図面を参照しながら、本発明のプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造、プレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造を有する建物、及びプレキャストコンクリート柱梁部材の接合構造を有する建物の施工方法を説明する。
なお、本実施形態では、鉄筋コンクリートによって形成されたプレキャストコンクリート(以降、PCaと記載する)製の柱梁部材を用いた例を示すが、本実施形態は、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、及びプレストレストコンクリート等のさまざまなPCa製の柱梁部材を用いた接合構造、建物、及び建物の施工方法へ適用することができる。
<第1の実施形態の構成>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1の斜視図に示すように、PCa柱梁部材の接合構造10では、鉄筋コンクリートによって形成されたPCa製の柱部材12上に、鉄筋コンクリートによって形成されたPCa製の柱梁部材14が載置される。
柱梁部材14は、柱梁仕口部16、柱梁仕口部16の下方に設けられた下柱部18、柱梁仕口部16の上方に設けられた上柱部20、及び柱梁仕口部16の側方に設けられた4つの梁部22A〜22Dを一体にして形成されている。
図2(a)の正面図、及び図2(a)のA−A断面図である図2(c)に示すように、下柱部18の内部には、下柱部18の外周に沿って12本の柱鉄筋28が配置されている。図2(a)の状態で、柱鉄筋28は、この柱鉄筋28の下端部が下柱部18の下面186から突出しないように配置されている。
また、下柱部18の下端部には、下柱部18の下面186から突出しないように下柱部18の外周に沿って12本のシース管30が埋設され、これにより下柱部18の下端部に孔32を形成している。
シース管30と柱鉄筋28の中心位置の平面配置は、ほぼ同じになっており、各シース管30に柱鉄筋28がそれぞれ挿入されている。また、シース管30と柱鉄筋28や、柱鉄筋28を囲むせん断補強筋34が鉛直方向に複数配置され、シース管30、柱鉄筋28、及びせん断補強筋34が下柱部18を形成するコンクリートVによって一体となっている。
柱部材12の内部には、柱部材12の外周に沿って12本の柱鉄筋36が配置されている。柱鉄筋36は、この柱鉄筋36の上端部が柱部材12の上面184から突出しないように配置されている。
また、柱部材12の上端部には、柱部材12の上面184から突出しないように柱部材12の外周に沿って12本のシース管38が埋設され、これにより柱部材12の上端部に挿入部としての孔40を形成している。
シース管38と柱鉄筋36の中心位置の平面配置は、ほぼ同じになっており、各シース管38に柱鉄筋36がそれぞれ挿入されている。また、シース管38と柱鉄筋36や、柱鉄筋36を囲むせん断補強筋42が鉛直方向に複数配置され、シース管38、柱鉄筋36、及びせん断補強筋42が柱部材12を形成するコンクリートVによって一体となっている。
柱鉄筋28と柱鉄筋36の径の大きさは同じであり、シース管30とシース管38の内径及び外径の大きさは同じである。また、柱鉄筋28と柱鉄筋36の中心位置の平面配置、及びシース管30とシース管38の中心位置の平面配置は、ほぼ同じになっている。すなわち、柱鉄筋28と柱鉄筋36の端面同士、及びシース管30とシース管38の端部開口面同士は対向している。
シース管30によって形成された孔32には、接合手段としての中空管44が収容されている。すなわち、下柱部18に中空管44が収容されている。中空管44は、柱鉄筋28、36をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の機械式継手となっており、図2(a)の状態で、柱鉄筋28が中空管44に挿入されている。
柱梁部材14の上柱部20の上端部の構造は、柱部材12の上端部の構造と同様なので説明を省略する。この場合、柱部材12に配置された柱鉄筋36が柱梁部材14に配置された柱鉄筋28となり、柱部材12に配置されたせん断補強筋42が柱梁部材14に配置されたせん断補強筋34となる。
また、図1に示すように、上柱部20及び柱部材12の上部側面にはグラウト注入孔46が形成され、下柱部18の下部側面にはグラウト排出孔48が形成されている。グラウト注入孔46は孔40の下部に、グラウト排出孔48は孔32の上部にそれぞれつながっている。
なお、柱鉄筋28と柱鉄筋36の径の大きさや、シース管30とシース管38の内径及び外径の大きさは同じでなくてもよい。柱鉄筋28と柱鉄筋36の径の大きさが異なっている場合には、異なった径の柱鉄筋同士の接続が可能な中空管を用いればよい。
図3に示すように、柱部材12の上面184の四隅には雌ネジ24が形成されており、この雌ネジ24にねじ込んだボルト26のねじ込み量によって、柱梁部材14(下柱部18)の設置高さを調整する。
このボルト26は、柱梁部材14の上柱部20の上面の四隅にも設けられており、これによって、柱梁部材14の上柱部20上に載置される部材の設置高さを調整する。柱部材12と下柱部18との接合においては、柱部材12の上面184が柱部材12の接合面となり、下柱部18の下面186が下柱部18の接合面となる。
図4(a)の正面図には、2つの柱梁部材14を隣り合わせて配置し、一方の柱梁部材14の梁部22Aの端面を他方の柱梁部材14の梁部22Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。
梁部22Aの上部及び下部には、横断面に対して水平方向に2本、鉛直方向に2本並んで、梁鉄筋50が梁部22Aの長手方向に沿って配置されている。すなわち、8本の梁鉄筋50が梁部22Aに配置されている。また、梁鉄筋50は、端部が梁部22Aの端面から突出するように梁部22Aに配置されている。
梁部22Aには、梁鉄筋50を囲むようにせん断補強筋52が水平方向に複数配置されている。そして、梁鉄筋50及びせん断補強筋52は、梁部22Aを形成するコンクリートVによって一体となっている。
梁部22Cの上部及び下部には、横断面に対して水平方向に2本、鉛直方向に2本並んで、梁鉄筋54が梁部22Cの長手方向に沿って配置されている。すなわち、8本の梁鉄筋54が梁部22Cに配置されている。また、梁鉄筋54は、端部が梁部22Cの端面から突出しないように梁部22Cに配置されている。
梁部22Cの端部には、梁部22Cの端面から端部が突出しないように中空管56が埋設され、梁部22Cの端部に孔58を形成している。中空管56は、梁鉄筋50、54をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の機械式継手となっており、図4(a)の状態で、梁鉄筋54の端部が中空管56の孔58の途中まで挿入されている。なお、中空管56は、内壁に梁鉄筋50、54をねじ込む雌ネジが形成されたねじ込み式の機械式継手としてもよい。
梁部22Cには、梁鉄筋54、中空管56や、梁鉄筋54と中空管56を囲むようにせん断補強筋60が水平方向に複数配置されている。そして、梁鉄筋54、中空管56、及びせん断補強筋60は、梁部22Cを形成するコンクリートVによって一体となっている。
なお、1つの柱梁部材14に設けられた梁部22A、22Cに配置される梁鉄筋が梁部22Aから梁部22Cに渡って一続きに配置されている場合には、梁鉄筋50と梁鉄筋54とは同じ部材を示していることになる。
梁鉄筋50、54の径の大きさは同じであり、梁鉄筋50と中空管56の中心位置の配置は、ほぼ同じになっている。
<第1の実施形態の作用及び効果>
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
PCa柱梁部材の接合構造10を有する建物は、図5に示す建物の施工方法によって構築される。なお、説明の都合上、床スラブ62の左側、略中央、右側に設置される柱部材12をそれぞれ柱部材12A〜12Cとする。さらに、柱部材12A〜12C上に載置される柱梁部材14をそれぞれ柱梁部材14A〜14Cとする。
まず、図5(a)に示すように、建物の1階の床スラブ62上の左側、略中央、右側に、柱部材12A〜12Cを設置する。
床スラブ62上への柱部材12A〜12Cの設置は、後に説明する柱部材12と柱梁部材14の下柱部18との接合方法と同様の方法を用い、床スラブ62下方に設けられた基礎部(不図示)に配置された柱鉄筋と柱部材12A〜12Cに配置された柱鉄筋36とを床スラブ62を介して接続することによって行う。なお、床スラブ62が基礎部になっている場合には、この基礎部上に柱部材12A〜12Cを設置する。また、床スラブ62や基礎部上に柱部材12A〜12Cを設置できる方法であれば、他の設置方法を用いてもよい。
次に、図5(a)に示すように、柱梁部材14Aを上方から下方に移動させて、柱部材12A上に柱梁部材14Aの下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。
このときに、柱部材12Aの上面184と下柱部18の下面186との間の隙間の大きさが20mm程度になるように、柱部材12Aの上面184に設けられたボルト26によって下柱部18の設置高さが調整されている。なお、柱梁部材14Aは、横方向又は水平に移動させて柱部材12A上に載置してもよい。
次に、図2(a)、(b)に示す方法で、柱部材12Aと柱梁部材14Aの下柱部18とを接合する。図2(a)は、柱部材12と下柱部18とを接合する前の状態を示し、図2(b)は、柱部材12と下柱部18とを接合した状態を示している。
図6(a)に示すように、柱部材12と下柱部18とを接合する前の状態では、下柱部18に略水平に形成されたグラウト排出孔48を介して下柱部18の側面と中空管44の上端部とが紐64によってつながれ、中空管44が孔32の上方から吊り下げられている。このとき、中空管44は、下端部が下柱部18の下面186から突出しないように孔32に収容されている。
よって、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置するときに中空管44は下柱部18に収容されており、下柱部18の接合面(下面186)から突出していない。
これにより、柱部材12上に載置した柱梁部材14を横方向又は水平に移動させることが可能なので、柱部材12上にPCa製の柱梁部材14を載置した後、建て方精度を向上させるために柱梁部材14の位置調整ができる。
次に、図6(a)の状態における下柱部18側面への紐64端部の固定を解くか、または紐64を切断することによって、図6(b)に示すように、下柱部18の孔32に収容されている中空管44は自重により下降し、孔32から引き出される。
そして、孔32から引き出された中空管44は、柱部材12の上端部に形成された挿入部としての孔40に挿入される(柱部材12の接合面184へ挿入される)と共に、柱部材12に配置された柱鉄筋36の端部が中空管44に挿入される。
これによって、柱部材12と下柱部18とが接合される(接合工程)。すなわち、柱部材12に配置された柱鉄筋36と下柱部18に配置された柱部材28とが中空管44によって接続される。
よって、柱部材12に配置された柱鉄筋36と下柱部18に配置された柱鉄筋28とを接合手段としての中空管44により確実に接続することができる。
また、柱部材12の接合面(上面184)へ接合手段としての中空管44を挿入することによって柱部材12と下柱部18とを接合するので、柱部材12と下柱部18とを簡単な方法で接合することができる。これにより、柱部材12と下柱部18との接合作業の手間を低減し、効率よく接合作業を行うことが可能となる。
さらに、中空管44が自重により下降して柱部材12と下柱部18とを接合するので、接合作業を容易に行うことができる。また、中空管44を引き出すために手や工具などを入れる作業空間を下柱部18に形成しなくてよい。これにより、この作業空間をグラウト充填するための手間や型枠設置作業等が不要となる。
次に、孔40に挿入された中空管44に柱部材12に設けられた柱鉄筋36の端部が挿入された後、図6(c)に示すように、下柱部18の下面186と柱部材12の上面184との間に形成される隙間空間S1の外周部をエアーホース66や型枠等によって塞ぐ。
