JP2012041431A - 水性インク密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

水性インク密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】水性インクとの密着性が良好で、かつ引張弾性率等の機械的強度も良好な、汎用性の高い熱可塑性樹脂組成物及び成形体を得る。
【解決手段】(1)熱可塑性樹脂と、(2)分子内に、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つと、ウレタン結合とを有する吸水性樹脂とを含有する、熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
従来から、シートやフィルム等の包装材料としてスチレン系樹脂が用いられている。これらは意匠性を高めるために一般的に、文字や図柄等の画像が有機溶剤系インク等により印刷されている。
一方、グラビア印刷等を行う印刷業界においては、有機溶剤の放出に起因する環境汚染を防止し、かつ作業環境の改善を図る観点から、有機溶剤系インクの使用を控える傾向が高まっている。
また、食品用包装パックやフィルムに印刷を行う場合、有機溶剤等が食品に移行すると衛生上好ましくないという観点から、有機溶剤系印刷インクに代えて水性インクが多用されるようになってきている。
上記のような樹脂製の印刷対象に水性インクを用いて印刷する場合において高い印刷性を得る手法としては、印刷対象である樹脂にエポキシ基を導入する方法が検討されている。
例えば、特許文献1においては、オレフィン系重合体とエポキシ基を含有するビニル系重合体からなるグラフト共重合体と熱可塑性樹脂との組成物が、特許文献2には、塩化ビニル樹脂に高濃度のグリシジルメタクリレートと長鎖メタクリレートの共重合体が混合された組成物が開示されている。
特開平5−78549号公報 特開平11−343375号公報
しかしながら、樹脂製の印刷対象にグラビア印刷行う場合、水性インクとの密着性は未だ不十分であり、機械的強度を維持しつつ良好な印刷適性をも有する樹脂組成物が要求されている。
そこで、本発明においては、上述した従来技術の課題に鑑み、水性インクとの密着性が良好で、かつ引張弾性率、伸び、水性インク印刷後の伸び等の機械的強度も良好な、汎用性の高い熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した従来技術の問題を解決するために鋭意検討を行った結果、所定の吸水能力を有する樹脂を、ベースとなる熱可塑性樹脂に含有させることにより、水性インクとの密着性が良好で、かつ実用上十分な機械的強度を有する熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
(1)熱可塑性樹脂と、
(2)分子内に、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つと、ウレタン結合とを有する吸水性樹脂と、
を、含有する、熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
前記(1)熱可塑性樹脂が、下記(a)、又は当該(a)に下記(b)を混合したものである前記〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(a)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックBとからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が50〜95質量%のブロック共重合体又はその水添物。
(b)前記(a)とは異なる構造の、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体、ビニル芳香族化合物重合体、ビニル芳香族化合物とその他のビニルモノマーとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体。
〔3〕
前記(2)吸水性樹脂を、0.5質量%以上2.0質量%以下、含有する前記〔1〕乃又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
前記(2)吸水性樹脂の、純水に対する吸収能が、15〜30g/gである前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形体。
本発明によれば、水性インクとの密着性が良好で、かつ引張弾性率、伸び、水性インク印刷後の伸び等の機械的強度も良好な、熱可塑性樹脂組成物が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(1)熱可塑性樹脂と、(2)吸水性樹脂とを含有している。
((1)熱可塑性樹脂)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を構成する(1)熱可塑性樹脂としては、下記の(a)ブロック共重合体又はその水添物、及び当該(a)に下記(b):前記(a)とは異なる構造の重合体を混合したものを用いることができる。
<(a)ブロック共重合体又はその水添物>
(a)ブロック共重合体又はその水添物は、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックBとからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が50〜95質量%のブロック共重合体又はその水添物である。
ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAとは、ビニル芳香族炭化水素を50質量%以上含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体ブロック、又はビニル芳香族炭化水素単独の重合体ブロックを示す。
なお、この場合「主体とする」とは、重合体ブロックA中のビニル芳香族炭化水素含有量が50質量%以上であることを言い、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることを言う。
