図面を参照しながら、本発明のプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造、プレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造を有する建物、及びプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造を有する建物の施工方法を説明する。
なお、本実施形態では、鉄筋コンクリートによって形成されたプレキャストコンクリート(以降、PCaと記載する)製の柱梁部材を用いた例を示すが、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、及びプレストレストコンクリート等のさまざまなPCa製の柱梁部材を用いた接合構造、建物、及び建物の施工方法へ適用することができる。
<第1の実施形態の構成>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1の斜視図に示すように、鉄筋コンクリートによって形成されたPCa製の柱梁部材10は、柱梁仕口部12、柱梁仕口部12の下方に設けられた下柱部14、柱梁仕口部12の上方に設けられた上柱部16、及び柱梁仕口部12の側方に設けられた4つの梁部18A〜18Dを一体にして形成されている。
図2(a)の正面図に示すように、柱梁部材10の下方には、鉄筋コンクリートによって形成されたPCa製の柱部材20が位置し、この柱部材20上に柱梁部材10が載置される。柱部材20の上端部には、柱部材20の上端面から突出しないように柱部材20の外周に沿って12本の中空管22が埋設されている。これらの中空管22は、柱部材20に設けられた柱鉄筋24の上端部と接続されている。
中空管22は、柱鉄筋24や後に説明する柱鉄筋28をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の機械式継手となっており、図2(a)の状態において、柱鉄筋24は、この柱鉄筋24の上方先端が中空管22の長さ方向の略中央の位置に達する程度まで中空管22に挿入されている。そして、これにより柱部材20の上端部に孔26を形成している。
柱部材20には、中空管22及び柱鉄筋24の少なくとも一方を囲むようにせん断補強筋30が鉛直方向に複数配置されている。そして、中空管22、柱鉄筋24、及びせん断補強筋30は、柱部材20を形成するコンクリートVによって一体となっている。
下柱部14には、下柱部14の外周に沿って12本の柱鉄筋28が設けられている。また、柱鉄筋28の下端部は下柱部14の下端面から突出している。
下柱部14には、柱鉄筋28を囲むようにせん断補強筋32が鉛直方向に複数配置されている。そして、柱鉄筋28及びせん断補強筋32は、下柱部14を形成するコンクリートVによって一体となっている。
柱鉄筋24、28の径の大きさは同じであり、中空管22と柱鉄筋28の中心位置の平面配置は、ほぼ同じになっている。
柱梁部材10の上柱部16の上端部の構造は、柱部材20の上端部の構造と同様なので説明を省略する。この場合、柱部材20に設けられた柱鉄筋24が柱梁部材10に設けられた柱鉄筋28となり、柱部材20に設けられたせん断補強筋30が柱梁部材10に設けられたせん断補強筋32となる。
図3(a)の正面図には、2つの柱梁部材10を隣り合わせて配置し、一方の柱梁部材10の梁部18Aの端面を他方の柱梁部材10の梁部18Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、他方の柱梁部材10の梁部18Cが梁部材となる。また、梁部18A、18Cの端面が、梁部18A、18Cの接合面となる。
梁部18C端部には、梁部18Cの端面から突出しないようにシース管36が埋設され、これにより梁部18Cの端部に挿入部としての孔38を形成している。
シース管36は、梁部18Cの横断面において上部と下部とに水平方向に3本並んで略等間隔に配置されている。すなわち、合計6本(=2×3)のシース管36が設けられている。
シース管36には、梁部18Cの上部と下部とに設けられた梁鉄筋44の端部が挿入されている。梁鉄筋44は、端部が梁部18Cの端面から突出しないように配置されている。
梁部18Cには、梁鉄筋44とシース管36、又は梁鉄筋44を囲むようにせん断補強筋46が水平方向に複数配置されている。そして、梁鉄筋44、せん断補強筋46、及びシース管36は、梁部18Cを形成するコンクリートVによって一体となっている。
梁部18Aの端部には、梁部18Aの端面から突出しないようにシース管40が埋設され、これにより梁部18Aの端部に孔42を形成している。
図3(a)のA−A断面である図4に示すように、シース管40は、梁部18Aの横断面において上部と下部とに水平方向に3本並んで略等間隔に配置されている。すなわち、合計6本(=2×3)のシース管40が設けられている。
図3(a)に示すように、シース管40には、梁部18Aの上部と下部とに設けられた梁鉄筋48の端部が挿入されている。梁鉄筋48は、端部が梁部18Aの端面から突出しないように配置されている。
梁部18Aには、梁鉄筋48とシース管40、又は梁鉄筋48を囲むようにせん断補強筋50が水平方向に複数配置されている。そして、梁鉄筋48、シース管40、及びせん断補強筋50は、梁部18Aを形成するコンクリートVによって一体となっている。
なお、1つの柱梁部材10に設けられた梁部18A、18Cに配置される梁鉄筋が梁部18Aから梁部18Cに渡って一続きで配置されている場合には、梁鉄筋44と梁鉄筋48とは同じ部材を示していることになる。
シース管40によって形成された孔42には、接合手段としての中空管52が収容されている。すなわち、梁部18Aに接合手段としての中空管52が収容されている。
中空管52は、梁鉄筋44、48をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の機械式継手となっており、図3(a)の状態で、梁鉄筋48は中空管52に挿入され、また、中空管52は、端部が梁部18Aの端面から突出しないように孔42に収容されている。
梁鉄筋44、48の径の大きさは同じであり、シース管36、40の内径及び外径の大きさは同じになっている。また、シース管36、40、及び梁鉄筋44、48の中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。
<第1の実施形態の作用及び効果>
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
図3で示したプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造54を有する建物は、図5に示す建物の施工方法によって構築される。なお、説明の都合上、床スラブ56の左側に設置される柱部材20を柱部材20Aとし、床スラブ56の略中央に設置される柱部材20を柱部材20Bとし、床スラブ56の右側に設置される柱部材20を柱部材20Cとする。さらに、柱部材20A〜20C上に載置される柱梁部材10を柱梁部材10A〜10Cとする。
まず、図5(a)に示すように、建物の1階の床スラブ56上に柱部材20A〜20Cを設置する。
床スラブ56上への柱部材20A〜20Cの設置は、後に説明する柱部材20と柱梁部材10の下柱部14との接合方法と同様の方法を用い、床スラブ56下方に設けられた基礎部(不図示)に配置された柱鉄筋と柱部材20A〜20Cに配置された柱鉄筋24とを床スラブ56を介して接続することによって行う。なお、床スラブ56が基礎部になっている場合には、この基礎部上に柱部材20A〜20Cを設置する。また、床スラブ56や基礎部上に柱部材20A〜20Cを設置できる方法であれば、他の設置方法を用いてもよい。
次に、図5(a)に示すように、柱部材20A上に、柱梁部材10Aの下柱部14を載置する。このとき、図2(a)に示すように、柱部材20の上端部に設けられた中空管22によって形成された孔26に柱鉄筋28の下端部が挿入され、柱部材20と柱梁部材10の下柱部14とが接合されて図2(b)の状態になる。
図6に示すように、柱部材20の上端面の四隅には雌ネジ58が形成されており、この雌ネジ58にねじ込んだボルト60のねじ込み量によって、柱梁部材10の設置高さを調整する。
このボルト60は、柱梁部材10の上柱部16の上端面の四隅にも設けられており、これによって、柱梁部材10の上柱部16上に載置される柱梁部材10の設置高さを調整する。ここでは、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面との間に20mm程度の隙間ができるように調整する。
次に、図2(b)に示すように、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面との間に形成された隙間空間S1内、及び中空管22内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて、中空管22に柱鉄筋28を定着し、柱部材20と柱梁部材10Aの下柱部14とを一体化する。
隙間空間S1内、及び中空管22内に硬化材Wを充填する際には、隙間空間S1の外周部をエアーホースや型枠等によって塞いでおく。エアーホースを用いれば硬化材Wを充填するための準備作業の手間をより低減できるので好ましい。
また、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面との間に形成される隙間は小さいので、型枠を用いる場合においても、コンクリート打設のために設ける型枠とは異なり簡易な型枠でよいので硬化材Wを充填するための準備作業の手間を低減することができる。
次に、図5(a)に示すように、柱部材20C上に柱梁部材10Cの下柱部14を載置する。そして、柱梁部材10Aと同様の方法を用いて、柱梁部材10Cの設置高さの調整や、柱部材20Cと柱梁部材10Cの下柱部14との接合を行い、柱部材20Cと柱梁部材10Cの下柱部14とを一体化する。
次に、図5(b)に示すように、柱部材20B上に柱梁部材10Bの下柱部14を載置する。このとき、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面が、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置し(柱梁部材設置工程)、さらに、柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(端面)との間に小さな隙間を有するように、又は柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(端面)とを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
施工上、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18Cの接合面(端面)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、この状態で、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面は、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)の端面と対向している。
ここで、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面が、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置するときに、接合手段としての中空管52は梁部18Aに収容されており、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)に中空管52は挿入されていない(図3(a)の状態)。すなわち、梁部18Aの接合面(端面)から中空管52は突出していない。
また、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面が、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置するときに、接合手段としての中空管52は柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)に収容されており、柱梁部材10Bの梁部18Cの接合面(端面)に中空管52は挿入されていない(図3(a)の状態)。すなわち、梁部18Aの接合面(端面)から中空管52は突出していない。
これにより、柱梁部材10Bを上下方向に移動させて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)、及び柱梁部材10Bの梁部18Cと柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)とを接合することができる。
例えば、図7の平面図に示すように、建物の施工領域を2つにわけ、同じ地点Kから右半分の領域を半時計回り(矢印262の順)、左半分の領域を時計回り(矢印264の順)に柱梁部材266、268を設置し、柱梁部材266、268の梁部を環状に配置する場合には、矢印270のように柱梁部材266、268を横方向又は水平に移動させて柱梁部材266、268の梁部同士を接合していくことができる。
しかし、最後に配置する柱梁部材266(図7に点線で示した柱梁部材266)の両側には既に柱梁部材266、268が設置されているために、柱梁部材266を横方向又は水平に移動させて柱梁部材の梁部同士を接合することができない。このような場合に、柱梁部材10を上下方向に移動させて梁部18A、18C同士を接合する図3の接合方法は有効である。
さらに、これ以外の状況においても、既に設置された梁部の間に柱梁部材を設置しなければならない状況やクレーンのブーム移動範囲が制約された状況等によって柱梁部材を横方向や水平に移動させることができない場合に、図3の接合方法は優れた効果を発揮する。
なお、柱梁部材266は、図1で示した柱梁部材10に梁部18B、18Dが設けられていない部材であり、柱梁部材268は、図1で示した柱梁部材10に梁部18C、18Dが設けられていない部材である。