そして、柱部材12に略水平に形成されたグラウト注入孔46から硬化材Wを注入し、余分な硬化材Wをグラウト排出孔48から排出させて、孔32、40内、中空管44内、及び隙間空間S1内に硬化材Wを充填する。そして、充填した硬化材Wを硬化させて中空管44に柱鉄筋28、36の端部を定着し、柱部材12と下柱部18とを一体化する。
隙間空間S1の外周部をエアーホース66で塞げば、硬化材Wを充填するための準備作業の手間をより低減できるので好ましい。また、下柱部18の下面186と柱部材12の上面184との間に形成する隙間は小さいので、型枠を用いる場合においても、コンクリート打設のために設ける型枠とは異なり簡易な型枠でよい。よって、硬化材Wを充填するための準備作業の手間を低減することができる。
次に、図5(b)に示すように、柱梁部材14Bを横方向又は水平に移動させて、柱梁部材14Bの梁部22Aの端面が、柱梁部材14Aの梁部22Cの端面と対向するように柱梁部材14Bを配置し、柱部材12B上に柱梁部材14Bの下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。柱部材12B上に柱梁部材14Bの下柱部18を載置する方法は、柱部材12A上に柱梁部材14Aの下柱部18を載置する方法と同様である。
このとき、図4(a)に示すように、梁部22Cの端部に形成された孔58に梁部22Aから突出する梁鉄筋50の端部が挿入され、梁部22Aと梁部22Cとが接合されて図4(b)の状態になる。
また、このとき、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に小さな隙間を有するように、又は梁部22Aの端面と梁部22Cの端面とを密着させるように柱梁部材14Bを配置する。
図4(b)では、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間の隙間の大きさを20mm程度としている。施工上、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
柱部材12B上に柱梁部材14Bの下柱部18を載置する場合においても、柱部材12A上に柱梁部材14Aの下柱部18を載置した場合と同様に、柱部材12B上に載置した柱梁部材14Bを横方向又は水平に移動させることが可能なので、柱部材12B上にPCa製の柱梁部材14Bを載置した後、建て方精度を向上させるために柱梁部材14Bの位置調整ができる。
次に、柱部材12Aと柱梁部材14Aの下柱部18との接合方法と同様の方法で、柱部材12Bと柱梁部材14Bの下柱部18との接合を行う。
次に、図4(b)に示すように、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間の隙間空間S2の外周部をエアーホース(不図示)や型枠等によって塞ぐ。
そして、中空管56内、及び隙間空間S2内に硬化材Wを充填する。そして、充填した硬化材Wを硬化させて、梁部22Cに設けられた中空管56に、梁部22Aに配置された梁鉄筋50の端部を定着し、梁部22Aと梁部22Cとを一体化する。
隙間空間S2の外周部をエアーホースや簡易な型枠で塞げば、硬化材Wを充填するための準備作業の手間を低減できる。
また、図5(b)で示したように、PCa柱梁部材の接合構造10では、隣り合って配置される柱梁部材の梁部同士を接合する接合方法に、柱梁部材の一方を横方向又は水平に移動させて梁部の接合面同士が密着するように、又は梁部の接合面同士の間に小さな隙間を有するように柱梁部材(梁部)を配置し、柱梁部材の梁部同士を接合する接合方法を用いることができる(図4を参照のこと)。なお、PCa柱梁部材の接合構造10では、梁部の端面が梁部の接合面となる。
すなわち、梁部同士の接合部(接合する梁部の接合面同士の間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。
次に、図5(b)の作業(柱部材上への柱梁部材の設置、柱部材と柱梁部材の下柱部との接合、及び隣り合って配置される柱梁部材の梁部同士の接合)を繰り返して、建物の一層部分を構築する(図5(c)の状態)。
後は、階を上げながら図5(a)〜(c)と同様の作業を繰り返すことにより、PCa柱梁部材の接合構造10を屋上階まで積み上げて、建物を構築する。
図5(a)〜(c)では、建物1階の床スラブ62上に設置した柱部材12上に柱梁部材14を設置し、隣り合って設置された柱梁部材14の梁部同士(柱梁部材14Bの梁部22Aと柱梁部材14Aの梁部22C)を接合する施工方法について示したが、他の階に設置された柱梁部材14上に次の柱梁部材14を設置する場合においても同様の施工方法で行えばよい。
例えば、図5(c)の柱梁部材14A〜14C上に次の柱梁部材14を載置する場合には、図5(c)の柱梁部材14A〜14Cの上柱部20を、図5(a)の柱部材12A〜12Cであると置き換えて考えればよい。
また、2階以上の床スラブの施工は、隣り合って設置した柱梁部材14の梁部同士を接合した後のどのタイミングで行ってもよい。
これまで説明したように、第1の実施形態では、柱梁部材の梁部同士や上下柱部同士の接合作業の手間を低減して効率よく接合作業を行うことができ、柱部材上に載置した柱梁部材を横方向又は水平に移動させることによって柱梁部材の建て方精度を向上させることができる。
また、柱と梁とが、柱の頭部又は柱の脚部で接合される従来の接合方法を用いた場合、柱の頭部又は柱の脚部付近には大きな曲げ応力が発生するので、応力上不利な箇所での接合となる。
これに対して、PCa柱梁部材の接合構造10では、柱の中間部(柱部材12と柱梁部材14の下柱部18との接合部)で接合されるので、応力上有利な箇所(例えば、上下梁の内法スパン中央部の柱曲げモーメント反曲点)において接合を行うことができる。
また、柱梁仕口部16、下柱部18、上柱部20、及び梁部22A〜22Dを一体にして1つの柱梁部材14を形成しているので、クレーンによる部材の揚上回数が減り、また、部材同士の接合箇所が少なくなる。よって、施工性の向上を図ることができる。
また、例えば、図7に示すように、PCa製の逆梁68とPCa製の順梁72とが直交するように柱70に支持され、これらの逆梁68と順梁72とによって共通の床スラブ74を支持する構造体であり、また柱70が、PCa製の下柱部材70Bと、下柱部材70B上に設置されて逆梁68との接合部となるPCa製の柱梁仕口部材76と、柱梁仕口部材76上に設置されるPCa製の上柱部材70Aとによって形成されている場合には、下柱部材70Bと柱梁仕口部材76との目地78が、順梁72と柱70との接合面に位置してしまい接合強度が弱くなってしまう。よって、構造耐力上好ましくない。
ここで逆梁とは、建物のバルコニー手摺り等を梁として利用し、梁の底面付近に床スラブが取り付くL字型断面の梁であり、順梁とは、梁上に床スラブが載置されるT字型断面の梁である。
これに対してPCa柱梁部材の接合構造10では、柱梁仕口部16、下柱部18、上柱部20、及び梁部22A〜22Dを一体にして柱梁部材14が形成されているので、このような問題を防ぐことができる。
なお、図2では、孔32、40をシース管30、38によって形成した例を示したが、中空管44を収容可能な孔32と中空管44を挿入可能な孔40とが形成されればよく、他の管材を用いてもよい。また、例えば、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り除くことによって孔を形成してもよいし、穿孔により孔を形成してもよい。
<第1の実施形態の変形例1>
図2では、中空管44の挿入部を孔40とした例を示したが、図8(a)の正面図に示すように、中空管44の挿入部を空間としてもよい。
図8(a)、及び図8(a)のB−B断面図である図8(c)に示すように、下柱部18の下端部には直方体状の空間P1が形成され、この空間P1内に柱鉄筋28の端部が突出している。下柱部18の下面には開口部80が設けられ、下柱部18の下端部側面の一面には開口部82が設けられている。そして、この開口部80、82が空間P1とつながっている。すなわち、空間P1の3つの側面が壁で覆われている。
柱部材12の上端部には挿入部としての直方体状の空間P2が形成され、この空間P2内に柱鉄筋36の端部が突出している。柱部材12の上面には開口部84が設けられ、柱部材12の上端部側面の一面には開口部86が設けられている。そして、この開口部84、86が空間P2とつながっている。すなわち、空間P2の3つの側面が壁で覆われている。
下柱部18に形成された空間P1には、接合手段としての12本の中空管44が収容されている。図8(a)の状態で、中空管44は、端部が下柱部18の下面から突出しないように、柱鉄筋28に挿入されている。中空管44は、図6(a)の中空管44と同様に、紐64によって空間P1の上方から吊り下げられている。
またこの状態で、中空管44を囲むせん断補強筋88が、空間P1の上方で複数重ねて配置され、結束筋等で中空管44に仮固定されている。
また、柱部材12の側面に形成されたグラウト注入孔46は、空間P2の下部につながり、下柱部18の側面に形成されたグラウト排出孔48は、空間P1の上部につながっている。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図8(a)に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。
次に、図8(b)に示すように、下柱部18の空間P1に収容されている中空管44を自重によって下降させ、空間P1から引き出して柱部材12の上端部に形成された挿入部としての空間P2に挿入する(柱部材12の接合面へ挿入する)。
これによって、柱部材12に設けられた柱鉄筋36の端部が中空管44に挿入され、柱部材12と下柱部18とが接合される(接合工程)。
次に、下柱部18の開口部82や、柱部材12の開口部86から空間P1、P2に手や工具などを入れて、図8(a)の状態において空間P1の上方に重ねられていた複数のせん断補強筋88を鉛直方向に間隔を空けて配置する。そして、このせん断補強筋88を結束線等で柱鉄筋28、36や中空管44に固定する。
次に、下柱部18の下面と柱部材12の上面との間に形成される隙間空間S1の外周部をエアーホースや型枠等によって塞ぎ、また、開口部82、86を型枠等で塞ぐ。
さらに、柱部材12に形成されたグラウト注入孔46から硬化材Wを注入し、余分な硬化材Wを下柱部18に形成されたグラウト排出孔48から排出させて、空間P1、P2内、中空管44内、及び隙間空間S1内に硬化材Wを充填する。
そして、充填した硬化材Wを硬化させて中空管44に柱鉄筋28、36の端部を定着し、柱部材12と下柱部18とを一体化する。
空間P1、P2を覆う壁の内側にコッターを設ければ、硬化した硬化材Wと壁との接合強度が増すので好ましい。
なお、開口部82、86は、下柱部18や柱部材12の外部から空間P1、P2内に手や工具などを入れて、せん断補強筋88を配置する作業等が可能な大きさであればよく、複数設けてもよい。大きな開口部を設ければ作業が行い易くなるし、開口部が少なければ型枠設置の作業手間が少なくて済む。
また、空間P1の形状や大きさは、1つ以上の中空管44を収容できる形状や大きさであればよく、空間P2の形状や大きさは、1つ以上の中空管44を挿入できる形状や大きさであればよい。また、これらの空間を複数設けてもよい。
例えば、図9(a)、(b)の正面図、及び図9(a)のC−C断面図である図9(c)に示すような空間P3、P4としてもよい。図9(a)は、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する前の状態を示し、図9(b)は、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合した状態を示している。
図9(a)に示すように、下柱部18の下端部中央には、略正方形の平断面形状が下柱部18の上部92の平断面形状よりも小さい直方体状のコンクリートブロック90が形成され、このコンクリートブロック90の周囲に接合手段としての中空管44を収容する空間P3を形成している。
