JP5163899B2 - 環構造を持つ高分子化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物 - Google Patents

環構造を持つ高分子化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれから得られる硬化膜に関する。より詳しくは、本発明は、ディスプレイ材料の用途において好適なポジ型感光性樹脂組成物及びその硬化膜、並びに該硬化膜を用いた各種材料に関する。
一般に、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL(electroluminescent)素子等のディスプレイ素子においては、パターン形成された電極保護膜、平坦化膜、絶縁膜等が設けられている。これらの膜を形成する材料としては、感光性樹脂組成物の中でも、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なくしかも十分な平坦性を有するという特徴を持つところの感光性樹脂組成物が、従来より幅広く使用されている。
そして、上述のこれらの膜には、耐熱性、耐溶剤性、長時間焼成耐性、メタルスパッタ耐性などのプロセス耐性に優れていること、下地との密着性が良好であること、使用目的に合わせた様々なプロセス条件でパターンを形成し得る広いプロセスマージンを有すること、加えて、高感度且つ高透明性であること並びに現像後の膜ムラが少ないこと等の諸特性が要求される。そこで、斯かる要求特性の点から、これまで従来、上記の感光性樹脂組成物としては、ナフトキノンジアジド化合物を含む樹脂が汎用されてきた。
ところで、斯かる感光性樹脂材料の要求特性の中、重要な特性の一つとして、感度が挙げられる。感度の向上は、ディスプレイ素子等の工業的な生産において、その生産時間の大幅な短縮を可能にする。このため、液晶ディスプレイの需要量が著しく増大している現在の状況にあっては、感度は、この種の感光性樹脂材料に要求される最も重要な特性の一つとなっている。
しかし、上述のナフトキノンジアジド化合物を含む従来の感光性樹脂材料は、感度の面において十分満足できるものではなかった。材料中のポリマーについてアルカリ現像液への溶解性を高めることにより、感度を向上させることも可能ではあるが、この方法には限界があり、また未露光部の溶解も起こって残膜率が低下し、それが大型ディスプレイ用の基板にとっては膜ムラの原因になるという欠点があった。
そこで、これまでにも、感光性樹脂材料の高感度化を目的として幾つかの特許出願がなされている。例えば、アルカリ可溶性樹脂と特定のポリヒドロキシ化合物及びその誘導体の少なくとも何れかとを含有する感放射線性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この提案材料は、感光剤の対称性の高さから、保存安定性などに問題があった。
また、アルカリ可溶性フェノール樹脂と感放射線性化合物を含有するポジ型感放射線性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、及び、特定のアルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかし、これらは、バインダーポリマーにノボラック樹脂を使用していることから、透明性、並びに長時間焼成時における安定性に問題があった。
以上のように、他の特性をも満足し、且つ所望水準の高感度を有する感光性樹脂組成物を開発することは、非常に困難なことであり、従来技術の単なる組み合わせでは、満足な感光性樹脂組成物を得ることが困難であった。
また一般に、ナフトキノンジアジド化合物を含む従来の感光性樹脂材料にあっては、露光現像の後ナフトキノンジアジド化合物による硬化膜の着色化及び透明性の低下を防止するべくフォトブリーチングが為されているが、このフォトブリーチング工程を経たとしても、得られた膜は、250℃程度の高温で焼成すると光透過率が低下して着色し、またこれより低い温度で、例えば230℃で長時間焼成しても光透過率の低下(着色)が見られ、更に、レジスト剥離液のアミン系溶液などの薬品処理によっても、光透過率が低下して透明性が悪化するという問題が発生し、ナフトキノンジアジド化合物を含む従来の感光性樹脂材料は、斯かる耐熱性及び耐薬品性の点で問題があった(例えば、特許文献4参照)。
一方、高感度、高解像度の感光性材料として従来、化学増幅型レジストが開発されている。半導体用レジストとして開発されてきた従来の化学増幅型レジストは、i線よりも短波長の光源(KrF、ArF)にも適応することができ、より微細なパターン形成が可能であるが、膜硬化に用いるような高温の下では、またレジスト剥離液の存在下では、保護基の結合部やエーテル結合の熱架橋部が容易に分解してしまい、耐熱性及び耐薬品性が著しく低く、永久膜として利用することは殆ど不可能であった(例えば、特許文献5参照)。また、熱硬化を可能とするために、エポキシ類やアミノプラスト類の架橋系を化学増幅型レジストに導入しようとしても、露光によりレジスト中の光酸発生剤(PAG)から発生した酸の影響により、露光部の架橋が進行し、未露光部との溶解コントラストが消失するなどの問題が新たに生じるため、斯かる架橋系の化学増幅型レジストへの導入は困難であった。
またこれらの材料は形成したパターンを熱硬化させた後、膜上にITOやAl、Crといった金属がスパッタリングにより製膜される。一般的にアクリル樹脂を用いた場合には高温でスパッタリングを行うITOでは膜中にクラックが入りやすいことが分かっている。そこで高温でのスパッタリング耐性を有し、かつ高感度、高耐熱透明性を有する材料が求められてきた。
特開平4−211255号公報 特開平9−006000号公報 特開平8−044053号公報 特開平4−352101号公報 米国特許第5075199号明細書
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、第一の課題は、十分高感度であり、しかも現像の際に未露光部の観測されない程に事実上無いパターン被膜を形成できるポジ型感光性樹脂組成物を提供することである。
そして、第二の課題は、高温下での焼成やレジスト剥離液で処理しても高い透過率を維持し、且つ、ITOスパッタリング時にクラックが生じない硬化膜及びそのような硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することにある。
すなわち、第1観点として、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び()溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物である。
(A)成分:カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基の群から選ばれる少なくとも一種と、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基の群から選ばれる少なくとも一種を有し、且つ、数平均分子量が2,000乃至30,000であるアルカリ可溶性アクリル重合体
(B)成分:主鎖中に芳香族環または脂環構造を有するアルカリ可溶性樹脂
(C)成分:1分子中二個以上のビニルエーテル基を有する化合物
(D)成分:1分子中二個以上のブロックイソシアネート基を有する化合物
(E)成分:光酸発生剤
(F)溶剤
第2観点として、(B)成分が、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ば
れるアルカリ可溶性樹脂である、第1観点に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第3観点として、(B)成分のアルカリ可溶性樹脂の数平均分子量が2,000乃至30,000である、第1観点又は第2観点に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第4観点として、(B)成分が、フッ素原子で置換されたアルキル基を有するアルカリ可溶性樹脂である、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組組成物。
第5観点として、(B)成分がポリイミドを含むアルカリ可溶性樹脂であり、該ポリイミドは(A)成分の100質量部に対して0.5乃至20質量部含まれている、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第6観点として、(B)成分がポリイミド前駆体を含むアルカリ可溶性樹脂であり、該ポリイミド前駆体は(A)成分の100質量部に対して5乃至100質量部含まれている、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第7観点として、(E)成分が、光の照射によりスルホン酸を発生する化合物である第1観点乃至第6観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第8観点として、(G)成分として、アミン化合物を更に含有する第1観点乃至第7観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第9観点として、(H)成分として、フッ素系界面活性剤を更に含有する第1観点乃至第8観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
