JP2014193940A - 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム Download PDF

Info

Publication number
JP2014193940A
JP2014193940A JP2013070028A JP2013070028A JP2014193940A JP 2014193940 A JP2014193940 A JP 2014193940A JP 2013070028 A JP2013070028 A JP 2013070028A JP 2013070028 A JP2013070028 A JP 2013070028A JP 2014193940 A JP2014193940 A JP 2014193940A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
thermoplastic resin
aromatic hydrocarbon
copolymer
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013070028A
Other languages
English (en)
Inventor
Satoshi Takahashi
聡 高橋
Osamu Ishihara
收 石原
Susumu Hoshi
進 星
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Chemicals Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Chemicals Corp filed Critical Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority to JP2013070028A priority Critical patent/JP2014193940A/ja
Publication of JP2014193940A publication Critical patent/JP2014193940A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】水性インクとの密着性が良好で、かつ機械的強度も良好である、熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記(a)成分を含む熱可塑性樹脂(1)を85〜97.5質量%、ビニル芳香族炭化水素単量体50〜95質量%と、グリシジル(メタ)アクリレート5〜50質量%とからなる、共重合体(2)を2〜10質量%、並びに、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を総量で0.01〜0.5質量%、を含む、熱可塑性樹脂組成物;
(a)ビニル芳香族炭化水素単量体を90質量%以上含有する重合体ブロックAを少なくとも1個と、共役ジエン単量体を含有する重合体ブロックBを少なくとも1個とからなり、前記ビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が40〜95質量%である、ブロック共重合体又はその水添物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性インクの印刷性に優れた熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルムに関する。
スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂は、シートやフィルム等の包装材料として幅広く用いられている。これらの包装材料には、その意匠性を高めるために、文字や図柄等が有機溶剤系インク等により印刷されている。一方、グラビア印刷等を行う印刷業界においては、有機溶剤の放出に起因する環境汚染を防止し、かつ作業環境の改善を図る観点から、有機溶剤系インクの使用を控える傾向が高まっている。
また、食品用包装パックや食品用包装フィルムに印刷を施す場合、有機溶剤等が食品に移行すると衛生上好ましくないという観点から、有機溶剤系インクに代えて、水性インクが多用されるようになってきている。
このように、シートやフィルム等の材料として用いられるスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂には、水性インクに対する密着性が良好であり、印刷適性に優れることが要求される。熱可塑性樹脂の印刷適性を高める手法としては、例えば、熱可塑性樹脂にエポキシ基を導入する手法が検討されており、特許文献1には、オレフィン系重合体と、エポキシ基を含有するビニル系重合体からなるグラフト共重合体と、熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、塩化ビニル系樹脂に高濃度のグリシジルメタクリレートと長鎖メタクリレートの共重合体を混合した樹脂組成物が開示されている。
特開平05−078549号公報 特開平11−343375号公報
しかしながら、水性インクとの密着性が良好で、かつ引張弾性率等の機械的強度も良好な、汎用性の高い熱可塑性樹脂組成物は未だ得られてないのが現状である。
そこで、本発明においては、上述した従来技術の課題に鑑み、水性インクとの密着性が良好で、かつ機械的強度も良好である熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の熱可塑性樹脂(1)を85〜97.5質量%、特定の割合のビニル芳香族炭化水素とグリシジル(メタ)アクリレートとからなる共重合体(2)を2〜10質量%、並びに高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を総量で0.01〜0.5質量%を含む熱可塑性樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下記(a)成分を含む熱可塑性樹脂(1)を85〜97.5質量%、
ビニル芳香族炭化水素単量体50〜95質量%と、グリシジル(メタ)アクリレート5〜50質量%とからなる、共重合体(2)を2〜10質量%、並びに
