JP4527894B2 - 粉末状重合体組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粉末状重合体組成物および該粉末状重合体組成物を用いてなるスラッシュ成形体に関する。より詳細には、本発明は、スラッシュ成形、圧縮成形、回転成形、各種粉体塗装などのような、粉末を用いて行われる成形技術や塗装技術において好適に用いることができ、それらの成形や塗装によって、耐傷つき性および耐摩耗性に優れ、しかも柔軟性、力学的強度およびゴム弾性に優れる成形体や皮膜を製造することのできる熱可塑性の粉末状重合体組成物、および該粉末状重合体組成物よりなるスラッシュ成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スラッシュ成形に当たっては、安価で、スラッシュ成形性に優れ、しかも柔軟性および耐傷つき性に優れる表皮材(成形体)を形成し得ることから、ポリ塩化ビニル樹脂が汎用されている。ポリ塩化ビニル樹脂を用いるスラッシュ成形においては、ポリ塩化ビニル樹脂のプラスチゾルまたは軟質粉末を金型の内側に付着させ、溶融ゲル化して冷却後に成形体を型から抜き取る方法が一般に採用されており、そのようなスラッシュ成形技術は、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、座席シートなどの自動車内装材、ソファーや椅子などの家具類用の表皮材の製造に多く利用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時にダイオキシンなどの有害物質を発生し、またそこで用いられている可塑剤が環境ホルモンや発癌物質などとして作用する疑いがあり、環境汚染や安全性の点で問題がある。
【0003】
そのため、近年、ポリ塩化ビニル樹脂の代りに、ハロゲンや可塑剤を含まない熱可塑性エラストマー組成物を用いてスラッシュ成形を行うことが提案されている。
例えば、特開平10−182900号公報には、ポリプロピレン樹脂、水添(水素添加)スチレンブタジエンゴム、プロセスオイル、および吸油性エラストマー(スチレン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系熱可塑性エラストマーなど)を含有する粉末スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。また、この公報には、該熱可塑性エラストマー組成物に有機過酸化物を添加し加熱下に混練して、有機過酸化物によってポリプロピレン樹脂の主鎖を切断してポリプロピレン樹脂を低分子化することにより、組成物の溶融流動性を向上させてスラッシュ成形性を向上させることが記載されている。
しかしながら、この公報に記載されている粉末スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物は、スラッシュ成形性において改善が見られるものの、成形体の柔軟性、ゴム弾性、力学的強度、耐傷つき性および耐摩耗性の点では十分に満足にゆくものではない。
【0004】
また、特開平10−279738号公報には、スチレン系熱可塑性エラストマー、密度の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体、および結晶ポリプロピレン樹脂を含有する粉末状熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。しかしながら、この熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形体(スラッシュ成形体など)では、耐傷つき性および耐摩耗性と、柔軟性、ゴム弾性および風合とをバランス良く兼備させることが困難である。すなわち、耐傷つき性および耐摩耗性を向上させようとすると、柔軟性およびゴム弾性が低下して風合が不良になり、一方柔軟性、ゴム弾性および風合を向上させようとすると、耐傷つき性および耐摩耗性が低下する。
【0005】
さらに、特開2000−302918号公報には、水添スチレンブタジエンランダム共重合体ゴム、結晶性ポリプロピレン樹脂、内部離型剤、吸油性エラストマー、プロセスオイルおよび非晶性ポリプロピレン樹脂を含有するスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。そして、この公報にも、有機過酸化物を添加して該エラストマー組成物を加熱混練することにより、有機過酸化物でポリプロピレン樹脂の主鎖を切断して低分子化して、組成物の溶融流動性を向上させることが記載されている。
しかしながら、この公報に記載されているスラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物から得られるスラッシュ成形体は、前記した特開平10−182900号公報に記載されている粉末スラッシュ成形用熱可塑性エラストマー組成物から得られるスラッシュ成形体と同様に、柔軟性、ゴム弾性、耐傷つき性および耐摩耗性の点で未だ十分に満足のゆく特性を備えていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融流動性が良好でスラッシュ成形などの成形を行う際の成形性に優れており、しかも耐傷つき性および耐摩耗性に優れていて摩擦や接触を高頻度で受けても損傷しにくく、その上柔軟性、ゴム弾性、風合、外観に優れる高品質の成形体を製造することのできる粉末状の熱可塑性エラストマー組成物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記の粉末状熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが研究を続けた結果、特定の芳香族ビニル化合物系熱可塑性エラストマー、所定の密度を有する特定のオレフィン系エラストマー、軟化剤および有機過酸化物を特定の割合で配合し、それを動的架橋した後、更に平均粒径800μm以下の粉末状にすることによって、動的架橋された粉末状の熱可塑性エラストマー組成物を製造することができた。そして、それにより得られた粉末状の熱可塑性エラストマー組成物の物性およびそれから得られる成形体の物性などについて検討したところ、該粉末状の熱可塑性エラストマー組成物は、溶融流動性が良好でスラッシュ成形などを行う際の成形性に優れていること、更に該組成物から得られる成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に優れていて摩擦や接触を高頻度で受けても損傷しにくいこと、しかも柔軟性、ゴム弾性、風合、外観にも優れることを見出した。