第10観点として、第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られる硬化膜。
第11観点として、第10観点の硬化膜からなる層間絶縁膜。
第12観点として、第10観点の硬化膜からなるマイクロレンズ。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、十分高感度であり、しかも現像の際に未露光部の膜減りが観測されない程に事実上無いパターン被膜を形成できる。そして、高温下での焼成やレジスト剥離液で処理しても高い透過率を維持し、且つ、ITOスパッタリング時にクラックが生じない硬化膜を提供できる。
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体、(B)成分のアルカリ可溶性樹脂、(C)成分のビニルエーテル基を有する化合物、(D)成分のブロックイソシアネート基を有する化合物、(E)成分の光酸発生剤及び(F)溶剤を含有し、且つ、それぞれ所望により(G)成分のアミン化合物及び/または(H)成分の界面活性剤を含有する組成物である。
以下、各成分の詳細を説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、重合体の構造中に、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基の群から選ばれる少なくとも一種と、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基の群から選ばれる少なくとも一種を有し、且つ、ポリスチレン換算数平均分子量(以下、数平均分子量と称す。)が2,000乃至30,000であるアルカリ可溶性アクリル重合体である。
上記カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基の群から選ばれる少なくとも一種は、高められた温度の下、後述する(C)成分の化合物中のビニルエーテル基と反応して、(C)成分の化合物との間で熱架橋をなし、レジスト膜を形成しうる基である。
また、上記フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基の群から選ばれる少なくとも一種は、上記の(A)成分及び(C)成分の熱架橋体において(露光部にあっては、熱架橋体が更に解離した脱架橋体において)、より高められた温度の下、後述する(D)成分の化合物との間でブロック部分が解離したイソシアネート基を介して架橋反応をなし、膜を硬化せしめうる基である。
なお、活性水素を有するアミノ基とは、反応性が高くプロトンを放出しうる1級又は2級のアミノ基を意味する。従って、アミド基は、活性水素を持たないので、活性水素を有するアミノ基に該当しない。
(A)成分の重合体は、斯かる構造を有するアルカリ可溶性アクリル重合体であればよく、重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
然しながら、(A)成分の重合体は、数平均分子量が2,000乃至30,000の範囲内にあるものであり、より好ましくは2,000乃至15,000の範囲にあるものである。数平均分子量が30,000を超えて過大なものであると、現像残渣が発生し易くなり、感度が著しく低下する一方、数平均分子量が2,000未満で過小なものであると、現像の際、未露光部の膜減りが相当量発生し、硬化不足になる場合がある。
(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体とはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンのような不飽和二重結合を有するモノマーを単独重合または共重合して得られる重合体でさらにアルカリ水溶液に可溶なものを言う。
また、本発明においては、複数種のモノマーを重合して得られる共重合体(以下、特定共重合体と称す。)からなるアルカリ可溶性アクリル重合体を(A)成分として用いることもできる。この場合、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体は、複数種の特定共重合体のブレンド物であってもよい。
すなわち、上記の特定共重合体は、熱架橋反応のための官能基を有するモノマー、即ちカルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有するモノマーの群から適宜選ばれる少なくとも一種のモノマーと、膜硬化のための官能基を有するモノマー、即ちフェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基のうち少なくとも一方を有するモノマーの群から適宜選ばれる少なくとも一種のモノマーとを、必須の構成単位として形成された共重合体であって、その数平均分子量が2,000乃至30,000のものである。
上記の「カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有するモノマー」には、カルボキシル基を有するモノマー、フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー、ならびに、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基の両方を有するモノマーが含まれる。これらのモノマーは、カルボキシル基又はフェノール性ヒドロキシ基を一個有するものに限らず、複数個有するものでもよい。
また上記の「フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基のうち少なくとも一方を有するモノマー」には、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基を有するモノマー、活性水素を有するアミノ基を有するモノマー、ならびに、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基の両方を有するモノマーが含まれる。これらのモノマーは、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基又は活性水素を有するアミノ基を一個有するものに限らず、複数個有するものでもよい。
以下、上記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものでない。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。
フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
さらに、活性水素を有するアミノ基を有するモノマーとしては、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
また、特定共重合体は、熱架橋反応のための官能基を有するモノマー及び膜硬化のための官能基を有するモノマー以外のモノマー(以下、その他モノマーと称す。)をも構成単位として形成された共重合体であってもよい。
その他モノマーは、具体的には、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方を有するモノマー、並びに、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基のうちの少なくとも一方を有するモノマーと共重合することが可能なものであればよく、(A)成分の特性を損ねない限り、特に限定されるものでない。
その他モノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有するモノマーの群から適宜選ばれる少なくとも一種のモノマーと、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基のうち少なくとも一方を有するモノマーの群から適宜選ばれる少なくとも一種のモノマーと、所望により上記モノマー以外のモノマーと、所望により重合開始剤等を溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより、得られる。その際、用いられる溶剤は、特定共重合体を構成するモノマー及び特定共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(F)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
このようにして得られる特定共重合体は、通常、この特定共重合体が溶剤に溶解した溶液の状態である。
