JP5153482B2 - 湿度センサの寿命予測装置 - Google Patents

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Description

この発明は、計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの寿命を予測する湿度センサの寿命予測装置に関するものである。
従来より、湿度センサには、湿度の変化に応じて感湿素子の抵抗値が変化する抵抗変化式や湿度の変化に応じて感湿素子の容量が変化する容量変化式の湿度センサなどがある。
これら何れの方式の湿度センサも測定現場に設置されると、計測環境の雰囲気中に直接さらされて湿度を計測するため、計測環境の雰囲気(例えば、薬品、溶剤などのガスや高湿環境など)によって、感湿素子が劣化して行く。この感湿素子の劣化を本明細書では湿度センサの性能の劣化と言う。湿度センサの性能が劣化すると計測精度が低下し信頼性が失われる。
湿度センサの劣化した性能は、例えば特許文献1に示されているように、感湿素子を加熱することによって回復させることができる。以下では、この加熱による湿度センサの劣化した性能の回復を図る処理を加熱クリーニングと呼ぶ。この加熱クリーニングを定期的に行うことにより、湿度センサの耐用期間を延ばすことが可能となる。特許文献1では、タイマ回路によって、例えば、800℃で150時間毎に4,5分、感湿素子を加熱するようにしている。
ただし、加熱クリーニングを行っても完全に湿度センサの劣化が解消するわけではなく、ある程度の劣化は残る。その劣化が積み重なって、もはや得られる計測精度に信頼性が失われたとき湿度センサの寿命は尽き、正常品と交換しなければならない。
このような湿度センサに対し、現在の劣化の進行度や寿命が尽きるまでの残りの期間が寿命が尽きる以前に分かれば、湿度センサの交換のためのメンテナンス計画が事前に立てられ、そのために必要な経費も前もって予算に計上でき、円滑にメンテナンスも行うことができる。
なお、湿度センサの劣化を判断する技術として、例えば特許文献2には、内燃機関の排気ガス雰囲気中に配置される湿度センサの劣化を診断する方法について記載されている。この特許文献2に記載された方法では、例えば、内燃機関の始動直後における湿度センサの低湿度側への変化の程度や低湿度側への出力値の大きさに基づいて、湿度センサの劣化の状態を判定する。
特開平5−172776号公報 特開2003−166964号公報
しかしながら、従来においては、特許文献2に示されているように、湿度センサが劣化しているか否かを判定したり、劣化状況を検知するものは存在するが、その湿度センサが、今後どのくらいで寿命が尽きるかを、寿命が尽きる前に予測できるものはなかった。特に、加熱クリーニングの条件(加熱周期や加熱時間)が運用途中で変更更新されるような場合、その湿度センサの残りの寿命を正確に予測することは難しい。
このため、湿度センサの寿命が尽きていたことが判明してから正常品との交換を突発的に行わざるを得ず、交換する正常品が直ぐに入荷しなかったり、メンテナンスに必要な経費が直ちに確保できなかったり、他の事情によりメンテナンス作業が直ちに行えない場合もあり、メンテナンスに支障が生じていた。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、加熱クリーニングの条件(加熱周期や加熱時間)が運用途中で変更更新されるような場合でも、湿度センサの残りの寿命を適確に予測することができる湿度センサの寿命予測装置を提供することある。
このような目的を達成するために本発明は、計測環境雰囲気中に設置される湿度センサと、この湿度センサに付設されたヒータと、このヒータへの通電を行って湿度センサを定期的に加熱するヒータ駆動手段と、このヒータ駆動手段による湿度センサに対する加熱条件として設定されている加熱周期および加熱時間の少なくとも一方を変更する加熱条件変更手段とを備えた湿度計測装置における湿度センサの寿命を予測する湿度センサの寿命予測装置に、現在の加熱周期をTn、現在の加熱時間をtnとし、この現在の加熱周期Tnおよび現在の加熱時間tnと、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の湿度センサの耐用期間の終了までに受ける加熱時間の総和tssumと、現在までの湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumとに基づいて、湿度センサの残りの寿命Trestを予測する残寿命予測手段を設けたものである。
この発明によれば、例えば、第1の方式として、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の湿度センサの耐用期間の終了までに受ける加熱時間の総和tssum、現在までの湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumを下記の寿命予測の算出式(A)に代入して、湿度センサの残りの寿命Trestを予測する。
Trest=(tssum−tsum)Tn/tn ・・・・(A)
例えば、第2の方式として、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間ts、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の湿度センサの耐用期間Ttlu、現在までの湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumを下記の寿命予測の算出式(B)に代入して、湿度センサの残りの寿命Trestを予測する。
Trest=(ts・Ttlu/Ts−tsum)Tn/tn ・・・・(B)
本発明によれば、現在の加熱周期をTn、現在の加熱時間をtnとし、この現在の加熱周期Tnおよび現在の加熱時間tnと、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の湿度センサの耐用期間の終了までに受ける加熱時間の総和tssumと、現在までの湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumとに基づいて、湿度センサの残りの寿命Trestを予測するようにしたので、加熱条件(加熱周期や加熱時間)が運用途中で変更更新される場合でも、湿度センサの残りの寿命を適確に予測することができるようになる。
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る湿度計測装置の一実施の形態の要部を示すブロック構成図である。