共役ジエンを主体とする重合体ブロックBとは、共役ジエンを50質量%を超える量で含有する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック、又は共役ジエン単独の重合体ブロックを示す。
なお、この場合「主体とする」とは、重合体ブロックB中の共役ジエン含有量が50質量%を超えていることを言い、好ましくは60質量%以上であることを言う。
前記ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックA、共役ジエンを主体とする重合体ブロックB中に、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロックが存在する場合、共重合されているビニル芳香族炭化水素は、ランダム共重合体ブロック中に均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。また、該共重合体ブロックは、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分が複数個共存していてもよい。
(a)ブロック共重合体又はその水添物が、複数個の重合体ブロックA(又はB)を有している場合には、それらは分子量、組成、種類等が互いに異なるものであってもよい。
(a)ブロック共重合体のポリマー構造としては、例えば、下記(i)〜(iii)のような線状ブロック共重合体が挙げられる。
A−(B−A)・・・(i)
A−(B−A)−B・・・(ii)
B−(A−B)n+1・・・(iii)
ここで、Aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを主体とする重合体ブロックである。
AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
nは1以上の整数であり、一般的には1〜5である。
また、(a)ブロック共重合体のポリマー構造としては、上記線状ブロック共重合体の他、下記(iv)〜(vii)のようなラジアルブロック共重合体が挙げられる。
[(A−B)−X・・・(iv)
[(A−B)−A]−X・・・(v)
[(B−A)−X・・・(vi)
[(B−A)−B]−X・・・(vii)
ここで、A、Bは、前記(i)〜(iii)と同義であり、kは1以上の整数であり、mは3以上の整数であり、一般的には3〜5である。
なお、mが1及び/又は2の重合体が含まれていてもよい。
Xは、例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。
(a)ブロック共重合体を構成するビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられ、中でも、反応性が良好で、高強度となる傾向にあるため、スチレンが好ましい。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
(a)ブロック共重合体を構成する共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
共役ジエンとして1,3−ブタジエンとイソプレンを併用する場合、1,3−ブタジエンとイソプレンの全質量に対してイソプレンの割合は10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。イソプレンが10質量%以上であると、高温での成形加工時等に熱分解を起こし難く分子量が低下しないため、外観特性や機械的強度のバランス性能の良好なブロック共重合体(a)や、これを含有する熱可塑性樹脂組成物が得られる傾向にある。
(a)ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素の含有量は、好ましくは50〜95質量%の範囲であり、より好ましくは60〜95質量%の範囲、更に好ましくは70〜95質量%の範囲である。
(a)ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素の含有量が50〜95質量%の範囲であると、耐衝撃性と剛性のバランス性能が良好で、透明性に優れた樹脂が得られる傾向にある。
(a)ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。具体的には、紫外線分光光度計を用いて、所定の波長光の吸収強度を測定することにより算出できる。
(a)ブロック共重合体中に組み込まれているビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのブロック率は、50〜100%の範囲であることが好ましい。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのブロック率が50%以上であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及びその成形体において、優れた剛性が得られる傾向にあるため好ましい。
ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのブロック率は、後述する(a)ブロック共重合体の製造方法において、少なくとも一部のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとが共重合する工程におけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量、これらの質量比、重合反応性比等を調整することにより制御できる。
具体的な方法としては、(イ)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの混合物を連続的に重合系に供給して重合する、及び/又は、(ロ)極性化合物若しくはランダム化剤を使用してビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合する、等の方法が挙げられる。
前記(ロ)の方法に使用する前記極性化合物若しくはランダム化剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