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体を得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えば良い。
本発明においては、特定共重合体の粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する(F)溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
<(B)成分>
(B)成分は主鎖中に芳香族環または脂環構造を有するアルカリ可溶性樹脂である。ここでいう芳香族環とはベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の環状炭化水素であり、脂環とはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、トリシクロデカン等の環状炭化水素である。
このような環構造を有するアルカリ可溶性樹脂としてはポリイミド前駆体、アルカリ可溶性ポリイミド、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも高透明性を維持することができる点からポリイミド前駆体やアルカリ可溶性ポリイミドが好ましい。
また、上記(B)成分のアルカリ可溶性樹脂は、数平均分子量が好ましくは2,000乃至30,000の範囲内にあるものであり、より好ましくは2,000乃至15,000の範囲にあるものである。数平均分子量が30,000を超えて過大なものであると、現像残渣が発生し易くなり、感度が著しく低下する一方、数平均分子量が2,000未満で過小なものであると、現像の際、未露光部の膜減りが相当量発生し、硬化不足になる場合がある。
さらに上記(B)成分のアルカリ可溶性樹脂は、フッ素原子で置換されたアルキル基を有するアルカリ可溶性樹脂、好ましくはフッ素原子で置換されたアルキル基を有しするポリミド前駆体であることが望ましい。このとき、芳香族環を有するポリイミド前駆体において、フッ素置換のアルキル基を有すると、フッ素置換のアルキル基を有さないものと比べて透明性がより向上することから、前記ポリイミド前駆体はフッ素原子で置換された、特に炭素原子数1乃至10、好ましくは炭素原子数1乃至7、最も好ましくは炭素原子数1乃至5のアルキル基を有していることが好ましい。
このようにして使用される上記(B)成分のアルカリ可溶性樹脂は、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体100質量部に対して0.5乃至100質量部の割合で使用され、使用する樹脂によって使用割合を任意に選択することができる。
《ポリイミド前駆体》
本発明のポジ型感光性樹脂に(B)成分のアルカリ可溶性樹脂として含有される上記ポリイミド前駆体とはポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、一部イミド化したポリアミド酸を示し、一般的に(a)テトラカルボン酸二無水物化合物と(b)ジアミン化合物から製造することができる。
本発明で用いられる上記ポリイミド前駆体の製造に使用される(a)テトラカルボン酸二無水物化合物は特に限定はなく、また、これらは一種の使用でもよく、また、二種以上を同時に使用することができる。具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物のような脂環式テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物のような脂肪族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
本発明で用いられる上記ポリイミド前駆体の製造に使用される(b)ジアミン化合物は特に限定はなく、また、これらは一種の使用でもよく、また、二種以上を同時に使用することができる。具体例としては、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジカルボン酸、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3,5−ジカルボキシフェニル)スルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシ−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシ−5,5’−ジメトキシビフェニル、1,4−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノハイドロキノン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシ−5,5’−ジメトキシビフェニル、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンの等フェノール性ヒドロキシ基を有するジアミン化合物、1,3−ジアミノ−4−メルカプトベンゼン、1,3−ジアミノ−5−メルカプトベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メルカプトベンゼン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)エーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のチオフェノール基を有するジアミン化合物、1,3−ジアミノベンゼン−4−スルホン酸、1,3−ジアミノベンゼン−5−スルホン酸、1,4−ジアミノベンゼン−2−スルホン酸、ビス(4−アミノベンゼン−3−スルホン酸)エーテル、4,4’−ジアミノビフェニル)3,3’−ジスルホン酸、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル−6,6’−ジスルホン酸等のスルホン酸基を有するジアミン化合物が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−エチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−トルイル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等のジアミン化合物を挙げることが出来る。
また、上記(b)ジアミン化合物の例として挙げた化合物の中で、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−トルイル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等のフッ素原子で置換されたアルキル基を有しているジアミン化合物と、前記(a)テトラカルボン酸二無水物化合物より、フッ素原子で置換されたアルキル基を有するポリイミド前駆体を製造することができる。
本発明で用いられる上記ポリイミド前駆体が前記(a)テトラカルボン酸二無水物化合物と前記(b)ジアミン化合物から製造される場合、両化合物の配合比、即ち〈(b)ジアミン化合物の総モル数〉/〈(a)テトラカルボン酸二無水物化合物の総モル数〉は0.7乃至1.2であることが望ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1に近いほど生成するポリイミド前駆体の重合度は大きくなり、分子量が増加する。
また、前記(b)ジアミン化合物を過剰に用いて重合した際、生成したポリイミド前駆体の末端アミノ基にカルボン酸無水物を反応させ、末端アミノ基を保護することもできる。
このようなカルボン酸無水物の例としてはフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、無水マレイン酸、ナフタル酸無水物、水素化フタル酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物等を挙げることができる。
上記ポリイミド前駆体の製造において、前記(a)テトラカルボン酸二無水物化合物と前記(b)ジアミン化合物との反応の反応温度は−20乃至150℃、好ましくは−5乃至100℃の任意の温度を選択することができる。反応温度は5℃乃至40℃、反応時間1乃至48時間で高分子量のポリイミド前駆体を得ることが出来る。低分子量で保存安定性の高いポリイミド前駆体を得るには、反応温度40℃乃至90℃、反応時間10時間以上にて反応させる。
また、末端アミノ基を酸無水物で保護する場合の反応温度は−20乃至150℃、好ましくは−5乃至100℃の任意の温度を選択することができる。
前記(a)テトラカルボン酸二無水物化合物と前記(b)ジアミン化合物の反応は溶剤中で行なうことができる。その際に使用できる溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m−クレゾール、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等を挙げることができる。これらは単独でも、混合して使用しても良い。さらに、ポリイミド前駆体を溶解しない溶剤であっても、重合反応により生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶剤に混合して使用してもよい。
