JP5152097B2 - ガスセンサの信号処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の排気通路に備えられ、同排気通路内の排気中の特定成分の濃度を検出するガスセンサに適用されるガスセンサの信号処理装置に関する。
この種のガスセンサとしては、内燃機関の燃焼室に供給される混合気の実際の空燃比(吸気量/燃料量)をリニアに検出すべく内燃機関の排気通路に備えられる空燃比センサ(A/Fセンサ)が知られている。A/Fセンサは、実際の空燃比を目標値にフィードバック制御(空燃比F/B制御)するために用いられる。ここでは通常、上記目標値が、A/Fセンサの下流側に設けられる排気浄化用触媒の排気浄化効率が高くなる空燃比付近に設定されるため、排気特性を良好なものとすることができる。
ところで、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排気が間欠的に排出されることに起因して、排気通路内では排気圧力が変動するため、A/Fセンサに加わる排気圧力は、脈動を伴ったものとなる。ここで、A/Fセンサの出力信号は、センサの構造に起因して圧力依存性を有するため、この脈動を伴った排気圧力(排気脈動)に起因してセンサ出力信号が変動し得る。この場合、変動したセンサ出力信号を空燃比F/B制御の制御量の検出値とすることで、実際の空燃比の制御性が低下するおそれがある。
そこで従来は、下記特許文献1に見られるように、排気脈動周期の整数倍の時間に渡るセンサ出力信号の積分値を空燃比F/B制御の制御量の検出値とすることで、排気脈動に起因するA/Fセンサの出力信号の変動が実際の空燃比の制御性に及ぼす影響を抑制する技術も提案されている。
特開平01−206251号公報
ただし、上記積分値を空燃比F/B制御の制御量の検出値とする場合、実際の空燃比の変化を上記制御量の検出値の変化として把握するまでに要する時間が長くなることで、実際の空燃比を応答性良く把握することができなくなるおそれがある。
なお、上記A/Fセンサに限らず、排気中の特定成分の濃度を検出するガスセンサについては、排気脈動に起因するガスセンサの出力信号の変動が排気中の特定成分の濃度の把握に及ぼす影響を抑制することと、実際の排気中の特定成分の濃度を応答性良く把握することとの両立が困難なこうした事情も概ね共通したものとなっている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気脈動に起因するガスセンサの出力信号の変動が排気中の特定成分の濃度の把握に及ぼす影響を好適に抑制しつつも、実際の排気中の特定成分の濃度を極力応答性良く把握することのできるガスセンサの信号処理装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
構成1は、内燃機関の排気通路に備えられ、同排気通路内の排気中の特定成分の濃度を検出するガスセンサに適用されるガスセンサの信号処理装置において、前記ガスセンサの出力信号の高周波成分を除去するフィルタ手段を備え、同フィルタ手段は、前記除去する高周波成分の最低周波数を、前記内燃機関の運転状態に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする。
上記最低周波数を低くするほど、フィルタ処理されたセンサ出力信号(フィルタ手段の出力信号)は、ガスセンサに加わる排気圧力の変動に起因したセンサ出力信号の変動が抑制されたものとなる反面、実際の排気中の特定成分の濃度に対する応答性が低下する。しかし、内燃機関の運転状態に応じて上記ガスセンサに加わる排気圧力の変動の影響度合いが相違したり、排気中の特定成分の濃度の把握精度と上記応答性との優先度合いが変化したりする傾向がある。上記発明では、この点に鑑み、内燃機関の運転状態に応じて上記最低周波数を可変設定することで、ガスセンサに加わる排気圧力の変動の影響を好適に抑制しつつも、実際の排気中の特定成分の濃度に対するフィルタ手段の出力信号の応答性を極力高くすることができる。
構成2は、構成1において、前記可変手段は、前記内燃機関の機関回転速度が高くなるほど、前記除去する高周波成分の最低周波数を高くするものであることを特徴とする。
ガスセンサの出力信号は、センサの構造に起因して圧力依存性を有するため、ガスセンサへと排出される排気の周期に応じた周波数(変動周波数)で変動し得る。ここで、機関回転速度が高くなるほど、この変動周波数は高くなる。このため、機関回転速度が高くなるほど、ガスセンサの出力信号の変動周波数は高くなる。上記発明では、この点に鑑み、機関回転速度が高くなるほど、排気脈動に起因するガスセンサの出力信号の変動成分を除去するための上記最低周波数を高くする。これにより、排気脈動に起因するガスセンサの出力信号の変動によって、センサ出力信号に基づき排気中の特定成分の濃度を把握する際に及ぼされる影響を好適に抑制しつつも、実際の排気中の特定成分の濃度を極力応答性良く把握することができる。
構成3は、構成2において、前記可変手段は、前記可変設定される最低周波数を、前記内燃機関の燃焼室から前記ガスセンサへと排出される排気の排出間隔に対応する周波数以下の周波数とするものであることを特徴とする。
排気中の特定成分の濃度の変化の周波数は、大きくは、ガスセンサへと排出される上記排気の排出間隔の逆数によって定まる周波数(排気周波数)となると考えられる。このため、ガスセンサの出力信号のうち、排気周波数よりも高周波成分については、ノイズとなる。上記発明では、こうした点に鑑み、上記可変設定される最低周波数を上記設定とすることで、ガスセンサの出力信号に基づき排気中の特定成分の濃度を把握する際に排気脈動によって及ぼされる影響を極力抑制することができる。
構成4は、構成1〜3のいずれか1つにおいて、前記ガスセンサは、空燃比センサであり、前記フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比をその目標値に制御する空燃比制御手段を更に備え、前記フィルタ手段は、実際の空燃比と前記目標値との差が大きくなる状況であると判断されてから前記実際の空燃比と前記目標値との差が所定以下となるまでの期間に渡って、前記可変設定される最低周波数を高くするものであることを特徴とする。