高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を総量で0.01〜0.5質量%、
を含む、熱可塑性樹脂組成物;
(a)ビニル芳香族炭化水素単量体を90質量%以上含有する重合体ブロックAを少なくとも1個と、共役ジエン単量体を含有する重合体ブロックBを少なくとも1個とからなり、前記ビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が40〜95質量%である、ブロック共重合体又はその水添物。
〔2〕
前記熱可塑性樹脂(1)として、下記(b)成分を更に含む、〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物;
(b)前記(a)成分とは異なる構造を有するビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体とを有するブロック共重合体(b1)、ビニル芳香族炭化水素単量体の単独重合体(b2)、及びビニル芳香族炭化水素単量体とその他のビニル単量体とを有する共重合体(b3)、からなる群より選ばれる少なくとも1種。
〔3〕
前記共重合体(2)は、前記ビニル芳香族炭化水素単量体70〜95質量%と、前記グリシジル(メタ)アクリレート5〜30質量%とからなる共重合体である、〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
前記(b)成分の重量平均分子量(Mw)が、1万〜100万である、〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、熱可塑性シート。
〔6〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、熱可塑性フィルム。
本発明によれば、水性インクとの密着性が良好で、かつ機械的強度も良好である熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と称する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
下記(a)成分を含む熱可塑性樹脂(1)を85〜97.5質量%、
ビニル芳香族炭化水素単量体50〜95質量%と、グリシジル(メタ)アクリレート5〜50質量%とからなる共重合体(2)を2〜10質量%、並びに
高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を総量で0.01〜0.5質量%、
を含む、熱可塑性樹脂組成物;
(a)ビニル芳香族炭化水素単量体を90質量%以上含有する重合体ブロックAを少なくとも1個と、共役ジエン単量体を含有する重合体ブロックBを少なくとも1個とからなり、前記ビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が40〜95質量%である、ブロック共重合体又はその水添物、である。
(熱可塑性樹脂(1))
熱可塑性樹脂(1)のうち、(a)成分として、ビニル芳香族炭化水素単量体を90質量%以上含有する重合体ブロックAを少なくとも1個と、共役ジエン単量体を含有する重合体ブロックBを少なくとも1個とからなり、ビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が40〜95質量%である、ブロック共重合体(a1)又はその水添物(a2)について説明する。
(ブロック共重合体(a1))
重合体ブロックAは、重合体ブロックA中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が90質量%以上である重合体ブロックである。重合体ブロックAとしては、例えば、ビニル芳香族炭化水素単量体90質量%以上と共役ジエン単量体10質量%以下とを含有する共重合体ブロック;ビニル芳香族炭化水素単量体の単独重合体ブロックが挙げられる。ブロック共重合体(a1)は、重合体ブロックAを少なくとも1つ有する。
重合体ブロックBは、重合体ブロックB中の含有量が10質量%を超える値である共役ジエン単量体であることが好ましい。重合体ブロックBとしては、例えば、共役ジエン単量体が10質量%を超え、ビニル芳香族炭化水素単量体が90質量%未満である共重合体ブロック;共役ジエン単量体の単独重合体ブロックが挙げられる。重合体ブロックBが共重合体ブロックである場合、共役ジエン単量体の含有量は、10質量%を超え、100質量%未満であることが好ましい。ブロック共重合体(a1)は、重合体ブロックBを少なくとも1つ有する。
重合体ブロックA又は重合体ブロックB中に、ビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体のランダム共重合体ブロックが存在する場合、共重合されているビニル芳香族炭化水素単量体はランダム共重合体ブロック中に均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。また、該ランダム共重合体ブロックには、ビニル芳香族炭化水素単量体が均一に分布している部分やテーパー状に分布している部分が複数個存在していてもよい。
ブロック共重合体(a1)が、複数個の重合体ブロックA(又は重合体ブロックB)を有している場合には、それらの分子量、組成、種類等は、同じであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
ブロック共重合体(a1)の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法にも採用できる。例えば、特公昭36−019286号公報、特公昭43−017979号公報、特公昭48−002423号公報、特公昭49−036957号公報、特公昭57−049567号公報、特公昭58−011446号公報等に開示されているように、炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン開始剤を用いて、共役ジエン単量体とビニル芳香族炭化水素単量体をブロック共重合する方法により合成することができる。
ブロック共重合体(a1)のポリマー構造としては、例えば、下記式(i)〜(iii)のような線状ブロック共重合体が挙げられる。