同図において、1は計測環境の雰囲気中に設置された容量変化式の第1の湿度センサ、2は第1の湿度センサ1と同じ計測環境の雰囲気中に設置された容量変化式の第2の湿度センサ、3は第1の湿度センサ1に付設された加熱クリーニング用の第1のヒータ、4は第2の湿度センサ2に付設された加熱クリーニング用の第2のヒータ、5は湿度センサ入力変換回路、6は温度センサ入力変換回路、7はヒータ駆動回路、8はマイクロコンピュータ、9は表示部、SW1は残り寿命確認スイッチ、SW2はキャリブレーション開始指示スイッチであり、第1の湿度センサ1と第2の湿度センサ2とは同特性とされている。
この実施の形態において、湿度センサ入力変換回路5,温度センサ入力変換回路6,ヒータ駆動回路7,マイクロコンピュータ8,表示部9などは湿度計測装置100のケース内に収容されている。図2にこの湿度計測装置100の外観図を示す。
図2において、湿度センサ1およびヒータ3は第1のセンサ部100−1に収容されており、湿度センサ2およびヒータ4は第2のセンサ部100−2に収容されている。図2(a)は第1のセンサ部100−1および第2のセンサ部100−2を湿度計測装置100のケースにセットした状態を示し、図2(b)は第1のセンサ部100−1および第2のセンサ部100−2を湿度計測装置100のケースから引き離した状態を示している。通常は、図2(b)に示すように、第1のセンサ部100−1および第2のセンサ部100−2をケースから引き離して計測環境に設置する。
この湿度計測装置100において、湿度センサ入力変換回路5は、第1の湿度センサ1からの計測湿度に応じた容量変化信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を第1の湿度センサ1からの湿度の実測値HR1としてマイクロコンピュータ8へ与える。また、湿度センサ入力変換回路5は、第2の湿度センサ2からの計測湿度に応じた容量変化信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を第2の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2としてマイクロコンピュータ8へ与える。
ヒータ駆動回路7は、マイクロコンピュータ8からの指示を受けて、第1のヒータ3および第2のヒータ4への通電を行う。第1のヒータ3および第2のヒータ4は温度センサも兼ねている。すなわち、第1のヒータ3および第2のヒータ4は加熱を行っていないときには温度センサとして機能させることができる。したがって、第1のヒータ3は、第1の湿度センサ1を加熱する加熱手段と、第1の湿度センサ1の温度を計測する計測手段とを兼ねている。同様に第2のヒータ4は、第2の湿度センサ2を加熱する加熱手段と、第2の湿度センサ2の温度を計測する計測手段とを兼ねている。第1のヒータ3からの湿度センサ1の温度を示す信号および第2のヒータ4からの湿度センサ2の温度を示す信号は温度センサ入力変換回路6へ送られる。なお、ヒータ3および4を温度センサ兼用のヒータとしなくてもよく、ヒータ専用とし、別に温度センサを設けるようにしてもよい。
温度センサ入力変換回路6は、第1のヒータ3からの計測温度に応じた信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を第1の湿度センサ1の温度の実測値TR1としてマイクロコンピュータ8へ与える。また、温度センサ入力変換回路6は、第2のヒータ4からの計測温度に応じた信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を第2の湿度センサ2の温度の実測値TR2としてマイクロコンピュータ8へ与える。
マイクロコンピュータ8は、CPU8−1,ROM8−2,RAM8−3,不揮発性のメモリ8−4などを備えており、CPU8−1はRAM8−3や不揮発性のメモリ8−4にアクセスしながら、ROM8−2に格納されたプログラムに従って動作する。
〔湿度計測処理:第1例(基本例)〕
以下、図3に示すタイムチャートを用いて、CPU8−1がROM8−2に格納されたプログラムに従って行う湿度計測処理の第1例(基本例)を説明する。
CPU8−1は、加熱周期Tを8時間、加熱時間tを1時間とし、互いの加熱周期Tを半周期ずらし、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2の加熱クリーニングを行いながら、次のようにして湿度の連続計測を行う。
CPU8−1は、先ず、第1の湿度センサ1を加熱クリーニングする(図3(a):t0〜t1点)。そして、この第1の湿度センサ1の加熱クリーニングの終了後、今回加熱クリーニングされた第1の湿度センサ1を計測センサ、加熱クリーニングされなかった第2の湿度センサ2を非計測センサとし、第1の湿度センサ(計測センサ)1からの湿度の実測値HR1を湿度の計測値HRとして使用する。
次に、CPU8−1は、第2の湿度センサ2を加熱クリーニングする(図3(b):t2〜t3点)。そして、この第2の湿度センサ2の加熱クリーニングの終了後、今回加熱クリーニングされた第2の湿度センサ2を計測センサ、加熱クリーニングされなかった第1の湿度センサ1を非計測センサとし、使用する湿度の計測値HRを第1の湿度センサ(非計測センサ)1からの湿度の実測値HR1から第2の湿度センサ(計測センサ)2からの湿度の実測値HR2に切り替える。
次に、CPU8−1は、第1の湿度センサ1を加熱クリーニングする(図3(a):t4〜t5点)。そして、この第1の湿度センサ1の加熱クリーニングの終了後、今回加熱クリーニングされた第1の湿度センサ1を計測センサ、加熱クリーニングされなかった第2の湿度センサ2を非計測センサとし、使用する湿度の計測値HRを第2の湿度センサ(非計測センサ)2からの湿度の実測値HR2から第1の湿度センサ(計測センサ)1からの湿度の実測値HR1に切り替える。
以下同様にして、第1の湿度センサ1の加熱クリーニングの終了後、第2の湿度センサ2が加熱クリーニングされるまでの間は第1の湿度センサ1からの湿度の実測値HR1を計測値HRとして使用し、第2の湿度センサ2の加熱クリーニングの終了後、第1の湿度センサ1が加熱クリーニングされるまでの間は第2の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2を計測値HRとして使用するという動作を繰り返す。
このようにして、この湿度計測処理の第1例では、加熱クリーニング中の湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2の使用を避けながら、湿度センサ1からの湿度の実測値HR1と湿度センサ2からの湿度の実測値HR2とを交互に使用するようにして、信頼性の高い湿度の連続計測が行われる。