フィルタ手段の出力信号は、上記最低周波数以上の周波数の空燃比の変化に対して応答遅れを生じ得る。この場合、実際の空燃比と空燃比の目標値(目標空燃比)との差が大きくなると、実際の空燃比の変化に対してフィルタ手段の出力信号の変化が追いつかず、実際の空燃比の変化を速やかに把握することができなくなるおそれがある。この点、上記発明では、実際の空燃比と目標空燃比との差が大きくなる状況であると判断されてから、実際の空燃比と目標空燃比との差が所定以下となるまでの期間に渡って、上記最低周波数を高くすることで、フィルタ手段の出力信号の応答遅れを極力抑制することができる。これにより、フィルタ手段の出力信号から実際の空燃比の変化を極力速やかに把握することができ、ひいてはフィルタ手段の出力信号に基づく空燃比の制御性の低下を極力抑制することができる。
なお、空燃比制御手段が、フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比と目標空燃比との差に応じた値の積分演算値に基づき、上記空燃比を目標空燃比にフィードバック制御する場合、実際の空燃比と目標空燃比との差が大きくなると、積分演算値が増大することに起因してフィルタ手段の出力信号に基づく空燃比の制御性が大きく低下しやすいため、上記可変手段を備えるメリットが大きい。
構成5は、構成4において、前記フィルタ手段は、加速増量制御、触媒早期暖機制御又は燃料カットの停止制御が行われると判断された場合、前記実際の空燃比と前記目標値との差が大きくなる状況であると判断するものであることを特徴とする。
加速増量制御や、触媒早期暖機制御、燃料カットの停止制御によれば、フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比と目標空燃比との差が大きくなる。このため、上記発明によれば、上記空燃比と目標空燃比との差が大きくなる状況を適切に判断することができる。
構成6は、構成1〜5のいずれか1つにおいて、前記ガスセンサは、空燃比センサであり、前記フィルタ手段は、同フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比と理論空燃比との差が大きくなるほど、前記最低周波数以上の周波数の前記ガスセンサの出力信号の除去度合いを大きくするものであることを特徴とする。
空燃比センサの構造に起因して、実際の空燃比と理論空燃比との差が大きいと排気脈動に起因する空燃比センサの出力信号の変動量が増大する。ここで、上記発明では、フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比と理論空燃比とが差が大きくなるほど、上記最低周波数以上の周波数のセンサ出力信号の除去度合いを大きくすることで、排気脈動に起因する空燃比センサの出力信号の変動量が大きくなる状況において、この影響を好適に抑制することができる。
構成7は、構成1〜6のいずれか1つにおいて、前記排気通路における前記ガスセンサの下流側には、過給機の排気タービンが備えられることを特徴とする。
排気タービンを備える場合、これが排気の抵抗となり、この排気タービンよりも上流側の排気通路の排気圧力が大きく変動しやすい。このため、排気タービンよりも上流側にガスセンサが配置される場合、ガスセンサの出力信号の変動量が増大するおそれがある。このため、上記発明では、上記可変手段を備えるメリットが大きい。
構成8は、構成1〜7のいずれか1つにおいて、前記内燃機関は、多気筒内燃機関であり、前記ガスセンサは、前記内燃機関の各気筒に接続される排気通路の集合部に備えられる空燃比センサであり、前記フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比をその目標値に制御すべく、前記内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射弁を操作する操作手段と、前記フィルタ手段に入力される前の前記ガスセンサの出力信号に基づき、前記内燃機関の各気筒間の相対的な空燃比のずれを把握する把握手段と、前記各気筒間の相対的な空燃比のずれが小さくなるように、前記燃料噴射弁の操作量を補正する操作量補正手段とを更に備えることを特徴とする。
気筒毎の空燃比のフィードバック制御を行うことで内燃機関の燃焼制御精度の向上を図る場合、空燃比センサの出力信号の応答性の向上が要求されることとなる。このため、フィルタ処理における上記最低周波数の設定によっては、フィルタ手段の出力信号に基づき、実際の空燃比の変化を高応答に把握することができず、気筒毎の空燃比を把握することが困難となるおそれがある。この点、上記発明では、フィルタ手段に入力される前の空燃比センサの出力信号に基づき、内燃機関の各気筒間の相対的な空燃比のずれを把握する。そして、このずれが小さくなるように、フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比を目標空燃比に制御するための燃料噴射弁の操作量を補正する。これにより、排気脈動に起因する空燃比センサの出力信号の変動の影響をフィルタ処理によって好適に抑制するとともに、気筒毎の空燃比のフィードバック制御を行うことができる。
第1の実施形態にかかるシステム構成図。 同実施形態にかかるA/Fセンサ出力信号のフィルタ処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態にかかるフィルタ処理前後のA/Fセンサ出力信号の周波数スペクトルを示す図。 同実施形態にかかるフィルタ処理前後のA/Fセンサ出力信号波形を示すタイムチャート。 第2の実施形態にかかるカットオフ周波数を高くする処理の手順を示すフローチャート。 第3の実施形態にかかる減衰係数変更処理の手順を示すフローチャート。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるガスセンサの信号処理装置を多気筒ガソリンエンジンシステムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態にかかるシステム構成を示す。
