以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、厚み方向に複数の記録層が積層された光ディスクに対応可能な光ディスク装置に本発明を適用したものである。
<実施例1>
図1に実施の形態に係る光ピックアップの構成を示す。同図(a)は、対物レンズ108を除く光学系の平面図、同図(b)は、立ち上げミラー107と対物レンズ108の部分の側面図である。
図において、半導体レーザ101は、所定波長のレーザ光を出射する。コリメートレンズ102は、半導体レーザ101から出射されたレーザ光を平行光に変換する。偏光ビームスプリッタ(PBS)103は、コリメートレンズ102側から入射するレーザ光を略全反射し、1/4波長板104側から入射するレーザ光を略全透過する。
1/4波長板104は、PBS103側から入射するレーザ光を円偏光に変換するとともに、エキスパンダ105側から入射するレーザ光を、PBS103側から入射するレーザ光の偏光方向に垂直な偏光方向に変換する。よって、1/4波長板104側からPBS103に入射するレーザ光は、PBS103を略全透過し、アナモレンズ109へと導かれる。
エキスパンダ105は、凹レンズと凸レンズの組み合わせからなり、このうち一方のレンズがアクチュエータ106によって光軸方向に駆動される。ここで、アクチュエータ106は、モータおよびリードスクリュー等を備え、レーザ光の収差を補正するためのサーボ信号に応じて駆動される。
エキスパンダ105を透過したサーボ光は、立ち上げミラー107に入射する。立ち上げミラー107は、エキスパンダ105側から入射されたレーザ光を対物レンズ108に向けて反射する。反射されたレーザ光は、対物レンズ108によって収束され、光ディスク10に照射される。
光ディスク10は、厚み方向に複数の記録層を有する。また、最奥の記録層には、ディスク最内周部にBCA(Burst Cutting Area)が配されている。BCAには、記録層をディスク円周方向に間欠的に消失させることによって、記録層の層数に関する情報など、ディスクに関する所定の情報が記録されている。
光ディスク10に照射されたレーザ光は、光ディスク10中に配された記録層によって反射される。反射されたレーザ光は、上記光路を逆行した後、PBS103を透過し、アナモレンズ109に入射する。
アナモレンズ109は、入射されたレーザ光に非点収差を導入する。光検出器110は、非点収差が導入されたレーザ光を受光して検出信号を出力する。光検出器110には、レーザ光を受光する4分割センサが配されている。4分割センサから出力される信号から、非点収差法によりフォーカスエラー信号が生成され、また、1ビームプッシュプル法によりトラッキングエラー信号が生成される。
対物レンズ108は、ホルダ121に装着されている。ここで、ホルダ121は、対物レンズアクチュエータ122によって、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。対物レンズアクチュエータ122は、従来周知のコイルと磁気回路から構成され、このうちコイルがホルダ121に装着されている。
対物レンズアクチュエータ122にサーボ信号が供給されることにより、対物レンズ108が、ホルダ121と一体的に、フォーカス方向およびトラッキング方向に変位される。これにより、レーザ光が照射目標の記録層に収束される。
図2は、光ディスク装置の要部構成を示す図である。図示の如く、光ディスク装置は、エンコーダ1と、変調回路2と、レーザ駆動回路3と、光ピックアップ装置4と、信号演算回路5と、復調回路6と、デコーダ7と、サーボ回路8と、コントローラ9を備えている。なお、光ピックアップ装置4は、図1に示す光学系を備えている。
エンコーダ1は、入力された記録データに対し誤り訂正符号の付加等のエンコード処理を施し、変調回路2へ出力する。変調回路2は、入力された記録データに変調を施し、さらに記録信号を生成してレーザ駆動回路3に出力する。
レーザ駆動回路3は、光ピックアップ装置4内に配された半導体レーザ101をコントローラ9からの指令に応じて駆動する。すなわち、コントローラ9から記録指令が入力されると、レーザ駆動回路3は、変調回路2から入力される記録信号に応じてレーザ光が変調されるよう半導体レーザ101を駆動する。また、再生時において、レーザ駆動回路3は、所定パワーにてレーザ光を出射するよう半導体レーザ101を駆動する。