湿度センサ1,2は、加熱クリーニングの終了後、時間の経過に伴って劣化して行く。そして、次の加熱クリーニングが行われると、その劣化した性能の回復が図られ、また時間の経過に伴って劣化して行く。この湿度計測処理の第1例において、湿度の実測値が計測値として使用される時間(計測時間)は、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2のどちらも加熱クリーニングの終了後(正確には、後述する「安定時間」+「移行時間」を経た後の時間)からの時間とされる。
この場合、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2の加熱周期Tおよび加熱時間tは同一であり、互いの加熱周期Tが半周期ずらされているので、第1の湿度センサ1の計測時間TM1および第2の湿度センサ2の計測時間TM2はほぼ等しくなる。これにより、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2の何れの場合にも劣化度の小さい区間が計測時間とされ、加熱周期Tを短くすることなく、計測精度を高めることができる。
〔安定時間〕
この湿度計測処理の第1例では、湿度センサ1,2を加熱する毎に、今回加熱された側の湿度センサを計測センサ、加熱されなかった側の湿度センサを非計測センサとし、使用する湿度の計測値を非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値に切り替える。
この場合、計測センサの加熱終了後、計測センサの温度と非計測センサの温度との差が所定値以下となった時点で、非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えを開始するようにする。
このようにすることによって、計測センサの加熱クリーニングの終了後、その加熱の影響がなくなった時点で(安定時間の経過後)、非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えが行われるものとなる。
なお、計測センサの温度と非計測センサの温度との差が所定値以下となった時点ではなく、計測センサの加熱終了後、所定時間が経過した時点で、非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えを開始するようにしてもよい。このようにすると、湿度センサ1,2の温度を計測する必要がなくなる。これにより、ヒータ3,4として、温度センサ兼用のヒータを使用しなくてもよくなる。また、専用の温度センサを不要とすることが可能となる。
〔移行期間〕
また、この湿度計測処理の第1例では、非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えを行う際、非計測センサからの湿度の実測値と計測センサからの湿度の実測値との差を時間をかけて徐々に縮めて行くスムージング処理を行うようにする。
非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えを行う場合、それまで計測値として使用していた非計測センサからの湿度の実測値と加熱クリーニングの終了後の計測センサからの湿度の実測値との差が発生している場合があるので、直ちに切り替えると計測値の連続性が損なわれる。
そこで、非計測センサからの湿度の実測値と計測センサからの湿度の実測値との差を時間をかけて徐々に縮めて行くスムージング処理を行うようにすれば、すなわち移行期間を設けて非計測センサからの湿度の実測値と計測センサからの湿度の実測値との差を徐々に縮めて行けば、これらの問題の発生を防止することができるようになる。
〔加熱条件の変更〕
また、この湿度計測処理の第1例では、湿度センサ1,2の劣化の度合いを判断し、その劣化の度合いに応じて湿度センサ1,2の次回の加熱条件を変更するようにする。
〔加熱条件の変更例1〕
例えば、運用開始時、最初の加熱クリーニング時にその加熱クリーニング中の湿度センサ1からの湿度の実測値(ヒータによって150〜180℃の高温で加熱すると、周囲環境の雰囲気の影響が小さくなりほぼ湿度0%になるが、その時の 湿度センサの出力値)HR1を初期値HR10 として記憶しておく。以降、加熱クリーニングした後に、その加熱クリーニング中の湿度センサ1からの湿度の実測値(ほぼ湿度0%時の値)HR1と初期値HR10 との差から、湿度センサ1の劣化の度合いを判断する。
この湿度センサ1の劣化の度合いに応じ、劣化の度合いが大きければ、湿度センサ1に対する加熱周期を短くしたり、加熱時間を長くしたり、加熱温度を高くしたりする。同様にして、湿度センサ2の劣化の度合いに応じ、劣化の度合いが大きければ、湿度センサ2に対する加熱周期を短くしたり、加熱時間を長くしたり、加熱温度を高くしたりする。
〔加熱条件の変更例2〕
例えば、湿度センサ1,2を加熱する毎に、今回加熱された側の湿度センサからの加熱終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)と加熱されなかった側の湿度センサからの同タイミングでの湿度の実測値との差に応じて、加熱されなかった側の湿度センサの次回の加熱条件を変更する。
この場合、湿度センサ1からの加熱クリーニングの終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)HR1と湿度センサ2からの同タイミングでの湿度の実測値HR2との差は、加熱クリーニングによって湿度センサ1の劣化した性能の回復が図られているので、湿度センサ2の劣化の度合いを表す。この湿度センサ2の劣化の度合いが大きければ、湿度センサ2の次回の加熱までの待ち時間を短くしたり、次回の加熱時間を長くしたり、次回の加熱温度を高くしたりする。この湿度センサ2の加熱クリーニング条件の変更を湿度センサ1が加熱クリーニングされた後に行う。
また、湿度センサ2からの加熱クリーニングの終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)HR2と湿度センサ1からの同タイミングでの湿度の実測値HR1との差は、加熱クリーニングによって湿度センサ2の劣化した性能の回復が図られているので、湿度センサ1の劣化の度合いを表す。この湿度センサ1の劣化の度合いが大きければ、湿度センサ1の次回の加熱までの待ち時間を短くしたり、次回の加熱時間を長くしたり、次回の加熱温度を高くしたりする。この湿度センサ1の加熱クリーニング条件の変更を湿度センサ2が加熱クリーニングされた後に行う。
加熱クリーニングの条件を変更する場合、上述のようにして、次回の加熱周期、次回の加熱までの待ち時間、次回の加熱時間、次回の加熱温度などを変更するが、これらは個別に変更するようにしてもよいし、組み合わせて変更するようにしてもよい。
