JP5131701B2 - 有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイス並びにそれらの製造方法 - Google Patents

有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイス並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイス、並びに、有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイスの製造方法に関するものであり、特に、溶接法を利用することができ、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイス、並びに、有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイスの製造方法に関するものである。
近年、有機半導体材料を用いた有機ELデバイス、有機FET(電界効果トランジスタ)デバイス、有機薄膜光電変換デバイス等の薄膜デバイスが注目されており、実用化が始まっている。
これらの薄膜デバイスに用いる有機半導体材料の基本的物性の中では、キャリアの移動度が重要である。例えば、有機ELデバイスにおいて、キャリアの移動度は、電荷の輸送効率に影響するので、高効率での発光や低電圧での駆動のために重要である。また、有機FETデバイスにおいて、キャリアの移動度は、スイッチング速度や駆動する装置の性能に直接影響するので、有機FETデバイスの実用化のために重要である。
また、これらの薄膜デバイスに用いる有機半導体材料の特徴を活かすためには、有機半導体材料を種々の有機溶媒に溶かし、塗布法、スピンコート法、インクジェット法等により薄膜デバイスを作製する溶接法の利用が重要である。溶接法を用いれば、基板に紙やプラスチック等を用いることができるようになるため、有機半導体デバイスの軽量化、柔軟化が可能になり、従来から用いられている真空蒸着法を用いたときと比べて、製造工程の簡便化や製造に要する装置類の大幅なコストダウンを行うこと、大面積の有機半導体デバイスの製造が可能となる。溶接法を利用するためには、溶媒に可溶で、かつ、大気中で安定に存在する有機半導体材料が必要となる。
従来、有機半導体材料においては、無機半導体材料と同様に、p型(ホール輸送)トランジスタに用いる有機半導体材料(以下、「p型材料」という)とn型(電子輸送)トランジスタに用いる有機半導体材料(以下、「n型材料」という)とが知られている。例えば、CMOS(相補形金属酸化膜半導体)等の論理回路を作製するためには、p型材料およびn型材料が必要となる。
これまでに、p型材料については多くの研究がなされ、溶媒に可溶で、かつ、大気中で安定に駆動する材料の報告がなされている。一方、n型材料については、蒸着法を利用している場合にはp型材料と大差ないキャリア移動度が得られるため、蒸着法を利用しているn型材料については多くの研究がなされている。
ここで、非特許文献1には、次に示す一般式(11)
Figure 0005131701
で表される構造を有し、有機FETデバイスに用いることができる有機半導体材料が示されている。この有機半導体材料は、蒸着法を利用しており、p型とn型両方の性質を有する有機半導体材料である。
また、非特許文献2にも、蒸着法を利用しており、p型とn型両方の性質を有する有機半導体材料が示されている。
また、非特許文献3には、次に示す一般式(12)
Figure 0005131701
で表される構造を有する有機半導体材料が示されている。この有機半導体材料は、可溶性を有し、p型とn型両方の性質を有する有機半導体材料である。
Pappenfus,T.M.;Chesterfield,R.J.;Friesbie,C.D.;Mann,K.R.;Casado,J.;Raff,J.D.;Miller,L.L.;J.Am.Chem.Soc.2002,124,4184−4185. Chesterfield,R.J.;Newman,C.R.;Pappenfus,T.M.;Ewbank,P.C.;Haukaas,M.H.;Mann,K.R.;Miller,L.L.;Frisbie,C.D.Adv.Mater.2003,15,1278−1282. Extensive Quinoidal Oligothiophenes with Dicyanomethylene Groups at Terminal Positions as Highly Amphoteric Redox Molecules,T.Takahashi,K.Matsuoka,K.Takimiya,T.Otsubo,Y.Aso,J.Am.Chem.Soc.2005,127(25),8928−8929.