また、本発明者らは、前記の動的架橋された粉末状の熱可塑性エラストマー組成物にさらに滑剤を配合すると、該組成物から得られる成形体の表面摩擦抵抗が減少して、耐傷つき性および耐摩耗性が一層向上することを見出した。
さらに、本発明者らは、前記の動的架橋された粉末状熱可塑性エラストマー組成物の相構造が、オレフィン系エラストマーからなるマトリックス相中に、芳香族ビニル化合物系熱可塑性エラストマーの粒子が微細に分散した海島型の相構造になっていて、それによって、成形体において、適度な柔軟性およびゴム弾性という特性と、高度な耐傷つき性および耐摩耗性という特性とが発現されることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上および共役ジエンからなる水添又は非水添の重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体(a)、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとを共重合してなる密度0.88〜0.92g/cm3のオレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)びに有機過酸化物(d)下記の数式《1》《3》を満足する量で含有し、更に滑剤(e)を下記の数式《4》を満足する量で含有する架橋性の重合体組成物を動的架橋してなり、且つ平均粒径が800μm以下であることを特徴とする粉末状重合体組成物である。
【0009】
【数3】
0.66≦Wb/Wa≦4 《1》
0≦Wc/(Wa+Wb+Wc)≦0.25 《2
0.001≦Wd/(Wa+Wb+Wc)≦0.01 《3》
[式中、Wa、Wb、WcおよびWdは、動的架橋する前の重合体組成物に含まれるブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)および有機過酸化物(d)の各成分の含有量(質量)を示す。]
【0010】
【数4】
We/(Wa+Wb+Wc)≦0.3 《4》
[式中、Wa、Wb、WcおよびWeは、動的架橋する前の重合体組成物に含まれるブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)および滑剤(e)の各成分の含有量(質量)を示す。]
【0011】
そして、本発明は、
) JIS K−7210に準じて、温度230℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上である前記(1)の粉末状重合体組成物;
) オレフィン系エラストマー(b)からなるマトリックス相中に、ブロック共重合体(a)の粒子が分散した海島型の相構造を有する前記(1)または(2)の粉末状重合体組成物;および、
) スラッシュ成形用である前記(1)〜()のいずれかの粉末状重合体組成物;
を包含する。
【0012】
そして、本発明は、
) 前記(1)〜()のいずれかの粉末状重合体組成物を用いてなるスラッシュ成形体である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の粉末状重合体組成物で用いるブロック共重合体(a)において、重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができ、重合体ブロックAはこれらのビニル芳香族化合物の1種または2種以上から形成されていることができる。そのうちでも、重合体ブロックAは、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンから形成されていることが好ましい。
重合体ブロックAは、本発明の目的および効果の妨げにならない限りは、場合により、芳香族ビニル化合物以外の不飽和単量体(例えば1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルなど)に由来する構造単位の1種または2種以上を少量(好ましくは重合体ブロックAの10質量%以下)有していてもよい。
【0014】
また、ブロック共重合体(a)における重合体ブロックBを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができ、重合体ブロックBはこれらの共役ジエンの1種または2種以上から形成されていることができる。そのうちでも、重合体ブロックBは、ブタジエンおよびイソプレンのいずれか一方で形成されているか、または両方から形成されていることが好ましい。
【0015】
重合体ブロックBにおける共役ジエンの結合形態は特に制限されない。例えば、ブタジエンの場合は1,2−結合および/または1,4−結合、イソプレンの場合は1,2−結合、3,4−結合および/または1,4−結合を採ることができ、それらのいずれの結合形態であってもよい。そのうちでも、重合体ブロックBがブタジエンから形成されている場合は、1,2−結合の割合が20〜70モル%および1,4−結合の割合が30〜80モル%であることが好ましい。また、重合体ブロックBがイソプレンから形成されているか、またはイソプレンとブタジエンから形成されている場合は、3,4−結合および1,2−結合の合計が5〜70モル%であることが好ましい。
【0016】
また、重合体ブロックBが2種以上の共役ジエン(例えばブタジエンとイソプレン)から形成されている場合は、それらの結合形態は、完全交互、ランダム、テーパー、一部ブロック状、またはそれらの2種以上の組合わせからなることができる。
【0017】
