JP6022624B2 - 熱貫流率推定システム、方法、およびプログラム、ならびに、熱貫流率試験装置 - Google Patents
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Description
本発明は、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定する熱貫流率推定システム、方法、およびプログラム、ならびに、熱貫流率の推定に用いられる熱貫流率試験装置に関する。
建物の断熱性能は、建物の熱損失係数を推定することにより評価することができる。熱損失係数は、建物から逃げる熱量(W/K)を延床面積(m2)で除算した値(Q値)として表される。建物から逃げる熱量は、屋外空間(床下空間や小屋裏空間も含む)に面する部位(外壁、1階床など)から逃げる熱量の総計として求められる。また、各部位から逃げる熱量は、その部位の面積と熱貫流率とに基づいて算出される。
建物の熱損失係数を求めるために、たとえば特開2013−221772号公報(特許文献1)では、建物の各部屋の温度および建物外部の温度を継続して測定し、建物全体の平均温度および外部に接する部屋の平均温度を求め、これら2つの平均温度が一定の関係となる熱移動モデルに従って熱損失係数を推定する方法が提案されている。
また、建物の外壁等の熱貫流率を求めるために、特開2014−074953号公報(特許文献2)では、たとえば外壁の熱貫流率を、外壁種別に応じた熱伝導率と、外壁厚と、外壁の断熱材の熱伝導率と、外壁断熱材厚とを、外壁熱貫流率算出式に代入して算出する方法が開示されている。
特許文献1のように、建物の熱損失係数を推定するには、多くの時間と機材(温度計)が必要となる。また、内外温度差の大きな時期でなければ、推定誤差が大きくなる可能性がある。
また、特許文献2では、対象部位(たとえば外壁)の熱伝導率が予め記憶されていることが前提となっているため、対象部位の熱伝導率が未知である場合には、熱貫流率を算出することができない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡単かつ短時間で、対象部位(面部材)の熱貫流率を推定することのできる熱貫流率推定システム、方法およびプログラム、ならびに、熱貫流率試験装置を提供することである。
この発明のある局面に従う熱貫流率推定システムは、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定するためのシステムである。熱貫流率推定システムは、板状部材と、発熱部材と、第1および第2の温度センサと、判断手段と、推定手段と、加熱制御手段とを備える。板状部材は、面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有する。発熱部材は、板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、面部材に熱を伝える。第1および第2の温度センサは、板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられる。判断手段は、発熱部材により面部材が加熱された状態において、第1および第2の温度センサからの検知信号に基づいて、板状部材の表面側温度および裏面側温度が安定したか否かを判断する。推定手段は、判断手段により安定したと判断されたときの板状部材の表面側温度および裏面側温度と、面部材の屋外側温度と、予め記憶された板状部材の熱貫流率とに基づいて、面部材の熱貫流率を推定する。加熱制御手段は、面部材の加熱開始から特定時までの期間を第1の期間とし、特定時から判断手段により安定したと判断されるまでの期間を第2の期間とした場合、第1の期間における面部材の加熱強度が、第2の期間における面部材の加熱強度よりも大きくなるように、発熱部材の出力を制御する。
好ましくは、加熱制御手段は、第1の期間におけるヒータの出力を、第2の期間におけるヒータの出力よりも高出力とする。
発熱部材は、板状部材の表面側に位置し、面部材に直接的に熱を伝えるためのサブヒータをさらに含んでいてもよい。この場合、加熱制御手段は、第1の期間にヒータおよびサブヒータの双方を運転し、第2の期間にヒータのみを運転してもよい。
また、この場合、加熱制御手段は、第1の期間のうちの全てまたは初期において、ヒータの出力を他の期間よりも高出力としてもよい。
好ましくは、第1の期間は、加熱開始から設定時間が経過するまでの期間である。
あるいは、第1の期間は、加熱開始から板状部材の表面側温度が閾値に達するまでの期間であってもよい。
好ましくは、熱貫流率推定システムは、ヒータの屋内側に設けられ、熱の逆流を防止するための断熱部材をさらに備える。
この発明の他の局面に従う熱貫流率試験装置は、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定するために用いられる試験装置である。熱貫流率試験装置は、板状部材と、発熱部材と、第1および第2の温度センサと、加熱制御手段と、記憶手段とを備える。板状部材は、面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、その熱貫流率が既知である。発熱部材は、板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、面部材に熱を伝える。第1および第2の温度センサは、板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられる。加熱制御手段は、面部材の加熱開始から特定時までの期間を第1の期間とし、特定時から板状部材の表面側温度および裏面側温度が安定するまでの期間を第2の期間とした場合、第1の期間における面部材の加熱強度が、第2の期間における面部材の加熱強度よりも大きくなるように、発熱部材の出力を制御する。記憶手段は、少なくとも、安定したときの板状部材の表面側温度および裏面側温度を記憶する。