例えば、計測環境雰囲気に有機溶剤が含まれていて、これが湿度センサの劣化の原因であることが分かっていた場合、有機溶剤は比較的短時間の加熱で除去可能なので、加熱間隔を短くして、加熱回数を多くした方が劣化の原因を効果的に除去できて、劣化に対する回復力を高めることができる。この場合、次回の加熱までの待ち時間を短くすれば、結果的に加熱間隔が短くなり、加熱回数が多くなり、劣化に対する回復力が高まる。
また、計測環境雰囲気に付着性の高い物質が含まれていて、感湿素子の表面に付着物が付き易く、これが湿度センサの劣化の原因であることが分かっていた場合、1回の加熱時間を長くした方が劣化の原因を効果的に除去でき、劣化に対する回復力を高めることができる。この場合、次回の加熱時間を長くすることにより、劣化に対する回復力が高まる。
また、この湿度計測処理の第1例では、湿度センサ1,2が加熱される毎に、加熱された側の湿度センサからの加熱終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)と加熱されなかった側の湿度センサからの同タイミングでの湿度の実測値との差に応じ、その差が予め定められている所定値を超えていた場合に警報を発するようにする。
すなわち、湿度センサ1からの加熱クリーニングの終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)HR1と湿度センサ2からの同タイミングでの湿度の実測値HR2との差は湿度センサ2の劣化の度合いを表し、湿度センサ2からの加熱クリーニングの終了後の湿度の実測値HR2と湿度センサ1からの同タイミングでの湿度の実測値HR1との差は湿度センサの劣化の度合いを表す。この劣化の度合いを監視し、劣化の度合いが所定値を超えた場合に、警報を発するようにする。
また、この湿度計測処理の第1例では、加熱クリーニングの条件の変更が限界に達した場合に警報を発するようにする。例えば、加熱時間に対して上限値を定めておき、次回の加熱時間を上限値以上とする必要が生じた場合に、警報を発するようにする。また、加熱周期に対して下限値を定めておき、次回の加熱周期が下限値以下とする必要が生じた場合に、警報を発するようにする。
なお、この湿度計測処理の第1例では、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2の加熱周期Tを同一とし、その加熱周期Tを半周期ずらすようにしたが、必ずしも加熱周期Tのずれ量は半周期でなくてもよい。この場合、第1の湿度センサ1の計測時間TM1と第2の湿度センサ2の計測時間TM2が等しくならず、非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えが行われる時の湿度センサ1および湿度センサ2の劣化の度合いも異なってくるが、多少のずれは許容範囲として許されるものである。
また、計測精度は低下するが、図4に示すように、第1の湿度センサ1の加熱クリーニング中のみ、第2の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2を計測値HRとして使用するようにしてもよい。この場合、第1の湿度センサ1の計測時間TM1における劣化度は大きくなるが、第2の湿度センサ2の計測時間TM2における劣化度は小さく、第2の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2を計測値HRとして使用した場合の計測精度は高くなる。
〔湿度計測処理:第2例(実例)〕
次に、図5に示すタイムチャートを用いて、CPU8−1がROM8−2に格納されたプログラムに従って行う湿度計測処理の第2例(実例)を説明する。図5(a)は第1のヒータ3への通電状況を示し、図5(b)は第2のヒータ4への通電状況を示し、図5(c)は第1の湿度センサ1の温度の実測値TR1(実線)および第2の湿度センサ2の温度の実測値TR2(点線)を示し、図5(d)は第1の湿度センサ1からの湿度の実測値HR1(実線)、第2の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2(点線)および使用する湿度の計測値HR(太線)を示す。
〔加熱クリーニング〕
CPU8−1は、ヒータ駆動回路7へ指令を送り、第1のヒータ3への通電を行って、第1の湿度センサ1を加熱する(図5(a):t1〜t2点)。これにより、加熱時間をtとして、第1の湿度センサ1の加熱クリーニングが行われる。この加熱クリーニング中、第1の湿度センサ1の温度の実測値TR1は上昇し、第1の湿度センサ1からの湿度の実測値HR1は低下する。この場合、CPU8−1は、使用する湿度の計測値HRとして第2の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2を選択している。
〔実測値の切替処理〕
CPU8−1は、第1の湿度センサ1の加熱クリーニングが終了すると、今回加熱された側の湿度センサ1を計測センサ、加熱されなかった側の湿度センサ2を非計測センサとし、使用する湿度の計測値HRを非計測センサ2からの湿度の実測値HR2から計測センサ1からの湿度の実測値HR1に切り替える実測値の切替処理を開始する。
〔温度差の監視〕
この場合、CPU8−1は、第1の湿度センサ1の温度の実測値TR1と第2の湿度センサ2の温度の実測値TR2との差ΔTを監視し、この差ΔTが所定値ΔTth(例えば、ΔTth=0.3)以下となるまで待つ(図5(c):t2〜t3点(安定時間))。
CPU8−1は、ΔT≦ΔTthとなると、第1の湿度センサ1の加熱による影響がなくなったと判断し、使用する湿度の計測値HRを非計測センサ2からの湿度の実測値HR2から計測センサ1からの湿度の実測値HR1に切り替える。
ここで、計測センサ1は加熱クリーニングが終了した後であり、非計測センサ2は前回の加熱クリーニングの終了後からかなりの時間が経過している。すなわち、計測センサ1は劣化した性能の回復処理が行われた直後の状態にあり、非計測センサ2は性能の劣化が進行中の状態にある。
この場合、それまで計測値として使用していた非計測センサ2からの湿度の実測値HR2と今回計測値HRとして使用しようとする計測センサ1からの湿度の実測値HR1との差ΔH(ΔH=|HR2−HR1|)は大きくなっているので、直ちに切り替えると計測値HRの連続性が損なわれる。
〔スムージング処理〕
そこで、CPU8−1は、非計測センサ2からの湿度の実測値HR2から計測センサ1からの湿度の実測値HR1に切り替える際、非計測センサ2からの湿度の実測値HR2と計測センサ1からの湿度の実測値HR1との差を時間をかけて徐々に縮めて行くスムージング処理を行う(図5(d):t3〜t4点(移行期間))。
