JP3751241B2 - 粉末状重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粉末状重合体組成物および該粉末状重合体組成物を用いてなるスラッシュ成形体に関する。より詳細には、本発明は、スラッシュ成形、圧縮成形、粉末溶射、回転成形、押出成形、カレンダー成形、各種粉体塗装などのような、粉末を用いて行われる成形技術や塗装技術において好適に用いることができ、それらの成形や塗装によって、耐傷つき性および耐摩耗性に優れ、しかも柔軟性、力学的強度、低温特性およびゴム弾性に優れる成形体や皮膜を製造することのできる粉末状重合体組成物、および該粉末状重合体組成物よりなるスラッシュ成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟質のポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いてなる表皮材は、安価で、柔軟性、耐傷つき性に優れていることから、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、座席シートなどの自動車内装材、ソファーや椅子などの家具などの広い分野で従来から利用されている。
しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時にダイオキシンなどの有害物質を発生し、またそこで用いられている可塑剤が環境ホルモンや発癌物質などとして作用する疑いがあり、環境汚染や安全性の点で問題がある。そのため、近年、ポリ塩化ビニル樹脂の代りに、ハロゲンや可塑剤を含まない熱可塑性エラストマーを使用することが検討されている。
特に上記した表皮材の製造に当たっては、従来、粉末状のポリ塩化ビニル樹脂組成物を複雑な形状を有する金型表面に付着させて加熱成形するスラッシュ成形が汎用されてきたが、ポリ塩化ビニル樹脂の使用は上記したように環境汚染や安全性の点で問題があることから、スラッシュ成形が可能な粉末状の熱可塑性エラストマー組成物が提案されている。
【0003】
例えば、特開平10−182900号公報には、ポリプロピレン樹脂、水添(水素添加)スチレンブタジエンゴム、プロセスオイル、および吸油性エラストマー(スチレン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系熱可塑性エラストマーなど)を含有する粉末スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。しかしながら、この公報に記載されている粉末スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物は、スラッシュ成形性においては改善が見られるものの、得られる成形体の柔軟性、ゴム弾性、力学的強度、低温特性、耐傷つき性および耐摩耗性の点では十分に満足のゆくものではない。
【0004】
また、特開平10−279738号公報には、スチレン系熱可塑性エラストマー、密度の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体、および結晶ポリプロピレン樹脂を含有する粉末状熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。しかしながら、この粉末状熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形体(スラッシュ成形体など)では、耐傷つき性および耐摩耗性と、柔軟性、ゴム弾性および風合とをバランス良く兼備させることが困難である。すなわち、耐傷つき性および耐摩耗性を向上させようとすると、柔軟性およびゴム弾性が低下して風合が不良になり、一方柔軟性、ゴム弾性および風合を向上させようとすると、耐傷つき性および耐摩耗性が低下する。
【0005】
さらに、特開2000−302918号公報には、水素添加スチレンブタジエンランダム共重合体ゴム、結晶性ポリプロピレン樹脂、内部離型剤、吸油性エラストマー、プロセスオイルおよび非晶性ポリプロピレン樹脂を含有するスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。しかしながら、この公報に記載されているスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られるスラッシュ成形体は、前記した特開平10−182900号公報に記載されている粉末スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物から得られるスラッシュ成形体と同様に、柔軟性、ゴム弾性、低温特性、耐傷つき性および耐摩耗性の点で未だ十分に満足のゆく特性を備えていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融流動性が良好でスラッシュ成形などのような粉末成形を行う際の成形性や粉体塗装性に優れており、しかも耐傷つき性および耐摩耗性に優れていて摩擦や接触を高頻度で受けても損傷しにくく、その上柔軟性、ゴム弾性、低温特性、風合、外観に優れる高品質の成形体や皮膜を製造することのできる粉末状の熱可塑性重合体組成物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記の粉末状重合体組成物よりなる成形体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意研究を続けてきた。その結果、(水素添加)スチレン・ジエン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマーに対して、(水素添加)スチレン・ジエン共重合体ブロックと熱可塑性ポリウレタン重合体ブロックを有するポリウレタン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび軟化剤を特定の量で配合して熱可塑性エラストマー組成物を調製し、その熱可塑性エラストマー組成物を平均粒径800μm以下にして粉末状の熱可塑性重合体組成物を製造した。そして、それにより得られる粉末状重合体組成物およびそれから得られる成形体についてその物性などについて検討したところ、その粉末状重合体組成物は溶融流動性が良好でスラッシュ成形などの粉末成形を行う際の成形性に優れていることを見出した。更に、該粉末状重合体組成物から得られる成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に優れていて摩擦や接触を高頻度で受けても損傷しにくいこと、しかも柔軟性、ゴム弾性、低温特性、風合、外観にも優れることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)(i) 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(A1)と共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(B1)を有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して;
(ii) 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(A2)と共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(B2)を有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(C)と、熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)を有するポリウレタン系ブロック共重合体(II)を5〜200質量部;
(iii) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)を50〜500質量部;並びに、
(iv) 軟化剤(IV)を10〜300質量部;
の割合で含有する熱可塑性重合体組成物からなり且つ平均粒径が800μm以下であることを特徴とする粉末状重合体組成物である。
【0009】
そして、本発明は、
(2) JIS K−7210に準じて、温度230℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分以上である前記(1)の粉末状重合体組成物;および、
(3) スラッシュ成形用である前記(1)または(2)粉末状重合体組成物;
である。
【0010】
そして、本発明は、