また、柱部材12の上端部中央には、略正方形の平断面形状が柱部材12の下部94の平断面形状よりも小さい直方体状のコンクリートブロック96が形成され、このコンクリートブロック96の周囲に接合手段としての中空管44を挿入する空間P4を形成している。
そして、図9(b)の状態で、空間P3、P4を覆うように型枠等を設置し、空間P3、P4、隙間空間S1、及び中空管44に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて柱部材12と下柱部18とを一体化する。
このように、下柱部18、柱部材12の周囲に空間P3、P4を形成すれば、この空間P3、P4に手や工具等を入れて行う作業が容易になり、また、コンクリートブロック90、96によって充填する硬化材の量が少なくて済む。
<第1の実施形態の変形例2>
図2、8、9では、接合手段を中空管44とした例を示したが、図10に示すように、接合手段を棒材としてもよい。
図10(a)の正面図、及び図10(a)のD−D断面図である図10(c)に示すように、柱梁部材14の下柱部18の下端部には、下柱部18の下面186から突出しないように下柱部18の外周に沿って12本の中空管98が埋設され、これにより下柱部18に孔100を形成している。中空管98は、隣り合った柱鉄筋28の間に配置されている。
柱部材12の上端部には、柱部材12の上面184から突出しないように柱部材12の外周に沿って12本の中空管102が埋設され、これにより挿入部としての孔104を形成している。中空管102は、隣り合った柱鉄筋36の間に配置されている。
また、中空管102の孔104の下端部には、柱部材12の内部に埋設され柱鉄筋36と略平行に配置された鉄筋棒106が挿入されている。
中空管98、102の内径及び外径は同じであり、中空管98、102の中心位置の平面配置は同じになっている。すなわち、中空管98、102の端部開口面同士は対向している。
下柱部18に設けられた中空管98の孔100には、接合手段としての棒材である鉄筋棒108が挿入されている。すなわち、下柱部18に接合手段としての鉄筋棒108が収容されている。
中空管98、102は、柱鉄棒108をねじ込まずに挿入可能な差し込み式の機械式継手となっており、図10(a)の状態で、鉄筋棒108は、端部が下柱部18の下面186から突出しないように、中空管98の孔100に収容されている。また、鉄筋棒108は、図6(a)の中空管44のように、紐によって中空管98の上方から吊り下げられている。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図10(a)に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。
次に、図10(b)に示すように、下柱部18の中空管98に収容されている鉄筋棒108を自重によって下降させ、中空管98から引き出して柱部材12の上端部に形成された孔104に挿入する(柱部材12の接合面へ挿入する)。
これによって、接合手段としての鉄筋棒108が、柱部材12に配置された柱鉄筋36と下柱部18に配置された柱鉄筋28とのそれぞれに対し長手方向に重なるように配置されて、柱部材12と下柱部18とを接合する(接合工程)。
次に、下柱部18の下面186と柱部材12の上面184との間に形成される隙間空間S1の外周部をエアーホースや型枠等によって塞ぐ。
さらに、中空管98、102内、及び隙間空間S1内に硬化材Wを充填する。
そして、充填した硬化材Wを硬化させて中空管98、102に鉄筋棒108を定着し、柱部材12と下柱部18とを一体化する。
このように、図10の接合方法を用いれば、下柱部18及び柱部材12に配置された柱鉄筋28、36の配置や本数に大きな拘束を受けることなく、接合手段としての鉄筋棒108を配置することができる。
なお、下柱部18と柱部材12とが接合された図10(b)の状態で、下柱部18内において鉄筋棒108と柱鉄筋28とが重なり合う長さL1を鉄筋棒108及び柱鉄筋28の小さい方の径の大きさの40倍程度以上となるようにし、柱部材12内において鉄筋棒106、108と柱鉄筋36とが重なり合う長さL2を鉄筋棒106、108及び柱鉄筋36の中で最も小さい径の大きさの40倍程度以上となるようにするのが、十分な接合強度を確保する上で好ましい。
また、鉄筋棒108の径の大きさ、配置、本数は、必要とする接合強度に応じて適宜決めればよい。
また、柱鉄筋28、36よりも鉄筋棒106、108の本数が少なくなる場合には、鉄筋棒106、108の径を大きくするのが、十分な接合強度を確保する上で好ましい。
また、図10では、孔100、104を中空管98、102によって形成した例を示したが、鉄筋棒108を収容可能な孔100と鉄筋棒108を挿入可能な孔104とが形成されればよく、他の管材を用いてもよい。また、例えば、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り除くことによって孔を形成してもよいし、穿孔により孔を形成してもよい。また、鉄筋棒108を挿入する挿入部を孔以外の空間としてもよい。
<第1の実施形態の補足説明>
なお、第1の実施形態では、柱梁部材14の下柱部18に接合手段(図2、8、9の中空管44、図10の鉄筋棒108)を収容し、下柱部18から下方に接合手段を引き出して、柱部材12に形成された挿入部(図2の孔40、図8の空間P2、図9の空間P4、図10の孔104)に挿入する例を示したが、柱部材12に接合手段を収容し、柱部材12から上方に接合手段を引き出して、下柱部18に形成された挿入部に挿入するようにしてもよい。
下柱部18の下端部に接合手段を収容するようにすれば、金属製の接合手段を用いる場合には、柱梁部材14を屋外で保管するときに接合手段の挿入部(孔、空間)に雨水等が溜らないので接合手段が錆びるのを防ぐことができるので好ましい。
また、第1の実施形態では、図6で示したように紐64によって接合手段(図2、8、9の中空管44、図10の鉄筋棒108)が下柱部18に収容された状態を保持し、柱部材12と下柱部18とを接合するときに紐64による保持状態を解除して接合手段を下方に引き出す例を示したが、柱部材12と下柱部18とを接合するときまでは接合手段が下柱部18に収容された状態を維持し、必要なとき(柱部材12と下柱部18とを接合するとき)に、接合手段を引き出せる方法であればよい。
柱部材12に接合手段が収容されている場合であれば、例えば、紐の一端を接合手段の下端部に固定し、この紐を上方に引き上げることによって接合手段を上方へ引き出せばよい。
また、第1の実施形態では、図2、8、9の中空管44、及び図10の中空管98、102を差し込み式の機械式継手としたが、これらの中空管44、98、102を、柱鉄筋や鉄筋棒のねじ込みが可能な雌ネジが形成されているねじ込み式の機械式継手としてもよい。
中空管44、98、102をねじ込み式の機械式継手とした場合においても、ボールネジのように、中空管44、98、102と柱鉄筋28、36、鉄筋棒108との間の摩擦を軽減できるようにグリースなどを縫っておけば、図2、8、9の場合であれば、中空管44を自重によって下降させて、この中空管44を柱鉄筋36にねじ込ませることができる。また、図10の場合であれば、鉄筋棒108を自重によって下降させて、この鉄筋棒108を中空管102にねじ込ませることができる。また、柱部材12に収容した中空管44や鉄筋棒108を紐等によって上方へ引き出して、下柱部18に設けられた柱鉄筋28や中空管98にねじ込ませることができる。
接合手段が自重によって下降しないねじ込み式の機械式継手を用いた場合においても、図8、9では、下柱部18の外部から空間P1、P3内に手や工具などを入れて中空管44をねじり、下柱部18から中空管44を引き出すことができる。
また、例えば、図11(a)の正面図に示すように、下柱部18に収納された鉄筋棒108の略中央部が露出する空間P5を下柱部18に形成すれば、この空間P5に手や工具を入れて鉄筋棒108をねじり、下柱部18から鉄筋棒108を引き出すことができる。
図11(a)は、柱部材12と下柱部18とが接合される前の状態を示し、図11(b)の正面図は、柱部材12と下柱部18とが接合された状態を示し、図11(c)は、図11(a)のE−E断面図を示している。図11では、図10で示した中空管98が2つの中空管98A、98Bに分割され、空間P5の上下に配置されている。
また、第1の実施形態の図2、8、9では、柱部材12、下柱部18にそれぞれ設けられた12本の柱鉄筋36、28同士を中空管44によって接合した例を示したが、例えば、柱部材12と下柱部18との接合箇所を柱の反曲点付近に設けることによって曲げモーメントが小さくなる場合などにおいて、十分な接合強度が得られれば12本全ての柱鉄筋同士を接合しなくてもよく、中空管44の配置や本数は適宜決めればよい。接合強度上またはせん断補強筋の固定のため、柱部材12及び下柱部18の四隅付近に配置された柱鉄筋同士を接合するのが好ましい。
また、中空管44の収容部を図8、9で示した空間P1、P3とし、中空管44の挿入部を図2で示した孔40としてもよいし、中空管44の収容部を図2で示した孔32とし、中空管44の挿入部を図8、9で示した空間P2、P4としてもよい。
また、第1の実施形態の図2、6、8、9では、中空管44内とシース管30、38内、空間P1、P2、P3、P4内とに同時に硬化材Wを充填する例を示したが、先に中空管44内に硬化材Wを注入して柱鉄筋28、36を確実に緊結したのちに、シース管30、38内、空間P1、P2、P3、P4内に硬化材Wを充填してもよい。
また、第1の実施形態の図10では、中空管98、102内と隙間空間S1内とに同時に硬化材Wを充填する例を示したが、先に中空管98、102内に硬化材Wを注入して鉄筋棒108を確実に緊結したのちに、隙間空間S1内に硬化材Wを充填してもよい。
また、第1の実施形態の図4では、中空管56内と隙間空間S2内とに同時に硬化材Wを充填する例を示したが、先に中空管56内に硬化材Wを注入して梁鉄筋50を確実に緊結したのちに、隙間空間S2内に硬化材Wを充填してもよい。
<第2の実施形態の構成>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態で示した柱梁部材14の下柱部18及び柱部材12の一方にほぞ部を設け、他方にほぞ受け部を設けて、これらのほぞ部とほぞ受け部とを組み合わせることにより柱部材12と下柱部18とを接合するものである。従って、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図12には、第2の実施形態のPCa柱梁部材の接合構造126が示されている。図12(a)の斜視図は、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置して、柱部材12と下柱部18とを接合する前の状態を示している。柱部材12の下部110の水平断面形状は、下柱部18の上部112の水平断面形状と同じである。
柱部材12の端部には、ほぞ部114が設けられている。ほぞ部114は、柱部材12の端部に突出して設けられた連結部114Aと、この連結部114Aの側方に形成された切欠き部114Bとによって構成されている。
連結部114Aには、連結部114Aを略水平に貫通する複数の連結孔118が形成されている。連結孔118は、図12(a)に示すように水平方向に3つ、鉛直方向に4つ並んで配置されている。すなわち、合計12(=3×4)の連結孔118が形成されている。
柱梁部材14の下柱部18の端部には、ほぞ部114と同じ形状のほぞ受け部120が設けられている。ほぞ受け部120は、下柱部18の端部に突出して設けられた連結部120Aと、この連結部120Aの側方に形成された切欠き部120Bとによって構成されている。
連結部120Aには、連結部120Aを略水平に貫通する複数の連結孔122が形成されている。連結孔122は、図12(a)に示すように水平方向に3つ、鉛直方向に4つ並んで配置されている。すなわち、合計12(=3×4)の連結孔122が形成されている。
連結孔122の中心位置の配置は、連結孔118の中心位置の配置とほほ同じであり、連結孔122と連結孔118の径の大きさは等しい。
連結部120A側に形成されている連結部114Aの側面116が、柱部材12の接合面となり、連結部114A側に形成されている連結部120Aの側面124が、下柱部18の接合面となる。
