。画像処理装置8では、受けた位置情報に基づいて、後述するように画像化のための演算処理を行う。
画像処理装置8は、超音波測定器5にて検出された反射エコーに関する情報や前述した走査手段6から超音波センサ3の位置情報を受けて、演算処理を行い、この処理結果を表示出力させることによりワーク2内を画像化(可視化)する手段である。
また、画像処理装置8は、演算処理部13と、表示出力部14とで構成される。本実施形態においては、前記演算処理部13としてパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータを採用し、また、前記表示出力部14として前記汎用コンピュータに接続されるモニタ(CRT、液晶ディスプレイ等)を採用している。
演算処理部13は、パルス送受信手段により受信した反射エコーに基づいて、所定部位に対応する画像化を行う演算処理を行う手段であり、後述する溶接溶け込み深さ評価方法に基づく演算処理によって得られた表面エコー画面と界面エコー画面等の画像データを記憶する記憶手段と、溶接部11の溶接溶け込み深さDの良否判定を行う判定手段と、各種演算処理を行うプログラムを格納している格納手段などを備えている。
また、演算処理部13は、前記制御装置7より、超音波センサ3の位置情報を取得する。そして、この位置情報を演算処理部13にて溶接部11の画像処理解析に用いる。
表示出力部14は、超音波検査結果であるエコー波形の時系列データ、演算処理結果である画像データ、及び溶接溶け込み深さDの計測結果等について表示を行うものである。表示出力部14は、ワーク2に対して超音波検査を行った際に、超音波センサ3(超音波測定器5)が受信する反射エコー(エコー信号)に基づき、前記演算処理部13にて演算処理される溶接部11の様子を表す情報を、所定の表示形式にて表示出力が可能となっている。評価者は、表示出力部14に表示される画像データや溶接溶け込み深さDの計測結果を確認することにより、良否判定することが可能となっている。
なお、画像処理装置8の構成は本実施形態に限定されるものではなく、演算処理部13は、該演算処理部13にて行われる各処理を行うことができる手段であれば足り、また、表示出力部14は、演算処理部13の演算処理結果を表示出力できる手段であれば足りる。
また、超音波制御器5、制御装置7、演算処理部13及び表示出力部14が一体的に構成された装置であってもかまわない。
このような構成により、評価者が画像化(可視化)された溶接部11を観察したり、溶接溶け込み深さDの計測結果を確認したりすることによって、溶接部11の缶体9と蓋部材10との溶け込み状態(溶接溶け込み深さDと隙間12の幅長さGの割合等)の良否を判定することができる。
次に、上記のように構成された超音波検査装置1を用いて実施する溶接溶け込み深さ評価方法について、図3を用いて説明する。
本発明に係る溶接溶け込み深さ評価方法は、図3に示すように、エコー信号取得工程(S10)と、画像化工程(S20)と、2値化工程(S30)と、減算工程(S40)と、輪郭抽出工程(S50)と、判定工程(S60)と、を有する工程フローに従って実施される方法である。以下、具体的に実施例を挙げて溶接溶け込み深さ評価方法の各工程の説明を行う。
(エコー信号取得工程:S10)
まず、図1に示すように、水槽4内の底部にワーク2である密閉型電池(本実施例においては2次電池であるLiイオン電池)を、蓋部材10が上部、缶体9が下部に位置するようにセット後、制御装置7により走査手段6を作動させ、超音波センサ3を水中に没して可能な限りワーク2の表面(蓋部材10の上面)に接近させる。そして、ワーク2の表面と超音波センサ3の一端である超音波発射端とを対向させた状態で、前記パルス送受信手段により所定周波数(本実施例においては75MHz)の送信パルスを、ケーブルを介して超音波センサ3内の圧電素子に与えて、該超音波センサ3の一端から超音波をワーク2へ向けて送信(照射)しつつ、ワーク2全体を走査(探傷ピッチ:30μm×30μm、走査範囲:100mm×100mm)する。送信された超音波は、ワーク2の表面に到達し、ワーク2表面の反射エコーである表面エコーが超音波センサ3側へと戻ってくる。
