JP5165167B2 - 熱可塑性ポリウレタン組成物 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン、並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および/またはその水素添加物を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物、該組成物よりなる成形品、前記熱可塑性ポリウレタン組成物からなる層を有する積層構造体、並びに前記熱可塑性ポリウレタン組成物の製造方法に関する。本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、非粘着性で取り扱い性および溶融成形性に優れていて、成形時に金型からの離型が容易で、成形装置等への付着が生じず、平滑な表面を有する外観に優れる成形品を製造することができ、さらに該熱可塑性ポリウレタン組成物から形成された成形品間やフィルム、シート間での膠着が生じず、離型剤や離型紙(離型シート)などを用いることなく各種成形品を円滑に製造できる。その上、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、非粘着性であるにも拘わらず、他の材料との接着性や各種熱可塑性樹脂との溶融接着性に優れ、またそれから得られる成形品は耐摩耗性、引張破断強度や引張破断伸度などで代表される力学的特性、屈曲性、耐油性、弾性回復性、耐水性などの特性に優れ、残留歪みが小さく、かつ適度な柔軟性を有しており、それらの特性を活かして各種成形品や積層構造体に有効に使用される。そして、本発明の製法により、前記した優れた特性を有する熱可塑性ポリウレタン組成物を円滑に製造することができる。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタンは、力学的特性、耐摩耗性、弾性回復性、耐油性、屈曲性などの諸特性に優れ、しかも溶融成形が可能であることから、従来の合成ゴムやプラスチックの代替材料として、広範な用途で用いられている。
しかしながら、熱可塑性ポリウレタンは粘着性が非常に強く、例えば、射出成形などにより成形品を製造する場合は、金型からの離型不良、金型内での樹脂の流れ斑による成形品の外観不良(気泡や流れ模様の発生など)、得られた成形品同士の膠着などの問題が生じ易い。
また、押出成形などによってフィルムやシートを製造する場合は、単独で巻き取ることが困難なため、離型剤や離型紙(離型シート)を併用する必要があり、離型剤や離型紙を用いずに単独で巻き取ると、巻き取ったフィルムやシートの巻き返しが困難になったり不可能になって使用できなくなるという問題を生ずる。
さらに、熱可塑性ポリウレタンは、耐熱水性や耐候性に劣る。そのため、熱可塑性ポリウレタンは上記した種々の優れた特性を有しているにも拘わらず、その使用範囲が限定されているのが現状である。
【0003】
一方、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックよりなるブロック共重合体またはその水素添加物(以下これを単に「ブロック共重合体」ということがある)は、高いゴム弾性を有し、かつ耐熱水性や耐候性に優れ、しかも一般に溶融成形が可能であることから、それらの特性を活かして近年色々な分野で用いられるようになっている。しかしながら、該ブロック共重合体は、耐摩耗性、力学的特性、耐油性などに劣るという欠点を有しており、やはりその使用範囲が限られているのが現状である。
【0004】
そこで、熱可塑性ポリウレタンおよびブロック共重合体の双方の欠点を補い、両者の優れた特性を兼ね備える重合体組成物を得る目的で、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体を溶融下にブレンドした重合体組成物が提案されている(特開平6−65467号公報、特開平6−107898号公報、特開平8−157685号公報、特開平9−124887号公報など)。
しかしながら、これら従来技術で提案されている重合体組成物では、両重合体を溶融ブレンドしていても、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との間の相容化が十分には達成されておらず、両者の優れた特性を十分に引き出すことができず、特に成形性、非粘着性、耐摩耗性および力学的特性の点で十分に満足のゆく重合体組成物が得られていない。
【0005】
また、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との間の相容性の向上や、両者を含有する重合体組成物の溶融接着性の向上などの目的で、カルボン酸基、その誘導体基、水酸基などで変性したブロック共重合体を熱可塑性ポリウレタンにブレンドした組成物が提案されている(特開昭63−99257号公報、特開平3−234755号公報)。しかしながら、未だ十分に満足のゆく結果が得られておらず、この場合にも非粘着性、成形性、耐摩耗性、力学的特性などの点で不十分である。
【0006】
さらに、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体とを溶融ブレンドした重合体組成物の柔軟化や低硬度化などを図る目的で、該重合体組成物にオイルなどの軟化剤を添加することが知られている(特開平5−171004号公報、特開平8−72204号公報など)。しかしながら、その場合にも、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との相容性が十分ではなく、熱可塑性ポリウレタンおよびブロック共重合体が本来有する優れた性能を十分に引き出せないでいる。
【0007】
また、ABS樹脂等を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するに当たって、ABS樹脂等に線状ポリオールよりなる流動促進剤を1〜30重量%の少割合で含有させておき、それを有機ジイソシアネート化合物、線状ポリオールおよび鎖伸長剤と共に押出機に供給し、押出機中でポリウレタン形成反応を行って、ABS樹脂等と熱可塑性ポリウレタンを含有する成形用組成物を製造する方法が提案されている(特開平8−283374号公報)。しかしながら、この方法による場合も、熱可塑性ポリウレタンとABS樹脂等との相容性が十分に向上せず、得られる成形用組成物は、非粘着性、成形性、耐摩耗性、力学的特性、耐熱水性などの点で十分に満足のゆく性能を備えていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との相容性をより向上させて、非粘着性で、取り扱い性および溶融成形性に優れ、成形時に金型からの離型が容易で、成形装置への付着が生じず、さらには成形品間の膠着が生じず、フィルムやシートなどの巻き取り時に離型剤や離型シートなどを用いる必要のない熱可塑性ポリウレタン組成物およびその製造法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した特性と併せて、耐摩耗性に優れ、引張破断強度、引張破断伸度などで代表される力学的特性に優れ、屈曲性、耐油性、耐水性、弾性回復性などにも優れ、しかも残留歪みが小さく、かつ適度な柔軟性を有する成形品を製造することのできる熱可塑性ポリウレタン組成物およびその製造法を提供することである。
そして、本発明の目的は、前記した優れた特性を有する熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる各種成形品を提供することである。
また、本発明の目的は、非粘着性であるにも拘わらず、他の材料との接着性に優れ、特に極性の高い樹脂材料および極性の低い樹脂材料のいずれに対しても良好な溶融接着性を示す熱可塑性ポリウレタン組成物を提供することである。
そして、本発明の目的は、該熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる層と、各種の材料、特に各種樹脂よりなる層とが積層している積層構造体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく本発明者は色々検討を重ねてきた。その結果、熱可塑性ポリウレタン、並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するに当たって、熱可塑性ポリウレタンと該ブロック共重合体および/またはその水素添加物を溶融混合して重合体組成物を製造している上記した従来技術に代えて、該ブロック共重合体および/またはその水素添加物に対して高分子ポリオールを特定の割合で混合すると共に該高分子ポリオールをブロック共重合体および/またはその水素添加物に含浸させて特定の高分子ポリオール含浸組成物を予め調製し、その高分子ポリオール含浸組成物を有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤、または有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオールおよび鎖伸長剤と混合してポリウレタン形成反応を行ってブロック共重合体を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を製造すると、そこで生成する熱可塑性ポリウレタン組成物中に含まれる熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との間の相容性が大きく向上して、非粘着性で、取り扱い性および溶融成形性に優れ、成形時に金型からの離型が容易で、成形装置への付着が生じず、さらには成形品間の膠着が生じず、離型剤や離型紙を用いなくてもフィルムやシートへの巻き取りや巻き返しが可能であり、非粘着性であるにも拘わらず他の材料との接着性に優れ、特に極性の高い樹脂および極性の低い樹脂のいずれに対して良好な溶融接着性を有することを見出した。また、本発明者は、該熱可塑性ポリウレタン組成物を用いると、耐摩耗性、引張破断強度や引張破断伸度などで代表される力学的特性、屈曲特性、耐油性、耐水性、弾性回復性などに優れ、残留歪みが小さく、かつ適度な柔軟性を有する各種成形品が得られることを見出した。
【0010】
さらに、本発明者は、上記高分子ポリオール含浸組成物の調製時に、特定量の可塑剤をさらに配合して高分子ポリオール可塑剤含浸組成物とし、それを用いて前記と同様にして熱可塑性ポリウレタン組成物を製造すると、それにより得られる熱可塑性ポリウレタン組成物は、上記した種々の優れた特性と共に、さらに低硬度で、柔軟性の点でも優れていること、しかも極性の低い樹脂との溶融接着性が一層良好であることを見出した。
また、本発明者は、上記の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる成形品、特に射出成形品、フィルム、シートなどは、耐摩耗性、引張破断強度、引張破断伸度などで代表される力学的特性、耐水性、屈曲性、耐油性、弾性回復性などの特性に優れ、残留歪みが小さく、種々の用途に有効に用い得ることを見出した。
さらに、本発明者は、上記の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる層と、他の材料、特に各種の樹脂よりなる層を有する積層構造体も、広範な用途に有効に用い得ることを見出した。
【0011】
そして、本発明者は、上記で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物について更に研究を重ねた結果、該熱可塑性ポリウレタン組成物は、そのモルホロジーに特長があることが判明した。
すなわち、熱可塑性ポリウレタン(a)と前記ブロック共重合体(b)を含有する上記した前者の熱可塑性ポリウレタン組成物では、図1でそのモルホロジーの概略を模式的に示すように、熱可塑性ポリウレタン(a)が海成分(連続相)を形成し、その海成分中に芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)が島成分として存在し、その島成分中に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として更に存在していることが判明した。
また、熱可塑性ポリウレタン(a)、前記ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)を含有する上記した後者の熱可塑性ポリウレタン組成物では、熱可塑性ポリウレタン(a)が海成分(連続相)を形成し、その海成分中に芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)および可塑剤(c)が島成分として存在し、その島成分中に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として更に存在していることが判明した。
熱可塑性ポリウレタン組成物の有する上記した優れた諸特性は、そのような特定のモルホロジーによるものと考えられる。
【0012】
したがって、本発明は、熱可塑性ポリウレタン(a)並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物であって、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分中に、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)が島成分として存在し、さらに前記島成分の内部に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として存在してなる構造を有することを特徴とする熱可塑性ポリウレタン組成物[以下「熱可塑性ポリウレタン組成物(1)」ということがある]である。
【0013】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物(1)は、上記した相形態を有するものであれば、いずれの方法で製造されたものであってもよいが、特に、
(i)数平均分子量が500〜8,000の範囲内である高分子ポリオール(a−1)、並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)を、(a−1):(b)=35:65〜90:10の重量比で用いて、高分子ポリオール(a−1)が、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)中に含浸した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)を予め調製し;次いで、
(ii)前記(i)で調製した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)を、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤と混合するか、または有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール(a−1)および鎖伸長剤と混合して、ポリウレタン形成反応を行う;
ことにより、好ましく製造される。
【0014】
そして、本発明は、熱可塑性ポリウレタン(a)、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)、並びに可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物であって、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分中に、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)並びに可塑剤(c)が島成分として存在し、さらに前記島成分の内部に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として存在してなる構造を有することを特徴とする熱可塑性ポリウレタン組成物[以下「熱可塑性ポリウレタン組成物(2)」ということがある]である。
【0015】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物(2)は、上記した相形態を有するものであれば、いずれの方法で製造されたものであってもよいが、特に、
(i)数平均分子量が500〜8,000の範囲内である高分子ポリオール(a−1)、並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)を、(a−1):(b)=35:65〜90:10の重量比で用い、かつ高分子ポリオール(a−1)並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)の合計100重量部に対して可塑剤(c)を0.1〜200重量部の割合で用いて、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)中に含浸した高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を予め調製し;次いで、
(ii)前記(i)で調製した高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤と混合するか、または有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール(a−1)および鎖伸長剤と混合して、ポリウレタン形成反応を行う;
ことにより好ましく製造される。
【0016】
そして、本発明は上記した熱可塑性ポリウレタン組成物(1)および/または熱可塑性ポリウレタン組成物(2)からなる成形品であり、さらに、上記した熱可塑性ポリウレタン組成物(1)および/または熱可塑性ポリウレタン組成物(2)よりなる樹脂層と、他の材料よりなる層とが積層した構造を有する積層構造体である[以下熱可塑性ポリウレタン組成物(1)と熱可塑性ポリウレタン組成物(2)を総称して単に熱可塑性ポリウレタン組成物ということがある]。
【0017】
さらに、本発明は、上記した(i)および(ii)の工程によって、熱可塑性ポリウレタン(a)並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)を含有するか、或いは熱可塑性ポリウレタン(a)、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)並びに可塑剤(c)を含有する、熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法である。
【0018】
本発明は、以下の積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)を好ましい態様として包含する。
・積層構造体(イ):
上記した本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層(A)と、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種よりなる樹脂層(B)とが、樹脂層(A)/樹脂層(B)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体である。
・積層構造体(ロ):
上記した本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層(A)と、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種よりなる樹脂層(B)と、スチレン系重合体およびオレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂層(C)が、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物(1)の製造に当たっては、数平均分子量が500〜8,000の範囲内である高分子ポリオール(a−1)、並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)[以下「(水添)ブロック共重合体(b)」という]を、高分子ポリオール(a−1):(水添)ブロック共重合体(b)=35:65〜90:10の重量比で用いて、高分子ポリオール(a−1)が(水添)ブロック共重合体(b)中に含浸した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)を予め調製する。
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物(2)の製造に当たっては、数平均分子量が500〜8,000の範囲内である高分子ポリオール(a−1)、(水添)ブロック共重合体(b)並びに可塑剤(c)を、高分子ポリオール(a−1):(水添)ブロック共重合体(b)=35:65〜90:10の重量比で用い、かつ高分子ポリオール(a−1)および(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して可塑剤(c)を1〜200重量部の割合で用いて、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が、(水添)ブロック共重合体(b)中に含浸した高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を予め調製する。
【0020】
上記の高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いる(水添)ブロック共重合体(b)において、その芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、場合により少量の他の不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体ブロックである。