連結部114Aの側方に形成された切欠き部114Bの形状は、連結部120Aの形状とほぼ同じになっており、連結部120Aの側方に形成された切欠き部120Bの形状は、連結部114Aの形状とほぼ同じになっている。
すなわち、ほぞ受け部120をほぞ部114と組み合わせたときに、柱部材12と下柱部18とが一体化されて、組み合わせ部分の水平断面形状が柱部材12の下部110、及び下柱部18の上部112の水平断面形状とほぼ等しい1つの柱となる。
また、切欠き部114Bの底面128の四隅付近には、図3で示したボルト26(不図示)が設けられており、このボルト26のねじ込み量によって、底面128上に載置される柱梁部材14の下柱部18の設置高さを調整する。
<第2の実施形態の作用及び効果>
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
第2の実施形態では、PCa柱梁部材の接合構造126における、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18との接合方法についてのみ説明する。PCa柱梁部材の接合構造126を有する建物は、図5で示したPCa柱梁部材の接合構造10をこのPCa柱梁部材の接合構造126に置き換えた施工方法によって構築される。
PCa柱梁部材の接合構造126では、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図12(a)に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。
このとき、柱部材12の端部に設けられたほぞ部114と、下柱部18の端部に設けられたほぞ受け部120とを上下方向、横方向、又は水平に相対移動可能に組み合わせる。すなわち、ほぞ部114の連結部114Aをほぞ受け部120の切欠き部120Bに挿入する。また、同時に、ほぞ受け部120の連結部120Aは、ほぞ部114の切欠き部114Bに挿入される。
この状態で、切欠き部114Bの底面128と連結部120Aの下面130との間の隙間の大きさが20mm程度になり、かつ連結部114Aに形成された連結孔118の中心位置と、連結部120Aに形成された連結孔122の中心位置とがほぼ一致するように、切欠き部114Bの底面128に設けられたボルト26によって下柱部18の設置高さが調整されている。
また、この状態で、柱部材12の接合面(側面116)と下柱部18の接合面(側面124)との間に小さな隙間を有するように、又は柱部材12の接合面(側面116)と下柱部18の接合面(側面124)とを密着させるように下柱部18が配置されている。
施工上、柱部材12の接合面(側面116)と下柱部18の接合面(側面124)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
次に、連結孔118、122に接合手段として鉄筋棒132を挿入し、この鉄筋棒132を連結部114Aと連結部120Aとに跨るように配置して、組み合った状態のほぞ部114とほぞ受け部120とを連結する。
すなわち、接合手段としての鉄筋棒132が下柱部18の接合面(側面124)、又は柱部材12の接合面(側面116)へ挿入されて、柱梁部材14の下柱部18と柱部材12とが接合される(接合工程)。
図12(b)の斜視図には、図12(a)の状態の後に、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合した状態が示されている。
次に、図12(b)に示すように、ほぞ部114とほぞ受け部120との間に形成された隙間空間S3内、及び連結孔118、122内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化剤Wを硬化させて柱部材12及び下柱部18に鉄筋棒132を定着し、柱部材12と下柱部18とを一体化する。
よって、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用と効果を得ることができる。
また、図12に示したように、ほぞ部114とほぞ受け部120とに形成された連結孔118、122に、連結手段としての鉄筋棒132を挿入して柱部材12と下柱部18とを接合するので、簡易な方法で柱部材12と下柱部18とを確実に接合することができる。
また、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置するときに、ほぞ受け部120は、ほぞ部114と横方向又は水平に相対移動可能に組み合うので、柱部材12上に載置した柱梁部材14を横方向又は水平に移動させることができる。
これにより、柱部材12上に柱梁部材14を載置した後、建て方精度を向上させるために柱梁部材14の位置調整ができる。
また、ほぞ部114は、ほぞ受け部120と組み合わせるときのガイドになるので、柱部材12上に載置する柱梁部材14の下柱部18を所定の位置に合わせ易く、建て方精度の向上に資する。
また、柱部材12の接合面(側面116)と下柱部18の接合面(側面124)との間に小さな隙間を有するように、又は柱部材12の接合面(側面116)と下柱部18の接合面(側面124)とを密着させるように、柱部材12上に柱梁部材14を配置することができるので、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18との接合部(側面116と側面124との間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。
<第2の実施形態の変形例1>
図12では、接合手段を鉄筋棒132とした例を示したが、接合手段をボルト部材としてもよい。
図13(a)の斜視図に示すように、ほぞ受け部120の連結部120Aには、連結部120Aの側面から端部が突出しないように8本の長ナット134が略水平に埋設され、この長ナット134によって連結孔136が略水平に形成されている。連結孔136は、連結部120Aの側面124に対して千鳥状に配置されている。
ほぞ部114の連結部114Aには、連結部114Aの側面から端部が突出しないように8本の鋼管138が略水平に埋設され、この鋼管138によって連結孔140が略水平に形成されている。
連結孔140の中心位置は、連結孔136の中心位置とほぼ同じになっている。
連結孔140は、後に説明するボルト部材142の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっており、長ナット134にはボルト部材142のねじ込みが可能な雌ネジが形成されている。
鋼管138の端部は、固定金具144に溶接等によって接合されている。固定金具144の両端(左右)は略円弧形状に曲げられ、固定金具144の中央には鋼管138の連結孔140と連通する連通孔が形成されている。
また、鋼管138が設けられている側と逆の固定金具144には、鋼管146が溶接等によって接合されている。鋼146の内径は、後に説明するボルト部材142の頭部やワッシャー148の収容が可能な大きさとなっている。
長ナット134の端部は、固定金具150に溶接等によって接合されている。固定金具150の両端(左右)は略円弧形状に曲げられている。
鋼管138及び長ナット134の周囲には、鋼管138及び長ナット134が破壊することを防止する円環状の補強筋152が配置されている。
そして、柱部材12、下柱部18に配置された柱鉄筋(不図示)に、固定金具144、150の円弧部分を掛け止めることによって、所定の位置に連結孔140、136が配置されている。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、図12と同様の柱梁部材設置工程によって、図13(a)に示すように柱部材12の端部に設けられたほぞ部114と下柱部18の端部に設けられたほぞ受け部120とを上下方向、横方向、又は水平に相対移動可能に組み合わせる。
このとき、連結部114Aに形成された連結孔140の中心位置と、連結部120Aに形成された連結孔136の中心位置とがほぼ一致するように、柱梁部材14の下柱部18の設置高さは、切欠き部114Bの底面128に設けられたボルト26によって調整されている。
次に、ワッシャー148を介して連結孔140に挿入した接合手段としてのボルト部材142を、長ナット134にねじ込み、強く締め付けて固定する。すなわち、ボルト部材142を下柱部18の接合面(側面124)に挿入し、ボルト部材142を連結部114Aと連結部120Aとに跨るように配置して、組み合った状態のほぞ部114とほぞ受け部120とを連結することにより、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する(接合工程)。
次に、ほぞ部114とほぞ受け部120との間に形成された隙間空間S3内、連結孔140内、及び鋼管146内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化剤Wを硬化させて連結部114Aにボルト部材142を定着し、柱部材12と下柱部18とを一体化する。
よって、図13の接合方法を用いれば、連結部114Aに形成された連結孔140と連結部120Aに形成された連結孔136とにボルト部材142を挿入し、長ナット134に強く締め付けて固定するので、簡易な方法で柱部材12と下柱部18とをより確実に接合することができる。
<第2の実施形態の変形例2>
図12では、連結部120Aと切欠き部120Bとによってほぞ受け部120を構成した例を示したが、図14に示すような、下柱部18の端部に突出して設けられた2つの連結部と、この2つの連結部の間に形成される溝とによってほぞ受け部を構成してもよい。
図14(a)の斜視図に示すように、柱部材12の端部には、ほぞ部154が設けられている。ほぞ部154は、柱部材12の端部の水平方向略中央に突出して設けられた連結部154Bと、連結部154Bの側方両側に形成された切欠き部154A、154Cとによって構成されている。
切欠き部154A、154Cは同じ形状になっている。また、連結部154Bに形成されている側面156、158が、柱部材12の接合面となる。
連結部154Bには、この連結部154Bを略水平に貫通する複数の連結孔160が形成されている。連結孔160は、水平方向に3つ、鉛直方向に4つ並んで配置されている。すなわち、合計12の連結孔160が形成されている。
柱梁部材14の下柱部18の端部には、ほぞ受け部162が設けられている。ほぞ受け部162は、下柱部18の端部の水平方向両端側に突出して設けられた2つの連結部162A、162Cと、この連結部162A、162Cの間に形成された溝としての切欠き部162Bとによって構成されている。
連結部126A、162Cの内側の側面に形成されている側面164、166が、下柱部18の接合面となる。
切欠き部162Bの形状は、連結部154Bの形状とほぼ同じになっている。また、切欠き部154A、154Cの形状は、連結部162A、162Cの形状とほぼ同じになっている。
これにより、図14(b)に示すように、ほぞ部154とほぞ受け部162とを組み合わせたときに、柱部材12と下柱部18とが一体化されて、組み合わせ部分の水平断面形状が、柱部材12の下部110及び下柱部18の上部112の水平断面形状とほぼ等しい1つの柱となる。
下柱部18の連結部162A、162Cには、連結部162A、162Cを略水平に貫通する複数の連結孔168、170が形成されている。
連結孔168、170の配置は、連結孔160の配置とほぼ同じであり、合計12の連結孔168、170がそれぞれ形成されている。また、連結孔160、168、170の径の大きさは等しい。
また、切欠き部154A、154Cの底面172、174の四隅付近には、図3で示したボルト26(不図示)が設けられており、このボルト26のねじ込み量によって、底面172、174上に載置される下柱部18の設置高さを調整する。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図14(a)に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。