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかの粉末状重合体組成物を用いてなるスラッシュ成形体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の粉末状重合体組成物で用いる付加重合系ブロック共重合体(I)は、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(A1)[以下「芳香族ビニル重合体ブロック(A1)」という]と、共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(B1)[以下「共役ジエン重合体ブロック(B1)」という]を有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種からなっている。
また、本発明の粉末状重合体組成物で用いるポリウレタン系ブロック共重合体(II)は、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(A2)[以下「芳香族ビニル重合体ブロック(A2)」という]と共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(B2)[以下「共役ジエン重合体ブロック(B2)」という]を有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(C)と、熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)を有するポリウレタン系ブロック共重合体である。
【0012】
付加重合系ブロック共重合体(I)における芳香族ビニル重合体ブロック(A1)、およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)における芳香族ビニル重合体ブロック(A2)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどのビニル芳香族化合物を挙げることができる。
芳香族ビニル重合体ブロック(A1)および(A2)は、前記した芳香族ビニル化合物の1種のみからなる構造単位を有していても、または2種以上からなる構造単位を有していてもよい。そのうちでも、芳香族ビニル重合体ブロック(A1)および(A2)はスチレンに由来する構造単位から主としてなっていることが好ましい。
【0013】
芳香族ビニル重合体ブロック(A1)および(A2)は、芳香族ビニル化合物からなる構造単位と共に必要に応じて他の共重合性単量体からなる構造単位を少量有していてもよい。その場合の他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、芳香族ビニル重合体ブロック(A1)または(A2)の質量に基づいて10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
その場合の他の共重合性単量体としては、例えば1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどのイオン重合性単量体を挙げることができる。
【0014】
また、付加重合系ブロック共重合体(I)における共役ジエン重合体ブロック(B1)およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)における共役ジエン重合体ブロック(B2)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができる。共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)は、これらの共役ジエン化合物の1種から構成されていてもまたは2種以上から構成されていてもよい。共役ジエン重合体ブロック(B1)および/または(B2)が2種以上の共役ジエン化合物に由来する構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれらの2種以上の組み合わせからなっていることができる。
【0015】
そのうちでも、共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)は、ゴム物性の改善効果の点から、イソプレン単位を主体とするモノマー単位からなるポリイソプレンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリイソプレンブロック;ブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるポリブタジエンブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添ポリブタジエンブロック;或いはイソプレン単位とブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるイソプレン/ブタジエン共重合ブロックまたはその不飽和結合の一部または全部が水素添加された水添イソプレン/ブタジエン共重合ブロックであることが好ましい。
【0016】
共役ジエン重合体ブロック(B1)および/または(B2)の構成ブロックとなり得る上記したポリイソプレンブロックでは、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH3)=CH2)−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3)(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、各単位の割合は特に限定されない。
【0017】
共役ジエン重合体ブロック(B1)および/または(B2)の構成ブロックとなり得る上記したポリブタジエンブロックでは、その水素添加前には、そのブタジエン単位の70〜20モル%、特に65〜40モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合のブタジエン単位)であり、30〜80モル%、特に35〜60モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH2−;1,2−結合のブタジエン単位]であることが好ましい。ポリブタジエンブロックにおける1,4−結合量が上記した70〜20モル%の範囲から外れると、そのゴム物性が不良になることがある。
【0018】
共役ジエン重合体ブロック(B1)および/または(B2)の構成ブロックとなり得る上記したイソプレン/ブタジエン共重合ブロックでは、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなっており、またブタジエンに由来する単位は2−ブテン−1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基からなっており、各単位の割合は特に制限されない。イソプレン/ブタジエン共重合ブロックでは、イソプレン単位とブタジエン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの形態になっていてもよい。そして、イソプレン/ブタジエン共重合ブロックでは、ゴム物性の改善効果の点から、イソプレン単位:ブタジエン単位のモル比が1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましい。
【0019】
付加重合系ブロック共重合体(I)およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)では、耐熱性および耐候性が良好なものとなる点から、その共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)における不飽和二重結合(炭素−炭素間二重結合)の一部または全部が水素添加されていることが好ましい。その際の共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)の水素添加率は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
なお、共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)における不飽和二重結合の水素添加率は、共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)における不飽和二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計(IR)、核磁気共鳴(NMR)などによって測定し、その測定値から求めることができる。
【0020】