信号演算回路5は、光ピックアップ装置4内に配された光検出部110からの出力信号を演算処理して、再生信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成し、これらをそれぞれ対応する回路に出力する。なお、フォーカスエラー信号は、コントローラ9からの指令に応じて調整される。かかる調整については、追って、図3を参照して説明する。
復調回路6は、信号演算回路5から入力された再生RF信号を復調して再生データを生成し、デコーダ7に出力する。デコーダ7は、復調回路6から入力された再生データに対し誤り訂正等のデコード処理を施し、これを後段回路(図示せず)に出力する。また、デコーダ7は、システムリードインおよびデータリードインから再生したデータをコントローラ9に出力する。
サーボ回路8は、信号演算回路5から入力されるフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号をもとに、対物レンズアクチュエータ122を制御する。また、サーボ回路8は、信号演算回路5から入力される再生信号をモニタし、かかる再生信号が最良となるように、光ピックアップ装置4内のアクチュエータ106を制御する。さらに、サーボ回路8は、コントローラ9からの指令に応じて、光ディスク10のスピンドルモータの回転制御を行う。
図3は、信号演算回路5、サーボ回路8、コントローラ9の構成のうち、フォーカス動作に関連する部分の構成を示す図である。
図示の如く、信号演算回路5は、加算器21、22と、減算器23と、VCA(Voltage Control Amp)24と、スイッチ25と、LPF(Low Pass Filter)26と、AGC(Auto Gain Control)27を備えている。また、サーボ回路8は、スイッチ31と、LPF(Low Pass Filter)32と、バッファアンプ33と、ドライバ34を備えている。また、コントローラ9は、サーチ電圧生成部9aとゲイン倍率生成部9bを有する。
加算器21、22は、光検出器110の対角線上に配された2組の受光面の受光量をそれぞれ加算し、減算器23に出力する。減算器23は、入力された信号を減算して、VCA24に出力する。VCA24は、減算器23から入力されるフォーカスエラー信号をスイッチ25から供給されるゲイン倍率信号に応じた電圧信号に変換する。VCA24からの電圧信号(フォーカスエラー信号)は、コントローラ9とスイッチ31に供給される。スイッチ25は、コントローラ9からの信号(図示せず)に応じて、LPF26およびAGC27の何れか一方からのゲイン倍率信号をVCA24に供給する。LPF26は、ゲイン倍率生成部9bから入力されるゲイン倍率波形の高周波成分をカットする。AGC27は、通常の記録再生動作時のゲイン倍率信号をスイッチ25に供給する。
LPF32は、サーチ電圧生成部9aから入力されるサーチ波形の高周波成分をカットする。バッファアンプ33は、サーチ電圧信号のインピーダンスを適正に修正し、スイッチ31に出力する。スイッチ31は、フォーカスサーチ時には、バッファアンプ33から入力されるサーチ電圧信号をドライバ34に供給し、フォーカスサーボ時にはVCA24から入力されるフォーカスエラー信号をドライバ34に供給する。ドライバ34は、スイッチ31から入力される信号に応じて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を対物レンズアクチュエータ122に出力する。これにより、対物レンズ108がフォーカス方向に駆動される。
ゲイン倍率生成部9bは、ゲイン倍率信号を生成してLPF26に出力する。サーチ電圧生成部9aは、サーチ電圧信号を生成してLPF32に出力する。ゲイン倍率信号とサーチ電圧信号の詳細については、追って、図4を参照して説明する。
以下、フォーカスサーチ動作とフォーカスサーボ動作について説明する。
まず、フォーカスサーチ時の動作について説明する。
フォーカスサーチ時において、スイッチ25および31は、図3に示す接続状態に設定される。すなわち、スイッチ25の端子25aと25bが接続され、スイッチ31の端子31aと31b、端子31dと31eが接続される。
