JP2004307585A - 発泡体用組成物および発泡体 - Google Patents
発泡体用組成物および発泡体 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】(a)α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックAと、共役ジエンまたはイソブチレンからなる水素添加されていてもよい重合体ブロックBを有する重量平均分子量が30,000〜200,000であるブロック共重合体、(b)アクリル系樹脂、(c)軟化剤および(d)発泡剤を、下記式▲1▼、▲2▼および▲3▼を満足する配合比(質量比)で含有する発泡体用組成物。
[式中、Wa、Wb、WcおよびWdは発泡体用組成物を構成するブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)、軟化剤(c)および発泡剤(d)の各成分の含有量(質量)を示す。]
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はα−メチルスチレンを主体とした重合体ブロックをハードセグメントとするブロック共重合体である熱可塑性エラストマーを含有する発泡体用組成物、および該組成物を発泡させてなる発泡体に関する。本発明の発泡体用組成物を発泡させてなる発泡体は、軽量性、耐熱性(例えば70℃における圧縮永久歪み)、耐傷つき性、耐摩耗性、柔軟性、成形加工性などの諸性能に優れており、それらの特性を活かして広範な用途へ有効に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、スチレン系熱可塑性エラストマーについて、軽量化や緩衝性の付与などの目的から種々の発泡体が提案されている。例えば、▲1▼特定範囲の溶融張力、溶融延展性、JIS−A硬度およびメルトフローレート(MFR)であるスチレン系熱可塑性エラストマーと発泡剤からなる組成物を用いた押出発泡成形体(特許文献1参照);▲2▼芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックAと、共役ジエンから主として作られる少なくとも一つの重合体ブロックBとからなるブロック共重合体および/またはその水添物、パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂および/またはそれを含む共重合体ゴム、シングルサイト触媒にて重合されたポリエチレン系樹脂、非芳香族系ゴム用軟化剤および100〜200℃の温度で膨張する熱膨張性マイクロカプセルを含む発泡性熱可塑性エラストマー組成物(特許文献2参照);▲3▼熱可塑性アクリル系重合体と、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックおよび共役ジエンからなる重合体ブロックを有し、水素添加されている水添ブロック共重合体を80:20〜20:80の重量比で含有する熱可塑性重合体組成物を発泡させて得られる熱可塑性重合体発泡体(特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−18106号公報
【特許文献2】
特開2000−17140号公報
【特許文献3】
特開平9−241414号公報
【0004】
特許文献1に記載されている発泡体は、優れた成形外観と柔軟性、耐低温衝撃性を有し、高発泡倍率の発泡体が得られている。特許文献2に記載されている発泡性熱可塑性エラストマー組成物は、高発泡倍率の発泡体にしても外観が良好な成形品が得られ、その触感も良好であるなどの特徴を有する。また、特許文献3に記載されている熱可塑性重合体発泡体は柔軟性に優れ、低温でもその柔軟性が保たれ、そして可塑剤を含んでいないので可塑剤の滲み出しや移行の心配がないという特徴を有している。しかしながら、特許文献1〜特許文献3における発泡体においては、その耐傷つき性や耐摩耗性に何ら言及がない。また、発泡体の耐熱性、特に高温(例えば70℃)における圧縮永久歪みに優れた発泡体を得るという観点からは、これらの文献より何ら示唆を得られない。このような事情から、摩擦を高頻度で受ける部位や高温条件下でも有効に使用できる発泡体が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明の目的は、スチレン系熱可塑性エラストマーの特徴である柔軟性、成形加工性を保持し、耐熱性、特に高温(例えば70℃)における圧縮永久歪みに優れ、かつポリウレタン系熱可塑性エラストマーに匹敵する耐傷つき性と耐摩耗性を有する発泡体およびかかる発泡体を得るための発泡体用組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成すべく検討を重ねた。その結果、ポリ(α−メチルスチレン)を主体としたブロックをハードセグメントとする特定範囲の分子量のブロック共重合体、アクリル系樹脂および必要に応じて軟化剤を含有する重合体組成物の配合割合を特定の範囲にすると、α−メチルスチレンを主体としたブロックをハードセグメントとするブロック共重合体が連続相(マトリックス)を形成し、その中にアクリル系樹脂が微分散し、特定の海島形態の相構造(モルフォロジー)になることを見出した。
そして、上記した特定の相構造を有する重合体組成物の物性について検討した結果、該重合体組成物は成形加工性に優れ、また、柔軟性、ゴム弾性、力学強度、透明性などの諸特性に優れるのに加え、特に耐傷つき性、耐摩耗性に優れており、しかもそれらの諸特性をバランスよく兼ね備えていること、そして軽量化、緩衝性の付与などを目的として、特定範囲の量の発泡剤を該重合体組成物にさらに添加すると、発泡性および耐熱性、特に高温(例えば70℃)における圧縮永久歪みが良好な発泡体が得られる発泡体用組成物となること、そして種々の用途に有効に使用し得ることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1](a)α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックAと、共役ジエンまたはイソブチレンからなる水素添加されていてもよい重合体ブロックBを有する重量平均分子量が30,000〜200,000であるブロック共重合体、(b)アクリル系樹脂、(c)軟化剤および(d)発泡剤を、下記式▲1▼、▲2▼および▲3▼を満足する配合比(質量比)で含有する発泡体用組成物
[式中、Wa、Wb、WcおよびWdは発泡体用組成物を構成するブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)、軟化剤(c)および発泡剤(d)の各成分の含有量(質量)を示す。];および、
[2]上記[1]の発泡体用組成物を発泡させてなる発泡体である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発泡体用組成物において使用されるブロック共重合体(a)は、α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックAと、共役ジエンまたはイソブチレンからなる水素添加されていてもよい重合体ブロックBを有する重量平均分子量が30,000〜200,000のブロック共重合体である。かかるブロック共重合体(a)において、重合体ブロックAはα−メチルスチレンに由来する構造単位のみで構成されているのが好ましい。但し、本発明の目的および効果の妨げにならない限り、重合体ブロックAはα−メチルスチレン以外の不飽和単量体、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフランなどに由来する構造単位の1種以上を少量、好ましくは重合体ブロックAに対する割合として10質量%以下の範囲で有していてもよい。
【0009】
ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAの含有量は、発泡体用組成物から得られる発泡体の発泡倍率、耐熱性(例えば70℃での圧縮永久歪み)および柔軟性の観点から、5〜45質量%の範囲内であることが好ましく、15〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、ブロック共重合体(a)における重合体ブロックAの含有量は、例えば1H−NMRスペクトルなどにより求めることができる。
【0010】
ブロック共重合体(a)における重合体ブロックBは、共役ジエンまたはイソブチレンからなり、水素添加されていてもよい。重合体ブロックBを構成する共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができ、重合体ブロックBはこれらの共役ジエンのうち1種類単独で構成されていても、または2種類以上から構成されていてもよい。そのうちでも、重合体ブロックBは、ブタジエン、イソプレン、ブタジエンとイソプレンの混合物、またはイソブチレンから構成されていることが好ましい。
【0011】
重合体ブロックBが共役ジエンから構成される場合において、共役ジエンに由来する構造単位のミクロ構造は特に制限されないが、例えば重合体ブロックBがブタジエンから構成されている場合は、その1,2−結合単位の割合が5〜90モル%であることが好ましく、20〜70モル%であることがより好ましい。また、重合体ブロックBがイソプレンから構成されているか、またはブタジエンとイソプレンの混合物から構成されている場合は、その1,2−結合単位および3,4−結合単位の合計が5〜80モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましい。
【0012】
また、重合体ブロックBが2種以上の共役ジエン(例えば、ブタジエンとイソプレン)から構成されている場合は、それらの結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロックまたはそれらの2種以上の組み合わせからなることができる。
【0013】
重合体ブロックBが共役ジエンから構成される場合には、耐熱性や耐候性の観点から、共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の50モル%以上が水素添加(水添)されていることが好ましく、70モル%以上が水添されていることがより好ましく、90モル%以上が水添されていることがさらに好ましい。
なお、上記の水素添加率は、重合体ブロックB中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、1H−NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0014】
重合体ブロックBは共役ジエンまたはイソブチレンから構成され、水素添加されていてもよい。そして、重合体ブロックBは、本発明の目的および効果の妨げにならない限り他の不飽和単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフランなどに由来する構造単位の1種以上を少量、好ましくは重合体ブロックBに対する割合として10質量%以下の範囲で有していてもよい。
【0015】
ブロック共重合体(a)は、重合体ブロックAと重合体ブロックBとが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。それらのうちでも、重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロックAをAで、また重合体ブロックBをBで表したときに、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体などを挙げることができる。中でも、トリブロック共重合体(A−B−A)が、ブロック共重合体(a)の製造の容易性、柔軟性などの点から好ましく用いられる。
【0016】
ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は、発泡体用組成物の成形加工性、発泡倍率および耐熱性(例えば70℃における圧縮永久歪み)の観点から30,000〜200,000の範囲である必要があり、35,000〜180,000の範囲であるのが好ましく、50,000〜150,000の範囲であるのがより好ましい。ブロック共重合体(a)の重量平均分子量が30,000未満である場合には、発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体の耐熱性(例えば70℃における圧縮永久歪み)が劣り、一方、200,000を超える場合には発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体の成形加工性、耐傷つき性、耐摩耗性が劣る。
なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0017】
ブロック共重合体(a)は、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種または2種以上有していてもよい。また、ブロック共重合体(a)として、前記した官能基を有するブロック共重合体(a)と官能基を有さないブロック共重合体(a)を混合して使用してもよい。
【0018】
ブロック共重合体(a)は、アニオン重合法によって製造することができ、次のような具体的な合成例が示される。(1)テトラヒドロフラン溶媒中で1,4−ジリチオ−1,1,4,4−テトラフェニルブタンなどのジアニオン系開始剤を用いて共役ジエンを重合後に、−78℃の温度条件下でα−メチルスチレンを逐次重合させ、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体を得る方法(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、2巻、453−458頁(1969年)参照)、(2)シクロヘキサンなどの非極性溶媒中でα−メチルスチレンをsec−ブチルリチウムなどのアニオン重合系開始剤で重合させた後、共役ジエンを重合させ、その後、テトラクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのカップリング剤(α,α’−ジクロロ−p−キシレン、安息香酸フェニルなどを用いることもできる)を添加してカップリング反応を行ない、(A−B)nX型ブロック共重合体を得る方法(カウチュック グミ クンストストッフェ(Kautschuk Gummi Kunststoffe)、37巻、377−379頁(1984年);ポリマー ブリティン(Polym.Bull.)、12巻、71−77頁(1984年)参照)、(3)非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、A−B−Aブロック共重合体を得る方法、(4)非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させ、得られるα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーにα−メチルスチレン以外のアニオン重合性モノマーを重合させA−B−C型ブロック共重合体を得る方法。
上記ブロック共重合体の具体的製造方法中、(3)および(4)の方法が好ましく、特に(3)の方法がより好ましい方法として採用される。以下、上記方法について具体的に説明する。
【0019】
上記の方法において開始剤として用いられる有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのモノリチウム化合物、およびテトラエチレンジリチウムなどのジリチウム化合物を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いても、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