次に、図5(c)に示すように、柱梁部材10Aと同様の方法を用いて、柱梁部材10Bの設置高さの調整や、柱梁部材10Bの下柱部14と柱部材20Bとの接合を行い、柱部材20と柱梁部材10Bの下柱部14とを一体化する。
次に、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)、及び柱梁部材10Bの梁部18Cと柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)とを接合する(接合工程)。
接合方法は、図3(a)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aに収容されている接合手段としての中空管52をこの梁部18Aから引き出して、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)に形成された挿入部としての孔38に挿入する。
このとき、柱梁部材10Aの梁部18Cに設けられた梁鉄筋44の端部が中空管52に挿入される。これにより、柱梁部材10Bの梁部18Aに配置された梁鉄筋48と、柱梁部材10Aの梁部18Cに配置された梁鉄筋44とが中空管52によって接続され、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとが接合される。
すなわち、接合手段としての中空管52が柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図3(b)の正面図には、図3(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とを接合した状態が示されている。
次に、図3(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成された隙間空間S2内、シース管36、40内、及び中空管52内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて、中空管52に梁鉄筋44、48を定着し、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18Cとを一体化する。
隙間空間S2内、シース管36、40内、及び中空管52内に硬化材Wを充填する際には、隙間空間S2の外周部をエアーホースや型枠等によって塞いでおく。エアーホースを用いれば硬化材Wを充填するための準備作業の手間をより低減できるので好ましい。
また、柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成される隙間は小さいので、型枠を用いる場合においても、コンクリート打設のために設ける型枠とは異なり簡易な型枠でよいので硬化材Wを充填するための準備作業の手間を低減することができる。
次に、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)との接合方法と同様の方法で、柱梁部材10Bの梁部18Cと柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)とを接合し、柱梁部材10Bの梁部18Cと柱梁部材10Cの梁部18Aとを一体化する。
このように、接合手段を、梁部18Aに配置された梁鉄筋48と梁部18Cに配置された梁鉄筋44とを接続する中空管52とすることによって、梁鉄筋44、48同士を確実に接続することができる。
また、中空管52により梁鉄筋44、48同士を接続した後に、中空管52内に硬化材Wを注入して中空管52に梁鉄筋44、48を定着することによって、中空管52に梁鉄筋44、48を確実に固定することができる。
次に、図5(b)の作業(柱部材上への柱梁部材の設置、柱梁部材の下柱部と柱部材との接合、及び隣り合って配置される柱梁部材の梁部同士の接合)を繰り返して、建物の一層部分を構築する(図5(c)の状態)。
後は、図5(a)〜(c)と同様の作業を階を上げながら繰り返すことにより、プレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造54を屋上階まで積み上げて、建物を構築する。
図5では、建物1階の床スラブ56上に設置した柱部材20上に柱梁部材10を設置し、隣り合って設置された柱梁部材10の梁部18A、18C同士を接合する施工方法について示したが、他の階に設置された柱梁部材10上に次の柱梁部材10を設置する場合においても同様の施工方法で行えばよい。
例えば、図5(c)において柱部材20A〜20C上に載置された柱梁部材10A〜10C上に、次の柱梁部材10を載置する場合には、図5(c)において柱部材20A〜20C上に載置された柱梁部材10A〜10Cの上柱部16を、図5(a)の柱部材20A〜20Cであると置き換えて考えればよい。
また、2階以上の床スラブの施工は、柱梁部材10を設置し、隣り合った柱梁部材10の梁部18A、18C同士を接合した後のどのタイミングで行ってもよい。
これまで説明したように、第1の実施形態では、梁部(柱梁部材10Bの梁部18A、18C)と梁部材(柱梁部材10Aの梁部18C、柱梁部材10Cの梁部18A)とを簡単な方法で接合することができるので、梁部と梁部材との接合作業の手間を低減し、効率よく接合作業を行うことが可能となる。
また、梁部(柱梁部材10Bの18A、18C)の接合面(端面)と梁部材(柱梁部材10Aの18C、柱梁部材10Cの18A)の接合面(端面)とが密着するように、又は梁部(柱梁部材10Bの18A、18C)の接合面(端面)と梁部材(柱梁部材10Aの18C、柱梁部材10Cの18A)の接合面(端面)との間に小さな隙間を有するように、梁部材に対して梁部を配置することができる。
これにより、梁部と梁部材との接合部(梁部の接合面と梁部材の接合面との間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。
また、柱とPCa製の梁とがこの梁の端部で接合される従来の接合方法を用いた場合、PCa製の梁の端部付近には大きな曲げ応力が発生するので、応力上不利な箇所での接合となる。
これに対して図3で示した接合方法では、梁の端部ではなく、梁の中間部において梁同士(梁部18Aと梁部18C)が接合されるので、応力上有利な箇所(例えば、梁に発生する曲げモーメントが小さい反曲点)で接合を行うことができる。
また、柱梁仕口部12、下柱部14、上柱部16、及び梁部18A〜18Dを一体にして1つの柱梁部材10を形成しているので、クレーンによる部材の揚上回数が減り、また、部材同士の接合箇所が少なくなる。よって、施工性の向上を図ることができる。
また、例えば、図8に示すように、PCa製の逆梁256とPCa製の順梁252とが直交するように柱258に支持され、これらの逆梁256と順梁252とによって共通の床スラブ250を支持する構造体であり、また柱258が、PCa製の下柱部材258Bと、下柱部材258B上に設置されて逆梁256との接合部となるPCa製の柱梁仕口部材254と、柱梁仕口部材254上に設置されるPCa製の上柱部材258Aとによって形成されている場合には、下柱部材258Bと柱梁仕口部材254との目地262が、順梁252と柱258との接合面に位置してしまい接合強度が弱くなってしまう。よって、構造耐力上好ましくない。
ここで逆梁256とは、建物のバルコニー手摺り等を梁として利用し、梁の底面付近に床スラブ250が取り付くL字型断面の梁であり、順梁252とは、梁上に床スラブ250が載置されるT字型断面の梁である。
これに対してPCa柱梁部材の接合構造54では、柱梁仕口部12、下柱部14、上柱部16、及び梁部18A〜18Dを一体にして柱梁部材10が形成されているので、このような問題を防ぐことができる。
なお、図3では、梁部18A、18Cの上部と下部とに設けられた梁鉄筋48、44同士を中空管52で接続した例を示したが、図9(a)の正面図、及び図9(a)のB−B断面図である図10に示すように、梁部18A、18Cの上下方向中間部に梁鉄筋48、44が設けられている場合には、これらの梁鉄筋48、44同士を接続してもよい。
図9(a)に示すように、梁部18Cには、梁部18Cの横断面において水平方向に2本、鉛直方向に4本並んで略等間隔にシース管36が配置されている。すなわち、合計8本(=2×4)のシース管36が梁部18Cに設けられている。
シース管36には、梁部18Cに設けられた梁鉄筋44の端部が挿入されている。梁鉄筋44は、この梁鉄筋44の端部が梁部18Cの端面から突出しないように配置されている。
また、図9(a)、及び図10に示すように、梁部18Aには、梁部18Aの横断面において水平方向に2本、鉛直方向に4本並んで略等間隔にシース管40が配置されている。すなわち、合計8本(=2×4)のシース管40が梁部18Aに設けられている。
シース管40には、梁部18Aに設けられた梁鉄筋48の端部が挿入されている。梁鉄筋48は、この梁鉄筋48の端部が梁部18Aの端面から突出しないように配置されている。
シース管40によって形成された孔42には、接合手段としての中空管52が収容され、図9(a)の状態で、梁鉄筋48は中空管52に挿入され、また、中空管52は、端部が梁部18Aの端面から突出しないように孔42に収容されている。
シース管36、40、及び梁鉄筋44、48の中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。
梁部18Aと梁部18Cとの接合方法は、図9(a)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aに収容されている接合手段としての中空管52をこの梁部18Aから引き出して、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)に形成された挿入部としての孔38に挿入する。
このとき、柱梁部材10Aの梁部18Cに設けられた梁鉄筋44の端部が中空管52に挿入される。すなわち、接合手段としての中空管52が柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図9(b)の正面図には、図9(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とを接合した状態が示されている。
次に、図9(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成された隙間空間S2内、シース管36、40内、及び中空管52内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18Cとを一体化する。
図3では、梁部18A、18Cに設けられた6本の梁鉄筋48、44同士を中空管52によって接合し、図9では、梁部18A、18Cに設けられた8本の梁鉄筋48、44同士を中空管52によって接合した例を示したが、梁の中間部は地震時の応力が小さいので、十分な接合強度が得られれば全ての梁鉄筋同士を接合しなくてもよく、中空管52の配置や本数は適宜決めればよい。
梁に発生するモーメントによる引張力は、梁部の上部及び下部に配置された梁鉄筋によって負担されるので、図3で示したように梁鉄筋44、48を梁部18C、18Aの上部及び下部に配置し、これらの梁鉄筋44、48を中空管52によって接合するのが好ましく、さらには、これらの梁鉄筋44、48の内の梁部18A、18Cの横断面における四隅付近に配置された梁鉄筋44、48同士を中空管52によって接合するのが構造上、より好ましい。
また、図3、9では、埋設されたシース管36、40によって孔38、42を形成した例を示したが、孔38には中空管52が挿入でき、孔42には中空管52が収容できればよく、シース管以外の管材を埋設して孔38、42を形成してもよい。
また、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り出すことによって孔を形成してもよい。また、穿孔により孔を形成してもよい。
<第1の実施形態の変形例1>
図3では、中空管52の挿入部をシース管36によって形成された孔38とし、中空管52の収容部をシース管40によって形成された孔42とした例を示したが、中空管52の挿入部を複数の中空管52が挿入可能な空間としてもよいし、中空管52の収容部を複数の中空管52が収容可能な空間としてもよい。
例えば、図11〜13に示す接合方法を用いて梁部同士を接合してもよい。図11(a)の正面図には、2つの柱梁部材10を隣り合わせて配置し、一方の柱梁部材10の梁部18Aの端面を他方の柱梁部材10の梁部18Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、他方の柱梁部材10の梁部18Cが梁部材となる。また、梁部18A、18Cの端面が、梁部18A、18Cの接合面となる。
図11(a)、及び図11(a)のC−C断面図である図12に示すように、梁部18Aの端部には直方体状の空間P1が形成されている。
梁部18Aの端面には開口部72が設けられ、梁部18Aの端部側面の一面には開口部74が設けられている。そして、この開口部72、74が空間P1とつながっている。すなわち、空間P1の3つの側面が壁で覆われている。
梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋48、44、及びせん断補強筋50、46の配置は、図9、10で示したものと同様であるので説明を省略する。
空間P1には、梁部18Aに設けられた梁鉄筋48の内、梁部18Aの横断面において四隅付近に配置された梁鉄筋48を除いた8本(=2×4)の梁鉄筋48の端部が配置されている。
また、空間P1を覆う3つの壁に沿って、空間P1に位置する8本の梁鉄筋48の端部を囲むようにせん断補強筋51が水平方向に複数配置されている。
図11(a)、及び図11(a)のD−D断面図である図13に示すように、梁部18Cの端部には、挿入部としての直方体状の空間P2が形成されている。
梁部18Cの端面には開口部76が設けられ、梁部18Cの端部側面の一面には開口部78が設けられている。そして、この開口部76、78が空間P2とつながっている。すなわち、空間P2の3つの側面が壁で覆われている。
空間P2には、梁部18Cに設けられた梁鉄筋44の内、梁部18Cの横断面において四隅付近に配置された梁鉄筋44を除いた8本(=2×4)の梁鉄筋44の端部が空間P2に配置されている。