重合体ブロックBでは、共役ジエンに基づく炭素−炭素二重結合の一部または全部が水添(水素添加)されていても、または水添されていなくてもよいが、耐熱性や耐候性の観点から、共役ジエンに基づく炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水添されていることが好ましく、90モル%以上が水添されていることがより好ましい。
なお、水添率は、重合体ブロックB中の共役ジエンに基づく炭素−炭素二重結合の含有量を、水添の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴などによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0018】
重合体ブロックBは、本発明の目的および効果の妨げにならない限りは、場合により、共役ジエン以外の不飽和単量体(例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、メチルビニルエーテル、スチレン、メタクリル酸メチルなど)に由来する構造単位の1種または2種以上を少量(好ましくは重合体ブロックBの10質量%以下)有していてもよい。
【0019】
ブロック共重合体(a)は、2個以上の重合体ブロックAと1個以上の重合体ブロックBとが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。それらのうちでも、重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合形式は直鎖状であることが好ましく、例としては、重合体ブロックAをAで、また重合体ブロックBをBで表したときに、A−B−Aのトリブロック共重合体、A−B−A−Bのテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aのペンタブロック共重合体などを挙げることができる。それらのうちでも、トリブロック共重合体(A−B−A)が、ブロック共重合体の製造の容易性、柔軟性などの点から好ましく用いられる。
【0020】
ブロック共重合体(a)におけるビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量は、粉末状重合体組成物およびそれからなる成形体のゴム弾性および柔軟性の観点から、5〜45質量%の範囲内であることが好ましい。ブロック共重合体(a)におけるビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量は、1H−NMRスペクトルなどにより求めることができる。
【0021】
ブロック共重合体(a)は、その数平均分子量が3万〜30万の範囲内であることが、粉末状重合体組成物を用いて成形を行う際の成形性、特に溶融流動性、得られる成形体のゴム弾性などの点から好ましい。
特に、本発明の粉末状重合体組成物をスラッシュ成形に用いる場合は、無加圧下で粉体が溶融流動して皮膜を形成する必要があるため、ブロック共重合体(a)の数平均分子量が3万〜10万であることが、溶融粘度が低くなり溶融流動性がより向上することから好ましい。
なお、本明細書でいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の分子量である。
【0022】
ブロック共重合体(a)は、本発明の主旨を損なわない限り、場合により、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基の1種または2種以上を有していてもよい。
【0023】
ブロック共重合体(a)の製法は特に制限されず、従来既知の方法で製造することができる。例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などのいずれで製造してもよい。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの重合反応に不活性な有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエンを逐次重合させてブロック共重合体を製造する。得られたブロック共重合体は、必要に応じて(好ましくは)、既知の方法に従って不活性有機溶媒中で水添触媒の存在に水添する。
【0024】
本発明の重合体組成物で用いるオレフィン系エラストマー(b)は、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとを共重合してなる、密度が0.88〜0.92g/cm3のオレフィン系エラストマーである。
オレフィン系エラストマー(b)を構成する炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどを挙げることができる。オレフィン系エラストマー(b)は、弾性を有する限りは、これらのα−オレフィンの1種または2種以上に由来する構造単位を有していることができる。
【0025】
本発明では、オレフィン系エラストマー(b)の密度が0.88〜0.92g/cm3の範囲内にあることが、粉末状重合体組成物の成形性および該組成物から得られる成形体の耐傷つき性、耐摩耗性、柔軟性、ゴム弾性を適切なものにするために必要である。オレフィン系エラストマー(b)の密度が0.88g/cm3未満であると、粉末状重合体組成物から得られる成形体の耐傷つき性、耐摩耗性、力学的強度が不十分となる。一方、オレフィン系エラストマー(b)の密度が0.92g/cm3を超えると、粉末状重合体組成物から得られる成形体の柔軟性およびゴム弾性が低下する。
【0026】
また、本発明の粉末状重合体組成物で用いるオレフィン系エラストマー(b)は、JIS K−7210に準じて、温度190℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分の範囲にあることが、組成物の成形性および得られる成形体の耐摩耗性の点から好ましい。特に、本発明の粉末状重合体組成物をスラッシュ成形に用いる場合は、前記した条件で測定したオレフィン系エラストマー(b)のMFRが20〜100g/10分の範囲にあることが、スラッシュ成形時の無加圧下での皮膜形成性が良好になる点から好ましい。