α−メチルスチレンの重合時に使用される溶媒は非極性溶媒であり、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。これらの非極性溶媒は単独で用いても、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
α−メチルスチレンの重合時に使用される極性化合物とは、アニオン種と反応する官能基(水酸基、カルボニル基など)を有しない、分子内に酸素原子、窒素原子などの複素原子を有する化合物であり、例えばジエチルエーテル、モノグライム、テトラメチルエチレンジアミン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらの極性化合物は単独で用いても、または2種以上を混合して使用してもよい。
反応系中における極性化合物の濃度は、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させ、この後の共役ジエンを重合させる際に、共役ジエン重合体ブロック部の1,4−結合量を制御する観点から、0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0022】
反応系中におけるα−メチルスチレン濃度は、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させ、また重合後期における反応溶液の粘度の点から、5〜50質量%の範囲にあることが好ましく、25〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0023】
なお、上記の転化率とは、未重合のα−メチルスチレンが重合によりブロック共重合体へと転化された割合を意味し、本発明においてその程度は70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0024】
α−メチルスチレンの重合時の温度条件は、α−メチルスチレンの天井温度(重合反応が平衡状態に達して実質的に進行しなくなるときの温度)、α−メチルスチレンの重合速度、リビング性などの点から−30〜30℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは−20〜10℃、さらに好ましくは−15〜0℃である。重合温度を30℃以下とすることにより、α−メチルスチレンを高い転化率で重合させることができ、さらに生成するリビングポリマーが失活する割合も小さく、得られるブロック共重合体中にホモポリα−メチルスチレンが混入するのを抑え、物性が損なわれない。また、重合温度を−30℃以上とすることにより、α−メチルスチレンの重合後期において反応溶液が高粘度化することなく撹拌でき、低温状態を維持するのに必要な費用がかさむこともないため、経済的にも好ましい。
【0025】
上記方法においては、α−メチルスチレン重合体ブロックの特性が損なわれない限り、α−メチルスチレンの重合時に他の芳香族ビニル化合物を共存させ、これをα−メチルスチレンと共重合させてもよい。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物は単独で用いても、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
有機リチウム化合物を開始剤に用いたα−メチルスチレンの重合によりリビングポリα−メチルスチリルリチウムが生成するので、次いでこのものに共役ジエンを重合させる。共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエンは単独で用いても、または2種以上を混合して使用してもよい。この中でもブタジエンまたはイソプレンが好ましく、これらは混合して用いてもよい。
【0027】
共役ジエンは反応系に添加することにより重合に供される。共役ジエンを反応系に添加する方法としては、特に制限はなく、リビングポリα−メチルスチリルリチウム溶液に直接添加しても、あるいは溶媒で希釈して添加してもよい。共役ジエンを溶媒に希釈して添加する方法としては、共役ジエンを加えた後、溶媒で希釈するか、または共役ジエンと溶媒を同時に投入するか、あるいは溶媒で希釈した後に共役ジエンを加えてもよい。好適には、リビングポリα−メチルスチリルリチウムに対して1〜100モル当量、好ましくは5〜50モル当量に相当する量の共役ジエンを添加して重合させて共役ジエンブロック(以下、これを重合体ブロックb1と称することがある)を形成してリビング活性末端を変種した後、溶媒で希釈し、続いて残りの共役ジエンを投入し、30℃を超える温度、好ましくは40〜80℃の温度範囲で重合反応を行い、共役ジエンブロックをさらに形成(以下、これを重合体ブロックb2と称することがある)させる方法が推奨される。なお、リビングポリα−メチルスチリルリチウムの活性末端を変種するに際し、共役ジエンの代りにスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物を用いてもよい。
【0028】
ここで希釈に用いることができる溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いても、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
リビングポリα−メチルスチリルリチウムに共役ジエンを共重合させて得られるα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーに、例えば、多官能性カップリング剤を反応させることにより、トリブロックまたはラジアルテレブロック型のブロック共重合体(a)を製造することができる。この場合のブロック共重合体は、多官能性カップリング剤の使用量を調整することにより得られる、ジブロック、トリブロック、ラジアルテレブロック型のブロック共重合体を任意の割合で含む混合物であってもよい。多官能性カップリング剤としては、安息香酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸フェニル、ピバリン酸エチル、α,α’−ジクロロ−o−キシレン、α,α’−ジクロロ−m−キシレン、α,α’−ジクロロ−p−キシレン、ビス(クロロメチル)エーテル、ジブロモメタン、ジヨードメタン、フタル酸ジメチル、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、トリクロロメチルシラン、テトラクロロシラン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。なお、多官能性カップリング剤の使用量は、ブロック共重合体(a)の重量平均分子量に応じて適宜調整すればよく、厳密な意味での制限はない。
【0030】
α−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーに多官能性カップリング剤を反応させることにより得られるトリブロックまたはラジアルテレブロック型のブロック共重合体(a)を水素添加(水添)する場合には、必要に応じてアルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加してカップリング反応を停止させたのち、後述する公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添することにより、水添されたブロック共重合体(a)とすることができる。
【0031】