(水添)ブロック共重合体(b)における芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを構成する芳香族ビニル化合物単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレンなどからなる構造単位を挙げることができ、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは前記した芳香族ビニル化合物の1種または2種以上よりなる構造単位を有していることができる。そのうちでも、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンよりなる構造単位から主としてなっていることが好ましい。
【0021】
また、(水添)ブロック共重合体(b)における共役ジエン系重合体ブロックは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン系化合物の1種または2種以上から主として形成された重合体ブロックである。そのうちでも、共役ジエン系重合体ブロックは、1,3−ブタジエンおよび/または2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)よりなる構造単位からなっていることが好ましい。水素添加された(水添)ブロック共重合体(b)では、前記した共役ジエンよりなる構造単位の一部または全部が水素添加により飽和結合になっている。
【0022】
(水添)ブロック共重合体(b)における芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形態のいずれであってもよく、そのうちでも直鎖状の結合形態であることが好ましい。
(水添)ブロック共重合体(b)の例としては、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックをXで、共役ジエン系重合体ブロックをYで表したときに、式;(X−Y) m −X、(X−Y) n 、Y−(X−Y) p (式中、m、nおよびpはそれぞれ1以上の整数を示す)などで表されるブロック共重合体を挙げることができる。そのうちでも、2個以上の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックXと1個以上の共役ジエン系重合体ブロックが直鎖状に結合したブロック共重合体、特に式:X−Y−Xで表されるトリブロック共重合体が好ましく用いられる。該トリブロック共重合体は、高分子ポリオール(a−1)、または高分子ポリオール(a−1)と可塑剤(c)の含浸性に優れる(保持性が高い)ため、次のポリウレタン形成反応工程(ii)で生成する熱可塑性ポリウレタン(a)とそこに含まれる(水添)ブロック共重合体(b)との相容化がより円滑に達成されて、本発明で規定するモルホロジー、すなわち、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分中に、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種(b)、または該(水添)ブロック共重合体(b)と可塑剤(c)からなる島成分が存在し、該島成分中に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として更に存在する構造を有する熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる。
かかる本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物においては、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分中に存在する(水添)ブロック共重合体(b)または該(水添)ブロック共重合体(b)と可塑剤(c)からなる島成分の大きさは、0.01〜250μmの範囲であることが好ましく、0.05〜150μmの範囲であることがより好ましく、0.1〜100μmの範囲であることが更に好ましい。
また、(水添)ブロック共重合体(b)または該(水添)ブロック共重合体(b)と可塑剤(c)からなる島成分中に存在する熱可塑性ポリウレタン(a)からなる島成分は、その平均粒子径が0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましい。本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は前記したモルホロジーを有することにより、本発明で目的とする上記した非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を確実に得ることができる。
【0023】
(水添)ブロック共重合体(b)における共役ジエン系重合体ブロックは水素添加されていなくても、一部が水素添加されていても、または全部が水素添加されていてもよい(水素添加率0〜100モル%)。そのうちでも、(水添)ブロック共重合体(b)における共役ジエン系重合体ブロックの水素添加率が50モル%以上、特に80モル%以上であることが、耐熱性、耐候性、耐光性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる点から好ましい。
【0024】
(水添)ブロック共重合体(b)では、全構造単位に対して、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量が5〜75重量%(共役ジエンに由来する構造単位の含有量が95〜25重量%)であることが好ましく、10〜65重量%(同90〜35重量%)であることがより好ましく、15〜40重量%(同85〜60重量%)であることがより好ましく、それによって(水添)ブロック共重合体(b)の高分子ポリオール(a−1)または高分子ポリオール(a−1)と可塑剤(c)の含浸能(保持能)が高くなって、(水添)ブロック共重合体(b)と熱可塑性ポリウレタン(a)との相容性が向上し、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を確実に得ることができる。
【0025】
(水添)ブロック共重合体(b)の数平均分子量は、50,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、80,000〜300,000の範囲内であることがより好ましい。前記した範囲内の数平均分子量を有する(水添)ブロック共重合体(b)は、高分子ポリオール(a−1)または高分子ポリオール(a−1)と可塑剤(c)の含浸能(保持能)が高く、それによって(水添)ブロック共重合体(b)と熱可塑性ポリウレタン(a)との相容性がより向上して、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる。なお、本明細書でいう(水添)ブロック共重合体(b)の数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定した値である。
【0026】
(水添)ブロック共重合体(b)は、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトインデックスが10g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以下であることがより好ましく、1g/10分以下であることがさらに好ましい。前記したメルトインデックスを有する(水添)ブロック共重合体(b)は、高分子ポリオール(a−1)または高分子ポリオール(a−1)と可塑剤(c)の含浸能(保持能)が高く、それによって(水添)ブロック共重合体(b)と熱可塑性ポリウレタン(a)との相容性がより向上し、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる。
なお、本明細書でいう(水添)ブロック共重合体(b)のメルトインデックスは、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0027】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いる高分子ポリオール(a−1)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができ、これらの高分子ポリオールは単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。そのうちでも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオールのうちの1種または2種以上が好ましく用いられ、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールがより好ましく用いられる。
【0028】
上記のポリエステルポリオールは、例えば、常法にしたがって、ポリオール成分とポリカルボン酸、そのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体などのポリカルボン酸成分とを直接エステル化反応またはエステル交換反応に付すか、あるいはポリオールを開始剤としてラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0029】
ポリエステルポリオールの製造に用いるポリオール成分としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール,2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族二価アルコールなどの1分子当たり水酸基を2個有するジオール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘンサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの1分子当たり水酸基を3個以上有するポリオールなど挙げることができる。ポリエステルポリオールの製造に当たっては、これらのポリオールは単独で使用してもまたは2種以上使用してもよい。
【0030】
そのうちでも、ポリエステルポリオールの製造に当たっては、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールなどのメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、特にこれらの分岐脂肪族ジオールを、ポリエステルポリオールの製造に用いる全ジオール成分の30モル%以上、更には50モル%以上の割合で用いるのが好ましい。
【0031】
ポリエステルポリオールの製造に用いるポリカルボン酸成分としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているポリカルボン酸成分を使用でき、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のポリカルボン酸;あるいはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。これらのポリカルボン酸は、単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。そのうちでも、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸、特にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸の1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0032】
また、ポリエステルポリオールの製造に用いる前記のラクトンとしては、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0033】
また、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用い得るポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオールの存在下に、環状エーテルを開環重合して得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリテトラメチレングリコールおよび/またはポリ(メチルテトラメチレン)グリコールが好ましく用いられる。
【0034】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用い得るポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなど、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0035】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用い得るポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、或いは予め上記した方法によりポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、またはポリオールおよびポリカルボン酸と反応させることによって得られたものなどを挙げることができる。
【0036】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用い得る共役ジエン重合体系ポリオールまたはポリオレフィン系ポリオールの例としては、重合開始剤の存在下に、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン、またはそれらと他のモノマーをリビング重合した後に、重合活性末端にヒドロキシル基含有エポキシ化合物を反応させて得られる、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリ(ブタジエン/イソプレン)ポリオール、ポリ(ブタジエン/アクリロニトリル)ポリオール、ポリ(ブタジエン/スチレン)ポリオール、或いはそれらの水素添加物などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いる高分子ポリオール(a−1)の数平均分子量は、500〜8,000の範囲内であり、600〜5,000の範囲内であることが好ましく、800〜5,000の範囲内であることがより好ましい。前記の数平均分子量を有する高分子ポリオール(a−1)は、(水添)ブロック共重合体(b)との親和性に優れていて、(水添)ブロック共重合体(b)中に良好に含浸し、それによって(水添)ブロック共重合体(b)と熱可塑性ポリウレタン(a)との相容性が向上し、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる。
なお、本明細書でいう高分子ポリオール(a−1)の数平均分子量は、JIS K−1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0038】
また、高分子ポリオール(a−1)としては、100℃で液状を呈するものが好ましく用いられ、60℃で液状を呈するものがより好ましく用いられ、40℃で液状を呈するものが一層好ましく用いられ、20℃で液状を呈するものがさらに好ましく用いられる。より低温で液状を呈する高分子ポリオール(a−1)は(水添)ブロック共重合体(b)中に浸透し易いため、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の生成が円滑になり、それによって(水添)ブロック共重合体(b)と熱可塑性ポリウレタン(a)との相容性が向上し、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる。
【0039】
さらに、高分子ポリオール(a−1)としては、80℃における粘度が0.01〜100ポイズの範囲内のものが好ましく用いられる。高分子ポリオール(a−1)が前記の範囲内の粘度を有することにより、(水添)ブロック共重合体(b)中への浸透が容易になって高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の生成が確実になり、(水添)ブロック共重合体(b)と熱可塑性ポリウレタン(a)との相容性が向上し、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる。
【0040】
また、高分子ポリオール(a−1)は、1分子当たりの水酸基数が2.0〜2.1の範囲内にあるのが好ましく、2.0〜2.07の範囲内にあるのがより好ましく、2.005〜2.05の範囲内にあるのがさらに好ましい。高分子ポリオール(a−1)における1分子当たりの水酸基数が前記範囲内にあると、次の工程(ii)のポリウレタン形成反応時に、熱可塑性ポリウレタンの形成が円滑に行われて、その結果、熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)との相容化が十分に達成されて、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、溶融成形性、非粘着性、耐摩耗性、力学的特性などにより優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を得ることができる。
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に当たっては、1分子当たり2個の水酸基を有する高分子ポリオールのみを用いても、または1分子当たり2個の水酸基を有する高分子ポリオールと1分子当たり2個よりも多い水酸基を有する高分子ポリオールとを全体の水酸基数が1分子当たり平均して前記した2.0〜2.1の範囲内になるような割合で混合して用いてもよい。
【0041】
本発明では、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を得るために、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に際して、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)を、高分子ポリオール(a−1):(水添)ブロック共重合体(b)=35:65〜90:10の重量比で用いることが必要であり、高分子ポリオール(a−1):(水添)ブロック共重合体(b)=40:60〜80:20の重量比で用いることが好ましく、高分子ポリオール(a−1):(水添)ブロック共重合体(b)=50:50〜75:25の重量比で用いることがより好ましい。
【0042】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に当たって、高分子ポリオール(a−1)の使用割合が、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)の合計重量に基づいて、35重量%未満であると、相容化剤として機能する高分子ポリオール(a−1)が(水添)ブロック共重合体(b)中に十分に含浸せず、相容化効果の高い高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)が得られなくなり、その結果、上記(ii)のポリウレタン形成反応で得られる熱可塑性ポリウレタン組成物中で、熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)とが、または熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)とは、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーにならず、熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)との相容化が十分に達成されず、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られなくなる。一方、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に当たって、高分子ポリオール(a−1)の使用割合が、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)の合計重量に基づいて、90重量%を超えると、生成する熱可塑性ポリウレタン組成物の粘着性がやはり大きくなり、取り扱い性、溶融成形性が不良になるなどの不都合を生じる。
【0043】
ここで、本発明でいう「高分子ポリオール(a−1)が(水添)ブロック共重合体(b)中に含浸している」とは、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)とが配合直後の単なる混合状態や濡れ状態にあるのではなく、高分子ポリオール(a−1)が(水添)ブロック共重合体(b)中に十分に浸透していて、高分子ポリオール(a−1)が単独で液状を呈する温度において、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)の単なる混合物が呈していた高分子ポリオール(a−1)による流動性が消失して、液状を呈さない一様な高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)となっている状態を意味する。