この状態で、サーチ電圧信号がサーチ電圧生成部9aからLPF32に入力される。サーチ電圧信号は、LPF32によって高周波数成分が除去された後、バッファアンプ33に入力される。その後、サーチ電圧信号は、バッファアンプ33によってインピーダンスが適正化され、ドライバ34に入力される。これにより、対物レンズ108がフォーカス方向に駆動される。
こうして対物レンズ108が駆動されることにより、VCA24から出力されるフォーカスエラー信号上にS字カーブが現れる。かかるフォーカスサーチ動作時には、サーチ電圧信号に同期して、ゲイン倍率信号が、ゲイン倍率生成部9bからLPF26に出力される。ゲイン倍率信号は、LPF26によって高周波数成分が除去された後、VCA24に入力される。入力されたゲイン倍率信号に応じて、VCA24により、フォーカスエラー信号のゲイン調整が行われる。ゲイン調整後のフォーカスエラー信号は、コントローラ9に入力される。
コントローラ9は、ゲイン調整されたフォーカスエラー信号を用いて、フォーカスサーチ時に横切った記録層の数をカウントする。具体的には、フォーカスエラー信号上に現れるS字カーブをカウントし、現在、フォーカス位置がどの記録層上にあるかを判定する。このとき、ゲイン調整されたフォーカスエラー信号が用いられるため、S字カーブのミスカウントの発生が抑制される。これについては、追って、図5を参照して説明する。
コントローラ9は、S字カーブのカウント数がターゲット層に対応する数になったときに、フォーカスサーチを終了し、フォーカスサーボに切り替える。なお、S字カーブの検出は、フォーカスエラー信号が、所定の閾値を超えたかによって行われる。本実施例では、S字カーブ検出用の閾値(以下、「検出閾値」という)は、所定のレベルに固定されている。
次に、フォーカスサーボ時の動作について説明する。
フォーカスサーボ時において、スイッチ25の端子25aと25cが接続され、スイッチ31の端子31aと31c、端子31dと31fが接続される。
AGC27から出力される信号によって、VCA24において、フォーカスエラー信号に対して適切なゲイン調整が行われる。ゲイン調整されたフォーカスエラー信号は、スイッチ31を介してドライバ34に入力される。ドライバ34は、入力されたフォーカスエラー信号に応じて、対物レンズアクチュエータ122に対し、フォーカスサーボを行う。すなわち、ターゲット層上においてフォーカスエラー信号が0となるよう対物レンズアクチュエータ122の位置が適正化される。
次に、上記サーチ電圧信号とゲイン倍率信号の詳細について説明する。なお、以下では、便宜上、記録層が4層であるときのサーチ電圧信号とゲイン倍率信号が示されている。
図4(a)は、サーチ電圧生成部9aの出力信号(図3の地点P1におけるサーチ電圧信号)を示す図である。図示の如く、サーチ電圧信号は、時間の経過とともに階段状に変化する信号となっている。このようにサーチ電圧信号が時間によって変化することにより、対物レンズアクチュエータ122に印加されるフォーカス方向の駆動電圧が変化し、結果、対物レンズ108の位置が変化する。
時間とともにサーチ電圧信号が増加する期間において対物レンズ108がディスク表面に近づけられ、これに伴い、レーザ光のフォーカス位置がディスク表面から最も奥の記録層へと移動される。図4(a)の信号波形では、レーザ光のフォーカス位置が最奥の記録層に相当する位置まで移動された後も、さらに、サーチ電圧信号が1ステップ増加され、レーザ光のフォーカス位置が奥側に移動される。これにより、必ず最奥の記録層にフォーカス位置が到達するようになり、最奥の記録層の検出漏れが防止される。
対物レンズ108は、時間とともにサーチ電圧信号が減少する期間においてディスク表面から離れる。時間とともにサーチ電圧信号が増加する期間においてフォーカス引き込みができなかった場合には、この期間に続く、時間とともにサーチ電圧信号が減少する期間において、フォーカス引き込みがリトライされる。この期間においてもフォーカス引き込みができなかった場合には、さらに、これに続く、サーチ電圧信号が増加する期間において、フォーカス引き込みがリトライされる。以降、同様に、フォーカス引き込みのリトライが、所定回数繰り返される。