また、α−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体(a)を水素添加する場合には、リビングポリα−メチルスチリルリチウムに共役ジエンを重合させた後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合反応を停止させ、後述する公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添して、水添されたブロック共重合体(a)とすることができる。
【0032】
α−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなる未水添のブロック共重合体、またはα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーに多官能性カップリング剤を反応させることにより得られる未水添のトリブロックまたはラジアルテレブロック型ブロック共重合体(いずれも本発明で使用するブロック共重合体(a)に包含される)は、その製造に使用された溶媒を置換することなく、そのまま水素添加に供することができる。
【0033】
水添反応は、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、ケイ藻土などの担体に担持させた不均一触媒;遷移金属化合物(オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、コバルトアセチルアセトナートなど)とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物などとの組み合わせからなるチーグラー系触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウムなどの有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒などの水添触媒の存在下に、通常、反応温度20〜100℃、水素圧力0.1〜10MPaの範囲の条件下で行うことができる。未水添のブロック共重合体(a)は共役ジエン重合体ブロックB中の炭素−炭素二重結合の70%以上、特に好ましくは90%以上が飽和されるまで水添されることが望ましく、これによりブロック共重合体(a)の耐候性を高めることができる。
【0034】
本発明に用いるブロック共重合体(a)は、上記方法で得られたものが好ましく用いられ、特に、非極性溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30〜30℃の温度にて5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、次いで共役ジエンの重合に際して、まずリビングポリα−メチルスチリルリチウムに対して1〜100モル当量の共役ジエンを添加してリビング活性末端を変種しつつ重合させて重合体ブロックb1を形成し、次いで反応系を30℃を超える温度として、共役ジエンを追加して重合させて重合体ブロックb2を形成せしめて得られたものであることが、ブロック共重合体の低温特性が優れる点から望ましい。すなわち、この場合、重合体ブロックBは、重合体ブロックb1および重合体ブロックb2より成る。
【0035】
上記ブロック共重合体(a)は、その構造として直鎖状、分岐状などに限定はされないが、中でも、(A−b1−b2)構造を少なくとも一つ有するブロック共重合体が好ましく、A−b1−b2−b2−b1−A型共重合体、A−b1−b2−b2−b1−A型共重合体とA−b1−b2型共重合体の混合物、(A−b1−b2)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表す、nは2以上の整数である)などが挙げられる。
【0036】
上記ブロック共重合体(a)中の重合体ブロックAの重量平均分子量は1,000〜50,000の範囲であるのが好ましく、2,000〜40,000の範囲であるのがより好ましい。
また、上記ブロック共重合体(a)中の重合体ブロックb1の重量平均分子量は1,000〜30,000の範囲であるのが好ましく、2,000〜25,000の範囲であるのがより好ましく、かつ重合体ブロックb1を構成する共役ジエン単位の1,4−結合量は30%未満であることが好ましい。
さらに、上記ブロック共重合体(a)中の重合体ブロックb2の重量平均分子量は25,000〜190,000の範囲であるのが好ましく、30,000〜100,000の範囲であるのがより好ましく、かつ重合体ブロックb2を構成する共役ジエン単位の1,4−結合量は30%以上、好ましくは35%〜95%の範囲、より好ましくは40%〜80%の範囲である。
【0037】
また、重合体ブロックBがイソブチレンから構成されるブロック共重合体(a)は、1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンなどを用いる通常のカチオンリビング重合などにより得られる。例えば、ヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒;塩化メチル、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒中で、1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンまたは1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンと、四塩化チタンなどのルイス酸を組み合わせた開始剤を用いて、必要に応じさらにピリジン、2,6−ジt−ブチルピリジンなどを添加して、−10〜−90℃の温度条件下でイソブチレンをカチオン重合してリビングポリマーを得、続いてα−メチルスチレンをカチオン重合することによってポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブチレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体を製造することができる。
【0038】
本発明の発泡体用組成物において使用するアクリル系樹脂(b)は、メタクリル酸メチルの単独重合体、またはメタクリル酸メチルを主成分として他の共重合性を有する単量体を共重合させた共重合体である。他の共重合性を有する単量体としては、例えばアクリル酸またはその金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその金属塩;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;無水マレイン酸;N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などが挙げられる。
【0039】
これらをメタクリル酸メチルと共重合させる場合は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上の化合物を併用して共重合させてもよい。メタクリル酸メチルと他の共重合性を有する単量体を共重合させた共重合体においては、他の共重合性を有する単量体の比率はアクリル系樹脂の持つ性質を大きく変化させない比率であることが好ましく、30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがより好ましい。
【0040】
アクリル系樹脂(b)は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの一般の重合手法によって製造が可能であり、その製造方法には特に制限はない。また、本発明では、アクリル系樹脂(b)として公知のものを特に制限なく用いることもできる。例えば、三菱レーヨン(株)製の「アクリペット(ACRYPET)」(商品名)、旭化成(株)製の「デルペット(DELPET)」(商品名)、住友化学工業(株)製の「スミペックス(SUMIPEX)」(商品名)、(株)クラレ製の「パラペット(PARAPET)」(商品名)などを挙げることができる。