なお、本明細書でいう上記液状とは、危険物の規制に関する規則第69条の2「液状の定義」に準拠して評価した状態をいう。すなわち、垂直にした試験管(内径30mm、高さ120mmの平底円筒型のガラス製のもの)に、試験サンプルを試験管の底からの高さが55mmとなる部分まで入れ、当該試験管を水平にした場合に、当該試験サンプルの移動面の先端が、試験管の底からの距離が85mmの部分を通過するまでの時間が90秒以内であるものを液状と定義する。高分子ポリオールが室温で液状である場合には、室温条件下に上記の液状確認試験を実施し、また高分子ポリオールが室温で液状でない場合には、液状になる温度条件で上記の液状確認試験を実施することとする。高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製時の高分子ポリオール(a−1):(水添)ブロック共重合体(b)の使用割合が上記した35:65〜90:10の重量比の範囲から外れると、液状を呈さない高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)が得られなくなる。
【0044】
本発明で用いる高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)において、高分子ポリオール(a−1)の流動性が消失する理由は明確ではないが、(水添)ブロック共重合体がパラフィン系オイルを吸収する現象と同様に、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)を上記特定の割合で用いると、高分子ポリオール(a−1)が(水添)ブロック共重合体(b)中のゴム部分[すなわち(水添)共役ジエン系重合体ブロック部分]に優先的にかつ十分に浸透して、高分子ポリオール(a−1)が液状を呈する温度において本来有している流動性が消失するものと推測される。
【0045】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を調製するに当たって、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)を前記した35:65〜90:10の重量比で用いる限りは、熱可塑性ポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の全量を高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製時に用いても、或いは熱可塑性ポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の一部を高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製時に用い、残りの高分子ポリオール(a−1)を工程(ii)のポリウレタン形成反応時に用いてもよい。
【0046】
また、本発明では、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して、可塑剤(c)を0.1〜200重量部の割合で用いて高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を調製する。可塑剤(c)の使用割合が、高分子ポリオール(a−1)と(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して200重量部を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン組成物の非粘着性、溶融成形性、耐摩耗性、屈曲性、引張破断強度などの力学的特性が低下し、しかも粘着テープなどによる接着性も低下する。可塑剤(c)の使用量の下限は特に制限されないが、0.1重量部以上が好ましく、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、低残留歪み性などと共に、柔軟性、伸長性などに優れる硬度の低い熱可塑性ポリウレタン組成物、特にJIS A硬度が70以下の熱可塑性ポリウレタン組成物を得たい場合、また極性の低い樹脂に対する熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融接着性をより向上させたい場合は、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いる高分子ポリオール(a−1)および(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して可塑剤(c)を10〜200重量部の割合で用いることがより好ましく、20〜150重量部の割合で用いることがさらに好ましい。
【0047】
高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製時に用いる可塑剤(c)としては、熱可塑性ポリウレタン(a)および(水添)ブロック共重合体(b)に対して可塑化効果を有する公知の化合物のいずれもが使用でき、例えば、流動パラフィンを含むパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素油、芳香族系炭化水素油などの炭化水素系油類;落花生油、ロジンなどの植物油類;リン酸エステル類;フタル酸エステル類;アジピン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;シリコーンオイル類;液状ポリイソプレンまたはその水素添加物、液状ポリブタジエンまたはその水素添加物、液状ポリイソブチレンなどの可塑化能を有する液状ポリマー類やその変性物などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)では、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が(水添)ブロック共重合体(b)中に含浸して、液状を呈さない高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を生成している。
【0049】
高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および/または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に当たっては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を添加してもよく、他の成分の例としては、ポリウレタンの製造において通常使用されている触媒、反応促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、安定剤などを挙げることができる。
【0050】
非粘着性の高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)が得られる限りは、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)および高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製法は特に制限されない。例えば、高分子ポリオール(a−1)、(水添)ブロック共重合体(b)および場合により可塑剤(c)を上記した特定の割合で用いて、必要に応じて他の成分と共に、樹脂材料の混合に通常用いられているような縦型または水平型の混合機を用いて予備混合した後、単軸または二軸の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを用いて、回分式または連続式で一般に150〜250℃で加熱下に溶融混合することによって高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を調製することができる。
また、溶融混合する場合に比べて多少時間はかかるが、高分子ポリオール(a−1)、(水添)ブロック共重合体(b)および場合により可塑剤(c)を上記した特定の割合で混合し、必要に応じて更に他の成分を添加して、液状を呈さない含浸組成物が得られるまで、非加熱下(室温下)に該混合物を混練または静置して、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を調製してもよい。
【0051】
次いで、前記の工程(ii)で、
上記で調製した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤と混合してポリウレタン形成反応を行うか[ポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の全量を高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いた場合];或いは、
上記で調製した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を、有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール(a−1)および鎖伸長剤と混合してポリウレタン形成反応を行って[ポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の一部のみを高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いた場合];
目的とする熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する。
【0052】
ポリウレタン形成反応に当たっては、反応系に存在する活性水素原子:イソシアネート基のモル比が1:0.9〜1.3の範囲内、好ましくは1:0.95〜1.10になるようにして、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)と有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤の使用量を調節するか、或いは高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)と、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤の使用量を調節して反応を行うことが、非粘着性、溶融成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性などの種々の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物が得られる点から望ましい。
【0053】
ポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の全量を高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用い、そのためポリウレタン形成反応を高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤の3者を混合して行う場合は、一般に、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)中に含まれる高分子ポリオール(a−1)および鎖伸長剤が有している活性水素原子の合計モル数と、有機ジイソシアネート化合物が有しているイソシアネート基のモル数との比が、上記の1:0.9〜1.3の範囲内になるようにすればよい。
また、ポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の一部を高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用い、残りの高分子ポリオール(a−1)をポリウレタン形成反応時に用いる場合は、一般に、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)中に含まれる高分子ポリオール(a−1)、鎖伸長剤およびポリウレタン形成反応時に添加する高分子ポリオール(a−1)が有している活性水素原子の合計モル数と、有機ジイソシアネート化合物が有しているイソシアネート基のモル数との比が、上記1:0.9〜1.3の範囲内になるようにすればよい。
【0054】
ポリウレタン形成反応で用いる有機ジイソシアネート化合物の種類は特に制限されず、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネート化合物のいずれもが使用でき、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの有機ジイソシアネート化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。そのうちでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0055】
ポリウレタン形成反応で用いる鎖伸長剤としては、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用でき、そのうちでもイソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が好ましい。
そのような鎖伸長剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などを挙げることができる。これらの鎖伸長剤は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。
これらのうちでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましく用いられ、1,4−ブタンジオールがより好ましく用いられる。
【0056】
また、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製時にポリウレタンの形成に必要な高分子ポリオール(a−1)の一部のみを用い、残りの高分子ポリオール(a−1)をポリウレタン形成反応時に用いる場合は、高分子ポリオール(a−1)として、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製において上述したのと同様の高分子ポリオールの1種または2種以上を用いることができる。その場合に、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製に用いた高分子ポリオール(a−1)と、ポリウレタン形成反応で用いる高分子ポリオール(a−1)は、同じであってもまたは異なっていてもよい。そのうちでも、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製時に好ましく用いられるとした高分子ポリオールをポリウレタン形成反応でも用いるのが望ましい。
【0057】
ポリウレタン形成反応時または反応後に、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、補強剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、防かび剤、抗菌剤、安定剤などの各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維などの各種繊維;タルク、シリカなどの無機物;各種カップリング剤などの任意の成分を添加してもよい。
【0058】
ポリウレタン形成反応は、公知のウレタン化技術のいずれを採用して行ってもよく、プレポリマー法またはワンショット法のいずれも採用できる。本発明で採用し得るポリウレタン形成反応の具体例としては、以下の▲1▼〜▲4▼の方法を挙げることができる。
▲1▼ 高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)に鎖伸長剤を混合するかまたは鎖伸長剤と高分子ポリオール(a−1)を混合して40〜100℃に加熱し、得られた混合物に、該混合物における活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で有機ジイソシアネート化合物を添加して短時間撹拌した後、例えば50〜160℃に加熱して熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法。
▲2▼ 高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)に、鎖伸長剤と有機ジイソシアネート化合物、または鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および高分子ポリオール(a−1)を、活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で混合して、例えば180〜260℃の高温で混練して熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法。
【0059】
▲3▼ 多軸スクリュー型押出機などの押出機に、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)と共に、鎖伸長剤と有機ジイソシアネート化合物、または鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および高分子ポリオール(a−1)を、活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で連続的に供給して、例えば180〜260℃の高温で連続溶融重合して熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法。
▲4▼ 高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)と、鎖伸長剤と有機ジイソシアネート化合物、または鎖伸長剤、有機ジイソシアネート化合物および高分子ポリオール(a−1)を、活性水素原子とイソシアネート基のモル比が好ましくは1:0.9〜1.3となる量で、有機溶媒中に加えて有機溶媒中でポリウレタン形成反応を行って、熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法。
【0060】
これらの方法のうちでも、有機溶媒を用いない上記▲1▼〜▲3▼の方法が好ましく採用され、特に上記▲3▼の押出機を用いる連続溶融重合法が、目的とする熱可塑性ポリウレタン組成物を生産性良く製造できるので望ましい。
【0061】
本発明では、ポリウレタン形成反応後に生成する熱可塑性ポリウレタン組成物中に含まれる熱可塑性ポリウレタン(a):(水添)ブロック共重合体(b)の割合が、好ましくは95:5〜40:60の範囲内、より好ましくは90:10〜50:50の範囲内になるようにして、上記(i)の高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製工程および上記(ii)のポリウレタン形成反応で用いる各成分、すなわち(水添)ブロック共重合体(b)、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤の使用割合を調節するのがよい。熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)の含有割合が前記の範囲内にあると、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、溶融成形性、非粘着性、耐摩耗性、力学的特性、耐水性、耐油性、その他の特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を確実に得ることができる。
【0062】
熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)の含有量が40重量%未満である[(水添)ブロック共重合体(b)の含有量が60重量%を超える]と、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が得られにくくなり、極性の高い重合体に対する熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融接着性が低下し、しかも耐摩耗性や力学的特性に優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を得ることが困難になり易い。一方、熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(a)の含有量が95重量%を超える[(水添)ブロック共重合体(b)の割合が5重量%未満である]と、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が得られにくくなり、極性の低い重合体に対する熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融接着性が低下し、しかも非粘着性、耐水性などに優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を得ることが困難になり易い。
【0063】
また、本発明において、可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する場合は、生成する熱可塑性ポリウレタン組成物中での可塑剤(c)の含有量が、熱可塑性ポリウレタン(a)並びに(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して60重量部以下になるように、上記(i)の高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製工程および上記(ii)のポリウレタン形成反応を行うことが、本発明で規定する上記した特定のモルホロジーを有する熱可塑性ポリウレタン組成物が生成され易くなり、溶融成形性、非粘着性、耐摩耗性、力学的特性、柔軟性などに優れる熱可塑性ポリウレタン組成物を得る上で望ましい。熱可塑性ポリウレタン(a)および(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して可塑剤(c)の含有量が60重量部を超えると、熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性や得られる成形品の耐摩耗性、溶融接着性などが低下する。