付加重合系ブロック共重合体(I)における芳香族ビニル重合体ブロック(A1)と共役ジエン重合体ブロック(B1)との結合形態、およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)における芳香族ビニル重合体ブロック(A2)と共役ジエン重合体ブロック(B2)との結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形態のいずれであってもよく、直鎖状の結合形態であることが好ましい。
【0021】
付加重合系ブロック共重合体(I)および/またはポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)が、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとが直鎖状に結合した構造を有するものである場合は、芳香族ビニル重合体ブロック(A1)および(A2)をAで、また共役ジエン重合体ブロック(B1)および(B2)をBで表したときに、A−Bで表されるジブロック構造、A−B−AまたはB−A−Bで表されるトリブロック構造、A−B−A−BまたはB−A−B−Aで表されるテトラブロック構造、またはAとBとが5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造をとることができる。それらのうちでも、A−Bで表されるジブロック構造またはA−B−Aで表されるトリブロック構造であることが、弾性、力学的特性、取り扱い性などの点から好ましい。
【0022】
また、前記したトリブロック以上のポリブロック構造のものでは、2個以上の芳香族ビニル重合体ブロックAは互いに同じ内容のブロックであってもまたは異なる内容のブロックであってもよく、また2個以上の共役ジエン重合体ブロックBは互いに同じ内容のブロックであってもまたは異なる内容のブロックであってもよい。例えば、A−B−Aで表されるトリブロック構造における2個の芳香族ビニル重合体ブロックA、或いはB−A−Bで表されるトリブロック構造における2個の共役ジエン重合体ブロックBは、それらを構成する芳香族ビニル化合物または共役ジエン化合物の種類、その結合形式、ブロックの数平均分子量などが同じであっても、または異なっていてもよい。
【0023】
付加重合系ブロック共重合体(I)およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)では、粉末状重合体組成物から得られる成形体などのゴム弾性および柔軟性の観点から、芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が、5〜70質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
付加重合系ブロック共重合体(I)およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)における芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、1H−NMRスペクトルなどにより求めることができる。
【0024】
付加重合系ブロック共重合体(I)は、水素添加前の状態で、その数平均分子量(Mn)が50,000〜1,000,000、特に50,000〜300,000であることが、粉末状重合体組成物を用いて成形や塗装などを行う際の成形性や塗装性、特に溶融流動性、得られる成形体や皮膜のゴム弾性、耐摩耗性、耐傷つき性などの点から好ましい。
また、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)における付加重合系ブロック(C)の数平均分子量(Mn)は、水添添加前の状態で、20,000〜300,000、特に50,000〜150,000であることが、粉末状重合体組成物を用いて成形や塗装などを行う際の成形性や塗装性、特に溶融流動性、得られる成形体や皮膜のゴム弾性、耐摩耗性、耐傷つき性などの点から好ましい。
なお、本明細書における付加重合系ブロック共重合体(I)およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)における付加重合系ブロック(C)の数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めたポリスチレン換算の分子量をいう。
【0025】
付加重合系ブロック共重合体(I)および/またはポリウレタン系ブロック共重合体(II)の付加重合系ブロック(C)は、本発明の主旨を損なわない限り、場合により、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基の1種または2種以上を有していてもよい。
【0026】
本発明の粉末状重合体組成物で用いるポリウレタン系ブロック共重合体(II)は、上記したブロック構造を有する付加重合系ブロック(C)と熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)とが結合したポリウレタン系ブロック共重合体である。ポリウレタン系ブロック共重合体(II)の硬度および溶融粘度は特に限定されないが、一般に、JIS K 6301(A法)による硬度(JIS A硬度)が60〜95で、200℃における溶融粘度が500〜2,000Pa・sであることが、粉末成形や粉体塗装する際の成形性や塗装性、得られる成形体や皮膜の柔軟性、耐摩耗性、耐傷つき性、力学的特性などの点から好ましい。
【0027】
ポリウレタン系ブロック共重合体(II)における熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーよりなるブロックであればいずれでもよい。そのうちでも、熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)は、後述する熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)と同種または近似した熱可塑性ポリウレタンエラストマーより形成されていることが、粉末状重合体組成物における重合体同士の相容性が良好になり、しかも粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜の力学的特性が良好になる点から好ましい。
【0028】
ポリウレタン系ブロック共重合体(II)における熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)は、粉末状重合体組成物のゴム物性がより良好なものとなる点から、その数平均分子量(Mn)が10,000〜500,000であることが好ましく、30,000〜300,000であることがより好ましい。
ここで、本明細書における熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)の数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の分子量をいう。
【0029】
ポリウレタン系ブロック共重合体(II)は、1個の付加重合系ブロック(C)と1個の熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)を有するジブロック共重合体であっても、または付加重合系ブロック(C)と熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)が合計で3個または4個以上結合したポリブロック共重合体であってもよい。粉末状重合体組成物における重合体同士の相容性、力学物性および成形性などの点から、1個の付加重合系ブロック(C)と1個の熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)が結合したジブロック共重合体、および/または2個の(C)と1個の(D)が結合したトリブロック共重合体であることが好ましく、ジブロック共重合体であることがより好ましい。
【0030】
付加重合系ブロック共重合体(I)およびポリウレタン系ブロック共重合体(II)の製造法は特に制限されず、上記したそれぞれのブロック共重合体を製造し得る方法であればいずれの方法で製造してもよく、また既に市販されているものを用いてもよい。
【0031】
何ら限定されるものではないが、付加重合系ブロック共重合体(I)は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などにより製造することができる。
アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることにより製造することができる。
そして、前記により製造されるブロック共重合体を好ましくは公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水素添加して、水素添加された付加重合系ブロック共重合体(I)を得ることができる。
