JP5168928B2 - 一体化成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性に優れた熱可塑性樹脂複合体、異種材料との接合性に優れた積層構造体を用いた一体化成形品に関するものであり、より詳しくは、本発明は、薄肉・軽量・剛性・難燃性が要望される電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器、自動車部品、航空機部品および建材などに好ましく用いられる熱可塑性樹脂複合体、その複合構造体を用いて一体化した成形品に関するものである。
近年、様々な分野で製品の安全性が求められるようになり、火災に対する安全性については、特に航空機や車両などの構造材料および建築材料などにおいては、火災によって構造材料が着火燃焼し、有毒ガスなどが発生することは非常に危険であるため、それららの材料に難燃性を付与することが強く求められている。
また、電気・電子機器用途においても、装置内部からの発熱や外部の高温にさらされることにより、筐体や部品などが発火し燃焼する事故を防ぐために、材料の難燃化が求められている。
これらの用途に用いられる構造体は、通常、各種部材をそれぞれ作成し、次いで、それらの部材を一体化することにより製造されている。従来の一体化手法としては、接着剤を使用する接合方法が、ボルト、リベットまたはビスなどの機械的接合方法とともに用いられており、難燃性の面から接着剤を使用する一体化では、難燃性接着剤などが用いられている。
従来、難燃性を有するホットメルト接着剤として、メラミンシアヌレートおよび赤リンを添加した熱可塑性ポリエステル系接着剤が提案されている(特許文献1参照)。難燃剤であるメラミンシアヌレートおよび赤リンを添加することで、ホットメルト接着剤に優れた難燃性を付与することが可能である。しかしながら、難燃剤をホットメルト接着剤中に均一分散させるため、接着強度の低下を回避することは困難であり、さらなる改善が期待されていた。
また、別にリン系難燃剤が添加された難燃性ポリエステル接着剤が提案されている(特許文献2参照)。これに関しても、難燃剤をポリエステル接着剤中に均一分散させるため、接着強度の低下を回避することは困難であり、さらなる改善が期待されていた。
さらに、容易にかつ強固に別の部材と溶着可能なFRP積層体として、熱硬化性樹脂を含むFRPの表面に熱可塑性樹脂層が、これらの層の界面において、強化繊維を含めて凹凸形状を有して一体化されている積層体が提案されている(特許文献3参照)。この提案では、熱可塑性樹脂層には難燃剤を添加しても良いと示されているが、難燃剤の添加により接着強度が低下する可能性があり、目的とする難燃性を発現するために使用できる難燃剤の量および種類などには限度があった。そのため、難燃性に優れ、かつ幅広い材料を溶着させるために、さらなる改善が期待されていた。
特開2005−336381号公報 特開2005−171044号公報 国際公開第2004/060658号パンフレット
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、難燃性および接着性に優れた熱可塑性樹脂複合体およびそれを付与した複合構造体を用いた一体化成形品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上記課題を達成することができる、次の一体化成形品(V)を見出した。
(1)ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と、単繊維が集合した単繊維集合形態のポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂およびフェノール系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂繊維(B)からなる熱可塑性樹脂複合体(I)であって、トータル厚みtが5〜500μmであり、かつ熱可塑性樹脂複合体(I)の表面から熱可塑性樹脂繊維(B)までの最小埋没深さdが0〜200μmであり、かつ該熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)をLaとし、該熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)をLbとしたときに、Lb>LaかつLbが25以上の関係を満足する熱可塑性樹脂複合体(I)が、別の構造体(II)の表面の一部に付与されてなる複合構造体(III)と、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と同種の熱可塑性樹脂を含む他の部材(IV)とが、熱可塑性樹脂複合体(I)を介して接合されてなる一体化成形品(V)
(2)熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する単繊維糸径が1〜100μmである前記(1)に記載の一体化成形品(V)
(3)熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する単繊維同士の一部が融着した状態である前記(1)または(2)に記載の一体化成形品(V)。
(4)熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が熱可塑性樹繊維(B)を構成する単繊維間に含浸し、充填された構造を形成している前記(1)〜(3)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
(5)熱可塑性樹脂繊維(B)が熱可塑性樹脂マトリックス層(A)に対して10〜70重量%の割合で含まれている前記(1)〜(4)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
)前記熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂が、元素分析でナトリウムおよびカルシウムの含有量が300ppm以下のPPS樹脂である、前記(5)に記載の一体化成形品(V)
)熱可塑性樹脂繊維(B)の表面に、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を分子内に1個以上有する有機化合物、高分子化合物または有機ケイ素化合物が0.1〜10重量%付着している、前記(5)または(6)に記載の一体化成形品(V)
)前記有機化合物、高分子化合物または有機ケイ素化合物が、多官能芳香族エポキシ、グリシジル変性有機シラン化合物、イソシアネート変性有機シラン化合物、アミノ変性有機シラン化合物、酸変性ポリオレフィン、およびエポキシ変性ポリオレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、前記(7)に記載の一体化成形品(V)
)熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂に融点が存在する場合は融点Tb(℃)、融点が存在しない場合には軟化点Tb(℃)と、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂に融点が存在する場合は融点Ta(℃)、融点が存在しない場合には軟化点Ta(℃)とが、Tb>Taの関係を満足する前記(1)〜()のいずれかに記載の一体化成形品(V)
10)別の構造体(II)が、連続した強化繊維(C)と熱硬化性マトリックス樹脂(D)から構成される繊維強化複合材料である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
11)熱硬化性マトリックス樹脂(D)がエポキシ樹脂硬化物である前記(10)に記載の一体化成形品(V)
12)熱硬化性マトリックス樹脂(D)が、リンまたはその化合物をリン原子換算で0.2〜15重量%含有するエポキシ樹脂硬化物である前記(11)に記載の一体化成形品(V)
13)熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が強化繊維(C)に最大含浸厚みhが10〜200μmの範囲で含浸しており、かつ熱可塑性樹脂マトリックス層(A)は凹凸形状を形成して別の構造体(II)と接合一体化されてなる前記(10)〜(12)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