この発明のさらに他の局面に従う熱貫流率推定方法は、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定する方法であって、試験装置が用いられる。試験装置は、板状部材と、板状部材の裏面側に設けられたヒータを含む発熱部材と、板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられた第1および第2の温度センサとを備える。熱貫流率推定方法は、試験装置を面部材の屋内面に接触させ、かつ、発熱部材により面部材が加熱された状態において、第1および第2の温度センサからの検知信号に基づいて、板状部材の表面側温度および裏面側温度が安定したか否かを判断するステップと、安定したと判断されたときの板状部材の表面側温度および裏面側温度と、面部材の屋外側温度と、予め記憶された板状部材の熱貫流率とに基づいて、面部材の熱貫流率を推定するステップと、面部材の加熱開始から特定時までの期間を第1の期間とし、特定時から安定したと判断されるまでの期間を第2の期間とした場合、第1の期間における面部材の加熱強度が、第2の期間における面部材の加熱強度よりも大きくなるように、発熱部材の出力を制御するステップとを備える。
この発明のさらに他の局面に従う熱貫流率推定プログラムは、上記記載の熱貫流率推定方法に含まれる各ステップを、コンピュータに実行させる。
本発明によれば、簡単かつ短時間で、面部材の熱貫流率を推定することができる。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
本実施の形態では、建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、面部材の熱貫流率を推定する熱貫流率推定システムについて説明する。断熱性能の評価対象の面部材は、外壁、1階の床、および最上階の天井などを含み、屋外空間は、床下空間および小屋裏空間を含む。なお、面部材は、単層の部材に限定されず、複数層で構成された部材であってもよい。
<実施の形態1>
(概略構成について)
はじめに、本実施の形態に係る熱貫流率推定システムの概略構成について説明する。図1を参照して、熱貫流率推定システム1は、評価対象の面部材(以下「対象物」ともいう)80に取付けられる熱貫流率試験装置(以下「試験装置」と略す)10と、試験装置10と電気的に接続され、熱貫流率を推定するための処理を行う推定装置13とを備えている。
(概略構成について)
はじめに、本実施の形態に係る熱貫流率推定システムの概略構成について説明する。図1を参照して、熱貫流率推定システム1は、評価対象の面部材(以下「対象物」ともいう)80に取付けられる熱貫流率試験装置(以下「試験装置」と略す)10と、試験装置10と電気的に接続され、熱貫流率を推定するための処理を行う推定装置13とを備えている。
試験装置10は、評価対象の面部材(以下「対象物」という)80の屋内面(屋内側の面)に接触状態で配置される装置本体11と、対象物80の屋外面(屋外側の面)側に配置され、対象物80の屋外側温度を検知する外付けの温度センサ12とを有している。図2に示されるように、装置本体11は、基準板21と、ヒータ22と、断熱部材23と、2つの温度センサ24,25とを含む。なお、図2では、ヒータ22および温度センサ24,25の配線の図示は省略されている。
基準板21は、装置本体11の一方面(表面)を形成する板状部材であり、対象物80の屋内面に当接状態で配置(密着)される。つまり、基準板21は、対象物80の屋内面に当接する表面21aと、その反対側に位置する裏面21bとを有している。基準板21の熱貫流率U1は既知である。
基準板21は、たとえば、押出法ポリスチレンフォームなど樹脂系の断熱材により形成されている。なお、基準板21は、対象物80に熱を伝えることができ、かつ、熱抵抗が高すぎない材質であればよい。また、断熱性能が経年変化しないことが望ましい。あるいは、経年変化した場合に交換可能なものであることが望ましい。また、基準板21の表面21aは、円滑であり、対象物80の屋内面との密着度が確保できるものであることが望ましい。また、その形状は、たとえば矩形形状である。
ヒータ22は、基準板21の裏面側に設けられる発熱部材である。ヒータ22がON状態(発熱状態)とされた場合に、基準板21を介して対象物80に熱が伝えられる。ヒータ22は、面状の発熱体により構成され、基準板21と略同じ面積であることが望ましい。ヒータ22のON/OFFは、推定装置13によって制御される。
断熱部材23は、ヒータ22の屋内側に設けられ、基準板21とヒータ22と断熱部材23とが、層状に形成されている。断熱部材23の厚みは、基準板21の厚みよりも大きい。断熱部材23の熱抵抗は、基準板21の熱抵抗よりも十分に高く、ヒータ22の熱が屋内空間側へ逆流するのを防止する。その結果、ヒータ22の熱の大部分を対象物80側に伝えられることができる。なお、ヒータ22の熱を基準板21に均等に伝えるために、ヒータ22と基準板21との間には、均熱板(図示せず)が設けられていることが望ましい。
温度センサ24は、基準板21の裏面21bに設けられ、基準板21の裏面21b側の温度を検知する。温度センサ25は、基準板21の表面21aに設けられ、基準板21の表面21a側の温度を検知する。ここで、基準板21の表面21aは、対象物80の屋内面に当接状態で配置されるため、温度センサ25により検知される温度は、対象物80の屋内面の温度と等しい。