【0032】
また、何ら限定されるものではないが、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)は、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、芳香族ビニル重合体ブロック(A2)と共役ジエン重合体ブロック(B2)を有し且つ末端に官能基、好ましくは水酸基を有する付加重合系ブロック共重合体および/またはその水素添加物(以下「末端変性付加重合系ブロック共重合体」ということがある)を溶融条件下に混練して反応させ、それにより得られるポリウレタン系反応生成物から、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)を抽出・回収することにより得ることができる。
その際に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、末端変性付加重合系ブロック共重合体との溶融混練は、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができる。溶融混練条件は、使用する熱可塑性ポリウレタンエラストマーや末端変性付加重合系ブロック共重合体の種類、装置の種類などに応じて選択することができるが、一般に180〜250℃の温度で1〜15分間程度行うとよい。
【0033】
また、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)は、上記した方法以外の方法でも製造できる。例えば、押出機中などで高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させて熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造する際の反応の最初または反応の途中に、反応系に末端変性付加重合系ブロック共重合体を添加することによってポリウレタン系ブロック共重合体(II)を含有するポリウレタン系反応生成物を形成させ、そのポリウレタン系反応生成物からポリウレタン系ブロック共重合体(II)を抽出・回収することによっても得ることができる。
【0034】
上記において、ポリウレタン系反応生成物からのポリウレタン系ブロック共重合体(II)の抽出・回収は、例えば、ポリウレタン系反応生成物を必要に応じて適当な大きさに粉砕し、それをジメチルホルムアミドなどのポリウレタンの良溶媒で処理して未反応の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを抽出・除去し、次いでシクロヘキサンなどの末端変性付加重合系ブロック共重合体の良溶媒で処理して未反応の末端変性付加重合系ブロック共重合体を抽出除去し、残った固形物を乾燥することにより行うことができる。
【0035】
ポリウレタン系ブロック共重合体(II)の製造に用いる上記の末端変性付加重合系ブロック共重合体には、後述するその製造法に由来して、末端に官能基を有していない付加重合系ブロック共重合体および/またはその水素添加物、すなわち付加重合系ブロック共重合体(I)に相当する重合体が含まれていることが多い。
そのため、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、末端変性付加重合系ブロック共重合体との反応により得られるポリウレタン系反応生成物は、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)、未反応の熱可塑性ポリウレタンエラストマー、付加重合系ブロック共重合体(I)、および末端変性付加重合系ブロック共重合体の4者の混合物であることが多い。
このことから、本発明の粉末状重合体組成物の製造に当たっては、付加重合系ブロック共重合体(I)、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)および軟化剤(IV)と共に、末端変性付加重合系ブロック共重合体を配合し、組成物中で末端変性付加重合系ブロック共重合体と熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)とを反応させて前記したポリウレタン系反応生成物を形成させ、そのポリウレタン系反応生成物を組成物中にそのまま存在させる方法[すなわちポリウレタン系反応生成物からポリウレタン系ブロック共重合体(II)を回収せずに反応生成物の形態のままで組成物中に存在させる方法]を用いてもよい。
【0036】
ここで、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)の製造に用いられる末端変性付加重合系ブロック共重合体は、例えば、次のようなアニオン重合法により製造することができる。すなわち、アルキルリチウム化合物などを開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量に達した時点で、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイドなどのオキシラン骨格を有する化合物、またはε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン(ピバロラクトン)などのラクトン系化合物などを付加させ、次いでアルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素含有化合物を添加して重合を停止することにより製造することができる。そして、それにより得られるブロック共重合体を好ましくは、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、アルキルアルミニウム化合物とコバルト化合物、ニッケル化合物などからなるチーグラー触媒等の水添触媒の存在下に、反応温度20〜150℃、水素圧力0.1〜15MPaの条件下で水素添加することによって、水添された末端変性付加重合系ブロック共重合体を得ることができる。
【0037】
末端変性付加重合系ブロック共重合体は、それが直鎖状構造を有するものである場合は、分子の片末端に1個の水酸基を有していても、または分子の両端に2個の水酸基を有していてもよい。また、末端変性付加重合系ブロック共重合体が分岐状または放射状の構造を有するものである場合は、その分子末端に1個もしくは複数個(分岐の数だけ)の水酸基を有していてもよい。末端変性付加重合系ブロック共重合体の1分子当たりの末端水酸基の数は0.5〜1個であることが好ましく、0.7〜1個であることがより好ましい。
【0038】
本発明の粉末状重合体組成物で用いる熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)は、一般に、高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応により製造される。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用いられる高分子ジオールは、その数平均分子量が1,000〜6,000であることが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)を含有する本発明の粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜などの力学的特性、耐摩耗性、耐傷つき性、耐熱性、低温特性、弾性回復性などが良好になる点から好ましい。ここで、本明細書でいう高分子ジオールの数平均分子量は、JIS K1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0039】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用い得る高分子ジオールの例としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオールなどを挙げることができ、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)はこれらの高分子ジオールの1種または2種以上を用いて形成されていることができる。
【0040】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用い得る上記ポリエステルジオールとしては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸成分と低分子ジオールとの反応により得られるポリエステルジオール、ラクトンの開環重合により得られるポリエステルジオールなどを挙げることができる。