図示されるエンジン10は、4ストロークエンジンであり、火花点火式内燃機関である。本実施形態では、エンジン10として、多気筒(直列6気筒)ガソリンエンジンを想定しており、図中#1〜#6は、第1〜第6気筒を示している。エンジン10の吸気通路11には、上流側から順に、空気中の異物を除去するエアクリーナ12、吸入される空気量(吸気量)を検出するエアフローメータ14、吸気を冷却するインタークーラ16、吸気温度を検出する吸気温センサ18及びDCモータ等のアクチュエータによって開度調節される電子制御式のスロットルバルブ20が設けられている。スロットルバルブ20の下流側には、サージタンク22が設けられ、このサージタンク22には、吸気圧を検出する吸気圧センサ24が設けられている。サージタンク22には、エンジン10の各気筒の燃焼室28に吸気を導入する吸気マニホールド30が接続されている。吸気マニホールド30において各気筒の吸気ポート近傍には、燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁32が設けられている。
一方、エンジン10の各気筒の排気ポートには、排気マニホールド34a、34bが接続されている。ここで、本実施形態では、#1〜#3に対応する排気ポートには、排気マニホールド34aが接続され、#4〜#6に対応する排気ポートには、排気マニホールド34bが接続されている。一方、吸気バルブ42及び排気バルブ44のそれぞれは、クランク軸36と連動する吸気側カム軸38及び排気側カム軸40のそれぞれに取り付けられたカムによって駆動される。こうした構成によれば、吸気バルブ42の開弁によって吸気と燃料との混合気が燃焼室28内に導入され、図示しない点火プラグの火花放電によって混合気が着火され燃焼に供される。燃焼に供された混合気は、排気バルブ44の開弁によって排気として排気マニホールド34a、34bに排出される。なお、各気筒の圧縮上死点は、互いに「120°CA」ずれており、#1,#5,#3,#6、#2、#4の順に出現する。
エンジン10には、クランク軸36近傍でクランク軸36の回転角度を検出するクランク角度センサ46や、エンジン10を冷却する冷却水の温度を検出する水温センサ48、吸気側カム軸38の回転角度を検出する吸気側カム角センサ50、排気側カム軸40の回転角度を検出する排気側カム角センサ52が設けられている。
排気マニホールド34a、34bの集合部には、排気通路56a、56bが接続されている。排気通路56a、56bには、A/Fセンサ58a、58bが設けられている。これらA/Fセンサは、排気中の酸素濃度や未燃成分(CO,HC及びH2等)に応じてリニアな電気信号を出力するセンサであり、広域の実際の空燃比(実空燃比)を検出可能な、いわゆる全領域空燃比センサである。
排気通路56a、56bの下流側は、過給機(ターボチャージャ60)に接続されている。このように、本実施形態では、A/Fセンサ58a、58bを、ターボチャージャ60の上流側に設けている。これは、第1に、気筒毎の実空燃比(気筒別空燃比)に対するA/Fセンサ58a、58bの出力信号の応答性の向上を狙ったものである。また、第2に、エンジン10の始動時において暖機が不十分な場合、ターボチャージャ60の下流側に排気熱が届きにくいことに起因して水が溜まりやすいため、A/Fセンサと水との接触頻度が増大し、A/Fセンサの信頼性が低下するおそれがあることに鑑みたものである。
上記ターボチャージャ60は、吸気通路11上に設けられた吸気コンプレッサ62aと、排気通路56a、56bの下流側に設けられた排気タービン62bとを有して構成される。排気タービン62bは、これら排気通路を流れる排気によって回転エネルギが付与されるものであり、この回転エネルギによって吸気コンプレッサ62aが駆動される。吸気コンプレッサ62aの駆動によって加圧された吸気は、上記インタークーラ16にて冷却されることで圧縮される。これにより、エンジン10の燃焼室28に供給される吸気の充填効率が向上する。ちなみに、吸気の過給圧は、吸気通路11上の吸気コンプレッサ62aの上流部と下流部との間をバイパスする通路に設けられるエアバイパスバルブ64等を操作することで調節される。
ターボチャージャ60の下流側には、第2排気通路68が接続されている。第2排気通路68には、排気浄化を行うための排気後処理システムとして、排気中の有害成分を浄化する第1の三元触媒70及び第2の三元触媒72が設けられている。第1の三元触媒70及び第2の三元触媒72は、排気中のNOx、HC及びCOを浄化するためのものである。また、第1の三元触媒70と第2の三元触媒72との間には、排気中の酸素濃度に応じて2値的に出力信号を変化させるO2センサ74が設けられている。O2センサ74は、排気中の実際の酸素濃度に基づき、実空燃比が理論空燃比(λ=1)に対して小さい値である(リッチ)か大きい値である(リーン)かを検出するものである。
電子制御装置(ECU76)は、エンジン10の各種制御に必要な各種アクチュエータを操作する制御装置である。ECU76は、ユーザのアクセル操作量を検出するアクセルセンサ78や、A/Fセンサ58a、58b、O2センサ74、クランク角度センサ46、排気側カム角センサ52、更にはエアフローメータ14等の検出信号を逐次入力する。ECU76は、これらの入力信号に基づきエンジン10の燃焼制御等を行う。
特に、ECU76は、エンジン10の各気筒の燃焼室28に供給される混合気の実空燃比を目標値(目標空燃比)にフィードバック制御すべく燃料噴射弁32を通電操作する。詳しくは、実空燃比の気筒間のばらつきを抑制すべく、気筒別に空燃比をフィードバック制御する(気筒別空燃比F/B制御)。気筒別空燃比F/B制御は、各気筒の燃料噴射弁32の噴射特性が個体差及び経時変化によって相違したり、各気筒の燃焼室28に供給される吸気量が相違したりすることに起因して生じる気筒別空燃比のばらつきを抑制することで、実空燃比の制御精度を向上させ、排気特性を更に向上させるために行われるものである。