また、空間P2を覆う3つの壁に沿って、空間P2に位置する8本の梁鉄筋44の端部を囲むようにせん断補強筋47が水平方向に複数配置されている。
梁部18Aの端部に形成された空間P1には8本の中空管52が収容されている。中空管52は、図11(a)の状態で、端部が梁部18Aの端面から突出しないように収容され、梁鉄筋48が挿入されている。
また、この状態で、中空管52を囲むせん断補強筋80が、空間P1の開口部72と逆側の端部(図11(a)の空間P1の右端部)付近で複数重ねて配置されている。
梁部18Aと梁部18Cの接合方法は、まず、空間P1から梁部18C側へ中空管52を引き出し、梁部18Cの端部に形成された空間P2に挿入する。空間P1から中空管52を引き出す際には、開口部74から空間P1に手や工具などを入れて中空管52を梁部18C側へ移動させてもよい。
このとき、梁部18Cに設けられた梁鉄筋44の端部が中空管52に挿入される(接合工程)。すなわち、接合手段としての中空管52が柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図11(b)の正面図には、図11(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合した状態が示されている。
次に、梁部18Cに設けられた梁鉄筋44の端部が中空管52に挿入された後、開口部74、78から空間P1、P2に手や工具などを入れて、梁鉄筋44、梁鉄筋44と中空管52、梁鉄筋48、又は梁鉄筋48と中空管52を囲むように、図11(a)の状態において空間P1の端部に重ねられていたせん断補強筋80を水平方向に複数配置する。そして、このせん断補強筋80を結束筋等で梁鉄筋44、48や中空管52に固定する(図11(b)の状態)。
次に、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成された隙間空間S2内、空間P1、P2内、及び中空管52内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて、中空管52に梁鉄筋44、48を定着し、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18Cとを一体化する。
隙間空間S2内、空間P1、P2内、及び中空管52内に硬化材Wを充填する際には、隙間空間S2の外周部をエアーホースや型枠等によって塞ぎ、開口部74、78を型枠等によって塞いでおく。エアーホースを用いれば硬化材Wを充填するための準備作業の手間をより低減できるので好ましい。
また、柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成される隙間は小さく、空間P1、P2の3つの側面は壁で覆われているので、型枠を用いる場合においても、コンクリート打設のために型枠を設ける場合よりも型枠によって覆う面積は小さくなる。
よって、型枠の設置が容易となり、梁部18Aと梁部18Cとを接合するための準備作業の手間を低減することができる。
このように、接合手段としての中空管52の挿入部や収容部を空間とすることによって、中空管52の移動作業やせん断補強筋80の配筋作業等を容易に行うことができる。
空間P1の形状や大きさは、1本以上の中空管52を収容できる形状や大きさであればよく、例えば、1本以上の中空管52を収容できる空間P1を複数設けてもよい。
また、空間P2の形状や大きさは、1本以上の中空管52を挿入できる形状や大きさであればよく、例えば、1本以上の中空管52を挿入できる空間P2を複数設けてもよい。
また、直方体状のコンクリートブロックを梁部18Aの端部中央に残すようにして梁部18Aの端部周囲に中空管52を収容する空間を形成してもよいし、直方体状のコンクリートブロックを梁部18Cの端部中央に残すようにして梁部18Cの端部周囲に中空管52を挿入する空間を形成してもよい。
開口部74、78の形状や大きさは、開口部74、78から手や工具を入れて中空管52の移動やせん断補強筋80の配筋等の作業を行うことができる形状や大きさであればよく、開口部74、78を複数設けてもよい。大きな開口部を設ければ作業が行い易くなるし、開口部が少なければ型枠設置の作業手間が少なくて済む。
空間P1、P2を覆う梁部18A、18C端部の壁の内側にコッターを設ければ、硬化材Wを充填した後に、硬化した硬化材Wと壁との接合強度が増すので好ましい。
<第1の実施形態の変形例2>
図3、9、11では、接合手段を中空管52としたが、図14に示すように、接合される各部材に設けられた梁鉄筋に対し長手方向に重なるように配置される棒材としてもよい。
図14(a)の正面図には、2つの柱梁部材10を隣り合わせて配置し、一方の柱梁部材10の梁部18Aの端面を他方の柱梁部材10の梁部18Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、他方の柱梁部材10の梁部18Cが梁部材となる。また、梁部18A、18Cの端面が、梁部18A、18Cの接合面となる。
梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋48、44の配置は、図9、10で示したものと同様であるので説明を省略する。
図14(a)に示すように、梁部18Aには、梁部18Aの端面から突出しないように6本の中空管82が埋設され、これにより孔84を形成している。中空管82は、隣り合った梁鉄筋48の間に配置されている。
また、中空管82の孔84には、梁部18Aに埋設され梁鉄筋48と略平行に配置された鉄筋棒88の端部が挿入されている。図14(a)の状態で、鉄筋棒88の先端は中空管82の孔84の略中央の位置に達している。
また、梁鉄筋48、鉄筋棒88、中空管82を囲むせん断補強筋86が水平方向に複数配置されている。
梁部18Cの端部には直方体状の空間P3が形成されている。梁部18Cの端面には、空間P3とつながる開口部96が設けられている。すなわち、空間P3の3つの側面が壁で覆われている。
梁部18Cには、梁部18Cの端面から突出しないように6本の中空管90Aが埋設され、これにより孔92Aを形成している。そして、空間P3を介して中空管90Aと対向するように6本の中空管90Bが埋設され、これにより孔92Bを形成している。中空管90A、90Bは、隣り合った梁鉄筋44の間に配置されている。
また、梁鉄筋44、中空管90A、90Bを囲むせん断補強筋94が水平方向に複数配置されている。
中空管90A、90B、82の内径及び外径は同じであり、中空管90A、90B、82の中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。すなわち、中空管90A、90B、82の端部開口面同士は対向している。
梁部18Cに設けられた中空管90A、90Bの孔92A、92Bには、接合手段としての棒材である鉄筋棒98が挿入されている。すなわち、梁部18Cの端部に鉄筋棒98が収容されている。
この状態で、鉄筋棒98の一部は空間P3に露出しており、開口部96から手や工具等を入れて鉄筋棒98を梁部18Aの端部へ移動させることができる。
中空管90A、90B、82は、鉄筋棒98をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の機械式継手となっており、図14(a)の状態で、鉄筋棒98は、端部が梁部18Cの端面から突出しないように、中空管90A、90Bの孔92A、92Bに収容されている。
梁部18Aと梁部18Cの接合方法は、梁部18Cの端部に設けられた中空管90A、90Bの孔92A、92Bに収容されている接合手段としての鉄筋棒98を中空管90A、90Bの孔92A、92Bから引き出して、梁部18Aの端部に形成された挿入部としての孔84に挿入する(接合工程)。すなわち、接合手段としての鉄筋棒98が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図14(b)の正面図には、図14(a)の状態の後に、梁部18Aと梁部18Cとを接合した状態が示されている。
図14(b)の状態で、接合手段としての鉄筋棒98は、梁部18Aに配置された梁鉄筋48と梁部18Cに配置された梁鉄筋44とのそれぞれに対し長手方向に重なるように配置されて梁部18Aと梁部18Cとを接合する。
鉄筋棒98を中空管82の孔84に挿入した後に、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成された隙間空間S2内、空間P3内、及び中空管90A、90B、82内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて、中空管90A、90B、82に鉄筋棒98を定着し、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18Cとを一体化する。
隙間空間S2内、空間P3内、及び中空管90A、90B、82内に硬化材Wを充填する際には、隙間空間S2の外周部をエアーホースや型枠等によって塞いでおく。エアーホースを用いれば硬化材Wを充填するための準備作業の手間をより低減できるので好ましい。
また、柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)と柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に形成される隙間は小さいので、型枠を用いる場合においても、コンクリート打設のために設ける型枠とは異なり簡易な型枠でよいので硬化材Wを充填するための準備作業の手間を低減することができる。空間P3は、3つの側面が壁で覆われているので、開口部96の開口面の1面のみを塞げばよく、型枠の設置が面倒な作業にはならない。
よって、図14の接合方法を用いれば、梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋48、44の配置や本数に大きな拘束を受けることなく、接合手段としての鉄筋棒98を配置することができる。
なお、梁部18Aと梁部18Cとが接合された図14(b)の状態で、梁部18C内において鉄筋棒98と梁鉄筋44とが重なり合う長さを鉄筋棒98及び梁鉄筋44の中で最も小さい径の大きさの40倍程度以上となるようにし、梁部18A内において、鉄筋棒88、98と梁鉄筋48とが重なり合う長さを鉄筋棒88、98、及び梁鉄筋48の中で最も小さい径の大きさの40倍程度以上となるようにするのが、十分な接合強度を確保する上で好ましい。
また、梁鉄筋44、48よりも鉄筋棒88、98の本数が少なくなる場合には、鉄筋棒88、98の径の大きさを大きくするのが、十分な接合強度を確保する上で好ましい。
空間P3の形状や大きさは、それぞれの鉄筋棒98の一部が空間P3に露出する形状や大きさであればよく、開口部96の形状や大きさは、この開口部96から手や工具等を入れて鉄筋棒98を梁部18Aの端部へ移動させることができる形状や大きさであればよい。
中空管90A、90Bの孔92A、92Bは、鉄筋棒98が収容できる孔であればよく、中空管82の孔84は、鉄筋棒98が挿入できる孔であればよい。例えば、シース管以外の管材を埋設してもよいし、また、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り出すことによって孔を形成してもよい。また、穿孔により孔を形成してもよい。また、鉄筋棒98を挿入する挿入部を孔以外の空間としてもよい。
<第1の実施形態の補足説明>
なお、第1の実施形態の図3、9、11では、柱梁部材10の梁部18Aに形成された収容部(図3、9の孔42、図11の空間P1)に接合手段としての中空管52を収容し、梁部18Aから中空管52を引き出して、柱梁部材10の梁部18Cに形成された挿入部(図3、9の孔38、図11の空間P2)に挿入する例を示したが、柱梁部材10の梁部18Cに形成された収容部としての孔や空間に中空管52を収容し、梁部18Cから中空管52を引き出して、柱梁部材10の梁部18Aに形成された挿入部としての孔や空間に挿入するようにしてもよい。また、中空管52の収容部及び挿入部の一方を孔とし、中空管52の挿入部及び収容部の他方を空間としてもよい。
また、第1の実施形態の図14では、柱梁部材10の梁部18Cに形成された収容部(図14の孔92A、92B)に接合手段としての鉄筋棒98を収容し、梁部18Cから鉄筋棒98を引き出して、柱梁部材10の梁部18Aに形成された挿入部(図14の孔84)に挿入する例を示したが、柱梁部材10の梁部18Aに形成された収容部としての孔に鉄筋棒98を収容し、梁部18Aから鉄筋棒98を引き出して、柱梁部材10の梁部18Cに形成された挿入部としての孔に挿入するようにしてもよい。
また、柱梁部材10の梁部18A〜18Dのどの梁部に接合手段としての中空管52や鉄筋棒98を収容して、どの梁部に挿入部としての孔や空間を形成するかは、柱梁部材10の配置や施工手順に応じて適宜決めればよい。
例えば、柱梁部材10の梁部18A〜18Dの全てに接合手段としての中空管52を収容し、これらの梁部18A〜18Dと接合される梁部材に挿入部としての孔を形成するようにしてもよい。
また、第1の実施形態では、梁部18Aに収容されている中空管52や、梁部18Cに収容されている鉄筋棒98を梁部18A、18Cから引き出して、梁部18C、18Aに挿入する例を示したが、中空管52や鉄筋棒98を引き出す方法はどのような方法でもよく、例えば、中空管52や鉄筋棒98の引き出し方向における中空管52や鉄筋棒98の後方端部に紐を取り付けておいて、梁部18A、18Cの端面外部側からこの紐を引っ張るようにしてもよい。
また、第1の実施形態では、中空管52、82、90A、90Bを差し込み式の機械式継手としたが、中空管52、82、90A、90Bの内側に柱鉄筋をねじ込む雌ネジが形成されているねじ込み式の機械式継手としてもよい。
中空管52、82、90A、90Bをねじ込み式の機械式継手とした場合でも、ボールネジのように、梁鉄筋44、48と中空管52、又は鉄筋棒98と中空管82、90A、90Bとの間の摩擦を軽減できるようにグリースなどを縫っておけば、紐等を引っ張ることによって、中空管52や鉄筋棒98を梁部18A、18Cに形成された収容部(図3、9の孔42、図11の空間P1、図14の孔92A、92B)から引き出して梁部18C、18Aに形成された挿入部(図3、9の孔38、図11の空間P2、図14の孔84)に挿入し、梁鉄筋44に中空管52をねじ込ませたり、中空管82に鉄筋棒98をねじ込ませることができる。