14)別の構造体(II)が、熱可塑性マトリックス樹脂(E)を含む前記(1)〜(9)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
15)強化繊維(C)が炭素繊維である前記(1)〜(14)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
16複合構造体(III)のUL−94に基づく難燃性が0.8mm厚以下の試験片でV−1またはV−0である前記(10)〜(15)のいずれかに記載の一体化成形品(V)
17)電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器自動車部品、航空機部品または建材のいずれかの用途に用いられる前記(1)〜(16)のいずれかに記載の一体化成形品(V)。
本発明において、熱可塑性樹脂複合体を用いることにより、各種異種材料と強固に一体化することができ、かつ優れた難燃性の一体化成形品が得られる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂複合体、積層構造体およびその一体化成形品について、具体的に説明する。
図1は、本発明の熱可塑性樹脂複合体(I)の一例を示す概略断面図である。
本発明の熱可塑性樹脂複合体(I)は、図1に示すように、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と熱可塑性樹脂繊維(B)が存在する構造を有するものである。ここで難燃性の観点から、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)をLaとし、熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)をLbとしたときに、式Lb>Laの関係を満足し、かつLbが25以上ことが重要である。Lbが25以上かつLb>Laであることで、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が燃焼した場合でも、熱可塑性樹脂繊維(B)が難燃性のために燃焼を抑えることができる。熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)であるLbは、好ましくは30以上であり、より好ましくは35以上である。Lbが大きくなるに従い、熱可塑性樹脂の難燃性が向上するためである。Lbの上限については、その定義上100が上限である。限界酸素指数(LOI)の測定は、熱可塑性樹脂複合体(I)から熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と熱可塑性樹脂繊維(B)とを分離して、それぞれの限界酸素指数(LOI)を測定する。熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と熱可塑性樹脂繊維(B)とを分離する手法には特に制限はないが、溶剤への溶解度の差を利用して、一方のみを溶解する溶剤に溶かして分離する方法が簡便である。
また、本発明で用いられる熱可塑性樹脂繊維(B)は、単繊維が集合した単繊維集合形態であることが重要である。単繊維集合形態であることにより、熱可塑性樹脂繊維(B)内部まで熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が含浸することが可能であり、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)の接着特性などの基本特性を保ったまま熱可塑性樹脂繊維(B)を熱可塑性樹脂複合体(I)に取り込むことが可能である。また、単繊維集合形態とすることにより、熱可塑性樹脂繊維(B)が燃焼時に溶融して難燃性の被膜を形成しやすくなり、難燃性発現に効果がある。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂複合体(I)のトータル厚みtは、5〜500μmであり、厚みをこの範囲とすることにより、薄肉の接着層として優れた接着性および難燃性を発現しうる観点から、接着層設計において重要である。トータル厚みtは、好ましくは10〜400μmであり、より好ましくは30〜300μmであり、さらに好ましくは50〜200μmである。
また、本発明で用いられる熱可塑性樹脂繊維(B)は、燃焼時に被膜を形成しやすくするために均一な目付の単繊維集合形態を形成することが好ましく、その単繊維糸径は好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは2〜50μmであり、さらに好ましくは3〜20μmである。
熱可塑性樹脂繊維(B)の単繊維集合形態に関しては、千本〜百万本の単繊維を繊維束とした形態のものを平織りや綾織りなどの繊維織物としたもの、千本〜百万本の単繊維を繊維束とした形態のものをエアや水流などにより単繊維同士をランダムに交絡させた単繊維交絡形態としたもの、メルトブロー法やスパンボンド法などにより単繊維同士をランダムに溶融接着させた不織布形態としたものなど特に制限はないが、燃焼時に溶融して難燃性の被膜を形成しやすくし難燃性を向上させることや取り扱い性の面から、単繊維同士の接触点においてお互いの単繊維が溶融接着している状態であることが好ましく、例えば、不織布形態であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂繊維(B)の単繊維集合形態は、目付が1〜100g/mであることが好ましく、目付はより好ましくは2〜70g/mである。
本発明の熱可塑性樹脂複合体(I)が優れた接着性を発現するためには、難燃性を付与する熱可塑性樹脂繊維(B)に熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が含浸して充填構造を形成することが好ましい。また、このような形態をとることは、熱可塑性樹脂複合体(I)が内部の未充填部分の空隙に起因して破壊する可能性が少なく、十分な接着強度を発現しうるために好ましい態様である。
また、熱可塑性樹脂繊維(B)は、難燃性および接着性両立の観点から、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)に対して10〜70重量%の割合で含まれていることが好ましく、より好ましくは15〜60重量%であり、さらに好ましくは20〜50重量%である。
また、図1に示すように、熱可塑性樹脂複合体(I)の表面から熱可塑性樹脂繊維(B)までの距離のうち、最も表面に近いところに存在する熱可塑性樹脂繊維(B)の部位までの距離と定義する最小埋没深さdに関しては、燃焼時に熱可塑性樹脂繊維(B)が難燃性被膜形成を容易にして難燃性発現効果を高める観点から、0〜200μmである必要があり、より好ましくは0〜100μmであり、さらに好ましくは0〜50μmである。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂は、難燃性を高める観点から、難燃性を有することが必要であり、なかでも、難燃性、コストおよび繊維作製の簡便さから、ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、フェノール系樹脂を用いられる。また、これら熱可塑性樹脂は、上述の熱可塑性樹脂の共重合体や変性体、および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよく、さらに用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、熱可塑性樹脂に、難燃性を高めるために難燃剤を添加する、あるいは繊維布帛を作製しやすくするために可塑剤を添加することができる
これらのうちPAS樹脂とは、繰返し単位として−(Ar−S)−(但し、Arはアリーレン基を表す。)で主として構成されたものであり、アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p' −ジフェニレンスルフォン基、p,p' −ビフェニレン基、p,p' −ジフェニレンエーテル基、p,p' −ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが使用できる。なかでも工業的に多数利用されているポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂が好ましく用いられる。
