JP5167768B2 - 電動機制御装置および電動機制御方法 - Google Patents
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Description
本発明は上記の問題を解決するものであり、電流制御の精度を向上させた電動機制御装置および電動機制御方法を提供することを目的とする。
図1は、本発明を適用する電動機の制御装置における電流制御演算のブロック図を示す。
図1において、電流マップ部1は、外部から与えられたトルク指令値T*[N・m]と電動機の回転速度(電動機の回転子角速度ω(電気角)[rad/s])から、d軸およびq軸の電流指令値(id *[A]、iq *[A])をマップ引きにより求める。
なお、この部分に非干渉制御演算を加えてもよい。
なお、電動機の回転子位相θは遅れ補償をした値を用いても良い。
上記の三相電流値iu[A]、iv[A]、iw[A]は、電流センサ(図示省略)により得るが、三相交流における三相の電流値の合計が0になることから、三相電流値のうち二相の電流(例えばiu、iv)を求めれば他の一相(例えばiw)は、iuとivから計算で求められる。
電動機の回転子位相θ[rad]は、レゾルバやエンコーダなどの位置検出器(図示省略)により得る。
微分部9は、電動機の回転子位相θを微分することによって電動機の回転子角速度ω(電気角)[rad/s]を得る。
上記のようにして、与えられたトルク指令値T*に応じて電動機7を駆動することが出来る。ここまでの説明はPI制御(比例積分制御:(数1)式の演算)を用いた電流フィードバック制御の一般的な構成の説明である。
実施例1は、前記(数1)式に示したように、電流指令値と相電流値の偏差からPI制御(比例積分制御)によって電圧指令値を演算する構成に本発明を適用した例である。なお、この実施例では、演算結果である電圧指令値の出力時点をPWMキャリア信号の山と谷として説明する。
図3(a)において、電圧指令値演算部2、三相変換部3、PWM変換部4、デッドタイム補償部5の部分は、前記図1と同じである。異なる個所は、電圧指令値演算部2で用いる三相電流(相電流)の取得部が比例項分の取得部10と積分項分の取得部11とに分かれており、それぞれ異なった時点(異なった回転子位相θ)で相電流を取り込み、それぞれにd−q軸変換(id、iqの演算)を行っていることにある。なお、相電流の取得時点の判断は、電動機の回転子位相θに応じて定める。
図3(b)に示すように、実施例1においては、d軸電流値を比例項分と積分項分とで異なった時点(異なった回転子位相θ)で取り込む。そしてd軸電流値指令値とd軸電流値との偏差を減算機能12で求め、比例演算機能14で上記偏差の比例項分を求める。また、d軸電流値指令値とd軸電流値との偏差を減算機能13で求め、積分演算機能15、16で上記偏差の積分項分を求める。そして加算機能17で上記比例項分と積分項分とを加算し、その結果をd軸電流指令値として出力する。なお、q軸分についても同様の演算を行い、q軸電流指令値として出力する。
図4は、実施例1におけるPWMキャリア信号と電流演算時間、相電流値、電流取得時点を示す図である。図4において、黒丸印は比例項分の相電流の取得時点、二重丸印は積分項分の相電流の取得時点を示す。また、実線の矢印は比例項分の無駄時間、破線の矢印は積分項分の無駄時間を示す。なお、無駄時間とは相電流の取得時点から演算結果の出力時点まで経過時間を意味する。また、横軸は時間軸であるが、回転速度が一定であれば時間と回転子位相θとは対応している。
図5から判るように、実施例1の比例項分の無駄時間が短く、積分項分の無駄時間が長い場合には、比例項分の無駄時間も積分項分の無駄時間も短い場合と殆ど同様に良好な電流応答特性を示しており、積分項分の無駄時間だけを長くしても電流制御性能が悪化していないことが分かる。そして実施例1の場合には、前記図4に示したように、比例項分はPWMキャリア周期の長さにかかわらず無駄時間を一定に演算し、積分項分は電流リプルのない相電流値を使用することになるので、電流リプルに関係なく電流制御の精度が保たれることになる。つまり、電流応答特性を悪化させること無く、定常状態における電流制御の精度を向上させることが可能になる。
図6は、実施例2におけるPWMキャリア信号と電流演算時間、相電流値、電流取得時点を示す図である。図6において、黒丸印は比例項分の相電流の取得時点、白丸印は積分項分の相電流の取得時点を示す。また、実線の矢印は比例項分の無駄時間、破線の矢印は積分項分の無駄時間を示す。
上記の2種類の相電流値をPWMキャリア信号の谷もしくは山から電流制御演算時間分だけ減算した時点から開始する電流制御演算で使用して電圧指令値を演算し、直後のPWMキャリア信号の山もしくは谷で出力する。
図7は、実施例3におけるPWMキャリア信号と電流演算時間、相電流値、電流取得時点を示す図である。図7において、黒丸印は比例項分の相電流の取得時点、二重丸印は積分項分の相電流の取得時点を示す。また、実線の矢印は比例項分の無駄時間、破線の矢印は積分項分の無駄時間を示す。
