JP6022623B2 - 熱貫流率推定システム、方法、およびプログラム、ならびに、熱貫流率試験装置 - Google Patents

熱貫流率推定システム、方法、およびプログラム、ならびに、熱貫流率試験装置 Download PDF

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Description

本発明は、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定する熱貫流率推定システム、方法、およびプログラム、ならびに、熱貫流率の推定に用いられる熱貫流率試験装置に関する。
建物の断熱性能は、建物の熱損失係数を推定することにより評価することができる。熱損失係数は、建物から逃げる熱量(W/K)を延床面積(m)で除算した値(Q値)として表される。建物から逃げる熱量は、屋外空間(床下空間や小屋裏空間も含む)に面する部位(外壁、1階床など)から逃げる熱量の総計として求められる。また、各部位から逃げる熱量は、その部位の面積と熱貫流率とに基づいて算出される。
建物の熱損失係数を求めるために、たとえば特開2013−221772号公報(特許文献1)では、建物の各部屋の温度および建物外部の温度を継続して測定し、建物全体の平均温度および外部に接する部屋の平均温度を求め、これら2つの平均温度が一定の関係となる熱移動モデルに従って熱損失係数を推定する方法が提案されている。
また、建物の外壁等の熱貫流率を求めるために、特開2014−074953号公報(特許文献2)では、たとえば外壁の熱貫流率を、外壁種別に応じた熱伝導率と、外壁厚と、外壁の断熱材の熱伝導率と、外壁断熱材厚とを、外壁熱貫流率算出式に代入して算出する方法が開示されている。
特開2013−221772号公報 特開2014−074953号公報
特許文献1のように、建物の熱損失係数を推定するには、多くの時間と機材(温度計)が必要となる。また、内外温度差の大きな時期でなければ、推定誤差が大きくなる可能性がある。
また、特許文献2では、対象部位(たとえば外壁)の熱伝導率が予め記憶されていることが前提となっているため、対象部位の熱伝導率が未知である場合には、熱貫流率を算出することができない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡単かつ短時間で、対象部位(面部材)の熱貫流率を推定することのできる熱貫流率推定システム、方法およびプログラム、ならびに、熱貫流率試験装置を提供することである。
この発明のある局面に従う熱貫流率推定システムは、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定するためのシステムであって、板状部材と、発熱部材と、第1および第2の温度センサと、予測処理手段と、推定手段とを備える。板状部材は、面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有する。発熱部材は、板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、面部材に熱を伝える。第1および第2の温度センサは、板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられ、板状部材の表面側温度および裏面側温度を検知する。予測処理手段は、発熱部材の加熱後、板状部材の裏面側温度が安定した状態において、第1の温度センサからの検知信号に基づいて、板状部材の表面側の安定温度を予測する。推定手段は、予測処理手段により予測された板状部材の表面側の安定温度と、板状部材の裏面側の安定温度と、面部材の屋外側温度と、予め記憶された板状部材の熱貫流率とに基づいて、面部材の熱貫流率を推定する。
好ましくは、熱貫流率推定システムは、板状部材の裏面側温度が設定温度となるように、ヒータの一定温度制御を行う加熱制御手段をさらに備える。この場合、設定温度が、板状部材の裏面側の安定温度に相当する。
好ましくは、予測処理手段は、予め定められた予測式を用いて、板状部材の表面側の安定温度を予測する。
予測式は、一定時間間隔の3点の表面側温度をそれぞれy,y,y、板状部材の表面側の安定温度をbとし、「(y−y)/(y−y)」を「K」とおいた場合、
b=(y−Ky)/(1−K)
であることが望ましい。
また、予測処理手段は、表面側温度の温度変化に応じて近似曲線を計算し、近似曲線上における3点の温度を抽出することによって表面側の安定温度を予測することが望ましい。
発熱部材は、面部材に直接的に熱を伝えるために、板状部材の表面側に設けられたサブヒータをさらに含んでいてもよい。この場合、加熱制御手段は、板状部材の表面側温度が急上昇するように、加熱開始からの特定期間のみサブヒータを運転してもよい。
この発明の他の局面に従う熱貫流率試験装置は、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定するために用いられる試験装置であって、板状部材と、発熱部材と、第1および第2の温度センサと、予測処理手段と、記憶手段とを備える。板状部材は、面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、その熱貫流率が既知である。発熱部材は、板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、面部材に熱を伝える。第1および第2の温度センサは、板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられ、板状部材の表面側温度および裏面側温度を検知する。予測処理手段は、発熱部材の加熱後、板状部材の裏面側温度が安定した状態において、第2の温度センサからの検知信号に基づいて、板状部材の表面側の安定温度を予測する。記憶手段は、少なくとも、予測処理手段により予測された板状部材の表面側の安定温度を記憶する。