【0041】
本発明の発泡体用組成物において必要に応じて使用する軟化剤(c)としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素系油;落花生油、ロジンなどの植物油;リン酸エステル;低分子量ポリエチレングリコール;流動パラフィン;低分子量ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合オリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンまたはその水素添加物、液状ポリブタジエンまたはその水素添加物などの炭化水素系合成油などの公知の軟化剤を用いることができる。これらは1種類を単独で、または2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明においては、軟化剤(c)としてパラフィン系の炭化水素系油やエチレン−α−オレフィン共重合オリゴマーなどの炭化水素系合成油が好適に使用される。
【0042】
本発明の発泡体用組成物において使用する発泡剤(d)としては、例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムなどの無機系発泡剤;アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−テレフタルアミドなどのニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジド化合物などの有機系発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤は1種類を単独で、または2種類以上を併用してもよい。
上記した発泡剤の中でもアゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラジド化合物がより好ましい。
【0043】
また、発泡剤(d)の発泡を円滑に行なわせる観点から、脂肪族モノカルボン酸の金属塩、アルキルアリールスルホン酸の金属塩、尿素、尿素誘導体などの公知の発泡助剤を、必要に応じてさらに添加してもよい。脂肪族モノカルボン酸の金属塩としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸、モンタン酸などのアルカリ金属(Li、Na、Kなど)またはアルカリ土類金属(Mg、Caなど)の塩が挙げられる。アルキルアリールスルホン酸の金属塩としては、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルベンゼンスルホン酸またはイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アミルナフタレンスルホン酸などのアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩が挙げられる。
【0044】
本発明の発泡体用組成物では、ブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)、軟化剤(c)および発泡剤(d)は、発泡体用組成物を構成するブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)、軟化剤(c)および発泡剤(d)の各成分の含有量(質量)をそれぞれWa、Wb、Wc、Wdとするとき、下記式▲1▼、▲2▼および▲3▼を満足する配合比(質量比)で含有する必要がある。
【0045】
Wb/Waの値、すなわち発泡体用組成物におけるブロック共重合体(a)に対するアクリル系樹脂(b)の含有量の比(質量比)が、0.05未満であると、発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体の成形加工性や耐傷つき性などが不十分になり、一方2を超えると発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体の柔軟性、力学強度などが不良になる。Wb/Waの値のより好ましい範囲は0.1〜1.6である。
【0046】
また、Wc/(Wa+Wb+Wc)の値、すなわちブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)および軟化剤(c)の合計含有量に対する軟化剤(c)の含有量の比(質量比)が0.5を超えると、発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体の発泡倍率、耐傷つき性、耐摩耗性、力学強度などが不良となる。
【0047】
さらに、Wd/(Wa+Wb+Wc)の値、すなわちブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)および軟化剤(c)の合計含有量に対する発泡剤(d)の含有量の比(質量比)が0.01≦Wd/(Wa+Wb+Wc)≦0.1の範囲内であると、発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体の発泡倍率、耐傷つき性、耐摩耗性、ゴム弾性、力学強度のバランスがとれたものとなる。発泡剤(d)の含有量の比(質量比)が0.1を超えると、発泡体用組成物から得られる発泡体内部の気泡が独立気泡になりにくく、気泡がつながって肥大化すると、耐傷つき性、耐摩耗性、ゴム弾性、力学強度等の物性が低下してしまう。また、大部分が独立気泡からなる良好な物性を有する発泡体を得るためには、発泡体用組成物を構成する構成成分の溶融粘度等の物性や配合比に応じて、好適な発泡剤(d)を選択することが好ましい。
【0048】
本発明の発泡体用組成物では、ブロック共重合体(a)、アクリル系樹脂(b)および軟化剤(c)が前記した式▲1▼および式▲2▼を満足する量で含有することにより、相構造(モルフォロジー)において、ブロック共重合体(a)が連続相(マトリックス)を形成し、その中に、アクリル系樹脂(b)が微分散した海島構造を有することが特徴である。かかる発泡体用組成物は、ブロック共重合体(a)がマトリックスを形成することによって、柔軟性と耐熱性(例えば70℃における圧縮永久歪み)が発揮される。また、ブロック共重合体(a)のマトリックス中に、優れた透明性と耐傷つき性、耐摩耗性とを併せ持つアクリル系樹脂(b)が分散粒子相として存在することによって、ブロック共重合体(a)の柔軟性と高度なゴム弾性を保持しながら、成形加工性、透明性、そして耐傷つき性と耐摩耗性がブロック共重合体(a)単独の場合に比べて格段に向上する。
これらの中でも、アクリル系樹脂(b)が平均分散粒子径0.2μm以下で分散した発泡体用組成物が、上記した物性向上の観点から特に好ましい。
【0049】
なお、本発明の発泡体用組成物においてアクリル系樹脂(b)を平均分散粒子径0.2μm以下で分散させる手法としては、アクリル系樹脂(b)とブロック共重合体(a)の配合比(Wb/Wa)、また軟化剤(c)の存在量によっても異なるが、例えば、混練時の混練温度と剪断速度において、アクリル系樹脂(b)の溶融粘度と、ブロック共重合体(a)またはブロック共重合体(a)と軟化剤(c)が混合した際の溶融粘度とができるだけ近い値となるように各成分を選択する方法が好ましい。
【0050】
本発明の発泡体用組成物において、ブロック共重合体(a)がマトリックス相を構成し、アクリル系樹脂(b)が分散粒子相を構成していることは、例えば、透過電子顕微鏡で観察して確認することができる。
すなわち、例えば射出成形により厚さ2mmの発泡体用組成物のシート状物を成形し、それを凍結条件下でミクロトームにより切断して、切片をルテニウム酸で染色した後、破断面を透過電子顕微鏡で観察することによって、ブロック共重合体(a)がマトリックス相を構成しアクリル系樹脂(b)が分散粒子相を構成していることを確認できる。また、アクリル系樹脂(b)の平均分散粒子径は、顕微鏡写真で観察することができる分散粒子の長径をものさしで計測し、その長さを顕微鏡写真撮影倍率で割った値の100個の平均値をとることにより求めることができる。