上記気筒別空燃比F/B制御は、全気筒の平均空燃比を一律に目標空燃比とするためのフィードバック制御(平均F/B制御)と、気筒別空燃比のばらつきを低減するためのフィードバック制御(気筒別F/B制御)とからなる。ここでは、#1〜#3の気筒別空燃比F/B制御を例にとって説明する。なお、#4〜#6の気筒別空燃比F/B制御については、制御手法が#1〜#3のものと同様であるため、説明を省略する。
上記平均F/B制御ではまず、O2センサ74の出力信号に基づき目標空燃比を設定する。ここで、目標空燃比は、第1の三元触媒70の排気浄化効率が高くなる空燃比(λ=1)付近に設定される。次に、A/Fセンサ58aの出力信号に基づき算出される空燃比を平均空燃比とし、この平均空燃比と上記目標空燃比との偏差に基づくPI制御(比例微分制御)によってF/B補正係数を算出する。そして、エアフローメータ14の出力信号に基づく吸気量や、クランク角度センサ46の出力信号に基づくエンジン回転速度、アクセルセンサ78の出力信号に基づくアクセル操作量等から基本噴射量を算出し、算出された基本噴射量にF/B補正係数を乗算することで、平均空燃比を目標空燃比にフィードバック制御するための操作量を算出する。
一方、上記気筒別F/B制御ではまず、A/Fセンサ58aの出力信号に基づき、#1〜#3の気筒別空燃比を算出する。次に、#1〜#3間での気筒別空燃比のばらつきが小さくなるように、#1〜#3のそれぞれに対応する燃料噴射量の補正係数を各別に算出する。
そして、平均空燃比を目標空燃比にフィードバック制御するための操作量に、上記補正係数を乗算することで、#1〜#3のそれぞれに対応する燃料噴射弁32から噴射される最終的な燃料量を算出する。
ところで、上記A/Fセンサ58a、58bの出力信号は、センサの構造に起因して圧力依存性を有する。このため、ECU76では、A/Fセンサ58a、58bに加わる排気圧力として特定の圧力を想定することで、センサ出力信号から実空燃比を把握している。ただし、A/Fセンサ58a、58bに加わる排気圧力は脈動を伴ったものとなる。これは、エンジン10の各気筒の燃焼室28からA/Fセンサ58a、58bへと排気が所定クランク角度間隔(240°CA)毎に排出されることで、A/Fセンサ58a、58bに加わる排気圧力が変動するためである。ここで、エンジン回転速度が高くなるほど排気の排出間隔が短くなるため、A/Fセンサ58a、58bに加わる排気圧力が変動する周波数(変動周波数)は、エンジン回転速度が高くなるほど高くなる。また、上記変動周波数は、燃焼室28からセンサへの排気の排出間隔の逆数の値及びその整数倍の値が支配的となる。そして、A/Fセンサ58a、58bに加わる排気圧力が上記変動周波数で変動すると、ECU76の想定する特定の圧力と、センサに実際に加わる排気圧力とがずれることで、センサ出力信号が上記変動周波数で変動し、ECU76による実空燃比の把握精度が低下するおそれがある。
特に、本実施形態では、気筒別空燃比F/B制御を行うための設定に起因して、A/Fセンサ58a、58bの出力信号が排気圧力の変動に伴って大きく変動するため、実空燃比の把握精度の低下が顕著となるおそれがある。すなわち、上述したように、A/Fセンサ58a、58bは、排気タービン62bの上流側に設けられている。ここで、排気タービン62bの上流側では、排気タービン62bが排気の抵抗となることで、A/Fセンサ58a、58b近傍の排気圧力が大きく変動しやすい。排気圧力が大きく変動する場合、センサ出力信号の変動量が増大するおそれがある。更に、気筒別空燃比F/B制御の制御精度を向上させるべくA/Fセンサ58a、58bの出力信号の応答性を向上させることで、排気脈動がセンサ出力信号に及ぼす影響が顕著となり、センサ出力信号の変動量が更に増大するおそれがある。
ここで、気筒別F/B制御については、A/Fセンサ58a、58bに加わる排気圧力が同一となるタイミングで各気筒の空燃比を計測することで、センサ出力信号の変動の影響を除去することができる。すなわち、こうした設定によれば、各気筒について計測されるセンサ出力信号のうち、排気脈動に起因するセンサ出力変動分が同じになるため、上記タイミングにおける各気筒についてのA/Fセンサ58a、58bの出力信号に基づき、各気筒間の相対的な空燃比のずれを高精度に把握することができる。
これに対し、平均空燃比については、その絶対値が問題となるため、A/Fセンサ58a、58bの出力信号に基づき、平均空燃比の絶対値を高精度に把握することが要求される。
そこで本実施形態では、ECU76に入力されるA/Fセンサ58a、58bの出力信号をフィルタ処理することで、A/Fセンサ58a、58bの出力信号から排気脈動に起因するセンサ出力変動成分を除去する。これにより、排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動に起因した平均空燃比の把握精度の低下を抑制する。
図2に、本実施形態にかかるA/Fセンサ58a、58bの出力信号のフィルタ処理の手順を示す。この処理は、ECU76によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、計測されたA/Fセンサ58a、58bの出力信号をローパスフィルタ(LPF)処理することで、センサの出力信号から排気脈動に起因するセンサ出力変動成分を除去する。本実施形態では、フィルタ処理を2次のLPFを用いて行う。LPFの伝達関数G(s)を下式(1)で表し、この伝達関数G(s)の振幅特性及び位相特性を、下式(2)及び(3)でそれぞれ表す。なお、ζは減衰係数、ωnは固有角周波数、fnは固有周波数、fは入力信号の周波数を示し、ωn=2πfnの関係がある。
Figure 0005152097
Figure 0005152097