図4(b)は、ゲイン倍率生成部9bからの出力信号(図3の地点P2におけるゲイン倍率信号)を示す図である。なお、この信号波形は、エキスパンダ105が、最も手前の記録層に対して再生信号が最適となる位置に設定されているときのものである。図示の如く、ゲイン倍率信号は、同図(a)に示されるサーチ電圧信号に同期して、階段状に変化する。具体的には、ゲイン倍率信号は、レーザ光のフォーカス位置が手前から2番目、3番目、4番目の記録層に差し掛かろうとするタイミングで、ステップ状に立ちあげられる。
図5は、フォーカスサーチ時に、対物レンズアクチュエータ122が駆動されてサーチ位置(レーザ光のフォーカス位置)が変化するときの、図3の地点P1、P2、P3およびP4の信号を示すタイミングチャートである。
図5(a)および(b)は、図4で示された図の一部である。これらの図を参照して、ゲイン倍率信号は、上記の如く、サーチ位置が手前から2番目、3番目、4番目の記録層に差し掛かろうとするタイミングで、ステップ状に立ちあげられる。
図5(c)は、ゲイン調整される前のフォーカスエラー信号を示す図である。同図(d)は、同図(c)に示されるフォーカスエラー信号が、同図(b)に示されるゲイン倍率信号によりゲイン調整された後のフォーカスエラー信号を示す図である。
同図(c)を参照して、ゲイン調整前のフォーカスエラー信号上に生じるS字カーブは、サーチ位置が奥に向かうに連れて小さくなる。これは、上述の如く、最も手前の記録層に対して再生信号が最適となる位置にエキスパンダ105が設定されているためである。
図3の構成例では、図5(c)のフォーカスエラー信号が、図5(b)に示すゲイン倍率信号によってゲイン調整される。これにより、手前から2番目、3番目、4番目の記録層に対するS字カーブが、最も手前の記録層に対するS字カーブと同等の大きさに増幅される。なお、図5(b)に示すゲイン倍率信号は、図5(d)に示すように各記録層に対するS字カーブの振幅が略同じとなるように、ステップの高さが調整されている。
このように、図3の構成によれば、フォーカスサーチ時にフォーカスエラー信号上に現れるS字カーブが、どの記録層に対しても検出閾値を上回る振幅とされる。よって、S字カーブのカウント漏れが抑制され、ターゲット層に対するフォーカス引き込みを円滑かつ適正に行うことができる。
図6(a)は、光ディスク装置が実動作される場合の動作フローを示す図である。なお、同図(b)には、フロー途中におけるフォーカスエラー信号の状態が示されている。ここでは、手前から3番目の記録層がターゲット層とされている。
なお、上記では、フォーカスサーチ時にエキスパンダ105の位置が固定されていたが、本動作フローでは、フォーカスサーチの開始と同時に、エキスパンダ105がイニシャル位置からターゲット層に対応する位置に駆動される。サーボ回路8には、各記録層に対応するエキスパンダ105のイニシャル位置からの駆動量が保持されている。なお、エキスパンダ105のイニシャル位置は、上記と同様、最も手前の記録層に対応する位置である。
本動作フローでは、このように、フォーカスサーチ時にエキスパンダ105が同時駆動されるため、上記のようにエキスパンダ105が固定されている場合に比べ、フォーカスサーチ時の収差の発生具合がやや改善される。この点から、本動作フローでは、ゲイン倍率信号のステップ高さが、上記の場合に対し相違している。本動作フローでは、エキスパンダ105が同時駆動されることをも考慮して、ゲイン倍率信号のステップ高さが調整される。
図6(a)を参照して、S101では、ターゲット層に対応する位置に、エキスパンダ105の移動が開始される。同時に、S102において、スイッチ25、31がフォーカスサーチ状態に設定され、S103において、フォーカスサーチが開始される。
なお、S102では、スイッチ25の端子25aと25bが接続され、スイッチ31の端子31aと31b、端子31dと31eが接続される。また、S103では、サーチ電圧信号が対物レンズアクチュエータ122に印加され、フォーカスエラー信号がゲイン倍率信号によって調整される。
上述の如く、フォーカスサーチ実行時において、ゲイン調整前のフォーカスエラー信号は、同図(b−1)のようになり、ゲイン調整後のフォーカスエラー信号は、同図(b−2)のようになる。
S104では、同図(b−2)に示されるゲイン調整後のフォーカスエラー信号をもとに、S字カーブのカウントが行われる。ここで、(b−2)に示されるゲイン調整後のフォーカスエラー信号上には、手前から2、3、4番目の記録層においても、最も手前のS字カーブと略等しい振幅のS字カーブが現れる。このため、記録層が認識されないことによるミスカウントが抑制され得る。
