JP5138391B2 - 制御弁式鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

この発明は工程流動性に優れ、高容量でかつ長寿命の制御弁式鉛蓄電池に関する。
制御弁式鉛蓄電池は、一定電圧で微弱電流を流し、常に充電状態を100%に保つようにフロート充電下で使用されている。この制御弁式鉛蓄電池は、過充電時に正極で発生する酸素ガスを負極で吸収することにより補水を無用とした鉛蓄電池であり、電解液はガラスマットのセパレータに含浸させてある。
制御弁式鉛蓄電池は、正極板と負極板をガラスマットを介して交互に積層し、同極性同士の極板の耳部を溶接して極板群とする。これを電槽セルに収容し、これに開口部を設けた蓋を溶接或は接着剤で接着し、この蓋の開口部から電解液を注入したのち前記開口部にゴム弁(制御弁)を被せて製造されている。
最近、制御弁式鉛蓄電池は、通信、電力、防災などバックアップ電源用或は電力貯蔵用など様々な分野で使用されている。こうした制御弁式鉛蓄電池には10年を超える長寿命化と容積エネルギー密度の向上が求められている。制御弁式鉛蓄電池の容積エネルギー密度を向上させるためには、基板厚みを薄くして極板群を多枚数化することが知られている。これは基板厚みを薄くすることで電解液の極板内部への浸透拡散を容易にして活物質の利用率を高めようとするものである。しかしながら、基板の厚みを薄くすると大型電池の場合は基板が大きいために、基板が撓んで熟成・乾燥時に極板が懸垂台から落下したり、撓みによって移送ロボットが極板をうまく把持できないといった工程流動時での不具合が生じていた。
また、極板群を多枚数化すると、極板の反応面積が大きくなるためにフロート充電時の電流が増加し、その結果水の電気分解が増加し正極から酸素ガスが多量に発生し、負極での酸素ガス吸収が不完全になり、ガスが電池外部に放出されて電解液量が減少するいわゆる液枯れが発生した。また、フロート充電電流が大きくなると正極基板の腐食が進行して電池寿命が短くなるといった問題もあった。
そこで、この液枯れを防ぐために負極活物質にリグニンスルホン酸塩を添加してこれを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1。)。
特開2002−117856号(特許請求の範囲)
しかしながら、本発明者が行った実験では、この先行技術によっても前記の液枯れは十分な効果をあげることは出来なかった。そこでこの発明は、基板の面積と厚みの割合を規定して基板の撓みの問題を解決するとともに、フロート充電電流を正極板と負極板の活物質量の比を規定することによって低減し、これによって工程流動性に優れかつ高容量、長寿命の制御弁式鉛蓄電池を得ようとするものである。
この発明は、鉛を主成分とする正極基板および負極基板にそれぞれ正極活物質および負極活物質を充填してなる正極板または負極板の所要数をセパレータを介して交互に積層して極板群とし、この極板群を電槽に収容し、これに電解液を注入して所定の電槽化成を施した制御弁式鉛蓄電池において、前記負極基板の耳部および足部を除く活物質充填面の片面の面積S(mm2)と厚みT(mm)の比[S/T](mm)が4.0×10〜4.5×10 (mm)で、かつ前記極板群の正極活物質量U(g)と負極活物質量V(g)の比[U/V]が1.5〜1.7であることを特徴とする制御弁式鉛蓄電池である。
この発明によれば、基板の面積と厚みの割合を規定して基板が撓み難くなったので、製造工程で熟成・乾燥時に基板が懸垂台から落下したり、移送ロボットが極板を把持できないなどの不具合もなくなり工程流動性が優れたものとなる。また、正極活物質と負極活物質の質量比を所定の値としたので、フロート充電電流が減少して液枯れや正極基板の腐食が防止され電池寿命が向上するようになった。さらに、この発明によると、極板の薄型多枚数化により活物質の利用率が向上し、また放電反応面積が増大して放電特性が向上するといった効果も生じるようになった。
この発明の制御弁式鉛蓄電池は、鉛を主成分とする正極基板および負極基板に、それぞれ正極活物質および負極活物質を充填した正極板または負極板の所要数をセパレータを介して交互に積層した極板群の所要数を電気接続して電槽に収容し、これに電解液を注入して電槽化成を施したものである。
そして、前記負極基板の耳部および足部を除く活物質を含むペースト充填面の片面の面積S(mm)と同負極基板の厚みT(mm)の比[S/T](mm)を4.0×10〜4.5×10 (mm)とするものである。これによって基板を撓み難くするものである。この値が4.0×10 (mm)未満では大型極板での薄型化が不十分であり活物質の利用率が向上せず、また4.5×10 (mm)を超えると大型極板では極板の厚さがあまりにも薄くなり極板の撓みが生ずるようになる。発明者は、多くの実験の結果、負極基板の耳部および足部を除く活物質を含むペースト充填面の片面の面積S(mm)と、同負極基板の厚みT(mm)の比[S/T](mm)を4.0×10〜4.5×10 (mm)とすることで、基板を撓み難くしたうえでかつ極板の多枚数化できることを見出したものである。
さらにこの発明では、極板群の正極活物質量U(g)と負極活物質量V(g)の比[U/V]を1.5〜1.7とするものである。U/Vが1.5未満では負極活物質の量が多すぎて負極の分極が大きくならず、フロート充電電流が十分に低減せず液枯れが生ずることがある。またこれが1.7を超えると負極活物質の量が少なすぎて初期放電特性が低下する。ちなみに、従来の制御弁式鉛蓄電池の前記のS/T値は3.0×10以下であり、また前記のU/V値は1.4以下であった。
正極板または負極板は、所要数をセパレータを介して交互に積層した極板群の所要数を電気接続して電槽に収容し、これに電解液を注入して電槽化成を施したものでこの点は従来と同様である。
(実施例1)