この発明のさらに他の局面に従う熱貫流率推定方法は、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定する方法であって、試験装置が用いられる。試験装置は、板状部材と、板状部材の裏面側に設けられたヒータを含む発熱部材と、板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられた第1および第2の温度センサとを備える。熱貫流率推定方法は、試験装置を面部材の屋内面に接触させ、かつ、発熱部材により面部材が加熱された状態において、第1および第2の温度センサからの検知信号に基づいて、板状部材の表面側温度および裏面側温度を計測するステップと、板状部材の裏面側温度が安定した状態において計測された表面側温度から、板状部材の表面側の安定温度を予測するステップと、予測された板状部材の表面側の安定温度と、板状部材の裏面側の安定温度と、面部材の屋外側温度と、予め記憶された板状部材の熱貫流率とに基づいて、面部材の熱貫流率を推定するステップとを備える。
この発明のさらに他の局面に従う熱貫流率推定プログラムは、上記記載の熱貫流率推定方法に含まれる各ステップを、コンピュータに実行させる。
本発明によれば、簡単かつ短時間で、面部材の熱貫流率を推定することができる。
本発明の実施の形態に係る熱貫流率推定システムの構成を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る熱貫流率試験装置本体の分解斜視図である。 本発明の実施の形態に係る熱貫流率推定システムの構成例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態において、面部材の熱貫流率の推定原理を概念的に示す図である。 本発明の実施の形態において、板状部材の表面側温度および裏面側温度の時間遷移の典型例を示すグラフである。 本発明の実施の形態において、板状部材の表面側の安定温度の予測処理について説明するためのグラフである。 本発明の実施の形態における熱貫流率測定処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における安定温度予測処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態の変形例に係る熱貫流率試験装置本体の分解斜視図である。 本発明の実施の形態の変形例に係る熱貫流率推定システムの構成例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態の変形例において、熱貫流率試験装置本体と面部材との配置関係を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態の変形例に係る熱貫流率試験装置本体において、温度センサの配置例を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態の変形例における安定温度予測処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る熱貫流率推定システムが単体の装置として構成された場合における、装置の構造例を模式的に示す図である。 比較例として、熱容量の比較的大きい面部材を対象とし、ヒータを一定出力とした場合における、熱貫流率の測定に要する時間の具体例を示すグラフであり、(A)のグラフには、各位置の温度の時間遷移の典型例が示され、(B)のグラフには、面部材の熱貫流率(推定U値)と真値との関係が示されている。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
本実施の形態では、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定する熱貫流率推定システムについて説明する。断熱性能の評価対象の面部材は、外壁、1階の床、および最上階の天井などを含み、屋外空間は、床下空間および小屋裏空間を含む。なお、面部材は、単層の部材に限定されず、複数層で構成された部材であってもよい。
(概略構成について)
はじめに、本実施の形態に係る熱貫流率推定システムの概略構成について説明する。図1を参照して、熱貫流率推定システム1は、評価対象の面部材(以下「対象物」ともいう)80に取付けられる熱貫流率試験装置(以下「試験装置」と略す)10と、試験装置10と電気的に接続され、熱貫流率を推定するための処理を行う推定装置13とを備えている。
試験装置10は、評価対象の面部材(以下「対象物」という)80の屋内面(屋内側の面)に接触状態で配置される装置本体11と、対象物80の屋外面(屋外側の面)側に配置され、対象物80の屋外側温度を検知する外付けの温度センサ12とを有している。図2に示されるように、装置本体11は、基準板21と、ヒータ22と、断熱部材23と、2つの温度センサ24,25とを含む。なお、図2では、ヒータ22および温度センサ24,25の配線の図示は省略されている。
基準板21は、装置本体11の一方面(表面)を形成する板状部材であり、対象物80の屋内面に当接状態で配置(密着)される。つまり、基準板21は、対象物80の屋内面に当接する表面21aと、その反対側に位置する裏面21bとを有している。基準板21の熱貫流率Uは既知である。
基準板21は、たとえば、押出法ポリスチレンフォームなど樹脂系の断熱材により形成されている。なお、基準板21は、対象物80に熱を伝えることができ、かつ、熱抵抗が高すぎない材質であればよい。また、断熱性能が経年変化しないことが望ましい。あるいは、経年変化した場合に交換可能なものであることが望ましい。また、基準板21の表面21aは、円滑であり、対象物80の屋内面との密着度が確保できるものであることが望ましい。また、その形状は、たとえば矩形形状である。