また前記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その製造過程においてポリマー分子鎖末端がカルボン酸のナトリウム塩であるか、あるいはカルボン酸のカルシウム塩となることが多い。熱可塑性樹脂複合体(I)において、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)とポリフェニレンスルフィド繊維との密着性を高め、熱可塑性樹脂複合体(I)を高強度化する観点から、該ポリマー分子鎖末端はカルボン酸末端であることが好ましい。より好ましくは該ポリマーの元素分析において、ナトリウムおよびカルシウムの含有量が300ppm以下である。さらに好ましくは100ppm以下である。ナトリウムおよびカルシウムの含有量の下限は特に制限はなく、含有量が少ない方がより好ましい。ポリフェニレンスルフィド樹脂中のナトリウム、カルシウムの濃度は公知の分析法で定量することができる。例えば、カルシウムの定量はエネルギー分散型もしくは波長分散型X線分光法で、ナトリウムの定量は灰化後、原子吸光法や発光分析法やICP発光分析法で実施することができる。
上記熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂繊維(B)に用いた場合、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)との密着性をさらに高める観点から、該熱可塑性樹脂繊維(B)の表面に接着成分を付与することが好ましい。密着性を高める観点からは、該接着成分が熱可塑性樹脂繊維(B)の表面の70%以上に付着していることが好ましく、より好ましくは90%以上で、表面全体に付着していることがさらに好ましい。該接着成分としては特に制限はないが、接着を高める点からは、高い反応性または相互作用を有する官能基を1個以上分子内に含む化合物が好ましい。官能基の例としてはカルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基、酸無水物基、水酸基、アミド基、エステル基などが挙げられるが、中でもカルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基、酸無水物基は反応性が高い官能基であり好ましい。さらには接着を高める観点から、該官能基を2個以上の複数有する化合物が好ましい。また該化合物は熱可塑性樹脂繊維(B)への親和性の観点から、有機化合物、高分子化合物または有機ケイ素化合物であることが好ましく、無機化合物の場合は親和性に劣る場合がある。熱可塑性樹脂繊維(B)の表面への付着量は、接着を高める効果を効率よく発揮するために、0.1〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.2〜6重量%、さらに好ましくは0.3〜2重量%である。付着量が少ないと接着の効果が十分発現しない場合があり、付着量が多いと難燃性が悪化する場合がある。上記接着成分の付着量の評価方法については、例えば熱可塑性樹脂複合体(I)を熱可塑性樹脂繊維(B)は溶解しないで熱可塑性樹脂マトリックス層(A)および接着成分が溶解する溶剤に溶かし、該溶液を高速液体クロマトグラフィーまたはゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析し、含まれる熱可塑性樹脂マトリックス(A)と接着成分とを定量する方法がある。熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と接着成分がともに溶解する溶剤がない場合には、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を溶解除去してから、接着成分が溶解する溶剤で溶かして該接着成分を定量しても良い。接着成分に含まれる官能基の種類と量に関しては、上記クロマトグラフィーや溶解度の差で分離した接着成分を核磁気共鳴法(NMR)や赤外吸収スペクトル(IR)などの通常の有機化合物分析手段を用いて構造解析することで確認することができる。
なお、前記有機化合物の好ましい例としては、N,N’−エチレンビストリメリットイミド、N,N’−ヘキサメチレンビストリメリットイミドなどのトリメリットイミド化合物や、多官能芳香族エポキシとしては、例えばビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物などがある。また、前記高分子化合物の好ましい例としては、酸変性ポリオレフィンの例としてエチレン−アクリル酸エチル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどがあり、エポキシ変性ポリオレフィンの例としてエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体などがある。また、前記有機ケイ素化合物の好ましい例としては、グリシジル変性有機シラン化合物の例として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアネート変性有機シラン化合物の例として3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがあり、アミノ変性有機シラン化合物としては3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどがある。
前記有機化合物、高分子化合物または有機ケイ素化合物を熱可塑性樹脂繊維(B)の表面に付与する方法は特に限定はないが、固形物であれば粉砕した粉末を熱可塑性樹脂繊維(B)に付着させる方法や、該化合物を溶融させて塗布する方法などがあるが、均一に簡便な塗布方法としては、有機溶剤または水に上記化合物を溶解あるいは分散させた所定濃度の液に、熱可塑性樹脂繊維(B)を浸漬させた後に乾燥させる方法や、スプレーで噴霧した後に乾燥させる方法などが好ましい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂繊維(B)を形成する熱可塑性樹脂に融点が存在する場合には融点Tb(℃)、また融点が存在しない場合には軟化点Tb(℃)と、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂に融点が存在する場合には融点Ta、また融点が存在しない場合には軟化点Ta(℃)とが、Tb>Taの関係を満足することが好ましい。このようにすることにより、熱可塑性樹脂複合体(I)を作製する過程において、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)の融点近辺の温度で熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と熱可塑性樹脂繊維(B)を熱プレス成形するだけで容易に熱可塑性樹脂複合体(I)を作製することができる。ここで、融点が存在しない場合とは、該熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合や、共重合成分が多種含まれている共重合体である場合のように、熱可塑性樹脂の溶融流動が温度上昇とともに徐々に進行して明確な融点を示さない場合のことである。
また、本発明で用いられる熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂としては、限界酸素指数Laが熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数Lbよりも小さいことが必要であり、成形品の強度および耐衝撃性の観点から、ポリアミド(PA)またはポリエステルが用いられ、成形性の観点から、ポリプロピレン(PP)が用いられる。なかでも、成形品の強度の観点から、ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
Laについては、難燃性の観点からは数値が大きいことが好ましく、具体的には例えば15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上である。
