JP5543805B2 - 水性インク印刷性に優れた樹脂組成物 - Google Patents
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Description
一方において、グラビア印刷等を行う印刷業界においては、有機溶剤の放出に起因する環境汚染を防止し、かつ作業環境の改善を図る観点から、有機溶剤系インクの使用を控える傾向が高まっている。
即ち、本発明は以下のとおりである。
前記熱可塑性樹脂(1)が下記(a)から選ばれる少なくとも1つである、熱可塑性樹脂組成物。
(a)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエンを有する重合体ブロックBとからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が40〜95質量%のブロック共重合体又はその水添物
例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49567号公報、特公昭58−11446号公報等に開示されているように、炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン開始剤を用いて、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素をブロック共重合する方法により合成することができる。但し、本実施の形態においては、各構成ポリマーの製造条件を後述のように設定するものとする。
A−(B−A)n・・・(a)
A−(B−A)n−B・・・(b)
B−(A−B)n+1・・・(c)
ここで、Aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを主体とする重合体ブロックである。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。nは1以上の整数であり、一般的には1〜5である。
[(A−B)k]m−X・・・(d)
[(A−B)k−A]m−X・・・(e)
[(B−A)k]m−X・・・(f)
[(B−A)k−B]m−X・・・(g)
1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
具体的には、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
極性化合物やランダム化剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
重合に要する時間は、条件によって異なるが、一般的には48時間以内で行うことができ、特に良好な条件を選定することにより1〜10時間で行うことができる。
また、重合を行う際の系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスにより置換した状態とすることが好ましい。
重合を行う際の圧力は、上記重合温度範囲において、モノマー及び溶媒を液層に維持するのに充分な圧力の範囲であればよく、特に制限されるものではない。
更には、重合系内に触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意する。
具体的な方法としては、(イ)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの混合物を連続的
に重合系に供給して重合する、及び/又は、(ロ)極性化合物若しくはランダム化剤を使用してビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合する、等の方法が挙げられる。
として、ジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化
分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1
,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成
分(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を定量し、下記式を用いて求められる。
炭化水素重合体ブロックの質量%
ブロック率(%)= ――――――――――――――――― ×100
ブロック共重合体(1)の全ビニル
芳香族炭化水素の質量%
すなわち、GPC用の単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>講談社発行」)に従って算出することができる。
ブロック共重合体の水添物(1)は、上記で得られたブロック共重合体(1)に対して水素添加(以下、「水添」とも略される。)が行われることにより得られる。
具体的には、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に開示されている水添触媒を適用できる。
チタノセン化合物としては、例えば、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用でき、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格若しくはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。
また、還元性有機金属化合物としては、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
水添反応に使用される水素の圧力は、0.1〜15MPaが好ましく、0.2〜10MPaがより好ましく、0.3〜5MPaが更に好ましい。
また、水添反応時間は、3分〜10時間が好ましく、10分〜5時間がより好ましい。
水添反応は、バッチプロセス、連続プロセスによって行うことができ、これらを単独で行ってもよく、組み合わせてもよい。
更には、ブロック共重合体の水添物(1)において、水素添加前の共役ジエンに基づくビニル結合の水素添加率は、85%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることが更に好ましい。水素添加率を上記範囲にすることにより熱安定性の向上が図られる傾向にある。
なお、上記ビニル結合の水素添加率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエンに基づくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
水素添加率、及び共役ジエン化合物に基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
上述したブロック共重合体又はその水添物にその他の熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも一種の成分を配合することにより、樹脂組成物(a)が得られる。
本発明における樹脂組成物(a)とは、上述したブロック共重合体又はその水添物のみの場合も含む。
上述したブロック共重合体又はその水添物とその他の熱可塑性樹脂の組成比は、ブロック共重合体又はその水添物/その他の熱可塑性樹脂が、25/75〜100/0が好ましく、40/60〜70/20が更に好ましい。
例えば、上記において説明した変性ブロック共重合体又はその水添物とは異なる構造の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体樹脂、ポリスチレン等のビニル芳香族化合物重合体樹脂、ビニル芳香族化合物とその他のビニルモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)との共重合樹脂が挙げられる。
なお、上記熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの樹脂の中でも、透明性が得られるものとして、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体樹脂、ポリスチレン等のビニル芳香族化合物重合体樹脂、ビニル芳香族化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合樹脂が特に好ましい。
本発明に用いられる(b)成分は、(a)成分のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAとの良好な分散性、水性インクとの密着性を考慮するとビニル芳香族炭化水素とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素含有量が50〜95質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、85〜95質量%がさらに好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの含有量は5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%が均一な相溶性が得られるためより好ましく、5〜15質量%が外観のより綺麗な成形体が得られるため、更に好ましい。また、同様の理由から、その重量平均分子量は、5000〜300000が好ましく、5〜20万がさらに好ましく、5万〜10万が水性インキとの密着性が良好であり、剛性、伸びのバランスも得られるため、より好ましい。