なお、前記ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのブロック率は、四酸化オスミウムを触媒として、ジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を定量し、下記式を用いて求められる。
Figure 2012041431
(a)ブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量(Mn)は、1万以上15万以下の範囲が好ましく、2万以上12万以下の範囲がより好ましい。前記(Mn)を1万以上15万以下とすることにより、より一層優れた剛性と耐衝撃性が得られる傾向にあり、更に、成形加工性と透明性も良好なものとなる傾向にある。
前記数平均分子量(Mn)は、四酸化オスミウムを触媒として、ジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて求めることができる。
すなわち、GPC用の単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>講談社発行」)に従って算出することができる。
(a)ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)の値は成形性の観点から、2〜35g/10分が好ましく、3〜25g/10分が好ましい。
MFR(メルトフローレート)の値は、JIS K7210(A法)に規定される方法により、200℃、荷重5kgfの条件で測定して得られる値である。
<(a)ブロック共重合体の製造方法>
(a)ブロック共重合体は、基本的には、従来公知の方法により合成できる。
例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49567号公報、特公昭58−11446号公報等に開示されているように、炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン開始剤を用いて、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とをブロック共重合する方法により合成することができる。
なお、本実施形態においては、(a)ブロック共重合体を構成する重合体ブロックA、重合体ブロックB、及びビニル芳香族炭化水素含有量については、上記に亘り説明した(a)ブロック共重合体の、重合体ブロックA、Bの構成の条件に従うものとする。
また、(a)ブロック共重合体の製造工程においては、目的とする(a)ブロック共重合体の要求特性に応じて後述する所定の添加剤を添加することができる。
(a)ブロック共重合体を合成する工程においては、炭化水素溶媒を用いる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が使用できる。
これらは、1種のみを単独用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a)ブロック共重合体を合成する工程においては、アニオン開始剤を用いる。
アニオン開始剤としては、例えば、有機リチウム化合物として、分子中に一個以上のリチウム原子が結合した有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等が適用できる。
具体的には、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。
これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
(a)ブロック共重合体を合成する工程においては、重合速度の調整、重合した共役ジエン部のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素の反応比の調整等の目的で、極性化合物やランダム化剤を使用することができる。
極性化合物やランダム化剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
(a)ブロック共重合体の重合温度条件は、一般的には−10℃〜150℃の範囲であり、好ましくは40℃〜120℃の範囲である。
重合に要する時間は、条件によって異なるが、一般的には48時間以内で行うことができ、特に良好な条件を選定することにより1〜10時間で行うことができる。
また、重合を行う際の系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスにより置換した状態とすることが好ましい。
重合を行う際の圧力は、上記重合温度範囲において、モノマー及び溶媒を液層に維持するのに十分な圧力の範囲であればよく、特に制限されるものではない。
また、重合系内に触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意することが好ましい。
<(a)ブロック共重合体の水添物及びその製造方法>
次に、(a)ブロック共重合体の水添物について説明する。
(a)ブロック共重合体の水添物は、上述した(a)ブロック共重合体に対して水素添加(以下、「水添」とも略される。)することにより得られる。
水素添加において用いる水添触媒としては、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒、例えば、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等の、いわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒等を適用できる。
具体的には、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に開示されている水添触媒を適用できる。
水添触媒の好ましい例としては、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、例えば、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用でき、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格若しくはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。