また、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成するこれら熱可塑性樹脂は、上記の樹脂の共重合体や変性体および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。これらの中でも、特定の目的に対して、上記特定の熱可塑性樹脂の1種または2種以上が、熱可塑性樹脂中に60重量%以上含まれることが好ましい
また、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)には、耐衝撃性向上のために、他のエラストマーあるいはゴム成分を添加してもよいし、用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。充填材や添加剤として、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤およびカップリング剤などが挙げられる。
図2は、本発明の複合構造体(III)を例示説明するための概略断面模式図である。図2において、複合構造体(III)は、別の構造体(II)の表面の一部に熱可塑性樹脂複合体(I)が付与されているものであり、一例として、別の構造体(II)が、繊維強化マトリックス樹脂の場合を図示している。
ここで別の構造体(II)の種類は特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セメント、コンクリートあるいはそれらの繊維強化品、木材、金属材料および紙材料などの公知のものが好ましく用いられる。さらに、接着性を高めるために、別の構造体(II)には、場合に応じて表面処理やプライマー処理や熱可塑性樹脂によるコーティング処理などが施されていても良い。
とりわけ、別の構造体(II)としては、特に成形性および力学特性の観点から、図2に示すように、連続した強化繊維(C)とマトリックス樹脂(D)から構成される繊維強化複合材料が好ましく用いられる。使用する連続した強化繊維(C)の形態としては、特に限定されず、多数本の強化繊維からなる強化繊維束、この繊維束から構成されたクロス(布帛状物)、多数本の強化繊維が一方向に配列された強化繊維束(一方向性繊維束)、この一方向性繊維束から構成された一方向性クロス、強化繊維を切断して分散させたシートなど、それらを組み合わせたもの、複数層配置した基材などである。なかでも、基材の生産性の観点から、クロスと一方向性繊維束が好ましい。強化繊維群は、同一の形態の複数本の繊維束から構成されていても、あるいは、異なる形態の複数本の繊維束から構成されていても良い。一つの強化繊維群を構成する強化繊維数は、通常、300〜48,000本であるが、基材の製造を考慮すると、好ましくは300〜24,000本であり、より好ましくは1,000〜12,000本である。
ここで、連続した強化繊維(C)としては、成形品の力学特性上、少なくとも一方向に、10mm以上の長さにわたり連続した多数本の強化繊維から構成されていることが好ましい。強化繊維群は、繊維強化複合材料の長さ方向の全長さにわたり、あるいは、繊維強化複合材料の幅方向の全幅にわたり、連続している必要はなく、途中で分断されていても良い。
また、使用される強化繊維群の繊維素材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維および玄武岩繊維等が挙げられる。これらは、単独または2種以上併用して用いられる。これらの繊維素材は、表面処理が施されているものであっても良い。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理および添加剤の付着処理等が挙げられる。これらの繊維素材の中には、導電性を有する繊維素材も含まれている。繊維素材としては、比重が小さく、高強度、高弾性率である炭素繊維が特に好ましく使用される。
マトリックス樹脂(D)としては、熱硬化性樹脂組成物および熱可塑性樹脂組成物が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド、ビスマレイミドおよびシアネートエステル等があり、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂も用いられる。マトリックス樹脂(D)には、衝撃性向上のために、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。特に、エポキシ樹脂は、成形品の力学特性の観点から好ましく、エポキシ樹脂は、その優れた力学特性を発現するために主成分として含まれることが好ましく、具体的には60重量%以上含まれることが好ましい。
加えて、マトリックス樹脂(D)は、難燃性効果を向上させるために、難燃剤を含むことが好ましい。とりわけ、難燃性に効果のあるリン系化合物を含むことが好ましく、リンまたはその化合物をリン原子換算で0.2〜15重量%含むことが好ましい。かかるリン系化合物の割合は、より好ましくは0.4〜11重量%であり、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。マトリックス樹脂(D)中のリン原子含有量は燃焼法−比色法で測定できる。すなわち、別の構造体(II)を燃焼させ、生成するガスをオルトリン酸や各種縮合リン酸の形で純水に吸収させた後、その液中に含まれる各種縮合リン酸を酸化処理してオルトリン酸とし、比色法にて定量する。比色用試薬には、リンバナドモリブデン酸を用いる。
難燃性を付与するリンまたはその化合物としては、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステルおよびホスファフェナントレン系化合物などのリン含有化合物や赤リンが好ましく用いられる。なかでも、赤リンは、難燃剤を付与する働きをするリン原子含有率が大きいため、十分な難燃効果を得るために加えるべき難燃剤の添加量が少量でよい。
また、さらに難燃助剤を添加することも難燃性を向上させるうえで好ましい態様である。難燃助剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化スズなどの金属水酸化物系、アルミン酸化カルシウム、酸化ジルコニウムなどの無機系、メラミンシアヌレートなどの窒素系、シリコン系およびフェノール系等の難燃助剤が挙げられる。
別の構造体(II)は複雑な形状を効率よく作製できる射出成形などを適用できることから、熱可塑性マトリックス樹脂(E)を含んでなることが好ましい。また熱可塑性マトリックス樹脂はお互いの親和性を合わせることで熱可塑性樹脂複合体(I)と溶着可能であり、強固に接合させることが可能なことからも好ましい。熱可塑性マトリックス樹脂(E)を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂およびフェノキシ樹脂等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂マトリックス()を構成するこれら熱可塑性樹脂は、上記の樹脂の共重合体や変性体および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。これらの中でも、特定の目的に対して、下記の熱可塑性樹脂の1種または2種以上が、熱可塑性樹脂中に60重量%以上含まれることが好ましい。成形品の強度および耐衝撃性の観点から、ポリアミド(PA)とポリエステルが好ましく用いられる。また、耐熱性および耐薬品性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)やポリエーテルイミド(PEI)が好ましく用いられる。成形品外観および寸法安定性の観点から、ポリカーボネート(PC)やスチレン系樹脂が特に好ましく用いられる。耐熱水性の観点から、ポリフェニレンエーテル(PPE)が好ましく用いられる。成形性の観点から、ポリプロピレン(PP)が好ましく用いられる。なかでも、成形品の強度の観点から、ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
また、熱可塑性マトリックス樹脂(E)には、耐衝撃性向上のために、他のエラストマーあるいはゴム成分を添加してもよいし、用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。充填材や添加剤として、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤およびカップリング剤などが挙げられる。