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本実施形態では、まずLPFのカットオフ周波数fc(LPFの入力信号の振幅に対する出力信号の振幅の比が1/√2となる周波数)を、クランク軸36の1回転(360°CA)に対応する周波数とする。すなわち、エンジン回転速度Ne(rpm)を用いて、カットオフ周波数fcを、「Ne/60(Hz)」に設定する。これにより、カットオフ周波数fcは、エンジン回転速度が高くなるほど高くなる。これは、フィルタ処理されたA/Fセンサ58a、58bの出力信号(フィルタ出力信号)の応答性を目標空燃比が変化する過渡時等における要求に対して過度に低くならないようにしつつも、フィルタ出力信号の精度(平均空燃比の絶対値を示す精度)を極力高く保つための設定である。ここでは、フィルタ出力信号に、平均空燃比を高精度に表現することが要求されているものの、気筒別の空燃比の変動についてはこれを表現する要求がないことに鑑み、カットオフ周波数fcを、センサへと排気が排出される周期の逆数である上記変動周波数よりも低周波とした。なお、上記の式(1)に示した固有周波数fn及び減衰係数ζは、カットオフ周波数fcに基づき設定することができる。
詳しくは、ECU76がディジタル演算処理手段であることに鑑み、本実施形態では、上記LPFとして、上記式(1)で表される伝達関数に対応した下式(4)で表されるディジタルフィルタ(FIRフィルタ)を用いる(x[n]:入力データ(フィルタ処理前のA/Fセンサ58a、58bの出力信号)、y[n]:出力データ(フィルタ処理後のセンサ出力信号)、h[k]:フィルタ係数)。ここで、フィルタ係数h[k]は、カットオフ周波数fcにて定まるため、フィルタ係数h[k]をエンジン回転速度に応じて可変設定する。
Figure 0005152097
図3に、上記手法で算出されたフィルタを用いた場合におけるセンサ出力信号の変動成分の除去の効果を示す。詳しくは、図3(a)に、フィルタ処理前におけるA/Fセンサ58a、58bの出力信号のスペクトルを示し、図3(b)に、フィルタ処理後におけるセンサ出力信号のスペクトルを示す。なお、図3では、エンジン回転速度が2000rpmの場合において、カットオフ周波数fcをクランク軸36の1回転に対応する周波数である33Hzとして設定したフィルタの効果を示す。図示されるように、フィルタ処理前においては、排気バルブ44の開閉に起因したA/Fセンサ58a,58bに加わる排気圧力の変動周波数である50Hz及びその高調波の周波数である100Hz、150Hzの周波数成分が大きくなっている。一方、フィルタ処理後においては、カットオフ周波数fcである33Hz以上の周波数成分が除去されている。
また図4に、フィルタ処理前後におけるA/Fセンサ58a、58bの出力信号波形を示す。図示されるように、フィルタ処理前のA/Fセンサ58a、58bの出力信号には、排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動成分が混入している。これに対し、フィルタ処理後のセンサ出力信号は、上記変動成分が除去されたものとなっている。
図2の説明に戻り、続くステップS12では、フィルタ出力信号に基づき、上述した平均F/B制御を行う。
続くステップS14では、気筒別F/B制御を行う。ここでは、まず、A/Fセンサ58a,58bのそれぞれによる空燃比の検出対象となる気筒から排気が排出されるタイミング(排気バルブ44の開弁タイミング)を基準タイミングとして、その排気がA/Fセンサ58a(58b)に到達するまでに要すると想定される規定時間の経過時のタイミングにおけるA/Fセンサ58a(58b)の出力信号(生値)を計測する。そして、#1〜#3(#4〜#6)の3気筒の計測値の平均値に各計測値をフィードバック制御すべく、各気筒に対応する燃料噴射量の補正係数を各別に算出する。ここで、上記各計測値は、対応する気筒の空燃比を高精度に示す値とは限らない。しかし、各気筒間での計測値のばらつきは、各気筒間の空燃比のばらつきと強い相関を有する。これは、エンジン10の運転状態が同一なら、上記基準タイミングから上記規定時間だけ経過したタイミングでA/Fセンサ58a,58bに加わる排気圧力が互いに等しいと考えられるからである。このため、上記平均値へと各計測値を制御するための上記補正係数は、気筒別空燃比のばらつきを抑制するための操作量となる。
なお、ステップS14の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)カットオフ周波数fcをクランク軸36の1回転に対応する周波数として設定し、このカットオフ周波数fcに基づき算出されたLPFを用いてA/Fセンサ58a、58bの出力信号をフィルタ処理した。これにより、平均F/B制御の制御量である平均空燃比から排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動成分を除去することができ、センサ出力信号の変動が平均F/B制御に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
(2)排気バルブ44の開弁タイミングから、その排気がA/Fセンサ58a(58b)に到達するまでに要すると想定される規定時間が経過するタイミングにおけるA/Fセンサ58a(58b)の出力信号を計測し、これら計測値間のばらつきを小さくするように燃料噴射量を気筒毎に操作した。これにより、気筒別空燃比の把握精度を高くすることなく、各気筒間での気筒別空燃比のばらつきを簡易に低減することができる。更に、平均F/B制御との協働により、各気筒の空燃比を高精度に目標空燃比に制御することもできる。