また、還元性有機金属化合物としては、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
ブロック共重合体に対して水添反応を実施する際の温度条件は、0〜200℃の範囲とすることが好ましく、30〜150℃の範囲とすることがより好ましい。
水添反応に使用される水素の圧力は、0.1〜15MPaが好ましく、0.2〜10MPaがより好ましく、0.3〜5MPaが更に好ましい。
また、水添反応時間は、3分〜10時間が好ましく、10分〜5時間がより好ましい。
水添反応は、バッチプロセス、連続プロセスによって行うことができ、これらを単独で行ってもよく、組み合わせてもよい。
(a)ブロック共重合体の水添物において、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水素添加率は、特に限定されるものではないが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、ブロック共重合体中に、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合の結合様式で組み込まれている不飽和二重結合のうち一部のみが水添されていてもよい。一部のみを水添する場合には、水素添加率は10%以上70%未満とすることが好ましく、15%以上65%未満とすることがより好ましく、20%以上60%未満とすることが更に好ましい。一部を水添した場合は、全てを水添した場合に比べると熱安定性は劣るが、低温時の伸びが優れたものとなる。
さらには、(a)ブロック共重合体の水添物において、水素添加前の共役ジエンに基づくビニル結合の水素添加率は、85%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることがさらに好ましい。水素添加率を上記範囲にすることにより熱安定性の向上が図られる傾向にある。
なお、上記ビニル結合の水素添加率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエンに基づくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
また、(a)ブロック共重合体の水添物において、ビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水素添加率については、特に制限されないが、50%以下とすることが好ましく、30%以下とすることがより好ましく、20%以下とすることが更に好ましい。
水素添加率、及び共役ジエン化合物に基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
<(b) (a)とは異なる構造の重合体>
上述したように、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、前記(1)熱可塑性樹脂として、前記(a)ブロック共重合体又はその水添物に、さらに(b)前記(a)とは異なる構造の重合体を含有したものを用いることができる。
すなわち、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を構成する(1)熱可塑性樹脂の構成成分は、(a)成分のみであってもよい。
前記(a)成分に加えて、(b)前記(a)とは異なる構造の重合体も含有する場合には、上述した(a)ブロック共重合体又はその水添物と、(b)前記(a)とは異なる構造の重合体との組成比(質量比)は、(a)/(b)=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜70/20がより好ましい。
(b)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、前記(a)とは異なる構造の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体樹脂、ポリスチレン等のビニル芳香族化合物重合体樹脂、ビニル芳香族化合物とその他のビニルモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)との共重合樹脂が挙げられる。
また、上記以外にも、(b)成分として、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS)が挙げられる。
(b)前記(a)とは異なる構造の重合体の数平均分子量は、1000以上が好ましく、5000〜500万がより好ましく、1万〜100万がさらに好ましい。
(b)成分のメルトフローレート(MFR)の値は2〜35g/10分が好ましく、3〜25g/10分が成形性の観点からより好ましい。
MFR(メルトフローレート)の値は、JIS K7210(A法)に規定される方法により、200℃、荷重5kgfの条件で測定して得られる値である
なお、(b)前記(a)とは異なる構造の重合体は、上記各種樹脂を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、透明性が得られるものとして、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体樹脂、ポリスチレン等のビニル芳香族化合物重合体樹脂、ビニル芳香族化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合樹脂が好ましい。
(b)前記(a)とは異なる構造の重合体は、従来公知の方法により合成できる。
前記(b)成分は、前記(a)と異なる構成となるように原料を選択し、所定の溶剤中で所定の重合開始剤を用いて合成することができる。
具体的には、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのブロック共重合体であれば特に構造を限定されるものではないが、ビニル芳香族炭化水素の含有量が50〜95質量%の範囲を外れていてもよく、1種又は2種以上のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAのみから構成されていても、逆に1種又は2種以上の共役ジエンを主体とする重合体ブロックBのみから構成されていてもよい。