A−(B−A) ・・・(i)
A−(B−A)−B ・・・(ii)
B−(A−B)n+1 ・・・(iii)

式中、Aは重合体ブロックAを表し、Bは重合体ブロックBを表し、nは1以上の整数であり、一般的には1〜5である。重合体ブロックAと重合体ブロックBとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
また、ブロック共重合体(a1)のポリマー構造としては、上記線状ブロック共重合体のほか、下記式(iv)〜(vii)のようなラジカルブロック共重合体が挙げられる。

[(A−B)−X ・・・(iv)
[(A−B)−A]−X ・・・(v)
[(B−A)−X ・・・(vi)
[(B−A)−B]−X ・・・(vii)

ここで、A、Bは式(i)〜(iii)のA、Bとそれぞれ同義であり、kは1以上の整数であり、mは3以上の整数であり、mは好ましくは3〜5である。Xは、カップリング剤の残基又は開始剤の残基を示す。ここで、カップリング剤の残基としては、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ等のカップリング剤の残基が挙げられる。開始剤の残基としては、多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基が挙げられる。
ビニル芳香族炭化水素単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、反応性が良好で、高強度となる傾向にあるため、スチレンが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
共役ジエン単量体とは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
共役ジエン単量体として1,3−ブタジエンとイソプレンを併用する場合、1,3−ブタジエンとイソプレンの総量に対するイソプレンの割合は、10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。イソプレンの含有量が10質量%以上であると、高温での成形加工時等に熱分解を起こし難く、分子量が低下しないため、外観特性や機械的強度のバランスが一層良好な熱可塑性樹脂組成物が得られる傾向にある。
ブロック共重合体(a1)を合成する工程においては、溶媒として炭化水素系溶媒を用いることができる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
ブロック共重合体(a1)を合成する工程においては、アニオン開始剤を用いることができる。アニオン開始剤としては、例えば、有機リチウム化合物として、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等を使用できる。有機リチウム化合物の具体例としては、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
ブロック共重合体(a1)を合成する工程においては、重合速度、重合した共役ジエン部のミクロ構造(シス・トランス比率、ビニルの含有比率)、共役ジエン単量体とビニル芳香族炭化水素単量体の反応比等の調整の目的で、極性化合物やランダム化剤を必要に応じて使用することができる。
極性化合物やランダム化剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
ブロック共重合体(a1)の重合温度条件は、一般的には−10〜150℃の範囲であり、好ましくは40〜120℃の範囲である。重合に要する時間は、条件によって異なるが、一般的には48時間以内で行うことができ、特に良好な条件を選定することにより1〜10時間で行うことができる。また、重合を行う際の反応系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスにより置換した状態とすることが好ましい。重合を行う際の圧力は、上記重合温度範囲において、単量体及び溶媒を液層中に維持するのに充分な圧力の範囲であればよく、特に限定されるものではない。更には、重合系内に触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が反応系に混入しないよう留意することが好ましい。
ブロック共重合体(a1)中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量は、40〜95質量%であり、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは70〜95質量%である。(a1)成分中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が40〜95質量%の範囲であると、耐衝撃性と剛性のバランスが良好で、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
ブロック共重合体(a1)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック率は、50〜100%の範囲であることが好ましい。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック率が50%以上であると、熱可塑性樹脂組成物の剛性が一層優れる傾向にあるため、好ましい。
ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック率は、ブロック共重合体の製造時において、少なくとも一部のビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体が共重合する工程における各単量体の質量、重合反応性比等を調整することにより制御できる。具体的な方法としては、(イ)ビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体との混合物を連続的に重合系に供給して重合する方法、及び/又は、(ロ)極性化合物若しくはランダム化剤を使用してビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体を共重合する方法、等が挙げられる。ここで用いる極性化合物及びランダム化剤としては、上述した極性化合物及びランダム化剤を使用できる。
なお、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック率とは、四酸化オスミウムを触媒として、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体(a1)を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得た重合体ブロックA成分(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を定量し、下記式を用いて求められる。

ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック率(%)=(上記酸化分解によって得られた重合体ブロックAの質量)/(ブロック共重合体(a1)中の全ビニル芳香族炭化水素重合体質量)×100
重合体ブロックAの数平均分子量(Mn)は、1万〜15万であることが好ましく、2万〜12万であることより好ましい。重合体ブロックAの数平均分子量(Mn)を1万〜15万とすることにより、より一層優れた剛性と耐衝撃性が得られる傾向にあり、成形加工性と透明性もより一層良好なものとなる傾向にある。
重合体ブロックAの数平均分子量(Mn)は、四酸化オスミウムを触媒として、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイドにより熱可塑性樹脂組成物を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得た重合体ブロックA成分を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することで求めることができる。具体的には、GPC用の単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの分子量との検量線を作成し、これに基づき算出することができる。
ブロック共重合体(a1)のメルトフローレート(MFR)は、成形性の観点から、1〜35g/10分であることが好ましく、2〜25g/10分であることがより好ましい。MFR(メルトフローレート)は、ASTM D1238に準拠して、200℃、荷重5kgfの条件で測定できる。
(ブロック共重合体の水添物(a2))
ブロック共重合体の水添物(a2)は、ブロック共重合体(a1)を水素添加(以下、「水添」とも略される。)することにより得られる。
ブロック共重合体(a1)の水素添加に用いる水添触媒としては、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒、例えば、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩やアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等の、いわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒、等を使用できる。具体的には、特公昭42−008704号公報、特公昭43−006636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平01−037970号公報、特公平01−053851号公報、特公平02−009041号公報等に開示されている水添触媒を使用できる。
水添触媒の好ましい例としては、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。チタノセン化合物としては、例えば、特開平08−109219号公報に記載された化合物が使用でき、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格若しくはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物としては、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
ブロック共重合体(a1)に対して水添反応を実施する際の反応温度は、0〜200℃であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましい。水添反応に使用される水素の圧力は、0.1〜15MPaであることが好ましく、0.2〜10MPaであることがより好ましく、0.3〜5MPaであることが更に好ましい。また、水添反応時間は、3分間〜10時間であることが好ましく、10分間〜5時間であることがより好ましい。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセスのいずれによっても行うことができ、これらを単独で行ってもよく、組み合わせてもよい。
ブロック共重合体の水添物(a2)において、共役ジエン単量体に基づくビニル結合の水素添加率は、特に限定されないが、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。ブロック共重合体中に、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合の結合様式で組み込まれているビニル結合のうち一部のみが水添されていてもよい。ブロック共重合体のビニル結合の一部のみを水添する場合には、水素添加率は10%以上70%未満とすることが好ましく、15%以上65%未満とすることがより好ましく、20%以上60%未満とすることが更に好ましい。
さらに、ブロック共重合体の水添物(a2)において、水素添加前の共役ジエン単量体に基づくビニル結合の水素添加率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。水素添加率を上記範囲にすることにより熱可塑性樹脂組成物の熱安定性が向上する傾向にある。
なお、ビニル結合の水素添加率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエン単量体に基づくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
また、ブロック共重合体中の水添物(a2)において、ビニル芳香族炭化水素単量体に基づく芳香族二重結合の水素添加率は、特に限定されないが、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
上記した水素添加率、及び共役ジエン単量体に基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
((b)成分)
熱可塑性樹脂(1)は、上述したブロック共重合体(a1)又はその水添物(a2)((a)成分)以外に、(b)上記(a)成分とは異なる構造を有するビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体とを有するブロック共重合体(b1)、ビニル芳香族炭化水素単量体の単独重合体(b2)、及びビニル芳香族炭化水素単量体とその他のビニル単量体とを有する共重合体(b3)、からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含有することが好ましい。
(b)成分の総量に対する(a)成分の総量の組成比((a)成分/(b)成分)は、25/75〜100/0であることが好ましく、40/60〜70/30であることがより好ましい。
(b1)成分とは、ビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体とからなるブロック共重合体であって、(a)成分に該当しないものをいう。例えば、ブロック共重合体を構成する共役ジエン単量体やビニル芳香族炭化水素単量体の組成等が異なるブロック共重合体が挙げられる。(b1)成分のビニル芳香族炭化水素単量体としては、(a)成分のビニル芳香族炭化水素単量体として上述したものを使用できる。(b1)成分の共役ジエン単量体としては、(a)成分の共役ジエン単量体として上述したものを使用できる。具体的には、(a)成分と異なる構造を有する、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水添物等が挙げられる。
(b2)成分としては、例えば、ポリスチレンが挙げられる。
(b3)成分としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂(MS)、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS)等が挙げられる。これらの中でも、強度等の観点から、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂(MS)、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)が好ましい。
上記(b)成分の重量平均分子量(Mw)は、強度と加工性の観点から、1万〜100万であることが好ましく、3万〜50万であることがより好ましく、5万〜30万であることが更に好ましい。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。具体的には、GPC用の単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの分子量との検量線を作成し、これに基づき算出することができる。