(3)A/Fセンサ58a、58bの下流側に排気タービン62bが設けられる構成とした。この場合、排気タービン62bよりも上流側のA/Fセンサ58a、58b近傍の排気圧力が大きく変動しやすく、センサ出力信号の変動量が増大しやすい。このため、排気タービン62bの上流側にA/Fセンサ58a、58bが設けられる本実施形態は、上記フィルタ処理の利用価値が高い。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、フィルタ出力信号に基づく平均空燃比と目標空燃比との差が大きくなる状況であると判断されてから、上記平均空燃比と目標空燃比との差が所定以下となるまでの期間に渡って、上記カットオフ周波数fcを高くする処理を行う。これは、フィルタ出力信号に基づく平均空燃比が、カットオフ周波数fc以上の周波数の実空燃比の変化に反応できないことに鑑みたものである。つまり、平均空燃比と目標空燃比との差が大きくなると、実空燃比の変化に対してフィルタ出力信号に応答遅れが生じることで、実空燃比の変化を平均空燃比の変化として把握するまでに時間差が生じ、実空燃比の変化を速やかに把握することができなくなるおそれがある。この場合、フィードバック制御における平均空燃比と目標空燃比との偏差に基づく積分項が増大することに起因してオーバーシュートやアンダーシュートが生じる等、平均空燃比の制御性が低下し、ひいては排気特性が悪化するおそれがある。そこで本実施形態では、フィルタ出力信号に基づく平均空燃比と目標空燃比との差が大きくなり、平均空燃比が目標空燃比に収束するまでの期間である過渡期において、上記カットオフ周波数fcを高くすることで、フィルタ出力信号の応答遅れを極力抑制し、平均空燃比の制御性の低下を極力抑制する。
図5に、本実施形態にかかるLPFのカットオフ周波数fcを高くする処理の手順を示す。この処理は、ECU76によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図5において先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
この一連の処理では、まずステップS16において平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況にあるか否かを判断するためのものである。本実施形態では、以下(ア)〜(ウ)のいずれかの制御が行われると判断される場合、上記差が大きくなる状況にあると判断する。
(ア)加速増量制御:この制御は、エンジン10の加速応答性を向上させるべく目標空燃比をリッチ側(λ=1.0→0.9)に設定するためのものである。このため、加速増量制御が行われると判断される場合、平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況にあると判断する。
(イ)触媒早期暖機制御:この制御は、エンジン10の起動直後の排気特性の悪化を抑制すべく目標空燃比をリーン側に設定するためのものである。このため、触媒早期暖機制御が行われると判断される場合、平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況にあると判断する。なお、触媒早期暖機制御とは、第1の三元触媒70及び第2の三元触媒72の温度が低温である場合に、これら触媒の温度を活性温度へと到達させるべく排気温度を上昇させる制御である。
(ウ)燃料カットの停止制御:燃料カット制御では通常、燃料カットの開始制御が行われることで空燃比F/B制御を停止し、燃料カットの停止制御が行われることで空燃比F/B制御を開始する。ここで、燃料カットの開始制御が行われることで、実空燃比が「吸気量/0」(非常に大きな値)となる。このため、その後燃料カットの停止制御が行われることで、空燃比F/B制御が開始される時点における目標空燃比λaと平均空燃比λmとの差は、大きい傾向にある。このため、燃料カットの停止制御が行われると判断される場合、平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況にあると判断する。
ステップS16において平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況にあると判断された場合、ステップS18に進み、カットオフ周波数fcを、通常のフィルタ処理(先の図2のステップS10の処理)で設定されるカットオフ周波数fLから、この周波数fLよりも高い周波数fH(>fL)とする処理を行う。この処理は、LPFのカットオフ周波数fcを高くすることで、実空燃比の変化に対するフィルタ出力信号の応答遅れを極力抑制するためのものである。なお、カットオフ周波数fHを高くしすぎると、排気脈動に起因するA/Fセンサ58a、58bの出力信号の変動成分を適切に除去することができなくなるおそれがある。このため、フィルタ出力信号の応答遅れが平均空燃比λmの制御性に及ぼす影響と、排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動が上記制御性に及ぼす影響との双方の影響を極力小さくできるようにカットオフ周波数fHを決定するのが望ましい。ちなみに、空燃比の更新周期が各気筒における燃料噴射間の間隔であることに鑑みれば、カットオフ周波数fHは、A/Fセンサ58a,58bのそれぞれの検出対象となる気筒間での排気の排出間隔の逆数以下の値とすることが望ましい。
続くステップS20では、平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差の絶対値が所定値Δ以下であるか否かを判断する。この処理は、平均空燃比λmが目標空燃比λaへと収束したか否かを判断するためのものである。
ステップS18において平均空燃比λmが収束すると判断された場合には、ステップS10に進み、カットオフ周波数fcをfHからfLとすることで、通常のフィルタ処理を行う。
なお、ステップS10の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