この例において、CPU8−1は、次のようにしてスムージング処理を行う。t3点(移行期間の開始点)における非計測センサ2からの湿度の実測値HR2をHR2iとするとともに、同時点の計測センサ1からの湿度の実測値HR1をHR1iとする。また、t3点以降、所定周期で計測センサ1からの湿度の実測値HR1をサンプリングし、n周期目のサンプリング値をHR1n とする。そして、スムージング係数(移動平均加重値)をk(k<1)とし、下記の演算式(1)および(2)を使用して、スムージング中のn周期目の湿度の計測値HRnを算出する。
HRn=(1−k)・HRn-1+k・HR1n-1・・・・(1)
ただし、n=0のとき、HR0 =HR2i・・・・(2)
そして、HRnとHR1nとの差ΔHR(ΔHR=|HRn−HR1n|)が所定値ΔHRth以下となったとき、スムージング処理を終了させ、非計測センサ2からの湿度の実測値HR2から計測センサ1からの湿度の実測値HR1への切り替えを完了する。なお、この時の所定値ΔHRthをスムージング終了判断値と呼び、例えばΔHRth=0.5を使用する。また、スムージング係数kとしては、例えばk=(1/2)8=0.003906を使用する。
〔加熱クリーニング〕
そして、CPU8−1は、所定の待ち時間TWの経過を待って(図5(d):t4〜t5点、図6:ステップS101のYES)、ヒータ駆動回路7へ指令を送り、第2のヒータ4への通電を行って、第2の湿度センサ(非計測センサ)2を加熱する(図5(b):t5〜t6点、図6:ステップS102,S103)。
これにより、加熱時間をtとして、湿度センサ2の加熱クリーニングが行われる。この加熱クリーニング中、湿度センサ2の温度の実測値TR2は上昇し、湿度センサ2からの湿度の実測値HR2は低下する。この場合、CPU8−1は、使用する湿度の計測値HRとして第1の湿度センサ(計測センサ)1からの湿度の実測値HR1を選択している。
〔実測値の切替処理〕
CPU8−1は、湿度センサ2の加熱クリーニングが終了すると(図6:ステップS103のYES)、今回加熱された側の湿度センサ2を計測センサ、加熱されなかった側の湿度センサ1を非計測センサとし、使用する湿度の計測値HRを非計測センサ1からの湿度の実測値HR1から計測センサ2からの湿度の実測値HR2に切り替える実測値の切替処理を開始する。
〔温度差の監視〕
この場合、CPU8−1は、湿度センサ2の温度の実測値TR2と湿度センサ1の温度の実測値TR1との差ΔT(ΔT=|ΔTR2−ΔTR1|)を監視し、この差ΔTが所定値ΔTth(例えば、ΔTth=0.3)以下となるまで待つ(図5(c):t6〜t7点(安定時間)、図6:ステップS104,S105)。
〔スムージング処理〕
CPU8−1は、ΔT≦ΔTthとなると(図6:ステップ105のYES)、湿度センサ2の加熱による影響がなくなったと判断し、前述と同様にして、非計測センサ1からの湿度の実測値HR1と計測センサ2からの湿度の実測値HR2との差を時間をかけて徐々に縮めて行くスムージング処理を行う(図5(d):t7〜t8点(移行期間)、図6:ステップS106)。
この例において、CPU8−1は、次のようにしてスムージング処理を行う。t7点(移行期間の開始点)における非計測センサ1からの湿度の実測値HR1をHR1iとするとともに、同時点の計測センサ2からの湿度の実測値HR2をHR2iとする。また、t7点以降、所定周期で計測センサ2からの湿度の実測値HR2をサンプリングし、n周期目のサンプリング値をHR2n とする。そして、スムージング係数(移動平均加重値)をk(k<1)とし、下記の演算式(3)および(4)を使用して、スムージング中のn周期目の湿度の計測値HRn を算出する。
HRn=(1−k)・HRn-1+k・HR2n-1 ・・・・(3)
ただし、n=0のとき、HR0=HR1i・・・・(4)
そして、HRnとHR2nとの差ΔHRが所定値ΔHRth以下となったとき、スムージング処理を終了させ、非計測センサ1からの湿度の実測値HR1から計測センサ2からの湿度の実測値HR2への切り替えを完了する(図6:ステップS107)。そして、所定の待ち時間TWの経過を待って(図5(d):t8〜t9点、図6:ステップS101のYES)、ステップS102以下の処理動作を繰り返す。
〔加熱クリーニングの条件の変更〕
CPU8−1は、上述した湿度計測処理において、加熱クリーニングの終了後、移行期間(スムージング処理)の開始点(図5:t3点、t7点(安定時間の経過後の点))において、それまで計測値として使用していた非計測センサからの湿度の実測値と今回計測値として使用しようとする計測センサからの湿度の実測値との差ΔHに基づいて、非計測センサの次回の加熱クリーニングの条件の変更を行う。
例えば、移行期間の開始点t3で説明すると、それまで計測値として使用していた非計測センサ2からの湿度の実測値HR2と今回計測値として使用しようとする計測センサ1からの湿度の実測値HR1との差ΔH(ΔH=|HR2−HR1|)に基づいて、「シフト量」と「待ち時間」および「加熱時間」との関係を示すテーブルTB1(図7参照)に従って、非計測センサ2の次回の加熱クリーニングを行うまでの待ち時間TWおよび次回の加熱時間tを変更する。この加熱クリーニング条件の変更において、ΔHが15<ΔHとなれば、警報を発する。
なお、図7に示したテーブルTB1だけに従うと、「ステップNO.」がばたついたり、シフト量を一定の大きさ以下に維持できないことがある。このような問題を是正するために、図8に示す「シフトレベル」と「シフト量」との関係を示すテーブルTB2と、図9に示す「ステップNO.」と「待ち時間」および「加熱時間」との関係を示すテーブルTB3とを組み合わせて使用することも考えられる。
この場合、先ず、テーブルTB2からΔHの値に応じたシフトレベルを求める。このシフトレベルに基づいてテーブルTB3における「ステップNO.」を定める。例えば、現在、テーブルTB3における「ステップNO.」が「1」であり、テーブルTB2におけるシフトレベルが「1」となった場合、テーブルTB3における「ステップNO.」を「2」とする。これにより、待ち時間TWが「240〔hr〕」から「120〔hr〕」に変更される。この変更によって、ΔHがシフトレベル「0」に収まるようになればよいが、収まらない場合には、テーブルTB3における「ステップNO.」をさらにアップする。以下、同様にして、テーブルTB2におけるシフトレベルが「0」に収まるように、テーブルTB3における「ステップNO.」を変更して行く。なお、テーブルTB3における「ステップNO.」が「11」となれば、警報を発する。
〔湿度センサの残り寿命の予測〕
湿度計測装置100において、残り寿命確認スイッチSW1がオンとされると、CPU8−1は湿度センサ1,2の残り寿命を予測する。この場合、CPU8−1は、現在の加熱周期をTn、現在の加熱時間をtnとし、この現在の加熱周期Tnおよび現在の加熱時間tnを含む所要の情報を予め定められている寿命予測の算出式に代入して、湿度センサ1,2の残りの寿命Trestを予測する。すなわち、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tnを含む所要の情報から、このままのペースで行くとあとどのくらいで寿命が尽きるかを予測する。