なお、製造工程においては、目的とする重合体の要求特性に応じて所定の添加剤を加えてもよい。
((2)吸水性樹脂)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を構成する(2)吸水性樹脂は、分子内に、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体より選ばれる少なくとも一つとウレタン結合とを有する熱可塑性樹脂である。
(2)吸水性樹脂は、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体と、ジイソシアネート化合物とを押出機に連続的に供給し、押出機中で50℃〜210℃の範囲で混合して反応を行う方法、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体の高温のトルエン溶液とした後に、ジイソシアネート化合物を添加し、50℃〜210℃の範囲で攪拌して反応を行った後析出、濾過して乾燥する方法により製造でき、前記反応の結果としてウレタン結合が形成されている。
また、これらの反応は、上述した(1)熱可塑性樹脂の共存下で行ってもよい。
(2)吸水性樹脂の製造工程においてポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体とともに添加するジイソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,8−ジメチルベンゾール−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,2’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は芳香族ジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等が使用される。これらのジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。
(2)吸水性樹脂の製造工程においては、上述したジイソシアネート化合物の供給前に、分子量500以下の低分子ジオールを、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体の混合物又は混合溶液中に別途供給してもよい。
(2)吸水性樹脂の製造工程においては、反応促進剤として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン等を少量添加することにより反応を促進させることもできる。
(2)吸水性樹脂には、可塑剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、顔料等の添加剤を含有させることもできる。
(2)吸水性樹脂の純水に対する吸水能は、好ましくは10〜50g/g、より好ましくは15〜30g/gである。
吸水能は、(2)吸水性樹脂1gを純水200ml中に添加し、1時間攪拌後、200メッシュの金網にて濾過し、濾過後のゲルの質量を測定し、質量増加分を算出することにより得られる。
(2)吸水性樹脂の吸水能が10〜50g/gであると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、良好な水性インク密着性が得られ、水性インクを印刷後、特に高湿度下においても安定した伸びを示す。
(2)吸水性樹脂の吸水能は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体の配合量を制御することや、低分子ジオールの添加量を制御することにより、調整できる。
具体的には、ポリエチレンオキサイドの配合量が増えると吸水能は増し、また、低分子ジオールの配合量を増やすと吸水能は低下する。
(2)吸水性樹脂の配合量は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を100質量%としたとき、0.5質量%〜10質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
(2)吸水性樹脂の配合量が0.5〜10質量%であると、水性インクの密着性、引張弾性率、伸びに優れ、特に0.5〜2質量%であると、水性インク印刷後も安定した伸びを示す。
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法により製造できる。
例えば、(1)熱可塑性樹脂と、(2)吸水性樹脂とを、オープンロール、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて溶融混練する方法、各成分を溶解又は分散混合した後、溶剤を加熱除去する方法等が適用できる。特に、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
なお、添加剤を加えるタイミングについては特に限定されるものではない。予め(1)成分又は(2)成分に含有又は付着させておいてもよいし、(1)成分と(2)成分とを混合する際に添加してもよいし、混合後に添加してもよく、付着させてもよい。これらの方法は単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。
溶融混練温度は、(1)熱可塑性樹脂、(2)吸水性樹脂の融点、溶融粘度、及びこれらの樹脂の熱劣化等を考慮して、100〜350℃とすることが好ましく、150〜350℃がより好ましく、180〜330℃がさらに好ましい。
また、溶融混練時間(又は溶融混練工程の平均滞留時間)は、混練度合い(分散性)や生産性、(1)熱可塑性樹脂、(2)吸水性樹脂の劣化等を考慮して、0.2〜60分が好ましく、0.5〜30分がより好ましく、1〜20分がさらに好ましい。