また、ワーク2内に伝播した超音波は、蓋部材10と缶体9開口端部との界面である隙間12や缶体9底部等において反射される。これら各反射部位に対応した反射エコーを超音波センサ3にて受信する。受信された反射エコーは、超音波測定器5内の変換手段にて、アナログ信号からデジタル信号へと変換され、画像処理装置8の演算処理部13へと送られる。すなわち、画像処理装置8が、超音波測定器5を介してワーク2表面からのエコー信号と、ワーク2表面から所定の探傷深さ範囲のエコー信号(本実施例ではワーク2表面から0.1〜0.8mmのエコー信号)を取得する。
このように、前記ワーク2表面からの所定の探傷深さ範囲内のエコー信号を取得する理由は、探傷深さ範囲内に隙間12と溶接部11が入るようにしているからである。このように探傷深さ範囲を予め設定することで、溶接溶け込み深さDを画像化及び算出する際の演算処理が素早く行えるようなる。
なお、溶接部11ではレーザ溶接により缶体9と蓋部材10とが互いに溶け込んだ状態であり、缶体9及び蓋部材10とが一体化した状態であるため、超音波の反射は起こらない。
(画像化工程:S20)
続いて、画像処理装置8の演算処理部13では、前記超音波センサ3にて受信されたエコー信号に基づき、ワーク2の所定部位を画像化するための演算処理を行う。
すなわち、超音波センサ3により検出されたワーク2表面の反射波である表面エコーは演算処理部13にて演算処理されて表面エコー画像A(ワーク2表面の平面視形状を示す画像)として、図4(b)に示すように画像化されるとともに、この画像データは演算処理部13内の記憶手段に記憶される。また、缶体9と蓋部材10との界面(隙間12)の反射波である界面エコーは演算処理されて界面エコー画像B(缶体9と蓋部材10との界面である隙間12の平面視形状を示す画像)として、図4(a)に示すように画像化されるとともに、この画像データは前記記憶手段に記憶される。
(2値化工程:S30)
前記画像化工程(S20)により画像化された表面エコー画像Aと界面エコー画像Bのそれぞれを、所定のしきい値にて画像を2値化して、画像を構成する各画素において所定のしきい値よりも明るければ白色に、所定のしきい値よりも暗ければ黒色にして白と黒の2階調の画像に変換する。
(減算工程:S40)
前記2値化工程(S30)により2値化された表面エコー画像Aと界面エコー画像Bの両画像において、表面エコー画像Aから界面エコー画像Bを減算(差分)する処理を行うことで、図5に示す減算処理後の画像(A―B)を得る。図5においては黒矢印で示す缶体9の内壁の外周に隙間12が位置しており、該隙間12の外周には、白抜き矢印で示したように溶接溶け込み深さDの所定の分布を有する溶接部11が確認できる。
(輪郭抽出工程:S50)
前記減算工程(S40)により減算処理された図5に示す画像(A―B)に基づき、演算処理部13にて演算処理を行い輪郭部分として溶接溶け込み部分である溶接部11だけを抽出する。すなわち、後述する判定工程において溶接溶け込み深さDを算出する際に用いる元画像を抽出する。
(判定工程:S60)
前記輪郭抽出工程(S50)により抽出された溶接部11の輪郭において、図6に示すように、溶接部11の輪郭外形側5点の位置座標から曲線近似式を算出し中間点Mからの垂線を求め、その垂線と内側(輪郭内形)の点が交わった点との間の直線距離を溶接部11の溶接溶け込み深さDとして算出される。図6(a)は輪郭外形が直線状態のものを表しており、図6(b)は輪郭外形が角部のものを表している。このような溶接溶け込み深さ算出法を、平面視におけるワーク2の外形と溶接部11の内形とから形成される輪郭に適用して、演算処理部13にて演算処理を行い、溶接溶け込み深さDの算出を行う。こうして、算出された溶接溶け込み深さDの結果に基づいてワーク2の溶接部11の良否判定を行うことができる。これによって、溶接部11の溶融状態の不具合箇所を特定し、缶体9と蓋部材10との封止状態を迅速かつ簡便に評価することができる。