図2において、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と別の構造体(II)に強固な接合を発現させる観点から、特に別の構造体(II)のマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)は、図2のように、強化繊維(C)の少なくとも一部を含み、厚み方向に凹凸の領域をなしていることが、強化繊維を介したアンカー効果を奏するために好ましい態様である。凹凸形状を形成していることで、熱可塑性マトリックス層(A)と熱硬化性樹脂の接着面積が増加し、強固な接着を形成しうる。熱可塑性マトリックス層(A)と熱硬化性樹脂の界面において、表面から最も内部に存在する界面部位と、最も表面に近い界面部位との距離の差が10μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。上限は特に制限はないが、200μmもあれば十分な接着強度を発現しうる。
また、同様にアンカー効果の観点から、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)に接している強化繊維(C)のうち、表面に最も近い繊維(繊維out)と最も内部側に存在する繊維(繊維in)との間の距離を最大含浸厚みhと定義し、複合構造体(III)を切り出し、断面を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、その最大含浸厚みhを求めることができる。熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が明確に観察できない場合は、観察のコントラストを強調するために、必要に応じ、染色しても良い。最大含浸厚みhは、強固な接合を発現させる上で、10〜200μmであることが好ましい。最大含浸厚みhは、より好ましくは20〜200μmであり、さらに好ましくは30〜200μmである。最大含浸厚みhの最大値は、特に制限はないが、接合の効果を十分発揮するためには200μm程度あれば十分である。
別の構造体(II)の厚みは、各用途分野での使用を考えた場合、軽量性などの観点から薄物であることが好ましい場合が多く、2mm以下の厚みであることが好ましく、より好ましくは1mm以下である。
ここで、図2における熱可塑性複合体(I)のトータル厚みtは、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)に接している強化繊維(C)のうち、表面に最も近い繊維(繊維out)と表面との間の距離と定義することができる。
本発明の複合構造体(III)は、UL−94に基づく難燃性が、0.8mm厚以下の試験片でV−1またはV−0であることが好ましく、より好ましくは0.6mm厚以下の試験片でV−1またはV−0であり、さらに好ましくは0.4mm厚以下の試験片でV−1またはV−0である。難燃性に関しては、好ましくはV−0である。
複合構造体(III)の作製方法は特に制限はないが、例えば、繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグにあらかじめ作製しておいた熱可塑性複合体(I)を積層して、所定の条件で熱プレス成形してプリプレグを硬化させるとともに熱可塑性複合体(I)を一体化させる方法や、繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグに熱可塑性樹脂マトリックス層(A)および熱可塑性樹脂繊維(B)を積層し、所定の条件で熱プレス成形することにより、熱可塑性複合体(I)と複合構造体(III)の作製を同時におこなうなどの製造方法がある。なかでも、プロセスの簡便さから熱可塑性複合体(I)と複合構造体(III)の作製を同時に行う方法が好ましい。
図3は、本発明の一体化成形品(V)を例示説明するための概略断面模式図である。図3においては、熱可塑性樹脂複合体(I)および別の構造体(II)からなる複合構造体(III)と他の部材(IV)とを組み合わせて一体化成形品(V)とするが、他の部材(IV)の種類は熱可塑性樹脂複合体(I)を構成する熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と同種の熱可塑性樹脂を含む必要がある。
一体化手法としては、熱可塑性の部材と一体化するため、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、インサート射出成形およびアウトサート射出成形などが好ましく使用され、成形サイクルの観点から、アウトサート成形とインサート成形が好ましく使用される。
なお、複合構造体(III)と他の部材(IV)とを一体化する場合、加熱により容易にかつ強固に接合できることから、熱可塑性樹脂複合体(I)を介して一体化することが必要である
なかでも成形性および力学的特性の面から、他の部材(IV)として繊維強化熱可塑性樹脂組成物を射出成形にて一体化させることが好ましい。その場合、強化繊維は短繊維とし、熱可塑性樹脂組成物中に均一に分散していることが好ましい。この場合の強化繊維の配合比率としては、強化繊維が炭素繊維のとき、成形性、強度および軽量性とのバランスの観点から、熱可塑性樹脂組成物に対して、5〜75重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜65重量%である。
他の部材(IV)は、成形品の軽量化面から、その厚みは薄い方が好まれる場合が多い。他の部材(IV)の厚みは、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下である。
一体化成形品(V)に関しても、軽量化の観点から薄くなるものが好ましく、厚みは4mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以下である。
また、本発明の一体化成形品(V)において、優れた接合を発現する観点からは、複合構造体(III)と他の部材(IV)との垂直接着強度が6MPa以上であることが好ましい。垂直接着強度の上限は特に制限はされないが、10MPaもあれば、接着強度としては十分である。垂直接着強度は、接合部に垂直方向に引き剥がす力を加えて評価することができる。垂直接着強度の評価において、複合構造体(III)と他の部材(IV)との接合部が剥離せず、固定に使用する接着剤部分で破壊または剥離する場合があるが、その場合は接着剤の接着強度よりも強固な接着であると判断でき、接着強度としては十分である。
本発明の一体化成形品(V)の使用用途は特に制限されないが、とりわけ薄肉性や難燃性、力学的特性が要求されるディスプレー、FDDキャリッジ、シャーシ、HDD、MO、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、ポータブルMD、液晶ディスプレ−、プラズマディスプレーなどの電気・電子機器、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、掃除機、トイレタリー用品、レーザーディスク、コンパクトディスク、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどのオフィスオートメーション機器および家電機器、X線カセッテなどの医療機器、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ドライブシャフト、ホイール、ホイールカバー、フェンダー、ドアミラー、ルームミラー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、トランクフード、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車部品、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリングなどの航空機部品およびパネルなどの建材のいずれかの用途に好適に用いることができる。