温度センサ12は、対象物80の屋外面であって、装置本体11の温度センサ24,25と同じライン上に配置されることが望ましい。つまり、対象物80が外壁の場合は、温度センサ12の位置と、温度センサ24,25の位置とが略同じ高さであることが望ましい。なお、ヒータ22の加熱による対象物80の屋外面の温度の上昇率は僅かであるため、温度センサ12は、対象物80の屋外面そのものの温度に限らず、対象物80の屋外側の温度を検知すればよい。つまり、対象物80の屋外面の温度は、外気温で代替してもよいし、外気温に空気の熱伝達率を掛けて対象物80の屋外面の温度を推定してもよい。たとえば対象物80が1階床の場合、対象物80の屋外面の温度は、床下温度に代替することができる。このような場合、温度センサ12の設置位置は、特に限定されない。
温度センサ24,25、および、温度センサ12による検知信号は、推定装置13に入力され、推定装置13において、対象物80の熱貫流率が推定される。
図3に示されるように、推定装置13は、各種演算処理および各部の制御を行う制御部31と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部32と、ユーザからの指示を受け付ける操作部33と、各種情報を表示する表示部34と、ネットワーク通信を行うための通信部35と、電源部36と、計時動作を行う計時部(図示せず)とを含む。推定装置13は、また、制御部31からの指示に基づき、ヒータ22の出力を制御する加熱制御部37と、温度センサ24,25,12からの信号を入力して、制御部31に出力する入力部(図示せず)とを含む。制御部31は、たとえばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置により実現される。記憶部32は、たとえば不揮発性の記憶装置により実現される。あるいは、制御部31と記憶部32とは、1つのハードウェア(記憶・演算部)として構成されてもよい。
図1に示したように、試験装置10と推定装置13とが分離されている場合、推定装置13は、ヒータ22および温度センサ24,25,12それぞれの配線の端子が接続されるコネクタ(図示せず)を含んでいればよい。
なお、試験装置10の装置本体11と推定装置13とは、図16に示されるように、1つの筐体100内に設けられることが望ましい。つまり、熱貫流率推定システム1は、単体の装置(熱貫流率推定装置)1Aによって構成されることが望ましい。この場合、推定装置13の操作部33および表示部34は、筐体100上に設けられればよく、その場合、操作部33および表示部34は、タッチパネルとして一体的に構成されていてもよい。また、装置本体11と推定装置13との間には、仕切り板101が設けられていてもよい。
また、上述のように、対象物80の屋外面の温度が、外気温や床下温度で代替される場合には、温度センサ12自体を設けず、推定装置13の操作部33または通信部35を介して、対象物80の屋外側温度が入力されてもよい。つまり、試験装置10は、装置本体11のみで構成されてもよい。
(機能構成について)
次に、熱貫流率推定システム1の機能構成について説明する。
次に、熱貫流率推定システム1の機能構成について説明する。
図3に示されるように、推定装置13は、その機能構成として、上記した加熱制御部37に加え、計測処理部41、推定部42、および結果処理部43を含んでいる。計測処理部41、推定部42、および結果処理部43の機能は、試験装置10が対象物80に取り付けられた状態において、制御部31により実現される。記憶部32には、基準板21の熱貫流率U1が予め記憶されている。
計測処理部41は、加熱制御部37を介してヒータ22の運転を行い、対象物80を屋内空間側から加熱する。つまり、加熱制御部37は、計測処理部41からの指示に応じて、ヒータ22の出力を制御する。加熱制御部37によるヒータ22の出力制御については、後述する。
また、計測処理部41は、温度センサ24,25,12からの検知信号に基づいて、ヒータ22により対象物80に熱が伝えられた状態における、各位置の温度を計測する。すなわち、図4を参照して、基準板21の裏面側温度Th、基準板21の表面側温度(対象物80の屋内面温度)Ti、および、対象物80の屋外側温度Toを計測する。計測処理部41は、基準板21の裏面側温度および表面側温度(以下、これらを「表裏温度」ともいう)がそれぞれ略一定となったか否か、すなわち安定したか否かを判断する機能を有している。
推定部42は、対象物80の加熱後、基準板21の表裏温度がそれぞれ略一定となったとき(安定したと判断されたとき)の3点の温度勾配から、対象物80の熱貫流率を推定する。対象物80の熱貫流率は、計測処理部41により計測された各位置の温度Th、Ti、Toと、記憶部32に記憶された基準板21の熱貫流率U1とに基づいて推定される。推定部42による対象物80の熱貫流率の推定原理については、以下の通りである。
基準板21の熱貫流率は既知であるため、その値U1と、基準板21の表裏温度(Th、Ti)とから、基準板21を通過する熱流W1(単位:W/m2)を推定することができる。すなわち、次の数式1により、基準板21を通過する熱流W1を推定することができる。
W1=U1×(Th−Ti) ・・・数式1
一方、対象物80を通過する熱流W0は、未知の熱貫流率U0と、対象物80の表裏温度(Ti、To)とから、次の数式2が成り立つ。
一方、対象物80を通過する熱流W0は、未知の熱貫流率U0と、対象物80の表裏温度(Ti、To)とから、次の数式2が成り立つ。
W0=U0×(Ti−To) ・・・数式2
ここで、対象物80を通る熱流W0と、基準板21を通る熱流W1とは、一元で考えると同じであるため、以下の数式3が成り立つ。
ここで、対象物80を通る熱流W0と、基準板21を通る熱流W1とは、一元で考えると同じであるため、以下の数式3が成り立つ。
U1×(Th−Ti)=U0×(Ti−To) ・・・数式3
よって、求めたい対象物80の熱貫流率U0は、次の数式4により求められる。
よって、求めたい対象物80の熱貫流率U0は、次の数式4により求められる。
U0=U1×(Th−Ti)/(Ti−To) ・・・数式4