ヒータ22は、基準板21の裏面側に設けられる発熱部材である。ヒータ22がON状態(発熱状態)とされた場合に、基準板21を介して対象物80に熱が伝えられる。ヒータ22は、面状の発熱体により構成され、基準板21と略同じ面積であることが望ましい。ヒータ22のON/OFFは、推定装置13によって制御される。
断熱部材23は、ヒータ22の屋内側に設けられ、基準板21とヒータ22と断熱部材23とが、層状に形成されている。断熱部材23の厚みは、基準板21の厚みよりも大きい。断熱部材23の熱抵抗は、基準板21の熱抵抗よりも十分に高く、ヒータ22の熱が屋内空間側へ逆流するのを防止する。その結果、ヒータ22の熱の大部分を対象物80側に伝えられることができる。なお、ヒータ22の熱を基準板21に均等に伝えるために、ヒータ22と基準板21との間には、均熱板(図示せず)が設けられていることが望ましい。
温度センサ24は、基準板21の裏面21bに設けられ、基準板21の裏面21b側の温度を検知する。温度センサ25は、基準板21の表面21aに設けられ、基準板21の表面21a側の温度を検知する。ここで、基準板21の表面21aは、対象物80の屋内面に当接状態で配置されるため、温度センサ25により検知される温度は、対象物80の屋内面の温度と等しい。
温度センサ12は、対象物80の屋外面であって、装置本体11の温度センサ24,25と同じライン上に配置されることが望ましい。つまり、対象物80が外壁の場合は、温度センサ12の位置と、温度センサ24,25の位置とが略同じ高さであることが望ましい。なお、ヒータ22の加熱による対象物80の屋外面の温度の上昇率は僅かであるため、温度センサ12は、対象物80の屋外面そのものの温度に限らず、対象物80の屋外側の温度を検知すればよい。つまり、対象物80の屋外面の温度は、外気温で代替してもよいし、外気温に空気の熱伝達率を掛けて対象物80の屋外面の温度を推定してもよい。たとえば対象物80が1階床の場合、対象物80の屋外面の温度は、床下温度に代替することができる。このような場合、温度センサ12の設置位置は、特に限定されない。
温度センサ24,25、および、温度センサ12による検知信号は、推定装置13に入力され、推定装置13において、対象物80の熱貫流率が推定される。
図3に示されるように、推定装置13は、各種演算処理および各部の制御を行う制御部31と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部32と、ユーザからの指示を受け付ける操作部33と、各種情報を表示する表示部34と、ネットワーク通信を行うための通信部35と、電源部36と、計時動作を行う計時部(図示せず)とを含む。推定装置13は、また、制御部31からの指示に基づき、ヒータ22の出力を制御する加熱制御部37と、温度センサ24,25,12からの信号を入力して、制御部31に出力する入力部(図示せず)とを含む。制御部31は、たとえばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置により実現される。記憶部32は、たとえば不揮発性の記憶装置により実現される。あるいは、制御部31と記憶部32とは、1つのハードウェア(記憶・演算部)として構成されてもよい。
図1に示したように、試験装置10と推定装置13とが分離されている場合、推定装置13は、ヒータ22および温度センサ24,25,12それぞれの配線の端子が接続されるコネクタ(図示せず)を含んでいればよい。
なお、試験装置10の装置本体11と推定装置13とは、図16に示されるように、1つの筐体100内に設けられることが望ましい。つまり、熱貫流率推定システム1は、単体の装置(熱貫流率推定装置)1Aによって構成されることが望ましい。この場合、推定装置13の操作部33および表示部34は、筐体100上に設けられればよく、その場合、操作部33および表示部34は、タッチパネルとして一体的に構成されていてもよい。また、装置本体11と推定装置13との間には、仕切り板101が設けられていてもよい。
また、上述のように、対象物80の屋外面の温度が、外気温や床下温度で代替される場合には、温度センサ12自体を設けず、推定装置13の操作部33または通信部35を介して、対象物80の屋外側温度が入力されてもよい。つまり、試験装置10は、装置本体11のみで構成されてもよい。
(機能構成について)
次に、熱貫流率推定システム1の機能構成について説明する。
図3に示されるように、推定装置13は、その機能構成として、上記した加熱制御部37に加え、計測処理部41、予測処理部42、推定部43、および結果処理部44を含んでいる。計測処理部41、予測処理部42、推定部43、および結果処理部44の機能は、試験装置10が対象物80に取り付けられた状態において、制御部31により実現される。記憶部32には、基準板21の熱貫流率Uが予め記憶されている。
計測処理部41は、温度センサ24,25,12からの検知信号に基づいて、ヒータ22により対象物80に熱が伝えられた状態における、各位置の温度を計測する。すなわち、図4を参照して、基準板21の裏面側温度Th、基準板21の表面側温度(対象物80の屋内面温度)Ti、および、対象物80の屋外側温度Toを計測する。
また、計測処理部41は、加熱制御部37を介してヒータ22の運転を行い、対象物80を屋内空間側から加熱する。つまり、加熱制御部37は、計測処理部41からの指示に応じて、ヒータ22の出力を制御する。加熱制御部37によるヒータ22の出力制御については後述する。
推定部43は、対象物80の加熱後の3点の温度勾配から、対象物80の熱貫流率を推定する。対象物80の熱貫流率は、各位置の温度Th、Ti、Toと、記憶部32に記憶された基準板21の熱貫流率Uとに基づいて推定される。推定部43による対象物80の熱貫流率の推定原理については、以下の通りである。