このように本実施形態では、フィルタ出力信号に基づく平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況であると判断されてから平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が所定値Δ以下となるまでの期間に渡って、カットオフ周波数fcを高くすることで、平均空燃比λmの応答遅れを極力抑制することができ、実空燃比の変化を平均空燃比λmの変化として極力速やかに把握することができる。これにより、気筒別空燃比F/B制御における積分項の増大を極力抑制し、平均空燃比λmの制御性の低下を極力抑制することができ、ひいてはエンジン10の発生トルクや排気特性を速やかに要求されるものとすることができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、平均空燃比と理論空燃比との差が大きくなるほど、2次のLPFの減衰係数ζを大きくする処理を行う。これは、A/Fセンサ58a、58bの構造に起因して、実空燃比と理論空燃比とのずれが大きいと排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動量が増大することに鑑みたものである。つまり、加速増量制御や、触媒早期暖機制御、燃料カットの停止制御が行われる場合、実空燃比と理論空燃比との差が大きくなり、排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動量が増大する。このため、実空燃比と理論空燃比とのずれが大きい場合、LPFの減衰係数ζを大きくすることで、排気圧力の変動周波数付近におけるLPFの振幅特性を小さくし、A/Fセンサ58a、58bの出力信号から排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動成分の除去度合いを大きくする。
図6に、本実施形態にかかるLPFの減衰係数変更処理の手順を示す。この処理は、ECU76によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS22においてフィルタ出力に基づく平均空燃比と理論空燃比とのずれを検出する。この処理は、排気脈動に起因してA/Fセンサ58a、58bの出力信号の変動が大きくなる状況にあるか否かを把握するためのものである。
続くステップS24では、検出された平均空燃比と理論空燃比とのずれに応じて減衰係数ζを変更する処理を行う。具体的には、上記ずれ(の絶対値)が大きいほど、減衰係数ζを大きくする。一方、上記ずれが0又は0付近である場合には、減衰係数ζを変更しない。なお、減衰係数ζが過度に大きいと、排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動成分の除去度合いが大きくなるものの、LPFの位相特性の位相遅れが大きくなることで、フィルタ出力信号の応答遅れが大きくなるおそれがある。このため、フィルタ出力信号の応答遅れが平均空燃比の制御性に及ぼす影響と、排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動が上記制御性に及ぼす影響との双方の影響を極力小さくできるように減衰係数ζを大きくするのが望ましい。
なお、ステップS24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
このように本実施形態によれば、平均空燃比と理論空燃比とのずれが大きくなるほどLPFの減衰係数ζを大きくすることで、排気脈動に起因するA/Fセンサ58a、58bの出力信号の変動が大きくなる状況において、センサ出力信号から排気脈動に起因するセンサ出力信号の変動成分を好適に除去することができ、ひいては平均空燃比の誤差をいっそう好適に抑制することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・空燃比をフィードバック制御する手段としては、積分項を備えるものに限らず、これを備えないものであってもよい。
・上記第1の実施形態では、2次のLPFを用いてA/Fセンサ58a、58bをフィルタ処理したがこれに限らない。例えば、更に高次又は1次のLPFを用いてフィルタ処理してもよい。更に、バンドパスフィルタであってもよい。この場合、1燃焼サイクルに対応する時間の逆数以上であって且つ上記カットオフ周波数fc以下の周波数を透過させるものであることが望ましい。
・カットオフ周波数fcの設定手法としては、クランク軸36の1回転(360°CA)に対応する周波数として設定するものに限らず、フィルタ出力信号に基づく平均空燃比の把握精度や、平均空燃比の制御性についての要求に応じて適宜設定すればよい。すなわち例えば、排気脈動に起因したA/Fセンサ58a、58bの出力信号の変動の抑制を優先させたい場合には、カットオフ周波数fcを、上記クランク軸36の1回転に対応する周波数よりも低い周波数としてもよい。ここでは、カットオフ周波数fcを、1燃焼サイクルに対応する時間の逆数以上とすることが望ましい。また例えば、A/Fセンサ58a、58b出力信号の応答性を優先させたい場合には、上記クランク軸36の1回転に対応する周波数よりも高い周波数としてもよい。ここでは、カットオフ周波数fcを、A/Fセンサ58a、58bのそれぞれの空燃比の検出対象気筒における排気バルブ44の開弁周期(240°CA)に対応する周波数以下の周波数とすることが望ましい。特に、カットオフ周波数fcを空燃比の検出対象気筒の排気バルブ44の開弁周期に対応する周波数とするなら、フィルタ出力信号に基づき気筒別空燃比を把握することも可能となる。
ちなみに、実際のフィルタ処理においては、カットオフ周波数fc近傍において、これよりも低周波の信号の強度が低減される。このため、例えば、カットオフ周波数fcを、A/Fセンサ58a、58bのそれぞれの空燃比の検出対象気筒における排気バルブ44の開弁周期に対応する周波数よりも大きい周波数成分を抑制したい場合には、カットオフ周波数fcをこの周波数よりもやや高めに設定するなどしてもよい。
・上記第2の実施形態では、加速増量制御、触媒早期暖機制御又は燃料カットの停止制御が行われると判断された場合、平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差が大きくなる状況にあると判断したがこれに限らない。例えば、フィルタ出力信号に基づく平均空燃比λmと目標空燃比λaとの差の絶対値を検出し、絶対値が所定の閾値よりも大きいと判断された場合、上記差が大きくなる状況にあると判断してもよい。