先に説明したように、接合手段としての中空管52の挿入部及び収容部を空間とすれば(図11を参照のこと)、空間とつながる開口部から手や工具を入れて中空管52の移動を行うことができるので、中空管52をねじ込み式の機械式継手とする場合に有効である。
また、第1の実施形態では、図1で示したように、柱部材20の上端部に形成された孔26に、下柱部14の下端面から突出するように下柱部14に設けられた柱鉄筋28の端部を挿入して、柱部材20と下柱部14とを接合する例を示したが、構造上必要な接合強度を確保できる柱部材と下柱部との接合方法であればよく、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面との間の接合部で柱部材20の柱鉄筋と下柱部14の柱鉄筋とを接続してこの接合部にコンクリートを後打ちする従来の接合方法を用いてもよい。
また、例えば、図15の斜視図に示すような接合方法で柱部材20と下柱部14とを接合してもよい。
図15では、図1、2で示した柱梁部材10に設けられた柱鉄筋28の上端部が、上柱部16の上端面から突出し、柱部材20に設けられた柱鉄筋24の上端部が、柱部材20の上端面から突出している。
また、下柱部14の下端部には、柱鉄筋28と接続された中空管(不図示)が下柱部14の下端面から突出しないように埋設され、これによって柱鉄筋24が挿入可能な孔26を形成している。
柱部材20と柱梁部材10の下柱部14とを接合するときには、柱部材20上に、柱梁部材10の下柱部14を載置する。このとき、下柱部14の下端部に設けられた中空管によって形成された孔26に柱鉄筋24の上端部が挿入される。
そして、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面との間に形成された隙間空間S1内、及び中空管内に硬化材Wを充填し、この硬化材Wを硬化させて、中空管に柱鉄筋24を定着する。
また、第1の実施形態では、図1、2、15で示した柱鉄筋24、28の径の大きさ、図3、9、11で示した梁鉄筋44、48の径の大きさ、シース管36、40の内径及び外径の大きさ、中空管90A、90B、82の内径及び外径の大きさを同じにした例を示したが、これらの大きさは同じでなくてもよい。
柱鉄筋24、28の径の大きさや、梁鉄筋44、48の径の大きさが異なっている場合には、異なった径の鉄筋同士の接続が可能な中空管を用いればよい。
また、第1の実施形態で示した柱部材20、及び柱梁部材10の上柱部16の上端面に設けられたボルト60をなくして、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面、又は上柱部16の上端面とこの上柱部16上に載置される下柱部14の下端面とが密着するようにしてもよい。
施工上、柱部材20の上端面と下柱部14の下端面との間、又は上柱部16の上端面とこの上柱部16上に載置される下柱部14の下端面との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、第1の実施形態の図5では、床スラブ56上に3つの柱部材20A〜20Cを略等間隔に設置して建物を施工する例を示したが、柱部材の配置や数は、建物の仕様に応じて適宜決めればよい。
また、第1の実施形態で示された、柱鉄筋24、28、梁鉄筋44、48、及びせん断補強筋30、32、46、47、50、51、86、94の配置、本数、径の大きさ、形状等は、各部材に求められる強度に応じて適宜決めればよい。
また、第1の実施形態の図3、9、11では、中空管52内とシース管36、40内、空間P1、P2内とに同時に硬化材Wを充填する例を示したが、先に中空管52内に硬化材Wを注入して梁鉄筋44、48を確実に緊結したのちに、シース管36、40内、空間P1、P2内に硬化材Wを充填してもよい。
また、第1の実施形態の図14では、中空管82、90A、90B内と隙間空間S2内とに同時に硬化材Wを充填する例を示したが、先に中空管82、90A、90B内に硬化材Wを注入して鉄筋棒98を確実に緊結したのちに、隙間空間S2内に硬化材Wを充填してもよい。
また、第1の実施形態の図2では、中空管22内と隙間空間S1内とに同時に硬化材Wを充填する例を示したが、先に中空管22内に硬化材Wを注入して柱鉄筋28を確実に緊結したのちに、隙間空間S1内に硬化材Wを充填してもよい。
<第2の実施形態の構成>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態で示した梁部18A及び梁部18Cの一方にほぞ部を設け、他方にほぞ受け部を設けて、これらのほぞ部とほぞ受け部とを組み合わせて梁部18Aと梁部18Cとを接合するものである。従って、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図16(a)の斜視図には、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面106Aを柱梁部材10Aの梁部18Cの端面108Bに対向させ、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面106Bを柱梁部材10Aの梁部18Cの端面108Aに対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、柱梁部材10Aの梁部18Cが梁部材となる。
梁部18Aの端部には、ほぞ部110が設けられている。ほぞ部110は、梁部18Aの端部に突出して設けられた連結部110Aと、この連結部110Aの側方に形成された切欠き部110Bとによって構成されている。
梁部18Cの連結部114A側に形成されている連結部110Aの側面111が、梁部18Aの接合面となる。
連結部110Aには、連結部110Aを略水平に貫通する複数の連結孔112が形成されている。連結孔112は、図16(a)に示すように水平方向に4つ、鉛直方向に3つ並んで配置されている。すなわち、合計12(=4×3)の連結孔112が形成されている。
梁部18Cの端部には、ほぞ部110と同じ形状のほぞ受け部114が設けられている。ほぞ受け部114は、梁部18Cの端部に突出して設けられた連結部114Aと、この連結部114Aの側方に形成された切欠き部114Bとによって構成されている。
梁部18Aの連結部110A側に形成されている連結部114Aの側面115が、梁部18Cの接合面となる。
連結部114Aには、連結部114Aを略水平に貫通する複数の連結孔116が形成されている。
連結孔116の中心位置の配置は、連結孔112の中心位置の配置とほほ同じであり、合計12の連結孔116が形成されている。また、連結孔112と連結孔116の径の大きさは等しい。
連結部110Aの側方に形成された切欠き部110Bの形状は、連結部114Aの形状とほぼ同じになっており、連結部114Aの側方に形成された切欠き部114Bの形状は、連結部110Aの形状とほぼ同じになっている。
すなわち、ほぞ受け部114をほぞ部110と組み合わせたときに、梁部18Aと梁部18Cとが一体化されて、組み合わせ部分の横断面形状が梁部18Aの中間部118、及び梁部18Cの中間部120の横断面形状とほぼ等しい1つの梁となる。
<第2の実施形態の作用及び効果>
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
図16で示したプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造160を有する建物は、図5に示す建物の施工方法によって構築される。
梁部18Aと梁部18Cとの接合方法は、まず、柱部材20B上に柱梁部材10Bの下柱部14を載置する(図5(b)を参照のこと)。
このとき、図16(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面106A、106Bが、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面108B、108Aと対向するように柱梁部材10Bを配置し(柱梁部材設置工程)、さらに、梁部18C(梁部材)の端面108A、108Bと梁部18Aの端面106B、106Aとの間に小さな隙間を有するように、又は梁部18C(梁部材)の端面108A、108Bと梁部18Aの端面106B、106Aとを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
また、梁部18Aの接合面(側面111)と梁部18Cの接合面(側面115)との間に小さな隙間を有するように、又は梁部18Aの接合面(側面111)と梁部18Cの接合面(側面115)とを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
施工上、梁部18C(梁部材)の端面108A、108Bと梁部18Aの端面106B、106Aとの間に20mm程度の隙間を設け、梁部18Aの接合面(側面111)と梁部18Cの接合面(側面115)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、この状態で、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面は、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)の端面と対向している。
次に、梁部18Aの端部に設けられたほぞ部110と、梁部18Cの端部に設けられたほぞ受け部114とを上下方向に相対移動可能に組み合わせる。すなわち、梁部18Aの端部に設けられた連結部110Aを梁部18Cの端部に形成された切欠き部114Bに挿入する。また、同時に、梁部18Cの端部に設けられた連結部114Aは梁部18Aの端部に形成された切欠き部110Bに挿入される。
なお、説明の都合上、図5では、梁部18Aの連結部110Aと梁部18Cの連結部114Aとが正面視にて重なり合うように描かれていないが、梁部18Aと梁部18Cの接合時において梁部18Aの連結部110Aと梁部18Cの連結部114Aとは正面視にて重なり合う。
このとき、連結部110Aに形成された連結孔112の中心位置と、連結部114Aに形成された連結孔116の中心位置とがほぼ一致する。
次に、連結孔116、112に接合手段として鉄筋棒122を挿入し、この鉄筋棒122を連結部114Aと連結部110Aとに跨るように配置して、組み合った状態のほぞ部110とほぞ受け部114とを連結する(接合工程)。
すなわち、接合手段としての鉄筋棒122が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(側面111)、又は柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の接合面(側面115)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図16(b)の斜視図には、図16(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合した状況が示されている。
次に、図16(b)に示すように、梁部18Aのほぞ部110と梁部18Cのほぞ受け部114との間に形成された隙間空間S3内、及び連結孔112、116内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化剤Wを硬化させて梁部18A及び梁部18Cに鉄筋棒122を定着し、梁部18Aと梁部18Cとを一体化する。
図5(b)における柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)と柱梁部材10Bの梁部18Cとの接合方法は、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)との接合方法と同様の方法なので、説明を省略する。
これまで説明したように、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用と効果を得ることができる。すなわち、プレキャストコンクリート製の柱梁部材10の梁部18A、18C同士を接合する作業手間を低減することが可能となる。
また、梁部18C(梁部材)の端面108A、108Bと梁部18Aの端面106B、106Aとの間に小さな隙間を有するように、又は梁部18C(梁部材)の端面108A、108Bと梁部18Aの端面106B、106Aとを密着させるように、梁部18C(梁部材)に対して梁部18Aを配置することができ、さらに、梁部18Aの接合面(側面111)と梁部18Cの接合面(側面115)との間に小さな隙間を有するように、又は梁部18Aの接合面(側面111)と梁部18Cの接合面(側面115)とを密着させるように、梁部18C(梁部材)に対して梁部18Aを配置することができるので、梁部18Aと梁部18C(梁部材)との接合部(側面111と側面115との間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。
また、梁部18Aの端面106A、106Bが梁部18C(梁部材)の端面108B、108Aと対向するように柱梁部材10を配置したときに、ほぞ受け部114は、ほぞ部110と上下方向に相対移動可能に組み合うので、柱梁部材10を上下方向に移動させて、梁部18Aと梁部18C(梁部材)とを接合することができる。
また、梁部18C(梁部材)の端部に設けられたほぞ受け部114は、梁部18Aの端部に設けられたほぞ部110と組み合わせるときのガイドになるので、梁部18Aを所定の位置に合わせ易く、接合精度の向上に資する。
また、連結部110Aと連結部114Aとに形成された連結孔112、116に、接合手段としての鉄筋棒122を挿入して梁部18Aと梁部18C(梁部材)とを接合するので、簡易な方法で梁部18Aと梁部18C(梁部材)とを確実に接合することができる。
<第2の実施形態の変形例1>
図16では、接合手段を鉄筋棒122とした例を示したが、接合手段をボルト部材としてもよい。例えば、図17に示す方法によって、梁部18Aと梁部18Cとを接合してもよい。