【0051】
本発明の発泡体用組成物は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて上記のブロック共重合体(a)やアクリル系樹脂(b)とは異なる熱可塑性重合体や、ゴム補強剤または充填剤をさらに含有していてもよい。
【0052】
他の熱可塑性重合体としては、例えば、各種ポリエチレン、各種ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂;ブロック共重合体(a)とは異なる、スチレンからなるブロックをハードセグメントとするスチレン系ブロック共重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。これらは1種を単独で、また2種以上を併用してもよい。他の熱可塑性重合体を含有させる場合、その含有量は、好ましくは発泡体用組成物に対して10質量%以下である。
【0053】
一方、ゴム補強剤または充填剤としては、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ藻土などの無機充填剤;ゴム粉末、木粉などの有機充填材などを挙げることができる。これらは1種を単独で、また2種以上を併用してもよい。ゴム補強剤または充填剤を含有させる場合、その含有量は好ましくは発泡体用組成物に対して30質量%以下である。
【0054】
また、本発明の発泡体用組成物は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤などをさらに含有していてもよい。
【0055】
本発明の発泡体用組成物を得るための混合は、従来の慣用の方法で行うことができる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの混練機を使用して、各構成成分を混練して本発明の発泡体用組成物を得る。その際の混練温度としては、発泡剤の分解温度との兼ね合いから、160〜280℃の温度が好ましく、170〜260℃の温度がより好ましい。
【0056】
上記混練に際しては、(1)発泡体用組成物を構成する全ての成分を、混練する前にヘンシェルミキサーやタンブラーのような混合機を用いて予めドライブレンドしておき、一括混練する方法;(2)軟化剤(c)を除く重合体組成物を予め混練した後、サイドフィーダーなどを用いて混練機内に所定量の軟化剤(c)を添加する方法;(3)アクリル系樹脂(b)を除く他の成分を予め混練した後、サイドフィーダーなどを用いて混練機内に所定量のアクリル系樹脂(b)を添加する方法などが挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。
【0057】
なお、発泡剤(d)の分解温度が発泡体用組成物を得るための混練時の加熱温度よりも低い場合は、発泡剤(d)以外の各構成成分を上記した方法で混練して一時的にペレット状に取り出した後、発泡剤(d)をドライブレンドして成形装置に供給してもよいし、また、発泡剤(d)以外の構成成分を混練して作製したペレットを、成形装置に供給して成形する際、サイドフィード等の後添加方法により発泡剤(d)を成形装置に供給してもよい。この場合、発泡剤(d)は、予め他の熱可塑性樹脂に発泡剤(d)を発泡剤の混練温度以下で高濃度で溶融混練して作製したマスターバッチにして添加してもよい。
【0058】
また、発泡剤(d)の分解温度が発泡体用組成物を得るための混練時の加熱温度よりも高い場合は、発泡剤(d)は混練時に他の成分と共に一括添加してもよいし、混練途中に添加してもよい。そして、発泡剤(d)以外の各構成成分を混練して一時的にペレット状に取り出した後、成形装置に供給して成形する場合は、一時的にペレット状に取り出した後、発泡剤(d)をドライブレンドして成形装置に供給してもよいし、また、発泡剤(d)以外の構成成分を混練して作製したペレットを、成形装置に供給して成形する際、サイドフィード等の後添加方法により発泡剤(d)を成形装置に供給してもよい。この場合、発泡剤(d)は、予め他の熱可塑性樹脂に発泡剤(d)を発泡剤の混練温度以下で高濃度で溶融混練して作製したマスターバッチにして添加してもよい。
【0059】
本発明の発泡体用組成物は、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、カレンダー成形などの従来公知の方法を用いて、成形と同時にまたは成形後にシート、フィルム、チューブ、中空成形体、型成形体、その他の各種成形体に発泡体として成形することができる。その場合、良好な物性を有する発泡体を得るためには、該発泡体を作製するに際して、必要に応じて型内などで一定以上の充填率で発泡体用組成物を充填して発泡させることが、発泡体内部の気泡が肥大化せず独立した気泡になりやすいことから好ましい。
また、二色成形法により他の部材(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、ポリアミドなどの高分子材料;金属、木材、布など)と複合化することができる。
【0060】
本発明の発泡体用組成物およびそれから得られる発泡体は、成形加工性、柔軟性、力学強度などの諸特性に加え、特に軽量性、耐熱性(例えば70℃における圧縮永久歪み)、耐傷つき性、耐摩耗性に優れている。そして、それらの特性を活かして、例えば、サイドモール、ウェザーストリップ、マットガード、レザーシート、フロアーマット、アームレスト、エアバッグカバー、ピラー、シート表皮、ステアリングホイール被覆、ベルトラインモール、フラッシュマウントなどの自動車用内外装材部品;冷蔵庫用ガスケット、掃除機バンパー、防水ボディーなどの家電部品;ソファーやチェアーシートの座部などの家具;スイッチカバー、キャスター、ストッパー、足ゴムなどの部品;靴、スリッパなどの履物;被覆鋼板、被覆合板などの建材;スノーケル、ウエットスーツ、プロテクター、スキーストックグリップなどのスポーツ用品;おしめ、ハップ剤、包帯などの伸縮部材;扉や窓枠のシーリング用パッキン、情報機器、文房具、玩具、日用雑貨などの幅広い用途に有効に使用することができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における、発泡体用組成物の発泡前の成形加工性、発泡させた後の発泡体の耐傷つき性、耐摩耗性、耐熱性(70℃における圧縮永久歪み)、柔軟性および発泡倍率の測定または評価は、以下の方法によって行なった。
【0062】
a)耐傷つき性(擦り傷試験)
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5で得られた発泡体用組成物を、長さ5cm×幅1cm×厚さ0.2cmの金枠内にあらかじめ発泡倍率を考慮した充填率で充填し、プレス成形機を用いて、温度230℃、圧力10MPaで4分間プレスすることによりシート状の発泡体を作製し、学振摩耗試験機により15mm幅のカナキン3号綿布を用いて、荷重500g/cm2、ストローク120mmで、20回/分の回転速度で10回転させた後の、シート状の発泡体の擦り傷の程度を目視で観察することにより、表面に擦り傷が残らないかわずかに擦り傷が観察される程度の場合を(〇)、表面に擦り傷がはっきりと観察される場合を(×)とした。
【0063】
b)耐摩耗性
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5で得られた発泡体用組成物を、長さ15cm×幅15cm×厚さ0.2cmの金枠内にあらかじめ発泡倍率を考慮した充填率で充填し、プレス成形機を用いて、温度230℃、圧力10MPaで4分間プレスすることによりシート状の発泡体を作製し、該シート状の発泡体を用いて、JIS K 6264に準じて、H−22摩耗輪を用い、1kg荷重、1000回転の条件下でテーバー摩耗量を測定した。摩耗量が低いほど耐摩耗性が優れる。