・上記第3の実施形態では、平均空燃比と理論空燃比とのずれに応じて、LPFの減衰係数ζを変更(大きく)することで、排気圧力の変動周波数付近のLPFの振幅特性を小さくしたがこれに限らない。例えば、LPFのカットオフ周波数fcを低くすることで、上記振幅特性を小さくするようにしてもよい。
・エンジンシステムとしては、上記第1の実施形態の図1に例示した2つの排気通路56a、56bを備えるものに限らず、例えば、エンジン10の各気筒の燃焼室28とつながる排気マニホールドの集合部と、ターボチャージャ60とが1つの排気通路で接続されているものであってもよい。この場合であっても、A/Fセンサがターボチャージャ60の上流側に設けられるなら、A/Fセンサ近傍の排気圧力が大きく変動しやすく、センサ出力の変動量が増大しやすいため、本発明の適用が有効である。
・排気中の特定成分の濃度を検出するガスセンサとしては、A/Fセンサに限らず、例えば排気中のNOx濃度を検出するNOxセンサや、排気中のHC濃度を検出するHCセンサ、O2センサであってもよい。排気脈動に起因してこれらセンサの出力が変動するおそれがあるなら、本発明の適用が有効である。
・内燃機関としては、ガソリンエンジンのような火花点火式内燃機関に限らない。例えばディーゼルエンジン等の圧縮着火式内燃機関であってもよい。
10…エンジン、14…エアフローメータ、44…排気バルブ、46…クランク角度センサ、52…排気側カム角センサ、56a、56b…排気通路、58a、58b…A/Fセンサ、60…ターボチャージャ、62b…排気タービン、76…ECU(ガスセンサの信号処理装置の一実施形態)。

Claims (8)

  1. 内燃機関の排気通路に備えられ、同排気通路内の排気中の特定成分の濃度を検出するガスセンサに適用されるガスセンサの信号処理装置において、
    前記ガスセンサは、空燃比センサであり、
    前記ガスセンサの出力信号の高周波成分を除去するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比をその目標値に制御する空燃比制御手段と、
    を備え、
    前記フィルタ手段は、前記除去する高周波成分の最低周波数を、前記内燃機関の運転状態に応じて可変設定する可変手段を備え、また、実際の空燃比と前記目標値との差が大きくなる状況であると判断されてから前記実際の空燃比と前記目標値との差が所定以下となるまでの期間に渡って、前記可変設定される最低周波数を高くするものであることを特徴とするガスセンサの信号処理装置。
  2. 内燃機関の排気通路に備えられ、同排気通路内の排気中の特定成分の濃度を検出するガスセンサに適用されるガスセンサの信号処理装置において、
    前記ガスセンサは、空燃比センサであり、
    前記ガスセンサの出力信号の高周波成分を除去するフィルタ手段を備え、
    同フィルタ手段は、前記除去する高周波成分の最低周波数を、前記内燃機関の運転状態に応じて可変設定する可変手段を備え、また、前記フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比と理論空燃比との差が大きくなるほど、前記最低周波数以上の周波数の前記ガスセンサの出力信号の除去度合いを大きくするものであることを特徴とするガスセンサの信号処理装置。
  3. 前記フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比をその目標値に制御する空燃比制御手段を更に備え、
    前記フィルタ手段は、実際の空燃比と前記目標値との差が大きくなる状況であると判断されてから前記実際の空燃比と前記目標値との差が所定以下となるまでの期間に渡って、前記可変設定される最低周波数を高くするものであることを特徴とする請求項記載のガスセンサの信号処理装置。
  4. 前記フィルタ手段は、加速増量制御、触媒早期暖機制御又は燃料カットの停止制御が行われると判断された場合、前記実際の空燃比と前記目標値との差が大きくなる状況であると判断するものであることを特徴とする請求項1又は3記載のガスセンサの信号処理装置。
  5. 前記可変手段は、前記内燃機関の機関回転速度が高くなるほど、前記除去する高周波成分の最低周波数を高くするものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサの信号処理装置。
  6. 前記可変手段は、前記可変設定される最低周波数を、前記内燃機関の燃焼室から前記ガスセンサへと排出される排気の排出間隔に対応する周波数以下の周波数とするものであることを特徴とする請求項記載のガスセンサの信号処理装置。
  7. 前記排気通路における前記ガスセンサの下流側には、過給機の排気タービンが備えられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスセンサの信号処理装置。
  8. 前記内燃機関は、多気筒内燃機関であり、
    前記ガスセンサは、前記内燃機関の各気筒に接続される排気通路の集合部に備えられる空燃比センサであり、
    前記フィルタ手段の出力信号に基づく空燃比をその目標値に制御すべく、前記内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射弁を操作する操作手段と、
    前記フィルタ手段に入力される前の前記ガスセンサの出力信号に基づき、前記内燃機関の各気筒間の相対的な空燃比のずれを把握する把握手段と、
    前記各気筒間の相対的な空燃比のずれが小さくなるように、前記燃料噴射弁の操作量を補正する操作量補正手段とを更に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスセンサの信号処理装置。
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