S105では、S字カーブのカウントによって、サーチ位置がターゲット層に到達したかが判定される。到達したと判定された場合(S105:YES)は、S106に進み、未到達と判定された場合(S105:NO)は、S103に戻ってフォーカスサーチを継続する。
S106では、スイッチ31がフォーカスサーボ状態に設定される。すなわち、スイッチ31の端子31aと31c、端子31dと31fが接続される。これにより、フォーカスサーボが開始される。このとき、スイッチ25は、端子25aと端子25bが接続された状態が維持される。また、ゲイン倍率生成部9bは、サーチ位置がターゲット層に到達したと判定されたとき(S105:YES)のゲイン倍率信号をホールド出力する。よって、フォーカスサーボは、ゲイン倍率生成部9bからのゲイン倍率信号にてゲイン調整されたフォーカスエラー信号に基づいて行われる。
なお、S106において、スイッチ31の切り替えとともにスイッチ25の切り替えが行われると、以下のような問題が起こり得る。すなわち、エキスパンダ105の駆動速度はフォーカスサーチの速度に対して数段遅い。このため、S105にてターゲット記録層にサーチ位置が到達したタイミングにおいて、エキスパンダ105の駆動位置は、通常、ターゲット層に対応する位置からかなり手前の位置にある。この場合、レーザ光には大きな収差が発生している。
よって、このとき同時に、スイッチ25が切り替えられて、AGC27からゲイン倍率信号がVCA24に供給されると、フォーカスエラー信号上のS字カーブは同図(b−1)と略同じ状態に戻ってしまう。こうなると、その後、エキスパンダ105がターゲット層に対応する位置に移動してS字カーブが十分な大きさになるまでの間に、フォーカスサーボが外れてしまう惧れがある。
なお、S106にてフォーカスサーボが開始された後も、エキスパンダ105は、引き続き、ターゲット記録層に対応する位置に向かって駆動され続ける。このため、レーザ光に生じる収差は、その後、徐々に抑制され、これに伴い、S字カーブも改善される。すなわち、かかるフォーカスサーボの動作期間において、S字カーブは、図6(b−3)に示すように、徐々に振幅が大きくなる。
S107では、エキスパンダ105がS101で指示されたターゲット層に対応する位置まで駆動されたかどうか判断される。エキスパンダ105の駆動が完了したと判断された場合(S107:YES)は、S108に進み、未完了と判断された場合(S107:NO)は、完了が待たれる。
エキスパンダ105の駆動位置がターゲット層に対応する位置に到達すると、S108において、スイッチ25がフォーカスサーボ状態に切り替えられる。すなわち、スイッチ25の端子25aと25cが接続される。この状態において、エキスパンダ105は、ターゲット層に対応する位置に位置づけられているため、レーザ光の収差は抑制されている。よって、フォーカスエラー信号上のS字カーブは、同図(b−4)に示されるように、フォーカスサーボに適する大きさとなる。結果、適正なフォーカスサーボが行われ得る。
記録/再生動作時には、その後、トラッキングサーボが行われ、さらに、収差サーボが行われる。これにより、ターゲット層における再生信号が最適となるよう、エキスパンダ105の位置が適正化され、アドレス情報の取得が可能となる。しかる後、目標アドレスへのアクセスが行われ、記録/再生動作が実行される。
なお、S107においてエキスパンダ105の移動完了を待つ間に、トラッキングサーボを実行しても良い。こうすると、エキスパンダ105の移動完了後、迅速にアドレス情報の取得等を行うことができる。
また、図6(a)の動作フローが光ディスクの装着時に行われる場合には、S107においてエキスパンダ105の移動完了を待つ間に、BCAの読み取り試行を行っても良い。光ディスクの装着時には、通常、最初にBCAの読み取りが行われ、続いてシステムリードインおよびデータリードインが読み取られる。よって、光ディスクが装着されると、図6(a)の動作フローが、BCAの位置において行われる。BCAにはトラックがないため、BCA読み取りの際にトラッキングサーボが行われる必要はない。しかしながら、BCAは最奥の層にあるため、フォーカスサーチおよびフォーカスサーボは行われる必要がある。BCAは、ディスク周方向に間欠的に記録層を欠落させて情報が記録されているため、ある程度収差が発生した状態でも読み取り可能である。よって、S107においてエキスパンダ105が最奥の記録層に対応する位置に移動している途中の段階においても、BCAの読み取りが可能となり得る。