〔熱可塑性樹脂組成物の成形体〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、一般に熱可塑性樹脂の成形に用いられている公知の方法、例えば射出成形、Tダイ、異型押出等の押出成形、ブロー成形、真空成形、インフレーション成形、テンター、ストレッチャーによる延伸加工等によるフィルム成形、シート成形等の方法によって成形することができる。
成形体の形状は、特に制限されず、例えば、フィルム状、シート状等が挙げられる。
特に、延伸加工による成形を行うと、延伸時の厚みむらの少ないフィルムに成形することができる。
また、所定の基材層の片面に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる表層を形成することにより、積層体を得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を、所定の基材層の片面に形成する方法は、特に制限されず、一般の多層成形に用いられる方法、例えば、射出成形における2色成形法、多層Tダイを用いる方法、予め表層となるフィルムやシートを作製してこれらを貼り合わせる方法あるいは熱融着する方法、接着層を介して接着する方法等が挙げられる。
このように、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる表層を形成することにより、多様な機械的性能を有しつつ、水性インクの印刷性に優れた成形体を得ることが可能となる。
特に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形し、シート、フィルムとして用いる場合には、ブロッキング防止、滑り性付与等の目的で、種々の添加剤を配合するが、このような添加剤を配合した場合においても、水性インク密着性が良好であり、優れた印刷性が得られる。
以下、本発明について具体的な実施例と比較例を挙げて説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例に適用した物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
<(1) (a)のブロック共重合体のスチレン含有量>
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
<(2) (a)のブロック共重合体のスチレンブロック率>
四酸化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分を定量し、下記の式から求めた。
Figure 2012041431
<(3) メルトフローレート>
ASTM D1238に準拠し、200℃、荷重5kgの条件で測定した。
<(4)吸水性樹脂の構造>
(i)FT−IRの測定
パーキンエルマー社製 Spectram1を用いてポリエチレングリコールの存在を測定した。
(ii)1HNMRの測定
ブルカー社製NMR測定装置(BiospinAvance600:600MHz)を用い、ポリエチレングリコールのエチレン鎖、メチル、メチレン、ウレタン隣接CH2の存在を確認した。
(iii)13CNMRの測定
ブルカー社製NMR測定装置(BiospinAvance600:600MHz)を用い、メチレン炭素、メチン炭素、メタン炭素、ウレタン結合の観測を行った。
(iV)アルカリ反応熱分解GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)の測定
フロンティアラボ株式会社製熱分解装置(2020D)を用い400℃にて加熱分解を行い、日本電子株式会社製GC/MS装置(Automass SUN)を用い熱分解GC/MSの測定を行った。この際、試料0.38mgに25%水酸化テトラメチルアンモニウム/メタノール溶液を3μm添加したものを測定試料とした。
GC/MSより、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート由来物、4−メトキシブタノール、1,4−ブタンジオール、2−エチルヘキサン酸メチルが検出された。
(v)重量平均分子量
東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8220)を用いて、分子量分布を測定した。
試料は、DMF(ジメチルホルムアミド:和光純薬工業製 特級)+10mM−LiBr(和光純薬工業製 特級)に溶解し、標準PEO(ポリエチレンオキシド:Polymer Labolatories社製)を用いた。
上記測定データと解析値により、重量平均分子量を算出した。
13CNMRで帰属したシグナルの積分値、GPC測定結果を元に、作成した吸水性樹脂の成分の組成比を、解析した。
尚、これらの解析は、予め合成した吸水性樹脂に適用可能であるが、吸水性樹脂とスチレン系樹脂の混合物においても、一度高温でトルエンに溶解した後、冷却し、析出成分を分離することで、吸水性樹脂を単離して同様の解析を行うことも可能である。
<(5)吸水性樹脂の吸水能>
純水200ml中に、後述するようにして作製した吸水性樹脂1gを添加し、1時間攪拌し、その後、200メッシュの金網にて濾過し、濾過後のゲルの質量を測定し、1gあたりの質量の増加分を吸水能として評価した。
<(6)評価用試料の作製>
株式会社 池貝製Tダイ装着押し出し機(FS40−36V型/バレル径40mmφ、L/D=36、幅400mmTダイ装着、2段ダルメージ式スクリュー)のホッパーに、下記〔表3〕に示す配合にて各原料ペレットを投入し、シートを得た。
得られたシートを、市金工業株式会社製テンター延伸装置(SF−625)を用い、85℃で5倍延伸し、幅1mの延伸フィルムを作製した。
得られたシート、延伸フィルムについて、下記項目で記載する手法に基いて、製膜性、引張弾性率、伸び、水性インクとの接着性を測定した。
<(7)製膜性>
延伸フィルム作製時に、穴又は亀裂の発生の有無を確認した。
穴、亀裂の発生しないものを○、穴、亀裂の発生したものを×とした。
<(8)引張弾性率、伸び>
ASTM D638に準拠し、ミネベア株式会社製TG−5KN型試験機を用いて、試験速度5mm/minで測定した。
<(9)高湿下保管後の引張試験、伸び>
また、試験片を23℃、相対湿度80%の環境下に1ヶ月保管した後、同様に引張試験を行い、高温保管後の伸びを算出した。
<(10)水性インクとの接着性>