以下、実施例に基づき、本発明を更に具体的に説明する。下記の実施例および比較例中に示される配合割合(%)は、別途特定している場合を除き、全て重量%に基づく値である。まず、本発明で行った評価方法について記載する。
(1)限界酸素指数(LOI)評価
熱可塑性樹脂複合体(I)をメタノール中に浸漬し、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)をメタノール中に溶解させた。残った熱可塑性樹脂繊維(B)をメタノールで再度洗浄を繰り返し、熱可塑性樹脂繊維(B)を分離した。メタノール溶液からメタノールを乾燥除去し、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を分離した。分離した熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と熱可塑性樹脂繊維(B)を用いてISO4589(2005年)規格に準拠して評価を行った。
(2)熱可塑性樹脂の融点または軟化点評価
融点は示差走査熱量計(DSC)により評価を行った。容量50μlの密閉型サンプル容器に1〜5mgの試料を詰め、昇温速度10℃/分で30℃の温度から350℃の温度まで昇温し、評価した。評価装置には、PerkinElmer社製Pyris1DSCを使用した。融点の評価が困難なもの(融点が存在しない場合)については、ビカット軟化温度をISO306(2004年)(錘10N使用)に準拠して評価し、軟化点とした。
(3)マトリックス樹脂組中のリン原子含有量
燃焼法−比色法にて測定した。すなわち、繊維強化複合材料を燃焼させ、生成するガスをオルトリン酸や各種縮合リン酸の形で純水に吸収させた後、その液中に含まれる各種縮合リン酸を酸化処理してオルトリン酸とし、比色法にて定量した。比色用試薬には、リンバナドモリブデン酸を採用した。
(4)熱可塑性樹脂複合体(I)の難燃性評価
作製した熱可塑性樹脂複合体(I)から幅12.7±0.1mm、長さ127±1mmの試験片を5本切り出した。異方性のない試料であるため切り出し方向は任意とした。バーナーの、黄色のチップのない青色炎の高さを19.5mm(3/4inch)に調節し、垂直に保持した試験片下端の中央部を炎に10秒間さらした後、炎から離し消炎までの時間を記録した。燃焼の状況から、難燃性の格付けを次のように行った。
○:5本の試験片に1回ずつ接炎した計5回の接炎後の消炎までの時間の合計が50秒以内。
×:5本の試験片に1回ずつ接炎した計5回の接炎後の消炎までの時間の合計が50秒を超える、または試験片保持部まで燃焼する。
(5)複合構造体(III)の難燃性評価
UL−94規格に基づき、垂直燃焼試験により難燃性を評価した。成形した複合構造体(III)から、幅12.7±0.1mm、長さ127±1mmの試験片を5本切り出した。切り出し方向は成形した複合構造体(III)の表面層の繊維配向方向を長手方向とした。バーナーの、黄色のチップのない青色炎の高さを19.5mm(3/4inch)に調節し、垂直に保持した試験片下端の中央部を炎に10秒間さらした後、炎から離し消炎までの時間を記録した。消炎後は、1回目と同様に2回目の炎を10秒間当て、再び炎から離し燃焼時間を計測し、燃焼の状況から難燃性の格付けを次のように行った。
V−0:5本の試験片に2回ずつ接炎した計10回の接炎後の消炎までの時間の合計が50秒以内であり、それぞれの接炎後の消炎までの時間が10秒以内であり、かつ有炎滴下物(ドリップ)がない。
V−1:上記V−0には及ばないものの、5本の試験片に2回ずつ接炎した計10回の接炎後の消炎までの時間の合計が250秒以内であり、それぞれの接炎後の消炎までの時間が30秒以内であり、かつ有炎滴下物(ドリップ)がない。
V−2:5本の試験片に2回ずつ接炎した計10回の接炎後の消炎までの時間の合計が250秒以内であり、それぞれの接炎後の消炎までの時間が30秒以内であるが、有炎滴下物(ドリップ)がある。
OUT:5本の試験片に2回ずつ接炎した計10回の接炎後の消炎までの時間の合計が250秒を超えるか、いずれかの接炎後の消炎までの時間が30秒を超えるか、または試験片保持部まで燃焼する。
すなわち、難燃性の序列は、V−0>V−1>V−2>OUTの順である。
(6)垂直接着強度
本発明の複合構造体(III)を用いた一体化成形品(V)の接着強度評価方法である。一体化成形品(V)から、複合構造体(III)と他の部材(IV)が接合している部分より、垂直接着強度評価サンプル(図4)を10mm×10mmの大きさで切り出した。次いで、垂直接着強度評価サンプルを測定装置の引張治具に固定した。図5に試験の模式図を示す。測定装置としては“インストロン”(登録商標)5565型万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製)を使用した。試料の固定は、成形品が前記試験器のチャックに把持できるものはそのままチャックに挟み引張試験を行うが、把持できないものは成形体に接着剤(“スコッチウェルド”(登録商標)AF−163−2K)(住友スリーエム(株)製)を塗布し、120±5℃、50±5%RHで4時間放置して治具と接着させてもよい。
引張試験は、雰囲気温度が調節可能な試験室において、25℃の雰囲気温度で行った。試験開始前に、試験片は、試験室内において、少なくとも5分間、引張試験の負荷がかからない状態を維持し、また、試験片に熱電対を配置して、雰囲気温度と同等になったことを確認した後に、引張試験を行った。引張試験は、引張速度1.27mm/分にて、両者の接着面から90°方向に引っ張って行い、その最大荷重を接着面積で除した値を垂直接着強度(単位:MPa)とした。また、試料数はn=5とした。
(7)ナトリウムおよびカルシウムの含有量の元素分析
ポリフェニレンスルフィド樹脂中のナトリウムおよびカルシウムの定量は、次の方法で行った。まず、試料を弱火のバーナーで炭化後、600℃の電気炉で1時間加熱灰化した。次いで濃硝酸を50倍に希釈した希硝酸水溶液に残渣を溶解させた後、ナトリウムは原子吸光分析計(日立社製Z6100型)で、またカルシウムはICP発光分析計(ジャーレル社製ICP−575)で定量した。
[参考例1]
下記に示す原料をニーダーで混合し、ポリビニルホルマールが均一に溶解したエポキシ樹脂組成物を得た。
・“エピコート”(登録商標)828(ジャパンエポキシレジン(株)製):20重量部
・“エピコート”(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株)製):20重量部
・“エピコート”(登録商標)1001(ジャパンエポキシレジン(株)製):25重量部
・“エピコート”(登録商標)154(ジャパンエポキシレジン(株)製):35重量部
・ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製)DICY7 :4重量部
・赤燐“ノーバレッド”(登録商標)120(燐化学工業(株)製):3重量部
・ポリビニルホルマール“ビニレック”(登録商標)K(チッソ(株)製)5重量部。
調製した上記のエポキシ樹脂組成物を離型紙上に塗布して、エポキシ樹脂フィルムを作製した。エポキシ樹脂フィルムの単位面積あたりの樹脂量は25g/mとした。次に、単位面積あたりの繊維重量が100g/mとなるようにシート状に一方向に整列させた炭素繊維“トレカ”(登録商標)T700SC−12K−50C(東レ株式会社製、引張強度4900MPa、引張弾性率230GPa)からなるシート状物に、先に作製したエポキシ樹脂フィルムを炭素繊維からなるシート状物の両面から重ね、加熱加圧してエポキシ樹脂組成物を炭素繊維のシート状物に含浸させ、一方向プリプレグを作製した。
(実施例1)
熱可塑性樹脂複合体(I)−1、複合構造体(III)−1および一体化成形品(V)−1を作成した。
(a)熱可塑性樹脂複合体(I)−1
PPS樹脂繊維(繊維糸径20μm、限界酸素指数47、融点285℃、ステープル50mm)を交絡させて作製した布帛(単繊維が集合した単繊維集合形態の不織布)(20g/m)の両面に、共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM8000、ポリアミド6/66/610/612共重合体、限界酸素指数20、融点128℃)フィルム(厚み25μm)を積層し、135℃の温度で5分間、面圧0.6MPaでプレス成形し、熱可塑性樹脂複合体(I)−1を得た。トータル厚みは70μmであり、PPS樹脂繊維の重量含有率は26%であり、最小埋没深さは5μmであった。