したがって、S107においてエキスパンダ105の移動完了を待つ間に、BCAの読み取り試行を繰り返せば、エキスパンダ105が移動完了となる前に、BCAが読み取られ得る。この場合、エキスパンダ105が移動完了に応じて、迅速に、システムリードイン情報やデータリードイン情報の読み取りへと移行することができる。
以上、本実施例によれば、対物レンズアクチュエータ122の駆動に応じて、フォーカスエラー信号のゲイン調整が行われ、S字カーブの振幅が拡張されるため、フォーカスサーチ時にS字カーブのミスカウントが抑制され、ターゲット層に対するレーザ光の引き込みを円滑かつ適正に行うことができる。
<実施例2>
上記実施例1では、フォーカスエラー信号がゲイン倍率信号によって調整されることによって、フォーカスサーチ時におけるS字カーブのミスカウントが抑制された。本実施例では、フォーカスエラー信号は調整せず、S字カーブの検出閾値が調整される。
本実施例では、図3の構成のうち、ゲイン倍率生成部9b、LPF26、スイッチ25が省略される。VCA24には、AGC27からのゲイン倍率信号のみが供給される。また、コントローラ9は、サーチ電圧信号に応じてS字カーブの検出閾値を変化させる。
図7は、本実施例におけるフォーカスサーチ動作時のタイミングチャートである。同図(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図3の地点P1におけるサーチ電圧信号、コントローラ9にて設定される閾値、および、地点P3におけるフォーカスエラー信号を示す図である。なお、図7(a)は図5(a)と同じである。
上記実施例1で述べたように、フォーカスエラー信号は、図7(c)に示されるように、非常に小さい振幅となるS字カーブを有する。このため、検出閾値が固定であるとS字カーブのカウントが適正に行われない惧れがある。
そこで、本実施例では、S字カーブの検出閾値がサーチ位置に応じて同図(b)のように変化するよう構成されている。このように検出閾値を変化させることにより、S字カーブのミスカウントが抑制され得る。すなわち、S字カーブの振幅に合った検出閾値が用いられるため、振幅の大小に拘わらず、適正なS字カーブのカウントが行われる。
以上、本発明の実施例として実施例1、2を例示したが、本発明はこれらに何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も、上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施例1では、エキスパンダ105が最適位置にある記録層以外の全ての記録層に対するS字カーブの振幅を拡張するようにしたが、たとえば、図8に示すように、S字カーブの振幅が検出閾値未満になると想定されるサーチ位置においてのみ、フォーカスエラー信号のゲインを高めるようにしても良い。すなわち、図8の場合には、最奥の記録層に対するS字カーブの振幅が検出閾値未満になると想定され、同図(b)のゲイン倍率信号は、最奥の記録層に対応する期間においてのみ、ゲイン倍率が高められている。この場合、同図(d)に示されるように、最奥の記録層に対応するS字カーブの振幅が拡張される。
なお、図8の変更例では、手前から3つ目の記録層に対応するS字カーブと検出閾値との差(ΔS)が小さいため、このS字カーブについて検出漏れが起こり得る。よって、これを回避するために、図9に示すように、さらに、検出閾値と振幅の差(ΔS)が小さくなると想定されるS字カーブ、すなわち、振幅が検出閾値未満になる可能性があると想定される手前から3つ目のS字カーブのサーチ位置においても、フォーカスエラー信号のゲインを高め、S字カーブの検出漏れをより確実に回避できるようにしても良い。