図8は、実施例4におけるPWMキャリア信号と電流演算時間、相電流値、電流取得時点を示す図である。
図9は、実施例5におけるPWMキャリア信号と電流演算時間、相電流値、電流取得時点を示す図である。図9において、黒丸印は比例項分の相電流の取得時点、白丸印は積分項分の相電流の取得時点を示す。また、実線の矢印は比例項分の無駄時間、破線の矢印は積分項分の無駄時間を示す。
この実施例5によれば、前記実施例3の効果の他に、例えばキャリア周期が変化する時とキャリア周期が固定の時が繰り返される場合、固定キャリア周期のn分割を信号(3)の周期とすることによって比例項分の無駄時間を固定キャリア周期の際は一定にすることが出来る。
図10は、実施例6におけるPWMキャリア信号と電流演算時間、相電流値、電流取得時点を示す図である。
この実施例は、実施例4における信号(2)の代わりに、実施例5と同様のPWMキャリア信号をn分割(図10ではn=8)した信号(4)(図面では丸付き数字で示す)に置き換えたものである。
この実施例6によれば、前記実施例4の効果の他に、例えばキャリア周期が変化する時とキャリア周期が固定の時が繰り返される場合、固定キャリア周期のn分割を信号(4)の周期とすることによって比例項分の無駄時間を固定キャリア周期の際は一定にすることが出来る。
これまでの実施例においては、電流指令値と実電流値から電圧指令値を演算する電圧指令値演算部2の演算において、偏差の比例項分と積分項分とを加算して演算結果を求める、いわゆるPI制御(比例積分制御)を用いた場合を例示したが、本実施例のように電流ロバスト(robust)制御に本発明を適用することも出来る。
電動機の電流ロバスト制御は、図11に示すように、制御系に外乱項を含むものであり、それによって電源電圧変動等の外乱に影響されにくい制御系を構成している。
図11において、電動機モデルをG(s)、電流の規範応答をH(s)、ゲインK1、K2とすることにより、目標値応答性、外乱応答性を可変できるようになっている。
Ld:d軸インダクタンス R:電動機の巻線抵抗
s:ラプラス演算子
図11(a)は、電流ロバスト制御の基本形であり、この状態では比例項分と積分項分とが分離されていない。そのため図11(a)を(b)のように変形することにより、電流ロバスト制御においても比例項分と積分項分に分けることが出来る。11図(b)において、K1が比例項、1/τhと1/sが積分項を示す。
但し、図11(b)においてH'(s)は下記(数6)式で示される。
3…三相変換部 4…PWM変換部
5…デッドタイム補償部 6…インバータ
7…電動機 8…d−q軸変換部
9…微分部 10…比例項分の取得部
11…積分項分の取得部
Claims (14)
- 電動機の相電流値及び回転角を取り込み、電流指令値と前記相電流値との偏差及び回転角に基づいて電圧指令値を演算し、PWMキャリア信号の次回のキャリア周期における所定位相の時点で前記電圧指令値を出力する電動機制御装置において、
前記電流指令値と相電流値との偏差に比例する電圧を演算する第1の演算手段の演算結果と、電流指令値と相電流値との偏差から相電流値の積分項分を演算する第2の演算手段の演算結果とを加算して前記電圧指令値とし、かつ、前記第1の演算手段に使用する相電流値と、前記第2の演算手段に使用する相電流値とを異なる時点で取得する手段を備え、
前記第1の演算手段に使用する相電流値を取得する時点は、前記第2の演算手段に使用する相電流を取得する時点より後である
ことを特徴とする電動機制御装置。 - 電動機の相電流値及び回転角を取り込み、電流指令値と前記相電流値との偏差及び回転角に基づいて電圧指令値を演算し、PWMキャリア信号の次回のキャリア周期における所定位相の時点で前記電圧指令値を出力する電動機制御装置において、
前記電流指令値と相電流値との偏差に比例する電圧を演算する第1の演算手段の演算結果と、電流指令値と相電流値との偏差から相電流値の積分項分を演算する第2の演算手段の演算結果とを加算して前記電圧指令値とし、かつ、前記第1の演算手段に使用する相電流値と、前記第2の演算手段に使用する相電流値とを異なる時点で取得する手段を備え、
前記第1の演算手段に使用する相電流値は、次回の電圧指令値出力時点から電流制御演算時間だけ前の時点で取得した相電流値とし、前記第2の演算手段に使用する相電流値は、前回の電圧指令値出力時点又は前回と次回の電圧指令値出力時点の中間で、かつPWMキャリア信号の山または谷の時点で取得した相電流値とする、ことを特徴とする電動機制御装置。 - 前記第1の演算手段に使用する相電流値は、次回の電圧指令値出力時点から電流制御演算時間だけ前の時点で取得した相電流値とし、前記第2の演算手段に使用する相電流値は、前回の電圧指令値出力時点から、次回の電圧指令値出力時点から電流制御演算時間だけ前の時点までの間の複数の時点で取得した相電流値の平均値を相電流値とすることを特徴とする請求項1に記載の電動機制御装置。