【0027】
オレフィン系エラストマー(b)としては、公知のものを用いることができ、例えば、デュポン・ダウ・エラストマーL.L.C.製の「エンゲージ(ENGAGE)」(商品名)シリーズ、エクソン・ケミカル(株)製の「イグザクト(EXACT)」(商品名)シリーズ、住友化学工業(株)製の「エスプレン(ESPREN)SPO」(商品名)のN−シリーズ、三井化学(株)製の「エボリュー」や「タフマー」(商品名)シリーズなどのうちから、密度が0.88〜0.92g/cm3の範囲内のものを選んで使用することができる。
【0028】
本発明の粉末状重合体組成物は、それから得られる成形体の耐傷つき性および耐摩耗性を損なわない範囲で、成形性の向上、成形体の硬度(柔軟性)、ゴム弾性などを適度な範囲とすることを目的として、必要に応じて軟化剤(c)を含有することができる。
軟化剤(c)としては、公知のものを使用することができ、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系、流動パラフィンなどの炭化水素系油;落花生油、ロジンなどの植物油;リン酸エステル;塩素化パラフィン、低分子量ポリエチレングリコール、低分子量ポリエチレン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、それらの水添物などの低分子重合体などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、本発明では、軟化剤(c)として、パラフィン系炭化水素油が好適に使用される。
【0029】
そして、本発明の粉末状重合体組成物は、上記したブロック共重合体(a)およびオレフィン系エラストマー(b)と共に、或いはブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)および軟化剤(c)と共に、有機過酸化物(d)を更に配合してなる架橋性の重合体組成物(以下「架橋前重合体組成物」ということがある)を、動的架橋し、それを平均粒径800μm以下の粉末にすることによって得られる。
【0030】
本発明で用いる有機過酸化物(d)としては、ブロック共重合体(a)および/またはオレフィン系エラストマー(b)を動的条件下に架橋し得る有機過酸化物であればいずれでもよく、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ベンゾイルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ここで、本明細書における「動的架橋」とは、有機過酸化物を含有する架橋性の重合体組成物を軟化状態または溶融状態で剪断力を加えながら(例えば混練、混合、撹拌、分散などを行いながら)架橋することを意味する。
動的架橋を行う際の温度は、粉末状重合体組成物を構成するブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)、有機過酸化物(d)の種類や配合量などによって調整し得るが、組成物の均一化の点から、一般に150〜280℃の温度が好ましく採用され、180〜240℃の温度がより好ましく採用される。
【0031】
さらに、本発明の粉末状重合体組成物では、オレフィン系エラストマー(b)の含有量とブロック共重合体(a)の含有量の比((質量比)が下記の数式《1》を満足し、ブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)および軟化剤(c)の合計含有量に対する軟化剤(c)の含有量の比(質量比)が下記の数式《2》を満足し、且つ有機過酸化物(d)の使用量が下記の数式《3》を満足することが必要である。
【0032】
【数5】
0.66≦Wb/Wa≦4 《1》
0≦Wc/(Wa+Wb+Wc)≦0.25 《2》
0.001≦Wd/(Wa+Wb+Wc)≦0.01 《3》
[式中、Wa、Wb、WcおよびWdは、架橋前重合体組成物に含まれるブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)および有機過酸化物(d)の各成分の質量を示す。]
【0033】
Wb/Waの値、すなわち架橋前重合体組成物におけるオレフィン系エラストマー(b)の含有量に対するブロック共重合体(a)の含有量の比(質量比)が、0.66未満であると、粉末状重合体組成物から得られる成形体の耐傷つき性および耐摩耗性が不十分になり、一方4.0を超えると得られる成形体のゴム弾性および柔軟性が不足する。
【0034】
また、ブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)および軟化剤(c)の合計含有量に対する軟化剤(c)の含有量の比(質量比)、すなわちWc/(Wa+Wb+Wc)の値が0.25を超えると、粉末状重合体組成物から得られる成形体の耐傷つき性、耐摩耗性、力学的強度などが低下する。これらの観点より、Wc/(Wa+Wb+Wc)の値が0.2以下であるのがより好ましい。
【0035】
ブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)および軟化剤(c)の合計含有量に対する有機過酸化物(d)の使用量(架橋前重合体組成物における含有量)の比(質量比)、すなわちWd/(Wa+Wb+Wc)の値が0.001未満であると、粉末状重合体組成物から得られる成形体の耐傷つき性および耐摩耗性が不十分になり、一方0.01を超えると溶融流動性が低下して成形性が損なわれ、また粉末状重合体組成物から得られる成形体のゴム弾性および柔軟性が損なわれる。
【0036】
動的架橋を行うに際し、有機過酸化物と共に必要に応じて架橋助剤を使用してもよい。架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレートなどのアクリル系モノマー、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、液状ポリブタジエンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