基準板21の熱貫流率は既知であるため、その値Uと、基準板21の表裏温度(表面側温度および裏面側温度)Th、Tiとから、基準板21を通過する熱流W(単位:W/m)を推定することができる。すなわち、次の数式1により、基準板21を通過する熱流Wを推定することができる。
=U×(Th−Ti) ・・・数式1
一方、対象物80を通過する熱流Wは、未知の熱貫流率Uと、対象物80の表裏温度(Ti、To)とから、次の数式2が成り立つ。
=U×(Ti−To) ・・・数式2
ここで、対象物80を通る熱流Wと、基準板21を通る熱流Wとは、一元で考えると同じであるため、以下の数式3が成り立つ。
×(Th−Ti)=U×(Ti−To) ・・・数式3
よって、求めたい対象物80の熱貫流率Uは、次の数式4により求められる。
=U×(Th−Ti)/(Ti−To) ・・・数式4
すなわち、推定部43は、基準板21の表裏温度Th,Tiの温度差と、基準板21の熱貫流率Uとを乗算することにより得られる基準板21の熱流の推定値(W)を、対象物80の表裏温度Ti,To(基準板21の表面側温度Tiおよび対象物80の屋外側温度To)との温度差で除算することにより、対象物80の熱貫流率Uを導出することができる。
上記推定原理に基づいて、本実施の形態では、数式4で表される算出式に、基準板21の熱貫流率と計測された3点の温度とを代入することで、対象物80の熱貫流率Uを推定(算出)する。
ここで、推定部43により対象物80の熱貫流率Uを精度良く推定するためには、本来、基準板21の表裏温度(Th,Ti)および対象物80の屋外側温度(To)がそれぞれ略一定となり安定するまで待つ必要がある。なお、上述のように、対象物80の屋外側温度(To)は、対象物80の加熱状態に関わらず一定とみなせるため、実際には、基準板21の表裏温度(Th,Ti)が安定するまで待つ必要がある。基準板21の表裏温度が安定するまでの時間は、対象物80の熱容量の大きさによって異なる。一般的に、床材の熱容量は、外壁の熱容量よりも大きい。床材は、典型的には、屋内空間に面する合板(たとえばフローリング、木床など)と、その裏側に設けられた断熱材(たとえばポリスチレンフォーム)とで構成されている。
対象物80が床材のような熱容量の大きい面部材である場合に、仮に、ヒータ22の出力を一定出力として対象物80を加熱した場合、図15(A)に示すように、基準板21の裏面側温度Thと、基準板21の表面側温度(対象物80の屋内面温度)Tiとの双方が安定するまでに、9時間近く掛かることがある。この場合、当然ながら、図15(B)に示すように、対象物80の熱貫流率Uが真値Utと近い値となるまでに、9時間近く掛かる。これは、熱容量の大きい対象物80の場合、ヒータ22からの熱が対象物80に蓄熱されながら、2点の温度Th,Tiが上昇するためであると考えられる。図15において、基準板21の表裏温度Th,Tiの双方が安定し、推定U値が真値と略一致したときの時間が、「tz」で示されている。また、1階床の屋外面温度がToで示され、床下温度がToで示されている。
入居中の実物件での断熱性能診断を可能にするためには、理想的には2時間以下の短時間で、対象物80の断熱性能を評価(診断)する必要がある。図15に示すようなケースにおいて、加熱開始から理想の測定終了時間(二点鎖線で示されている)となったタイミングで熱貫流率の算出を試みた場合、その時点では基準板21の表裏温度Th,Tiは未だ上昇を続けており、それぞれの安定温度TSh,TSiに達していない。したがって、その時点で得られた基準板21の表裏温度Th,Tiを上記算出式に当て嵌めたとしても、推定U値と真値(Ut)との誤差は非常に大きい。
そこで、本実施の形態では、基準板21の裏面側温度Thを一定に制御し、変数を基準板21の表面側温度Tiのみとすることにより、加熱開始から短時間で、表面側温度Tiの安定温度を予測することとした。ヒータ22の一定温度制御は加熱制御部37により行われ、基準板21の表面側安定温度の予測は予測処理部42により行われる。
加熱制御部37は、図5のグラフに示されるように、運転開始直後からヒータ22の温度を急速に上げて、計測処理部41により計測された基準板21の裏面側温度Thが設定温度TShとなるように制御する。このような一定温度制御は、たとえばヒータ22のON/OFFを繰り返すことにより実現される。なお、温度センサ24からの検知信号は、計測処理部41を経由することなく加熱制御部37に入力されてもよい。
予測処理部42は、加熱制御部37による一定温度制御が行われている際に、時系列に得られる基準板21の表面側温度Tiに基づいて、基準板21の表面側の安定温度TSiを予測する。なお、測定開始後、安定温度TSiが予測可能となるのは、基準板21の裏面側温度Thが略一定となり、表面側温度Tiの上昇勾配が安定した時点(図5の時間ta)以降である。安定温度の予測方法については、図6のグラフを参照して説明する。
図6に示す時間xが、理想の測定終了時間であると仮定する。時間xの段階では、表面側温度Tiは安定しておらず、上昇を続けている。通常、表面側温度Tiの上昇は、時間xから長時間経過してやっと収束する。予測処理部42は、時間x以前の温度変化から関数近似を行って収束値bを導出することで、安定温度TSiを予測する。
本実施の形態では、時間x以前の計測値を時間軸に沿ってプロットすることにより得られる曲線を、数式5の近似式により滑らかな曲線に近似する。
y=−Ca+b (ただし、0<a<1) ・・・数式5
予測処理部42は、上記近似式により得られた近似曲線上において、時間xの座標(x,y)のデータと、時間xから一定時間間隔(Δx)ずつ過去に遡った2座標(x,y)、(x,y)のデータとを参照し、収束値bを予測する。つまり、近似曲線から、一定時間間隔の3点の表面側温度(y,y,y)を抽出することにより、収束値bを予測する。近似式の「a」は「(y−y)/(y−y)」と等しいため、これを「K」とおくと、収束値bは、数式6で表わされる予測式によって計算できる。