また、上述のようにして、各工程に従って、画像化処理され、この処理画像が前記演算処理部13の処理結果として表示出力部14に表示出力される。
このように、缶体9と、該缶体9の開口端部を閉塞する蓋部材10とをレーザ溶接により封止することで形成されるワーク2における溶接部11の溶接溶け込み深さDを評価する溶接溶け込み深さ評価方法であって、前記ワーク2に対して超音波を送信しつつ走査して前記ワーク2の所定部位に対応するエコー信号を取得するエコー信号取得工程と、前記エコー信号取得工程により取得したエコー信号から前記蓋部材10表面及び前記缶体9と前記蓋部材10との界面のそれぞれに対応するエコー信号を、表面エコー画像Aと界面エコー画像Bへと画像化する画像化工程と、前記画像化工程により画像化された表面エコー画像Aと界面エコー画像Bのそれぞれを2値化された画像にする2値化工程と、前記2値化工程により2値化された表面エコー画像Aから2値化された界面エコー画像Bを減算する減算工程と、前記減算工程により減算された画像から前記溶接部11の輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、前記輪郭抽出工程により抽出された前記輪郭に基づいて前記溶接部の溶接溶け込み深さDを算出して前記溶接部11の良否判定を行う判定工程と、を有する溶接溶け込み深さ評価方法を適用することにより、溶接部を切断したり研磨したりする必要がなく非破壊で検査することができ、かつ瞬時に溶接部の溶接溶け込み深さDを算出して評価できる。
次に、溶接溶け込み深さ評価方法における別実施例について図3、図7を用いて説明する。
実施例1のように具体的な溶接溶け込み深さDの数値が必要無い場合は、実施例1で示したエコー信号取得工程(S10)と画像化工程(S20)とを行った後に、別の判定工程(S70)を実施する。この判定工程(S70)においては、画像化工程(S20)により画像化された表面エコー画像Aの濃淡を調整(本実施例では濃淡を半減)して、該調整後の表面エコー画面Aに界面エコー画像Bに加算し、さらに、予め設定されている溶接溶け込み深さDに対応する基準線(判定基準)であるライン15(図7)を加算する。このとき、ライン15は、ワーク2の溶接部11全周にわたるように表示される。こうして構成された画像(図7)を評価者が目視することで、溶接部11の内形がライン15より内側に入っているか否かの良否判定を行う。すなわち、前記画像化工程(S20)後に上述した別の判定工程(S70)を実施した場合、評価者が、表示出力部14に表示される画像(図7)を視認することにより、溶接部11おける溶接溶け込み深さDをワーク2全周にわたって観察し評価することができる。これによって、溶接部11の溶融状態の不具合箇所を特定することが可能となり、缶体9と蓋部材10との封止状態を迅速かつ簡便に評価することができる。
このように、缶体9と、該缶体9の開口端部を閉塞する蓋部材10とをレーザ溶接により封止することで形成されるワーク2における溶接部11の溶接溶け込み深さDを評価する溶接溶け込み深さ評価方法であって、前記ワーク2に対して超音波を送信しつつ走査して前記ワーク2の所定部位に対応するエコー信号を取得するエコー信号取得工程と、前記エコー信号取得工程により取得したエコー信号から前記蓋部材10表面及び前記缶体9と前記蓋部材10との界面のそれぞれに対応するエコー信号を、表面エコー画像Aと界面エコー画像Bへと画像化する画像化工程と、前記画像化工程により画像化された表面エコー画像Aの濃淡を調整して、該調整後の表面エコー画像Aに前記界面エコー画像Bを加算するとともに、予め設定されている溶接溶け込み深さDを示す基準線であるライン15を加算して構成された画像を目視することにより良否判定を行う判定工程と、を有する溶接溶け込み深さ評価方法を適用することにより、溶接部を切断したり研磨したりする必要がなく非破壊で溶接部の溶接溶け込み深さを可視化することができる。溶接溶け込み深さを可視化することによって、評価者が目視にて溶接部の溶接溶け込み深さの良否判定を行うことができる。