【0064】
c)耐熱性(70℃における圧縮永久歪み)
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5で得られた発泡体用組成物を、長さ15cm×幅15cm×厚さ0.2cmの金枠内にあらかじめ発泡倍率を考慮した充填率で充填し、プレス成形機を用いて、温度230℃、圧力10MPaで4分間プレスすることによりシート状の発泡体を作製し、該シート状の発泡体から直径29mmの円状試験片を打ち抜き、それを6枚重ねて、温度200℃、圧力2.19MPaで5分間プレスして得られた試験片を用い、JIS K 6262に準じて、温度70℃の雰囲気下、圧縮率25%の状態を22時間保持した。その後、圧縮状態を開放して、その時の圧縮永久歪み量(%)を測定した。圧縮永久歪み量が少ないほど耐熱性に優れるとした。
【0065】
d)柔軟性(硬度)
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5で得られた発泡体用組成物を、長さ15cm×幅15cm×厚さ0.2cmの金枠内にあらかじめ発泡倍率を考慮した充填率で充填し、プレス成形機を用いて、温度230℃、圧力10MPaで4分間プレスすることによりシート状の発泡体を作製し、該シート状の発泡体を用い、JIS K 6253に準じて、タイプAデュロメータで硬度を測定して、柔軟性の指標とした。
【0066】
e)成形加工性
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5で得られた、発泡剤を添加する前のペレット状の組成物を用いて、JIS K 7210に準じて、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)を測定した。MFRの値が高いほど成形加工性に優れるとした。
【0067】
f)発泡倍率
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5で得られた発泡体用組成物を、長さ3cm×幅3cm×厚さ0.2cmの金枠内にあらかじめ1.4倍程度の発泡倍率になるような充填率で充填し、プレス成形機を用いて、温度230℃、圧力10MPaで4分間プレスすることによりシート状の発泡体を作製し、得られた発泡体の密度を測定して、発泡させる前の発泡体用組成物の密度との比から、発泡倍率を以下の式により算出した。
発泡倍率(倍)=発泡体用組成物の密度/発泡体の密度
【0068】
また、以下の実施例および比較例で使用した各成分の内容は以下のとおりである。
【0069】
(a)ブロック共重合体
重合例1
(1)窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン172g、シクロヘキサン251g、メチルシクロヘキサン47.3gおよびテトラヒドロフラン5.9gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.0mlを添加し、−10℃で5時間重合させた。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレン(ブロックA)の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で12300であり、α−メチルスチレンの重合転化率は90%であった。次いで、この反応混合液にブタジエン35.4gを添加し、−10℃で30分間攪拌して、ブロックb1の重合を行った後、シクロヘキサン1680gを加えた。この時点でのα−メチルスチレンの重合転化率は90%であり、ポリブタジエンブロック(b1)の重量平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は7000であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19%であった。
次に、この反応液にさらにブタジエン310gを加え、50℃で2時間重合反応を行った。この時点のサンプリングで得られたブロック共重合体(構造:A−b1−b2)のポリブタジエンブロック(b2)の重量平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、55600であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60%であった。
【0070】
(2)続いて、この重合反応溶液に、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)11.6mlを加え、50℃にて1時間攪拌し、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体を得た。この時のカップリング効率を、カップリング体(ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体:A−b1−b2−X−b2−b1−A)と未反応ブロック共重合体(ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエンブロック共重合体:A−b1−b2)のGPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から算出すると94%であった。また、1H−NMR測定の結果、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体中のα−メチルスチレン重合体ブロック含有量は31%であり、ブタジエン重合体ブロックB全体(すなわち、ブロックb1およびブロックb2)の1,4−結合量は55%であった。
(3)上記(2)で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行なうことにより、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体1と略称する)を得た。得られたブロック共重合体1をGPC測定した結果、主成分はMt(平均分子量のピークトップ)=153,500、Mn(数平均分子量)=147,500、Mw(重量平均分子量)=150,500、Mw/Mn(分子量分布)=1.02であるポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体の水素添加物(カップリング体)であり、GPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から、カップリング体は94%含まれることが判明した。また、1H−NMR測定により、ブロックb1およびブロックb2から構成されるブタジエンブロックBの水素添加率は97.1%であった。
【0071】
重合例2
重合例1において、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)の使用量を9.0mlから45.3mlに、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)の使用量を11.6mlから58.7mlに変えた以外は重合例1と同様にして反応操作を行ない、ブロック共重合体(以下、これをブロック共重合体2と略称する)を得た。得られたブロック共重合体2の分子性状を重合例1と同様にして求めた。ブロック共重合体2の重量平均分子量(Mw)は29,000、ポリ(α−メチルスチレン)ブロックAのブロック共重合体2中の含有量は31質量%、ブロックb1およびブロックb2から構成されるブタジエンブロックBの水素添加率は97.5%であった。
【0072】
重合例3