しかしながら、溶接法を利用可能で、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料は極めて希少であり、材料開発の難易度が非常に高いため、ほとんど提供されていないのが実情である。
ここで、非特許文献1,2に示される有機半導体材料は、キノイド構造であるため、共役拡張に伴い溶解性の低下が見られる。そのため、化合物の精製、加工が困難であるという問題が生じる。したがって、溶接法を利用可能で大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料とはなり得ない。
また、非特許文献3に示される有機半導体材料は、ヘテロ環の6量体であり、非特許文献1に示されるヘテロ環の3量体に比べて溶解性の向上は見られたものの、FET特性(電界効果トランジスタ特性)の低下および伝導性の低下が見られる。それゆえ、溶接法を利用可能な材料とはなり得るが、半導体材料としての特性を十分に備えたものとはいえない。
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的は、溶接法を利用可能で、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料およびこれを用いた有機半導体デバイス並びにそれらの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、溶接法を利用可能で、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料等を提供するために、一般式(1)で表される化合物の新たな用途を独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の有機半導体材料は、上記課題を解決するために、一般式(1)
Figure 0005131701
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および/または硫黄原子に置換されていてもよく、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよいアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がアリール基に置換されたアルキル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表し、R,Rはそれぞれ独立して硫黄原子またはセレン原子を表し、a,bおよびcは整数を表す)で表される化合物を含むことを特徴としている。
上記構成によれば、上記化合物がシクロペンタン縮環型チオフェンを有しているので、キノイド構造の共役拡張に伴う溶解性の低下を防ぐことができる。また、シクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンをシクロペンタン縮環型チオフェンの末端に導入しているので、シクロペンタン縮環型チオフェン中のかさ高い官能基が原因となる分子間力低下による伝導性の低下を防ぐことができる。
また、上記構成によれば、上記化合物が電子を吸引するシアノ基により極性構造を持つため、電子がキャリアとして働くn型トランジスタ動作が可能となる。さらに、可溶性部分である置換シクロペンタン縮環型チオフェン部位を部分的に導入しているため、薄膜における密な充填が可能となり、大気中でも安定に駆動可能となる。
すなわち、上記構成によれば、可溶性部分であるシクロペンタン縮環型チオフェンと、分子間の重なりを大きくできる部分であるシクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンと、極性を有するシアノ基とを組み合わせた構造を取るため、溶接法を利用可能で、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料を提供することができる。
また、本発明に係る有機半導体材料は、上記官能基の炭素数が1以上18以下であり、かつ、a+b+cが6以下であることが好ましい。
上記官能基の炭素数が1以上18以下である場合、比較的炭素数が小さいため、上記化合物が上記官能基を有する場合であっても、分子全体のかさ高さを低くすることができる。したがって、上述した分子間力低下による伝導性の低下をより防ぐことができ、膜をより均一化することができる。
さらに、a+b+cが6以下であり、分子量が比較的小さいため、上記化合物を容易に合成することができる。
また、本発明に係る有機半導体材料は、上記RとRとが同一の原子または官能基であり、上記RとRとが同一の原子または官能基であり、上記RとRとが同一の原子であって、かつ、a=cであることが好ましい。
上記構成によれば、上記化合物が対称分子となる。対称分子では骨格合成時に、分子中央のシクロペンタン縮環チオフェン部位の両側に無置換チオフェンまたはセレノフェン部位等を同時に連結させることができるため、チオフェン鎖等の伸長が容易であり、さらに、短いステップで最終生成物まで合成することができるというメリットがある。また、対称分子を半導体材料として使用する場合には、薄膜中で分子配向の乱れを起こす確率が低くなるため、高移動度を発現するには望ましい構造である。
また、本発明に係る有機半導体材料は、一般式(1)中、RおよびRは硫黄原子を表すことが好ましい。
また、本発明に係る有機半導体材料は、一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子を表すことが好ましい。
上記構成によれば、ブトキシメチル基が有機溶媒に溶解しやすいので、溶解性の低下をより防ぐことができる。また、水素原子はかさが低いので、分子全体のかさ高さを低くすることができる。したがって、上述した分子間力低下による伝導性の低下をより防ぐことができ、膜をより均一化することができる。
また、本発明に係る有機半導体材料は、一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRがメチル基、RおよびRが硫黄原子を表すことが好ましい。
メチル基は水素原子よりはかさ高いが、一般的な官能基の中ではかさが低いので、分子全体のかさ高さを低くすることができる。したがって、上述した分子間力低下による伝導性の低下をより防ぐことができ、膜をより均一化することができる。
また、本発明の有機半導体材料は、電子移動度が10−3cm/Vs以上であることが好ましい。
これにより、溶接法を利用することができるn型材料としては、従来技術にはないような高い移動度となり、半導体デバイスへの応用が可能となる。
従来、溶接法を利用した有機半導体デバイスは、蒸着法を利用した有機半導体デバイスと比較して電子移動度が低く、10−5cm/Vs以上10−4cm/Vs以下程度のものが多かった。これに対して、本発明の有機半導体材料を利用した有機半導体デバイスは、電子移動度が10−3cm/Vs以上であるので、大気中で動作可能なn型有機半導体デバイスとしては、移動度が相当に高いことになる。
また、本発明の有機半導体材料は、n型トランジスタ材料であることが好ましい。
これにより、キャリアとしての電子が輸送層内を自由に動くので、半導体デバイスを製造する際に、電極等を形成しやすくなる。
また、本発明の有機半導体材料は、n型トランジスタ材料と、p型トランジスタ材料とを含む両性トランジスタ材料であることが好ましい。