このとき、ほぞ部154とほぞ受け部162とを上下方向、横方向、又は水平に相対移動可能に組み合わせる。すなわち、ほぞ部154の連結部154Bをほぞ受け部162の切欠き部162Bに挿入する。また、同時に、ほぞ受け部162の連結部162A、162Cが、ほぞ部154の切欠き部154A、154Cに挿入される。
この状態で、切欠き部154A、154Cの底面172、174と連結部162A、162Cの下面176、178との間の隙間の大きさが20mm程度になり、かつ連結部154Bに形成された連結孔160の中心位置と、連結部162A、162Cに形成された連結孔168、170の中心位置とがほぼ一致するように、切欠き部154A、154Cの底面172、174に設けられたボルト26によって下柱部18の設置高さが調整されている。
また、この状態で、柱部材12の接合面(側面156、158)と柱梁部材14の下柱部18の接合面(側面164、166)との間に小さな隙間を有するように、又は柱部材12の接合面(側面156、158)と柱梁部材14の下柱部18の接合面(側面164、166)とを密着させるように下柱部18が配置されている。
施工上、柱部材12の接合面(側面156、158)と柱梁部材14の下柱部18の接合面(側面164、166)との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
次に、連結孔168、160、170に接合手段として鉄筋棒180を挿入し、この鉄筋棒180を連結部162A、154B、162Cに跨るように配置して、組み合った状態のほぞ部154とほぞ受け部162とを連結する。
すなわち、接合手段としての鉄筋棒180が柱部材12の接合面(側面156、158)、又は下柱部18の接合面(側面164、166)へ挿入されて、柱梁部材14の下柱部18と柱部材12とが接合される(接合工程)。
図14(b)の斜視図には、図14(a)の状態の後に柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合した状況が示されている。
次に、図14(b)に示すように、ほぞ部154とほぞ受け部162との間に形成された隙間空間S4内、及び連結孔168、160、170内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化剤Wを硬化させて柱部材12及び下柱部18に鉄筋棒180を定着し、柱部材12と下柱部18とを一体化する。
よって、図14の接合方法を用いれば、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置して、まだ鉄筋棒180によってほぞ部154とほぞ受け部162とが連結されていない状態においても、ほぞ受け部162の溝(切欠き部162B)にほぞ部154の連結部154Bを挿入した状態になっているので、柱梁部材14は倒れ難くなっている。これにより、施工の安全性を向上させることができる。
<第2の実施形態の補足説明>
なお、第2の実施形態では、柱部材12の端部にほぞ部114、154を設け、柱梁部材14の下柱部18の端部にほぞ受け部120、162を設けた例を示したが、柱梁部材14の下柱部18の端部にほぞ部114、154を設け、柱部材12の端部にほぞ受け部120、162を設けてもよい。
また、第2の実施形態では、連結部114Aと連結部120A、連結部154Bと連結部162A、162Cとを同じ形状とした例を示したが、同じ形状でなくてもいい。
例えば、図12、13においては、連結孔118、122、136、140の長さ方向において、連結部114Aの長さを連結部120Aの長さより大きくしてもよい。
また、図14においては、連結孔160、168、170の長さ方向において、連結部162Aの長さを連結部154Bの長さと等しくして、連結部162Cの長さを連結部154Bの長さより大きくしてもよい。
また、第2の実施形態の図14では、下柱部18の端部に1つの溝(切欠き部162B)を形成した例を示したが、下柱部18の端部に複数の溝を形成し、この溝に対応した数の連結部を柱部材12の端部に設けて、各溝に各連結部を挿入するようにしてもよい。
また、第2の実施形態で示した柱部材12の接合面(側面116、156、158)及び下柱部18の接合面(側面124、164、166)の少なくとも一方にコッターを設ければ、硬化材Wを充填した後に、硬化した硬化材Wと連結部との接合強度が増すので好ましい。
また、第2の実施形態では、連結孔118、122、136、140、160、168、170が略水平に形成されている例を示したが、連結孔は斜めに形成されていてもよい。これらの連結孔の配置、本数、径の大きさ等は、挿入する接合手段や必要とする接合強度等に応じて適宜決めればよい。
また、第2の実施形態では、鉄筋棒132、180やボルト部材142を接合手段とした例を示したが、接合手段は、組み合った状態のほぞ部114、154とほぞ受け部120、162とを確実に連結できるものであればよい。接合手段を異形鉄筋とすれば、硬化材Wを充填したときの付着面積が大きくなるので好ましい。
また、接合手段をPC鋼棒としてもよい。この場合には、連結孔(図12の連結孔118、122、図14の連結孔168、160、170)にPC鋼棒を挿入し、組み合った状態のほぞ部とほぞ受け部(図12のほぞ部114とほぞ受け部120、図14のほぞ部154とほぞ受け部162)とにプレストレスを与える。
これにより、ほぞ部とほぞ受け部との接合面に作用する圧縮力が増加し、摩擦によるせん断伝達を確実に行うことが可能となる。よって、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを強固に接合することができる。
また、第2の実施形態の図14で示した鉄筋棒180を図13で用いたボルト部材142としてもよい。この場合には、例えば、下柱部18の連結部162Aに長ナット134を設け、下柱部18の連結部162Cに鋼管138を設けて、ボルト部材142を連結孔140、160、136に挿入するようにすればよい。
<第3の実施形態の構成>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態で示した柱部材12に下孔を設け、柱梁部材14の下柱部18に上孔を設けて、これらの下孔と上孔に接合手段を挿入することにより柱部材12と下柱部18とを接合するものである。従って、第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図15の斜視図、及び図16の正面図に示すように、PCa柱部材の接合構造182では、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18が載置される。柱部材12の水平断面形状は、下柱部18の水平断面形状と同じである。また、柱部材12の上面184が柱部材12の接合面となり、下柱部18の下面186が下柱部18の接合面となる。
柱部材12には、柱部材12の上面184から柱部材12の側面へ貫通する下孔188が直線的に複数形成されている。
下孔188は、柱部材12の1つの側面に対して下端部が上下方向に2つ、水平方向に2つ並ぶようにして4つ形成されている。すなわち、柱部材12には合計16(=4つ×4面)の下孔188が形成されている。下孔188の下端部には、切欠き部192が形成されている。
また、下柱部18には、下柱部18の下面186から下柱部18の側面へ貫通する上孔190が直線的に複数形成されている。
上孔190は、下柱部18の1つの側面に対して上端部が上下方向に2つ、水平方向に2つ並ぶようにして4つ形成されている。すなわち、下柱部18には合計16(=4つ×4面)の上孔190が形成されている。上孔190の上端部には、切欠き部194が形成されている。
柱部材12の上面184の四隅付近には図3で示したボルト26(不図示)が設けられており、このボルト26のねじ込み量によって柱部材12の上面184上に載置される柱梁部材14の下柱部18の設置高さを調整する。
下孔188と上孔190の径の大きさは、ほぼ等しい。また、下孔188と上孔190の径の大きさは、後に説明する接合手段としての丸鋼196の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっている。
ここで、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置して、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされたときに、下孔188と上孔190とによって貫通孔198が形成される。そして、この貫通孔198は、下柱部18の側面から柱部材12の側面へ直線的に貫通している。
<第3の実施形態の作用及び効果>
次に、本発明の第3の実施形態の作用及び効果について説明する。
第3の実施形態では、PCa柱梁部材の接合構造182における、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18との接合方法についてのみ説明する。PCa柱梁部材の接合構造182を有する建物は、図5で示したPCa柱梁部材の接合構造10をこのPCa柱梁部材の接合構造182に置き換えた施工方法によって構築される。
PCa柱梁部材の接合構造182では、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図17の斜視図に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。図17では、説明の都合上、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との距離が大きく空いているが、この距離は20mm程度となっている。
次に、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされる。このとき、下孔188と上孔190とによって貫通孔198が形成される。
そして、この貫通孔198が下柱部18の側面から柱部材12の側面へ直線的に貫通するように、柱部材12の上面184に設けられたボルト26によって下柱部18の設置高さは事前に調整されている。
次に、柱部材12の側面又は下柱部18の側面から、下孔188と上孔190とへ接合手段としての直線状の丸鋼196が挿入され、これにより柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する(接合工程)。すなわち、接合手段としての丸鋼196が柱部材12の接合面(上面184)、又は柱梁部材14の下柱部18の接合面(下面186)へ挿入されて、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する。
丸鋼196の両端部には雄ネジ200が形成されており、この雄ネジ200にナット202をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼196を柱部材12及び下柱部18に固定する。この固定状態においてナット202は、切欠き部192、194に収容されている。
次に、図16に示すように、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との間の隙間S1内、下孔188内、上孔190内、切欠き部192、194内に硬化材Wを充填し、この硬化剤Wを硬化させて柱部材12及び下柱部18に丸鋼196を定着する。これにより、柱部材12と下柱部18とが一体化される。
よって、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の作用と効果を得ることができる。
また、図17に示すように、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置した状態において、柱部材12の側面又は下柱部18の側面から下孔188と上孔190とへ接合手段としての丸鋼196を挿入するまでは、丸鋼196は柱部材12の接合面(上面184)又は下柱部18の接合面(下面186)から突出していない。
これにより、柱部材12上に載置した柱梁部材14の下柱部18を横方向又は水平に移動させることができる。すなわち、柱部材12上にPCa製の柱梁部材14を載置した後、建て方精度を向上させるために柱梁部材14の位置調整ができる。