重合例1において、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)の使用量を9.0mlから4.5mlに、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)の使用量を11.6mlから5.8mlに変えた以外は重合例1と同様にして反応操作を行ない、ブロック共重合体(以下、これをブロック共重合体3と略称する)を得た。得られたブロック共重合体3の分子性状を重合例1と同様にして求めた。ブロック共重合体3の重量平均分子量(Mw)は301,000、ポリ(α−メチルスチレン)ブロックAのブロック共重合体3中の含有量は31質量%、ブロックb1およびブロックb2から構成されるブタジエンブロックBの水素添加率は97.0%であった。
【0073】
重合例4
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、スチレン172gおよびシクロヘキサン2000gを仕込んだ。この溶液に、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.0mlを加え、50℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合液にブタジエン345gを加え、50℃で1時間重合を行なった。その後、この反応混合物にさらにジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)11.6mlを加えて60℃で1時間攪拌することで、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。この反応混合液にオクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行ない、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体4と略称する)を得た。得られたブロック共重合体4の分子性状を重合例1と同様にして求めた。ブロック共重合体4の重量平均分子量(Mw)は150,500、ポリスチレンブロックのブロック共重合体4中の含有量は31質量%、ブタジエンブロックの水素添加率は97.9%であった。
【0074】
(b)アクリル系樹脂
重合例5
還流冷却管を備えた容量1000mlの三口フラスコに純水500gを入れ、十分に窒素置換した後、メタクリル酸メチル425g、アクリル酸メチル55g、ラウリルパーオキサイド2.5gおよびラウリルメルカプタン4gの混合溶液を仕込み、80℃で4時間重合を行ない、アクリル系樹脂(以下、これをアクリル系樹脂1と略称する)を得た。なお、得られたアクリル系樹脂1の20℃、クロロホルム中での固有粘度は0.301dl/gであった。
【0075】
(c)軟化剤
ダイアナプロセスPW−380(商品名)
(出光石油化学(株)製;パラフィン系プロセスオイル)
【0076】
(d)発泡剤
ファインブローBX−037(商品名)
(三菱化学(株)製;アゾジカルボンアミド含有マスターバッチ)
【0077】
≪実施例1〜3、比較例1〜5≫
(1)発泡剤を除く、ブロック共重合体1〜4、アクリル系樹脂1および軟化剤を、下記の表1〜3に示す配合に従って、ヘンシェルミキサーを使用して予め一括して混合し、二軸押出し機(東芝機械(株)製TEM−35B)に供給して230℃で約3分間混練した後、ストランド状に押出し、切断して、ペレット状の組成物を調製した。得られた組成物のMFRを上記の方法で測定したところ、下記表1〜3に示すとおりであった。
(2)上記(1)で得られたペレット状の組成物と発泡剤(d)を混合して発泡体用組成物を調製し、該発泡体用組成物を、長さ3cm×幅3cm×厚さ0.2cmの金枠内にあらかじめ発泡倍率1.4倍程度になるような充填率で充填し、プレス成形機を用いて、温度230℃、圧力10MPaで4分間プレスすることによりシート状の発泡体を作製した。得られた発泡体の耐傷つき性、耐摩耗性、耐熱性、柔軟性および発泡倍率を上記した方法で測定したところ、下記表1〜3に示すとおりであった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
上記の表1の結果より、ブロック共重合体1とアクリル系樹脂1の配合比(質量比)が式▲1▼の範囲を満足し、かつ軟化剤を、式▲2▼の範囲を満足する量で含有する実施例1〜3の発泡体用組成物およびそれからなる発泡体は、耐傷つき性、耐摩耗性、70℃での圧縮永久歪み(耐熱性)、柔軟性および成形加工性に優れ、発泡性も良好である。
【0082】
それに対して、比較例1の発泡体用組成物およびそれからなる発泡体は、軟化剤を式▲2▼の範囲を満足する量で含有するが、ブロック共重合体1に対するアクリル系樹脂1の配合比(質量比)が式▲1▼の範囲を満足していないため、発泡性は良好であるが、耐傷つき性、耐摩耗性および70℃での圧縮永久歪み(耐熱性)に劣る。
比較例2の発泡体用組成物およびそれからなる発泡体は、ブロック共重合体1とアクリル系樹脂1の配合比(質量比)が式▲1▼の範囲を満足しているが、軟化剤の配合比(質量比)が数式▲2▼の範囲を満足していないため、耐傷つき性および耐摩耗性に劣る。
【0083】
比較例3の発泡体用組成物およびそれからなる発泡体は、ブロック共重合体4とアクリル系樹脂1の配合比(質量比)が式▲1▼の範囲を満足し、且つ、軟化剤の配合比(質量比)も式▲2▼の範囲を満足しているが、ブロック共重合体4を構成する重合体ブロックAがポリスチレンのため、耐傷つき性、耐摩耗性および70℃での圧縮永久歪み(耐熱性)に劣る。
比較例4の発泡体用組成物およびそれからなる発泡体は、ブロック共重合体2とアクリル系樹脂1の配合比(質量比)が式▲1▼の範囲を満足し、且つ、軟化剤の配合比(質量比)も式▲2▼の範囲を満足しているが、ブロック共重合体2の重量平均分子量が30,000に満たないため、発泡性、耐傷つき性、耐摩耗性および柔軟性のバランスは優れるが、70℃での圧縮永久歪み(耐熱性)に劣る。
比較例5の発泡体用組成物およびそれからなる発泡体は、ブロック共重合体3とアクリル系樹脂1の配合比(質量比)が式▲1▼の範囲を満足し、且つ、軟化剤の配合比(質量比)も式▲2▼の範囲を満足しているが、ブロック共重合体3の重量平均分子量が200,000を超えているため、70℃での圧縮永久歪み(耐熱性)に優れるが、耐傷つき性、耐摩耗性に劣り、さらに発泡性にも劣る。すなわち、金枠への発泡体用組成物の充填量を他の例よりも多くしないと金枠の大きさの発泡シートを得ることができなかった。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、柔軟性、成形加工性を保持し、耐熱性、特に高温(例えば70℃)における圧縮永久歪みに優れ、かつポリウレタン系熱可塑性エラストマーに匹敵する耐傷つき性と耐摩耗性を有する発泡体およびかかる発泡体を得るための発泡体用組成物を得ることができる。
Claims (3)
- ブロック共重合体(a)が、(1)重量平均分子量1,000〜50,000のα−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックA、および(2)重量平均分子量が1,000〜30,000であって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30%未満であるブロックb1および重量平均分子量が25,000〜190,000であって、該ブロックを構成する共役ジエン単位の1,4−結合量が30%以上であるブロックb2を含む重合体ブロックBを有し、(A−b1−b2)構造を少なくとも一つ含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡体用組成物。
- 請求項1または請求項2の発泡体用組成物を発泡させてなる発泡体。
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