より具体的には、前記ポリエステルジオールとしては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの好ましくは炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体の1種または2種以上と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの好ましくは炭素数2〜10の脂肪族ジオールの1種または2種以上とを重縮合反応させて得られるポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールを挙げることができる。
【0041】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用い得る上記ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを挙げることができる。
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用い得る上記ポリカーボネートジオールとしては、例えば1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオールの1種または2種以上と、炭酸ジフェニル、炭酸ジアルキルなどの炭酸エステルまたはホスゲンとを反応させて得られるポリカーボネートジオールを挙げることができる。
【0042】
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用いられる有機ジイソシアネートの種類は特に限定されないが、分子量500以下の芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートの1種または2種以上が好ましく用いられる。そのような有機ジイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらの有機ジイソシアネートのうちでも4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0043】
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造に用い得る鎖伸長剤としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用でき、その種類は特に限定されない。そのうちでも、鎖伸長剤としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオールおよび芳香族ジオールのうちの1種または2種以上が好ましく用いられる。好ましく用いられる鎖伸長剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのジオールを挙げることができる。前記したうちでも、炭素数2〜6の脂肪族ジオールが鎖伸長剤としてより好ましく用いられ、1,4−ブタンジオールが更に好ましく用いられる。
【0044】
本発明の粉末状重合体組成物では、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)として、高分子ジオール、鎖伸長剤および有機ジイソシアネートを、高分子ジオール:鎖伸長剤=1:0.2〜8.0(モル比)の範囲であり且つ[高分子ジオールと鎖伸長剤の合計モル数]:[有機ジイソシアネートのモル数]=1:0.98〜1.04の範囲であるようにして反応させて得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましく用いられる。そのような熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)を含有する本発明の粉末状重合体組成物は、成形時や塗装時などに溶融粘度の急激な上昇がなく、目的とする成形体や皮膜などを円滑に製造することができる。しかも、それにより得られる成形体や皮膜などの耐熱性、耐摩耗性、耐傷つき性が良好なものとなる。
【0045】
本発明の粉末状重合体組成物で用いる熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)は、上記したJIS−A硬度が60〜95であることが、粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜などの力学的特性が良好になり且つ適度な硬さを有することから好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)のJIS−A硬度が60未満であると、粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜の力学的特性が低くなり易く、一方95を超えると成形体や皮膜の柔軟性が低下し易い。
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の数平均分子量(Mn)は、15万以下であることが、粉末成形時や粉体塗装時などにおける溶融流動性などの点から好ましい。なお、ここでいうポリウレタンエラストマー(III)の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めたポリスチレン換算の分子量である。
【0046】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の製造方法は特に限定されず、上記した高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
【0047】
本発明の粉末状重合体組成物では、軟化剤(IV)として公知のものを使用することができる、具体例としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系、流動パラフィンなどの炭化水素系油;落花生油、ロジンなどの植物油;リン酸エステル;塩素化パラフィン、低分子量ポリエチレンやポリエチレングリコールなどの低分子量ポリマーなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、パラフィン系炭化水素系油が好ましく用いられる。
【0048】
本発明の粉末状重合体組成物は、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)を5〜200質量部、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)を50〜500質量部、および軟化剤(IV)を10〜300質量部の割合で含有していることが必要である。
ポリウレタン系ブロック共重合体(II)の配合量が、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、5質量部未満であると粉末状重合体組成物の溶融流動性が低下して成形性や塗装性などに劣るようになり、しかも得られる成形体や皮膜などの耐摩耗性、耐傷つき性、破断強度などの力学的特性が低下する。一方、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)の配合量が、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、200質量部を超えると、耐摩耗性、耐傷つき性、破断強度などの力学的特性が低下する。
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の配合量が、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、50質量部未満であると、耐摩耗性、耐傷つき性、破断強度などの力学的特性が低下し、一方500質量部を超えると、粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜などの柔軟性、耐摩耗性、耐傷つき性、破断強度などの力学的特性が低下する。
軟化剤(IV)の配合量が、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して、10質量部未満であると、粉末状重合体組成物の溶融流動性が低下して成形性が不良になると共に柔軟性、低温特性が低下し、一方300質量部を超えると、粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜などの耐摩耗性、耐傷つき性、破断強度などの力学的特性などが低下する。
【0049】