図17の斜視図には、図5(b)において、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面106Aを柱梁部材10Aの梁部18Cの端面108Bに対向させ、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面106Bを柱梁部材10Aの梁部18Cの端面108Aに対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、柱梁部材10Aの梁部18Cが梁部材となる。梁部18Cの連結部114A側に形成されている連結部110Aの側面111が、梁部18Aの接合面となり、梁部18Aの連結部110A側に形成されている連結部114Aの側面115が、梁部18Cの接合面となる。
梁部18Aの端部に設けられたほぞ部110の連結部110Aには、連結部110Aの側面から端部が突出しないように12本の長ナット128が略水平に埋設され、この長ナット128によって連結孔130が略水平に形成されている。連結孔130の中心位置の配置は、図16(a)で示した連結孔112の中心位置の配置とほぼ同じになっている。
梁部18Cの端部に設けられたほぞ受け部114の連結部114Aには、連結部114Aの側面から端部が突出しないように12本の鋼管124が略水平に埋設され、この鋼管124によって連結孔126が略水平に形成されている。
連結孔126の中心位置の配置は、図16(a)で示した連結孔116の中心位置の配置とほぼ同じになっている。すなわち、連結孔126の中心位置の配置は、連結孔130の中心位置の配置とほぼ同じになっている。
連結孔126は、後に説明するボルト部材132の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっており、長ナット128にはボルト部材132のねじ込みが可能な雌ネジが形成されている。
鋼管124の端部は、固定金具134に溶接等によって接合されている。固定金具134の両端(上下)は略円弧形状に曲げられ、固定金具134の中央には鋼管124の連結孔126と連通する連通孔が形成されている。
また、鋼管124が設けられている側と逆の固定金具134には、鋼管136が溶接等によって接合されている。鋼管136の内径は、後に説明するボルト部材132の頭部やワッシャー138の収容が可能な大きさとなっている。
長ナット128の端部は、固定金具140に溶接等によって接合されている。固定金具140の両端(上下)は略円弧形状に曲げられている。
鋼管126及び長ナット128の周囲には、鋼管126及び長ナット128が破壊することを防止する円環状の補強筋142が配置されている。
そして、梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋(不図示)に、固定金具140、134の円弧部分を掛け止めることによって、所定の位置に連結孔130、126が配置されている。なお、梁部18A、18Cには、梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋をそれぞれ囲むようにせん断補強筋が設けられている。
梁部18Aと梁部18Cとを接合するときには、図17に示すように、ワッシャー138を介して鋼管124の連結孔126に挿入したボルト部材132を、長ナット128にねじ込み、強く締め付けて固定する。すなわち、連結孔126、130に接合手段としてのボルト部材132を挿入し、このボルト部材132をほぞ受け部114の連結部114Aとほぞ部110の連結部110Aとに跨るように配置して、組み合った状態のほぞ部110とほぞ受け部114とを連結する(接合工程)。
これにより、接合手段としてのボルト部材132が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(側面111)、又は柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(側面115)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
次に、梁部18Aのほぞ部110と梁部18Cのほぞ受け部114との間に形成された隙間空間S3内、連結孔126内、及び鋼管136内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化剤Wを硬化させて梁部18Cの連結部114Aにボルト部材132を定着し、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18Cとを一体化する。
なお、説明の都合上、図17には、1本のボルト部材132のみが示されているが、ボルト部材132は全ての連結孔126、130に挿入される。
よって、図17の接合方法を用いれば、ほぞ受け部114とほぞ部110とに形成された連結孔126、130に、接合手段としてのボルト部材132を挿入してねじ込み、強く締め付けて固定することにより梁部18Aと梁部18Cとを接合するので、簡易な方法で梁部18Aと梁部18Cとをより確実に接合することができる。
<第2の実施形態の変形例2>
図16、17では、連結部114Aと切欠き部114Bとによってほぞ受け部114を構成した例を示したが、梁部18Cの端部に突出して設けられた2つの連結部と、この2つの連結部の間に形成される溝とによってほぞ受け部を構成してもよい。例えば、図18に示す方法によって、梁部18Aと梁部18C(梁部材)とを接合してもよい。
図18(a)の斜視図には、図5(b)において、柱梁部材10Aの梁部18Cの端面144A、144B、144Cを柱梁部材10Bの梁部18Aの端面146A、146B、146Cに対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、柱梁部材10Aの梁部18Cが梁部材となる。
梁部18Aの端部には、ほぞ部148が設けられている。ほぞ部148は、梁部18Aの端部の水平方向略中央に突出して設けられた連結部148Bと、連結部148Bの側方両側に形成された切欠き部148A、148Cとによって構成されている。
すなわち、ほぞ部148は、梁部18Aの端部に突出して設けられた連結部148Bを有している。また、切欠き部148Aと切欠き部148Cとは同じ形状になっている。梁部18Cの連結部152A、152C側に形成されている連結部148Bの側面149、151が、梁部18Aの接合面となる。
そして、ほぞ部148の連結部148Bには、この連結部148Bを略水平に貫通する複数の連結孔150が形成されている。連結孔150は、水平方向に4つ、鉛直方向に3つ並んで配置されている。すなわち、合計12(=4×3)の連結孔150が形成されている。
梁部18Cの端部には、ほぞ受け部152が設けられている。ほぞ受け部152は、梁部18Cの端部の水平方向両端側に突出して設けられた2つの連結部152A、152Cと、この連結部152A、152Cの間に形成された溝としての切欠き部152Bとによって構成されている。
梁部18Cの連結部152A、152Cの間に形成された切欠き部152Bの形状は、梁部18Aの連結部148Bの形状とほぼ同じになっている。また、梁部18Aの連結部148Bの側方両側に形成された切欠き部148A、148Cの形状は、梁部18Cの連結部152A、152Cの形状とほぼ同じになっている。
すなわち、ほぞ受け部152は、梁部18C(梁部材)の端部に形成され、梁部18Aの連結部148Bが挿入される溝(切欠き部152B)を有している。
また、ほぞ受け部152をほぞ部148と組み合わせたときに、梁部18Aと梁部18Cとが一体化されて、組み合わせ部分の横断面形状が梁部18Aの中間部118、及び梁部18Cの中間部120の横断面形状とほぼ等しい1つの梁となる。
梁部18Aの連結部148B側に形成されている連結部152A、152Cの側面153、155が、梁部18Cの接合面となる。
梁部18Cの連結部152A、152Cには、連結部152A、152Cを略水平に貫通する複数の連結孔154、156が形成されている。
連結孔154、156の中心位置の配置は、連結孔150の中心位置の配置とほぼ同じであり、合計12の連結孔154、156がそれぞれ形成されている。
また、連結孔150、154、156の径の大きさは等しい。
柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合するときには、まず、柱部材20B上に柱梁部材10Bの下柱部14を載置する(図5(b)を参照のこと)。
このとき、図18(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面146A、146B、146Cが、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面144A、144B、144Cと対向するように柱梁部材10Bを配置し(柱梁部材設置工程)、さらに、梁部18C(梁部材)の端面144A、144B、144Cと梁部18Aの端面146A、146B、146Cとの間に小さな隙間を有するように、又は梁部18C(梁部材)の端面144A、144B、144Cと梁部18Aの端面146A、146B、146Cとを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
また、このとき、梁部18Aの接合面(側面149、151)と梁部18Cの接合面(側面153、155)との間に小さな隙間を有するように、又は梁部18Aの接合面(側面149、151)と梁部18Cの接合面(側面153、155)とを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
施工上、梁部18Cの端面144A、144B、144Cと梁部(梁部材)18Aの端面146A、146B、146Cとの間に20mm程度の隙間を設け、梁部18Aの接合面(側面149、151)と梁部18Cの接合面(側面153、155)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、この状態で、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面は、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)の端面と対向している。
次に、梁部18Cの端部に設けられたほぞ受け部152と、梁部18Aの端部に設けられたほぞ部148とを上下方向に相対移動可能に組み合わせる。
すなわち、梁部18Aの端部に設けられた連結部148Bを梁部18Cの端部に形成された切欠き部152Bに挿入する。
また、同時に、梁部18Cの端部に設けられた連結部152A、152Cは、梁部18Aの端部に形成された切欠き部148A、148Cに挿入される。
このとき、梁部18Aの連結部148Bに形成された連結孔150の中心位置と、梁部18Cの連結部152A、152Cに形成された連結孔154、156の中心位置とがほぼ一致する。
なお、説明の都合上、図5では、梁部18Aの連結部148Bと梁部18Cの連結部152A、152Cとが正面視にて重なり合うように描かれていないが、梁部18Aと梁部18Cの接合時において梁部18Aの連結部148Bと梁部18Cの連結部152A、152Cとは正面視にて重なり合う。
次に、連結孔154、150、156に接合手段としての鉄筋棒158を挿入し、この鉄筋棒158を連結部152A、148B、152Cに跨るように配置して、組み合った状態のほぞ部148とほぞ受け部152とを連結する(接合工程)。
すなわち、接合手段としての鉄筋棒158が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(側面149、151)、又は柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(側面153、155)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図18(b)の斜視図には、図18(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合した状況が示されている。
次に、図18(b)に示すように、梁部18Aのほぞ部148と梁部18Cのほぞ受け部152との間に形成された隙間空間S4内、及び連結孔154、150、156内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化剤Wを硬化させて梁部18A、18Cに鉄筋棒158を定着し、梁部18Aと梁部18Cとを一体化する。
<第2の実施形態の補足説明>
なお、第2の実施形態では、梁部18Aの端部にほぞ部110、148を設け、梁部18Cの端部にほぞ受け部114、152を設けた例を示したが、梁部18Cの端部にほぞ部110、148を設け、梁部18Aの端部にほぞ受け部114、152を設けてもよい。
また、柱梁部材10の梁部18A〜18Dのどの梁部の端部にほぞ部を設けて、どの梁部の端部にほぞ受け部を設けるかは、柱梁部材10の配置や施工手順に応じて適宜決めればよい。
例えば、柱梁部材10の梁部18A〜18Dの全ての端部にほぞ部を設けて、これらの梁部18A〜18Dと接合される梁部材の端部にほぞ受け部を設けるようにしてもよい。
また、第2の実施形態では、連結部110Aと連結部114A、連結部152Aと連結部148Bと連結部152Cとを同じ形状とした例を示したが、連結部110Aと連結部114A、連結部152Aと連結部148Bと連結部152Cとの形状は異なっていてもよい。
例えば、図16、17においては、連結孔112、116や、連結孔126、130の長さ方向において、連結部110Aの長さを連結部114Aの長さよりも大きくしてもよい。
また、図18においては、連結孔154、150、156の長さ方向において、連結部152Aの長さを連結部148Bの長さと等しくして、連結部152Cの長さを連結部148Bの長さよりも大きくしてもよい。
また、第2の実施形態の図18では、梁部18Cの端部に1つの溝(切欠き部152B)を形成した例を示したが、梁部18Cの端部に複数の溝を形成し、この溝に対応した数の連結部を梁部18Aの端部に設けて、各溝に各連結部を挿入するようにしてもよい。
また、第2の実施形態の図16、17で示した連結部110Aの側面111及び連結部114Aの側面115の少なくとも一方や、図18で示した連結部148Bの側面149、151、連結部152Aの側面153、及び連結部152Cの側面155の少なくとも一方にコッターを設ければ、硬化材Wを充填した後に、硬化した硬化材Wと連結部との接合強度が増すので好ましい。