このようにして得られたポリイミド前駆体を含む溶液は、ポジ型感光性樹脂の調製にそのまま用いることができる。また、ポリイミド前駆体を水、メタノール、エタノール等の貧溶剤に沈殿単離させて回収して用いることもできる。
また、上記ポリイミド前駆体は、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体100質量部に対して5乃至100質量部、好ましくは10乃至60質量部の割合で使用される。上記ポリイミド前駆体の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、ITOスパッタリング時にクラックが入ることがある。一方、上記ポリイミド前駆体の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、硬化後の透明性が低下する。
《ポリイミド》
また、本発明のポジ型感光性樹脂に用いる(B)成分のアルカリ可溶性樹脂としては、任意のポリイミドを用いることができる。本発明に用いるポリイミドとは前述のポリイミド前駆体を化学的または熱的に50%以上イミド化させたものである。これらのポリイミドにはポリアミドイミド、ポリエーテルイミドといった共重合体も含む。好ましくは、フッ素原子で置換されたアルキル基を有するポリイミド、特に溶解性向上の観点から、フッ素原子で置換された炭素原子数1乃至10、好ましくは炭素原子数1乃至7、最も好ましくは炭素原子数1乃至5のアルキル基を有するポリイミドであることが望ましい。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物に用いるポリイミドはアルカリ溶解性を与えるためにカルボキシル基もしくはフェノール性ヒドロキシ基、または熱または酸の作用によりカルボン酸またはフェノール性ヒドロキシ基を生成する基を有することが好ましい。カルボキシル基やフェノール性ヒドロキシ基の導入方法はカルボキシル基やフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーを用いる方法、カルボキシル基やフェノール性ヒドロキシ基を有する酸無水物でアミン末端を封止する方法、またはポリイミド前駆体をイミド化する際にイミド化率を99%以下にする方法等が用いられる。熱または酸の作用によりカルボン酸またはフェノール性ヒドロキシ基を生成する基の導入方法は熱または酸の作用によりカルボキシル基やフェノール性ヒドロキシ基生成するモノマーを用いる方法、あらかじめ導入したカルボキシル基やフェノール性ヒドロキシ基もしくはイミド化後のカルボン酸残基に熱または酸の作用により解離する基を反応させる方法がある。このようなポリイミドは上述のポリイミド前駆体を合成した後化学イミド化もしくは熱イミド化を行うことで得ることができる。
また、アルカリ可溶性の上記ポリイミドは、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体100質量部に対して0.5乃至20質量部、好ましくは1乃至15質量部の割合で使用される。アルカリ可溶性の上記ポリイミドの使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、ITOスパッタリング時にクラックが入ることがある。一方、アルカリ可溶性の上記ポリイミドの使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、硬化後の透明性が低下する。
<(C)成分>
(C)成分は、1分子中二個以上のビニルエーテル基を有する化合物である。これは、慣用のプリベーク温度で(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体と熱架橋することができるようなビニルエーテル基を1分子中二個以上有する化合物であればよく、その種類及び構造について特に限定されるものでない。
この(C)成分の化合物は、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体との熱架橋の後、光酸発生剤の存在下での露光により生じた酸により、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体から分離(脱架橋)し、その後アルカリ現像液を用いた現像により(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体ともに除去される。従って、この種の化合物としては、一般にビニルエーテル型化学増幅型レジストの成分に使用されるビニルエーテル系化合物などが適用されうる。斯かる化合物の使用の場合、該化合物の配合量を変えて熱架橋密度を調整することにより、形成される膜の形状を制御することができるという利点を有する。
そして、(C)成分の化合物としては、上記ビニルエーテル系化合物の中でも、特に式(1)及び式(2)で表される化合物が、露光部において残膜や残渣なく現像される点で、好ましい。
Figure 0005163899
(式中、nは2乃至10の整数、kは1乃至10の整数であり、R1はn価の有機基を表す。)
Figure 0005163899
(式中、mは2から10の整数を表す。)
式(1)のnは、1分子中のビニルエーテル基の数を表すが、nとしては、2乃至4の整数がより好ましい。そして、式(2)のmも一分子中のビニルエーテル基の数を表すが、mとしては、2から4の整数がより好ましい。
前記式(1)及び前記式(2)で表される化合物の具体例としては、ビス(4−(ビニロキシメチル)シクロヘキシルメチル)グルタレート、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリス(4−ビニロキシ)ブチルトリメリレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチル)テレフタレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチルイソフタレート、及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
また、(C)成分の化合物は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、1乃至80質量部、好ましくは5乃至40質量部の割合で使用される。(C)成分の化合物の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、未露光部における膜減りが顕著となりパターン様のレリーフ形状が不良になる。一方、(C)成分の化合物の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、膜の感度が著しく低下し、現像後にパターン間の残渣が生じるようになる。
<(D)成分>
(D)成分は、1分子中二個以上のブロックイソシアネート基を有する化合物である。これは、(C)成分の化合物との間で熱架橋された或いは更にそれとの間で脱架橋された(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体からなる膜に対して、例えば慣用のポストベーク温度で熱硬化することができるようなブロックイソシアネート基を1分子中二個以上有する化合物であればよく、その種類及び構造について特に限定されるものでない。
この(D)成分の化合物は、イソシアネート基(−NCO)が適当な保護基によりブロックされたブロックイソシアネート基を1分子中二個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基を介して(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体中の熱硬化のための官能基(例えばフェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基)相互の間で架橋反応が進行するものであり、例えば、式(3)
Figure 0005163899
(式中、R2はブロック部の有機基を表す。)で表される基を1分子中二個以上(この基は同一のものでも、また各々異なっているものでもよい)有する化合物が挙げられる。
1分子中二個以上のブロックイソシアネート基を有する(D)成分の化合物は、例えば1分子中二個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を作用せしめることにより、得ることができる。
1分子中二個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等、またはそれらの二量体、三量体、或いは、これらとジオール類、トリオール類、ジアミン類、トリアミン類との反応物が挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エトキシヘキサノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−、m−又はp−クレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、などのピラゾール類、ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類が挙げられる。