b=(y−Ky)/(1−K) ・・・数式6
このような予測式を用いることで、表面側温度Tiが安定していない段階で、その収束値b、すなわち安定温度TSiを予測することができる。したがって、短時間で、対象物80の熱貫流率Uを精度良く推定することができる。なお、時間間隔Δxは任意に定めることができ、たとえば3分〜10分の間で予め定められる。
再び図3を参照して、推定装置13の結果処理部44は、推定部43による推定結果(対象物80の熱貫流率U)を記憶部32に記憶する処理を行う。この際、対象物80を識別するための識別情報と、熱貫流率の推定データとを関連付けて、記憶部32に記憶させることが望ましい。また、結果処理部44は、推定結果をユーザに報知するために、推定結果を表示部34に表示する処理を行う。なお、記憶部32は、基準板21の熱貫流率Uの記憶用のメモリと、推定結果の記憶用のメモリとを、個別に含んでいてもよい。
なお、本実施の形態では、上記した計測処理部41、予測処理部42、推定部43、および結果処理部44の機能は、制御部31がソフトウェアを実行することで実現されるものとしたが、これらのうちの少なくとも1つについては、ハードウェアにより実現されてもよい。
(動作について)
次に、熱貫流率推定システム1の動作について説明する。当該システム1の動作は、制御部31が、記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して熱貫流率測定処理を実行することで実現される。
図7は、本実施の形態における熱貫流率測定処理を示すフローチャートである。なお、図7に示す処理は、装置本体11が対象物80の屋内面に接触した状態で、操作部33を介してユーザから測定開始の指示が入力された場合に開始されるものとする。
図7を参照して、はじめに、計測処理部41は、加熱制御部37を介してヒータ22の加熱処理を開始するとともに(ステップS2)、加熱処理に並行して、上記した各位置の温度計測を開始する(ステップS4)。つまり、計測処理部41は、ヒータ22の加熱中、温度センサ24,25,12からの検知信号に基づいて、基準板21の表裏温度(Th、Ti)と、対象物80の屋外側温度(To)とを計測する。推定装置13に入力された各温度センサからの検知信号は、デジタル信号に変換されて制御部31に出力される。なお、上述のように、対象物80の屋外側温度(To)は、対象物80の加熱状態に関わらず一定とみなせるため、当該温度の計測タイミングは問わない。
加熱制御部37は、基準板21の裏面側温度Thが設定温度となるように、ヒータ22の一定温度制御を行う。設定温度は、予め記憶部32に記憶されていてもよい。
続いて、予測処理部42は、安定温度予測処理を実行する(ステップS6)。この処理は、基準板21の裏面側温度Thが設定温度付近で安定した後に、開始される。安定温度予測処理については、図8にサブルーチンを挙げて説明する。
図8を参照して、はじめに、予測処理部42は、時系列に得られる計測値の移動平均を計算する(S22)。温度センサの検知温度は、±0.5℃程度の誤差がある可能性がある。したがって、計測値の移動平均処理を行っておくことで、計測値のばらつきを抑えることが望ましい。安定温度予測処理の開始時には、一定時間(たとえば5分程度)継続して移動平均処理を行うことにより、滑らかな曲線を得ておくことが望ましい。
次に、予測処理部42は、たとえば現在時刻を基準とし、収束値演算を行う(ステップS26)。すなわち、基準板21の表面側温度の温度変化に応じて近似曲線を計算し、近似曲線上における3点の温度を抽出する。具体的には、図6を参照して、現在時刻(x)の温度(y)と、現在時刻から一定時間(Δx)遡った時刻(x)の温度(y)と、さらにその時刻(x)から一定時間(Δx)遡った時刻(x)の温度(y)とを抽出する。そして、予め記憶された上記予測式と、抽出した値とに基づき、演算値(収束候補値)を得る。
ステップS26で得られた演算値が異常でなければ(ステップS28にてNO)、その演算値を内部メモリに一時記憶し、ステップS30に進む。一方、演算値が異常であれば(ステップS28にてYES)、ステップS22に戻る。たとえば、演算値がヒータ22の設定温度以上の場合、または、近似式(数式5)の「a」が1より大きくなるなど、演算値が数学的に異常値を示しているような場合に、演算値が異常と判断される。
ステップS30では、収束判定が可能かどうかが判断される。具体的には、収束値の予測演算が1回しか行われていない場合には、収束判定は不可と判断し(ステップS30にてNO)、ステップS22に戻る。これに対し、複数回行われた演算結果が略同じ値であった場合には、収束判定が可能と判断する(ステップS30にてYES)。たとえば、複数回分の演算値の最大値と最小値との差が、所定値未満である場合に、これらの演算結果が略同じ値であるとみなされる。
収束判定が可能と判断された場合、予測処理部42は、表面側温度Tiの収束値、すなわち安定温度の予測値を決定する(ステップS32)。予測値は、直近の1回の演算値として導出されてもよいし、直近の複数回分の演算値の統計値(たとえば平均値)として導出されてもよい。予測値が決定されると、処理はメインルーチンに戻される。
なお、上述のように、本実施の形態では、収束候補値の演算が繰り返し行われるが、前後の演算における基準時刻(x)の差は、温度変化を抽出する時間間隔Δxよりも十分に短い時間であり、たとえば10秒未満である。これにより、予測値を早期に決定することができる。