〔方式1〕
第1の方式として、CPU8−1は、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の湿度センサ1,2の耐用期間の終了までに受ける加熱時間の総和tssum、現在までの湿度センサ1,2の実際の加熱時間の積算値tsumを下記の寿命予測の算出式(A)に代入して、湿度センサ1,2の残りの寿命Trestを予測する。そして、この予測した湿度センサ1,2の残りの寿命Trestを表示部9に表示する。
Trest=(tssum−tsum)Tn/tn ・・・・(A)
なお、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsは加熱周期Tおよび加熱時間tに対する標準値として定められるものであって、この標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の湿度センサ1,2の耐用期間をTtluとすると、この耐用期間Ttluの終了までに受ける湿度センサ1,2の加熱時間の総和(耐用総加熱時間)はtssumとして定められる。
図10に使用時間と積算加熱時間との関係を示す。使用期間中、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合、使用時間と積算加熱時間との関係は図10に示すような直線状の特性Iとなる。この特性I(Ts,tsの寿命直線)から耐用期間Ttluの終了後の耐用総加熱時間tssumが定まる。
この第1の方式では、残り寿命を予測するための基礎データとして、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の耐用期間Ttluの終了後の耐用総加熱時間tssumを不揮発性のメモリ8−4に記憶させておく。そして、残り寿命確認スイッチSW1がオンとされた時点で(図10に示す実使用時間Tuが経過した時点)、メモリ8−4に記憶されている耐用総加熱時間tssumを読み出し、この読み出した耐用総加熱時間tssumと現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、現在までの実際の加熱時間の積算値tsumを上記(A)式に代入し、残りの寿命Trestを求める。
なお、上記(A)式は、図10に特性II(Tn,tnの寿命予測直線)として示すように、Trestの期間中、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tnを継続するものとして、tssum−tsum=(Trest/Tn)・tnという式を立て、この式を変形して求めたものである。
この第1の方式では、実使用時間Tu、耐用期間Ttlu、標準加熱周期Ts、標準加熱時間tsが不明であっても、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、耐用総加熱時間tssum、現在までの実際の加熱時間の積算値tsumから残りの寿命Trestを求めることができる。
〔方式2〕
上記(A)式において、耐用総加熱時間tssumは、tssum=(Ttlu/Ts)・ts=ts・Ttlu/Tsと表すことができる。すなわち、上記(A)式は、tssumをts・Ttlu/Tsに置き換えることによって、下記(B)式のように変形することができる。
Trest=(ts・Ttlu/Ts−tsum)Tn/tn ・・・・(B)
第2の方式では、この(B)式を用いるようにし、残り寿命を予測するための基礎データとして、標準加熱周期Ts、標準加熱時間ts、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の耐用期間Ttluを不揮発性のメモリ8−4に記憶させておく。そして、残り寿命確認スイッチSW1がオンとされた時点で(図10に示す実使用時間Tuが経過した時点)、メモリ8−4に記憶されている標準加熱周期Ts、標準加熱時間ts、耐用期間Ttluを読み出し、この読み出した標準加熱周期Ts、標準加熱時間ts、耐用期間Ttluと現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、現在までの実際の加熱時間の積算値tsumを上記(B)式に代入し、残りの寿命Trestを求める。
この第2の方式では、耐用総加熱時間tssum、実使用時間Tuが不明であっても、現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、標準加熱周期Ts、標準加熱時間ts、耐用期間Ttlu、現在までの実際の加熱時間の積算値tsumから残りの寿命Trestを求めることができる。
〔キャリブレーション〕
湿度計測装置100において、キャリブレーション開始指示スイッチSW2がオンとされると、すなわちキャリブレーション開始指令を受けると、CPU8−1は湿度センサ1,2のキャリブレーションを開始する。なお、このキャリブレーション開始指令は、上位装置からオンラインで与えられものとしてもよい。
〔湿度センサ1のキャリブレーション〕
CPU8−1は、キャリブレーション開始指令を受けると、ヒータ(加熱素子)3への通電を行って、湿度センサ1を加熱する。この湿度センサ1の加熱中、湿度センサ1の温度の実測値TR1に基づいて、湿度センサ1の温度が飽和状態に達したことを確認し、この時の湿度センサ1からの湿度の実測値HR1を低湿度基準値として不揮発性のメモリ8−4に記憶させる。この低湿度基準値に対応する湿度としては、ほぼ湿度0%であることが望ましく、必ずしも湿度0%でなくても良いが、それに近い低湿度であることが重要である。以降、CPU8−1は、不揮発性のメモリ8−4に記憶されている低湿度基準値を参照して、湿度センサ1からの湿度の実測値HR1に対してオフセット調整処理を施す。
〔湿度センサ2のキャリブレーション〕
CPU8−1は、キャリブレーション開始指令を受けると、ヒータ(加熱素子)4への通電を行って、湿度センサ2を加熱する。この湿度センサ2の加熱中、湿度センサ2の温度の実測値TR2に基づいて、湿度センサ2の温度が飽和状態に達したことを確認し、この時の湿度センサ2からの湿度の実測値HR2を低湿度基準値として不揮発性のメモリ8−4に記憶させる。この低湿度基準値に対応する湿度としては、ほぼ湿度0%であることが望ましく、必ずしも湿度0%でなくても良いが、それに近い低湿度であることが重要である。以降、CPU8−1は、不揮発性のメモリ8−4に格納されている低湿度基準値を参照して、湿度センサ2からの湿度の実測値HR2に対してオフセット調整処理を施す。