これにより、塗布法によりCMOS等の論理回路を作製することが可能となり、半導体デバイスへの応用範囲を広げることができる。
また、本発明の有機半導体材料は、大気中で駆動可能であることが好ましい。また、本発明の有機半導体材料は、常温で駆動可能であることが好ましい。また、本発明の有機半導体材料は、常圧で駆動可能であることが好ましい。
従来、溶接法を利用することができるn型材料は、大気中で駆動することができなかった。しかし、本発明のn型材料は、上記化合物が電子を吸引するシアノ基により極性構造を持つため、シアノ基の方に電子が移動しやすくなる。これにより、電子移動度が高くなり、大気中でも駆動することができ、さらに、標準的な環境状態である常温および/または常圧でも駆動することができ、有機トランジスタの実用化に向けて重要な材料とすることができる。
また、本発明の有機半導体材料は、アニール処理されていることが好ましい。
これにより、電子移動度等のFET特性を向上させることができ、半導体デバイスへの応用範囲を広げることができる。
また、本発明の有機半導体デバイスは、上記有機半導体材料を含むことが好ましい。
上記有機半導体材料は有機溶媒への溶解性に優れるので、溶接法を用いて有機半導体デバイスを製造することが可能である。また、上記有機半導体材料は、伝導性等の特性に優れる。したがって、上記有機半導体材料は軽量、柔軟であり、大面積であり、特性の良好な有機半導体デバイスを提供することができる。
また、本発明の有機半導体デバイスは、有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイスであることが好ましい。
有機キャリア輸送層を有することにより、キャリアが輸送層内を自由に動くので、発光デバイスを製造する際に、電極等を形成し易くなる。
また、発光層を有することにより、電圧印加時に陽極側から注入された正孔と陰極側から注入された電子とが再結合する場を提供することができる。
また、有機キャリア輸送層および発光層を有することにより、キャリアが輸送層内を自由に動き、電圧印加時に陽極側から注入された正孔と陰極側から注入された電子とを発光層まで輸送することができる。これにより、有機半導体デバイスを発光させることができる。
また、本発明の有機半導体デバイスは、有機半導体層を有する薄膜トランジスタであることが好ましい。
薄膜トランジスタであることにより、膜が薄いため、有機半導体デバイスの小型化、軽量化を図ることができ、製造工程の簡便化や製造に要する装置類の大幅なコストダウンを行うこともできる。
また、本発明の有機半導体デバイスの製造方法は、有機半導体材料を溶接法により基板に配置する工程を含むことが好ましい。
これにより、蒸着法を利用する場合に比べて、製膜プロセスの簡便化および半導体材料の使用量の低減を図ることができる。また、本発明に係る有機半導体材料を用いるため、低コストで、軽量、柔軟および大面積である有機半導体デバイスを製造することができる。さらに、有機半導体デバイスを製造する場合に、製造工程の簡便化や製造に要する装置類の大幅なコストダウンを行うことが可能となる。
また、本発明の有機半導体材料の製造方法は、一般式(2)
Figure 0005131701
(式中、R,Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、R,R10はそれぞれ独立してハロゲン原子を表す)で表される化合物と、一般式(3)
Figure 0005131701
(式中、R11はアルキル基を表し、R12は硫黄原子またはセレン原子を表す)で表される化合物とを反応させて、一般式(4)
Figure 0005131701
(式中、R,Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、R12は硫黄原子またはセレン原子を表す)で表される化合物を製造し、その後に、該一般式(4)で表される化合物のエステル基を還元処理する工程を含むことが好ましい。また、上記有機半導体材料の製造方法は、一般式(4)中、R12は硫黄原子を表すことがより好ましい。
従来の有機半導体材料の製造方法では、可溶性置換基を持つ中央のシクロペンタン縮環型チオフェン環を先に合成するため、エステル基の還元処理によるアルコール化を行い、それに続いて、ヒドロキシル基のエーテル化を行っていた。しかし、上記還元処理の段階で、チオフェン環上の2つのハロゲン原子が水素化されるため、該水素原子を再度ハロゲン化することが必要であった。これに対して、本発明の有機半導体材料の製造方法では、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物とのカップリング反応を先に行うため、再度のハロゲン化工程という一工程を減らすことができる。
さらに、エーテル部分の鎖長変化を行う場合、一般式(4)で表される化合物のエステル基を還元処理することにより製造される化合物を共通中間体とし、種々の誘導化が容易となる。その結果、n−ブチル誘導体に加え、n−ヘキシル、n−オクチル、n−デシルの各誘導体を合成することが可能となる。
また、本発明の有機半導体材料の製造方法は、一般式(2)中、RおよびRはエチル基、RおよびR10は臭素原子、一般式(3)中、R11はブチル基、R12は硫黄原子、一般式(4)中、RおよびRはエチル基、R12は硫黄原子を表すことが好ましい。
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分判るであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。
本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のMS,IRチャートである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のH−NMRチャートである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料の幾何異性体の構造を表す図である。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のMS,IRチャートである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のH−NMRチャートである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料の電子吸収スペクトルと吸収波長との関係を表すグラフである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のHOMO−LUMOのエネルギーを表すグラフである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のFET特性を評価するために作製したFET素子を表す側面図および上面図である。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のFET特性の結果を表すグラフである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のFET特性の結果を表すグラフである。 非特許文献3にかかる有機半導体材料のFET特性の結果を表すグラフである。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のFET特性を評価するために作製したOTFT素子を表す斜視図である。 本発明の一実施形態にかかる有機半導体材料のFET特性の結果を表すグラフである。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得るものである。