すなわち、推定部42は、基準板21の表裏温度Th,Tiの温度差と、基準板21の熱貫流率U1とを乗算することにより得られる基準板21の熱流の推定値(W0)を、対象物80の表裏温度Ti,To(基準板21の表面側温度Tiおよび対象物80の屋外側温度To)との温度差で除算することにより、対象物80の熱貫流率U0を導出することができる。
すなわち、推定部42は、基準板21の表裏温度Th,Tiの温度差と、基準板21の熱貫流率U1とを乗算することにより得られる基準板21の熱流の推定値(W0)を、対象物80の表裏温度Ti,To(基準板21の表面側温度Tiおよび対象物80の屋外側温度To)との温度差で除算することにより、対象物80の熱貫流率U0を導出することができる。
上記推定原理に基づいて、本実施の形態では、数式4で表される算出式に、基準板21の熱貫流率と計測された3点の温度とを代入することで、対象物80の熱貫流率U0を推定(算出)する。
ここで、推定部42により対象物80の熱貫流率U0を精度良く推定するためには、上述のように、対象物80の表裏温度(Th,Ti)がそれぞれ略一定となり安定するまで待つ必要がある。そのため、ヒータ22の出力を一定出力として対象物80を加熱する場合、対象物80の熱容量の大きさによって、基準板21の表裏温度が安定するまでの時間に差が出る。一般的に、床材の熱容量は、外壁の熱容量よりも大きい。床材は、典型的には、屋内空間に面する合板(たとえばフローリング、木床など)と、その裏側に設けられた断熱材(たとえばポリスチレンフォーム)とで構成されている。
対象物80が床材のような熱容量の大きい面部材である場合、図17(A)に示すように、基準板21の裏面側温度Thと、基準板21の表面側温度(対象物80の屋内面温度)Tiとの双方が安定するまでに、9時間近く掛かることがある。この場合、当然ながら、図17(B)に示すように、対象物80の熱貫流率U0が真値Utと近い値となるまでに、9時間近く掛かる。これは、熱容量の大きい対象物80の場合、ヒータ22からの熱が対象物80に蓄熱されながら、2点の温度Th,Tiが上昇するためであると考えられる。図17において、双方の温度が安定し、推定U値が真値と略一致したときの時間が、「tz」で示されている。
そこで、本実施の形態では、ヒータ22の運転開始時における対象物80の加熱強度が、後の加熱強度よりも大きくなるように、ヒータ22の出力が制御される。加熱制御部37は、計測処理部41からの指示に応じて、ヒータ22の出力が高出力または低出力となるように制御する。
具体的には、ヒータ22の運転開始(加熱開始)から特定時までの期間を「第1の期間」、特定時から、基準板21の表裏温度Th,Tiが略一定となるまでの期間を「第2の期間」とした場合、加熱制御部37は、第1の期間におけるヒータ22の出力を、第2の期間におけるヒータ22の出力よりも高出力とする。
上記「特定時」は、測定開始前に設定された設定時間であり、典型的には、記憶部32に予め記憶された時間(所定時間)である。設定時間は、たとえば2時間以下であればよい。なお、設定時間は、予め記憶部32に記憶された時間でなくてもよく、たとえば、測定開始時にユーザが入力した時間であってもよい。
結果処理部43は、推定部42による推定結果(対象物80の熱貫流率U0)を記憶部32に記憶する処理を行う。この際、対象物80を識別するための識別情報と、熱貫流率の推定データとを関連付けて、記憶部32に記憶させることが望ましい。また、結果処理部43は、推定結果をユーザに報知するために、推定結果を表示部34に表示する処理を行う。なお、記憶部32は、基準板21の熱貫流率U1の記憶用のメモリと、推定結果の記憶用のメモリとを、個別に含んでいてもよい。
なお、本実施の形態では、上記した計測処理部41、推定部42、および結果処理部43の機能は、制御部31がソフトウェアを実行することで実現されるものとしたが、これらのうちの少なくとも1つについては、ハードウェアにより実現されてもよい。
(動作について)
次に、熱貫流率推定システム1の動作について説明する。当該システム1の動作は、制御部31が、記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して熱貫流率測定処理を実行することで実現される。
次に、熱貫流率推定システム1の動作について説明する。当該システム1の動作は、制御部31が、記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して熱貫流率測定処理を実行することで実現される。
図5は、本実施の形態における熱貫流率測定処理を示すフローチャートである。なお、図5に示す処理は、装置本体11が対象物80の屋内面に接触した状態で、操作部33を介してユーザから測定開始の指示が入力された場合に開始されるものとする。
図5を参照して、はじめに、計測処理部41は、加熱制御部37を介してヒータ22の加熱処理を開始するとともに(ステップS2)、加熱処理に並行して、上記した各位置の温度の計測を開始する(ステップS4)。つまり、計測処理部41は、ヒータ22の加熱中、温度センサ24,25,12からの検知信号に基づいて、基準板21の表裏温度(Th、Ti)と、対象物80の屋外温度(To)とを計測する。なお、推定装置13に入力された各温度センサからの検知信号は、デジタル信号に変換されて制御部31に出力される。
ヒータ22による加熱中、計測処理部41は、基準板21の表裏温度(Th,Ti)が安定したか否かを判断する(ステップS5)。なお、上述のように、対象物80の屋外側温度(To)は、対象物80の加熱状態に関わらず一定とみなせるため、ここでは、基準板21の表裏温度(Th,Ti)が安定したか否かだけを判断する。上記した図17のグラフには、1階床の屋外面温度がTo1で示され、床下温度がTo2で示されている。
ステップS2における加熱処理については、図6にサブルーチンを挙げて具体的に説明する。図6を参照して、対象物80の加熱開始時、加熱制御部37は、計測処理部41からの指示に応じて、ヒータ22の出力を高出力とする(ステップS22)。これにより、第1の期間において、ヒータ22は高加熱モードで運転される。