グラビアミニ校正機(株式会社日商グラビア製)の印刷機により、水性グラビアインク(スーパーエコピュア:サカタインクス(株)社製)を使用し、同社製スーパーエコピュア用薄め液をスーパーエコピュア/薄め液=100/50の質量比率でブレンドして、後述する実施例及び比較例において作製した樹脂シートの表面を印刷した。
JIS 5400、5600に準拠したクロスカット法による塗膜密着性評価を行い、水性グラビアインクとの接着性を評価した。
印刷した樹脂シートを、23℃、24時間放置した後、インクで印刷された面を1mm間隔で100マスになるよう刃で傷を樹脂シートまで入れ、ニチバンの粘着テープ(CT−18又はLP−18、粘着力4.01N/cm)を密着させ、斜め30度の角度方向に、瞬時に印刷面を剥離させた。
剥がれた印刷インク個数で以下のように判定した。
○:0/100(完全密着)以上20/100未満
△:20/100以上50/100未満
×:50/100以上100/100以下
<(11)水性インク印刷後の引張試験、伸び>
上述した(9)の方法に従い印刷した実施例及び比較例のフィルムを、上述した(8)と同様の方法により引張試験を行い、水性インク印刷後の伸びを評価した。
次に、実施例及び比較例で使用した成分を下記に示す。
〔(B)使用した原材料〕
<(1):(a)のブロック共重合体(a)−1>
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、
(i)工程:スチレン25質量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.080質量部添加し、80℃で20分間重合した。
次に、(ii)工程:スチレン14質量部と1,3−ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液を60分間連続的に添加して80℃で重合した。
次に、(iii)工程:スチレン29質量部を含むシクロヘキサン溶液を25分間連続的に添加して80℃で重合した後、80℃で10分間保持した。
その後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.9倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.5質量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体(a)−1を得た。
ブロック共重合体(a)−1は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=30/70質量比である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体であった。
また、得られたブロック共重合体(a)−1は、数平均分子量85000、スチレン含有量は70質量%、ブロック率は80質量%、また、メルトフローレートは6g/10分(ASTM D1238に準拠、200℃、荷重5kg)であった。
<(2):(a)ブロック共重合体(a)−2、(a)−3>
上述したブロック共重合体(a)−1と同様の手法を用い、(a)−1の製造工程中、(i)、(ii)、(iii)において添加するスチレン、1,3−ブタジエンの添加量、及びn−ブチルリチウムの添加量を、適宜コントロールすることで、ブロック共重合体(a)−2、(a)−3を作製した。
なお、n−ブチルリチウムの添加量を少なくすると分子量は大きくなる。
製造工程中、(i)、(iii)で添加するスチレン量に対し、(ii)で添加するスチレン量を増やすとスチレンブロック率は低下する。
これにより、分子量、スチレンブロック量を制御した。
上述のようにして作製した、(a):ブロック共重合体(a)−1〜(a)−3の、スチレン含有量、スチレンブロック率、メルトフローレートについて、下記表1に示す。
Figure 2012041431
<(3):(b)重合体:(b)−1〜(b)−4)>
ビニル系芳香族炭化水素系重合体として、汎用ポリスチレン(GPPS)((b)−1:PSジャパン株式会社製 ポリスチレン685、MFR=3g/10分)、スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体((b)−2:PSジャパン株式会社製 SC004、MFR=4g/10分)を使用した。
共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体((b)−3:旭化成ケミカルズ(株) タフプレン126、MI=6g/10min)を使用した。
またさらに、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体として、下記の方法によりブロック共重合体(b)−4を合成し、使用した。
すなわち、攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、(i)工程:スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.080質量部添加し、80℃で20分間重合した。次に、(ii)工程:スチレン64質量部と1,3−ブタジエン12質量部を含むシクロヘキサン溶液を60分間連続的に添加して80℃で重合した。 次に、(iii)工程:スチレン9質量部を含むシクロヘキサン溶液を25分間連続的に添加して80℃で重合した後、80℃で10分間保持した。
その後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.9倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.5質量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体(b)−4を得た。
ブロック共重合体(b)−4は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックA1、スチレン/1,3−ブタジエン=84/16質量比である重合体ブロックA2、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックA3よりなるA1−A2−A3型ブロック重合体であった。