また、上記実施例2では、エキスパンダ105が最適位置にある記録層以外の全ての記録層に対するS字カーブの位置において検出閾値を低くしたが、たとえば、図10に示すように、S字カーブの振幅が通常の検出閾値よりも小さくなると想定されるサーチ位置においてのみ、検出閾値を低下させるようにしても良い。すなわち、図10の場合には、最奥の記録層に対するS字カーブの振幅が通常の検出閾値未満になると想定され、同図(b)に示すように、最奥の記録層に対応する期間においてのみ、検出閾値が低下されている。
なお、この場合も、手前から3つ目の記録層に対応するS字カーブと通常の検出閾値との差(ΔS)が小さいため、このS字カーブについて検出漏れが起こり得る。よって、これを回避するために、図11に示すように、さらに、通常の検出閾値との差(ΔS)が小さい振幅のS字カーブ、すなわち、振幅が検出閾値未満になる可能性のある手前から3つ目のS字カーブのサーチ位置においても検出閾値を低下させ、S字カーブの検出漏れをより確実に回避できるようにしても良い。
この他、上記実施例1、2において、フォーカスサーチ時のエキスパンダ105のイニシャル位置は、最も手前の記録層において再生信号が最適となる位置とされたが、他の記録層に対応する位置とされても良い。なお、サーチ位置が各記録層にあるときの収差の発生状況は、そのときのエキスパンダ105の位置に応じて変化する。このため、上記実施例1において、フォーカスエラー信号に適用されるべきゲイン倍率信号は、フォーカスサーチ時にエキスパンダ105がどの位置をイニシャル位置とするか応じて変化させる必要がある。よって、イニシャル位置が上記と異なる場合には、それに応じて、ゲイン倍率信号のステップパターンを適宜調整する必要がある。
なお、上記実施例1では、フォーカスサーチ開始時にエキスパンダ105が常に同じ位置にあるとして説明を行ったが、フォーカスサーチ開始時のエキスパンダ105の位置が固定されていなくても良い。この場合には、あらかじめ、各層に対応する位置にエキスパンダ105があるときのゲイン倍率信号のパターンが、コントローラ9内のゲイン倍率生成部9bに記憶され、フォーカスサーチ時には、そのときのエキスパンダ105の位置に応じたゲイン倍率信号パターンを用いて、上述のフォーカスサーチ動作が実行される。
こうすると、記録層から記録層へとジャンプする際のフォーカスサーチが円滑に行えるため、迅速かつ適正にターゲット層へのフォーカス引き込みが行われ得る。同様に、上記実施例2においても、エキスパンダ105の位置毎に、閾値のパターンを変えてフォーカスサーチを実行するようにしても良い。
また、図6(a)のS107、S108においては、エキスパンダ105がターゲット層に対応する位置に完全に移動するよりも前に、スイッチ25をサーボ位置に切り替えて、AGC27からのゲイン倍率信号をVCA24に供給するようにしても良い。こうすると、図6(b−3)のようにS字カーブが過度に大きくなる前に、S字カーブを通常の大きさ程度とすることができる。また、S108へとより早くステップが進むため、記録および再生の実行がより早く開始され得る。
なお、上記実施例1およびその変更例の何れにおいても、ゲイン調整が行われたS字カーブの振幅は、エキスパンダ105が最適位置にある記録層に対応するS字カーブの振幅に揃えられる必要はなく、検出閾値との関係で検出漏れがないような振幅に拡張されれば良い。すなわち、各S字カーブに対するゲイン倍率は、拡張後の振幅が検出閾値を上回る限り、適宜自由に設定可能である。また、上記実施例2およびその変更例においても、通常の検出閾値よりも低下された検出閾値は、対応するS字カーブの振幅よりも小さい限り、適宜自由に設定可能である。
なお、上記実施例では、記録層の数が4層であることを例に挙げて説明を行ったが、これ以外の層数の光ディスクを扱う場合にも、本発明を適宜適用可能である。サーチ電圧信号とゲイン倍率信号は、記録層の層数に応じて変化させれば良い。この場合、想定される最高の層数に対応可能なサーチ電圧信号とゲイン倍率信号を用いれば、最高層数以下の全ての層数の光ディスクに対応可能である。
なお、図5には、便宜上、層毎に1ステップずつ変化するようサーチ電圧信号とゲイン倍率信号を示したが、これらの信号は、必ずしも、各層に一つのステップが対応づけられている必要はない。サーチ電圧信号は、サーチ位置を徐々に変化させ得るものであれば良く、また、ゲイン倍率信号は、図12(b)に示す特性を打ち消すような波形となれば良い。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。