(D)成分の化合物は、ポストベーク温度のようなより高温では、ブロック部分の熱解離が生じイソシアネート基を介して架橋反応が進行するものであるが、プリベーク温度のようなより低温では、イソシアネート基による架橋が進行しないものとするために、ブロック部分の熱解離の温度がプリベーク温度よりも相当に高いもの、例えば120℃乃至230℃であるものが(D)成分の化合物として特に好ましい。
斯かる(D)成分の化合物としては、例えば次の具体例が挙げられる。
Figure 0005163899
式中、イソシアネート化合物がイソホロンジイソシアネートから誘導されるものである(D)成分の化合物が、耐熱性、塗膜性の点からより好ましく、斯様な化合物としては、以下のものが挙げられる。
下記式中のRは有機基を表す。
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
本発明において、(D)成分の化合物は一種単独で用いてもよく、また二種以上を組合せて用いてもよい。
また、(D)成分の化合物は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、1乃至80質量部、好ましくは5乃至40質量部の割合で使用される。(D)成分の化合物の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、熱硬化が不十分となって満足な硬化膜が得られず、一方、(D)成分の化合物の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、現像が不十分となり、現像残渣を生じるようになる。
<(E)成分>
(E)成分は、光酸発生剤(PAG)である。これは、露光に使用される光の照射によって直接もしくは間接的に酸(スルホン酸類、カルボン酸類など)を発生する物質であり、斯様な性質を有するものであれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでないが、特に光の照射によってスルホン酸を発生するものが好ましい。
(E)成分の光酸発生剤としては、例えば、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体、ハロゲン含有トリアジン化合物、アセトフェノン誘導体化合物、及び、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物などが挙げられる。従来知られ又は従来から使用されている光酸発生剤は、いずれも、特に限定されることなく、本発明において適用することができる。なお、本発明において、(E)成分の光酸発生剤は、一種単独で用いてもよく、また二種以上を組合わせて用いてもよい。
光酸発生剤の具体例としては、
Figure 0005163899
ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
Figure 0005163899
また、(E)成分の光酸発生剤は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.5乃至80質量部、好ましくは1乃至30質量部の割合で使用される。(E)成分の光酸発生剤の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、露光の際、熱架橋された(C)成分の化合物の、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体からの解離が十分に進行せず、所望のパターン様のレリーフが得られ難くなり、一方、(E)成分の光酸発生剤の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性に劣るようになる。
<(F)溶剤>
本発明に用いる(F)溶剤は、(A)成分乃至(E)成分を溶解し、且つ所望により添加される後述の(G)成分及び/又は(H)成分などを溶解するものであり、斯様な溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
斯様な(F)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
これら(F)溶剤の中、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル等が、塗膜性が良好で安全性が高いという観点より好ましい。これら溶剤は、一般にフォトレジスト材料のための溶剤として用いられている。
<(G)成分>
(G)成分は、アミン化合物である。本発明のポジ型感光性樹脂組成物にあっては、その保存安定性を高めるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更にアミン化合物を含有することができる。
(G)成分のアミン化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリノルマルプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン及びジアザビシクロオクタン等の3級アミンや、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミンが挙げられ、また、更に、ベンジルアミン及びノルマルブチルアミン等の1級アミンや、ジエチルアミン及びジノルマルブチルアミン等の2級アミンも挙げられる。
(G)成分のアミン化合物は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
アミン化合物が使用される場合、その含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、例えば0.001乃至5質量部であり、また場合により0.005乃至1質量部であり、また好ましくは、0.01乃至0.5質量部である。(G)成分のアミン化合物の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性を十分に高めることができず、一方、(G)成分のアミン化合物の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、ポジ型感光性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。
<(H)成分>
(H)成分は、界面活性剤である。本発明のポジ型感光性樹脂組成物にあっては、その塗布性を向上させるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に界面活性剤を含有することができる。
(H)成分の界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。この種の界面活性剤としては、例えば、住友スリーエム(株)製、大日本インキ化学工業(株)製或いは旭硝子(株)製等の市販品を用いることができる。これら市販品は、容易に入手することができるので、好都合である。その具体的な例としては、エフトップEF301、EF303、EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171、F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
(H)成分の界面活性剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
界面活性剤が使用される場合、その含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物100質量%中に通常0.2質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下である。(H)成分の界面活性剤の使用量が0.2質量%を超える量に設定されても、上記塗布性の改良効果は鈍くなり、経済的でなくなる。
<その他添加剤>
更に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、または多価フェノール、多価カルボン酸等の溶解促進剤等を含有することができる。
<ポジ型感光性樹脂組成物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体、(B)成分のアルカリ可溶性樹脂、(C)成分のビニルエーテル基を有する化合物、(D)成分のブロックイソシアネート基を有する化合物、(E)成分の光酸発生剤及び(F)溶剤を含有し、且つ、それぞれ所望により、(G)成分のアミン化合物、(H)成分の界面活性剤、及びその他添加剤のうち一種以上を更に含有することができる組成物である。