また、得られたブロック共重合体(b)−4は、数平均分子量100000、スチレン含有量は88質量%、ブロック率は30質量%、また、メルトフローレートは6.5g/10分(ASTM D1238に準拠、200℃、荷重5kg)であった。
<(4)吸水性樹脂の製造(W−1)>
十分に脱水した重量平均分子量約50000のポリエチレンオキサイド100質量部、重量平均分子量約10000のポリエチレンオキサイド25質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、及びトリエチレンジアミン0.2質量部、及びトルエン350質量部を、110℃に保管された攪拌器のついた反応槽に入れ、窒素ガス雰囲気下で30分攪拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.62質量部を添加し、室温まで冷却し、生成した樹脂を析出させた。
このスラリーを加圧濾過し、減圧乾燥して、吸水性樹脂を得た。
吸水能は20g/gであった。
<(5)吸水性樹脂の製造(W−2)>
十分に脱水した重量平均分子量約50000のポリエチレンオキサイド100質量部、重量平均分子量約10000のポリエチレンオキサイド25質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、及びトリエチレンジアミン0.2質量部、及びトルエン350質量部を、110℃に保管された攪拌器のついた反応槽に入れ、窒素ガス雰囲気下で30分攪拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート0.5質量部を添加し、室温まで冷却し、生成した樹脂を析出させた。
このスラリーを加圧濾過し、減圧乾燥して、吸水性樹脂を得た。
吸水能は40g/gであった。
<(6)吸水性樹脂を含有するスチレン系熱可塑性樹脂組成物(W−3)の製造>
ブロック共重合体(a)−1を95質量%、十分に脱水した重量平均分子量20000のポリエチレンオキサイド4.0質量%、重量平均分子量1000のポリエチレンオキサイド0.5質量%、1,4−ブタンジオール0.08質量%、トリエチレンジアミン0.008質量%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート0.35質量%をドライブレンドし、2軸押出機(株式会社池貝製 PCM−30)を用いて、180℃で押出して、原料ペレットを得た。
ペレット100gを、トルエンに溶解した後、冷却し、析出成分を分離して、吸水性樹脂を単離し、吸水能を測定した。
吸水能は、30g/gであった。
上述した(W−1)〜(W−3)について、前述した手法に基づいて、FT−IR、1H−NMR、13CNMRにより、分子内にポリエチレンオキサイドとウレタン結合を有していることを確認した。
<(7)吸水能が60g/gのポリアクリル酸ソーダ系の吸水性樹脂(W−4)>
アクアキープSA60S(住友精化株式会社製)を用いた。
<(8)添加剤>
添加剤としてエチレンビスステアリルアミドを用いた(EBSと表記)。
添加剤の添加量は、(1)熱可塑性樹脂+(2)吸水性樹脂を100質量部としたときの数値(質量部)で表中に示した。
なお、添加剤は、上記<(6)評価用試料の作製>において、Tダイ押出機に原料ペレットを投入する直前に添加した。
〔実施例1〜14〕、〔参考例1〜3〕、〔比較例1〜6〕
上述した原料を用いて、下記表2、3の配合に従い熱可塑性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
上述した各評価結果を下記に示す。
Figure 2012041431
Figure 2012041431
実施例1〜13は、機械的強度、伸び、水性インク印刷後の伸び、高湿下保管後の伸びに優れ、水性インクとの接着性も良好であることがわかった。
また、フィルム表面における脂肪酸アミド化合物の添加量が高くても、良好な水性インク密着性が得られ、良好な滑り性と水性インク密着性が得られた。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、水性インクとの密着強度に優れており、包装用フィルムや飲料容器等に被せる熱収縮性フィルム、各種シート材料としての産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. (1)熱可塑性樹脂と、
    (2)分子内に、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つと、ウレタン結合とを有する吸水性樹脂と、
    を、含有する、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記(1)熱可塑性樹脂が、下記(a)、又は当該(a)に下記(b)を混合したものである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    (a)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックBとからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が50〜95質量%のブロック共重合体又はその水添物。
    (b)前記(a)とは異なる構造の、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体、ビニル芳香族化合物重合体、ビニル芳香族化合物とその他のビニルモノマーとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体。
  3. 前記(2)吸水性樹脂を、0.5質量%以上2.0質量%以下、含有する請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(2)吸水性樹脂の、純水に対する吸収能が、15〜30g/gである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形体。
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