また、第2の実施形態では、連結孔112、116、126、130、154、150、156が略水平に形成されている例を示したが、連結孔は斜めに形成されていてもよい。これらの連結孔112、116、126、130、154、150、156の配置、本数等は、必要とする接合強度等に応じて適宜決めればよい。
また、連結孔112、116、154、150、156は、鉄筋棒122又は鉄筋棒158が挿入できる孔が形成されていればよく、シース管等の管材を埋設して形成してもよいし、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り除くことによって孔を形成してもよい。また、穿孔により孔を形成してもよい。
また、第2の実施形態では、接合手段を鉄筋棒122、158、又はボルト部材132とした例を示したが、ほぞ部とほぞ受け部(図16、17のほぞ部110とほぞ受け部114、図18のほぞ部148とほぞ受け部152)とを確実に連結できるものであればよい。
例えば、接合手段を異形鉄筋とすれば、硬化材Wを充填したときの付着面積が大きくなるので好ましい。
また、例えば、図16、18の接合手段をPC鋼棒としてもよい。この場合には、連結孔(図16の連結孔112、116、図18の連結孔154、150、156)にPC鋼棒を挿入し、組み合った状態のほぞ部とほぞ受け部(図16のほぞ部110とほぞ受け部114、図18のほぞ部148とほぞ受け部152)とにプレストレスを与える。
これにより、ほぞ部とほぞ受け部との接合面に作用する圧縮力が増加し、摩擦によるせん断伝達を確実に行うことが可能となる。よって、梁部18Aと梁部18Cとを強固に接合することができる。
また、第2の実施形態の図18の接合手段をボルト部材132としてもよい。この場合には、例えば、連結部152Cの連結孔156の位置に長ナット128を設け、連結部152Aの連結孔154の位置に鋼管124を設けて、ボルト部材132を連結孔126、150、130に挿入するようにすればよい。
また、第2の実施形態では、説明の都合上、梁部18A及び梁部18Cに設けられた梁鉄筋及びせん断補強筋は省略されているが、梁鉄筋及びせん断補強筋は、各梁部材に求められる強度に応じて配置や形状等を決めて適宜設ければよい。
<第3の実施形態の構成>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態で示した梁部18A及び梁部18Cに孔を形成し、これらの孔に接合手段を挿入して梁部18Aと梁部18Cとを接合するものである。従って、第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図19(a)の斜視図には、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面を柱梁部材10Aの梁部18Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、柱梁部材10Aの梁部18Cが梁部材となる。また、梁部18A、18Cの端面が、梁部18A、18Cの接合面となる。
梁部18Aには、梁部18Aの端面から上面へ貫通する2つの第1の孔164A、164Bが平行に並んで直線的に形成されている。
また、梁部18Aには、梁部18Aの端面から下面へ貫通する2つの第1の孔166A、166Bが平行に並んで直線的に形成されている。
第1の孔164Aと第1の孔164Bとは、梁部18Aの端面において下端部が上下に並ぶように形成され、第1の孔166Aと第1の孔166Bとは、梁部18Aの端面において上端部が上下に並ぶように形成されている。
さらに、第1の孔164Aの下端部と第1の孔166Aの上端部とは、梁部18Aの端面において左右に並ぶように形成され、第1の孔164Bの下端部と第1の孔166Bの上端部とは、梁部18Aの端面において左右に並ぶように形成されている。
すなわち、第1の孔164A、164Bと第1の孔166A、166Bとは、平面視にて左右にずれて配置されている。
第1の孔164A、164Bの上端部には、切欠き部168A、168Bがそれぞれ形成されている。また、第1の孔166A、166Bの下端部には、切欠き部170A、170Bがそれぞれ形成されている。
梁部18Cには、梁部18Cの端面から上面へ貫通する2つの第2の孔172A、172Bが平行に並んで直線的に形成されている。
また、梁部18Cには、梁部18Cの端面から下面へ貫通する2つの第2の孔174A、174Bが平行に並んで直線的に形成されている。
第2の孔172Aと第2の孔172Bとは、梁部18Cの端面において下端部が上下に並ぶように形成され、第2の孔174Aと第2の孔174Bとは、梁部18Cの端面において上端部が上下に並ぶように形成されている。
さらに、第2の孔174Aの上端部と第2の孔172Aの下端部とは、梁部18Cの端面において左右に並ぶように形成され、第2の孔174Bの上端部と第2の孔172Bの下端部とは、梁部18Cの端面において左右に並ぶように形成されている。
すなわち、第2の孔172A、172Bと第2の孔174A、174Bとは、平面視にて左右にずれて配置されている。
第2の孔172A、172Bの上端部には、切欠き部176A、176Bがそれぞれ形成されている。また、第2の孔174A、174Bの下端部には、切欠き部178A、178Bがそれぞれ形成されている。
第1の孔164A、164B、166A、166B、及び第2の孔172A、172B、174A、174Bの径の大きさは、全て等しい。また、これらの孔の径の大きさは、後に説明する接合手段としての丸鋼180の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっている。
第1の孔164Aの下端部と第2の孔174Aの上端部、第1の孔164Bの下端部と第2の孔174Bの上端部、第1の孔166Aの上端部と第2の孔172Aの下端部、及び第1の孔166Bの上端部と第2の孔172Bの下端部との中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。
すなわち、図19(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面を柱梁部材10Aの梁部18Cの端面に対向させたときに、第1の孔164A、164B、166A、166Bと第2の孔174A、174B、172A、172Bとによって貫通孔182A、182B、184A、184Bが形成される。
貫通孔182A、182Bは、梁部18Aの上面から梁部18Cの下面へ直線的に貫通し、貫通孔184A、184Bは、梁部18Cの上面から梁部18Aの下面へ直線的に貫通している。
<第3の実施形態の作用及び効果>
次に、本発明の第3の実施形態の作用及び効果について説明する。
図19で示したプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造162を有する建物は、図5に示す建物の施工方法によって構築される。
梁部18Aと梁部18Cとの接合方法は、まず、柱部材20B上に柱梁部材10Bの下柱部14を載置する(図5(b)を参照のこと)。
このとき、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面が、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置し(柱梁部材設置工程)、さらに、梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)との間に小さな隙間を有するように、又は梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)とを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
施工上、梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、この状態で、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面は、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)の端面と対向している。
そして、この状態で、第1の孔164A、164B、166A、166Bと第2の孔174A、174B、172A、172Bとによって貫通孔182A、182B、184A、184Bが形成される。
次に、梁部18Aの上面又は梁部18Cの下面から接合手段としての直線状の丸鋼180を、第1の孔164Aと第2の孔174A(貫通孔182A)、及び第1の孔164Bと第2の孔174B(貫通孔182B)とへ挿入する。
さらに、梁部18Cの上面又は梁部18Aの下面から接合手段としての直線状の丸鋼180を、第2の孔172Aと第1の孔166A(貫通孔184A)、及び第2の孔172Bと第1の孔166B(貫通孔184B)とへ挿入する。
このようにして、4本の丸鋼180を梁部18Aと梁部18Cとに跨るように配置して、梁部18Aと梁部18Cとを接合する(接合工程)。
すなわち、接合手段としての丸鋼180が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)、又は柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図19(b)の斜視図には、図19(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合した状況が示されている。
丸鋼180の両端部には雄ネジ186が形成されており、この雄ネジ186にナット188をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼180を梁部18A及び梁部18Cに固定する。この固定状態においてナット188は、切欠き部168A、168B、170A、170B、176A、176B、178A、178Bに収容されている。
次に、図19(b)に示すように、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18Cの接合面(端面)との間の隙間空間S2内、第1の孔164A、164B、166A、166B内、第2の孔174A、174B、172A、172B内、切欠き部168A、168B、170A、170B、176A、176B、178A、178B内に硬化材Wを充填し、この硬化剤Wを硬化させて梁部18A及び梁部18Cに丸鋼180を定着する。
これにより、梁部18Aと梁部18Cとが一体化されて1つの梁となる。
図5(b)における柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)と柱梁部材10Bの梁部18Cとの接合方法は、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)との接合方法と同様の方法なので、説明を省略する。
これまで説明したように、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用と効果を得ることができる。すなわち、プレキャストコンクリート製の柱梁部材10の梁部18A、18C同士を接合する作業手間を低減することが可能となる。
また、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18C(梁部材)の接合面(端面)とが密着するように、又は梁部18Aの接合面(端面)と梁部18C(梁部材)の接合面(端面)との間に小さな隙間を有するように、梁部18C(梁部材)に対して梁部18Aを配置することができるので、梁部18Aと梁部18C(梁部材)との接合部(梁部18Aの端面と梁部18Cの端面との間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。
また、梁部18Aの接合面(端面)が梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と対向するように柱梁部材10を配置するときに、梁部18Aの上面、梁部18Aの下面、梁部18C(梁部材)の上面、又は梁部18C(梁部材)の下面から第1の孔164A、164B、166A、166Bと第2の孔174A、174B、172A、172Bとへ接合手段としての丸鋼180を挿入するまでは、梁部18C(梁部材)又は梁部18Aの接合面(端面)から接合手段は突出していない。
これにより、柱梁部材10を上下方向に移動させて、梁部18Aと梁部18C(梁部材)とを接合することができる。
また、接合手段を直線状の棒材(丸鋼180)とすることが可能なので、簡易な部材で梁部18Aと梁部18Cとを接合することができ、梁部18Aの上面、梁部18Aの下面、梁部18Cの上面、又は梁部18Cの下面から容易に接合手段(丸鋼180)を挿入することができる。
なお、図19では、接合手段としての直線状の丸鋼180を、梁部18Aの上面又は梁部18Cの下面から、第1の孔164Aと第2の孔174A(貫通孔182A)、及び第1の孔164Bと第2の孔174B(貫通孔182B)とへ挿入し、さらに、梁部18Cの上面又は梁部18Aの下面から、第2の孔172Aと第1の孔166A(貫通孔184A)、及び第2の孔172Bと第1の孔166B(貫通孔184B)とへ挿入した例を示したが、これに限らずに、必要とする接合強度を有すればこれよりも多くの丸鋼180を配置してもよいし、これよりも少ない丸鋼180を配置してもよい。
例えば、接合手段としての直線状の丸鋼180を、梁部18Aの上面又は梁部18Cの下面から、第1の孔164Aと第2の孔174A(貫通孔182A)、及び第1の孔164Bと第2の孔174B(貫通孔182B)の一方へ挿入し、梁部18Cの上面又は梁部18Aの下面から、第2の孔172Aと第1の孔166A(貫通孔184A)、及び第2の孔172Bと第1の孔166B(貫通孔184B)の一方へ挿入してもよい。
さらに、接合手段としての直線状の丸鋼180を、梁部18Aの上面又は梁部18Cの下面から、第1の孔164Aと第2の孔174A(貫通孔182A)、及び第1の孔164Bと第2の孔174B(貫通孔182B)の一方へ挿入するだけでもよいし、梁部18Cの上面又は梁部18Aの下面から、第2の孔172Aと第1の孔166A(貫通孔184A)、及び第2の孔172Bと第1の孔166B(貫通孔184B)の一方へ挿入するだけでもよい。