このキャリブレーションは、例えばユーザ側で湿度センサ1,2が故障し、新しい湿度センサ1,2との交換を行う際に行うとよい。この場合、基準となる環境を実現できる設備と基準となる湿度センサをユーザが所有している必要がなく、またトリミングされた感湿素子を用いた湿度センサを使用する必要もなく、ユーザ側での湿度センサ1,2の交換を簡単かつ安価に行うことが可能となる。
なお、このキャリブレーションにおいて、湿度センサ1,2の温度が飽和状態に達したことは、湿度センサ1,2の温度の実測値TR1,TR2の変化ΔTR1,ΔTR2から判断する。例えば、ΔTR1,ΔTR2を所定周期で求め、ΔTR1,ΔTR2が所定値以下に達した場合を湿度センサ1,2の温度が飽和状態に達したと判断する。
また、ヒータ3,4の制御によって温度がふらつくので、湿度センサ1,2の温度が飽和状態に達した後、例えば1分間待って、その1分間の内の一番低い湿度の実測値HR1,HR2を各湿度センサの低温度基準値として記憶するようにしてもよい。
また、湿度センサ1,2の温度の実測値TR1,TR2の変化ΔTR1,ΔTR2によらなくてもよく、湿度センサ1,2の加熱を始めてから所定時間経過した時点を湿度センサ1,2の温度が飽和状態にあるものとみなし、その時の湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2を各湿度センサの低湿度基準値として記憶するようにしてもよい。
また、湿度センサ1,2に冷却素子を付設し、キャリブレーション開始指令を受けた場合、この冷却素子への通電を行って湿度センサ1,2を冷却し、この湿度センサ1,2の冷却中、湿度センサ1,2の温度が飽和状態に達したことを確認し、この時の湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2を各湿度センサの高湿度基準値として不揮発性のメモリ8−4に記憶させる。これらの高湿度基準値に対応する湿度としては、ほぼ湿度100%であることが望ましく、必ずしも湿度100%でなくても良いが、それに近い高湿度であることが重要である。以降、不揮発性のメモリ8−4に記憶されている各湿度センサの高湿度基準値を参照して、湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2に対してオフセット調整処理を施すようにしてもよい。
また、ヒータ3,4を熱電冷却素子(ペルチェ素子)とし、キャリブレーション開始指令を受けた場合、この熱電冷却素子3,4へ順方向への通電を行って湿度センサ1,2を加熱し、この湿度センサ1,2の加熱中、湿度センサ1,2の温度が飽和状態に達したことを確認し、この時の湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2を各湿度センサの低湿度基準値として不揮発性のメモリ8−4に記憶させるようにし、次に、熱電冷却素子3,4へ逆方向への通電を行って湿度センサ1,2を冷却し、この湿度センサ1,2の冷却中、湿度センサ1,2の温度が飽和状態に達したことを確認し、この時の湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2を各湿度センサの高湿度基準値として不揮発性のメモリ8−4に記憶させるようにし、以降、不揮発性のメモリ8−4に記憶される各湿度センサの低湿度基準値および各湿度センサの高湿度基準値を参照して、湿度センサ1,2からの湿度の実測値HR1,HR2に対してスパン調整処理を施すようにしてもよい。なお、この例では、湿度センサ1,2の加熱を先に行うものとしたが、湿度センサ1,2の冷却を先に行うようにしてもよい。また、前述のように、低湿度基準値に対応する湿度としては、ほぼ湿度0%であることが望ましく、一方、高湿度基準値に対応する湿度としては、ほぼ湿度100%であることが望ましい。
〔温度のスムージング処理〕
上述においては、使用する湿度の計測値を非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値に切り替える際、非計測センサからの湿度の実測値と計測センサからの湿度の実測値との差を時間をかけて徐々に縮めて行くスムージング処理を行うものとしたが、このスムージング処理は温度についても適用することができる。
図11に、湿度計測装置100の要部の機能ブロックの一例を示す。湿度計測装置100は、ヒータ駆動手段101と、実測値切替手段102と、加熱条件変更手段103と、第1の警報手段104と、第2の警報手段105と、残寿命予測手段106と、オフセット調整処理手段107とを備えている。
ヒータ駆動手段101は、第1のヒータ3および第2のヒータ4への通電を行って、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2を加熱期間が重なることなく交互にかつ定期的に加熱する。この例では、加熱周期をT、加熱時間をtとし、互いの加熱周期Tを半周期ずらして、湿度センサ1および第2の湿度センサ2を加熱する。
実測値切替手段102は、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2が加熱される毎に、今回加熱された側の湿度センサを計測センサ、加熱されなかった側の湿度センサを非計測センサとし、使用する湿度の計測値を非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値へ切り替える実測値の切替処理を開始する。この場合、計測センサの温度の実測値と非計測センサの温度の実測値との差ΔTを監視し、ΔTがΔTth以下となった時点で、スムージング処理を開始する。そして、前述したように差ΔHRが所定値ΔHRth以下となったときに、スムージング処理を終了させ、非計測センサからの湿度の実測値から計測センサからの湿度の実測値への切り替えを完了する。
加熱条件変更手段103は、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2の何れか一方が加熱された後に、今回加熱された側の湿度センサからの加熱終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)と加熱されなかった側の湿度センサからの同タイミングでの湿度の実測値との差ΔHに応じて、加熱されなかった側の湿度センサの次回の加熱条件(加熱周期、加熱時間、加熱温度など)を変更する。
第1の警報手段104は、第1の湿度センサ1および第2の湿度センサ2の何れか一方が加熱された後に、加熱された側の湿度センサからの加熱終了後の湿度の実測値(安定時間経過後の実測値)と加熱されなかった側の湿度センサからの同タイミングでの湿度の実測値との差ΔHに応じ、その差ΔHが予め定められている所定値を超えていた場合に警報を発する。第2の警報手段104は、加熱条件変更手段103による加熱条件の変更が限界に達した場合に警報を発する。