ここで、本発明に係る溶接溶け込み深さ評価方法を適用してワーク2の評価を行う際に、超音波照射面となる蓋部材10表面が平面でない場合、例えば、突起物等があったり面性状が粗い場合は、ワーク2の超音波検査の前処理工程として回転湿式研磨機を用い(200rpm)、研磨粗さが180、500、800、1000の研磨盤を順に使用し、ワーク2表面を滑らかな平面とすると良い。この条件以外では、表面粗さが粗く、超音波が表面で散乱してしまい、信号ノイズが増加する場合がある。
本発明の溶接溶け込み深さ評価方法は、密閉型電池である2次電池(Liイオン電池)の製造の際の封缶レーザ溶接の溶接溶け込み深さDを計測し良否判定する方法であるが、特に限定するものではなく、金属製である缶体と蓋体とを溶接して密閉状態となる容器等について広く適用することが可能である。
本発明の実施の形態に係る超音波検査装置の全体構成を示す図。 超音波センサによる検査の概要を示す断面図。 溶接溶け込み深さ評価方法のフローを示す図。 ワークのエコー画像の一部を示す図であり(a)は界面エコー画像を示す図(b)は表面エコー画像を示す図。 減算工程後の出力画像の一部を示す図。 溶接溶け込み深さ算出の概念を示す図であり(a)は直線部の算出の概念を示す図(b)は角部の算出の概念を示す図。 目視にて溶接部不具合を検査する場合の画像を示す図。 ワークにおける溶接部の溶接溶け込み深さを示す断面図。
符号の説明
1 超音波検査装置
2 ワーク
3 超音波センサ
5 超音波測定器
9 缶体
10 蓋部材
11 溶接部
12 隙間
15 ライン
A 表面エコー画像
B 界面エコー画像
D 溶接溶け込み深さ

Claims (2)

  1. 開口端部を有する缶体と、該缶体の開口端部を閉塞する蓋部材とをレーザ溶接により封止することで形成される密閉型電池における溶接部の溶接溶け込み深さを評価する溶接溶け込み深さ評価方法であって、
    前記密閉型電池に対して超音波を送信しつつ走査して前記密閉型電池の所定部位に対応するエコー信号を取得するエコー信号取得工程と、
    前記エコー信号取得工程により取得したエコー信号のうち前記蓋部材表面及び前記缶体と前記蓋部材との界面のそれぞれに対応するエコー信号を、表面エコー画像と界面エコー画像へと画像化する画像化工程と、
    前記画像化工程により画像化された表面エコー画像と界面エコー画像のそれぞれを2値化された画像にする2値化工程と、
    前記2値化工程により2値化された表面エコー画像から2値化された界面エコー画像を減算する減算工程と、
    前記減算工程により減算された画像から前記溶接部の輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、
    前記輪郭抽出工程により抽出された前記輪郭に基づいて前記溶接溶け込み深さを算出して前記溶接部の良否判定を行う判定工程と、を有することを特徴とする溶接溶け込み深さ評価方法。
  2. 開口端部を有する缶体と、該缶体の開口端部を閉塞する蓋部材とをレーザ溶接により封止することで形成される密閉型電池における溶接部の溶接溶け込み深さを評価する溶接溶け込み深さ評価方法であって、
    前記密閉型電池に対して超音波を送信しつつ走査して前記密閉型電池の所定部位に対応するエコー信号を取得するエコー信号取得工程と、
    前記エコー信号取得工程により取得したエコー信号のうち前記蓋部材表面及び前記缶体と前記蓋部材との界面のそれぞれに対応するエコー信号を、表面エコー画像と界面エコー画像へと画像化する画像化工程と、
    前記画像化工程により画像化された表面エコー画像の濃淡を調整して、該調整後の表面エコー画像に前記界面エコー画像を加算するとともに、予め設定されている溶接溶け込み深さを示す基準線を加算して構成された画像を目視することにより良否判定を行う判定工程と、を有することを特徴とする溶接溶け込み深さ評価方法。
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