上述した成分を含有する熱可塑性樹脂(1)の数平均分子量(Mn)は、1000以上であることが好ましく、5000〜500万であることがより好ましく、1万〜100万であることが更に好ましい。
なお、上記熱可塑性樹脂(1)は、上述した(a)成分を1種含むものであればよいが、例えば、2種以上の(a)成分を含んでもよいし、1種の(a)成分と1種以上の(b)成分を含んでもよいし、1種以上の(a)成分と1種の(b)成分を含んでもよいし、1種以上の(a)成分と1種以上の(b)成分を含んでもよい。
(共重合体(2))
共重合体(2)は、ビニル芳香族炭化水素単量体50〜95質量%とグリシジル(メタ)アクリレート5〜50質量%との共重合体である。かかる共重合体(2)を用いることにより、(a)成分に対して良好な分散性を有し、かつ熱可塑性樹脂組成物の水性インクとの密着性を優れたものにできる。
共重合体(2)におけるビニル芳香族炭化水素単量体の含有量は、50〜95質量%であればよく、相溶性の観点から、70〜95質量%であることが好ましく、85〜95質量%であることがより好ましい。共重合体(2)におけるグリシジル(メタ)アクリレートの含有量は、5〜50質量%であればよく、(a1)成分や(a2)成分に対する相溶性がより均一になる観点から、5〜30質量%であることが好ましく、得られる成形体の外観がより良好であるという観点から、5〜15質量%であることがより好ましい。共重合体(2)としては、ビニル芳香族炭化水素単量体70〜95質量%と、グリシジル(メタ)アクリレート5〜30質量%とからなる共重合体であることが好ましい。
共重合体(2)の重量平均分子量(Mw)は、5000〜30万であることが好ましく、5万〜20万であることがより好ましく、5万〜10万であることが更に好ましい。共重合体(2)の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、水性インクとの密着性が一層良好となるとともに、剛性と伸びのバランスも一層良好になるため好ましい。
(高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステル)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
高級脂肪酸とは、炭素数10以上、好ましくは12以上の脂肪族又は脂環族のカルボン酸を意味する。高級脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、ロジン酸、不均化ロジン酸、エルカ酸、リシノール酸、アセチルリシノール酸等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはステアリン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸、不均化ロジン酸が挙げられる。
高級脂肪酸塩とは、これら高級脂肪酸の塩をいい、例えば、これら高級脂肪酸の金属塩が挙げられる、金属としては、例えば、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛、カルシウム、マグネシウムが好ましい。
高級脂肪酸エステルとは、これら高級脂肪酸と、1価又は多価アルコールとの脱水縮合物をいう。高級脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロビルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、アニルアルコール、クロチルアルコール等の低級1価アルコール;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、あるいはそれらの異性体アルコール、;グリセリン,グリセロール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ペンタエリトリトール等の多価アルコールとの脱水縮合によって得られるエステルであり、その一部をアセチル化したもの等が挙げられる。
これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を利用できる。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が適用できる。これらの中でも、生産性、良混練性の観点から、押出機による溶融混練法が好ましい。
溶融混練温度は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(1)及び共重合体(2)の融点、溶融粘度、熱劣化等を考慮して、100〜350℃であることが好ましく、150〜350℃であることがより好ましく、180〜330℃であることが更に好ましい。
また、溶融混練時間(又は溶融混練工程における材料の平均滞留時間)は、混練度合い(分散性)、生産性、並びに熱可塑性樹脂(1)及び共重合体(2)の劣化等を考慮して、0.2分間〜60分間であることが好ましく、0.5分間〜30分間であることがより好ましく、1分間〜20分間であることが更に好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は成形体とすることができる。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体は、多様な機械的性能を有しつつ、水性インクの印刷性に優れた成形体である。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形においては、一般に熱可塑性樹脂の成形に用いられている公知の方法、例えば射出成形、Tダイ、異型押出等の押出成形、ブロー成形、真空成形、インフレーション成形、テンター、ストレッチャーによる延伸加工等によるフィルム成形、シート成形等の方法によって成形することができる。
成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、フィルム状やシート状にして用いることが好ましい。よって、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、これを成形してなる熱可塑性シートや熱可塑性フィルムとすることが好ましい。特に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を延伸加工により成形すると、延伸時の厚みむらの少ないシートやフィルムに成形することができるため好ましい。
また、本実施形態とは別なる熱可塑性樹脂組成物からなる基材層と、この基材層の少なくとも一方の表面に形成された、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる層とを少なくとも有する、積層体とすることもできる。この積層体は、上記基材層の片面に本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる層を形成することで得ることができる。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる層を熱可塑性樹脂の基材層の表面に形成する方法は、特に限定されず、多層成形に用いられる一般の方法、例えば、2色又は2種類の樹脂から成る一体の製品を作る成形法(2色成形法);多層Tダイを用いる方法;予め本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムやシートを作製しておき、これを基材層と貼り合わせる、熱融着する、或いは接着層を介して接着する方法等が挙げられる。積層体については、上記以外に様々な機能を有する層を更に積層させることで多様な機械的性能を付与することもできる。このような積層体は、基材層を有することにより得られる良好な機械物性と、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより得られる効果と、の両方を同時に満足することができる。
以下、本発明を、実施例と比較例を挙げて具体的な説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。まず、実施例及び比較例に適用した物性の測定方法、評価方法について以下に示す。
I.ブロック共重合体(a1)の組成及び構造評価
(1)ブロック共重合体(a1)のスチレン含有量
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
(2)ブロック共重合体(a1)のスチレンブロック率
四酸化オスミウムを触媒としてジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分を定量し、下記の式から求めた。