加熱開始から所定時間が経過すると(ステップS24にてYES)、計測処理部41からの指示に応じて、加熱制御部37は、ヒータ22の出力を下げ、ヒータ22の運転モードを低加熱モードに変更する(ステップS26)。これにより、第2の期間において、対象物80の加熱強度が、第1の期間よりも小さく変更される。図5のステップS5において基準板21の表裏温度Th,Tiが安定したと判断されるまでの間(ステップS5にてNO)、ヒータ22の出力は低出力のまま維持される。
再び図5を参照して、基準板21の表裏温度(Th,Ti)がそれぞれ略一定となり安定したと判断すると(ステップS5にてYES)、計測処理部41はそのときに計測した温度を推定部42に出力し、加熱処理を終了する。なお、略一定となったときの基準板21の表面側温度Tiおよび裏面側温度Thを、安定温度ともいう。基準板21の各安定温度は、加熱処理終了直前の所定時間における各温度Ti,Thの統計値(たとえば平均値)として計測されてもよい。
推定部42は、記憶部32から基準板21の熱貫流率U1を示す数値データを読み出して(ステップS6)、対象物80の熱貫流率U0を推定する(ステップS8)。具体的には、記憶部32から上記数式4で示される算出式も読み出し、読み出した算出式に、基準板21の表裏安定温度(Ti,Th)、対象物80の屋外側温度(To)、およびステップS6で読み出した数値(U1)を代入することにより、対象物80の熱貫流率の推定値(U0)を算出する。なお、数式4の文字U1に予め基準板21の熱貫流率が代入された算出式を、記憶部32に予め記憶させておいてもよい。ステップS6の処理(U1値の読み出し)は、本測定処理の開始時に行われてもよい。
対象物80の熱貫流率(U0)が推定されると、結果処理部43は、推定結果(U0)を表示部34に表示するとともに、記憶部32に記録する(ステップS10)。このように、対象物80の熱貫流率を記録することで、対象物80の面積を入力すれば、対象物80から逃げる熱量を求めることもできる。また、建物において、断熱性能の評価対象となる全ての面部材について、熱貫流率推定処理が終わると、記憶部32に記憶された面部材ごとの熱貫流率と、それらの面積とに基づいて、建物全体の熱損失係数を推定することもできる。
上述のように、本実施の形態によれば、試験装置10によって室内空間側から対象物80に強制的に熱を与えるため、実際の内外温度差が小さい時期であっても、対象物80の熱貫流率の推定を行うことができる。また、試験装置10の基準板21の面積は対象物80の面積よりも十分に小さく、対象物80の一部分のみを加熱するだけでよいため、従来よりも、短時間で断熱性能を評価することができる。
また、本実施の形態では、最初の所定時間(第1の期間)だけヒータ22の出力を高出力とし、対象物80を急速に加熱する。そのため、熱容量の大きい対象物80を評価対象とする場合でも、ヒータ22を一定出力とする場合に比べて、基準板21の表裏温度Th,Tiが安定するまでの時間を短縮することができる。つまり、本実施の形態によれば、対象物80の熱容量の大きさが測定時間に及ぼす影響を、軽減することができる。
具体的には、図7(A)に示されるように、加熱開始から所定時間(ta)までの第1の期間、ヒータ22を高出力とし、所定時間(ta)から基準板21の表裏温度双方が安定したと判断されたとき(tz)までの第2の期間、ヒータ22を低出力(通常出力)としている。そのため、基準板21の表面側温度Tiは、早い段階で安定温度(TSi)付近まで上昇している。たとえば所定時間(ta)を50分程度とした場合、対象物80が家屋の1階のフローリング床であっても、基準板21の表裏温度は加熱開始から150分程度で安定している。
そのため、図7(B)に示されるように、推定U値は、基準板21の表裏温度双方が安定した時点(tz)で真値Utに近い値となっている。なお、図7(A)では、基準板21の裏面側の安定温度が「TSh」として示されている。
このように、本実施の形態によれば、対象物80の熱容量が大きい場合であっても、加熱初期に、基準板21の表面側温度(対象物80の屋内面温度)Tiを安定温度TSi近くまで上昇させることで、推定U値の測定時間を2時間半程度とすることができる。したがって、本実施の形態のシステム1は、入居中の実物件にも適用することが可能である。
また、熱貫流率を推定するために用いる機材としては、試験装置10を対象物80に設置するだけでよいため、システム構成を簡易にすることができる。
また、熱流計により熱流を計測する場合、真値との誤差が生じやすいが、本実施の形態では、対象物80に熱が伝えられた状態において各位置の温度を計測するだけでよいため、誤差を少なくすることができる。
<実施の形態2>
本実施の形態に係る熱貫流率推定システムについて説明する。本実施の形態では、対象物を加熱する発熱部材として、上記ヒータ22の他に、サブヒータを追加している。システムの他の基本的な構成および動作は、実施の形態1のシステム1と同様である。そのため、以下に、実施の形態1と異なる点のみ詳細に説明する。なお、本実施の形態では、ヒータ22をメインヒータ22という。
本実施の形態に係る熱貫流率推定システムについて説明する。本実施の形態では、対象物を加熱する発熱部材として、上記ヒータ22の他に、サブヒータを追加している。システムの他の基本的な構成および動作は、実施の形態1のシステム1と同様である。そのため、以下に、実施の形態1と異なる点のみ詳細に説明する。なお、本実施の形態では、ヒータ22をメインヒータ22という。
図8および図9を参照して、本実施の形態における熱貫流率推定システム1は、実施の形態1で示した装置本体11に代えて、装置本体11Aを含んでいる。