再び図7を参照して、安定温度予測処理が終わると、推定部43は、記憶部32から基準板21の熱貫流率Uを示す数値データを読み出して(ステップS8)、対象物80の熱貫流率Uを推定する(ステップS10)。具体的には、記憶部32から上記数式4で示される算出式も読み出し、読み出した算出式に、ヒータ22の設定温度(Th)と、上記予測処理で求められた収束予測値(Ti)と、対象物80の屋外側温度(To)と、ステップS8で読み出した数値(U)とを代入することにより、対象物80の熱貫流率の推定値(U)を算出する。なお、数式4の文字Uに予め基準板21の熱貫流率が代入された算出式を、記憶部32に予め記憶させておいてもよい。ステップS8の処理(U値の読み出し)は、本測定処理の開始時に行われてもよい。
対象物80の熱貫流率(U)が推定されると、結果処理部44は、推定結果(U)を表示部34に表示するとともに、記憶部32に記録する(ステップS12)。このように、対象物80の熱貫流率を記録することで、対象物80の面積を入力すれば、対象物80から逃げる熱量を求めることもできる。また、建物において、断熱性能の評価対象となる全ての面部材について、熱貫流率推定処理が終わると、記憶部32に記憶された面部材ごとの熱貫流率と、それらの面積とに基づいて、建物全体の熱損失係数を推定することもできる。
上述のように、本実施の形態によれば、試験装置10によって室内空間側から対象物80に強制的に熱を与えるため、実際の内外温度差が小さい時期であっても、対象物80の熱貫流率の推定を行うことができる。また、試験装置10の基準板21の面積は対象物80の面積よりも十分に小さく、対象物80の一部分のみを加熱するだけでよいため、従来よりも、短時間で断熱性能を評価することができる。
また、熱貫流率を推定するために用いる機材としては、試験装置10を対象物80に設置するだけでよいため、システム構成を簡易にすることができる。
また、熱流計により熱流を計測する場合、真値との誤差が生じやすいが、本実施の形態では、対象物80に熱が伝えられた状態において各位置の温度を計測するだけでよいため、誤差を少なくすることができる。
さらに、本実施の形態では、ヒータ22の加熱開始後、早期の段階で、基準板21の表面側の安定温度(収束値)を予測可能である。そのため、熱容量の大きい対象物80を評価対象とする場合でも、測定時間を短時間(理想的には、1時間以下)に抑えることができる。したがって、本実施の形態のシステム1は、入居中の実物件にも適用することが可能である。
なお、本実施の形態では、図8のステップS30において、複数回、略同じ演算値が得られた場合に、収束判定が可能と判断したが、時間間隔Δxを長く(たとえば30分以上)とれる場合には、時刻x,x,xそれぞれの温度(y,y,y)が、先に計算した近似曲線に略合致した場合に、収束判定が可能と判断してもよい。
また、本実施の形態では、収束可能と判定されて初めて予測値が求められる。しかし、この場合、理想の測定終了時間までに収束可能と判定されない可能性がある。したがって、理想の測定終了時間を超えた場合には、収束不可の状態であっても、予測値を決定してもよい。この場合、予測処理部42は、直近の複数回分の演算値の平均値を予測値としてもよい。あるいは、直近の複数回分の演算値の最大値と最小値とから幅をもった予測値を得てもよい。この場合、推定部43は、予測処理部42から得られた最大予測値と最小予測値とに基づいて、対象物80の推定U値の最大値および最小値を計算してもよい。つまり、結果処理部44において、熱貫流率の推定範囲が出力されてもよい。
また、本実施の形態では、ヒータ22を一定温度制御して対象物80を加熱し、上昇過程の表面側温度に対し、上記予測処理を行った。しかし、表面側温度を、一旦急上昇させ、その後の下降過程における表面側温度に対し、予測処理を行うことも可能である。その場合、上記数式5で示された近似式に代えて、次の数式7で示される近似式を用いればよい。
y=Ca+b (ただし、0<a<1) ・・・数式7
あるいは、下降過程において表面側安定温度を予測する場合、上記数式5の近似式の「a」の範囲を、「−1<a<0」としてもよい。
なお、基準板21の表面側温度を急上昇させるためのシステム構成は、次の変形例に示すような構成であってもよい。
(変形例)
図9および図10を参照して、本実施の形態の変形例における熱貫流率推定システム1は、上記実施の形態で示した装置本体11に代えて、装置本体11Aを含んでいる。
図9に示されるように、装置本体11Aは、上記した基準板21、ヒータ(以下「メインヒータ」という)22、断熱部材23、および温度センサ24,25に加え、基準板21の表面21aに重ねられたサブヒータ26を有している。つまり、本変形例では、対象物80に熱を伝える発熱部材として、メインヒータ22に加え、サブヒータ26がさらに設けられる。
サブヒータ26は、メインヒータ22と同様に、面状の発熱体により構成されている。この場合、基準板21の表面側温度、すなわち対象物80の屋内面温度を検知する温度センサ25は、サブヒータ26の表面に設けられる。なお、サブヒータ26の面積は、メインヒータ22の面積よりも小さくてもよい。
図10に示されるように、サブヒータ26は、推定装置13の加熱制御部37Aによって制御される。加熱制御部37Aは、加熱開始からの特定期間のみ、サブヒータ26を運転する。つまり、特定期間は、メインヒータ22およびサブヒータ26の双方を運転し、特定期間の後は、メインヒータ22のみを運転する。これにより、加熱初期の特定期間における対象物80の加熱強度が、その後の対象物80の加熱強度よりも大きくなるように、発熱部材の出力が制御される。
なお、「特定期間」は、発熱部材の運転開始(加熱開始)から特定時までの期間を表わす。また、「特定時」は、たとえば、測定開始前に設定された設定時間であり、典型的には、記憶部32に予め記憶された時間(所定時間)である。設定時間は、たとえば30分以下である。なお、設定時間は、予め記憶部32に記憶された時間でなくてもよく、たとえば、測定開始時にユーザが入力した時間であってもよい。あるいは、「特定時」は、基準板21の表面側温度Tiが閾値に達した時であってもよい。