(b)複合構造体(III)−1
参考例1で調整した位置方向炭素繊維プリプレグを、所定の大きさ(A4サイズ;300×210mm)の長方形にカットし、長方形の長手方向を0°方向として繊維方向が上から0°、90°、0°となるように3枚のプリプレグを積層した。最後に積層したプリプレグの上から、上記(a)で作製した熱可塑性樹脂複合体(I)−1をプリプレグ積層体と同様の大きさにカットしたものを1枚重ねて積層した。次に、金型に該プリプレグ積層体をセットして、プレス成形を行った。プレス成形機にて、135℃の温度で2分間予熱して熱可塑性樹脂複合体(I)−1を溶融させた後、1MPaの圧力をかけながら135℃の温度で10分間加熱して硬化させた。硬化終了後、室温で冷却し、脱型して複合構造体(III)−1を得た。複合構造体厚みは0.4mmであり、最大含浸厚みhは30μmであり、UL94燃焼試験はV−0であった。
(c)一体化成形品(V)−1
図6に、パソコン筐体とした一体化成形品(V)−1の模式図を示す。上記(b)で得られた複合構造体(III)−1を天面の大きさにカットし、金型内に複合構造体(III)−1の熱可塑性複合体(I)−1が一体化させる他の部材(IV)との接合面にくるよう配置した。一体化させる他の部材(IV)として、ポリアミドマトリックス樹脂を用いた長繊維強化材料(東レ(株)製長繊維ペレットTLP1146S(炭素繊維含有量20重量%))を射出成形して筐体のフレーム部分を一体化し、パソコン筐体を得た。得られた一体化成形品(V)−1の垂直接着強度の評価を試みたところ、20MPaにおいて、接合部分が剥離し、良好な接着状態であった。
(実施例2)
熱可塑性樹脂複合体(I)−2、複合構造体(III)−2および一体化成形品(V)−2を作成した。
(a)熱可塑性樹脂複合体(I)−2
PPS樹脂繊維(繊維糸径20μm、限界酸素指数47、融点285℃、ステープル50mm)を交絡させて作製した布帛(単繊維が集合した単繊維集合形態の不織布)(55g/m)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性複合体(I)―2を作製した。トータル厚みは100μmであり、PPS樹脂繊維の重量含有率は50%であり、最小埋没深さは5μmであった。
(b)複合構造体(III)−2
熱可塑性樹脂複合体(I)−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合構造体(III)−2を作製した。複合構造体厚みは0.4mmであり、最大含浸厚みhは30μmであり、UL94燃焼試験はV−0であった。
(c)一体化成形品(V)−2
複合構造体(III)−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして一体化成形品(V)−2を作製した。得られた一体化成形品(V)−2の垂直接着強度の評価を試みたところ、20MPaにおいて、接合部分が剥離し、良好な接着状態であった。
(実施例3)
熱可塑性樹脂複合体(I)−3、複合構造体(III)−3および一体化成形品(V)−3を作成した。
(a)熱可塑性樹脂複合体(I)−3
PPS樹脂繊維(繊維糸径20μm、限界酸素指数47、融点285℃、ステープル50mm)を交絡させて作製した布帛(単繊維が集合した単繊維集合形態の不織布)(20g/m)を無水マレイン酸変性ポリプロピレン(A1)(MGP−055、丸芳化成品(株)製、酸価45mgKOH/mg、重量平均分子量20,000)の5%水分散液に浸漬したのち、110℃で3時間乾燥し、PPS繊維布帛へ無水マレイン酸変性ポリプロピレン(A1)が1%付着したPPS樹脂繊維布帛を得た。該PPS繊維布帛を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂複合体(I)−3を得た。トータル厚みは70μmであり、PPS樹脂繊維の重量含有率は26%であり、最小埋没深さは5μmであった。
(b)複合構造体(III)−3
熱可塑性樹脂複合体(I)−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合構造体(III)−3を作製した。複合構造体厚みは0.4mmであり、最大含浸厚みhは30μmであり、UL94燃焼試験はV−0であった。
(c)一体化成形品(V)−3
複合構造体(III)−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして一体化成形品(V)−3を作製した。得られた一体化成形品(V)−3の垂直接着強度の評価を試みたところ、22MPaにおいて、接合部分が剥離するよりも前に試料と治具との接着剤による固定部分が剥離したことから、垂直接着強度は22MPa以上であり、良好な接着状態であった。
(比較例1)
熱可塑性樹脂複合体(I)−4、複合構造体(III)−4および一体化成形品(V)−4を作成した。
(a)熱可塑性樹脂複合体(I)−4
PPS樹脂繊維布帛を用いずに、共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン” (登録商標)CM8000、ポリアミド6/66/610/612共重合体、限界酸素指数20、融点128℃)フィルム(厚み70μm)のみを熱可塑性複合体(I)―3とした。
(b)複合構造体(III)−4
熱可塑性樹脂複合体(I)−4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合構造体(III)−4を作製した。複合構造体厚みは0.4mmであり、最大含浸厚みhは30μmであり、UL94燃焼試験はV−OUTであった。
(c)一体化成形品(V)−4
複合構造体(III)−4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして一体化成形品(V)−4を作製した。得られた一体化成形品(V)−4の垂直接着強度の評価を試みたところ、6MPaにおいて、接合部分が剥離するよりも前に試料と治具との接着剤による固定部分が剥離したことから、垂直接着強度は6MPa以上であり、良好な接着状態であった。
(比較例2)
熱可塑性樹脂複合体(I)−5、複合構造体(III)−5および一体化成形品(V)−5を作成した。
(a)熱可塑性樹脂複合体(I)−5
PPS樹脂繊維布帛のかわりにPPS樹脂フィルム(20μm厚み、限界酸素指数38、融点285℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性複合体(I)−5を作製した。トータル厚みは70μmであり、PPS樹脂の重量含有率は32%であり、PPSフィルムは表面から25μmの深さに位置していた。
(b)複合構造体(III)−5
熱可塑性樹脂複合体(I)−5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合構造体(III)−5を作製した。複合構造体厚みは0.4mmであり、最大含浸厚みhは30μmであり、UL94燃焼試験はV−0であった。
(c)一体化成形品(V)−5
複合構造体(III)−5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして一体化成形品(V)−5を作製した。得られた一体化成形品(V)−5の垂直接着強度の評価を試みたところ、試験に供する際のサンプル加工時に接合部分が容易に剥離するほど接着不良状態であった。
(比較例3)
熱可塑性樹脂複合体(I)−6、複合構造体(III)−6および一体化成形品(V)−6を作成した。
(a)熱可塑性樹脂複合体(I)−6
ポリアミド6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1021、限界酸素指数20、融点210℃)繊維(繊維径20μm、ステープル50mm)を交絡させて作製した布帛(20g/m)の両面に、共重合ポリアミド樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM8000、ポリアミド6/66/610/612共重合体、限界酸素指数20、融点128℃)に赤リン(“ノーバレッド”(登録商標)120(平均粒径25μm、リン含有量85%))20重量%を均一分散配合混練したフィルム(厚み25μm)を積層し、135℃の温度で5分間、面圧0.6MPaでプレス成形し、熱可塑性樹脂複合体(I)−6を得た。トータル厚みは70μmであり、ポリアミド6樹脂繊維の重量含有率は23%であり、最小埋没深さは5μmであった。