Ca系鉛合金の負極格子基板に水および希硫酸で混合した活物質ペーストを充填し、熟成・乾燥を行って未化成の負極板を得た。この未化成の負極板と公知の未化成のペースト式正極板とをガラス長繊維を抄造してなるガラスマットを介して交互に積層し、この積層体の同極板耳同士をバーナー方式で溶接して極板群を得た。次に、この極板群の所要数をポリプロピレン製の電槽内に挿入し、この電槽に蓋をヒートシールした。続いて前記の電槽蓋の液注入口から電槽内に比重1.21(20℃)の希硫酸(電解液)を極板群に含浸するする程度に注入し、所定の条件で電槽化成を行って2V−1300Ahの制御式鉛蓄電池を製造した。
この制御式鉛蓄電池の負極板は、耳部および足部を除くペースト充填面の片面(S)の寸法は縦400mm、横150mm(面積,60000mm)とし、厚み(T)は1.50mmとした。この制御式鉛蓄電池について初期放電特性と工程流動性を調べた。
工程流動性は、ペースト状活物質を充填した基板を懸垂台に載せて熟成・乾燥する際に懸垂台から落下せず、かつ移送ロボットによる把持が良好に行えたものは工程流動性が優れる(O)とした。また、基板が懸垂台からの落下やロボットによる把持不良が300枚中で1枚でもあれば工程流動性が劣る(×)とした。
(実施例2)
負極の格子基板の厚みを1.34mmとした以外は実施例1と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造し、実施例1と同様の調査を行った。
(比較例1)
負極の格子基板の厚みを2.00mmとした以外は実施例1と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造し、実施例1と同様の調査を行った。
(比較例2)
負極の格子基板の厚みを1.71mmとした以外は実施例1と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造し、実施例1と同様の調査を行った。
(比較例3)
負極の格子基板の厚みを1.20mmとした以外は実施例1と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造し、実施例1と同様の調査を行った。実施例1,2および比較例1ないし3において、各電池の正極活物質量、負極活物質量、電解液はいずれも一定とし、また各極板群の正極活物質量(U)と負極活物質量(V)の比は1.6とした。従って、基板の厚さの薄いものは極板群は多枚数構成となっている。
実施例1,2および比較例1ないし3の初期放電特性、工程流動性の結果を表1に示す。初期放電特性は放電電流130Aで終止電圧1.8Vまで放電して測定した。表1の値は実施例1の測定値を100としたときの比較値で示した。
Figure 0005138391
表1から明らかなように、本発明の実施例1,2は、いずれも[S/T](mm)の値が本発明の範囲内にあるために工程流動性が優れている。また、極板群が多枚数構成で、かつ[U/V]値が本発明の範囲内であるために初期放電特性も優れている。
これに対し、比較例1,2は、負極板の厚みが厚いために活物質量は同一であるが利用率が減少し電解液拡散が悪く初期放電特性が劣っている。また、比較例3は負極板の厚みが薄いために極板が撓み工程流動性が劣っている。
(実施例3)
極板群の正負極板の活物質量の比[U/V]を1.5とした外は実施例1と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造した。その初期放電特性、フロート充電電流および電池寿命を調べた。電池寿命は60℃加速寿命試験(充電電圧2.23VのCV充電)により行い、放電容量が初期放電容量の70%にまで低下した時点で寿命とした。フロート充電電流は寿命試験中のフロート電流値を測定した。
(実施例4)
極板群の正負極の活物質ペーストの質量比[U/V]を1.7とした外は実施例3と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造した。これを実施例3と同様にして評価した。
(比較例4)
極板群の正負極の活物質ペーストの質量比[U/V]を本発明の規定範囲外の1.4とした外は実施例3と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造した。これを実施例3と同様にして評価した。
(比較例5)
極板群の正負極の活物質ペーストの質量比[U/V]を本発明の規定範囲外の1.8とした外は実施例3と同様にして制御弁式鉛蓄電池を製造した。これを実施例3と同様にして評価した。
実施例3,4および比較例4,5の評価の結果を表2に示した。また、先にあげた実施例1のものについても同様の評価を行ってこれを表2に併せて示した。なお、初期放電特性およびフロート充電電流は実施例1の測定値を100としたときの比較値で示した。
Figure 0005138391
表2から明らかなように、実施例1,3,4はいずれも初期放電特性が高く、フロート充電電流が低減したために電池寿命が長くなり良好は電池特性を示した。これに対し、比較例4は負極活物質が多すぎたためにフロート充電電流が増加して液枯れが生じ電池寿命が短かった。比較例5は負極活物質量が少なすぎた為に初期放電特性が低下した。

Claims (1)

  1. 鉛を主成分とする正極基板および負極基板にそれぞれ正極活物質および負極活物質を充填してなる正極板または負極板の所要数をセパレータを介して交互に積層して極板群とし、この極板を電槽に収容し、これに電解液を注入して所定の電槽化成を施した制御弁式鉛蓄電池において、
    前記負極基板の耳部および足部を除く活物質充填面の片面の面積S(mm)と厚みT(mm)の比[S/T](mm)が4.0×10〜4.5×10 (mm)で、かつ前記極板群の正極活物質量U(g)と負極活物質量V(g)の比[U/V]が1.5〜1.7であることを特徴とする制御弁式鉛蓄電池。
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