中でも、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分100質量部に基づいて、0.5乃至100質量部の(B)成分、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に基づいて、1乃至80質量部の(C)成分、1乃至80質量部の(D)成分、及び、0.5乃至80質量部の(E)成分を含有し、これら成分が(F)溶剤に溶解したポジ型感光性樹脂組成物。
[2]:上記[1]の組成物において、更に(G)成分を(A)成分と(B)成分の合計100質量部に基づいて、0.001乃至5質量部含有するポジ型感光性樹脂組成物。
[3]:上記[1]又は[2]のポジ型感光性樹脂組成物中に、更に(H)成分を0.2質量%以下含有するポジ型感光性樹脂組成物。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、例えば1乃至80質量%であり、また例えば5乃至60質量%であり、または10乃至50質量%である。ここで、固形分とは、ポジ型感光性樹脂組成物の全成分から(F)溶剤を除いたものをいう。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、その調製法としては、例えば、(A)成分(アルカリ可溶性アクリル重合体)を(F)溶剤に溶解し、この溶液に(B)成分(アルカリ可溶性樹脂)、(C)成分(ビニルエーテル基を有する化合物)、(D)成分(ブロックイソシアネート基を有する化合物)、(E)成分(光酸発生剤)及び(H)成分(界面活性剤)を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じて(G)成分(アミン化合物)及び/又はその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の調製にあたっては、(F)溶剤中における重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができ、この場合、この(A)成分の溶液に前記と同様に(B)成分、(C)成分、(D)成分などを入れて均一な溶液とする際に、濃度調整を目的としてさらに(F)溶剤を追加投入してもよい。このとき、特定共重合体の形成過程で用いられる(F)溶剤と、ポジ型感光性樹脂組成物の調製時に濃度調整のために用いられる(F)溶剤とは同一であってもよいし、異なってもよい。
而して、調製されたポジ型感光性樹脂組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
なお、本発明の上記(A)成分であるアクリル重合体と同(B)成分として挙げられたポリイミドは、従来、感光性樹脂材料において夫々ベースポリマーとして汎用されている。しかしながら両者はポリマー形態同士であると相溶性が悪いという問題があり、このため、例えばアクリルモノマーとポリイミド(例えば特開平10−55065号公報、特開平11−052572号公報、特許第3211108号公報を参照のこと)、或いは、アクリルモノマーとイミドモノマーのように、少なくとも一方をモノマー形態で用いる必要があった。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物においては、上記アクリル重合体((A)成分)及びポリイミド((B)成分)のほかに(C)成分乃至(F)溶剤を含有する配合としたことにより、これまで解消できなかった上述の相溶性の問題が解決されて安定系となり、その後の硬化膜の調製に使用することが可能となったものである。
<塗膜及び硬化膜>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属例えばアルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)の上に、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布などによって塗布し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で予備乾燥することにより、塗膜を形成することができる。その後、この塗膜を加熱処理することにより、ポジ型感光性樹脂膜が形成される。
この加熱処理の条件としては、例えば、温度70℃乃至160℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃乃至140℃、0.5乃至10分間である。
また、ポジ型感光性樹脂組成物から形成されるポジ型感光性樹脂膜の膜厚は、例えば0.1乃至30μmであり、また例えば0.2乃至10μmであり、更に例えば0.2乃至5μmである。
そして、形成されたポジ型感光性樹脂膜は、形成時の加熱処理により、(C)成分のビニルエーテル基を有する化合物が(A)成分のアルカリ可溶性アクリル重合体に架橋することにより、アルカリ現像液に難溶な膜となる。この場合、加熱処理の温度が上記の温度範囲の下限よりもより低い場合には、熱架橋が不十分なものとなり、未露光部において膜減りが生じることがある。また、加熱処理の温度が上記の温度範囲の上限を超えて高すぎる場合には、一旦形成された熱架橋部が再び切断され、未露光部において膜減りをひき起こすことがある。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物から形成されるポジ型感光性樹脂膜は、所定のパターンを有するマスクを用いて紫外線、ArF、KrF、F2レーザー光等の光で露光されると、ポジ型感光性樹脂膜中に含まれる(E)成分の光酸発生剤(PAG)から発生する酸の作用によって、該膜のうち露光部はアルカリ性現像液に可溶なものとなる。
次いで、ポジ型感光性樹脂膜に対して露光後加熱(PEB)が行われる。この場合の加熱の条件としては、温度80℃乃至150℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。
その後、アルカリ性現像液を用いて現像が行われる。これにより、ポジ型感光性樹脂膜のうち、露光された部分が除去され、パターン様のレリーフが形成される。
使用されうるアルカリ性現像液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化第四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。さらに、これらの現像液には、界面活性剤などを加えることもできる。
上記の中、水酸化テトラエチルアンモニウム0.1乃至2.38質量%水溶液は、フォトレジストの現像液として一般に使用されており、本発明の感光性樹脂組成物においても、このアルカリ性現像液を用いて、膨潤などの問題をひき起こすことなく良好に現像することができる。
また、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法など、いずれも用いることができる。その際の現像時間は、通常、15乃至180秒間である。
現像後、ポジ型感光性樹脂膜に対して流水による洗浄を例えば20乃至90秒間行い、続いて圧縮空気もしくは圧縮窒素を用いてまたはスピニングにより風乾することにより、基板上の水分が除去され、そしてパターン形成された膜が得られる。
続いて、斯かるパターン形成膜に対して、熱硬化のためにポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性などに優れ、良好なレリーフパターンを有する膜が得られる。
ポストベークとしては、一般に、温度140℃乃至250℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5乃至30分間、オーブン中の場合には30乃至90分間処理するという方法が採られる。
而して、斯かるポストベークにより、目的とする、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
以上のように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物により、十分高感度であり且つ現像の際に未露光部の膜減りが観測されない程に事実上無く、、微細なパターンを有する塗膜を形成することができる。
そして上述したように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上述の(A)成分乃至(F)溶剤並びに所望により(G)成分及び/又は(H)成分を含有する配合とし、該樹脂組成物から硬化膜を得ることにより、ITOスパッタリング時にクラック等の膜のダメージの無い硬化膜となる。
そのため、従来これまで化学増幅型レジストが適用されていないところのTFT型液晶素子のアレイ平坦化膜などの液晶又は有機ELディスプレイにおける各種の膜材料の用途、並びにマイクロレンズなどの用途にも好適であるという効果が得られる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CHMI:N−シクロヘキシルマレイミド
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
ABL:2,2’−トリフルオロメチル−4、4’−ジアミノビフェニル