<有機半導体材料>
本発明の有機半導体材料は、一般式(1)
Figure 0005131701
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および/または硫黄原子に置換されていてもよく、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよいアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がアリール基に置換されたアルキル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表し、R,Rはそれぞれ独立して硫黄原子またはセレン原子を表し、a,bおよびcは整数を表す)で表される化合物を含むことを特徴としている。
その中で、一般式(1)で表される化合物は、可溶性部分であるシクロペンタン縮環型チオフェンと、分子間の重なりを大きくできる部分であるシクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンと、極性を有するシアノ基とを組み合わせた構造を取るため、溶接法を利用可能で、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能であるという特性を有する。
有機半導体材料は、一般式(1)で表される化合物のみからなっていてもよいし、一般式(1)で表される化合物の特性を阻害しない限り、他の物質を含んでいてもよい。他の物質を含める方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、一般式(1)で表される化合物と他の物質とを加熱攪拌することにより有機半導体材料を合成する方法を挙げることができる。
従来公知の物質として、例えば、アンモニア、有機アミン等の塩基;ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等の無機塩;ナトリウム、カリウム等の金属原子等のドーパントを挙げることができる。
上記ドーパントを加えることで有機半導体材料の導電性を調整することができる。ドープの方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、気相ドーピング、液相ドーピング、固相ドーピング等を挙げることができるがこれらに限られるものではない。
シクロペンタン縮環型チオフェンとは、チオフェンにシクロペンタンを縮合させ、縮合環としたものをいう。縮合環とは、2個またはそれ以上の環を有する環式化合物において、おのおのの環が2個またはそれ以上の原子を共有する場合の環式構造をいう。本発明のシクロペンタン縮環型チオフェンは、二環式の縮合環である。
シクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンとは、シクロペンタンを縮合していないチオフェンまたはセレノフェンをいう。
一般式(1)で表される化合物は、シクロペンタン縮環型チオフェンとシクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンとを有することにより、溶解性の低下を防ぐことができ、伝導性の低下を防ぐことができる。
上記化合物は、シクロペンタン縮環型チオフェンとシクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンとの結合の仕方により、幾何異性体を有する。上記幾何異性体としては、一般式(1)として記載されている真ん中のチオフェンから見て両端のチオフェンまたはセレノフェンが反対の向きにあるtrans−trans体に限定されず、真ん中のチオフェンから見て両端のチオフェンまたはセレノフェンが同じ向きと反対の向きにあるtrans−cis体または真ん中のチオフェンから見て両端のチオフェンまたはセレノフェンが同じ向きにあるcis−cis体であってもよく、いずれも安定な構造である。
その中でも、一般式(1)で表される化合物中のRとRとの距離およびRとRとの距離が大きいという理由から、trans−trans体が最も安定な構造である。上記化合物は、単一の異性体からなるものであってもよいし、また、上記幾何異性体の混合物であってもよい。
シアノ基とは、炭素原子と窒素原子とが三重結合により結合している置換基であり、電子を吸引し、分子上のマイナスの電荷を安定化できる。シアノ基を有する化合物としては、ニトリル等が挙げられる。
また、上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、高い電気陰性度と小さな原子半径をもつという理由から、フッ素、塩素が好ましく用いられる。
また、上記アルキル基は、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および/または硫黄原子に置換されていてもよく、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい。
アルキル基としては、直鎖型、分岐型、環状型のアルキル基であれば特に制限はなく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、有機溶媒に溶解しやすいという理由から、n−ペンチル基が好ましく用いられる。
アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および/または硫黄原子に置換されたアルキル基には、アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子に置換されたアルキル基、アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が硫黄原子に置換されたアルキル基、並びに、アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および硫黄原子に置換されたアルキル基が含まれる。例えば、n−ブトキシメチル基、n−ブトキシエチル基、n−ブトキシプロピル基、n−ブチルチオメチル基、n−ブチルチオエチル基、n−ブチルチオプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、有機溶媒に溶解しやすいという理由から、n−ブトキシメチル基が好ましく用いられる。
アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたアルキル基としては、塩化メチル基、塩化エチル基、n−塩化プロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、試薬の入手が容易で、合成・精製が容易であるという理由から、塩化エチル基が好ましく用いられる。
また、上記アルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、試薬の入手が容易で、合成・精製が容易であるという理由から、n−ブトキシ基が好ましく用いられる。
また、上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、試薬の入手が容易で、適度な溶解性を有するという理由から、n−ブチルチオ基が好ましく用いられる。