【0064】
さらに、本発明では、ポリウレタン形成反応後に得られる熱可塑性ポリウレタン組成物の硬度(JIS A硬度)が98A以下になるようにして、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製工程(i)およびポリウレタン形成反応(ii)を行うのが望ましい。熱可塑性ポリウレタン組成物のJIS A硬度が98Aよりも高いと、溶融成形性が不十分になり、成形品の製造が円滑に行われにくくなる。
【0065】
また、本発明では、ポリウレタン形成反応後に得られる熱可塑性ポリウレタン組成物の対数粘度(η inh)が好ましくは0.5dl/g以上、より好ましくは0.7dl/g以上、さらに好ましくは0.9dl/g以上、一層好ましくは1.1dl/g以上になるようにして、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製工程(i)およびポリウレタン形成反応(ii)を行うのが望ましい。熱可塑性ポリウレタン組成物の対数粘度(η inh)が0.5dl/gよりも低いと、熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性や得られる成形品の耐摩耗性、力学的特性などが低下し易い。
なお、本明細書でいう熱可塑性ポリウレタン組成物または熱可塑性ポリウレタンの対数粘度(η inh)は、以下の実施例の項に記載する方法で測定した値を意味する。
【0066】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、溶融成形性に優れており、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、プレス成形、注型などの任意の成形方法によって種々の成形品を円滑に成形することができる。特に、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、非粘着性で且つ溶融成形性に優れているので、例えば、射出成形などにより成形品を製造する際に、金型からの成形品の離型が良好であり、しかも金型内での樹脂の流れ斑による成形品表面の不良(気泡や流れ模様の発生)が防止され、成形品同士の膠着がなく、高品質の成形品を生産性良く製造することができる。また、例えば、押出成形などによるフィルムやシートを製造する際に、離型剤や離型シートなどを用いることなく単独で巻き取ることが可能になり、しかも巻き取ったフィルムやシートは巻き返しが可能であり、手間がかからず生産性が高く、且つコスト的にも有利である。
【0067】
その上、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて上記した射出成形、押出成形、その他の成形を行って得られる成形品、シート、フィルムなどの各種成形品は、非粘着性で、耐摩耗性に優れ、引張破断強度や引張破断伸度などで代表される力学的特性、屈曲特性、耐油性、耐水性、弾性回復性などの特性に優れ、残留歪みが小さく、且つ適度な柔軟性を有しており、しかも平滑な表面を有し表面状態も良好であるので、それらの特性を活かして、例えば、コンベアベルト、各種キーボード、ラミネート品、各種容器用のフィルムやシート、ホース、チューブ、自動車部品、機械部品、靴底、時計バンド、パッキング材、制振材などの各種用途に使用することができる。
【0068】
さらに、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、前記した特性と併せて、各種素材に対して高い溶融接着性を有し、極性の高い樹脂および極性の低い樹脂の両方に対して溶融接着性を有する。特に極性の高い樹脂に対しては良好な溶融接着性を示し、そのうちでも、可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物は極性の高い樹脂に対してのみならず極性の低い樹脂に対しても高い溶融接着性を示す。そのため、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、各種積層構造体の製造に極めて有効であり、したがって本発明は、本発明で得られる熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層と他の材料からなる層とが積層した積層構造体を本発明の範囲に包含する。
【0069】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる樹脂層を有する積層構造体としては、何ら限定されるものではないが、例えば、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる1つの樹脂層と他の材料からなる1つの層が積層した2層構造体、他の材料からなる2つの表面層(表裏面層)の間に本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる樹脂層が中間層として存在する3層構造体、他の材料からなる1つの層の表裏面に本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる樹脂層が積層した3層構造体、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層と他の1種または2種以上の材料からなる層が交互に4層以上に積層した多層構造体などを挙げることができ、それらの積層構造体のいずれもが本発明の範囲に包含される。その際に、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層と積層する上記した他の材料としては、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物以外の他の各種熱可塑性樹脂またはその組成物、熱硬化性樹脂、紙、布帛、金属、木材、セラミックスなどを挙げることができる。
【0070】
上記した積層構造体の製法は特に制限されず、例えば、前記した他の材料を本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物で溶融被覆して積層構造体を製造する方法、2つ以上の他の材料の間に本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融下に導入して接着・一体化させる方法、他の材料を金型内に配置(インサート)した状態で本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融下に金型内に充填して接着・一体化させる方法、他の材料が熱可塑性である場合は本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物と他の材料を共押出成形して接着・一体化させる方法、また他の材料と本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物とを接着剤を用いて接着・一体化させる方法などを採用することができる。
【0071】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、上述のように、極性の高い樹脂および極性の低い樹脂の両方に対して良好な溶融接着性を示し、特に極性の高い樹脂に対する溶融接着性に優れており、例えば、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体;ポリスチレン系樹脂;オレフィン系重合体などの樹脂または重合体と溶融接着積層して各種の積層構造体を形成することができる。
特に可塑剤(c)を含有する本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、極性の高い樹脂だけではなく、極性の低い樹脂に対して高い溶融接着性を示す。
【0072】
したがって、限定されるものではないが、本発明の積層構造体の好ましい態様として、上述のように、以下の積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)を挙げることができる。
・積層構造体(イ):
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層(A)と、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種よりなる極性の高い樹脂層(B)とが、樹脂層(A)/樹脂層(B)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体。
・積層構造体(ロ):
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層(A)と、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種よりなる極性の高い樹脂層(B)と、スチレン系重合体およびオレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種からなる極性の低い樹脂層(C)が、樹脂層(A)を挟んで、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する積層構造体。
【0073】
本発明の好ましい態様である上記した積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)について具体的に説明する。
積層構造体(イ)における樹脂層(A)は、可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物または可塑剤(c)を含有しない熱可塑性ポリウレタン組成物のいずれから形成されていてもよい。また、積層構造体(ロ)における樹脂層(A)も、可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物または可塑剤(c)を含有しない熱可塑性ポリウレタン組成物のいずれから形成されていてもよく、そのうちでも、可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物の方が、極性の低い樹脂層(C)に対する溶融接着性がより高いので、積層構造体(ロ)における樹脂層(A)を可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物から形成することが好ましい。
【0074】
また、積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)は、上述のように、極性の高い、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種からなっている。
【0075】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するポリアミド樹脂としては、ポリマー主鎖にアミド結合(−CO−NH−)を有し、加熱溶融が可能なものであれば特に制限されず、例えば、3員環以上のラクタムを開環重合して得られるポリアミド(ポリラクタム)、ω−アミノ酸の重縮合により得られるポリアミド、二塩基酸とジアミンとの重縮合により得られるポリアミドなどを挙げることができ、これらのポリアミドの1種または2種以上を用いることができる。
その場合に、ポリアミドの原料である上記したラクタムの具体例としては、ε−カプロラクタム、エナトラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドンなどを挙げることができる。
また、ポリアミドの原料である上記したω−アミノ酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸などを挙げることができる。
【0076】
さらに、ポリアミドの原料である上記した二塩基酸の具体例としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることができる。上記したジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0077】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するポリエステル樹脂としては、ポリマー主鎖にエステル結合を有し、加熱溶融が可能なものであれば特に制限されず、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との反応により得られるポリエステル、ラクトンを開環重合して得られるポリエステル(ポリラクトン)、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を重縮合して得られるポリエステルなどを挙げることができる。そのうちでも、本発明ではジカルボン酸成分とジオール成分とから実質的に形成されているポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0078】
その場合に、ポリエステル樹脂の原料である上記したジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、テトラブロモフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。また、ポリエステル樹脂の原料である上記したジオール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオールなどを挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂は、必要に応じて、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の化合物から誘導される構造単位の1種または2種以上を少量であれば有していてもよい。
【0079】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するポリ塩化ビニリデン樹脂としては、塩化ビニリデンに由来する構造単位を50重量%以上の割合で有している樹脂が好ましく用いられ、70〜98重量%の割合で有している樹脂がより好ましく用いられる。ポリ塩化ビニリデン樹脂が塩化ビニリデンと他の単量体との共重合体である場合には、塩化ビニリデンと、塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、アクリル酸などの他の不飽和単量体の1種または2種以上との共重合体が好ましく用いられる。ポリ塩化ビニリデン樹脂の重合度は特に制限されないが、一般に、重合度が100〜10,000の範囲内のものが好ましく用いられ、400〜5,000の範囲内のものがより好ましく用いられる。
【0080】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルに由来する構造単位を70重量%以上の割合で有する塩化ビニルと他の共重合性単量体との共重合体およびそれらの塩素化物の1種または2種以上が好ましく用いられる。ポリ塩化ビニル系樹脂が塩化ビニル共重合体である場合は、塩化ビニルと、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、マレイミドなどの共重合性単量体の1種または2種以上の共重合体が好ましく用いられる。ポリ塩化ビニル系樹脂の重合度は特に制限されないが、一般に、重合度が100〜10,000の範囲内のものが好ましく用いられ、400〜5,000の範囲内のものがより好ましく用いられる。
【0081】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するポリカーボネート樹脂としては、実質的にジヒドロキシ化合物と、ホスゲン、炭酸ジエステルまたはハロゲンホルメートとを反応させて得られるポリカーボネートを挙げることができる。その場合に、原料であるジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」ということがある)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノールなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらのうちでもビスフェノールAが好ましい。
【0082】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位から主としてなるアクリル樹脂を挙げることができる。その場合に、アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位の割合が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステル単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルから誘導される構造単位を挙げることができ、アクリル樹脂はこれらの(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位の1種または2種以上を有していることができる。また、アクリル樹脂は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル以外の不飽和単量体から誘導される構造単位の1種または2種以上を有していてもよい。例えば、アクリル樹脂は、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体から誘導される構造単位を好ましくは50重量%以下の割合で有していてもよく、またスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物などから誘導される構造単位を好ましくは10重量%以下の割合で有していてもよい。
【0083】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するポリオキシメチレン樹脂は、オキシメチレン基を主たる構造単位とする高分子化合物であり、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンなどの単量体の1種または2種以上からなる重合体;該単量体とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、オキサシクロブタン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテルとからなる共重合体;該単量体とβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトンなどの環状エステルとの共重合体などを挙げることができる。さらに、ポリオキシメチレン樹脂の耐熱性を向上させるために、例えば、末端が無水酢酸などでアセチル化されたような末端変性ポリオキシメチレン樹脂も用いることができる。
【0084】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、エチレン単位が20〜60モル%の範囲内、好ましくは25〜60モル%の範囲内で、ケン化度が95%以上のものが好ましく用いられる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、ASTM D−1238−65Tに準拠して測定したメルトインデックスが0.1〜25g/10分(190℃、2160g荷重下で測定)の範囲内であることが、成形性が良好であることから好ましく、0.3〜20g/10分の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)を形成する、シアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種と芳香族ビニル化合物との共重合体において使用される芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。これらのうちで特にスチレンが好ましい。また、前記共重合体において使用されるシアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。そして、前記共重合体において使用される共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖および側鎖共役ヘキサジエンなどを挙げることができ、それらの1種または2種以上を用いることができる。それらのうちで、1,3−ブタジエンおよび/または2−メチル−1,3−ブタジエンが特に好ましく用いられる。また、前記共重合体において使用されるオレフィン化合物としては、例えばエチレン、プロピレンなどを挙げることができる。好ましい共重合体としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(AES樹脂)などを挙げることができる。
【0086】
また、積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における樹脂層(B)は、樹脂層(B)の性質を損なわない限りは、必要に応じて、熱安定剤(例えば金属セッケン、リン化合物、硫黄化合物、フェノール系化合物、L−アスコルビン酸類、エポキシ化合物など)、可塑剤(例えば脂肪族二塩基酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエステル系化合物、リン酸エステルなど)、耐衝撃性付与剤(例えばエチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレンターポリマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、無機微粉末、有機滑剤、分散剤、染顔料、帯電防止剤、酸化防止剤などの1種または2種以上を含有していてもよい。