本発明の粉末状重合体組成物は、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)を、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して50〜150質量部の割合で含有することが好ましい。また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)を、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して200〜400質量部の割合で含有することが好ましい。また、軟化剤(IV)を、付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して50〜200質量部の割合で含有することが好ましい。
【0050】
本発明の粉末状重合体組成物は、必要に応じて、さらに滑剤を含有していてもよい。滑剤を含有すると、本発明の粉末状重合体組成物から得られる成形体や皮膜の表面の摩擦抵抗が低減し、その結果として耐傷つき性および耐摩耗性が向上する。滑剤としては公知のものを使用することができ、例えば、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;シリコーンオイル、シリコーン/アクリル重合の微粉末などのシリコーン系化合物類;フッ素化炭化水素オイルやポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化合物;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド類;エステル油、超高分子量ポリエチレンなどの微粉末などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0051】
本発明の粉末状重合体組成物は、必要に応じて、ゴム用補強剤を含有していてもよい。ゴム用補強剤を含有すると、得られる成形体などの力学的特性、耐摩耗性、耐傷つき性が向上する。ゴム用補強剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、HAF、HAF−HS、SAF、ISAFなどのカーボンブラック;炭素繊維;ポバール系易フィブリル化繊維;ナイロン繊維やポリエステル繊維などの有機繊維状物などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。そのうちでも、カーボンブラック、炭素繊維および/または有機繊維状物が柔軟性と軽量性に優れる成形体が得られることから好ましく用いられる。
【0052】
本発明の粉末状重合体組成物は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、例えば、各種ポリエチレン、各種ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂などの1種または2種以上を含有していてもよい。
また、本発明の粉末状重合体組成物は、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤などを含有していてもよい。さらに、本発明の粉末状重合体組成物は、補強効果を示さない柔軟剤、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ藻土などの無機充填材や、ゴム粉末、木粉などの有機充填材などを含有していてもよい。
【0053】
本発明の粉末状重合体組成物は、その平均粒径が800μm以下であることが必要であり、500μm以下であることが好ましい。粉末状重合体組成物の平均粒径が800μmを超えると、粉末成形や粉体塗装時などにおける粉体流動性や計量性が不良になる。特に、本発明の粉末状重合体組成物をスラッシュ成形に用いる場合は、その平均粒径が450μm以下であることが、得られる成形体の厚さの均一性、ピンホールの発生防止、力学強度などの点から好ましい。
ここで、本明細書における粉末状重合体組成物の平均粒径とは、散乱式粒度分布測定装置(例えばHORIBA製「LA−920」)で測定した平均粒径をいう。
【0054】
本発明の粉末状重合体組成物は、組成物を構成する上記した各成分を一括混合または分割混合し、それにより得られる混合物を従来公知の混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの混練機を使用して混練して例えばペレット形状の熱可塑性重合体組成物を調製し、それにより得られる熱可塑性重合体組成物を適当な方法で粉末化し、必要により篩などを用いて分級することによって得ることができる。
熱可塑性重合体組成物を得るための前記混練に際しては、被混練成分のそれぞれをそのまま直接混練機に供給せずに、混練前にヘンシェルミキサーやタンブラーなどのような混合機を用いて予めドライブレンドしてから混練機に供給すると、均一な熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
また、熱可塑性重合体組成物を調製するための混練温度としては、一般に150〜250℃の温度が好ましく採用される。
【0055】
粉末化の方法は特に制限されず、熱可塑性重合体組成物を微粉化し得る方法であればいずれでもよく、例えば、熱可塑性重合体組成物のペレットなどをターボミル、ピンミル、ハンマーミル、ロータースピードミルなどの衝撃式微粉砕装置を用いて常温または凍結下に微粉砕する方法、熱可塑性重合体組成物を加熱溶融してスプレー装置やディスクアトマイザーなどを用いて噴霧し冷却する方法、熱可塑性重合体組成物を押出機により得る際にミクロダイスを通して水中でホットカットする方法などにより製造することができる。そのうちでも、衝撃式微粉砕装置を用いて常温または凍結下に微粉砕する方法が、粉砕設備が安価で生産が容易な点から好ましく採用される。
【0056】
上記した粉末化方法によって平均粒径が800μm以下の粉末が直接得られる場合は、その粉末をそのまま本発明の粉末状重合体組成物として用いてもよい。また、粉末化によって得られた粉末状重合体組成物の平均粒径が800μmを超える場合や、800μm以下であっても更に平均粒径の小さい粉末状重合体組成物を得たい場合は、上記した粉末化方法により得られた粉末を、篩、集塵装置などを用いて分級して、平均粒径が800μm以下またはそれよりも小さな粉末を回収して用いるとよい。
【0057】
本発明の粉末状重合体組成物は、JIS K−7210に準じて、温度230℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分以上であることが好ましく、30g/10分以上であることがより好ましい。粉末状重合体組成物の前記MFRが10g/10分未満であると、スラッシュ成形やその他の粉末成形時、粉末塗装時に溶融粘度が高くなって、成形性、流動性が低下し、成形体や皮膜にピンホールや厚み斑が生じ易くなり、またウエルド強度が低下することがある。
【0058】
また、本発明の粉末状重合体組成物およびそれから得られる成形体では、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)が実質的にマトリックス相(連続相)を形成し、該マトリックス中に、付加重合系ブロック共重合体(I)と軟化剤(IV)とからなる相が実質的に微細な粒子の状態で分散した海島型の相構造を有していることが好ましい。そのような海島型の相構造を有する場合は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)から実質的になるマトリックス相によって、高度な耐傷つき性および耐摩耗性を効果的に発揮される。そして、優れた柔軟性とゴム弾性を併せ持つ付加重合系ブロック共重合体(I)と軟化剤(IV)からなる微細な分散粒子相により、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)単独の場合に比べて、粉末状重合体組成物から得られる成形体などにおける柔軟性およびゴム弾性が格段に向上する。
【0059】
本発明の粉末状重合体組成物およびそれから得られる成形体において、上記した海島型の相構造を有することは、例えば、走査型電子顕微鏡による観察で確認することができる。例えば、粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形により厚さ1mmのシート状物をつくり、それを液体窒素中に浸漬して十分に冷却した後、速やかに破断する。破断した試料をシクロヘキサン中に室温で1分間浸漬することによって、物理的な損傷を与えずに破断面をエッチングして付加重合系ブロック共重合体(I)および軟化剤(IV)を溶解除去し、それを乾燥した後、イオンスパッタリングを行う。そのように処理された破断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、隣接し合った空孔(窪み)同士が繋がらずに分散している様子が確認される。それによって、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)からなる相が実質的にマトリックス相(連続相)を形成し、該マトリックス相中に付加重合系ブロック共重合体(I)と軟化剤(IV)から実質的になる粒子が島状で分散している海島型の相構造をなしていることが確認できる。