また、接合手段を直線状の棒材(丸鋼196)とすることが可能なので、簡易な部材で柱部材12と下柱部18とを接合することができ、柱部材12の側面又は下柱部18の側面から容易に接合手段(丸鋼196)を挿入することができる。
なお、図15〜17では、接合手段としての16本の丸鋼196を、上孔190と下孔188とへ挿入して柱部材12と下柱部18とを接合した例を示したが、少なくとも1本の丸鋼196が上孔190と下孔188とへ挿入されていればよく、必要とする接合強度を有すればこれよりも多くの丸鋼196を配置してもよいし、これよりも少ない丸鋼196を配置してもよい。さらに、丸鋼196の配置は適宜決めればよく、柱部材12及び下柱部18に対して丸鋼196を左右対称に配置させなくてもよいし、丸鋼196同士を交差させて配置しなくてもよい。
図15〜17で示したように、柱部材12及び下柱部18に対して丸鋼196を左右対称に交差させて配置すれば、柱部材12と下柱部18との間に均等に力が伝達されるので、構造上好ましい。
<第3の実施形態の変形例1>
図15〜17では、直線的な貫通孔198に接合手段(丸鋼196)を挿入して、柱部材12と下柱部18とを接合する例を示したが、曲線的な貫通孔に接合手段を挿入して柱部材12と下柱部18とを接合するようにしてもよい。
図18の斜視図、及び図19の正面図に示すように、柱部材12には、柱部材12の上面184から柱部材12の側面へ貫通する下孔204A、204Bが曲線的に複数形成されている。下孔204Aの曲率は、下孔204Bの曲率よりも大きくなっている。
下孔204Aは、柱部材12の1つの側面に対して下端部が水平方向に2つ並ぶようにして形成されている。また、下孔204Bは、柱部材12の1つの側面に対して下端部が水平方向に2つ並び、かつ下孔204Aの下端部の上方に下端部が位置するように形成されている。すなわち、柱部材12には合計8つ(=2つ×4面)の下孔204Aと、合計8つ(=2つ×4面)の下孔204Bとが形成されている。下孔204A、204Bの下端部には、切欠き部206A、206Bがそれぞれ形成されている。
また、柱梁部材14の下柱部18には、下柱部18の下面186から下柱部18の側面へ貫通する上孔208A、208Bが曲線的に複数形成されている。上孔208Aの曲率は、上孔208Bの曲率よりも大きくなっている。
上孔208Aは、下柱部18の1つの側面に対して上端部が水平方向に2つ並ぶようにして形成されている。また、上孔208Bは、下柱部18の1つの側面に対して上端部が水平方向に2つ並び、かつ上孔208Aの上端部の下方に上端部が位置するように形成されている。すなわち、下柱部18には合計8つ(=2つ×4面)の上孔208Aと、合計8つ(=2つ×4面)の上孔208Bとが形成されている。上孔208A、208Bの上端部には、それぞれ切欠き部210A、210Bが形成されている。
下孔204A、204B、及び上孔208A、208Bの径の大きさは、ほぼ等しい。また、下孔204A、204B、及び上孔208A、208Bの径の大きさは、後に説明する接合手段としての丸鋼212A、212Bの挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっている。
ここで、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置して、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされたときに、下孔204Aと上孔208A、及び下孔204Bと上孔208Bとによって貫通孔214A、214Bがそれぞれ形成される。
そして、この貫通孔214A、214Bは、下柱部18の側面から柱部材12の側面へ曲線的に貫通している。また、貫通孔214Aの曲率は、貫通孔214Bの曲率よりも大きくなっている。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図20の斜視図に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。図20では、説明の都合上、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との距離が大きく空いているが、この距離は20mm程度となっている。
次に、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされる。このとき、下孔204Aと上孔208A、及び下孔204Bと上孔208Bとによって貫通孔214A、214Bがそれぞれ形成される。
また、この貫通孔214A、214Bが下柱部18の側面から柱部材12の側面へ曲線的に貫通するように、柱部材12の上面184に設けられたボルト26によって下柱部18の設置高さは調整されている。
次に、柱部材12の側面又は下柱部18の側面から、下孔204Aと上孔208A、及び下孔204Bと上孔208Bとへ接合手段としての曲線状の丸鋼212A、212Bが挿入され、これにより柱部材12と下柱部18とを接合する(接合工程)。すなわち、接合手段としての丸鋼212A、212Bが柱部材12の接合面(上面184)、又は柱梁部材14の下柱部18の接合面(下面186)へ挿入されて、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する。
丸鋼212A、212Bの両端部には雄ネジ216が形成されており、この雄ネジ216にナット218をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼212A、212Bを柱部材12及び下柱部18に固定する。この固定状態においてナット218は、切欠き部206A、206B、210A、210Bに収容されている。
次に、図19に示すように、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との間の隙間空間S1内、下孔204A、204B内、上孔208A、208B内、及び切欠き部206A、206B、210A、210B内に硬化材Wを充填し、この硬化剤Wを硬化させて柱部材12及び下柱部18に丸鋼212A、212Bを定着する。これにより、柱部材12と下柱部18とが一体化される。
よって、図18〜20の接合方法を用いれば、接合手段を曲線状の棒材(丸鋼212A、212B)とすることで、柱部材12及び下柱部18の内部における接合手段の定着長を長くすることが可能になるので、接合手段と柱部材12及び下柱部18との間でスムーズな応力伝達を行うことができる。
なお、図18〜20では、接合手段としての16本の丸鋼(8本の丸鋼212Aと8本の丸鋼212B)を、上孔208A、208Bと下孔204A、204Bとへ挿入して柱部材12と下柱部18とを接合した例を示したが、少なくとも1本の丸鋼(丸鋼212A又は丸鋼212B)が上孔と下孔とへ挿入されていればよく、必要とする接合強度を有すれば、図18〜20で示した丸鋼よりも多くの本数の丸鋼を配置してもよいし、これよりも少ない本数の丸鋼を配置してもよい。
さらに、丸鋼212A、212Bの配置は適宜決めればよく、柱部材12及び下柱部18に対して丸鋼212A、212Bを左右対称に配置させなくてもよい。図18〜20で示したように、柱部材12及び下柱部18に対して丸鋼212A、212Bを左右対称に配置すれば、柱部材12と下柱部18との間に均等に力が伝達されるので、構造上好ましい。
図21の斜視図、及び図22の正面図には、図18〜20で示した丸鋼212A、212Bよりも多くの本数の丸鋼を柱部材12及び下柱部18に配置した一例が示されている。
柱部材12には、柱部材12の上面184から柱部材12の側面へ貫通する下孔220A、220Bが曲線的に複数形成されている。下孔220Aの曲率は、下孔220Bの曲率よりも大きくなっている。さらに、下孔220A、220Bの曲率は図19で示した下孔204Aの曲率よりも大きくなっている。
柱部材12には合計16(=4つ×4面)の下孔220Aと、合計16(=4つ×4面)の下孔220Bとが形成されている。下孔220A、220Bの下端部には、それぞれ切欠き部222A、222Bが形成されている。1つの切欠き部222Aには、2つの下孔220Aの下端部開口が形成され、1つの切欠き部222Bには、2つの下孔220Bの下端部開口が形成されている。
また、下柱部18には、下柱部18の下面186から下柱部18の側面へ貫通する上孔224A、224Bが曲線的に複数形成されている。上孔224Aの曲率は、上孔224Bの曲率よりも大きくなっている。さらに、上孔224A、224Bの曲率は図19で示した上孔208Aの曲率よりも大きくなっている。
下柱部18には合計16(=4つ×4面)の上孔224Aと、合計16(=4つ×4面)の上孔224Bとが形成されている。上孔224A、224Bの上端部には、それぞれ切欠き部226A、226Bが形成されている。1つの切欠き部226Aには、2つの上孔224Aの上端部開口が形成され、1つの切欠き部226Bには、2つの上孔224Bの上端部開口が形成されている。
ここで、柱部材12上に下柱部18を載置して、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされたときに、下孔220Aと上孔224A、及び下孔220Bと上孔224Bとによって貫通孔228A、228Bがそれぞれ形成されるように、柱部材12の上面184に設けられたボルト26(不図示)により上面184上に載置される下柱部18の設置高さが調整されている。
そして、この貫通孔228A、228Bは、下柱部18の側面から柱部材12の側面へ曲線的に貫通している。また、貫通孔228Aの曲率は、貫通孔228Bの曲率よりも大きくなっている。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、柱部材12の側面又は下柱部18の側面から、下孔220Aと上孔224A、及び下孔220Bと上孔224Bとへ接合手段としての曲線状の丸鋼230A、230Bが挿入され、これにより柱部材12と下柱部18とを接合する(接合工程)。すなわち、接合手段としての丸鋼230A、230Bが柱部材12の接合面(上面184)、又は柱梁部材14の下柱部18の接合面(下面186)へ挿入されて、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する。
このように、図21、22の接合方法を用いれば、接合手段を曲率の大きな棒材(丸鋼230A、230B)とすることで、柱部材12の側面又は下柱部18の側面から容易に接合手段(丸鋼230A、230B)を挿入することができる。
<第3の実施形態の変形例2>
図15〜17では、接合手段としての丸鋼196を柱部材12及び下柱部18に貫通させて柱部材12と下柱部18とを接合する例を示したが、接合手段としての丸鋼を柱部材12又は下柱部18に貫通させて、下柱部18又は柱部材12に埋設された鉄筋棒に接続することにより柱部材12と下柱部18とを接合するようにしてもよい。
図23の斜視図、及び図24の正面図に示すように、柱部材12には、柱部材12の上面184から柱部材12の側面へ貫通する貫通孔232が直線的に複数形成されている。
貫通孔232は、柱部材12の1つの側面に対して下端部が水平方向に2つ並ぶようにして形成されている。すなわち、柱部材12には合計8つ(=2つ×4面)の貫通孔232が形成されている。貫通孔232の下端部には、切欠き部234が形成されている。
また、柱部材12には、柱部材12の上面184から内部へ達する挿入孔236が直線的に複数形成されている。
挿入孔236の下端部には、この挿入孔236と連通する中空の鋼管238が埋設されている。さらに、柱部材12に埋設された鉄筋棒240の上端部が鋼管238に固定されている。
鉄筋棒240は鋼管238付近で曲がっていて、この曲がった箇所から下方に位置する鉄筋棒240が柱部材12に配置された柱鉄筋(不図示)と略平行になるように配置されている。また、鋼管238の内側には雌ネジが形成されている。
柱梁部材14の下柱部18には、下柱部18の下面186から下柱部18の側面へ貫通する貫通孔242が直線的に複数形成されている。