図19のように丸鋼180を左右対称に配置するのが梁部18A、18Cに均等に力が伝達されるので、構造上好ましい。
<第3の実施形態の変形例1>
図19では、接合手段を直線状の丸鋼180としたが、曲線状の丸鋼を用いてもよい。例えば、図20に示す方法によって、梁部18Aと梁部18Cとを接合してもよい。
図20の正面図には、図5(b)において、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面を柱梁部材10Aの梁部18Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、柱梁部材10Aの梁部18Cが梁部材となる。また、梁部18A、18Cの端面が、梁部18A、18Cの接合面となる。
梁部18Aには、梁部18Aの端面から上面へ貫通する2つの第1の孔190A、190Bが平行に並んで曲線的に形成されている。第1の孔190Bの曲率は、第1の孔190Aの曲率よりも大きくなっている。
また、梁部18Aには、梁部18Aの端面から下面へ貫通する2つの第1の孔192A、192Bが平行に並んで曲線的に形成されている。第1の孔192Bの曲率は、第1の孔192Aの曲率よりも大きくなっている。
第1の孔190A、190B、192B、192Aは、梁部18Aの端面において第1の孔190Aの下端部、第1の孔190Bの下端部、第1の孔192Bの上端部、第1の孔192Aの上端部が上下方向に上からこの順に並ぶようにして形成されている。
また、第1の孔190A、190Bの上端部には、切欠き部212A、212Bがそれぞれ形成され、第1の孔192A、192Bの下端部には、切欠き部214A、214Bがそれぞれ形成されている。
梁部18Cには、梁部18Cの端面から上面へ貫通する2つの第2の孔194A、194Bが平行に並んで曲線的に形成されている。第2の孔194Bの曲率は、第2の孔194Aの曲率よりも大きくなっている。
また、梁部18Cには、梁部18Cの端面から下面へ貫通する2つの第2の孔196A、196Bが平行に並んで曲線的に形成されている。第2の孔196Bの曲率は、第2の孔196Aの曲率よりも大きくなっている。
第2の孔194A、194B、196B、196Aは、梁部18Cの端面において第2の孔194Aの下端部、第2の孔194Bの下端部、第2の孔196Bの上端部、第2の孔196Aの上端部が上下方向に上からこの順に並ぶようにして形成されている。
また、第2の孔194A、194Bの上端部には、切欠き部216A、216Bがそれぞれ形成され、第2の孔196A、196Bの下端部には、切欠き部218A、218Bがそれぞれ形成されている。
第1の孔190A、190B、192A、192B、及び第2の孔194A、194B、196A、196Bの径の大きさは、全て等しい。
また、これらの孔の径の大きさは、後に説明する接合手段としての丸鋼204、206の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっている。
第1の孔190Aの下端部と第2の孔194Aの下端部、第1の孔190Bの下端部と第2の孔194Bの下端部、第1の孔192Bの上端部と第2の孔196Bの上端部、及び第1の孔192Aの上端部と第2の孔196Aの上端部との中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。
すなわち、図20(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面を柱梁部材10Aの梁部18Cの端面に対向させたときに、第1の孔190A、190B、192B、192Aと第2の孔194A、194B、196B、196Aとによって貫通孔200A、200B、202B、202Aが形成される。
貫通孔200A、200Bは、梁部18Aの上面から梁部18Cの上面へ曲線的に貫通し、貫通孔202A、202Bは、梁部18Aの下面から梁部18Cの下面へ曲線的に貫通している。
貫通孔200Bの曲率は、貫通孔200Aの曲率よりも大きくなっており、貫通孔202Bの曲率は、貫通孔202Aの曲率よりも大きくなっている。
梁部18Aと梁部18Cとの接合方法は、まず、柱部材20B上に柱梁部材10Bの下柱部14を載置する(図5(b)を参照のこと)。
このとき、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面が、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置し(柱梁部材設置工程)、さらに、梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)との間に小さな隙間を有するように、又は梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)とを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
施工上、梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、この状態で、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面は、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)と対向している。
そして、この状態で、第1の孔190A、190B、192B、192Aと第2の孔194A、194B、196B、196Aとによって貫通孔200A、200B、202B、202Aが形成される。
次に、梁部18Aの上面又は梁部18Cの上面から接合手段としての曲線状の丸鋼204、206を、第1の孔190Aと第2の孔194A(貫通孔200A)、及び第1の孔190Bと第2の孔194B(貫通孔200B)とへ挿入する。
さらに、梁部18Aの下面又は梁部18Cの下面から接合手段としての曲線状の丸鋼204、206を、第1の孔192Aと第2の孔196A(貫通孔202A)、及び第1の孔192Bと第2の孔196B(貫通孔202B)とへ挿入する。
このようにして、4本の丸鋼204、206を梁部18Aと梁部18Cとに跨るように配置して、梁部18Aと梁部18Cとを接合する(接合工程)。
すなわち、接合手段としての丸鋼204、206が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)、又は柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図20(b)の斜視図には、図20(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合した状況が示されている。
丸鋼204、206の両端部には雄ネジ208が形成されており、この雄ネジ208にナット210をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼204、206を梁部14A及び梁部18Cに固定する。この固定状態においてナット210は、切欠き部212A、212B、214A、214B、216A、216B、218A、218Bに収容されている。
次に、図20(b)に示すように、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18Cの接合面(端面)との間の隙間空間S2内、第1の孔190A、190B、192B、192A内、第2の孔194A、194B、196B、196A内、切欠き部212A、212B、214A、214B、216A、216B、218A、218B内に硬化材Wを充填し、この硬化剤Wを硬化させて梁部18A及び梁部18Cに丸鋼204、206を定着する。これにより、梁部18Aと梁部18Cとが一体化されて1つの梁となる。
よって、図20で示した接合方法を用いれば、接合手段を曲線状の棒材(丸鋼204、206)とすることで、梁部18A及び梁部18Cの内部における接合手段の定着長を長くすることが可能になるので、接合手段と梁部18A及び梁部18Cとの間でスムーズな応力伝達を行うことができる。
また、接合手段(丸鋼204、206)の曲率を大きくすれば、梁部18Aの上面、梁部18Aの下面、梁部18Cの上面、及び梁部18Cの下面から容易に接合手段(丸鋼204、206)を挿入することができる。
図20では、接合手段としての曲線状の丸鋼204、206を、梁部18Aの上面又は梁部18Cの上面から、第1の孔190Aと第2の孔194A(貫通孔200A)、及び第1の孔190Bと第2の孔194B(貫通孔200B)とへ挿入し、さらに、梁部18Aの下面又は梁部18Cの下面から、第1の孔192Aと第2の孔196A(貫通孔202A)、及び第1の孔192Bと第2の孔196B(貫通孔202B)とへ挿入した例を示したが、これに限らずに、必要とする接合強度を有すればこれよりも多くの丸鋼204、206を配置してもよいし、これよりも少ない丸鋼204、206を配置してもよい。
例えば、接合手段としての曲線状の丸鋼204、206の一方を、第1の孔190Aと第2の孔194A(貫通孔200A)、又は第1の孔190Bと第2の孔194B(貫通孔200B)へ挿入し、接合手段としての曲線状の丸鋼204、206の一方を、第1の孔192Aと第2の孔196A(貫通孔202A)、又は第1の孔192Bと第2の孔196B(貫通孔202B)へ挿入してもよい。
さらに、接合手段としての曲線状の丸鋼204、206の一方を、第1の孔190Aと第2の孔194A(貫通孔200A)、又は第1の孔190Bと第2の孔194B(貫通孔200B)へ挿入するだけでもよいし、接合手段としての曲線状の丸鋼204、206の一方を、第1の孔192Aと第2の孔196A(貫通孔202A)、又は第1の孔192Bと第2の孔196B(貫通孔202B)へ挿入するだけでもよい。
図20のように丸鋼204、206を上下対称に配置するのが梁部18A、18Cに均等に力が伝達されるので、構造上好ましい。
<第3の実施形態の変形例2>
図19では、接合手段としての丸鋼180を梁部18A及び梁部18Cに貫通させて、梁部18Aと梁部18Cとを接合する例を示したが、接合手段を梁部18C又は梁部18Aに埋設された鉄筋棒と接続するようにしてもよい。例えば、図21に示す方法によって、梁部18Aと梁部18Cとを接合してもよい。
図21(a)の正面図には、図5(b)において、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面を柱梁部材10Aの梁部18Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。この場合には、柱梁部材10Aの梁部18Cが梁部材となる。また、梁部18A、18Cの端面が、梁部18A、18Cの接合面となる。
梁部18Aには、梁部18Aの端面から上面へ貫通する2つの貫通孔220A、220Bが平行に並んで直線的に形成されている。また、梁部18Aには、梁部18Aの端面から内部へ達する2つの挿入孔222A、222Bが平行に並んで直線的に形成されている。
貫通孔220Aと貫通孔220Bとは、梁部18Aの端面において下端部が上下に並ぶように形成され、挿入孔222Aと挿入孔222Bとは、梁部18Aの端面において上端部が上下に並ぶように形成されている。
さらに、貫通孔220Aの下端部と挿入孔222Aの上端部とは、梁部18Aの端面において左右に並ぶように形成され、貫通孔220Bの下端部と挿入孔222Bの上端部とは、梁部18Aの端面において左右に並ぶように形成されている。
すなわち、貫通孔220A、220Bと挿入孔222A、222Bとは、平面視にて左右にずれて配置されている。
貫通孔220A、220Bの上端部には、切欠き部224A、224Bがそれぞれ形成されている。
挿入孔222A、222Bの下部には、挿入孔222A、222Bと連通する中空の鋼管226が埋設されている。さらに、梁部18Aの下部に埋設された鉄筋棒228A、228Bの端部が鋼管226に固定されている。
鉄筋棒228A、228Bは鋼管226付近で曲がっていて、この曲がった箇所から梁部18Aの端面と逆側に延びる鉄筋棒228A、228Bが梁部18Aに設けられた梁鉄筋(不図示)と略平行になるように配置されている。また、鋼管226の内側には雌ネジが形成されている。
梁部18Cには、梁部18Cの端面から上面へ貫通する2つの貫通孔230A、230Bが平行に並んで直線的に形成されている。
また、梁部18Cには、梁部18Cの端面から内部へ達する2つの挿入孔232A、232Bが平行に並んで直線的に形成されている。
貫通孔230Aと貫通孔230Bとは、梁部18Cの端面において下端部が上下に並ぶように形成され、挿入孔232Aと挿入孔232Bとは、梁部18Cの端面において上端部が上下に並ぶように形成されている。
さらに、貫通孔230Aの下端部と挿入孔232Aの上端部とは、梁部18Cの端面において左右に並ぶように形成され、貫通孔230Bの下端部と挿入孔232Bの上端部とは、梁部18Cの端面において左右に並ぶように形成されている。すなわち、貫通孔230A、230Bと挿入孔232A、232Bとは、平面視にて左右にずれて配置されている。
貫通孔230A、230Bの上端部には、切欠き部234A、234Bがそれぞれ形成されている。
挿入孔232A、232Bの下部には、挿入孔232A、232Bと連通する中空の鋼管226が埋設されている。さらに、梁部18Cの下部に埋設された鉄筋棒236A、236Bの端部が鋼管226に固定されている。
鉄筋棒236A、236Bは鋼管226付近で曲がっていて、この曲がった箇所から梁部18Cの端面と逆側に延びる鉄筋棒236A、236Bが梁部18Cに設けられた梁鉄筋(不図示)と略平行になるように配置されている。また、鋼管226の内側には雌ネジが形成されている。
貫通孔220A、220B、230A、230B、及び挿入孔222A、222B、232A、232Bの径の大きさは等しい。
また、これらの孔の径の大きさは、後に説明する接合手段としての丸鋼240の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっている。