また、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、試薬の入手が容易で、合成・精製が容易であるという理由から、フェニル基が好ましく用いられる。
また、上記アルキル基であってアルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がアリール基に置換されたアルキル基として、ベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、フェネチル基等が挙げられるがこれらに限定されない。その中でも、試薬の入手が容易で、合成・精製が容易であるという理由から、ベンジル基が好ましく用いられる。
上記R〜Rは、それぞれ別々の原子または官能基であってもよい。また、上記R〜Rのうち、2つまたは3つの原子または官能基が同じものであってもよく、上記R〜Rの全ての原子または官能基が同じものであってもよい。その中でも、合成の工程数を少なくでき、また、薄膜中において分子配列に欠陥を生じにくいという理由から、R=RかつR=Rであることが好ましい。また、上記官能基の炭素数は、特に限定されるものではないが、分子全体のかさ高さを低くするという理由から、1以上18以下であることが好ましい。
また、上記R,Rは、有機溶媒に溶解しやすいという理由から、ブトキシメチル基またはペンチル基であることが好ましく、ブトキシメチル基であることが特に好ましい。また、上記R,Rは、分子のかさが低いという理由から、水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。したがって、上記R,Rがブトキシメチル基であり、かつ、上記R,Rが水素原子であることが特に好ましい。また、上記R,Rは、FETにした場合に特性が優れているという理由から、硫黄原子であることが好ましい。
上記a,bおよびcは、整数であれば特に限定されるものではないが、電子移動度が高くなるという理由から、できるだけ大きい整数であることが好ましい。ただし、化合物として合成することを容易にするという観点からは、ヘテロ環の数、すなわち、チオフェンの数(a+b+c)が6以下であることが好ましい。また、上記a,bおよびcは、合成を効率的に行い、精製も容易であるという理由から、a=cであることが好ましい。
本発明の有機半導体材料は、電子移動度が10−3cm/Vs以上であることが好ましい。これにより、溶接法を利用することができるn型材料としては、従来技術にはないような高い移動度となり、半導体デバイスへの応用が可能となる。
電子移動度は、ゲート誘電体としてのSiOにゲート電界を印加した結果、有機半導体層中に生じるキャリア種の電気的特性を表現する式(a)から求めることができる。
Id=ZμCi(Vg−Vt)/2L・・・(a)
ここで、Idは飽和したソース・ドレイン電流値、Zはチャネル幅、Ciは絶縁体の電気容量、Vgはゲート電位、Vtはしきい電位、Lはチャネル長であり、μが決定する移動度(cm/Vs)である。Ciは用いたSiO絶縁膜の誘電率、Z、LはFET素子の素子構造よりに決まり、Id、VgはFET素子の電流値の測定時に決まり、VtはId、Vgから求めることができる。式(a)に各値を代入することで、それぞれのゲート電位での移動度を算出することができる。ここで、低電界において、キャリア(電子または正孔)の平均走行速度は電界に比例して増加し、その比例係数のことを移動度という。
本発明の有機半導体材料は、n型トランジスタ材料として作用することができる。これにより、キャリアとしての電子が輸送層内を自由に動くので、半導体デバイスを製造する際に、電極等を形成しやすくなる。また、n型トランジスタ材料とp型トランジスタ材料とを組み合わせることによって、両性トランジスタ材料として作用することもできる。これにより、塗布法によりCMOS等の論理回路を作製することが可能となり、半導体デバイスへの応用範囲を広げることができる。
上記p型半導体材料としては、従来公知の材料を用いることができる。例えば、GaAs,MnAs,ZnTe,MnTe等を挙げることができる。
n型トランジスタ材料とp型トランジスタ材料との組み合わせは、例えば、両方の材料を非対称に接合することによって行うことができる。具体的には、n型半導体材料とp型半導体材料とを接触させると、n型半導体材料からp型半導体材料に向かって電子が移動し、p型半導体材料からn型半導体材料に向かって正孔が移動し、電子と正孔とが互いにぶつかることにより接合が起こる。これにより、n型半導体材料とp型半導体材料との組み合わせが行われる。
なお、n型トランジスタ材料とは、n型(電子輸送)トランジスタに用いる有機半導体材料のことをいい、p型トランジスタ材料とは、p型(ホール輸送)トランジスタに用いる有機半導体材料のことをいう。また、電子輸送とは、電子をキャリアとする輸送のことをいい、ホール輸送とは、ホール(正孔)をキャリアとする輸送のことをいう。また、キャリアとは、輸送物質を運び、膜内を自由に動くことのできる担体のことをいう。
本発明の有機半導体材料は、大気中で駆動可能であることが好ましく、常温および/または常圧で駆動可能であることが特に好ましい。本発明の有機半導体材料は、上記化合物が電子を吸引するシアノ基により電子受容能が高くなる。これにより、電子移動度が高くなり、大気中でも駆動することができ、さらに、標準的な環境状態である常温および/または常圧でも駆動することができる。
トランジスタの駆動とは、キャリア(電子または正孔)の移動をゲート電圧によりスイッチング(on/off)することをいい、大気中で駆動可能であるとは、大気中で封止材を必要とせずにキャリア移動をスイッチングできることをいう。さらに、キャリア移動度が大きい場合には、トランジスタのon時の電流が大きいといえる。
また、常温とは、標準環境温度のことをいい、25℃(298.15K)の状態である。また、常圧とは、標準環境圧力のことをいい、1bar(10Pa)の状態である。常温で駆動可能であるとは、25℃(298.15K)の状態でキャリアの移動をゲート電圧によりスイッチング(on/off)できることをいい、常圧で駆動可能であるとは、1bar(10Pa)の状態でキャリアの移動をゲート電圧によりスイッチング(on/off)できることをいう。また、常温および常圧で駆動可能であるとは、25℃(298.15K)および1bar(10Pa)の標準環境状態でキャリアの移動をゲート電圧によりスイッチング(on/off)できることをいう。
<有機半導体材料の合成方法>
上記化合物を合成する方法としては従来公知の方法を用いることができ、例えば、以下に示す合成方法によって合成することができる。なお、以下に具体的に記載しない合成方法については、従来公知の有機合成反応を用いることが可能である。
例えば、一般式(1)で表される化合物からなる有機半導体材料の合成方法としては、具体的な一例として、反応式(A)〜(C)より詳細には反応式(D)〜(R)に示された反応経路、または、反応式(S)、反応式(T)若しくは反応式(U)に示された反応経路で一般式(1)で表される化合物を合成し、その一般式(1)で表される化合物そのものを有機半導体材料とするか、または、その一般式(1)で表される化合物の特性を阻害しない限りにおいて、既に説明したような他の物質を含めることにより有機半導体材料とする。また、反応経路に記載されている数字は対応する化合物を表している。