【0060】
本発明の粉末状重合体組成物およびそれから得られる成形体において、付加重合系ブロック共重合体(I)と軟化剤(IV)から実質的になる分散粒子の粒子径は特に制限されないが、上記した方法、すなわちスラッシュ成形による厚さ1mmのシート状物の製造−液体窒素による冷却−破断−シクロヘキサンによるエッチング−イオンスパッタリング−破断面の走査型電子顕微鏡観察からなる上記した一連の工程にてその相構造を調べたときに、エッチングで形成された空孔約1000個の長径の平均値(Ls)が5μm以下になるような粒子径であることが好ましく、3μm以下になるような粒子径であることがより好ましい。なお、長径の平均値(Ls)は式:Ls=(Σn・L)/Σn[式中、Lは個々の空孔の長径(μm)、nは空孔の個数を示す]から求められる。
【0061】
本発明の粉末状重合体組成物は、粉末状の熱可塑性重合体を用いる成形技術や塗装技術に有効に用いることができる。例えば、スラッシュ成形、圧縮成形、粉末溶射、回転成形、押出成形、カレンダー成形などの粉末成形、粉体を用いる各種塗装技術(例えば流動浸漬法、静電塗装法、溶射法、吹付塗装など)に用いることができ、それによって、シート状物、フィルム状物、中空状物、積層物などの各種成形体や皮膜(塗装製品)を得ることができる。そのうちでも、本発明の粉末状重合体組成物は、スラッシュ成形への使用に特に適している。
本発明の粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形などの粉末成形を行うことにより、例えば、皮シボ状やステッチ状などの凹凸模様や複雑な形状を有する表皮状の成形体を得ることができる。そして、本発明の粉末状重合体組成物を用いて得られる成形体や皮膜は、耐傷つき性および耐摩耗性に極めて優れ、しかも柔軟性、ゴム弾性、低温特性、力学的強度などにおいても優れている。
本発明の粉末状重合体組成物を用いて得られる成形体や皮膜は、必要に応じて、例えばポリウレタンや高摺動性ポリエチレンなどにより表面塗装されていてもよい。
【0062】
本発明の粉末状重合体組成物を用いてなる成形体や皮膜などは、その優れた特性、特に高度の耐摩耗性、耐傷つき性、柔軟性、ゴム弾性、低温特性、力学的強度などの諸特性を活かして、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、アームレスト、ヘッドレスト、座席シート、ピラー、ステアリングホイール、天井などの自動車内装材;ソファー、各種椅子用の表皮材;スポーツ用品;レジャー用品;文房具;玩具;家屋の内張り材などの幅広い用途に有効に使用することができる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
以下の例において、粉末状重合体組成物の平均粒径、成形性(MFR)、スラッシュ成形性および分散粒子径(モルフォロジー)、並びに粉末状重合体組成物から得られた成形体の耐傷つき性、耐摩耗性、ゴム弾性(永久伸び)、柔軟性(硬度)および引張強度の測定または評価は、以下の方法によって行った。
【0064】
(1)粉末状重合体組成物の平均粒径:
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いて、散乱式粒度測定装置(HORIBA製「LA−920」)により平均粒径を測定した。
【0065】
(2)粉末状重合体組成物の成形性(MFR):
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いて、JIS K−7210に準じて、230℃、2.16kg荷重におけるMFR(メルトフローレート)を測定して、成形性の指標とした。
【0066】
(3)スラッシュ成形性:
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートの外観および表面状態を目視により観察して、下記の評価基準にしたがってスラッシュ成形性を評価した。
[スラッシュ成形性の評価基準]
◎:表面状態が極めて滑らかなシートが得られている。
○:表面状態が良好であり、ピンホールのないシートが得られている。
△:表面に若干のざらつきがあり、一部ピンホールが観察される。
×:表面の凹凸が激しく、かつピンホールが多数見られる。
【0067】
(4)粉末状重合体組成物(成形体)における分散粒子径(モルフォロジー):
以下の例で得られた厚さ1mmのスラッシュ成形シートを液体窒素で冷却した後、破断させ、その破断面をシクロヘキサンで1分間エッチングし、乾燥し、イオンスパッタリングした後、走査型電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製「JSM−T100」)で観察することによって、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)からなるマトリックス相中に付加重合系ブロック共重合体(I)と軟化剤(IV)からなる相が粒子状で分散している状態を確認し、さらにエッチングによって付加重合系ブロック共重合体(I)および軟化剤(IV)を溶解除去し、付加重合系ブロック共重合体(I)と軟化剤(IV)の溶解除去によって形成された空孔約1000個について長径を測定し、その平均値を採って分散粒子径とした。
【0068】
(5)成形体の耐傷つき性(木綿による往復摺動試験):
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから長さ×幅×厚み=150mm×50mm×2mmサイズの試験片を切り取り、該試験片上を、荷重を加えた木綿製の布面で140mmの長さにわたって、10分間往復摺動させる(1秒で1往復の割合)。この試験を荷重を変えて行い、傷がついた時の荷重を測定して、耐傷つき性の指標とした。傷つき荷重の値が高いほど耐傷つき性が優れている。
【0069】
(6)成形体の耐摩耗性(摩耗量):
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから直径110mmの円板状試験片を打ち抜き、該試験片を用いて、JIS K−6264に準じて摩耗量を測定して、耐摩耗性の指標とした。この試験を行うに当たって、摩耗輪としてJIS規格にいうH22に相当するものを使用した。摩耗量が少ないほど耐摩耗性に優れている。
【0070】
(7)成形体のゴム弾性(永久伸び):
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートからダンベル状1号試験片を打ち抜き、JIS K−6262に準じて100%伸長後の永久伸びを測定して、ゴム弾性の指標とした。永久伸びが低いほどゴム弾性に優れている。
【0071】
(8)成形体の柔軟性(硬度):
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから長さ×幅×厚み=110mm×110mm×2mmのシート状試験片を切り取り、該試験片を用いてJIS K−6253に準じて、タイプAデュロメータで硬度を測定して、柔軟性の指標とした。
【0072】
(9)成形体の引張強度:
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートからダンベル状5号試験片を打ち抜き、該試験片を用いてJIS K−6251に準じて引張り試験を行い、破断時の強度を測定して引張強度とした。
【0073】
また、以下の例で用いた各成分の内容と略号は次のとおりである。
(i−1)付加重合系ブロック共重合体(I−1)(略号:SEPS):
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物(数平均分子量=100,000、スチレン含有量=30質量%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率=98%)。
(i−2)付加重合系ブロック共重合体(I−2)(略号:SEEPS):
ポリスチレンブロック−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[数平均分子量=150,000、スチレン含有量=30質量%、ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロックにおける水素添加率=98%]。