加熱制御部37Aの動作は、計測処理部41Aによって制御される。なお、加熱制御部37Aは、メインヒータ22のON/OFFを制御するメイン加熱制御部と、サブヒータ26のON/OFFを制御するサブ加熱制御部とを個別に含んでいてもよい。
図11に示されるように、装置本体11Aの表面にサブヒータ26が配置されるため、基準板21の表面21aは、対象物80の屋内面に当接せず近接した状態で配置される。この場合、サブヒータ26によって対象物80を直接加熱することができるため、メインヒータ22は一定温度制御したままでも、基準板21の表面側温度を急上昇させることができる。サブヒータ26の出力は、一定出力であってよい。
なお、図12に示されるように、サブヒータ26の表面にも、均熱板70を固定しておくことが望ましい。均熱板70は硬い材質であるため、均熱板70の表面全体を対象物80の屋内面に密着させるためには、温度センサ25をサブヒータ26の裏面側に設けてもよい。その場合、基準板21の表面とサブヒータ26との間に均熱板70をさらに設けて、温度センサ25を基準板21の表面と均熱板70との間に配置してもよい。温度センサ25は、柔らかい材質の基準板21の表面に埋め込まれる。なお、メインヒータ22側の温度センサ24を基準板21の裏面と均熱板70との間に配置する場合も同様に、温度センサ24は、基準板21の裏面に埋め込まれる。
本変形例において、予測処理部42Aは、特定期間が経過した後に、基準板21の表面側温度Tiの温度変化に応じて近似曲線を計算し、安定温度を予測する。
図13は、本変形例における安定温度予測処理を示すフローチャートである。なお、図8に示した安定温度予測処理と同様の処理については、図8のステップ番号と同じステップ番号を付してある。したがって、ここでは、上記実施の形態と異なる処理についてのみ説明する。
本変形例では、移動平均計算(ステップS22)を行った後、温度変化を計算し(ステップS24)、温度が上昇中か否かが判断される(ステップS25)。上昇中と判断された場合(ステップS25にてYES)、収束値演算Aを行う(ステップS26A)。一方し、下降中と判断された場合(ステップS25にてYES)、収束値演算Bを行う(ステップS26B)。
収束値演算Aでは、近似曲線の基本式を数式5とし、収束値演算Bでは、近似曲線の基本式を数式7とする。上昇過程および下降過程のいずれの演算処理においても、数式6で示した予測式を用いて収束候補値が求められる。
収束候補値が求められた後は、上記実施の形態と同様の処理(ステップS28,S30,S32)が行われる。
なお、本実施の形態およびその変形例では、加熱制御部37(37A)は、メインヒータ22の一定温度制御を行うこととしたが、メインヒータ22の出力を一定出力としてもよい。このような加熱制御が行われたとしても、基準板21の表面側温度Tiよりも基準板21の裏面側温度Thの方が先に安定する場合、裏面側温度Thが安定したと判断された段階で、表面側温度Tiの安定値を予測可能である。したがって、双方の温度が安定するのを待つよりも、測定時間を短縮することができる。このように、表面側安定温度TSiは、裏面側温度Thが安定した状態であれば、発熱部材の加熱制御方法に関わらず予測可能である。
以上説明したように、本発明の実施の形態および変形例によれば、簡単かつ短時間で、対象物80の熱貫流率を精度良く推定することができる。したがって、既存の建物全体の断熱性能も容易に評価できるため、本システム1を利用することで、リフォーム事業を活性化することもできる。
なお、上記熱貫流率推定方法をプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD−ROMなどの光学媒体やメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。この場合、推定装置13は、記録媒体(図示せず)からプログラムやデータを読み出し/書き込み可能な駆動装置(図示せず)をさらに備えているものとする。また、通信部35によるネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
また、本実施の形態およびその変形例では、試験装置10の装置本体11(11A)に電気的に接続された推定装置13において、対象物80の熱貫流率の推定が行われた。つまり、推定装置13に、図3に示した推定部43および結果処理部44の機能が含まれていることとした。しかしながら、推定部43および結果処理部44の機能は、試験装置10とは非接続の他のコンピュータ(以下「評価装置」という)に含まれていてもよい。評価装置は、たとえば、一般的なパーソナルコンピュータまたは携帯端末であってよい。
この場合、試験装置10の装置本体11に電気的に接続され、現場での試験に用いられる装置(以下「制御装置」という)には、加熱制御部37(37A)と、加熱制御部37の制御や各位置の温度の計測を行う計測処理部41(41A)と、予測処理部42(42A)との機能が含まれていればよい。また、制御装置は、熱貫流率の推定に必要な温度データを記憶するための記憶部を含んでいればよい。熱貫流率の推定に必要な温度データは、少なくとも、予測された表面側安定温度TSiを含み、基準板21の裏面側安定温度TSh(一定制御の設定温度)および対象物80の屋外側温度Toをさらに含んでいてもよい。
この記憶部は、制御装置に対して着脱可能な記録媒体であってもよい。この場合、記録媒体に記録された温度データは、評価装置において読み出され、評価装置において対象物80の熱貫流率Uが推定される。なお、記録媒体に記録される温度データは、熱貫流率の推定に用いられる安定温度だけでなく、安定温度に至るまでの時系列の温度を含んでいてもよい。