具体的には、例えば、クロロ酢酸メチルを硫化ナトリウム九水和物と反応させることによりジメチルチオジアセテート(化合物1)を合成し、それを用いてシクロペンタン縮環型チオフェン(化合物7)を合成する。その末端にチオフェンを導入し、一般式(1)で表される化合物(化合物13,18)を合成し、その後、その一般式(1)で表される化合物(化合物13,18)を含む有機半導体材料を合成することができる。
詳細には、例えば、以下の(I)の方法で得られたモノマーユニットを用いて、(II),(III),(VII)の方法により合成することができる。また、例えば、以下の(IV)〜(VII)の方法により合成することができる。
<(I)モノマーユニット(シクロペンタン縮環型チオフェン)の合成>
上記化合物のモノマーユニットを合成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、クロロ酢酸メチルと硫酸ナトリウム九水和物とから7段階の反応を経て合成することができ、以下に示す反応式(A)で表すことができる。
Figure 0005131701
より詳細には、以下の反応式(D)に示すように、クロロ酢酸メチルを硫化ナトリウム九水和物と反応させることにより化合物1を合成し、その後、2,3−ブタンジオンを用いた従来公知のHinsberg脱水環化反応を行うことにより化合物2を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(E)に示すように、化合物2を従来公知の方法で脱炭酸臭素化することにより化合物3を合成し、さらに、従来公知の過酸化ベンゾイルを開始剤として従来公知の方法でラジカル臭素化を行うことにより化合物4を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(F)に示すように、化合物4とマロン酸ジエステルとの従来公知の分子内環化により化合物5を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(G)に示すように、従来公知の還元剤である水素化リチウムアルミニウムにより、化合物5のエステル基を還元することで、化合物6を合成することができる。さらに、n−臭化ブチルを用いて、従来公知のWilliamsonのエーテル化を行うことで、シクロペンタン縮環型チオフェンである化合物7を合成することができる。
Figure 0005131701
<(II)一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物)の合成>
一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物は、上記モノマーユニットである化合物7の臭素化を行った後、Stilleカップリングを行い、臭素化またはヨウ素化を行った後、ジシアノメチル基を導入して合成することができる。その合成方法は、以下に示す反応式(B)で表される。
Figure 0005131701
より詳細には、以下の反応式(H)に示すように、N−ブロモスクシンイミドを用いて化合物7を従来公知の方法で臭素化し、化合物8を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(I)に示すように、化合物8にn−ブチルリチウムを反応させ、塩化トリブチルスズを用いて従来公知の方法でスズ化を行うことで化合物9を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(J)に示すように、化合物8と化合物9とを従来公知の方法でStilleカップリング反応させることで、化合物10を合成することができる。その際、化合物10とスズとの分離が困難であるため、エタノールを用いて従来公知の方法で再結晶を行い精製することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(K)に示すように、N−ブロモスクシンイミドを用いて化合物10の従来公知の臭素化を行い、化合物11を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(L)に示すように、化合物11に従来公知の方法でジシアノメチル基を導入し、化合物13を合成することができる。
Figure 0005131701
また、以下の反応式(M)に示すように、N−ヨードスクシンイミドを用いて化合物10の従来公知のヨウ素化を行い、化合物12を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(N)に示すように、化合物12に従来公知の方法でジシアノメチル基を導入し、一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物)である化合物13を合成することができる。
Figure 0005131701
<(III)一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRがメチル基、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物)の合成>
一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRがメチル基、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物は、3種類の合成ルートで合成することができる。その合成方法は、以下に示す反応式(C)で表される。
Figure 0005131701
より詳細には、以下の反応式(O)に示すように、route1では、3−メチルチオフェンにn−ブチルリチウムを従来公知の方法で反応させた後、塩化トリブチルスズを用いて従来公知の方法でスズ化を行い、化合物15を合成することができる。また、route2では、3−メチルチオフェンからN−ブロモスクシンイミドを用いて従来公知の臭素化を行い、化合物14を合成することができる。化合物14にn−ブチルリチウムを従来公知の方法で反応させた後、塩化トリブチルスズをゆっくり滴下し従来公知の方法でスズ化を行い、化合物15を合成することができる。
Figure 0005131701
以下の反応式(P)に示すように、route3では、条件1として、化合物8にマグネシウムを大過剰用いたグリニヤー試薬を従来公知の方法で滴下し、溶媒にエーテル、触媒にNi(dppp)Clを用いて化合物16を合成することができる。また、条件2として、化合物8にマグネシウムを大過剰用いたグリニヤー試薬を従来公知の方法で滴下し、溶媒にTHF、触媒にPd(dppf)Clを用いて化合物16を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(Q)に示すように、N−ブロモスクシンイミドを用いて化合物16の従来公知の臭素化を行い、化合物17を合成することができる。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(R)に示すように、化合物17に従来公知の方法でジシアノメチル基を導入し、一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRがメチル基、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物)である化合物18を合成することができる。
Figure 0005131701