図8に示されるように、装置本体11Aは、実施の形態1で示した基準板21、メインヒータ22、断熱部材23、および温度センサ24,25に加え、基準板21の表面21aに重ねられたサブヒータ26を有している。サブヒータ26は、メインヒータ22と同様に、面状の発熱体により構成されている。この場合、基準板21の表面側温度、すなわち対象物80の屋内面温度を検知する温度センサ25は、サブヒータ26の表面に設けられる。なお、サブヒータ26の面積は、メインヒータ22の面積よりも小さくてもよい。
図9に示されるように、サブヒータ26は、推定装置13の加熱制御部37Aによって制御される。加熱制御部37Aは、加熱開始から所定時間が経過するまでの第1の期間における対象物80の加熱温度が、その後の第2の期間における対象物80の加熱温度よりも大きくなるように、メインヒータ22およびサブヒータ26を含む発熱部材の出力を制御する。加熱制御部37Aの動作は、計測処理部41Aによって制御される。なお、加熱制御部37Aは、メインヒータ22のON/OFFを制御するメイン加熱制御部と、サブヒータ26のON/OFFを制御するサブ加熱制御部とを個別に含んでいてもよい。
本実施の形態では、装置本体11Aの表面にサブヒータ26が配置されるため、本実施の形態では、基準板21の表面21aは、対象物80の屋内面に当接せず近接した状態で配置される。この場合、サブヒータ26によって対象物80を直接加熱することができるため、実施の形態1の図7(A)のグラフに示されるように、メインヒータ22の出力を必要以上に上げる必要がなくなる。
より具体的には、メインヒータ22の出力制御のみで対象物80を急速に加熱する形態では、図7(A)に示されるように、基準板21の表面側温度Tiが安定するまでの時間よりも、基準板21の裏面側温度Thが安定するまでの時間の方が30分程度長くかかっている。これに対し、本実施の形態では、メインヒータ22の出力制御のみに頼らず、第1の期間にサブヒータ26を運転させることで、基準板21の裏面側温度Thを早期に安定させることができる。その結果、対象物80の熱貫流率U0の測定時間をさらに短縮することができる。
図11に示されるように、サブヒータ26の表面にも、均熱板70を固定しておくことが望ましい。均熱板70は硬い材質であるため、均熱板70の表面全体を対象物80の屋内面に密着させるためには、温度センサ25をサブヒータ26の裏面側に設けてもよい。その場合、基準板21の表面とサブヒータ26との間に均熱板70をさらに設けて、温度センサ25を基準板21の表面と均熱板70との間に配置してもよい。温度センサ25は、柔らかい材質の基準板21の表面に埋め込まれる。なお、メインヒータ22側の温度センサ24を基準板21の裏面と均熱板70との間に配置する場合も同様に、温度センサ24は、基準板21の裏面に埋め込まれる。
本実施の形態における加熱制御部37Aの処理については、図12に示すフローチャートを参照して説明する。図12は、本実施の形態における加熱処理を示すフローチャートである。本実施の形態では、対象物80の加熱開始時に、加熱制御部37Aは、計測処理部41Aからの指示に応じて、メインヒータ22およびサブヒータ26を一定出力とする(ステップS32,S34)。つまり、第1の期間には、メインヒータ22およびサブヒータ26の双方が運転される。サブヒータ26の出力は、メインヒータ22の出力強度よりも低くてもよい。なお、本実施の形態におけるメインヒータ22の出力強度は、実施の形態1の第1の期間における出力強度(高出力)よりも十分に低く、実施の形態1の第2の期間における出力強度(低出力)よりも少し高いか同じ程度である。
本実施の形態においても、加熱開始からたとえば所定時間経過した場合(ステップS36にてYES)、計測処理部41Aからの指示に応じて、加熱制御部37Aは、サブヒータ26の運転を停止し、基準板21の表裏温度Th,Tiが安定するまでの間、メインヒータ22の運転のみを継続させる(ステップS38)。つまり、第2の期間には、メインヒータ22のみが運転される。
このように、本実施の形態によれば、サブヒータ26により対象物80が直接温められるため、メインヒータ22の出力を必要以上に上げる必要がなくなる。そのため、実施の形態1に比べて、基準板21の裏面側温度Thが上がりすぎない。したがって、本実施の形態によれば、加熱開始から基準板21の裏面側温度Thが安定するまでに要する時間が、基準板21の表面側温度Tiが安定するまでに要する時間よりも30分以上も長くなってしまうというような不都合を解消することができる。その結果、対象物80の熱貫流率U0の測定時間をさらに短縮することができる。
なお、図12では、メインヒータ22を一定出力としたが、本実施の形態においても第1の期間の全てまたは一部(初期)において、メインヒータ22の出力強度を第2の期間の出力強度よりも高くしてもよい。この場合でも、実施の形態1の第1の期間よりも、メインヒータ22の出力強度は低く抑えることができるため、基準板21の裏面側温度Thの上昇率を必要最小限に留めることができる。なお、第1の期間におけるサブヒータ26の出力も、初期の所定時間(設定時間)のみ、一定ではなく高出力としてもよい。
図13には、このような場合の基準板21の表裏温度Th,Tiの時間推移が示されている。第1の期間が、加熱開始から所定時間(ta、たとえば15分程度)とした場合、そのうちの加熱初期のみ、すなわち、加熱開始から一定時間(tb、たとえば10分程度)だけ、出力を少し上げている。図13の例では、基準板21の表裏温度双方が安定するまでに要した時間(tz)は、約120分となっており、実施の形態1よりも測定時間の短縮が図れている。
なお、本実施の形態では、サブヒータ26を運転する第1の期間は、加熱開始から所定時間が経過するまでの期間であるとした。そのため、図13のグラフに示されるように、サブヒータ26の加熱により、基準板21の表面側温度Tiが安定温度TSiよりも高くなる場合がある。このような場合、サブヒータ26を停止後の第2の期間において、基準板21の表面側温度Tiが安定温度TSiまで徐々に下がるのを待つ必要がある。そのため、基準板21の表面側温度Tiが安定温度TSiを超えないようにサブヒータ26を運転することにより、さらなる時間短縮が見込める可能性がある。