上述したブロック共重合体組成物を製造する方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を利用できる。
例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が適用できる。特に、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
特に延伸加工による成形をする場合には、本発明の樹脂組成物を用いることで、延伸時の厚みむらの少ないフィルムに成形することができる点で望ましい。
実施例及び比較例に適用した物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
(1)ビニル芳香族炭化水素系共重合体のスチレン含有量
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
四酸化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分を定量し、下記の式から求めた。
(P−1)〜(P−9)それぞれのビニル芳香族
炭化水素重合体ブロックの質量%
スチレンブロック率(%)= ――――――――――――――――― ×100
(P−1)〜(P−9)それぞれの全ビニル
芳香族炭化水素の質量%
ASTM D1238に準拠し、200℃、荷重5kgの条件で測定した。
GPC装置(HLC8220GPC;東ソ−(株)製)を用い、溶媒としてテトラヒド
ロフランを用い、カラム温度40℃で測定した。
重量平均分子量は、重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線から求めた。
株式会社 池貝製Tダイ装着押し出し機(FS40−36V型/バレル径40mmφ、L/D=36、幅400mmTダイ装着、2段ダルメージ式スクリュー)のホッパーに(表−3)に示す配合にて各原料ペレットを投入した。
得られたシートを、市金工業株式会社製テンター延伸装置(SF−625)を用い、85℃で5倍延伸し、幅1mの延伸フィルムを作成した。
得られたシート、延伸フィルムについて、下記項目で記載する手法に基いて、引張弾性率、濡れ指数、水性インクとの接着性、延伸フィルムの厚み精度を測定した。
ASTM D638に準拠し、ミネベア株式会社製TG−5KN型試験機を用いて、試験速度5mm/minで測定した。
JIS K6768に準拠して、濡れ指数試薬にて測定した。
グラビアミニ校正機(株式会社日商グラビア製)の印刷機により、水性グラビアインク(スーパーエコピュア:サカタインクス(株)社製)を使用、同社製スーパーエコピュア用薄め液をスーパーエコピュア/薄め液=100/50の質量比率でブレンドして、作製した樹脂シートの表面を印刷した。JIS 5400、5600に準拠したクロスカット法による塗膜密着性評価を行い、水性グラビアインクとの接着性を評価した。
印刷した樹脂シートを、23℃、24時間放置後、インクで印刷された面を1mm間隔で100マスになるよう刃で傷を樹脂シートまで入れ、ニチバンの粘着テープ(CT−18又はLP−18、粘着力4.01N/cm)を密着させ、斜め30度の角度方向に、瞬時に印刷面を剥離させた。剥がれた印刷インク個数で以下のように判定した。
○:0/100(完全密着)以上20/100未満、
△:20/100以上50/100未満
×:50/100以上100/100以下
シートをJIS K7105に準拠し、日本電色株式会社製ヘイズメータ(1001DP)を用いた。
ヘイズの良否は、以下のように判定した。
〇:30%未満
△:30%以上〜50%未満
×:50%以上
延伸フィルムを延伸方向に平行にカットし、端から5cm置きに厚みを測定し、最大厚みと最小厚みの差を算出した。
(B)使用した原材料
(1)ブロック共重合体(P−1)
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で
i)スチレン25質量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.080質量部を添加し、80℃で20分間重合した。
次にii)スチレン14質量部と1,3−ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液を60分間連続的に添加して80℃で重合した。
次にiii)スチレン29質量部を含むシクロヘキサン溶液を25分間連続的に添加して80℃で重合した後、80℃で10分間保持した。その後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.9倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.5質量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体(a−1)を得た。ブロック共重合体a−1は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=30/70質量比である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体である。また、得られたブロック共重合体a−1は、数平均分子量85000、スチレン含有量は70質量%、ブロック率は80質量%、また、メルトフローレートは6g/10分(ASTM D1238に準拠、200℃、荷重5kg)であった。
ブロック共重合体(P−1)と同様の手法を用い、(P−1)のi)、ii)、iii)にて添加するスチレン、1,3−ブタジエンの添加量及び、n−ブチルリチウムの添加量を適宜コントロールすることで、ブロック共重合体(P−2〜P−5)を作成した。
尚、n−ブチルリチウムの添加量を少なくすると分子量は大きくなる。i)、iii)で添加するスチレン量に対し、ii)で添加するスチレン量を増やすとスチレンブロック率は低下する。
上記のようにして作製したブロック共重合体(P−1)〜(P−5)の、スチレン含有量、スチレンブロック率、メルトフローレートについて、下記表1に示す。
熱可塑性樹脂として、ポリスチレン685(PSジャパン株式会社製)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体(PSジャパン株式会社製 ポリスチレンSC004)を用いた。
信越化学工業株式会社製:TK−800にジオクチルフタレート(DOP)6重量部を混合したものをを用いた。(実施例の表には、標記上、DOP配合物をTK−800と記載した)
グリシジルメタクリレート共重合体として、日油株式会社製、マープルーフGシリーズを用いた。(GMA1〜GMA6)
商品名、グリシジルメタクリレート含有量、グリシジルメタクリレートとの共重合相手モノマー、重量平均分子量を(表−2)に記載した。
結果を(表3)に示した。
また、ポリ塩化ビニルにビニル芳香族炭化水素とグリジルメタクリレート共重合体を配合した場合に延伸フィルムの厚み精度が悪化するのに対し(比較例7と比較例8)、本発明のブロック共重合体にビニル芳香族炭化水素とグリジルメタクリレート共重合体の配合物を混合したものは、フィルム厚み精度度が良好になる結果が得られた。(実施例1〜10と比較例1、比較例5〜6)
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂(1)を90〜98質量%、ビニル芳香族炭化水素70〜95質量%とグリシジル(メタ)アクリレート5〜30質量%からなる共重合体(2)を2〜10質量%、含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(1)が下記(a)から選ばれる少なくとも1つである、熱可塑性樹脂組成物。
(a)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエンを有する重合体ブロックBとからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が40〜95質量%のブロック共重合体又はその水添物 - 前記熱可塑性樹脂(1)がさらに下記(b)を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(b)(a)とは異なる構造の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体樹脂、ビニル芳香族化合物重合体樹脂、ビニル芳香族化合物とその他のビニルモノマーとの共重合体樹脂から選ばれる群からなる少なくとも1種の熱可塑性樹脂 - 請求項1及び2のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる熱可塑性樹脂シート。
- 請求項1及び2のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる熱可塑性樹脂フィルム。
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