【0087】
そして、積層構造体(ロ)における樹脂層(C)は、オレフィン系重合体およびスチレン系重合体のうちの少なくとも1種から主としてなっている。その場合のオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンの単独重合体、前記したオレフィンの2種以上からなるオレフィン共重合体、または前記したオレフィンの1種または2種以上と他のビニル系単量体の1種または2種以上との共重合体を挙げることができる。
オレフィン系重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(好ましくは酢酸ビニル含有量が5〜30重量%)、エチレン−アクリル酸共重合体(好ましくはアクリル酸含有量が5〜30重量%)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体などを挙げることができる。樹脂層(C)は、前記したオレフィン単独重合体およびオレフィン共重合体の1種または2種以上から形成することができる。
【0088】
また、積層構造体(ロ)における樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体としては、スチレン系単量体に由来する構造単位を10重量%以上含有する重合体が好ましく用いられ、50重量%以上含有する重合体がより好ましく用いられる。その場合のスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレンなどを挙げることができ、スチレン系重合体は前記したスチレン系単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有している。
【0089】
樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体は、上記したスチレン系単量体に由来する構造単位と共に、90重量%以下、好ましくは50重量%以下であれば他のビニル系単量体に由来する構造単位を有していてもよい。他のビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、オクダデシルなどの炭素数1〜18のアルキルエステル;アクリル酸またはメタクリル酸のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのジオールエステル;酢酸やプロピオン酸などの炭素数1〜6のカルボン酸のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸の無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンなどを挙げることができ、スチレン系重合体はそれらのビニル系単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有していることができる。そのうちでも、スチレン系重合体がスチレン系単量体と他のビニル系単量体との共重合体である場合は、スチレン系単量体と、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、N−フェニルマレイミド、無水マレイン酸およびブタジエンの1種または2種以上との共重合体であることが、力学的特性などの点から好ましい。
【0090】
また、樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体は、ゴム質重合体を含有するスチレン系重合体であってもよい。その場合のゴム質重合体は、ガラス転移温度が0℃以下のものが好ましく、−20℃以下のものがより好ましい。そのようなゴム質重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルを30重量%以下の割合で含有するスチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどを挙げることができる。
【0091】
樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体が含有し得る他のゴム質重合体としては、アクリルゴムを挙げることができ、その際のアクリルゴムとしては、アクリル酸の炭素数1〜8のアルキルエステル、特にアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよび/またはアクリル酸2−エチルヘキシルから誘導される構造単位より主としてなるアクリル酸アルキルゴムが好ましい。アクリル酸アルキルゴムは、場合により30重量%以下の量で酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルなどの他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。また場合によっては5重量%以下の割合でアルキレンジオール(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、シアヌル酸トリアリルなどの架橋性不飽和単量体に由来する構造単位を有していてもよい。
【0092】
樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体が含有することのできるゴム質重合体としては、上記以外にも、例えばエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体などのようなエチレン−プロピレン−非共役ジエン系共重合体ゴム、スチレン系重合体ブロック−ブタジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物、スチレン系重合体ブロック−イソプレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物などを挙げることができる。
また、樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体が含有することのできるゴム質重合体としては、上記で挙げた各種のゴム質重合体にスチレン系単量体やその他の各種の不飽和単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体を挙げることができる。
【0093】
樹脂層(C)を形成するスチレン系重合体がゴム質重合体を含有するものである場合は、上記した種々のゴム質重合体のうちでも、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸ブチル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体のうちの1種または2種以上を含有するスチレン系重合体であることが好ましい。
【0094】
また、場合によっては、積層構造体(ロ)における樹脂層(C)は、上記したオレフィン系重合体の1種または2種以上と、上記したスチレン系重合体の1種または2種以上とを含有する重合体組成物からなっていてもよい。
更に、樹脂層(C)は、その本来の特性の妨げにならない限りは、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0095】
本発明の積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)では、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における全体の層数、積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)の用途などに応じて調節し得るが、一般には、樹脂層(A)の厚さを1μm〜5mm、樹脂層(B)の厚さを10μm〜5mm、樹脂層(C)の厚さを10μm〜5mmにしておくことが、積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)の製造の容易性、層間接着力などの点から好ましい。
【0096】
本発明の積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)における全体の層数は特に制限されず、樹脂層(A)/樹脂層(B)の積層構造を少なくとも一部に有する積層構造体(イ)、および樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の順に積層している構造を少なくとも一部に有する積層構造体(ロ)である限りはいずれでもよい。
また、積層構造体(イ)は樹脂層(A)と樹脂層(B)の2者から形成されていても、積層構造体(ロ)は樹脂層(B)、樹脂層(A)および樹脂層(C)の3者のみから形成されていても、またはそれらの層と共に他の材料からなる層(例えば他のポリマー、紙、布帛、金属、セラミック、木材などからなる層)の1つまたは2つ以上を有していてもよい。
【0097】
何ら限定されるものではないが、積層構造体(イ)の例としては、樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる2層構造;樹脂層(B)/樹脂層(A)/他の重合体層からなる3層構造物;(紙、布帛または金属)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる3層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)からなる4層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる5層構造物;(紙、布帛または金属)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/(紙、布帛または金属)からなる5層構造物;などを挙げることができる。
また、積層構造体(ロ)の例としては、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる3層構造物;(紙、布帛または金属)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる4層構造物;樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)からなる5層構造物;樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)からなる5層構造物;(紙、布帛または金属)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/(紙、布帛または金属)からなる7層構造物;(紙、布帛または金属)/樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)/樹脂層(A)/樹脂層(B)/(紙、布帛または金属)からなる7層構造物などを挙げることができる。
【0098】
1つの積層構造体(イ)中に2つ以上の樹脂層(B)が存在する場合は、該2つ以上の樹脂層(B)は、本発明で規定している重合体を用いるものである限りは、同じ重合体からなっていてもまたは異なる重合体からなっていてもよい。また、1つの積層構造体(ロ)中に2つ以上の樹脂層(B)および/または2つ以上の樹脂層(C)が存在する場合も、該2つ以上の樹脂層(B)および/または該2つ以上の樹脂層(C)は同じ重合体からなっていてもまたは異なる重合体からなっていてもよい。
【0099】
積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)の製造法としては、何ら限定されるものではないが、例えば、
▲1▼ 樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物および樹脂層(B)用の重合体を用いるか[積層構造体(イ)の場合]、または樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物、樹脂層(B)用の重合体および樹脂層(C)用の重合体を用いて[積層構造体(ロ)の場合]、それらを溶融共押出成形して、それぞれの層の押出成形と同時に積層させて積層構造体(イ)または積層構造体(ロ)を製造する方法;
▲2▼ 樹脂層(B)を構成するフイルム、シート、その他の成形品を射出成形や押出成形などにより予め製造しておいて樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融押出成形しながら積層一体化して積層構造体(イ)を製造する方法;
▲3▼ 樹脂層(B)および/または樹脂層(C)を構成するフイルム、シート、その他の成形品を射出成形や押出成形などにより予め製造しておき、樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融押出成形しながら、また樹脂層(C)および樹脂層(B)の一方が予め成形されたものでない場合はそれをも溶融押出成形しながら、予め製造しておいた樹脂層(B)用の成形品および/または樹脂層(C)用の成形品と積層して一体化させて積層構造体(ロ)を製造する方法;
▲4▼ 本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物、樹脂層(B)を構成する重合体、樹脂層(C)を構成する重合体を用いて、射出成形や押出成形などによりそれぞれの重合体よりなるフィルム、シート、その他の成形品を予め製造しておき、予め成形した樹脂層(A)を構成する成形品と樹脂層(B)を構成する成形品を積層した後、または予め成形した樹脂層(B)を構成する成形品、樹脂層(A)を構成する成形品および樹脂層(C)を構成する成形品をこの順序で積層した後、高周波接着装置や加熱溶封機(ヒートシーラー)などを用いて加熱下に接着・一体化して、積層構造体(イ)または積層構造体(ロ)を製造する方法;
▲5▼ 樹脂層(B)を構成する成形品を射出成形や押出成形などにより予め製造しそれを金型内に配置(インサート)しておくか、または樹脂層(B)と樹脂層(C)を構成する成形品を射出成形や押出成形などにより予め製造しそれらの成形品を金型内に予め配置(インサート)しておき、そこに樹脂層(A)用の本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を溶融下に充填し、接着・一体化させて、積層構造体(イ)または積層構造体(ロ)を製造する方法;
などを挙げることができる。
【0100】
上記した▲1▼〜▲5▼のいずれの場合にも、有機溶剤を用いずに、溶融した樹脂層(A)によって、樹脂層(A)および樹脂層(B)間の接着・一体化、または樹脂層(B)、樹脂層(A)および樹脂層(C)間の接着・一体化を行うことができるので、有機溶剤による自然環境の破壊や、作業環境の悪化、溶剤の回収などの問題や手間を生ずることなく、目的とする積層構造体(イ)または積層構造体(ロ)を得ることができる。
【0101】
本発明の積層構造体、特に積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)は、積層構造体を構成している樹脂層(A)、樹脂層(B)、樹脂層(C)の性質に応じて、更には積層構造体を構成している他の材料層の材質や性質などに応じて、種々の用途に使用することができる。何ら限定されるものではないが、例えば、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバーなどの自動車用内装部品、モールなどの自動車外装部品、掃除機バンパー、冷蔵庫当たり、カメラグリップ、電動工具グリップ、リモコンスイッチ、OA機器の各種キートップ、ハウジングなどの家電部品、水中眼鏡などのスポーツ用品、各種カバー、耐摩耗性、密閉性、防音性、防振性などを目的とした各種パッキン付き工業部品、カールコード電線被覆、ベルト、ホース、チューブ、消音ギアなどの電気・電子部品などに使用することができる。
【0102】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、参考例、実施例および比較例において、高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)および熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度、熱可塑性ポリウレタンの対数粘度、熱可塑性ポリウレタン組成物の射出成形性(金型からの離型状態および成形品の表面状態)および押出成形性(フィルムの製造状態および表面状態)、並びに熱可塑性ポリウレタン組成物から得られる成形品の耐ブロッキング性、硬度、屈曲性、引張破断強度、耐摩耗性、100%モジュラス、残留歪みおよび粘着テープの接着性、並びに積層構造体における接着強度は、以下の方法により測定または評価した。
【0103】
(1)溶融粘度:
高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して、80℃で2時間減圧乾燥(10torr以下)した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)または熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度を、荷重490.3N(50kgf)、ノズル寸法=直径1mm×長さ10mm、温度200℃の条件下で測定した。
【0104】
(2)対数粘度:
熱可塑性ポリウレタン組成物1g当たり200mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えて、室温で24時間撹拌した後、濾過分別してDMF溶液を回収した。不溶部分はさらにDMFを加えて1時間撹拌して濾過分別を行い、この操作を3回繰り返して、回収した濾液を一緒にした。濾液からDMFを留去した後、室温で24時間真空乾燥し、得られた熱可塑性ポリウレタン成分の重量を測定して、熱可塑性ポリウレタン組成物に含まれている熱可塑性ポリウレタン成分のほぼ100%が抽出されていることを確認し、抽出率が100%に満たない場合は、抽出されなかった部分は熱可塑性ポリウレタン成分の分子量が十分に高いためにDMFに不溶であったものと判断して、対数粘度の測定対象から外した。抽出された熱可塑性ポリウレタン成分を濃度0.5g/dlになるようにDMFに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて、そのポリウレタン溶液の30℃における流下時間を測定し、下記の式により熱可塑性ポリウレタンの対数粘度(η inh)を求めた。
【0105】
【数1】
熱可塑性ポリウレタンの対数粘度(η inh)=[ln(t/t0)]/c
[式中、tは熱可塑性ポリウレタン溶液の流下時間(秒)、t0は溶媒(DMF)の流下時間(秒)、およびcは熱可塑性ポリウレタン溶液の濃度(g/dl)を表す。]
【0106】
(3)モルホロジー解析:
熱可塑性ポリウレタン組成物を液体窒素蒸気中で凍結させてから、カミソリ(フェザー社製カミソリS(片刃))で厚さ約200μmの切片(観察用試料)を作成し、その試料を酸化ルテニウム(VIII)蒸気で3分間染色し、光学顕微鏡OPTIPHOT−2(ニコン社製、約200倍、約500倍、約1000倍または約1600倍)により構造を観察した。このときに観察される(水添)ブロック共重合体(b)または(水添)ブロック共重合体(b)と可塑剤(c)からなる島成分の大きさ、並びに該島成分の内部にある熱可塑性ポリウレタン(a)からなる島成分の平均粒子径は、顕微鏡写真から該当する島成分をランダムに100点サンプリングし、その最長部の長さを測定し、数平均を採って各々の値とした。
【0107】
(4)射出成形性:
表面を鏡面仕上げした金型を用いて、射出成形(シリンダー温度180〜205℃、金型温度35℃)により円板成形品(直径120mm、厚さ2mm)を成形した際の、成形品の金型からの離型状態および成形品の表面状態を観察し、下記の表1に示す基準により評価した。
【0108】
【表1】
【0109】
(5)押出成形性:
T−ダイ型押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取り最中にフィルムの製造状態を観察すると共に、巻き取ったフィルムの表面状態を観察し、下記の表2に示す基準により評価した。
【0110】
【表2】
【0111】
(6)フィルムの耐ブロッキング性:
T−ダイ型押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取ったフィルムを室温で24時間放置した後、手で巻き返し、そのときの抵抗を下記の表3に示す基準により評価した。
【0112】
【表3】
[フィルムの耐ブロッキング性の評価基準]
○:巻き返しが円滑に実施可能。
△:かなりの引張力を要したが、巻き返しが可能。
×:膠着が大きく、巻き返しが不可能。
【0113】
(7)硬度:
上記の射出成形性の評価におけるのと同じ操作を行って得られた円板状成形品(直径120mm、厚さ2mm)を2枚重ね合わせたものを用いて、JIS K−6301に準じて、成形品のショア硬度Aを測定した。
【0114】
(8)屈曲性:
上記の射出成形性の評価におけるのと同じ操作を行って円板状成形品(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、得られた成形品を25℃で2日間放置した後、180度折り曲げて、その折り曲げ部分を肉眼で観察し、そのときの状態を下記の表4に示す基準により評価した。
【0115】
【表4】
[屈曲性の評価基準]
◎:変化がなく、屈曲性が良好。
○:屈曲部に若干白化現象が見られる。
×:表面剥離および/または内部剥離が見られる。
【0116】
(9)引張破断強度:
上記の射出成形性の評価におけるのと同じ操作を行って円板状成形品(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、得られた成形品を25℃で2日間放置した後、ダンベル3号形に打ち抜いて試験片を作製し、JIS K−7311に準じて、島津製作所製「オートグラフ測定装置IS−500D」を使用して、その引張破断強度を測定した。
【0117】
(10)耐摩耗性:
上記の射出成形性の評価におけるのと同じ操作を行って円板状成形品(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、得られた成形品を25℃で2日間放置した後、テーバー摩耗試験機(荷重1kg、摩耗輪H−22)を使用して、JIS K−7311に準じて摩耗量を測定した。
【0118】
(11)100%モジュラス(M100)および残留歪み:
T−ダイ型押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出し冷却した後巻き取って得られた厚さ50μmのフィルムから試験片(20cm×5cm)を作成し、この試験片を島津製作所製「オートグラフ測定装置IS−500D」を使用して、室温下、引張速度300mm/分で100%伸長して100%モジュラス(M100)を測定した。次に、300mm/分の速度で伸長前の位置まで戻し(1サイクル目)、続けて同じ速度で100%伸長した後に伸長前の位置まで戻す過程で応力がゼロになった時点(2サイクル目)での残留歪みを求めた。
100%モジュラス(M100)の値が小さいほど、低応力での伸長性に優れていることを示す。また、残留歪みの値が小さいほど、伸長後に元の状態に戻る回復性能に優れていることを示す。
【0119】
(12)接着性(粘着テープの粘着性):
T−ダイ型押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出し冷却した後に巻き取って得られた厚さ50μmのフィルムから幅25mmの試験片を作成した。この試験片に粘着テープ(ニチバン株式会社製「布粘着テープ LS No.101」)を貼り付けて、この粘着テープを引き剥がすときの抵抗値を、島津製作所製「オートグラフ測定装置IS−500D」を使用して、室温下、引張速度300mm/分の条件で測定し、接着性の指標とした。
【0120】
(13)積層構造体における接着強度:
以下の例(実施例20〜24)で製造した、熱可塑性ポリウレタン組成物を中間層(接着層)とする3層構造体から試験片(1cm×10cm)を切り出し、各表面層と接着層(熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる中間層)との間の界面接着強度を、島津製作所製「オートグラフ測定装置IS−500D」を使用して、室温下、引張速度300mm/分の条件で180度剥離試験により求めた。
【0121】
以下の参考例、実施例および比較例で用いた化合物に関する略号と、その内容を以下に示す。
《水添ブロック共重合体》
TPS−1:
ポリスチレンブロック−ポリイソプレン・ブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[スチレン含量30重量%、数平均分子量200,000、ポリイソプレン・ブタジエンブロックにおける水素添加率98%以上、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)流動せず]
TPS−2:
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[スチレン含量35重量%、数平均分子量200,000、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率98%以上、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)流動せず]
TPS−3:
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[スチレン含量20重量%、数平均分子量200,000、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率98%以上、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)流動せず]
TPS−4:
ポリスチレンブロック−ポリイソプレン・ブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[スチレン含量30重量%、数平均分子量85,000、ポリイソプレン・ブタジエンブロックにおける水素添加率98%以上、メルトインデックス(230℃、2.16kg荷重)は0.06g/10分]
【0122】
《高分子ポリオール》
POH−1:
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸を反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00で、数平均分子量が3,500であるポリエステルジオール(20℃で液状、80℃での粘度は12ポイズ)
POH−2:
3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパンおよびアジピン酸を反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が3.00で、数平均分子量が3,000であるポリエステルポリオール(20℃で液状、80℃での粘度は15ポイズ)
POH−3:
1分子当たりの水酸基数が2.00で、数平均分子量が2,000であるポリテトラメチレングリコール(融点25℃、80℃での粘度は8ポイズ)。
POH−4:
1分子当たりの水酸基数が3.00で、数平均分子量が3,000であるポリテトラメチレングリコール(融点35℃、80℃での粘度は13ポイズ)。
POH−5:
トリメチロールプロパンを開始剤としてポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド混合物を付加反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が3.00で、数平均分子量が4,500であるポリエーテルポリオール(20℃で液状、25℃における粘度は8ポイズ)
POH−6:
1,4−ブタンジオールと水添ダイマー酸を反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00で、数平均分子量が1,000であるポリエステルジオール(20℃で液状、80℃における粘度は3ポイズ)
POH−7:
1分子当たりの水酸基数が2.00で、数平均分子量が2,300であるポリブタジエンジオールの水素添加物(20℃で高粘度の液体、80℃での粘度は13ポイズ)
POH−8:
1分子当たりの平均水酸基数が2.9で、数平均分子量が3,500であるポリイソプレンポリオールの水素添加物(20℃で液状、80℃での粘度は30ポイズ)
POH−9:
1分子当たりの平均水酸基数が2.0で、数平均分子量が1,000であるひまし油ポリオール(20℃で液状、80℃での粘度は0.2ポイズ)
POH−10:
1分子当たりの水酸基数が2.00で、数平均分子量が1,000であるポリテトラメチレングリコール(融点19℃、80℃での粘度は5ポイズ)
POH−11:
1,4−ブタンジオールとアジピン酸を反応させて製造した、1分子当たりの水酸基数が2.00で、数平均分子量が2,000であるポリエステルジオール(融点54℃、80℃での粘度は12ポイズ)
【0123】
《可塑剤》
PL−1:
パラフィン系オイル[パラフィン/ナフテン=70/30(重量比)混合物、動粘性率4×10-4m2/秒(40℃)]。
PL−2:
液状ポリブタンの水素添加物[動粘性率9×10-3m2/秒(40℃)]。
【0124】
《有機ジイソシアネート化合物》
MDI: 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0125】
《鎖伸長剤》
BD: 1,4−ブタンジオール
【0126】
《積層用樹脂》
PC:
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロンS−1000」)
ABS:
アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)(日本合成ゴム株式会社製「JSR ABS12」)
NY−6:
ナイロン6(宇部興産株式会社製「UBEナイロン1013B」)
PMMA:
ポリメチルメタクリレート(株式会社クラレ製「パラペットEB」)
PP:
ポリプロピレン(三菱化学株式会社製「三菱ポリプロEX6」)
【0127】
《参考例1〜2》[高分子ポリオール含浸組成物の調製]
(1) 下記の表5に示すブロック共重合体および高分子ポリオールを、表5に示す割合で配合し、シグマ形回転羽根付撹拌槽に入れて、室温下(25℃)で120分間混合して、高分子ポリオール含浸組成物を調製した。それにより得られた高分子ポリオール含浸組成物(「CPD−1」および「CPD−2」)の溶融粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(2) この参考例1および2で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−1およびCPD−2は、いずれも、高分子ポリオールがブロック共重合体中に十分に含浸していて、高分子ポリオールの呈する液状がもはや消失し、本発明で用いる高分子ポリオール含浸組成物[高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)]が得られた。
【0128】
【表5】
【0129】
《参考例3〜8》[高分子ポリオール含浸組成物の調製]
(1) 表5に示すブロック共重合体および高分子ポリオールを、表5に
示す割合で配合し、シグマ形回転羽根付撹拌槽に入れて、100℃で60分間混合して、高分子ポリオール含浸組成物を調製した。それにより得られた高分子ポリオール含浸組成物(「CPD−3」〜「CPD−8」)の溶融粘度を上記した方法で測定したところ、表5に示すとおりであった。
(2) そのうち、参考例3〜7で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−3〜CPD−7は、いずれも、高分子ポリオールがブロック共重合体中に十分に含浸していて、高分子ポリオールの呈する液状がもはや消失し、本発明で用いる高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)が得られた。
【0130】
《参考例9〜10》[高分子ポリオール可塑剤含浸組成物の調製]
(1) 下記の表6に示すブロック共重合体、高分子ポリオールおよび可塑剤を、下記の表6に示す割合で配合し、シグマ形回転羽根付撹拌槽に入れて、室温下(25℃)で60分間混合して、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を調製した。それにより得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(「CPD−9」および「CPD−10」)の溶融粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
(2) この参考例9および10で得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−9およびCPD−10は、いずれも、高分子ポリオールおよび可塑剤がブロック共重合体中に十分に含浸していて、高分子ポリオールおよび可塑剤が呈する液状がもはや消失し、本発明で用いる高分子ポリオール可塑剤含浸組成物[高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)]が得られた。
【0131】
【表6】
【0132】
《参考例11〜19》[高分子ポリオール可塑剤含浸組成物の調製]
(1) 表6に示すブロック共重合体、高分子ポリオールおよび可塑剤を、表6に示す割合で配合し、シグマ形回転羽根付撹拌槽に入れて、100℃で60分間混合して、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を調製した。それにより得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(「CPD−11」〜「CPD−19」)の溶融粘度を上記した方法で測定したところ、表6に示すとおりであった。
(2) そのうち、参考例11〜16で得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−11〜CPD−16は、いずれも、高分子ポリオールおよび可塑剤がブロック共重合体中に十分に含浸していて、高分子ポリオールおよび可塑剤が呈する液状がもはや消失し、本発明で用いる高分子ポリオール可塑剤含浸組成物が得られた。また、参考例1〜7および9〜18で得られた組成物は、溶融粘度の経時変化がなく貯蔵安定性が良好であったが、高分子ポリオールを本発明の範囲内の量で含有していない参考例8および19の組成物は、製造直後は溶融粘度の低い組成物であったが、1日後には200℃における溶融粘度が10,000ポイズ以上になり、流動性のない組成物に変化した。
【0133】
《実施例1》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例1で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−1、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、下記の表7に示すように、[高分子ポリオール含浸組成物CPD−1中に含浸されている高分子ポリオール]:BD:MDIのモル比が1.00:3.21:4.13になるようにして配合し、シグマ形回転羽根付撹拌槽中で温度を80〜120℃の範囲に保ちながら短時間混合した後、200℃でさらに10分間混練してポリウレタン形成反応を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を製造した。生成した熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融物をバット中に流延し、冷却後に粉砕してペレットをつくり、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。
高分子ポリオール含浸組成物CPD−1より得られたこの熱可塑性ポリウレタン組成物について、前記(3)の方法にしたがって光学顕微鏡で写真撮影してそのモルホロジー解析を行った結果、下記の図2および図3(光学顕微鏡写真)に示すように、熱可塑性ポリウレタン(a)の海成分の中に水添ブロック共重合体(b)が島状に分布し、該島成分の内部にさらに0.001〜10μmの粒子状の熱可塑性ポリウレタン(a)成分が分布していた。
また、得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0134】
《実施例2》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例1で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−1の代わりに参考例2で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−2を用い、その際に[高分子ポリオール含浸組成物CPD−2中に含浸されている高分子ポリオール]:BD:MDIのモル比が1.00:2.45:3.43になるようにして、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を配合し、それ以外は実施例1の(1)と同様にしてポリウレタン形成反応、ペレット化および除湿乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表7に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表7に示すとおりであった。
【0135】
《実施例3》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例3で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−3、高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[高分子ポリオール含浸組成物中に含浸されている高分子ポリオール]:[高分子ポリオールPOH−1]:BD:MDIのモル比が0.10:0.90:2.93:3.78で、且つこれらの合計供給量が200g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36)に連続的に供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を行って、熱可塑性ポリウレタン組成物を製造した。生成した熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表7に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表7に示すとおりであった。
【0136】
《実施例4〜7および比較例1》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例3で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−3の代わりに参考例4〜8で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−4〜CPD−8の各々を用い、それに、高分子ポリオール(POH−1、POH−10またはPOH−11)、鎖伸長剤(BD)および50℃に加熱溶融した有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[高分子ポリオール含浸組成物CPD−4、CPD−5、CPD−6、CPD−7またはCPD−8中に含浸されている高分子ポリオール]:[高分子ポリオールPOH−1、POH−10またはPOH−11]:BD:MDIのモル比が表7および下記の表8に示した値になるようにして配合し、それ以外は実施例3の(1)と同様にしてポリウレタン形成反応、ペレット化および除湿乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。
これにより得られた熱可塑性ポリウレタン組成物のうち、比較例1で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物について、前記(3)の方法にしたがって光学顕微鏡により写真撮影してモルホロジー解析を行った結果、図4(光学顕微鏡写真)に示すように、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分の中に水添ブロック共重合体(b)が荒い縞状と一部不鮮明な枝状に分布していた。
また、この実施例4〜7および比較例1で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表7および下記の表8に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表7および下記の表8に示すとおりであった。
【0137】
《比較例2》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)および50℃に加熱溶融した有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[POH−1]:BD:MDIのモル比が1.00:2.32:3.25で、且つこれら3者の合計供給量が200g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ,L/D=36)に連続的に供給して、260℃で連続溶融重合を行った。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを60℃で4時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタンを製造した。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン90重量部およびブロック共重合体(TPS−1)10重量部の割合で、同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機に連続的に供給して、220℃で連続溶融混練を行った。生成した熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタン組成物を製造した。得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表8に示すとおりであった。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表8に示すとおりであった。
【0138】
《比較例3》[熱可塑性ポリウレタンおよび射出成形品の製造]