化合物18の精製は、従来公知のカラムクロマトグラフィー等を用いて行うことができ、再結晶はアセトン−アセトニトリル混合溶媒を用いて従来公知の方法で行うことができる。なお、カラムクロマトグラフィーでは従来公知の低活性シリカゲルを用いることができる。
<(IV)一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがヘキシロキシメチル基、オクチロキシメチル基またはデシロキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物)の合成>
一般式(1)中、RおよびRがヘキシロキシメチル基、オクチロキシメチル基またはデシロキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物は、以下に示す反応式(S)で合成することができる。
Figure 0005131701
反応式(S)に示すように、化合物24が共通中間体となり、一般式(1)で表される化合物である化合物27を合成することができる。そして、化合物27は、n−ヘキシル誘導体である化合物27a、n−オクチル誘導体である化合物27bおよびn−デシル誘導体である化合物27cを含んでいる。
Figure 0005131701
Figure 0005131701
Figure 0005131701
<(V)一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがヘキシロキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRがセレン原子、a,bおよびcが1で表される化合物)の合成>
後述するように、n−ヘキシル誘導体である化合物27aにおいて、優れたFET特性が得られたので、さらに改良する目的で、両端の無置換チオフェン環をセレノフェン環に置き換えた化合物の合成を行った。また、同様の方法で、n−オクチル誘導体の合成[後述する(VI)]も行った。
一般式(1)中、RおよびRがヘキシロキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRがセレン原子、a,bおよびcが1で表される化合物は、以下に示す反応式(T)で合成することができる。
Figure 0005131701
反応式(T)に示すように、一般式(1)で表される化合物である化合物32を合成することができる。
Figure 0005131701
<(VI)一般式(1)で表される化合物(一般式(1)中、RおよびRがオクチロキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRがセレン原子、a,bおよびcが1で表される化合物)の合成>
一般式(1)中、RおよびRがオクチロキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRがセレン原子、a,bおよびcが1で表される化合物は、以下に示す反応式(U)で表される。
Figure 0005131701
反応式(U)に示すように、一般式(1)で表される化合物である化合物38を合成することができる。
Figure 0005131701
<(VII)一般式(1)で表される化合物を含む有機半導体材料の合成>
化合物13,18,27a,27b,27c,32,38そのものを有機半導体材料とするか、または、化合物13,18,27a,27b,27c,32,38の特性を阻害しない限りにおいて、他の物質を含めることにより有機半導体材料を合成する。他の物質を含める方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、化合物13,18,27a,27b,27c,32,38と他の物質とを加熱攪拌することにより有機半導体材料を合成する方法を挙げることができる。
従来公知の物質として、例えば、アンモニア、有機アミン等の塩基;ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等の無機塩;ナトリウム、カリウム等の金属原子等のドーパントを挙げることができる。
<有機半導体デバイス>
本発明の有機半導体デバイスは、上記有機半導体材料を含むことを特徴としている。上記半導体デバイスの製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の製造方法を用いることができる。その中で、上記有機半導体材料を基板に配置する方法として、真空蒸着法または溶接法を用いることができる。ここで、溶接法とは、上記有機半導体材料を種々の有機溶媒に溶かし、塗布法、スピンコート法、インクジェット法等により半導体デバイスを作製する方法をいう。
よって、溶接法を利用するには、上記有機半導体材料は種々の有機溶媒に溶解することが必要とされる。
ここで、一般式(1)で表される化合物は、シクロペンタン縮環型チオフェンを有しているので、キノイド構造の共役拡張に伴う溶解性の低下を防ぐことができ、種々の有機溶媒に溶解しやすい。さらに、一般式(1)中のR,Rが溶解しやすい官能基であれば、シクロペンタン縮環型チオフェンが、より種々の有機溶媒により溶解しやすくなるので、より好ましい。
上記有機半導体デバイスは、具体的には、基板上に配置された上記有機半導体材料を含む半導体層と、それに接する2以上の電極とを備える。
上記有機半導体デバイスとしては、例えば、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、薄膜光電変換素子、色素増感太陽電池、薄膜トランジスタ(TFT)、有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイス等を挙げることができる。なお、上記トランジスタはユニポーラトランジスタ(電界効果トランジスタ)であってもバイポーラトランジスタであってもよい。ユニポーラトランジスタ(電界効果トランジスタ)とは、キャリアが一種類のトランジスタをいい、バイポーラトランジスタとは、キャリアが二種類のトランジスタをいう。
本発明の有機半導体材料は、シクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンをシクロペンタン縮環型チオフェンの末端に導入しているので、シクロペンタン縮環型チオフェン中のかさ高い官能基が原因で不均一となる膜を均一にすることができ、FET(電界効果トランジスタ)特性の低下を防ぐことができる。したがって、本発明の有機半導体材料は、電界効果トランジスタにより好適に利用される。そこで、以下では、電界効果トランジスタの態様と製造方法について説明する。
上記電界効果トランジスタの態様や製造方法は、本発明に係る有機半導体材料を用いることを除けば、例えば、特開2006−28055、または、特開2006−114701に開示されているものを例示することができる。
電界効果トランジスタとしては、例えば、基板上に配置された半導体層に接するソース電極とドレイン電極と、当該ソース電極とドレイン電極との間にゲート絶縁体層を介して当該半導体層上に接するゲート電極と、から構成される電界効果トランジスタを挙げることができる。
上記の構成によれば、上記ドレイン電極に一定の電圧を印加した状態で、上記ゲート電極に印加する電圧を変化させることで、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を制御することができる。以下に、上記の構成の電界効果トランジスタについてさらに詳細に説明する。