貫通孔220Aの下端部と挿入孔232Aの上端部、貫通孔220Bの下端部と挿入孔232Bの上端部、貫通孔230Aの下端部と挿入孔222Aの上端部、貫通孔230Bの下端部と挿入孔222Bの上端部との中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。
すなわち、図21(b)に示すように、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面を柱梁部材10Aの梁部18Cの端面に対向させたときに、貫通孔220A、220Bと挿入孔232A、232Bとによって連結孔242A、242Bが形成され、貫通孔230A、230Bと挿入孔222A、222Bとによって連結孔244A、244Bが形成される。
連結孔242A、242Bは、梁部18Aの上面から梁部18Cの内部へ直線的に形成され、貫通孔244A、244Bは、梁部18Cの上面から梁部18Aの内部へ直線的に形成される。
鉄筋棒228A、228B、236A、236Bの長さは、鉄筋棒228A、228B、236A、236Bと梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋(不図示)とが重なり合う長さが、鉄筋棒228A、228B、236A、236B及び梁鉄筋の中で最も小さい径の大きさの40倍程度以上となるようにするのが、十分な接合強度を確保する上で好ましい。
梁部18Aと梁部18Cとの接合方法は、まず、柱部材20B上に柱梁部材10Bの下柱部14を載置する(図5(b)を参照のこと)。
このとき、柱梁部材10Bの梁部18Aの端面が、柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置し(柱梁部材設置工程)、さらに、梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)との間に小さな隙間を有するように、又は梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)とを密着させるように柱梁部材10Bを配置する。
施工上、梁部18C(梁部材)の接合面(端面)と梁部18Aの接合面(端面)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、この状態で、柱梁部材10Bの梁部18Cの端面は、柱梁部材10Cの梁部18A(梁部材)の端面と対向している。
そして、この状態で、貫通孔220A、220Bと挿入孔232A、232Bとによって連結孔242A、242Bが形成され、貫通孔230A、230Bと挿入孔222A、222Bとによって連結孔244A、244Bが形成される。
次に、梁部18Aの上面から貫通孔220A、220Bと挿入孔232A、232Bとへ、及び梁部18Cの上面から貫通孔230A、230Bと挿入孔222A、222Bとへ、接合手段としての直線状の丸鋼240が挿入され、これにより梁部18Aと梁部18Cとを接合する(接合工程)。
すなわち、接合手段としての丸鋼240が柱梁部材10Bの梁部18Aの接合面(端面)、及び柱梁部材10Aの梁部18Cの接合面(端面)へ挿入されて、柱梁部材10Bの梁部18Aと柱梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とが接合される。
図21(b)の正面図には、図21(a)の状態の後に、柱梁部材10Bの梁部18Aと、柱梁部材10Aの梁部18Cとを接合した状態が示されている。
丸鋼240の両端部には雄ネジ246が形成されており、丸鋼240の下端部に形成された雄ネジ246を、梁部18Cに埋設された鋼管226と、梁部18Aに埋設された鋼管226とにねじ込み、さらに、丸鋼240の上端部に形成された雄ネジ246にナット248をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼240を梁部18Aと梁部18Cとに固定する。この固定状態においてナット248は、切欠き部224A、224B、234A、234Bに収容されている。
次に、図21(b)に示すように、梁部18Aの接合面(端面)と梁部18Cの接合面(端面)との間の隙間空間S2内、貫通孔220A、220B、230A、230B内、挿入孔222A、222B、232A、232B内、切欠き部224A、224B、234A、234B内に硬化材Wを充填し、この硬化剤Wを硬化させて梁部18A及び梁部18Cに丸鋼240を定着する。これにより、梁部18Aと梁部18Cとが一体化されて1つの梁となる。
よって、図21に示した接合方法を用いれば、梁部18Aの端面が梁部18C(梁部材)の端面と対向するように柱梁部材10Bを配置するときに、梁部18Aの上面から貫通孔220A、220Bと挿入孔232A、232Bとへ、又は梁部18C(梁部材)の上面から貫通孔230A、230Bと挿入孔222A、222Bとへ接合手段としての丸鋼240を挿入するまでは、梁部18A又は梁部18C(梁部材)の接合面(端面)から丸鋼240は突出していない。
これにより、柱梁部材10Bを上下方向に移動させて、柱梁部材10Bの梁部18Aと梁部材10Aの梁部18C(梁部材)とを接合することができる。
また、接合手段を直線状の棒材(丸鋼240)とすることが可能なので、簡易な部材で梁部18Aと梁部18Cとを接合することができ、梁部18Aの上面や梁部18Cの上面から容易に接合手段(丸鋼240)を挿入することができる。
図21で示した接合方法では、折り曲げられた鉄筋棒228A、228B、236A、236Bを用いた例を示したが、折り曲げられた中空の鋼管を挿入孔222A、222B、232A、232Bと連通するようにこれらの挿入孔の下端部に設け、梁部18A、18Cに設けられた梁鉄筋と略平行に配置された直線状の鉄筋棒の端部をこの折り曲げられた鋼管に固定してもよい。
また、図21では、鋼管226の内側に雌ネジを形成し、この雌ネジに丸鋼240端部に形成された雄ネジをねじ込んだ例を示したが、鋼管226に雌ネジを形成せずに、鋼管226に丸鋼240端部を挿入して硬化材Wにより定着させてもよい。
また、図21では、梁部18Aの下部に鉄筋棒228A、228Bを設け、梁部18Cの下部に鉄筋棒236A、236Bを設けて、鉄筋棒228A、228Bの端部と梁部18Cの上面から挿入した丸鋼240の下端部とを鋼管226を介して接合し、鉄筋棒236A、236Bの端部と梁部18Aの上面から挿入した丸鋼240の下端部とを鋼管226を介して接合した例を示したが、梁部18Aの上部に鉄筋棒228A、228Bを設け、梁部18Cの上部に鉄筋棒236A、236Bを設けて、鉄筋棒228A、228Bの端部と梁部18Cの下面から挿入した丸鋼240の上端部とを鋼管226を介して接合し、鉄筋棒236A、236Bの端部と梁部18Aの下面から挿入した丸鋼240の上端部とを鋼管226を介して接合してもよい。
また、必要とする接合強度を有すれば図21で示した丸鋼240よりも多くの丸鋼240を配置してもよいし、図21で示した丸鋼240よりも少ない丸鋼240を配置してもよい。
例えば、接合手段としての直線状の丸鋼240を、梁部18Aの上面から、貫通孔220Aと挿入孔232A、及び貫通孔220Bと挿入孔232Bの一方へ挿入し、梁部18Cの上面から貫通孔230Aと挿入孔222A、及び貫通孔230Bと挿入孔222Bの一方へ挿入してもよい。
さらに、接合手段としての直線状の丸鋼240を、梁部18Aの上面から、貫通孔220Aと挿入孔232A、及び貫通孔220Bと挿入孔232Bの一方へ挿入するだけでもよいし、梁部18Cの上面から貫通孔230Aと挿入孔222A、及び貫通孔230Bと挿入孔222Bの一方へ挿入するだけでもよい。
<第3の実施形態の補足説明>
なお、第3の実施形態では、第1の孔164A、164B、166A、166B、190A、190B、192A、192B、第2の孔172A、172B、174A、174B、194A、194B、196A、196B、貫通孔220A、220B、230A、230B、挿入孔222A、222B、232A、232Bは、丸鋼180、204、206、240が挿入できる孔が形成されればよく、シース管等の管材を埋設して形成してもよいし、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り除くことによって孔を形成してもよい。また、穿孔により孔を形成してもよい。
また、第3の実施形態で示した第1の孔164A、164B、166A、166B、190A、190B、192A、192B、第2の孔172A、172B、174A、174B、194A、194B、196A、196B、貫通孔220A、220B、230A、230B、挿入孔222A、222B、232A、232B、丸鋼180、204、206、240の配置、本数、径の大きさ等は、必要とする接合強度等に応じて適宜決めればよい。
また、第3の実施形態では、接合手段を、丸鋼180、204、206、240としたが、梁部18Aと梁部18Cとを確実に連結できるものであればよい。
例えば、接合手段をPC鋼材(PC鋼棒、PC鋼線)、ねじ節鉄筋、異形鉄筋、ボルト等としてもよい。接合手段をねじ節鉄筋や異形鉄筋とすれば、硬化材Wを充填したときの付着面積が大きくなるので好ましい。
また、第3の実施形態では、ナット188、210、248で接合手段としての丸鋼180、204、206、240を固定した例を示したが、他の機械式定着具等の定着具を用いて丸鋼180、204、206、240を固定してもよい。
また、ナット188、210、248等の定着具を用いずに、丸鋼180、204、206、240の周囲に充填した硬化材Wのみによって丸鋼180、204、206、240を梁部18A及び梁部18Cに定着させてもよい。
また、第3の実施形態で示した丸鋼180、204、206、240にナット188、210、248をねじ込んで締め付けて梁部18Aと梁部18Cとを接合した後に、丸鋼180、204、206、240にプレストレスを導入してもよい。
例えば、接合手段にPC鋼材を用いた場合には、油圧ジャッキを用いて通常のポストテンション方式によってPC鋼材にプレストレスを導入すればよい。
接合手段によって梁部18Aと梁部18Cとが接合された後に接合手段にプレストレスを導入すれば、梁部18Aと梁部18Cとの接合面に作用する圧縮力が増加し、摩擦によるせん断力伝達を確実に行うことができる。
また、梁部18Aと梁部18Cとの接合部に生じる曲げモーメントに起因して梁部18A及び梁部18Cに発生する引張応力を制御することが可能となる。
これにより、梁部18A及び梁部18Cに生じるひび割れを防止することができ、梁部18Aと梁部18Cとを強固に接合することができる。よって、地震時の復元性能を向上させ、損傷低減を図ることができる。
この場合、アンボンドとしてもよいが、接合手段の周囲に硬化材Wを充填すれば防錆効果があり、さらには、一体化強度が向上するので好ましい。
また、第3の実施形態で示した梁部18Aの端面、及び梁部18Cの端面の少なくとも一方にコッターを設ければ、梁部18Aの端面と梁部18Cの端面との間に硬化材Wを充填した後に、梁部18Aと梁部18Cとの接合強度が増すので好ましい。
また、第3の実施形態では、説明の都合上、梁部18A及び梁部18Cに設けられた梁鉄筋及びせん断補強筋は省略されているが、梁鉄筋及びせん断補強筋は、各梁部材に求められる強度に応じて配置、本数、径の大きさ、形状等を決めて適宜設ければよい。
<第1〜第3の実施形態の補足説明>
なお、第1〜第3の実施形態では、柱梁部材10を、柱梁仕口部12、柱梁仕口部12の下方に設けられた下柱部14、柱梁仕口部12の上方に設けられた上柱部16、及び柱梁仕口部12の側面から4方に張り出した梁部18A〜18Dによって構成した例を示したが、柱梁仕口部と一体化される梁部の数や配置はこれに限らない。
例えば、柱梁仕口部12、下柱部14、上柱部16、及び梁部18A、18Cによって構成された平面的な十字状の柱梁部材とした場合においても、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第1〜第3の実施形態は、梁部18A〜18Dの少なくとも一つの梁部と、柱梁仕口部12及び下柱部14とから構成された柱梁部材や、梁部18A〜18Dの少なくとも一つの梁部と、柱梁仕口部12及び上柱部16とから構成された柱梁部材に対しても適用可能であり、これらの実施形態も本発明の技術的思想の範囲内に含まれる。
また、第1〜第3の実施形態で示された硬化材Wには、一般に用いられているグラウト材を用いればよく、モルタル、エポキシ樹脂等を使用することができる。
また、第1〜第3の実施形態では、梁部18Aと梁部18Cの横断面形状を同じにした例を示したが、梁部18Aと梁部18Cの横断面形状は異なっていてもよい。
例えば、梁部18Aと、横断面形状が梁部18Aの横断面形状よりも小さい梁部18Cとを接合してもよい。
また、第1〜第3の実施形態で示された、柱梁部材10の下柱部14が載置される柱部材、柱梁部材10の上柱部16上に載置される柱部材、柱梁部材10の梁部18A〜18Dと接合される梁部材は、PCa製の柱梁部材の柱部や梁部でなくてもよい。
例えば、現場打ちコンクリートによって形成された柱梁部材の柱部や梁部であってもよいし、梁部材と一体化されていないPCa製の柱部材や、柱部材と一体化されていないPCa製の梁部材であってもよい。
また、第1〜第3の実施形態で示した梁部同士の接合方法(図3、9、11、14、16、17、18、19、20、21)は、梁に発生する曲げモーメントが小さい反曲点での接合に用いることが好ましい。
また、梁部18Aと梁部18Cとの接合方法は、第1〜第3の実施形態で示した梁部同士の接合方法(図3、9、11、14、16、17、18、19、20、21)に限らずに、一方の梁部を上下方向に移動して梁部同士を接合でき、かつ構造上必要な接合強度を確保できる梁部同士の接合方法であればよい。
また、第1〜第3の実施形態で説明したプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造54、160、162は、建物の一部に用いてもよいし、全てに用いてもよい。プレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造54、160、162を用いて建物を施工することにより、施工品質が向上した建物を構築することができる。
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。