このような構成の場合、評価装置以外の、装置本体11と制御装置とを含むユニットを、熱貫流率試験装置として提供することもできる。熱貫流率試験装置は、対象物80の屋外側温度を検知する温度センサ12を含んでいてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 熱貫流率推定システム、10 試験装置、11,11A 装置本体、12,24,25 温度センサ、13 推定装置、21 基準板、22 ヒータ(メインヒータ)、23 断熱部材、26 サブヒータ、31 制御部、32 記憶部、33 操作部、34 表示部、35 通信部、36 電源部、37,37A 加熱制御部、41,41A 計測処理部、42,42A 予測処理部、43 推定部、44 結果処理部、70 均熱板、80 対象物(面部材)、100 筐体、101 仕切り板。

Claims (9)

  1. 建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、前記面部材の熱貫流率を推定するためのシステムであって、
    前記面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有する板状部材と、
    前記板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、前記面部材に熱を伝えるための発熱部材と、
    前記板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられ、前記板状部材の表面側温度および裏面側温度を検知する第1および第2の温度センサと、
    前記発熱部材の加熱後、前記板状部材の裏面側温度が安定した状態において、前記第1の温度センサからの検知信号に基づいて、前記板状部材の表面側の安定温度を予測する予測処理手段と、
    前記予測処理手段により予測された前記板状部材の表面側の安定温度と、前記板状部材の裏面側の安定温度と、前記面部材の屋外側温度と、予め記憶された前記板状部材の熱貫流率とに基づいて、前記面部材の熱貫流率を推定する推定手段とを備える、熱貫流率推定システム。
  2. 前記板状部材の裏面側温度が設定温度となるように、前記ヒータの一定温度制御を行う加熱制御手段をさらに備え、
    前記設定温度が、前記板状部材の裏面側の安定温度に相当する、請求項1に記載の熱貫流率推定システム。
  3. 前記予測処理手段は、予め定められた予測式を用いて、前記板状部材の表面側の安定温度を予測する、請求項1または2に記載の熱貫流率推定システム。
  4. 前記予測式は、一定時間間隔の3点の表面側温度をそれぞれy,y,y、前記板状部材の表面側の安定温度をbとし、「(y−y)/(y−y)」を「K」とおいた場合、
    b=(y−Ky)/(1−K)
    である、請求項3に記載の熱貫流率推定システム。
  5. 前記予測処理手段は、前記表面側温度の温度変化に応じて近似曲線を計算し、前記近似曲線上における3点の温度を抽出することによって前記表面側の安定温度を予測する、請求項3または4に記載の熱貫流率推定システム。
  6. 前記発熱部材は、前記面部材に直接的に熱を伝えるために、前記板状部材の表面側に設けられたサブヒータをさらに含み、
    前記加熱制御手段は、前記板状部材の表面側温度が急上昇するように、加熱開始からの特定期間のみ前記サブヒータを運転する、請求項2〜5のいずれかに記載の熱貫流率推定システム。
  7. 建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、前記面部材の熱貫流率を推定するために用いられる試験装置であって、
    前記面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、その熱貫流率が既知である板状部材と、
    前記板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、前記面部材に熱を伝えるための発熱部材と、
    前記板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられ、前記板状部材の表面側温度および裏面側温度を検知する第1および第2の温度センサと、
    前記発熱部材の加熱後、前記板状部材の裏面側温度が安定した状態において、前記第2の温度センサからの検知信号に基づいて、前記板状部材の表面側の安定温度を予測する予測処理手段と、
    少なくとも、前記予測処理手段により予測された前記板状部材の表面側の安定温度を記憶する記憶手段とを備える、熱貫流率試験装置。
  8. 建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、前記面部材の熱貫流率を推定する方法であって、
    板状部材と、前記板状部材の裏面側に設けられたヒータを含む発熱部材と、前記板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられた第1および第2の温度センサとを備えた試験装置を、前記面部材の屋内面に接触させ、かつ、前記発熱部材により前記面部材が加熱された状態において、前記第1および第2の温度センサからの検知信号に基づいて、前記板状部材の表面側温度および裏面側温度を計測するステップと、
    前記板状部材の裏面側温度が安定した状態において計測された表面側温度から、前記板状部材の表面側の安定温度を予測するステップと、
    予測された前記板状部材の表面側の安定温度と、前記板状部材の裏面側の安定温度と、前記面部材の屋外側温度と、予め記憶された前記板状部材の熱貫流率とに基づいて、前記面部材の熱貫流率を推定するステップとを備える、熱貫流率推定方法。
  9. 請求項8に記載の熱貫流率推定方法に含まれる各ステップを、コンピュータに実行させる、熱貫流率推定プログラム。
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