NMP:N−メチルピロリドン
TA:トリメリット酸無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物
DDS:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
DBA:3,5−ジアミノ安息香酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PAG1:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 CGI1397(商品名)(2−メチル−α[5−[[(プロピルスルフォニル)オキシ]イミノ]−2(5H)−チエニリデン]ベンゼンアセトニトリル)
PVE1: 1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル
NCO1:デグサAG製 VESTAGON(登録商標)B 1065(商品名)
Figure 0005163899
(式中、Rは有機基を表わす。)
NCO2:デグサAG製 VESTAGON(登録商標)BF 1540(商品名)
Figure 0005163899
(式中、Rは有機基を表わす。)
R30:大日本インキ化学工業(株)製 メガファック R−30(商品名)
GT4:ダイセル化学工業(株)製 エポリード GT−401(商品名)(エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン)
MPTS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
P200:東洋合成工業(株)製 P−200(商品名)4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール1モルと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド2モルとの縮合反応によって合成される感光剤
P5:群栄化学工業(株)製レヂトップPSM−4327(商品名)フェノールノボラック樹脂
P6:丸善石油化学(株)製マルカリンカーCHM(商品名)ポリヒドロキシスチレンとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルの共重合体。
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
以下の合成例に従い得られる特定共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1ml/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表される。
[特定共重合体、ポリイミド及びポリイミド前駆体の製造]
<合成例1>
特定共重合体を構成するモノマー成分として、MAA 15.5g、CHMI 35.3g、HEMA 25.5g、MMA 23.7gを使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN 5gを使用し、これらを溶剤PGMEA 200g中において温度60℃乃至100℃で重合反応させることにより、Mn4,100、Mw7,600である(A)成分(特定共重合体)の溶液(特定共重合体濃度:27.5質量%)を得た。(P1)
<合成例2>
CBDA 25.0g、ABL 48.0gをNMP 242.1中23℃で24時間反応させることでポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液にTA 8.6gとNMP 34.6gを添加し23℃で24時間反応させることによって、Mn4,000、Mw7,400である(B)成分(アミン末端を封止したポリイミド前駆体)の溶液(ポリイミド前駆体濃度:20.0質量%)を得た。(P2)
<合成例3>
合成例2で得られたポリイミド前駆体溶液(P2)250.0gをN−メチルピロリドン250.0gにて希釈後、無水酢酸35.8g及びピリジン27.6gを加え、23℃で2時間、脱水閉環反応を行った。この溶液を50%メタノール水溶液中に投入後、ろ別乾燥して、(B)成分(ポリイミド)を粉末として得た。得られたポリイミドのMnは4,000、Mwは7,400、イミド化率は78%であった。(P3)
<合成例4>
6FDA 17.8g、DDS 4.92g及びDBA 3.12gをPGMEA 145.6中75℃で20時間反応させ、Mn4,200、Mw8,400である(B)成分(ポリイミド前駆体)の溶液を得た。(P4)
[ポジ型感光性樹脂組成物の製造]
<実施例1乃至3及び比較例1乃至4>
次の表1に示す組成に従い、(A)成分の溶液に、(B)成分又は(B)成分の溶液(比較例においては(B)成分含まず)、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)溶剤、更に(H)成分を所定の割合で混合し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とすることにより、各実施例及び各比較例のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
Figure 0005163899
<比較例5>
アルカリ可溶性アクリル重合体として、合成例1で得られた特定共重合体溶液(P1)5.5gに、1,2−キノンジアジド化合物としてP200を1.1g、エポキシ系架橋性化合物としてGT4を1.1g、界面活性剤としてR30を0.0039g、密着助剤としてMPTSを0.25g、溶剤としてPGMEA25.6gを混合し、室温で8時間攪拌してポジ型感光性樹脂組成物を調整した。
得られた実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例5の各組成物について、それぞれ、感度、膜減り(未露光部における)、高温焼成後の光透過率(透明性)、ITOスパッタ耐性、MEA耐性及び耐熱性の各項目について、以下の手順に従い評価を行った。
尚、ポジ型感光性樹脂組成物から硬化膜を得る際、比較例5については、現像後、ポストべーク前の段階でフォトブリーチングが行われる一方、実施例1乃至10及び比較例1乃至4については、該フォトブリーチングをせずに、露光後、現像前の段階で露光後加熱(PEB)が行われることから、この点で、両者の評価手順は、以下のとおり異なるものとなっている。
[感度の評価]
<実施例1乃至3、比較例1乃至4>
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm2の紫外線を一定時間照射し、次いで温度110℃で120秒間ホットプレート上において露光後加熱(PEB)を行った。その後0.4質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬することで現像を行った後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。露光部において溶け残りのなくなる最低の露光量(mJ/cm2)を感度とした。
<比較例5>
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS製 F20を用いて測定した。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm2の紫外線を一定時間照射し、その後0.4質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬することで現像を行った後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。露光部において溶け残りのなくなる最低の露光量(mJ/cm2)を感度とした。
[膜減りの評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この膜を0.4質量%TMAH水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いで、この膜の厚さを測定することで、現像による未露光部の膜減り度合いを評価した。この評価における膜厚は、FILMETRICS製 F20を用いて測定した。
[ITOスパッタ耐性の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を230℃で30分加熱することによりポストベークを行い、膜厚1.9μmの硬化膜を形成した。この塗膜にITO膜厚5000Å、スパッタ圧力0.35Pa、Ar流量74cm3/min、基板加熱温度200℃、スパッタ時間37.6分の条件でITOスパッタリングを行った。スパッタリングの膜表面を光学顕微鏡にて観察し、表面にクラックの入っていないものを○、クラックの入っているものを×とした。
[透明性の評価]
<実施例1乃至3、比較例1乃至4>