(b)複合構造体(III)−6
熱可塑性樹脂複合体(I)−6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合構造体(III)−6を作製した。複合構造体厚みは0.4mmであり、最大含浸厚みhは30μmであり、UL94燃焼試験はV−0であった。
(c)一体化成形品(V)−6
複合構造体(III)−6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして一体化成形品(V)−6を作製した。得られた一体化成形品(V)−6の垂直接着強度の評価を試みたところ、0.4MPaにおいて、接合部分が剥離し、接着不良状態であった。
Figure 0005168928
以上のように実施例1〜3では難燃性および接着性がともに良好であるが、比較例1〜3では難燃性および接着性の両立が不可能となった。
本発明の熱可塑性樹脂複合体を用いることにより、各種異種材料と強固に一体化することができ、かつ優れた難燃性の複合構造体が得られる。本発明の一体化成形品は、電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器または自動車部品、航空機部品および建材などの用途に好適であり、有用である。
図1は、本発明の熱可塑性樹脂複合体(I)を例示説明するための断面模式図である。 図2は、本発明の複合構造体(III)を例示説明するための断面模式図である。 図3は、本発明の一体化成形品(V)を例示説明するための断面模式図である。 図4は、本発明の垂直接着強度評価サンプルの斜視模式図である。 図5は、垂直接着強度評価方法を示すための側面模式図である。 図6は、パソコン筐体とした本発明の一体化成形品(V)の斜視模式図である。
符号の説明
I 熱可塑性樹脂複合体
II 別の構造体
III 複合構造体
IV 他の部材
V 一体化成形品
A 熱可塑性樹脂マトリックス層
B 熱可塑性樹脂繊維
C 強化繊維
D 熱硬化性マトリックス樹脂
d 最小埋没深さ
h 最大含浸厚み
t トータル厚み

Claims (17)

  1. ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と、単繊維が集合した単繊維集合形態のポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂およびフェノール系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂繊維(B)からなる熱可塑性樹脂複合体(I)であって、トータル厚みtが5〜500μmであり、かつ熱可塑性樹脂複合体(I)の表面から熱可塑性樹脂繊維(B)までの最小埋没深さdが0〜200μmであり、かつ該熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)をLaとし、該熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂の限界酸素指数(LOI)をLbとしたときに、Lb>LaかつLbが25以上の関係を満足する熱可塑性樹脂複合体(I)が、別の構造体(II)の表面の一部に付与されてなる複合構造体(III)と、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)と同種の熱可塑性樹脂を含む他の部材(IV)とが、熱可塑性樹脂複合体(I)を介して接合されてなる一体化成形品(V)
  2. 熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する単繊維糸径が1〜100μmである請求項1記載の一体化成形品(V)
  3. 熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する単繊維同士の一部が融着した状態である請求項1または2記載の一体化成形品(V)
  4. 熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する単繊維間に含浸し、充填された構造を形成している請求項1〜3のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  5. 熱可塑性樹脂繊維(B)が、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)に対して10〜70重量%の割合で含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  6. 前記熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂が、元素分析でナトリウムおよびカルシウムの含有量が300ppm以下のPPS樹脂である、請求項に記載の一体化成形品(V)
  7. 熱可塑性樹脂繊維(B)の表面に、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基、および酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を分子内に1個以上有する有機化合物、高分子化合物または有機ケイ素化合物が0.1〜10重量%付着している、請求項5または6に記載の一体化成形品(V)
  8. 前記有機化合物、高分子化合物または有機ケイ素化合物が、多官能芳香族エポキシ、グリシジル変性有機シラン化合物、イソシアネート変性有機シラン化合物、アミノ変性有機シラン化合物、酸変性ポリオレフィン、およびエポキシ変性ポリオレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項に記載の一体化成形品(V)
  9. 熱可塑性樹脂繊維(B)を構成する熱可塑性樹脂に融点が存在する場合は融点Tb(℃)、融点が存在しない場合には軟化点Tb(℃)と、熱可塑性樹脂マトリックス層(A)を構成する熱可塑性樹脂に融点が存在する場合は融点Ta(℃)、融点が存在しない場合には軟化点Ta(℃)とが、Tb>Taの関係を満足する請求項1〜のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  10. 別の構造体(II)が、連続した強化繊維(C)と熱硬化性マトリックス樹脂(D)から構成される繊維強化複合材料である請求項1〜9のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  11. 熱硬化性マトリックス樹脂(D)がエポキシ樹脂硬化物である請求項10記載の一体化成形品(V)
  12. 熱硬化性マトリックス樹脂(D)が、リンまたはその化合物をリン原子換算で0.2〜15重量%含有するエポキシ樹脂硬化物である請求項11記載の一体化成形品(V)
  13. 熱可塑性樹脂マトリックス層(A)が、強化繊維(C)に最大含浸厚みhが10〜200μmの範囲で含浸しており、かつ熱可塑性樹脂マトリックス層(A)は凹凸形状を形成して別の構造体(II)と接合一体化されてなる請求項10〜12のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  14. 別の構造体(II)が、熱可塑性マトリックス樹脂(E)を含む請求項1〜9のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  15. 強化繊維(C)が炭素繊維である請求項1〜14のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  16. 複合構造体(III)のUL−94に基づく難燃性が0.8mm厚以下の試験片でV−1またはV−0である請求項10〜15のいずれかに記載の一体化成形品(V)
  17. 電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器、自動車部品、航空機部品または建材のいずれかの用途に用いられる請求項1〜16のいずれかに記載の一体化成形品(V)。
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