残寿命予測手段106は、基礎データ記憶手段106Aと、加熱時間積算値算出手段106Bと、残寿命予測手段106Cとを備えている。基礎データ記憶手段106Aには、基礎データとして、耐用総加熱時間tssumが記憶されている。残り寿命確認スイッチSW1がオンとされた場合、加熱時間積算値算出手段106Bは、現在までの加熱時間の積算値tsumを算出する。残寿命予測手段106Cは、現在の加熱周期Tnと、現在の加熱時間tnと、加熱時間積算値算出手段106Bからの現在までの加熱時間の積算値tsumと、基礎データ記憶手段106Aに記憶されている耐用総加熱時間tssumとから、湿度センサ1,2の残りの寿命Trestを予測する。この残りの寿命Trestの予測には、上述した(A)式を用いる。
オフセット調整処理手段107は、キャリブレーション開始指示スイッチSW2がオンとされた場合、ヒータ駆動手段10へ指令を送り、ヒータ3,4への通電を行って、湿度センサ1,2を加熱する。そして、この湿度センサ1,2の加熱中、その温度が飽和状態にある湿度センサ1,2からの湿度の実測値を各湿度センサの低湿度基準値として基準値記憶手段107Aに記憶させ、以降、基準値記憶手段107Aに記憶されている各湿度センサの低湿度基準値を参照して、実測値切替手段102における湿度の実測値HR1,HR2に対してオフセット調整処理を施す。
本発明に係る湿度計測装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。 この湿度計測装置の外観を示す図である。 この湿度計測装置におけるCPUが実行する湿度計測処理の第1例(基本例)を説明するためのタイムチャートである。 この湿度計測処理の第1例において第1の湿度センサの加熱クリーニング中のみ第2の湿度センサからの湿度の実測値を計測値として使用するようにした場合のタイムチャートである。 この湿度計測装置におけるCPUが実行する湿度計測処理の第2例(実例)を説明するためのタイムチャートである。 この湿度計測処理の第2例を説明するためのフローチャートである。 「シフト量」と「待ち時間」および「加熱時間」との関係を示すテーブルTB1を例示する図である。 「シフトレベル」と「シフト量」との関係を示すテーブルTB2を例示する図である。 「ステップNO.」と「待ち時間」および「加熱時間」との関係を示すテーブルTB3を例示する図である。 湿度センサの使用時間と積算加熱時間との関係を示す図である。 湿度計測装置の要部の機能ブロックの一例を示す図である。
符号の説明
1…第1の湿度センサ、2…第2の湿度センサ、3…第1のヒータ、4…第2のヒータ、5……湿度センサ入力変換回路、6…温度センサ入力変換回路、7…ヒータ駆動回路、8…マイクロコンピュータ、8−1…CPU、8−2…ROM、8−3…RAM、8−4…不揮発性のメモリ、9…表示部、SW1…残り寿命確認スイッチ、SW2…キャリブレーション開始指示スイッチ、100…湿度計測装置、100−1…第1のセンサ部、100−2…第2のセンサ部、101…ヒータ駆動手段、102…実測値切替手段、103…加熱条件変更手段、104…第1の警報手段、105…第2の警報手段、106…残寿命予測手段、106A…基礎データ記憶手段、106B…加熱時間積算値算出手段、106C…残寿命予測手段、107…オフセット調整処理手段、107A…基準値記憶手段。

Claims (3)

  1. 計測環境雰囲気中に設置される湿度センサと、この湿度センサに付設されたヒータと、このヒータへの通電を行って前記湿度センサを定期的に加熱するヒータ駆動手段と、このヒータ駆動手段による前記湿度センサに対する加熱条件として設定されている加熱周期および加熱時間の少なくとも一方を変更する加熱条件変更手段とを備えた湿度計測装置における前記湿度センサの寿命を予測する湿度センサの寿命予測装置であって、
    現在の前記加熱周期をTn、現在の前記加熱時間をtnとし、この現在の加熱周期Tnおよび現在の加熱時間tnと、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の前記湿度センサの耐用期間の終了までに受ける加熱時間の総和tssumと、現在までの前記湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumとに基づいて、前記湿度センサの残りの寿命Trestを予測する残寿命予測手段
    を備えることを特徴とする湿度センサの寿命予測装置。
  2. 請求項1に記載された湿度センサの寿命予測装置において、
    前記残寿命予測手段は、
    現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の前記湿度センサの耐用期間の終了までに受ける加熱時間の総和tssum、現在までの前記湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumを下記の寿命予測の算出式(A)に代入して、前記湿度センサの残りの寿命Trestを予測する
    ことを特徴とする湿度センサの寿命予測装置。
    Trest=(tssum−tsum)Tn/tn ・・・・(A)
  3. 計測環境雰囲気中に設置される湿度センサと、この湿度センサに付設されたヒータと、このヒータへの通電を行って前記湿度センサを定期的に加熱するヒータ駆動手段と、このヒータ駆動手段による前記湿度センサに対する加熱条件として設定されている加熱周期および加熱時間の少なくとも一方を変更する加熱条件変更手段とを備えた湿度計測装置における前記湿度センサの寿命を予測する湿度センサの寿命予測装置であって、
    現在の前記加熱周期をTn、現在の前記加熱時間をtnとし、この現在の加熱周期Tnおよび現在の加熱時間tnを含む所要の情報を予め定められている寿命予測の算出式に代入して、前記湿度センサの残りの寿命Trestを予測する残寿命予測手段を備え、
    前記残寿命予測手段は、
    現在の加熱周期Tn、現在の加熱時間tn、標準値として定められる標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間ts、標準加熱周期Tsおよび標準加熱時間tsを継続した場合の前記湿度センサの耐用期間Ttlu、現在までの前記湿度センサの実際の加熱時間の積算値tsumを下記の寿命予測の算出式(B)に代入して、前記湿度センサの残りの寿命Trestを予測する
    ことを特徴とする湿度センサの寿命予測装置。
    Trest=(ts・Ttlu/Ts−tsum)Tn/tn ・・・・(B)
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