そこで、変形例として、サブヒータ26を運転する第1の期間を、次のように定めてもよい。
(変形例について)
本実施の形態の変形例では、図12に示した加熱処理に代えて、図14に示す加熱処理が行われる。図14は、本実施の形態の変形例に係る加熱処理を示すフローチャートである。
本実施の形態の変形例では、図12に示した加熱処理に代えて、図14に示す加熱処理が行われる。図14は、本実施の形態の変形例に係る加熱処理を示すフローチャートである。
図14を参照して、はじめに、加熱制御部37Aは、メインヒータ22の加熱を開始するとともに、サブヒータ26を一定出力とする(ステップS42,S44)。ここで、加熱制御部37Aは、基準板21の裏面側温度Thが一定となるように、メインヒータ22の一定温度制御を行ってもよい。一定温度制御は、たとえば、温度センサ24の検知温度が一定温度となるように、メインヒータ22のON/OFFが繰り返されることにより実現される。その後、計測処理部41は、基準板21の表面側温度Tiが閾値以上となったか否かを判断する(ステップS46)。
ここでの閾値は、たとえば次のようにして計算可能である。すなわち、基準板21の裏面側温度Thを一定とし、対象物80が最低の断熱性能であると仮定した場合における、基準板21の表面側温度Tiの安定温度を閾値として推定する。床下温度(To)も一定とみなせるため、閾値の推定は1次元の計算で行うことができる。このような計算が測定開始前に制御部31により行われてもよいし、このような計算に基づく閾値が操作部33を介して事前に入力されていてもよい。あるいは、対象物80の種類(外壁、フローリング床、木床など)に応じた閾値が、予め記憶部32に記憶されており、測定開始前に操作部33を介して対象物80の種類を選択することにより、閾値が決定されてもよい。
基準板21の表面側温度Tiが閾値以上となったと判断した場合(ステップS46にてYES)、加熱制御部37Aはサブヒータ26の運転を停止する(ステップS48)。つまり、本変形例における第1の期間は、加熱開始から基準板21の表面側温度Tiが閾値に達するまでの期間である。
このような加熱処理を行った場合における、各位置の温度の時間遷移の典型例が図15のグラフに示されている。図15に示されるように、メインヒータ22の一定温度制御により、基準板21の裏面側温度Thは早い段階(30分以内)で一定温度(TSh)となっている。サブヒータ26の運転は、加熱開始から、基準板21の表面側温度Tiが閾値TTiに達する時点(ta´)までの第1の期間だけ、行われる。閾値TTiは、基準板21の表面側温度Tiの安定温度TSiよりも低いため、第2の期間においては、基準板21の表面側温度Tiが緩やかに上昇する。この場合、基準板21の表面側温度Tiは、加熱開始から90分以内に安定している。
したがって、本実施の形態の変形例によれば、熱貫流率の測定時間を、実施の形態2よりもさらに短縮することが可能となる。
以上説明したように、本発明の各実施の形態によれば、簡単かつ短時間で、対象物80の熱貫流率を精度良く推定することができる。したがって、既存の建物全体の断熱性能も容易に評価できるため、本システム1を利用することで、リフォーム事業を活性化することもできる。
なお、各実施の形態で示した熱貫流率推定方法をプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD−ROMなどの光学媒体やメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。この場合、推定装置13は、記録媒体(図示せず)からプログラムやデータを読み出し/書き込み可能な駆動装置(図示せず)をさらに備えているものとする。また、通信部35によるネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
また、上記した各実施の形態では、試験装置10の装置本体11(11A)に電気的に接続された推定装置13において、対象物80の熱貫流率の推定が行われた。つまり、推定装置13に、図3に示した推定部42および結果処理部43の機能が含まれていることとした。しかしながら、推定部42および結果処理部43の機能は、試験装置10とは非接続の他のコンピュータ(以下「評価装置」という)に含まれていてもよい。評価装置は、たとえば、一般的なパーソナルコンピュータまたは携帯端末であってよい。
この場合、試験装置10の装置本体11に電気的に接続され、現場での試験に用いられる装置(以下「制御装置」という)には、加熱制御部37(37A)と、加熱制御部37の制御や各位置の温度の計測を行う計測処理部41(41A)の機能が含まれていればよい。計測処理部41によって計測された、熱貫流率の推定に必要な、基準板21の表裏温度(安定温度)および対象物80の屋外側温度のデータは、たとえば、制御装置に対して着脱可能に設けられた記録媒体に記録される。記録媒体に記録されたこれらの温度データは、評価装置において読み出され、評価装置において対象物80の熱貫流率U0が推定される。なお、記録媒体に記録される温度データは、熱貫流率の推定に用いられる安定温度だけでなく、安定温度に至るまでの時系列の温度を含んでいてもよい。また、対象物80の屋外側温度は含まなくてもよい。
このような構成の場合、評価装置以外の、装置本体11と制御装置とを含むユニットを、熱貫流率試験装置として提供することもできる。熱貫流率試験装置は、対象物80の屋外側温度を検知する温度センサ12を含んでいてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 熱貫流率推定システム、10 試験装置、11,11A 装置本体、12,24,25 温度センサ、13 推定装置、21 基準板、22 ヒータ(メインヒータ)、23 断熱部材、26 サブヒータ、31 制御部、32 記憶部、33 操作部、34 表示部、35 通信部、36 電源部、37,37A 加熱制御部、41,41A 計測処理部、42 推定部、43 結果処理部、70 均熱板、80 対象物(面部材)、100 筐体、101 仕切り板。