架橋助剤を使用する場合は、有機過酸化物(d)の1モルに対して、0.5〜3モルの範囲内であることが好ましい。
【0037】
有機過酸化物により動的架橋してなる本発明の粉末状重合体組成物では、オレフィン系エラストマー(b)が実質的にマトリックス相(連続相)を形成し、該マトリックス中にブロック共重合体(a)が実質的に微細な粒子の状態で分散した海島型の相構造を有していることが好ましい。そのような海島型の相構造を有する場合は、オレフィン系エラストマー(b)から実質的になるマトリックス相によって、高度な耐傷つき性および耐摩耗性を効果的に発揮される。そして、優れた柔軟性とゴム弾性を併せ持つブロック共重合体(a)からなる微細な分散粒子相により、オレフィン系エラストマー(b)単独の場合に比べて、成形体における柔軟性およびゴム弾性が格段に向上する。
【0038】
本発明の粉末状重合体組成物において、上記した海島型の相構造を有することは、例えば、走査型電子顕微鏡による観察で確認することができる。例えば、粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形により厚さ1mmのシート状物をつくり、それを液体窒素中に浸漬して十分に冷却した後、速やかに破断する。破断した試料をシクロヘキサン中に室温で5分間浸漬することによって、物理的な損傷を与えずに破断面をエッチングしてブロック共重合体(a)を溶解除去し、それを乾燥した後、イオンスパッタリングを行う。そのように処理された破断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、隣接し合った空孔(窪み)同士が繋がらずに分散している様子が確認される。それによって、オレフィン系エラストマー(b)からなる相が実質的にマトリックス相(連続相)を形成し、該マトリックス相中にブロック共重合体(a)から実質的になる粒子が島状で分散している海島型の相構造をなしていることが確認できる。
【0039】
本発明の粉末状重合体組成物において、ブロック共重合体(a)から実質的になる分散粒子の粒子径は特に制限されないが、上記した方法、すなわちスラッシュ成形による厚さ1mmのシート状物の製造−液体窒素による冷却−破断−シクロヘキサンによるエッチング−イオンスパッタリング−破断面の走査型電子顕微鏡観察からなる上記した一連の工程にてその相構造を調べたときに、エッチングで形成された空孔約1000個の長径の平均値(Ls)が10μm以下になるような粒子径であることが好ましく、5μm以下になるような粒子径であることがより好ましい。なお、長径の平均値(Ls)は式:Ls=(Σn・L)/Σn[式中、Lは個々の空孔の長径(μm)、nは空孔の個数を示す]から求められる。
【0040】
本発明の粉末状重合体組成物は、更に滑剤(e)を含有する。滑剤(e)を含有することにより、粉末状重合体組成物から得られる成形体の表面の摩擦抵抗が減少して、耐傷つき性や耐摩耗性が一層向上する。
滑剤(e)としては、公知のものを使用することができ、例えば、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;シリコーンオイル、微粉末状のシリコーン系重合体(シリコーン/アクリル重合体よりなるブロック共重合体粉末など)などのシリコーン系化合物;フッ素化炭化水素オイル、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化合物;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド類;エステル油;超高分子量ポリエチレン微粉末などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0041】
本発明の粉末状重合体組成物は、滑剤(e)を下記の数式《4》を満足する量で含有する
【0042】
【数6】
We/(Wa+Wb+Wc)≦0.3 《4》
[式中、Wa、WbおよびWcは前記と同じであり、Weは架橋前重合体組成物に含まれる滑剤(e)の質量を示す。]
【0043】
ブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)および軟化剤(c)の合計含有量に対する滑剤(e)の含有量の比(質量比)、すなわちWe/(Wa+Wb+Wc)の値が0.3を超えると、粉末状重合体組成物から得られる成形体のゴム弾性、力学的強度が損なわれ易い。特に、We/(Wa+Wb+Wc)の値が0.1以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の粉末状重合体組成物は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、必要に応じて、ブロック共重合体(a)およびオレフィン系エラストマー(b)とは異なる他の熱可塑性重合体、ゴム補強剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤などを含有していてもよい。
他の熱可塑性重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、ブロック共重合体(a)とは異なるスチレン系ブロック共重合体(例えばスチレン系ジブロック共重合体など)を挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。
【0045】
動的架橋された重合体組成物を得るためには、熱可塑性重合体組成物を製造するために従来から利用されている方法のいずれもが採用できる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの混練機を使用して、混練すると共に有機過酸化物(d)による架橋を行うことによって、動的架橋された重合体組成物を得ることができる。その際の混練温度としては、一般に150〜280℃の温度が好ましく採用され、180〜240℃の温度がより好ましく採用される。
【0046】