(1) 高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)および50℃に加熱溶融した有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[POH−1]:BD:MDIのモル比が1.00:2.13:3.10で、且つこれら3者の合計供給量が200g/分となるようにして同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ,L/D=36)に連続的に供給して、260℃で連続溶融重合を行った。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを60℃で4時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタンを製造した。得られた熱可塑性ポリウレタンの溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表8に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタンを用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表8に示すとおりであった。
【0139】
【表7】
【0140】
【表8】
【0141】
上記の表7および8の結果から、実施例1〜7で得られた熱可塑性ポリウレ
タン組成物、すなわち、高分子ポリオールと(水添)ブロック共重合体とを、前者:後者の重量比が35:65〜90:10の範囲内になるようにして高分子ポリオールを(水添)ブロック共重合体中に含浸させて高分子ポリオール含浸組成物を予め調製し、該高分子ポリオール含浸組成物を、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物と混合するか、または高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物と混合してポリウレタン形成反応を行って得られた熱可塑性ポリウレタン組成物は、射出成形性に優れていて、成形品の金型からの離型が円滑に行われ且つ得られた成形品の表面が平滑で外観に優れること、しかも得られた成形品の硬度が適当な値であり、屈曲性に優れ、曲げても白化が生じないか又は生じにくいこと、引張破断強度が高く力学的特性に優れていること、摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0142】
それに対して、比較例1では、高分子ポリオールと(水添)ブロック共重合体との予備混合物を予め調製し、それを用いてポリウレタン形成反応を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を製造してはいるが、前記予備混合物を製造する際の高分子ポリオールの使用量が本発明で規定している上記範囲よりも少なくて、相容化剤として機能する高分子ポリオールが(水添)ブロック共重合体中に十分に含浸していないために、ポリウレタン形成反応で生成した熱可塑性ポリウレタン組成物から得られる成形品は、相容化が十分に達成されず、摩耗量が大きく、耐摩耗性に劣っていることがわかる。
また、比較例2では、高分子ポリオール含浸組成物を予め調製せずに、熱可塑性ポリウレタンに(水添)ブロック共重合体を溶融混練して熱可塑性ポリウレタン組成物を製造していることにより、熱可塑性ポリウレタンと(水添)ブロック共重合体との相容化が十分に達成されず、そこで得られる熱可塑性ポリウレタン組成物は射出成形時に金型への粘着が大きく離型性に劣り、且つ得られる成形品の外観が不良であり、射出成形性に劣ること、しかも得られる成形品は耐摩耗性に劣っていることがわかる。
そして、比較例3の低硬度の熱可塑性ポリウレタンは、(水添)ブロック共重合体を含有していないことにより、射出成形性に劣っていて、射出成形時に金型への粘着が大きくて離型しにくく、しかも得られる成形品の外観が不良であることがわかる。
【0143】
《実施例8〜9》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例1で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−1の代わりに参考例9または参考例10で得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−9またはCPD−10を用い、その際に[高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−9またはCPD−10中に含浸されている高分子ポリオール]:BD:MDIのモル比が下記の表9に示した値になるように、且つ生成する熱可塑性ポリウレタン組成物中の可塑剤の量が下記の表9に示した値になるようにして、鎖伸長剤(BD)および有機ジイソシアネート化合物(MDI)を配合し、それ以外は実施例1の(1)と同様にしてポリウレタン形成反応、ペレット化および除湿乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。
これらの熱可塑性ポリウレタン組成物のうち、実施例8で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物について、前記(3)の方法にしたがって光学顕微鏡で写真撮影してそのモルホロジー解析を行った結果、図5(光学顕微鏡写真)に示すように、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分の中に水添ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)が島状に分布し、該島成分の内部にさらに0.001〜10μmの粒子状の熱可塑性ポリウレタン(a)が島成分として分布していた。
また、この実施例8および9で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表9に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記し た方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表9に示すとおりであった。
【0144】
《実施例10〜15》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例3で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−3の代わりに参考例11〜16で得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−11〜CPD−16の各々を用い、それに、高分子ポリオール(POH−1、POH−10またはPOH−11)、鎖伸長剤(BD)および50℃に加熱溶融した有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−11、CPD−12、CPD−13、CPD−14、CPD−15またはCPD−16中に含浸されている高分子ポリオール]:[高分子ポリオールPOH−1、POH−10またはPOH−11]:BD:MDIのモル比が表9および下記の表10に示した値になるようにし、且つ熱可塑性ポリウレタン組成物中の可塑剤量が表9および下記の表10に示した値になるようにして配合し、それ以外は実施例3の(1)と同様にしてポリウレタン形成反応、ペレット化および除湿乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。
これらの実施例で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物のうち、実施例10で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物について、前記(3)の方法にしたがって光学顕微鏡により写真撮影してそのモルホロジー解析を行った結果、図6(光学顕微鏡写真)に示すように、熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分の中に、水添ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)が島状に分布し、該島成分の内部に更に0.001〜10μmの粒子状の熱可塑性ポリウレタン(a)成分が分布していた。
また、これらの実施例で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表9および10に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表9および下記の表10に示すとおりであった。
【0145】
《比較例4〜5》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例3で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−3の代わりに参考例17または18で得られた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−17またはCPD−18の各々を用い、それに、高分子ポリオール(POH−1またはPOH−11)、鎖伸長剤(BD)および50℃に加熱溶融した有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[高分子ポリオール可塑剤含浸組成物CPD−17またはCPD−18中に含浸されている高分子ポリオール]:[高分子ポリオールPOH−1またはPOH−11]:BD:MDIのモル比が表10に示した値になるようにし、且つ熱可塑性ポリウレタン組成物中の可塑剤量が表10に示した値になるようにして配合し、それ以外は実施例3の(1)と同様にしてポリウレタン形成反応、ペレット化および除湿乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。
これらの例で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物のうち、比較例4で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物について、前記(3)の方法にしたがって光学顕微鏡で写真撮影してそのモルホロジー解析を行った結果、図7(光学顕微鏡写真)に示すように、熱可塑性ポリウレタン(a)よりなる海成分の中に、水添ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)が荒い縞状と一部不鮮明な枝状に分布し、かつ不均一に点在していた。
また、これらの比較例で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表10に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表10に示すとおりであった。
【0146】
《比較例6》[熱可塑性ポリウレタン組成物および射出成形品の製造]
(1) 参考例3で得られた高分子ポリオール含浸組成物CPD−3の代わりに参考例19で得られた(水添)ブロック共重合体と可塑剤からなる組成物CPD−19を用い、それに、高分子ポリオール(POH−1)、鎖伸長剤(BD)および50℃に加熱溶融した有機ジイソシアネート化合物(MDI)を、[POH−1]:BD:MDIのモル比が下記の表10に示した値になるようにし、且つ熱可塑性ポリウレタン組成物中の可塑剤量が表10に示した値になるようにして配合し、それ以外は実施例3の(1)と同様にしてポリウレタン形成反応、ペレット化および除湿乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を得た。得られた熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融粘度および対数粘度を上記した方法で測定したところ、表10に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、上記した方法で射出成形を行って、射出成形性の評価を行うと共に、得られた成形品の硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性を上記した方法で測定または評価したところ、表10に示すとおりであった。
【0147】
【表9】
【0148】
【表10】
【0149】
上記の表9および10の結果から、実施例8〜15で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物、すなわち、高分子ポリオールと(水添)ブロック共重合体とを、前者:後者の重量比が35:65〜90:10の範囲内になるようにして用いて高分子ポリオールを(水添)ブロック共重合体中に含浸させ且つその際に更に可塑剤も(水添)ブロック共重合体中に特定量で含浸させた高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を予め調製し、該高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物と混合するか、または高分子ポリオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネート化合物と混合してポリウレタン形成反応を行って得られた熱可塑性ポリウレタン組成物は、射出成形性に優れていて、成形品の金型からの離型が円滑に行われ且つ得られた成形品の表面が平滑で外観に優れること、しかも得られた成形品の硬度が低く柔軟性に優れ、屈曲性に優れ曲げても白化が生じないこと、引張破断強度が高く力学的特性に優れていること、摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0150】
それに対して、比較例4では、高分子ポリオール、(水添)ブロック共重合体および可塑剤の予備混合物を予め調製し、それを用いてポリウレタン形成反応を行って熱可塑性ポリウレタン組成物を製造してはいるが、前記予備混合物を製造する際の高分子ポリオールの使用量が本発明で規定している上記範囲よりも少なくて、相容化剤として機能する高分子ポリオールが(水添)ブロック共重合体中に十分に含浸していないために、ポリウレタン形成反応で生成した熱可塑性ポリウレタン組成物は、射出成形時に金型からの離型が円滑に行われず且つ外観が不良で射出成形性に劣っており、しかも得られる成形品は引張破断強度が低く力学的特性に劣り、耐摩耗性にも劣っていることがわかる。
【0151】
また、比較例5では、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を予め調製し、それを用いて熱可塑性ポリウレタン組成物を製造しているものの、熱可塑性ポリウレタン組成物中での可塑剤の含有量が本発明で規定しているより多いことにより、射出成形性に著しく劣っていて金型からの離型が極めて困難であり且つ外観が不良であること、しかも得られる成形品は曲げると表面剥離や内部剥離を生じ屈曲性に劣ること、さらに引張破断強度が極めて低くて力学的特性に劣り、しかも耐摩耗性に著しく劣っていることがわかる。
さらに、比較例6では、高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を予め調製せずに、熱可塑性ポリウレタンの製造時に(水添)ブロック共重合体と可塑剤からなる組成物を添加して熱可塑性ポリウレタン組成物を製造していることにより、そこで得られる熱可塑性ポリウレタン組成物は射出成形性に劣り、射出成形時に金型への粘着が大きく離型性に劣り、且つ得られる成形品の外観が不良であること、しかも得られる成形品は耐摩耗性に劣っていることがわかる。
【0152】
《実施例16》[熱可塑性ポリウレタン組成物からなる押出成形品の製造]
実施例1で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、単軸押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出して冷却して得られたフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。このときの、押出成形性、フィルムの耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)、残留歪みおよび接着性(粘着テープの粘着性)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表11に示すとおりであった。
【0153】
《実施例17〜19および比較例7》[熱可塑性ポリウレタン組成物からなる押出成形品の製造]
熱可塑性ポリウレタン組成物として、実施例6で得られたもの(実施例17)、実施例8で得られたもの(実施例18)、実施例12で得られたもの(実施例19)および比較例2で得られたもの(比較例7)をそれぞれ使用した以外は、実施例16と同様にして押し出し成形を行った。そのときの押出成形性、フィルムの耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)、残留歪みおよび接着性(粘着テープの粘着性)を上記した方法で測定または評価したところ、表11に示すとおりであった。
【0154】
《比較例8》[熱可塑性ポリウレタン組成物からなる押出成形品の製造]
熱可塑性ポリウレタン組成物として、比較例3で得られたものを使用した以外は、実施例16と同様にして押し出し成形を行って、厚さ50μmのフィルムを製造した。この際に巻き取ったフィルムが膠着してしまい、100%モジュラス、残留歪みおよび接着性の評価ができなかった。
【0155】
《比較例9》[熱可塑性ポリウレタン組成物からなる押出成形品の製造]
比較例3で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物100重量部に対して、滑剤(エチレンビスステアリン酸アミド)0.5重量部を混合して用いた以外は、実施例16と同様にして押し出し成形を行った。そのときの押出成形性、フィルムの耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)、残留歪みおよび接着性(粘着テープの粘着性)を上記した方法で測定または評価したところ、表11に示すとおりであった。
【0156】
《比較例10》[熱可塑性ポリウレタン組成物からなる押出成形品の製造]
熱可塑性ポリウレタン組成物として、比較例5で得られたものを使用した以外は、実施例16と同様にして押し出し成形を行って厚さ50μmのフィルムを製造しようとしたが、フィルム割れが生じてしまい、耐ブロッキング性、100%モジュラス、残留歪みおよび接着性の評価ができなかった。
【0157】
《比較例11》[熱可塑性ポリウレタン組成物からなる押出成形品の製造]
熱可塑性ポリウレタン組成物として、比較例6で得られたものを使用した以外は、実施例16と同様にして押し出し成形を行った。そのときの押出成形性、フィルムの耐ブロッキング性、100%モジュラス(M100)、残留歪みおよび接着性(粘着テープの粘着性)を上記した方法で測定または評価したところ、表11に示すとおりであった。
【0158】
【表11】
【0159】
上記の表11の結果から、本発明により得られる熱可塑性ポリウレタン組成物を用いてなる実施例16〜19では、押出成形性に優れていて、フィルムに割れなどを生ずることなく、平滑な表面を有するフィルムを、離型紙や離型剤などを用いることなく円滑に製造できること、しかも巻き取ったフィルムは耐ブロッキング性に優れていて巻き返しができること、適度な100%モジュラス(M100)を有し、残留歪みが小さく、且つ接着性にも優れていることがわかる。
【0160】
一方、比較例2の熱可塑性ポリウレタン組成物[すなわち高分子ポリオール含浸組成物を予め調製せずに、既に製造された熱可塑性ポリウレタンと(水添)ブロック共重合体を溶融混合して得られた熱可塑性ポリウレタン組成物]を用いて押出成形を行った比較例7では、押出成形性に劣っていて、フィルムに割れなどを生じ、しかも巻き取ったフィルムに膠着が生じていること、また実施例16〜19に比べてフィルムにおける残留歪みが大きいことがわかる。
また、(水添)ブロック共重合体を含有しない比較例3の熱可塑性ポリウレタンを用いて押出成形を行った比較例8の場合は、得られたフィルムの耐ブロッキング性が大きく劣っていて、巻き取ったフィルムが膠着してしまうことがわかる。
そして、比較例3の熱可塑性ポリウレタンに滑剤を添加して押出成形を行った比較例9では、滑剤を配合したことによって押出成形性や耐ブロッキング性が改善されたものの、得られたフィルムは滑剤を含んでいることによって接着性が大幅に低下していることがわかる。
【0161】
また、比較例5の熱可塑性ポリウレタン組成物(すなわち予め調製した高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を用いて熱可塑性ポリウレタン組成物を製造しているが可塑剤を多量に含む熱可塑性ポリウレタン組成物)を用いて押出成形を行った比較例10では、押し出し成形時にフィルム割れが生じ、目的とするフィルムが得られないことがわかる。
さらに、比較例6の熱可塑性ポリウレタン組成物[すなわち高分子ポリオール可塑剤含浸組成物を予め調製せずに、可塑剤を含有する(水添)ブロック共重合体をポリウレタン形成反応時に加えて得られた熱可塑性ポリウレタン組成物]を用いて押出成形を行った比較例11の場合は、押出成形性に劣っていて、フィルムに割れなどを生じ易く、しかも巻き取ったフィルムに膠着が生じ、また得られるフィルムの100%モジュラス(M100)の値が大きく、低応力での伸長性に劣っていることがわかる。
【0162】
《実施例20》[PC/熱可塑性ポリウレタン組成物/ABSの3層からなる積層構造体の製造]
(1) 実施例2で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、プレス成形機を使用して、200℃で60秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に30
秒保持してプレス成形を行って、厚さ500μmのシートを製造した。
(2) PC(ポリカーボネート)およびABS(ABS樹脂)を用い、プレス成形機を使用して、210℃で60秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持してプレス成形を行って、厚さ1.5mmのPCシートおよび厚さ1.5mmのABSシートをそれぞれ製造した。