Claims (10)
- 建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、前記面部材の熱貫流率を推定するためのシステムであって、
前記面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有する板状部材と、
前記板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、前記面部材に熱を伝えるための発熱部材と、
前記板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられた第1および第2の温度センサと、
前記発熱部材により前記面部材が加熱された状態において、前記第1および第2の温度センサからの検知信号に基づいて、前記板状部材の表面側温度および裏面側温度が安定したか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により安定したと判断されたときの前記板状部材の表面側温度および裏面側温度と、前記面部材の屋外側温度と、予め記憶された前記板状部材の熱貫流率とに基づいて、前記面部材の熱貫流率を推定する推定手段と、
前記面部材の加熱開始から特定時までの期間を第1の期間とし、前記特定時から前記判断手段により安定したと判断されるまでの期間を第2の期間とした場合、前記第1の期間における前記面部材の加熱強度が、前記第2の期間における前記面部材の加熱強度よりも大きくなるように、前記発熱部材の出力を制御する加熱制御手段とを備える、熱貫流率推定システム。 - 前記加熱制御手段は、前記第1の期間における前記ヒータの出力を、前記第2の期間における前記ヒータの出力よりも高出力とする、請求項1に記載の熱貫流率推定システム。
- 前記発熱部材は、前記板状部材の表面側に位置し、前記面部材に直接的に熱を伝えるためのサブヒータをさらに含み、
前記加熱制御手段は、前記第1の期間に前記ヒータおよび前記サブヒータの双方を運転し、前記第2の期間に前記ヒータのみを運転する、請求項1に記載の熱貫流率推定システム。 - 前記加熱制御手段は、前記第1の期間のうちの全てまたは初期において、前記ヒータの出力を他の期間よりも高出力とする、請求項3に記載の熱貫流率推定システム。
- 前記第1の期間は、加熱開始から設定時間が経過するまでの期間である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱貫流率推定システム。
- 前記第1の期間は、加熱開始から前記板状部材の表面側温度が閾値に達するまでの期間である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱貫流率推定システム。
- 前記ヒータの屋内側に設けられ、熱の逆流を防止するための断熱部材をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の熱貫流率推定システム。
- 建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、前記面部材の熱貫流率を推定するために用いられる試験装置であって、
前記面部材の屋内面に当接または近接する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、その熱貫流率が既知である板状部材と、
前記板状部材の裏面側に設けられたヒータを含み、前記面部材に熱を伝えるための発熱部材と、
前記板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられた第1および第2の温度センサと、
前記面部材の加熱開始から特定時までの期間を第1の期間とし、前記特定時から前記板状部材の表面側温度および裏面側温度が安定するまでの期間を第2の期間とした場合、前記第1の期間における前記面部材の加熱強度が、前記第2の期間における前記面部材の加熱強度よりも大きくなるように、前記発熱部材の出力を制御する加熱制御手段と、
少なくとも、安定したときの前記板状部材の表面側温度および裏面側温度を記憶する記憶手段とを備える、熱貫流率試験装置。 - 建物の屋内空間と屋外空間との間に位置する面部材の断熱性能を表わす指標として、前記面部材の熱貫流率を推定する方法であって、
板状部材と、前記板状部材の裏面側に設けられたヒータを含む発熱部材と、前記板状部材の表面側および裏面側にそれぞれ設けられた第1および第2の温度センサとを備えた試験装置を、前記面部材の屋内面に接触させ、かつ、前記発熱部材により前記面部材が加熱された状態において、前記第1および第2の温度センサからの検知信号に基づいて、前記板状部材の表面側温度および裏面側温度が安定したか否かを判断するステップと、
安定したと判断されたときの前記板状部材の表面側温度および裏面側温度と、前記面部材の屋外側温度と、予め記憶された前記板状部材の熱貫流率とに基づいて、前記面部材の熱貫流率を推定するステップと、
前記面部材の加熱開始から特定時までの期間を第1の期間とし、前記特定時から安定したと判断されるまでの期間を第2の期間とした場合、前記第1の期間における前記面部材の加熱強度が、前記第2の期間における前記面部材の加熱強度よりも大きくなるように、前記発熱部材の出力を制御するステップとを備える、熱貫流率推定方法。 - 請求項9に記載の熱貫流率推定方法に含まれる各ステップを、コンピュータに実行させる、熱貫流率推定プログラム。
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