スチレンブロック率(%)=(ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分の質量)/(ブロック共重合体(a1)のスチレン含有量)×100
(3)メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238に準拠し、200℃、荷重5kgの条件で測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソ−(株)製、「HLC8220GPC」)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、カラム温度40℃で測定した。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作製した検量線から求めた。
II.使用した原材料
(1)ブロック共重合体(P−1)
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウム0.080質量部を添加し、80℃で35分間重合させた(工程(i))。次に、スチレン33質量部と1,3−ブタジエン17質量部を含むシクロヘキサン溶液を、反応溶液に45分間連続的に添加して80℃で重合した(工程(ii))。続いて、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液を、反応溶液に25分間連続的に添加して80℃で重合した後、80℃で10分間保持した(工程(iii))。
その後、重合器にn−ブチルリチウムに対して0.9倍モルのメタノールを添加して、重合を停止させた。そして、ブロック共重合体100質量部に対して、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート0.5質量部を添加した後、脱溶媒してブロック共重合体(P−1)を得た。
ブロック共重合体(P−1)は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=66/34(質量比)である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体である。
得られたブロック共重合体(P−1)は、数平均分子量85000、スチレン含有量83質量%、スチレンブロック率80質量%、メルトフローレート6g/10分(MFR;ASTM D1238に準拠、200℃、荷重5kg)であった。
(2)ブロック共重合体(P−2)
ブロック共重合体(P−1)と同様の手法を用い、工程(i)でスチレン10質量部、工程(ii)でスチレン22質量部と1,3−ブタジエン58質量部、工程(iii)でスチレン10質量部を重合し、ブロック共重合体(P−2)を得た。
ブロック共重合体(P−2)は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=27.5/72.5(質量比)である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体である。
(3)ブロック共重合体(P−3)
ブロック共重合体(P−1)と同様の手法を用い、工程(i)でスチレン20質量部、工程(ii)でスチレン40質量部と1,3−ブタジエン6質量部、工程(iii)でスチレン34質量部を重合し、ブロック共重合体(P−3)を得た。
ブロック共重合体(P−2)は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=87/13(質量比)である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体である。
(4)ブロック共重合体(P−4)
ブロック共重合体(P−1)と同様の手法を用い、工程(i)でスチレン10質量部、工程(ii)でスチレン5質量部と1,3−ブタジエン65質量部、工程(iii)でスチレン20質量部を重合し、ブロック共重合体(P−4)を得た。
ブロック共重合体(P−4)は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=7/93(質量比)である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0(質量比)である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体である。
n−ブチルリチウムの添加量を少なくすると得られるブロック共重合体の分子量は大きくなる傾向があり、工程(i)及び(iii)のスチレン添加量に対し、工程(ii)のスチレン添加量を増やすと、得られるブロック共重合体中のスチレンブロック率は低下する傾向があることが確認された。
表1に、ブロック共重合体(P−1)〜(P−4)の物性を示した。
(5)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製、「ポリスチレン685」)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体(PSジャパン(株)製、「SC004」;スチレン82質量%、ブチルアクリレート18質量%)を用いた。
(6)ポリ塩化ビニル樹脂
ポリ塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)製、「TK−800」)94質量部に、ジオクチルフタレート(DOP)6質量部を配合したもの(DOP配合物)を用いた。
(7)グリシジル基含有共重合体
5種類のグリジジル基含有共重合体(日油(株)製、「マープルーフG1005S」、「マープルーフG1010S」、「マープルーフG0115S」、「マープルーフG0250S」、「マープルーフG0150M」、「マープルーフG01100」;以下、それぞれGMA1〜6という。)を用いた。表2に、これらの物性を示した。
III.試料の作製と評価
(1)評価試料の作製
各実施例及び各比較例において、Tダイ装着押し出し機((株)池貝製、「FS40−36V型」;バレル径40mmφ、長さ/直径比(L/D)=36、幅400mmTダイ装着、2段ダルメージ式スクリュー)のホッパーに、表3に示す配合にて各原料ペレットを投入し、押し出して、平均厚み0.25mmのシートを得た。得られたシートを、テンター延伸装置(市金工業(株)製、「SF−625」)を用い、85℃で幅方向に5倍延伸し、平均厚み0.05mm、幅1mの延伸フィルムを作製した。得られたシート及び延伸フィルムについて、下記項目で記載する手法に基づいて、引張弾性率、濡れ指数、水性インクとの密着性、延伸フィルムの厚み精度を測定した。
(2)引張り弾性率
ASTM D638に準拠し、ミネベア(株)製、「TG−5KN型試験機」を用いて、試験速度5mm/分で測定した。
(3)濡れ指数
JIS K6768に準拠して、濡れ指数試薬にて測定した。
(4)水性インクとの密着性
グラビアミニ校正機((株)日商グラビア製)の印刷機により、水性グラビアインク(サカタインクス(株)製、「スーパーエコピュア」)を使用して上記において得られたシート表面を印刷した。印刷に際して、水性グラビアインク用薄め液「スーパーエコピュア用薄め液」(サカタインクス(株)製)を、水性グラビアインク/薄め液=100/50の質量比率でブレンドしたものを使用した。印刷されたシート(印刷シート)について、水性グラビアインクとの密着性を評価した。
印刷シートを、23℃、24時間放置後、長さ100mmのセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製、「CT−18」又は「LP−18」;いずれも粘着力4.01N/cm)を密着させた後、斜め30度の角度方向に向けて瞬時にセロハン粘着テープを印刷面から剥離して、剥離後の印刷面の状態を観察した。剥離後の印刷面の100mm中、印刷インクが剥がれた長さに基づき以下基準で判定した。
○:0mm/100mm(完全密着)以上20mm/100mm未満
△:20mm/100mm以上50mm/100mm未満
×:50mm/100mm以上100mm/100mm(完全剥離)以下
(5)ヘイズ値
JIS K7105に準拠し、ヘイズメータ(日本電色(株)、「1001DP」)を用いて、シートのヘイズ値を測定し、以下の基準で判定した。
〇:30%未満
△:30%以上〜50%未満
×:50%以上
(6)延伸フィルムの厚み精度
延伸フィルムを延伸方向に平行にカットし、カットした端から5cm置きに厚みを測定し、その最大厚みと最小厚みの差を算出した。
[実施例1〜8及び比較例1〜7]
表3及び表4に、実施例1〜11及び比較例1〜7の結果を示す。
以上より、実施例1〜11は、濡れ指数が低下することなく、優れた機械的強度が維持されており、水性インクとの密着性に優れ、かつ、機械的物性、透明性にも優れていることが確認された。一方、比較例1〜7では、水性インクとの密着性、機械的物性及び透明性の少なくともいずれかが劣っていることが確認された。
実施例1と比較例1、2とを比較すると、グリシジル基含有共重合体を配合していない比較例1、2は、水性インクとの密着性に劣ることが確認された。
実施例1と比較例3とを比較すると、グリシジル基含有共重合体を配合しているものの、高級脂肪酸を配合していない比較例3は、水性インクとの密着性に劣ることが確認された。
比較例4ではグリシジル基含有共重合体にアクリル系共重合体を用いており、熱可塑性樹脂(1)との相溶性が悪いため、透明性やフィルム厚み精度が悪いだけでなく、水性インクとの密着性にも劣ることが確認された。
実施例1と比較例6、7とを比較すると、ブロック共重合体(P−1)をブロック共重合体(P−1)にGMA1とステアリン酸を配合した実施例1は、ブロック共重合体を配合していない比較例6,7と比較して、水性インクとの密着性や透明性に優れるだけでなく、フィルム厚み精度も良好であることが確認された。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、包装用フィルムや飲料容器等に被せる熱収縮性フィルムやシート材料等としての利用できる。