- 前記電流制御演算時間だけ前の時点を、PWMキャリア信号ではなく、PWMキャリア信号の周期以下の周期で、かつ電流制御演算時間以上の周期の信号を用いて決定し、その信号の割込み時点において電流制御演算を開始することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電動機制御装置。
- 前記第2の演算手段は、前記PWMキャリア信号の周期に応じて決定されるゲインを有し、1回の電圧指令値出力時点から次の電圧指令値出力時点までの間に複数回行われた電流制御演算結果のうち、電圧指令値の出力に反映されなかった演算結果はその度に消去することを特徴とする請求項4に記載の電動機制御装置。
- 前記第2の演算手段は、前記PWMキャリア信号ではなく、PWMキャリア信号の周期以下の周期で、かつ電流制御演算時間以上の周期を有する信号の周期に応じて決定されるゲインを有し、電圧指令値の出力に反映されなかった演算結果のうち、前記第2の演算手段の演算結果は、電圧指令値が出力されるまで保持することを特徴とする請求項4に記載の電動機制御装置。
- 前記第1の演算手段は、比例積分制御における比例演算手段であり、前記第2の演算手段は比例積分制御における積分演算手段であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電動機制御装置。
- 電動機の相電流値及び回転角を取り込み、電流指令値と前記相電流値との偏差及び回転角に基づいて電圧指令値を演算し、PWMキャリア信号の次回のキャリア周期における所定位相の時点で前記電圧指令値を出力する電動機制御方法において、
前記電流指令値と相電流値との偏差に比例する電圧を演算する第1の演算手段の演算結果と、電流指令値と相電流値との偏差から相電流値の積分項分を演算する第2の演算手段の演算結果とを加算して電圧指令値とし、かつ、前記第1の演算手段に使用する相電流値と、前記第2の演算手段に使用する相電流値とを異なる時点で取得し、
前記第1の演算手段に使用する相電流値を取得する時点は、前記第2の演算手段に使用する相電流を取得する時点より後である
ことを特徴とする電動機制御方法。 - 電動機の相電流値及び回転角を取り込み、電流指令値と前記相電流値との偏差及び回転角に基づいて電圧指令値を演算し、PWMキャリア信号の次回のキャリア周期における所定位相の時点で前記電圧指令値を出力する電動機制御方法において、
前記電流指令値と相電流値との偏差に比例する電圧を演算する第1の演算手段の演算結果と、電流指令値と相電流値との偏差から相電流値の積分項分を演算する第2の演算手段の演算結果とを加算して電圧指令値とし、かつ、前記第1の演算手段に使用する相電流値と、前記第2の演算手段に使用する相電流値とを異なる時点で取得し、
前記第1の演算手段に使用する相電流値は、次回の電圧指令値出力時点から電流制御演算時間だけ前の時点で取得した相電流値とし、前記第2の演算手段に使用する相電流値は、前回の電圧指令値出力時点又は前回と次回の電圧指令値出力時点の中間で、かつPWMキャリア信号の山または谷の時点で取得した相電流値とする、ことを特徴とする電動機制御方法。 - 前記第1の演算手段に使用する相電流値は、次回の電圧指令値出力時点から電流制御演算時間だけ前の時点で取得した相電流値とし、前記第2の演算手段に使用する相電流値は、前回の電圧指令値出力時点から、次回の電圧指令値出力時点から電流制御演算時間だけ前の時点までの間の複数の時点で取得した相電流値の平均値を相電流値とすることを特徴とする請求項8に記載の電動機制御方法。
- 前記電流制御演算時間だけ前の時点を、PWMキャリア信号ではなく、PWMキャリア信号の周期以下の周期で、かつ電流制御演算時間以上の周期の信号を用いて決定し、その信号の割込み時点において電流制御演算を開始することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電動機制御方法。
- 前記第2の演算手段は、前記PWMキャリア信号の周期に応じて決定されるゲインを有し、1回の電圧指令値出力時点から次の電圧指令値出力時点までの間に複数回行われた電流制御演算結果のうち、電圧指令値の出力に反映されなかった演算結果はその度に消去することを特徴とする請求項11に記載の電動機制御方法。
- 前記第2の演算手段は、前記PWMキャリア信号ではなく、PWMキャリア信号の周期以下の周期で、かつ電流制御演算時間以上の周期を有する信号の周期に応じて決定されるゲインを有し、電圧指令値の出力に反映されなかった演算結果のうち、前記第2の演算手段の演算結果は、電圧指令値が出力されるまで保持することを特徴とする請求項11に記載の電動機制御方法。
- 前記第1の演算手段は、比例積分制御における比例演算手段であり、前記第2の演算手段は比例積分制御における積分演算手段であることを特徴とする請求項8乃至請求項13の何れか1項に記載の電動機制御方法。
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