上記混練に際しては、(1)有機過酸化物(d)を含めて重合体組成物を構成するすべての成分を一括して混練し、混練と同時に動的架橋を行う方法;(2)有機過酸化物(d)以外の成分を予め混練しておき、それに有機過酸化物(d)を添加して更に混練して動的架橋を行う方法;(3)ブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)および有機過酸化物(d)の3者を混練して混練と同時に動的架橋を行った後に他の成分[例えば軟化剤(c)、滑剤(e)、ゴム補強剤(f)など]を加えて更に混練する方法;(4)オレフィン系エラストマー(b)と有機過酸化物(d)以外の成分を予め混練しておき、それにオレフィン系エラストマー(b)と有機過酸化物(d)を加えて更に混練する方法などのいずれの方法を採用してもよい。
上記(1)〜(3)のいずれの方法による場合も、混練する前に被混練成分のそれぞれをそのまま直接混練機に供給せずに、ヘンシェルミキサーやタンブラーなどのような混合機を用いて予めドライブレンドしてから混練機に供給すると、均一な重合体組成物を得ることができる。
【0047】
本発明の粉末状重合体組成物は、その平均粒径が800μm以下であることが必要であり、500μm以下であることが好ましい。粉末状重合体組成物の平均粒径が800μmを超えると、成形時などにおける粉体流動性や計量性が不良になる。本発明の粉末状重合体組成物をスラッシュ成形に用いる場合は、その平均粒径が400μm以下であることが、得られる成形体の厚さの均一性、ピンホールの発生防止、力学強度などの点から好ましい。
平均粒径800μm以下の粉末状重合体組成物は、上記のようにして動的架橋した重合体組成物を、適当な方法で粉末化し、必要により篩などを用いて分級することによって得ることができる。
【0048】
粉末化の方法は特に制限されず、動的架橋した上記重合体組成物を微粉化し得る方法であればいずれでもよく、例えば、動的架橋した上記の重合体組成物のペレットなどをターボミル、ピンミル、ハンマーミル、ロータースピードミルなどの衝撃式微粉砕装置を用いて常温または凍結下に微粉砕する方法、動的架橋した上記重合体組成物を加熱溶融してスプレー装置やディスクアトマイザーなどを用いて噴霧し冷却する方法、動的架橋した上記重合体組成物を押出機により得る際にミクロダイスを通して水中でホットカットする方法などにより製造することができる。そのうちでも、衝撃式微粉砕装置を用いて常温または凍結下に微粉砕する方法が、粉砕設備が安価で生産が容易な点から好ましく採用される。
【0049】
上記した粉末化方法によって平均粒径が800μm以下の粉末が直接得られる場合は、その粉末をそのまま本発明の粉末状重合体組成物として用いてもよい。また、粉末化によって得られた粉末状重合体組成物の平均粒径が800μmを超える場合や、800μm以下であっても更に平均粒径の小さい粉末状重合体組成物を得たい場合は、上記した粉末化方法により得られた粉末を、篩、集塵装置などを用いて分級して、平均粒径が800μm以下またはそれよりも小さな粉末を回収して用いるとよい。
【0050】
また、本発明の粉末状重合体組成物は、JIS K−7210に準じて、温度230℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上であることが好ましく、35g/10分以上であることがより好ましい。粉末状重合体組成物の前記MFRが20g/10分未満であると、スラッシュ成形などの成形時に溶融粘度が高くなって、成形性が低下し、成形体にピンホールや厚み斑が生じ易くなり、またウエルド強度が低下することがある。
【0051】
本発明の粉末状重合体組成物は、粉末状の熱可塑性重合体を用いる成形技術や塗装技術に有効に用いることができる。例えば、スラッシュ成形、圧縮成形、回転成形、粉体を用いる各種塗装技術(例えば流動浸漬法、静電塗装法、溶射法、吹付塗装など)に用いることができ、それによって、シート状物、フィルム状物、中空状物、積層物などの各種成形体や塗装製品を得ることができる。
そのうちでも、本発明の粉末状重合体組成物は、スラッシュ成形に使用するのに特に適している。本発明の粉末状重合体組成物を用いてスラッシュ成形を行うことにより、例えば、皮シボ状やステッチ状などの凹凸模様や複雑な形状を有する表皮状の成形体を得ることができる。スラッシュ成形により得られる本発明の成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に極めて優れ、しかも柔軟性、ゴム弾性、力学的強度などにおいても優れている。
本発明の粉末状重合体組成物を用いて得られる成形体は、必要に応じて、例えばポリウレタンや高摺動性ポリエチレンなどにより表面塗装されていてもよい。
【0052】
本発明の粉末状重合体組成物は、その優れた特性、特に成形性(特に溶融流動性)、該粉末状重合体組成物から得られる成形体における高度の耐摩耗性、耐傷つき性、柔軟性、ゴム弾性、力学的強度などの諸特性を活かして、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、アームレスト、ヘッドレスト、座席シート、ピラー、ステアリングホイール、天井などの自動車内装材;ソファー、各種椅子用の表皮材;スポーツ用品;レジャー用品;文房具;玩具;家屋の内張り材などの幅広い用途に有効に使用することができる。
【0053】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
以下の例において、粉末状重合体組成物における分散粒子径、粉末状重合体組成物の成形性(MFR)、粉末状重合体組成物から得られた成形体の耐傷つき性、耐摩耗性、ゴム弾性(永久伸び)、柔軟性(硬度)、引張強度および引裂強度の測定または評価は、以下の方法によって行った。
【0054】
(i)粉末状重合体組成物における分散粒子径:
以下の例で得られた厚さ1mmのスラッシュ成形シートを液体窒素で冷却した後、破断させ、その破断面をシクロヘキサンで5分間エッチングし、乾燥し、イオンスパッタリングした後、走査型電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製「JSM−T100」)で観察することによって、オレフィン系エラストマーからなるマトリックス相中にブロック共重合体からなる相が粒子状で分散している状態を確認し、さらにエッチングによってブロック共重合体を溶解除去し、ブロック共重合体の溶解除去によって形成された空孔約1000個について長径を測定し、その平均値を採って分散粒子径とした。