(3) 上記(1)で得た熱可塑性ポリウレタン組成物シートを中間層とし、上記(2)で得たPCシートおよびABSシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、210℃で90秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持して、加熱加圧下に接着・一体化して積層構造体を製造した。
(4) 上記(3)で得た積層構造体の層間の接着強度を上記した方法で測定したところ、PC層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度、およびABS層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度は、それぞれ6.3kg/cmおよび7.4kg/cmであり、いずれも高い値を示した。
【0163】
《実施例21》[NY−6/熱可塑性ポリウレタン組成物/PMMAの3層からなる積層構造体の製造]
(1) 実施例3で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて、実施例20の(1)と同じに行って、厚さ500μmのシートを製造した。
(2) NY−6(ナイロン6)およびPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用い、プレス成形機を使用して、220℃で40秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に20秒保持してプレス成形を行って、厚さ1.5mmのNY−6シートおよび厚さ1.5mmのPMMAシートをそれぞれ製造した。
(3) 上記(1)で得た熱可塑性ポリウレタン組成物シートを中間層とし、上記(2)で得たNY−6シートおよびPMMAシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、220℃で40秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に20秒保持して、加熱加圧下に接着・一体化して積層構造体を製
造した。
(4) 上記(3)で得た積層構造体の層間の接着強度を上記した方法で測定したところ、NY−6層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着、およびPMMA層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着は、いずれも、その接着力が強固で、180度剥離試験中に基材破壊を起こした。
【0164】
《実施例22》[PC/熱可塑性ポリウレタン組成物(可塑剤含有)/ABSの3層からなる積層構造体の製造]
(1) 実施例14で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物(可塑剤を含有)を用いて、実施例20の(1)と同じに行って、厚さ500μmのシートを製造した。
(2) PCおよびABSを用い、実施例20の(2)と同じに行って、厚さ1.5mmのPCシートおよび厚さ1.5mmのABSシートをそれぞれ製造した。
(3) 上記(1)で得た熱可塑性ポリウレタン組成物シートを中間層とし、上記(2)で得たPCシートおよびABSシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、210℃で90秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持して、加熱加圧下に接着・一体化して積層構造体を製造した。
(4) 上記(3)で得た積層構造体の層間の接着強度を上記した方法で測定したところ、PC層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度、およびABS層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度は、それぞれ3.5kg/cmおよび2.8kg/cmであり、いずれも高い値を示した。
【0165】
《実施例23》[NY−6/熱可塑性ポリウレタン組成物(可塑剤含有)/PMMAの3層からなる積層構造体の製造]
(1) 実施例9で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物(可塑剤含有)を用いて、実施例20の(1)と同じに行って、厚さ500μmのシートを製造した。
(2) NY−6およびPMMAを用い、実施例21の(2)と同じに行って、厚さ1.5mmのNY−6シートおよび厚さ1.5mmのPMMAシートをそれぞれ製造した。
(3) 上記(1)で得た熱可塑性ポリウレタン組成物シートを中間層とし、上記(2)で得たNY−6シートおよびPMMAシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、220℃で40秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に20秒保持して、加熱加圧下に接着・一体化して積層構造体を製
造した。
(4) 上記(3)で得た積層構造体の層間の接着強度を上記した方法で測定したところ、NY−6層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度は3.0kg/cmであり、高い値を示した。また、PMMA層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着は、接着力が強固で、180度剥離試験中に基材破壊を起こした。
【0166】
《実施例24》[ABS/熱可塑性ポリウレタン組成物(可塑剤含有)/PPの3層からなる積層構造体の製造]
(1) 実施例10で得られた熱可塑性ポリウレタン組成物(可塑剤含有)を用いて、実施例20の(1)と同じに行って、厚さ500μmのシートを製造した。
(2) ABSおよびPP(ポリプロピレン)を用い、プレス成形機を使用して、210℃で60秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持してプレス成形を行って、厚さ1.5mmのABSシートおよび厚さ1.5mmのPPシートをそれぞれ製造した。
(3) 上記(1)で得た熱可塑性ポリウレタン組成物シートを中間層とし、上記(2)で得たABSシートおよびPPシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、210℃で90秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持して、加熱加圧下に接着・一体化して積層構造体を製造した。
(4) 上記(3)で得た積層構造体の層間の接着強度を上記した方法で測定したところ、ABS層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度、およびPP層と熱可塑性ポリウレタン組成物層との間の接着強度は、それぞれ3.0kg/cmおよび1.0kg/cmであり、いずれも高い値を示した。
【0167】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、熱可塑性ポリウレタン(a)と(水添)ブロック共重合体(b)との間の相容性が極めて良好であり、非粘着性、成形性、溶融接着性、耐摩耗性、引張破断強度等で代表される力学的特性、柔軟性、屈曲性、低残留歪み性、弾性回復性、耐油性、耐水性などの諸特性に優れ、且つ適度な柔軟性を有し、成形品および該熱可塑性ポリウレタン組成物からなる層を有する積層構造体の製造に有効に用いることができる。
【0168】
特に、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、非粘着性で、取り扱い性、溶融成形性に優れているので、それを用いて射出成形などを行うと、成形時に金型からの離型が容易で、成形装置への付着が生じず、さらには成形品間の膠着が生じず、平滑な表面を有する成形品を、良好な工程性で生産性よく製造することができる。さらに、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて押出成形などによってフィルムやシートを製造する場合は、離型剤や離型紙などを用いなくても、非粘着性で巻き返しの容易なフィルムやシートを割れなどを生ずることなく正常に巻き取りながら、生産性よく製造することができる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて上記成形を行って得られる成形品は、耐摩耗性に優れ、引張破断強度や引張破断伸度などで代表される力学的特性、屈曲性および耐ブロッキング性に優れ、残留歪みが小さく、表面が非粘着性であるにも拘わらず、粘着テープなどにより容易に接着することができる。そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物のうちで、可塑剤を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物は、上記した特性と併せて、硬度が小さく、柔軟性、伸長性などの点でも一層優れている。
そのため、本発明で得られる熱可塑性ポリウレタン組成物は、上記した特性を活かして、例えば、コンベアベルト、各種キーボード、ラミネート品、各種容器用のフィルムやシート、ホース、チューブ、自動車部品、機械部品、靴底、時計バンド、パッキング材、制振材などの各種用途に有効に使用することができる。
【0169】
さらに、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、各種材料に対する溶融接着性に優れ、特に極性の高い樹脂および極性の低い樹脂のいずれに対しても良好に溶融接着し、層間の接着強度の高い各種積層構造体を形成する。そのため、前記熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる層と他の材料よりなる層を有する本発明の積層構造体、特に積層構造体(イ)および積層構造体(ロ)は、例えば、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバーなどの自動車用内装部品、モールなどの自動車外装部品、掃除機バンパー、冷蔵庫当たり、カメラグリップ、電動工具グリップ、リモコンスイッチ、OA機器の各種キートップ、ハウジングなどの家電部品、水中眼鏡などのスポーツ用品、各種カバー、耐摩耗性、密閉性、防音性、防振性などを目的とした各種パッキン付き工業部品、カールコード電線被覆、ベルト、ホース、チューブ、消音ギアなどの電気・電子部品などの広範な用途に有効に用いることができる。
【0170】
そして、本発明の製法による場合は、上記した優れた特性を有する熱可塑性ポリウレタン組成物を円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物のモルホロジーの概略を模式的に示した図である。
【図2】実施例1の熱可塑性ポリウレタン組成物の光学顕微鏡で写真撮影した図(光学顕微鏡写真)である(倍率200倍)。
【図3】実施例1の熱可塑性ポリウレタン組成物の光学顕微鏡で写真撮影した図(光学顕微鏡写真)である(倍率500倍)。
【図4】比較例1の熱可塑性ポリウレタン組成物の光学顕微鏡で写真撮影した図(光学顕微鏡写真)である(倍率200倍)。
【図5】実施例8の熱可塑性ポリウレタン組成物の光学顕微鏡で写真撮影した図(光学顕微鏡写真)である(倍率200倍)。
【図6】実施例10の熱可塑性ポリウレタン組成物の光学顕微鏡で写真撮影した図(光学顕微鏡写真)である(倍率500倍)。
【図7】比較例4の熱可塑性ポリウレタン組成物の光学顕微鏡で写真撮影した図(光学顕微鏡写真)である(倍率200倍)。
Claims (18)
- 熱可塑性ポリウレタン(a)、並びに芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および当該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種の(水添)ブロック共重合体(b)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物であって;
(水添)ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックをXで表し、共役ジエン系重合体ブロックをYで表したときに、X−Y−Xで表されるトリブロック共重合体および当該トリブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種であり;
熱可塑性ポリウレタン(a)および(水添)ブロック共重合体(b)の含有割合が、(a):(b)=95:5〜40:60の重量比であり;且つ、
熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分中に、(水添)ブロック共重合体(b)が島成分として存在し、さらに前記島成分の内部に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として存在してなる構造を有する;
ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン組成物。 - (i)数平均分子量が500〜8,000の範囲内である高分子ポリオール(a−1)および(水添)ブロック共重合体(b)を、(a−1):(b)=35:65〜90:10の重量比で用いて、高分子ポリオール(a−1)が、(水添)ブロック共重合体(b)中に含浸した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)を予め調製し;次いで、
(ii)前記(i)で調製した高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)を、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤と混合するか、または有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール(a−1)および鎖伸長剤と混合して、ポリウレタン形成反応を行う;
ことにより得られたものである請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。 - 熱可塑性ポリウレタン(a)、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体および当該ブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種の(水添)ブロック共重合体(b)、並びに可塑剤(c)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物であって;
(水添)ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックをXで表し、共役ジエン系重合体ブロックをYで表したときに、X−Y−Xで表されるトリブロック共重合体および当該トリブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種であり;
熱可塑性ポリウレタン(a)および(水添)ブロック共重合体(b)の含有割合が、(a):(b)=95:5〜40:60の重量比であり;且つ、
熱可塑性ポリウレタン(a)からなる海成分中に、(水添)ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)が島成分として存在し、さらに前記島成分の内部に熱可塑性ポリウレタン(a)が平均粒子径0.001〜10μmの島成分として存在してなる構造を有する;
ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン組成物。 - (i)数平均分子量が500〜8,000の範囲内である高分子ポリオール(a−1)および(水添)ブロック共重合体(b)を、(a−1):(b)=35:65〜90:10の重量比で用い、かつ高分子ポリオール(a−1)および(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して可塑剤(c)を0.1〜200重量部の割合で用いて、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が、(水添)ブロック共重合体(b)中に含浸した高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を予め調製し;次いで、
(ii)前記(i)で調製した高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)を、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤と混合するか、または有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール(a−1)および鎖伸長剤と混合して、ポリウレタン形成反応を行う;
ことにより得られたものである請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。 - 前記(ii)のポリウレタン形成反応で得られる熱可塑性ポリウレタン組成物における可塑剤(c)の含有量が、熱可塑性ポリウレタン(a)および(水添)ブロック共重合体(b)の合計100重量部に対して60重量部以下になるように、上記(i)の高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製および上記(ii)のポリウレタン形成反応を行ったものである請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
- 上記(ii)のポリウレタン形成反応を、活性水素原子:イソシアネート基のモル比を1:0.9〜1.3の範囲内に調整して行ったものである請求項2、4および5のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
- 高分子ポリオール(a−1)が、100℃で液状を呈するものである請求項2および4〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
- 高分子ポリオール(a−1)の1分子当たりの平均官能基数が2.0〜2.1である請求項2および4〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
- 前記(ii)のポリウレタン形成反応で得られる熱可塑性ポリウレタン組成物における、[熱可塑性ポリウレタン(a)]:[(水添)ブロック共重合体(b)]の重量比が95:5〜40:60の範囲になるようにして、上記(i)の高分子ポリオール含浸組成物(a−1・b)または高分子ポリオール可塑剤含浸組成物(a−1・b・c)の調製および上記(ii)のポリウレタン形成反応を行ったものである請求項2および4〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
- (水添)ブロック共重合体(b)の数平均分子量が50,000〜500,000である請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる成形品。
- 射出成形品である請求項11に記載の成形品。
- フィルムまたはシートである請求項11に記載の成形品。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層と、他の材料よりなる層とが積層した構造を有する積層構造体。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層(A)と、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種よりなる樹脂層(B)とが樹脂層(A)/樹脂層(B)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する、請求項14に記載の積層構造体。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物よりなる樹脂層(A)と、ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;並びに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエン化合物およびオレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種との共重合体から選ばれる少なくとも1種よりなる樹脂層(B)と、スチレン系重合体およびオレフィン系重合体から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂層(C)が、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(C)の形態で積層した構造を少なくとも一部に有する、請求項14に記載の積層構造体。
- 請求項2に記載の(i)および(ii)の工程によって、熱可塑性ポリウレタン(a)および(水添)ブロック共重合体(b)を含有する請求項1に記載された熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法。
- 請求項4に記載の(i)および(ii)の工程によって、熱可塑性ポリウレタン(a)、(水添)ブロック共重合体(b)および可塑剤(c)を含有する請求項3に記載された熱可塑性ポリウレタン組成物を製造する方法。
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