【0074】
(ii)ポリウレタン系ブロック共重合体( II )(略号:PU/SEPS):
ポリスチレンブロック−ポリイソプレンブロック−ポリスチレンブロックからなり分子の片末端に水酸基を有するトリブロック共重合体の水素添加物(SEPS−OH)(数平均分子量=80,000、スチレン含有量=30質量%、ポリイソプレンブロックにおける水素添加率=98%、平均水酸基数=0.9個/分子)100質量部と、下記の熱可塑性ポリウレタン(TPU1180)100質量部をドライブレンドし、二軸押出機(プラスチック工業研究所製「BT−30」)を用いてシリンダー温度220℃、スクリュー回転数150rpmの条件下で溶融混練した後、押し出し、切断してペレットをつくり、それにより得られたペレットからジメチルホルムアミドを用いて未反応のポリウレタンを抽出除去し、次いでシクロヘキサンを用いて未反応のSEPS−OHを抽出除去し、残留した固形物を乾燥することにより得られた熱可塑性ポリウレタン(TPU1180)と付加重合系ブロック共重合体(SEPS)とが結合したジブロック共重合体。
【0075】
(iii)熱可塑性ポリウレタン( III )(略号:TPU1180):
ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンエラストマー(株式会社クラレ製「クラミロンU 1180」;脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系ポリウレタンエラストマー)。
【0076】
(iv)軟化剤(IV)(略号:PW−380):
パラフィン系プロセスオイル(出光石油化学株式会社製「ダイアナプロセスPW−380」)。
【0077】
《実施例1〜4および比較例1〜3》
(1) 下記の表1(実施例1〜4)および表2(比較例1〜3)に示す配合に従って、各成分をミキサーを使用して一括混合し、それにより得られた混合物を二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−35B」)に供給して230℃で約5分間混練した後、ストランド状に押し出し、切断して、ペレット状の熱可塑性重合体組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られたペレット状の熱可塑性重合体組成物を、衝撃式粉砕機(フリッチュ社製「ロータースピードミルP−14」)を用いて、温度−100℃で粉砕した後、粉砕物を32メッシュ篩(目開き0.495mm)を使用して篩分し、篩を通過した粉末を回収して粉末状重合体組成物とした。
これにより得られた粉末状重合体組成物の平均粒径を前記の方法で測定したところ、下記の表1および表2に示すとおりであった。
また、得られた粉末状重合体組成物の成形性(MFR)を上記した方法で調べたところ、下記の表1および表2に示すとおりであった。
【0078】
(3) 上記(2)で得られた粉末状重合体組成物を、表面温度280℃のニッケル電鋳板(縦×横×厚さ=150mm×150mm×1mm)よりなる型に均一に振りかけて、静置状態で同温度に30秒間保持して粉末状重合体組成物を溶着させた後、未溶着粉末を排出させ、それを280℃の加熱炉内に1分間保持して溶融させた。次いで、加熱炉から取り出して、40℃に水冷後脱型し、厚さ1mmのシート状スラッシュ成形体を製造した。このときのスラッシュ成形性を前記した方法で評価したところ、下記の表1および表2に示すとおりであった。
また、この厚さ1mmのシート状スラッシュ成形体を用いて、上記した方法で、粉末状重合体組成物(成形体)における分散粒子径を測定したところ、下記の表1および表2に示すとおりであった。
【0079】
(4) 上記(3)の方法と同じ方法で厚さ1mmのシート状スラッシュ成形体を製造し、それにより得られたシート状スラッシュ成形体を2枚重ね合わせて、再度、280℃の加熱炉内で3分間保持して熱融着を行い、加熱炉から取り出して40℃に水冷後、脱型し、上記した各種試験に用いる厚さ2mmのシート状スラッシュ成形体を製造した。
(5) 上記(4)で得られたシート状スラッシュ成形体から所定の試験片を切り取り(抜き取り)、耐傷つき性、耐摩耗性、ゴム弾性(永久伸び)、柔軟性(硬度)および引張強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1および表2に示すとおりであった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
上記の表1および表2の結果に見るように、実施例1〜4の粉末状重合体組成物は、付加重合系ブロック共重合体(I)、ポリウレタン系ブロック共重合体(II)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)および軟化剤(IV)を本発明で規定する特定の量で含有し且つその平均粒径が800μm以下であることにより、MFR値が高く成形性に優れている。しかも、実施例1〜4の粉末状重合体組成物から得られた成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に優れ、更にゴム弾性、柔軟性および力学的性能をバランス良く備えている。
それに対して、比較例1の粉末状重合体組成物はポリウレタン系ブロック共重合体(II)を含有していないことにより、比較例2の粉末状重合体組成物は熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)の含有量が本発明で規定する範囲から外れることにより、また比較例3の粉末状重合体組成物はその平均粒径が本発明で規定する範囲から外れていることにより、実施例1〜4の粉末状重合体組成物から得られる成形体に比べて、耐傷つき性、耐摩耗性または引張強度が劣っている。
【0083】
【発明の効果】
本発明の粉末状重合体組成物は、成形性(特に溶融流動性)に優れており、スラッシュ成形、圧縮成形、回転成形、押出成形、カレンダー成形などの粉末樹脂を用いる成形技術に有効に用いることができ、さらに各種粉体塗装技術に良好に用いることができる。特に、スラッシュ成形に用いた場合は、皮ジボ状や縫い目状の凹凸(模様)や複雑な形状を有する成形体を円滑に製造することができる。
本発明の粉末状重合体組成物を用いて得られる成形体や皮膜(塗装製品)は、耐傷つき性および耐摩耗性に優れていて摩擦や接触を高頻度で受けても損傷しにくく、しかも柔軟性、低温特性、ゴム弾性、風合、外観に優れている。
本発明の粉末状重合体組成物は環境ホルモンの疑いや発癌性が疑われている可塑剤を含有しておらず、また粉末状重合体組成物を構成している重合体成分や軟化剤などにはハロゲンが含まれないので、焼却によるダイオキシンの発生、環境ホルモンや発癌性などの心配がなく、安全性に優れている。
Claims (4)
- (i) 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(A1)と共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(B1)を有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(I)100質量部に対して;
(ii) 芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(A2)と共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(B2)を有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック(C)と、熱可塑性ポリウレタンエラストマーブロック(D)を有するポリウレタン系ブロック共重合体(II)を5〜200質量部;
(iii) 熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)を50〜500質量部;並びに、
(iv) 軟化剤(IV)を10〜300質量部;
の割合で含有する熱可塑性重合体組成物からなり且つ平均粒径が800μm以下であることを特徴とする粉末状重合体組成物。 - JIS K−7210に準じて、温度230℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分以上である請求項1に記載の粉末状重合体組成物。
- スラッシュ成形用である請求項1または2に記載の粉末状重合体組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末状重合体組成物を用いてなるスラッシュ成形体。
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