ポジ型感光性樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度120℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4TMAH水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。ついで230℃で30分加熱することによりポストベークを行い、膜厚1.9μmの硬化膜を形成した。この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADZU UV−2550型番)を用いて200〜800nmの波長で測定した。さらにこの塗膜を250℃で30分間加熱した後、透過率を測定した。この評価における膜厚は、FILMETRICS社製 F20を用いて測定した。
<比較例5>
ポジ型感光性樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度120℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.4μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4TMAH水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm2の紫外線を800mJ/cm2照射し、 ついで230℃で30分加熱することによりポストベークを行い、膜厚1.9μmの硬化膜を形成した。この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADZU UV−2550型番)を用いて200〜800nmの波長で測定した。さらにこの塗膜を250℃で30分間加熱した後、透過率を測定した。この評価における膜厚は、FILMETRICS社製 F20を用いて測定した。
[MEA耐性の評価]
<実施例1乃至3、比較例1乃至4>
ポジ型感光性樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度120℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4質量%TMAH水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いで、温度230℃で30分加熱することによりポストベークを行い、膜厚1.9μmの硬化膜を形成した。この塗膜を温度60℃に加熱したモノエタノールアミンに20分間浸漬させた後、純水で20秒間洗浄した。ついで温度180℃のホットプレート上で10分間乾燥させた後、膜厚および透過率を測定した。ポストベーク後の膜厚とMEA処理、乾燥後の膜厚および透過率の変化がないものをMEA耐性○、減少したものを×とした。
<比較例5>
ポジ型感光性樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度120℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4質量%TMAH水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm2の紫外線を800mJ/cm2照射し、次いで、温度230℃で30分加熱することによりポストベークを行い、膜厚1.9μmの硬化膜を形成した。この塗膜を温度60℃に加熱したモノエタノールアミンに20分間浸漬させた後、純水で20秒間洗浄した。ついで温度180℃のホットプレート上で10分間乾燥させた後、膜厚および透過率を測定した。ポストベーク後の膜厚とMEA処理、乾燥後の膜厚および透過率の変化がないものをMEA耐性○、減少したものを×とした。
[耐熱性の評価]
上記の[MEA耐性の評価]において、基板を石英基板からシリコンウエハーに変更した以外は同様の方法で、膜厚1.9μmの硬化膜を形成した。この硬化膜を削り取って試とし、DTA−TG測定した。試料の質量が5質量%減少する温度を5%質量減少温度として評価した。
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を、次の表2に示す。
Figure 0005163899
実施例1乃至3については、いずれも、高感度であり、未露光部における膜減りが測定結果において事実上観測されず、ITOスパッタ耐性が高く、更に高い透過率を有し、MEAに対する耐性も高かった。
比較例1及2は、高感度であり、未露光部の膜減りも事実上観測されず、高い透過率、MEA耐性及び耐熱性を示したが、ITOスパッタリング時にクラックが見られた。
比較例3はITOスパッタ耐性を有していたものの、透過率、耐熱性に劣り、又、MEA処理後に膜減りが見られた。
比較例4はITOスパッタリングによりクラックが見られ、透過率、耐熱性に劣り、又、MEA処理後に膜減りが見られた。
比較例5は低感度で未露光部の膜減りがあり、ITOスパッタリング時にクラックが見られ、MEA処理により透過率の低下が見られた。
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物は、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、平坦化膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料として好適であり、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルターの保護膜、アレイ平坦化膜、反射型ディスプレイの反射膜下側の凹凸膜、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適であり、さらにマイクロレンズ材料などの各種電子材料としても好適である。

Claims (12)

  1. 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び()溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
    (A)成分:カ ルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基の群から選ばれる少なくとも一種と、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基及び活性水素を有するアミノ基
    の群から選ばれる少なくとも一種を有し、且つ、数平均分子量が2,000乃至30,000であるアルカリ可溶性アクリル重合体
    (B)成分:主鎖中に芳香族環または脂環構造を有するアルカリ可溶性樹脂
    (C)成分:1分子中二個以上のビニルエーテル基を有する化合物
    (D)成分:1分子中二個以上のブロックイソシアネート基を有する化合物
    (E)成分:光酸発生剤
    (F)溶剤
  2. (B)成分が、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれるアルカリ可溶性樹脂である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  3. (B)成分のアルカリ可溶性樹脂の数平均分子量が2,000乃至30,000である、請求項1又は請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  4. (B)成分が、フッ素原子で置換されたアルキル基を有するアルカリ可溶性樹脂である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  5. (B)成分がポリイミドを含むアルカリ可溶性樹脂であり、該ポリイミドは(A)成分の100質量部に対して0.5乃至20質量部含まれている、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  6. (B)成分がポリイミド前駆体を含むアルカリ可溶性樹脂であり、該ポリイミド前駆体は(A)成分の100質量部に対して5乃至100質量部含まれている、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  7. (E)成分が、光の照射によりスルホン酸を発生する化合物である請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  8. (G)成分として、アミン化合物を更に含有する請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  9. (H)成分として、フッ素系界面活性剤を更に含有する請求項1乃至請求項8のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  10. 請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られる硬化膜。
  11. 請求項10記載の硬化膜からなる層間絶縁膜。
  12. 請求項10記載の硬化膜からなるマイクロレンズ。
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