Claims (6)

  1. 下記(a)成分を含む熱可塑性樹脂(1)を85〜97.5質量%、
    ビニル芳香族炭化水素単量体50〜95質量%と、グリシジル(メタ)アクリレート5〜50質量%とからなる、共重合体(2)を2〜10質量%、並びに
    高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を総量で0.01〜0.5質量%、
    を含む、熱可塑性樹脂組成物;
    (a)ビニル芳香族炭化水素単量体を90質量%以上含有する重合体ブロックAを少なくとも1個と、共役ジエン単量体を含有する重合体ブロックBを少なくとも1個とからなり、前記ビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が40〜95質量%である、ブロック共重合体又はその水添物。
  2. 前記熱可塑性樹脂(1)として、下記(b)成分を更に含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物;
    (b)前記(a)成分とは異なる構造を有するビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体とを有するブロック共重合体(b1)、ビニル芳香族炭化水素単量体の単独重合体(b2)、及びビニル芳香族炭化水素単量体とその他のビニル単量体とを有する共重合体(b3)、からなる群より選ばれる少なくとも1種。
  3. 前記共重合体(2)は、前記ビニル芳香族炭化水素単量体70〜95質量%と、前記グリシジル(メタ)アクリレート5〜30質量%とからなる共重合体である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(b)成分の重量平均分子量(Mw)が、1万〜100万である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、熱可塑性シート。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、熱可塑性フィルム。
JP2013070028A 2013-03-28 2013-03-28 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム Pending JP2014193940A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013070028A JP2014193940A (ja) 2013-03-28 2013-03-28 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013070028A JP2014193940A (ja) 2013-03-28 2013-03-28 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014193940A true JP2014193940A (ja) 2014-10-09