貫通孔242は、下柱部18の1つの側面に対して上端部が水平方向に2つ並ぶようにして形成されている。すなわち、下柱部18には合計8つ(=2つ×4面)の貫通孔242が形成されている。貫通孔242の上端部には、切欠き部244が形成されている。
また、下柱部18には、下柱部18の下面186から内部へ達する挿入孔246が直線的に複数形成されている。
挿入孔246の上端部には、この挿入孔246と連通する中空の鋼管248が埋設されている。さらに、下柱部18に埋設された鉄筋棒250の下端部が鋼管248に固定されている。
鉄筋棒250は鋼管248付近で曲がっていて、この曲がった箇所から上方に位置する鉄筋棒250が下柱部18に配置された柱鉄筋(不図示)と略平行になるように配置されている。また、鋼管248の内側には雌ネジが形成されている。
貫通孔232、242、及び挿入孔236、246の径の大きさは、ほぼ等しい。また、貫通孔232、242、及び挿入孔236、246の径の大きさは、後に説明する接合手段としての丸鋼252の挿入が可能であり、かつ出来るだけ小さな径となっている。
ここで、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置して、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされたときに、貫通孔232と挿入孔246、及び貫通孔242と挿入孔236とによって連結孔254、256がそれぞれ直線的に形成される。
鉄筋棒240、250の長さは、鉄筋棒240、250と柱鉄筋とが重なり合う長さが、鉄筋棒240、250と柱鉄筋の小さい方の径の大きさの40倍程度以上となるようにするのが、十分な接合強度を確保する上で好ましい。
なお、説明の都合上、図23、25には、貫通孔232、242、及び挿入孔236、246が一部省略されている。
柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合するときには、まず、上方から下方、横方向、又は水平に柱梁部材14を移動させて、図25の斜視図に示すように柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置する(柱梁部材設置工程)。図25では、説明の都合上、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との距離が大きく空いているが、この距離は20mm程度となっている。
次に、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186とが平面視にて一致するように下柱部18が位置決めされる。このとき、貫通孔232と挿入孔246、及び貫通孔242と挿入孔236とによって連結孔254、256がそれぞれ形成される。
また、この連結孔254、256が直線的に形成されるように、柱部材12の上面184に設けられたボルト26によって下柱部18の設置高さは調整されている。
次に、柱部材12の側面から貫通孔232と挿入孔246とへ、又は下柱部18の側面から貫通孔242と挿入孔236とへ、接合手段としての直線状の丸鋼252が挿入され、これにより柱部材12と下柱部18とを接合する(接合工程)。すなわち、接合手段としての丸鋼252が柱部材12の接合面(上面184)、又は柱梁部材14の下柱部18の接合面(下面186)へ挿入されて、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18とを接合する。
丸鋼252の両端部には雄ネジ258が形成されており、丸鋼252の一方の端部に形成された雄ネジ258を柱部材12に埋設された鋼管238、又は下柱部18に埋設された鋼管248にねじ込んで丸鋼252を柱部材12又は下柱部18に固定し、丸鋼252の他方の端部に形成された雄ネジ258にナット260をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼252を下柱部18又は柱部材12に固定する。この固定状態においてナット260は、切欠き部234、244に収容されている。
次に、図24に示すように、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との間の隙間空間S1内、貫通孔232、242内、挿入孔236、246内、及び切欠き部234、244内に硬化材Wを充填し、この硬化剤Wを硬化させて柱部材12及び下柱部18に丸鋼252を定着する。これにより、柱部材12と下柱部18とが一体化される。
よって、図23〜25の接合方法を用いれば、柱部材12上に柱梁部材14の下柱部18を載置するときに、柱部材12の側面から貫通孔232と挿入孔246とへ、又は下柱部18の側面から貫通孔242と挿入孔236とへ接合手段としての丸鋼252を挿入するまでは、丸鋼252は柱部材12の接合面(上面184)又は下柱部18の接合面(下面186)から突出していない。
これにより、柱部材12上に載置した柱梁部材14を横方向又は水平に移動させることができる。すなわち、柱部材12上に製のPCa製の柱梁部材14を載置した後、建て方精度を向上させるために柱梁部材14の位置調整ができる。
なお、図26は、図24の変形例を示したものである。このように、折り曲げられた中空の鋼管262、264を、挿入孔236、246と連通するように挿入孔236、246の端部に設け、柱鉄筋(不図示)と略平行に配置された直線状の鉄筋棒266、268の端部をこの鋼管262、264に固定してもよい。
また、図23〜25では、接合手段としての16本の丸鋼252を、貫通孔232と挿入孔246とへ、又は貫通孔242と挿入孔236とへ挿入して柱部材12と下柱部18とを接合した例を示したが、少なくとも1本の丸鋼252が貫通孔232と挿入孔246とへ、又は貫通孔242と挿入孔236とへ挿入されていればよく、必要とする接合強度を有すれば、図23〜25で示した丸鋼252よりも多くの本数の丸鋼252を配置してもよいし、図23〜25で示した丸鋼252よりも少ない本数の丸鋼252を配置してもよい。さらに、丸鋼252の配置は適宜決めればよく、柱部材12及び下柱部18に対して丸鋼252を左右対称に配置させなくてもよいし、丸鋼252同士を交差させて配置しなくてもよい。
図23〜25で示したように、柱部材12及び下柱部18に対して丸鋼252を左右対称に交差させて配置すれば、柱部材12と下柱部18との間に均等に力が伝達されるので、構造上好ましい。
<第3の実施形態の補足説明>
なお、第3の実施形態では、接合手段を、丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252としたが、柱部材12と下柱部18とを確実に接合できるものであればよい。
例えば、接合手段をPC鋼材(PC鋼棒、PC鋼線)、ねじ節鉄筋、異形鉄筋、ボルト等としてもよい。接合手段をねじ節鉄筋や異形鉄筋とすれば、硬化材Wを充填したときの付着面積が大きくなるので好ましい。
また、第3の実施形態では、ナット202、218、260で接合手段としての丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252を固定した例を示したが、他の機械式定着具等の定着具を用いて丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252を固定してもよい。
また、ナット202、218、260等の定着具を用いずに、丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252の周囲に充填した硬化材Wのみによって丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252を柱部材12及び下柱部18に定着させてもよい。
また、第3の実施形態で示した丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252にナット202、218、260をねじ込んで締め付けて柱部材12と下柱部18とを接合した後に、丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252にプレストレスを導入してもよい。
例えば、接合手段にPC鋼材を用いた場合には、油圧ジャッキを用いて通常のポストテンション方式によってPC鋼材にプレストレスを導入すればよい。
接合手段によって柱部材12と下柱部18とが接合された後に接合手段にプレストレスを導入すれば、柱部材12と下柱部18との接合面に作用する圧縮力が増加し、摩擦によるせん断力伝達を確実に行うことができる。
また、柱部材12と下柱部18との接合部に生じる曲げモーメントに起因して柱部材12と下柱部18に発生する引張応力を制御することが可能となる。
これにより、柱部材12及び下柱部18に生じるひび割れを防止することができ、柱部材12と下柱部18とを強固に接合することができる。よって、地震時の復元性能を向上させ、損傷低減を図ることができる。
この場合、アンボンドとしてもよいが、接合手段の周囲に硬化材Wを充填すれば防錆効果があり、さらには、一体化強度が向上するので好ましい。
また、第3の実施形態では、鋼管238、248、262、264の内側に雌ネジを形成し、この雌ネジに丸鋼252端部の雄ネジ258をねじ込んだ例を示したが、鋼管238、248、262、264の内側に雌ネジを形成せずに、鋼管238、248、262、264に丸鋼252端部を挿入して硬化材により定着させてもよい。
また、第3の実施形態で示した柱部材12の上面184、及び下柱部18の下面186の少なくとも一方にコッターを設ければ、柱部材12の上面184と下柱部18の下面186との間の隙間空間S1に硬化材Wを充填した後に、柱部材12と下柱部18との接合強度が増すので好ましい。
<第1〜第3の実施形態の補足説明>
なお、第1〜第3の実施形態では、柱梁仕口部16、下柱部18、上柱部20、及び柱梁仕口部16の側面から4方に張り出した梁部22A〜22Dによって構成された柱梁部材14を用いた例を示したが、柱梁仕口部16と一体化される梁部の数や配置はこれに限らない。
例えば、柱梁仕口部16、下柱部18、上柱部20、及び梁部22A、22Cによって構成された平面的な十字状の柱梁部材とした場合においても、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第1〜第3の実施形態は、梁部22A〜22Dの少なくとも一つの梁部と、柱梁仕口部16及び下柱部18とから構成された柱梁部材や、梁部22A〜22Dの少なくとも一つの梁部と、柱梁仕口部16及び上柱部20とから構成された柱梁部材に対しても適用可能であり、これらの実施形態も本発明の技術的思想の範囲内に含まれる。
また、第1〜第3の実施形態では、柱部材12と下柱部18(図12〜14の場合は、柱部材12の下部110と下柱部18の上部112)の水平断面形状を同じにした例を示したが、柱部材12と下柱部18の水平断面形状は異なっていてもよい。例えば、水平断面形状が柱部材12の水平断面形状よりも小さい下柱部18を柱部材12上に載置してもよい。
また、第1〜第3の実施形態では、図5で示したように、床スラブ62上に3つの柱部材12A〜12Cを略等間隔に設置して建物を施工する例を示したが、柱部材の配置や数は、建物の仕様に応じて適宜決めればよい。
また、第1〜第3の実施形態では、下柱部材12の上面184、又は底面128、172、174(図12〜14を参照のこと)に設けられたボルト26によって、これらの部材上に載置する部材の設置高さを調整した例を示したが、部材上に載置する部材の設置高さを調整できるものであればよい。また、このボルト26をなくして、接合される部材の端面同士が密着するようにしてもよい。
接合される部材の端面同士を密着させたり、端面同士の間に形成される隙間空間が小さくなるようにすれば、柱部材12と柱梁部材14の下柱部18との接合部(接合される部材の端面同士の間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。施工上、接合される部材の端面間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