【0055】
(ii)成形性(MFR):
以下の例で得られた粉末状重合体組成物を用いて、JIS K−7210に準じて、230℃、2.16kg荷重におけるMFR(メルトフローレート)を測定して、成形性の指標とした。
【0056】
(iii)耐傷つき性(木綿による往復摺動試験):
以下の例で得られた重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから長さ×幅×厚み=150mm×50mm×2mmサイズの試験片を切り取り、該試験片上を、荷重を加えた木綿製の布面で往復140mmの長さにわたって、10分間往復摺動させる(1秒で1往復の割合)。この試験を荷重を変えて行い、傷がついた時の荷重を測定して、耐傷つき性の指標とした。傷つき荷重の値が高いほど耐傷つき性が優れている。
【0057】
(iv)耐摩耗性(摩耗量):
以下の例で得られた重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから長さ×幅×厚み=110mm×110mm×2mmのシート状試験片を切り取り、該試験片を用いて、JIS K−6264に準じて摩耗量を測定して、耐摩耗性の指標とした。この試験を行うに当たって、摩耗輪としてJIS規格にいうH22に相当するものを使用した。摩耗量が少ないほど耐摩耗性に優れている。
【0058】
(v)ゴム弾性(永久伸び):
以下の例で得られた重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートからダンベル状1号試験片を打ち抜き、JIS K−6262に準じて100%伸長後の永久伸びを測定して、ゴム弾性の指標とした。永久伸びが低いほどゴム弾性に優れている。
【0059】
(vi)柔軟性(硬度):
以下の例で得られた重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから長さ×幅×厚み=110mm×110mm×2mmのシート状試験片を切り取り、該試験片を用いてJIS K−6253に準じて、タイプAデュロメータで硬度を測定して、柔軟性の指標とした。
【0060】
(vii)引張強度:
以下の例で得られた重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートからダンベル状5号試験片を打ち抜き、該試験片を用いてJIS K−6251に準じて引張り試験を行い、破断時の強度を測定して引張強度とした。
【0061】
(viii)引裂強度:
以下の例で得られた重合体組成物を用いてスラッシュ成形した厚さ1mmのシートを2枚重ねて熱融着させて厚さ2mmのシートを作製し、該シートから切込み無しのアングル形状試験片を打ち抜き、該試験片を用いてJIS K−6252に準じて引裂き試験を行い、引裂き強度を測定した。
【0062】
また、以下の例で用いた各成分の内容と略号は次のとおりである。
ブロック共重合体
a−1:ポリスチレン−ブタジエン・イソプレン共重合体−ポリスチレンよりなるトリブロック共重合体の水添物[スチレン含有量=30質量%、MFR=40g/10分(230℃、2.16kg荷重)、水添率=98%]
[s−ブチルリチウムを重合開始剤とし、シクロヘキサン中でスチレンをアニオン重合した後、イソプレンとブタジエンの混合物を用いてアニオン重合し、その後更にスチレンをアニオン重合して得られたトリブロック共重合体を、シクロヘキサン中でチーグラー触媒を用いて水添して得られた水添トリブロック共重合体(SEEPS)]
a−2:ポリスチレン−ブタジエン・イソプレン共重合体−ポリスチレンよりなるトリブロック共重合体の水添物[スチレン含有量=20質量%、MFR=70g/10分(230℃、2.16kg荷重)、水添率=98%]
[モノマーの使用割合を変える以外はブロック共重合体(a−1)と同様にして得られた水添トリブロック共重合体(SEEPS)]
【0063】
オレフィン系エラストマー
b−1:エンゲージ8402(商品名)(デュポン・ダウエラストマーL.L.C製)[密度0.90g/cm3,MFR=30g/10分(190℃、2.16kg荷重)]
【0064】
軟化剤
c−1:ダイアナプロセスPW−90(商品名)(出光石油化学株式会社製)(パラフィン系プロセスオイル)
有機過酸化物
d−1:パーヘキシン25B−40(商品名)(日本油脂株式会社製)
滑剤
e−1:アーモスリップCP(商品名)(ライオンアクゾ株式会社製)(オレイン酸アミド)
【0065】
《実施例1〜3および比較例1〜3》
(1) 下記の表1に示す配合に従って、各成分をミキサーを使用して一括混合し、それにより得られた混合物を二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−35B」)に供給して230℃で約5分間混練した後、ストランド状に押し出し、切断して、ペレット状の重合体組成物を調製した。なお、有機過酸化物を配合した実施例1〜3および比較例1〜2では、混練時に動的架橋を同時に行った。
(2) 上記(1)で得られたペレット状の重合体組成物を、衝撃式粉砕機(フリッチュ社製「ロータースピードミルP−14」)を用いて、温度−100℃で粉砕した後、粉砕物を32メッシュ篩(目開き0.495mm)を使用して篩分し、篩を通過した粉末を回収して、粉末状重合体組成物とした(粉末状重合体組成物における平均粒径300μm)。
これにより得られた粉末状重合体組成物の成形性(MFR)を上記した方法で調べたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0066】