Family

ID=51839407

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013070028A Pending JP2014193940A (ja) 2013-03-28 2013-03-28 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014193940A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018180427A1 (ja) * 2017-03-29 2018-10-04 日本ゼオン株式会社 樹脂組成物、並びに、成形体およびその製造方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61164506A (ja) * 1985-01-16 1986-07-25 大同紙工印刷株式会社 うちわ
JPH0598051A (ja) * 1991-10-09 1993-04-20 Asahi Chem Ind Co Ltd ブロツク共重合体ペレツト
JP2002166509A (ja) * 2000-12-04 2002-06-11 Denki Kagaku Kogyo Kk 熱収縮性多層フィルム
JP2002210901A (ja) * 2001-01-22 2002-07-31 Tohcello Co Ltd ポリオレフィン多層フィルム
JP2004091751A (ja) * 2002-09-04 2004-03-25 Denki Kagaku Kogyo Kk 熱可塑性樹脂組成物
JP2010024401A (ja) * 2008-07-23 2010-02-04 Mitsubishi Plastics Inc 熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、および、該ラベルを装着した容器
JP2011184474A (ja) * 2010-03-04 2011-09-22 Asahi Kasei Chemicals Corp 水性インク印刷性に優れた樹脂組成物

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61164506A (ja) * 1985-01-16 1986-07-25 大同紙工印刷株式会社 うちわ
JPH0598051A (ja) * 1991-10-09 1993-04-20 Asahi Chem Ind Co Ltd ブロツク共重合体ペレツト
JP2002166509A (ja) * 2000-12-04 2002-06-11 Denki Kagaku Kogyo Kk 熱収縮性多層フィルム
JP2002210901A (ja) * 2001-01-22 2002-07-31 Tohcello Co Ltd ポリオレフィン多層フィルム
JP2004091751A (ja) * 2002-09-04 2004-03-25 Denki Kagaku Kogyo Kk 熱可塑性樹脂組成物
JP2010024401A (ja) * 2008-07-23 2010-02-04 Mitsubishi Plastics Inc 熱収縮性フィルム、熱収縮性ラベル、および、該ラベルを装着した容器
JP2011184474A (ja) * 2010-03-04 2011-09-22 Asahi Kasei Chemicals Corp 水性インク印刷性に優れた樹脂組成物

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018180427A1 (ja) * 2017-03-29 2018-10-04 日本ゼオン株式会社 樹脂組成物、並びに、成形体およびその製造方法
JPWO2018180427A1 (ja) * 2017-03-29 2020-02-06 日本ゼオン株式会社 樹脂組成物、並びに、成形体およびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4530669B2 (ja) ブロック共重合体及びその組成物
JP5534642B2 (ja) ブロック共重合体水添物、又はそのシート、フィルム
JP4838254B2 (ja) ブロック共重合体及び熱収縮性フィルムの製造方法
JP5225704B2 (ja) ビニル芳香族炭化水素系樹脂シート
JP4919713B2 (ja) ブロック共重合体水添物組成物、そのシート・フィルム及び熱収縮性フィルム
JP2005105032A (ja) 重合体組成物からなる熱収縮性フィルム
JP4651539B2 (ja) キャリアテープ用シート
JP4425602B2 (ja) ブロック共重合体水添物、又はフィルム
JP2007038586A (ja) 熱収縮性積層フィルム
JP5133289B2 (ja) 熱収縮性フィルム
JP2014193940A (ja) 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性シート及びフィルム
JP4381747B2 (ja) ブロック共重合体及びその熱収縮性フィルム
JP5543805B2 (ja) 水性インク印刷性に優れた樹脂組成物
JP5057752B2 (ja) 熱収縮性フィルム
JP5450299B2 (ja) ブロック共重合体含有樹脂組成物および該樹脂組成物から得られるシートまたはフィルム
JP2010234547A (ja) 多層熱収縮性フィルム
JP5057753B2 (ja) 熱収縮性フィルム
JP2007008984A (ja) ブロック共重合体水添物、ブロック共重合体水添物組成物及びそれらの熱収縮性フィルム
JP6001286B2 (ja) 中空プレート
JP4761690B2 (ja) 熱収縮性フィルム
JP2011079238A (ja) 熱収縮性積層フィルム
JP2012041431A (ja) 水性インク密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160325

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20160401

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160523

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170125

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170713