また、柱部材12と下柱部18との接合方法は、第1〜第3の実施形態で示した接合方法(図2、8、9、10、11、12、13、14、16、19、22、24、26)に限らずに、柱部材12上に載置した柱梁部材14を横方向又は水平に移動させることができ、かつ構造上必要な接合強度を確保できる柱部材12と下柱部18との接合方法であればよい。
また、第1〜第3の実施形態における柱梁部材14の梁部22A、22C同士の接合方法を図4で示したが、構造上必要な接合強度を確保できれば、どのような梁部同士の接合方法を用いてもよい。例えば、図27〜29に示す梁部同士の接合方法を用いてもよい。
図27には、図2で示した柱部材12と下柱部18との接合方法を梁部同士の接合に用いた接合方法が示されている。図27(a)の正面図には、2つの柱梁部材14を隣り合わせて配置し、一方の柱梁部材14の梁部22Aの端面を他方の柱梁部材14の梁部22Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。
梁部22C端部の上下には、梁部22Cの端面から突出しないようにシース管270が埋設され、これにより梁部22Cの端部に孔272を形成している。
シース管270には、梁部22Cに配置された梁鉄筋274の端部が挿入されている。梁鉄筋274は、この梁鉄筋274の端部が梁部22Cの端面から突出しないように配置されている。
梁部22A端部の上下には、梁部22Aの端面から突出しないようにシース管276が埋設され、これにより梁部22Aの端部に孔278を形成している。
シース管276には、梁部22Aに配置された梁鉄筋280の端部が挿入されている。梁鉄筋280は、この梁鉄筋280の端部が梁部22Aの端面から突出しないように配置されている。
シース管276によって形成された孔278には、梁部22Aの端面から突出しないように中空管282が収容されている。また、図27(a)の状態で、梁鉄筋280は中空管282に挿入されている。
シース管270、梁鉄筋274の中心位置と、シース管276、梁鉄筋280の中心位置との配置は、ほぼ同じになっている。
梁部22Aと梁部22Cとの接合方法は、図27(a)に示すように、まず、柱梁部材14の梁部22Aの端面と柱梁部材14の梁部22Cの端面とを対向させ、かつ梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に小さな隙間を有するように、又は梁部22Aの端面と梁部22Cの端面とを密着させるように柱梁部材14を配置する。
施工上、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
次に、図27(b)の正面図に示すように、梁部22Aに形成された孔278に収容されている中空管282をこの梁部22Aから引き出して、梁部22Cに形成された孔272に挿入する。
このとき、梁部22Cに配置された梁鉄筋274の端部が中空管282に挿入され、梁部22Aに配置された梁鉄筋280と、梁部22Cに配置された梁鉄筋274とが中空管282によって接続されて、梁部22Aと梁部22Cとが接合される。
次に、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に形成された隙間空間S2内、シース管270、276内、及び中空管282内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて中空管282に梁鉄筋274、280を定着し、梁部22Aと梁部22Cとを一体化する。
梁に発生するモーメントによる引張力は、梁部の上部及び下部に配置された梁鉄筋によって負担されるため、図27に示したように梁鉄筋274、280を梁部22C、22Aの上部及び下部に配置し、これらの梁鉄筋274、280を中空管282によって接合するのが好ましい。
梁の中間部は地震時の応力が小さいので、構造上必要な接合強度を確保できれば、全ての梁鉄筋274、280同士を中空管282によって接合しなくてもよいが、梁部22A、22Cの横断面における四隅付近に配置された梁鉄筋274、280同士を中空管282によって接合するのが構造上好ましい。
図28には、図16で示した柱部材12と下柱部18との接合方法を梁部同士の接合に用いた接合方法が示されている。図28(a)の斜視図には、2つの柱梁部材14を隣り合わせて配置し、一方の柱梁部材14の梁部22Aの端面を他方の柱梁部材14の梁部22Cの端面に対向させて接合する前の状態が示されている。
梁部22Aには、梁部22Aの端面から梁部22Aの上面へ貫通する2つの孔284A、284Bが平行に並んで直線的に形成されている。
また、梁部22Aには、梁部22Aの端面から梁部22Aの下面へ貫通する2つの孔286A、286Bが平行に並んで直線的に形成されている。
梁部22Cには、梁部22Cの端面から梁部22Cの上面へ貫通する2つの孔288A、288Bが平行に並んで直線的に形成されている。
また、梁部22Cには、梁部22Cの端面から梁部22Cの下面へ貫通する2つの孔290A、290Bが平行に並んで直線的に形成されている。
孔284A、284B下端部の中心位置と孔290A、290B上端部の中心位置、孔288A、288B下端部の中心位置と孔286A、286B上端部の中心位置との配置は、ほぼ同じになっている。
すなわち、図28(b)に示すように、梁部22Aの端面を梁部22Cの端面に対向させたときに、孔284A、284B、288A、288Bと孔290A、290B、286A、286Bとによって貫通孔292A、292B、294A、294Bが形成される。
貫通孔292A、292Bは、梁部22Aの上面から梁部22Cの下面へ直線的に貫通し、貫通孔294A、294Bは、梁部22Cの上面から梁部22Aの下面へ直線的に貫通している。
梁部22Aと梁部22Cとの接合方法は、図28(a)に示すように、まず、柱梁部材14の梁部22Aの端面と柱梁部材14の梁部22Cの端面とを対向させ、かつ梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に小さな隙間を有するように、又は梁部22Aの端面と梁部22Cの端面とを密着させるように柱梁部材14を配置する。
施工上、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に20mm程度の隙間を設けるのが好ましい。
そして、この状態で、孔284A、284B、288A、288Bと孔290A、290B、286A、286Bとによって貫通孔292A、292B、294A、294Bが形成される。
次に、図28(b)に示すように、梁部22Aの上面又は梁部22Cの下面から貫通孔292A、292Bへ、及び梁部22Aの下面又は梁部22Cの上面から貫通孔294A、294Bへ直線状の丸鋼296を挿入する。
丸鋼296の両端部には雄ネジ298が形成されており、この雄ネジ298にナット300をねじ込んで締め付けることにより、丸鋼296を梁部22A及び梁部22Cに固定し、梁部22Aと梁部22Cとが接合される。
次に、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に形成された隙間空間S2内、孔284A、284B、288A、288B、290A、290B、286A、286B内、及び切欠き部302内に硬化材Wを充填する。そして、この硬化材Wを硬化させて孔284A、284B、288A、288B、290A、290B、286A、286Bに丸鋼296を定着し、梁部22Aと梁部22Cとを一体化する。
図27、28に示した接合方法は、梁部22Aの端面と梁部22Cの端面との間に小さな隙間を有するように、又は梁部22Aの端面と梁部22Cの端面とを密着させるように、梁部22A、22Cを配置することが可能なので、梁部22A、22C同士の接合部(接合される部材の端面同士の間)にコンクリートを後打ちする作業や、コンクリートを後打ちするための型枠設置作業等の煩雑な作業を無くすことが可能となり、施工性の向上を図ることができる。
また、図27、28に示した接合方法は、梁部22A、22Cの一方を上下方向に移動させて梁部22A、22C同士を接合することが可能である。ここで、例えば図30の平面図に示すように、建物の施工領域を2つにわけ、同じ地点Kから右半分の領域を半時計回り(矢印304の順)、左半分を時計回り(矢印306の順)に柱梁部材308、310を配置していく場合には、矢印312のように柱梁部材308、310を横方向又は水平に移動させて柱梁部材308、310の梁部同士を接合していくことができる。
しかし、最後に配置する柱梁部材308(図30に点線で示した柱梁部材308)の両側には既に柱梁部材308、310が設置されているために、柱梁部材308を横方向又は水平に移動させて柱梁部材の梁部同士を接合することができない。このような場合に、図27、28の接合方法は有効である。
さらに、図30の状況以外においても、既に設置された梁部の間に柱梁部材を設置しなければならない状況やクレーンのブーム移動範囲が制約された状況等によって柱梁部材を横方向や水平に移動させることができない場合に、図27、28の接合方法は優れた効果を発揮する。
なお、柱梁部材308は、図1で示した柱梁部材14に梁部22B、22Dが設けられていない部材であり、柱梁部材310は、図1で示した柱梁部材14に梁部22C、22Dが設けられていない部材である。
図29は、梁部22A、22C同士の接合部にコンクリートを後打ちする従来の接合方法である。対向する梁部22A、22Cの端面から端部が突出するように梁部22A、22Bに設けられた梁鉄筋314、316の端部同士を中空管318で接続し、梁部材22A、22C同士の接合部Uに型枠を設けてコンクリートVを後打ちすることにより、梁部22A、22C同士を接合する。
また、第1〜第3の実施形態で示した、ボルト部材142、鉄筋棒132、180、丸鋼196、212A、212B、230A、230B、252の径の大きさは、必要とする接合強度等に応じて適宜決めればよい。
また、第1〜第3の実施形態で示した、連結孔118、122、160、168、170、下孔188、204A、204B、220A、220B、上孔190、208A、208B、224A、224B、貫通孔232、242、挿入孔246、236は、シース管等の管材を埋設して形成してもよいし、孔を形成する位置に円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り除くことによって孔を形成してもよい。また、穿孔により孔を形成してもよい。
また、第1〜第3の実施形態で示された硬化材Wには、一般に用いられているグラウト材を用いればよく、モルタル、エポキシ樹脂等を使用することができる。
また、第2、第3の実施形態では、説明の都合上、柱部材12及び下柱部18に設けられた柱鉄筋及びせん断補強筋は省略されているが、柱鉄筋及びせん断補強筋は、各部材に求められる強度に応じて径の大きさ、配置、本数、形状等を決めて適宜設ければよい。また、第1の実施形態で示された柱鉄筋28、36、せん断補強筋34、42等においても、これらの径の大きさ、配置、本数、形状等は各部材に求められる強度に応じて適宜決めればよい。
また、第1〜第3の実施形態では、柱梁部材14及び柱部材12をPCa製とした例を示したが、柱梁部材14の下柱部18が載置される柱部材、柱梁部材14の上柱部20上に載置される柱部材、柱梁部材14の梁部22A〜22Dと接合される梁部材は、PCa製の柱梁部材の柱部や梁部でなくてもよい。
例えば、現場打ちコンクリートによって形成された柱梁部材の柱部や梁部であってもよいし、梁部材と一体化されていないPCa製の柱部材や、柱部材と一体化されていないPCa製の梁部材であってもよい。
また、第1〜第3の実施形態で示した柱部材12と下柱部18との接合方法(図2、8、9、10、11、12、13、14、16、19、22、24、26)は、柱に発生する曲げモーメントが小さい反曲点での接合に用いることが好ましい。
また、第1〜第3の実施形態で説明したPCa柱梁部材の接合構造10、126、182は、建物の一部に用いてもよいし、全てに用いてもよい。PCa柱梁部材の接合構造10、126、182を有する建物を施工することにより、施工品質が向上した建物を構築することができる。
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。