(3) また、上記(2)で得られた粉末状重合体組成物を、表面温度230℃のニッケル電鋳板(縦×横×厚さ=150mm×150mm×1mm)よりなる型に均一に振りかけて、静置状態で同温度に30秒間保持して粉末状重合体組成物を溶着させた後、未溶着粉末を排出させ、それを250℃の加熱炉内に1分間保持して溶融させた。次いで、加熱炉から取り出して、40℃に水冷後脱型し、厚さ1mmのシート状スラッシュ成形体を製造した。次いで、得られたシート状スラッシュ成形体を2枚重ね合わせて、再度、250℃の加熱炉内で3分間保持して熱融着を行い、加熱炉から取り出して40℃に水冷後、脱型し、上記した各種試験に用いる厚さ2mmのシート状スラッシュ成形体を製造した。
(4) 上記(3)で得られたシート状スラッシュ成形体から所定の試験片を切り取り(抜き取り)、分散粒子径、耐傷つき性、耐摩耗性、ゴム弾性(永久伸び)、柔軟性(硬度)、引張強度および引裂強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0067】
【表1】
Figure 0004527894
【0068】
上記の表1の結果に見るように、実施例1〜3の粉末状重合体組成物は、ブロック共重合体(a−1またはa−2)および密度が0.88〜0.92g/cm3の範囲にあるオレフィン系エラストマー(b−1)を上記の数式《1》を満足する量で含有し、更に軟化剤(c−1)および滑剤(e−1)をそれぞれ上記の数式《2》および《4》を満足する量で含有し、しかも上記の数式《3》を満足する量の有機過酸化物(d−1)によって動的架橋されていることにより、MFR値が高く成形性に優れている。しかも、実施例1〜3の粉末状重合体組成物から得られた成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に優れ、更にゴム弾性、柔軟性および力学的強度をバランス良く備えている。
【0069】
それに対して、比較例1の粉末状重合体組成物は、ブロック共重合体(a−1)の配合量に対するオレフィン系エラストマー(b−1)の配合量の比(質量比)が0.50であって、上記の数式《1》を満たしていないことにより、この比較例1の粉末状重合体組成物から得られた成形体は耐傷つき性および耐摩耗性に劣っている。しかも、該成形体の引張強度および引裂強度は実施例1〜3で得られた成形体に比べて劣っている。
また、比較例2の粉末状重合体組成物は軟化剤(c−1)の配合量が上記の数式《2》を満足していない(過剰である)ことにより、この比較例2の粉末状重合体組成物から得られた成形体は、耐傷つき性、耐摩耗性および力学的強度に劣っている。
比較例3の粉末状重合体組成物は、有機過酸化物による動的架橋がなされていないことにより、この比較例3の粉末状重合体組成物から得られた成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に劣っている。
【0070】
【発明の効果】
本発明の粉末状重合体組成物は、成形性(特に溶融流動性)に優れており、スラッシュ成形などの粉末樹脂を用いる成形技術や、粉末を用いる各種塗装技術に良好に用いることができる。特に、スラッシュ成形に用いた場合は、皮ジボ状や縫い目状の凹凸(模様)や複雑な形状を有する成形体を円滑に製造することができる。
本発明の粉末状重合体組成物を用いて得られる成形体は、耐傷つき性および耐摩耗性に優れていて摩擦や接触を高頻度で受けても損傷しにくく、しかも柔軟性、ゴム弾性、風合、外観に優れている。
本発明の粉末状重合体組成物は可塑剤を含有しておらず、また粉末状重合体組成物を構成している重合体成分や軟化剤などにはハロゲンが含まれないので、焼却によりダイオキシンの発生、環境ホルモンや発癌性などの心配がない。

Claims (5)

  1. ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上および共役ジエンからなる水添又は非水添の重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体(a)、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとを共重合してなる密度0.88〜0.92g/cm3のオレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)びに有機過酸化物(d)下記の数式《1》《3》を満足する量で含有し、更に滑剤(e)を下記の数式《4》を満足する量で含有する架橋性の重合体組成物を動的架橋してなり、且つ平均粒径が800μm以下であることを特徴とする粉末状重合体組成物。
    【数1】
    0.66≦Wb/Wa≦4 《1》
    0≦Wc/(Wa+Wb+Wc)≦0.25 《2》
    0.001≦Wd/(Wa+Wb+Wc)≦0.01 《3》
    [式中、Wa、Wb、WcおよびWdは、動的架橋する前の重合体組成物に含まれるブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)および有機過酸化物(d)の各成分の含有量(質量)を示す。]
    【数2】
    We/(Wa+Wb+Wc)≦0.3 《4》
    [式中、Wa、Wb、WcおよびWeは、動的架橋する前の重合体組成物に含まれるブロック共重合体(a)、オレフィン系エラストマー(b)、軟化剤(c)および滑剤(e)の各成分の含有量(質量)を示す。]
  2. JIS K−7210に準じて、温度230℃および荷重2.16kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上である請求項に記載の粉末状重合体組成物。
  3. オレフィン系エラストマー(b)からなるマトリックス相中に、ブロック共重合体(a)の粒子が分散した海島型の相構造を有する請求項1または2に記載の粉末状重合体組成物。
  4. スラッシュ成形用である請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末状重合体組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末状重合体組成物を用いてなるスラッシュ成形体。
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