上記ソース電極、上記ドレイン電極および上記ゲート電極の材料は、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アルミニウム、チタン、マグネシウム等の金属;これらの金属を含む合金;酸化スズ、酸化インジウム、スズ(ITO)等の導電性の酸化物;シリコン、ゲルマニウム等の半導体;等を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ITOを用いることが好ましい。
また、上記ソース電極、上記ドレイン電極および上記ゲート電極の材料は、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。その中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の配置方法としては、上記材料を原料として、例えば、真空蒸着やスパッタリング等の方法を用いて配置した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて配置する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法等がある。
また、導電性ポリマーの溶液もしくは分散液、または、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により配置してもよい。さらに、導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法を用いてもよい。
また、上記電極の厚みは、作製する電界効果トランジスタの種類、構造等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記電界効果トランジスタの場合、電極の厚みは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.02μm以上0.1μm以下であることがより好ましい。0.01μm以上であることにより、電極として機能することができ、また、0.1μm以下であることにより、平滑性が維持できる。ただし、好ましい電極の厚みは種々の要素に影響されるため、これに限定されるものではない。
上記ゲート絶縁体層の材料としては絶縁体性を有する種々の化合物を用いることができる。例えば、無機化合物、無機酸化化合物、有機化合物を挙げることができる。上記無機化合物として、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を挙げることができる。また、上記無機酸化化合物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ等が挙げられる。また、上記有機化合物としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂等のポリマー;これらを組み合わせた共有重合体;等が挙げられる。
ゲート絶縁体層の配置方法としては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、印刷、インクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスを挙げることができる。特に有機化合物を用いてゲート絶縁体層を配置する方法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。また、これら絶縁体膜の膜厚としては、50nm以上3μm以下であることが好ましく、100nm以上1μm以下であることがより好ましい。
本発明の有機半導体材料は移動度に優れているので、上述のように、電界効果トランジスタの半導体層により好適に用いることができる。本発明に係る有機半導体材料を含む半導体層を上記基板に配置するには、真空蒸着法により基板上に配置することもできるが、シクロペンタン縮環型チオフェンを有しているので、溶接法を用いる場合でも、容易に基板上に配置することができる。
上記溶接法を用いることで、軽量、柔軟性および大面積である電界効果トランジスタを低コストで簡便に製造することができる。
本発明の有機半導体材料を含む電界効果トランジスタの製造方法は、特に限定されることなく、本発明の有機半導体材料を用いること以外は、従来公知の電界効果トランジスタの製造方法を用いることができる。
例えば、まず、真空蒸着法によって、酸化ケイ素のゲート絶縁体層をガラス製の基板上に配置する。次に、溶接法を用いて当該ゲート絶縁体層に有機半導体材料を含む半導体層を配置する。その後、基板に真空蒸着法を用いて金を材料とするソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を配置する。このような手順で電界効果トランジスタを製造することができる。
また、本発明の有機半導体材料を用いること以外の上記バイポーラトランジスタの態様と製造方法は、例えば、特開平10−214044に記載されている公知のものを例示することができる。具体的には、バイポーラトランジスタの画素は、透明絶縁基板、陽極、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、p型有機半導体層、n型有機半導体層、ベース電極、陰極から構成され、n型有機半導体からなる電子輸送層とp型有機半導体層、p型有機半導体層とn型有機半導体層とはそれぞれpn接合を形成していることが示されている。
また、本発明の有機半導体材料を用いること以外の上記ダイオードの態様や製造方法は、例えば、特開2002−289878に記載されている公知のものを例示することができる。具体的には、ダイオードは、互いに積層された、陽極側の正孔輸送能力を有する有機化合物からなる正孔輸送層と、陰極側の電子輸送能力を有する有機化合物からなる電子輸送層とからなり、接する正孔輸送層および電子輸送層間への電圧印加時に非線形電流電圧特性を有することが示されている。
また、本発明の有機半導体材料を用いること以外の上記のコンデンサの態様や製造方法は、例えば、特開2005−150705に記載されている公知のものを例示することができる。具体的には、表面に誘電体層を形成した細孔を有する導電体を一方の電極(陽極)とし、電解液中で通電手法によって導電体上に形成した半導体層を他方の電極(陰極)とするコンデンサの製造方法において、通電前に細孔内に半導体層形成用前駆体を含浸し、細孔内の半導体層形成用前駆体濃度を電解液中の半導体層形成用前駆体より高濃度にすることが示されている。
また、本発明の有機半導体材料を用いること以外の薄膜光電変換素子の態様や製造方法は、例えば、特開2006−060104に記載されている公知のものを例示することができる。具体的には、薄膜光電変換素子は、第1基体と、第1基体上に形成された第1電極と、第1基体に略平行な仮想面上で、間隔を置いて第1電極と隣接するように配置された第2電極と、少なくとも第1電極と第2電極との間に配置された光電変換層と、第1電極と第2電極と光電変換層とを間に挟んで、第1基体と対向するように配置された第2基体(透明保護膜)とを備えたものであることが示されている。
また、本発明の有機半導体材料を用いること以外の上記の色素増感太陽電池の態様や製造方法は、例えば、特開2004−047752に記載されている公知のものを例示することができる。具体的には、色素増感太陽電池は、側面形状がほぼ直角三角形をなす透光部材の、相互に直交する一方の面を太陽光線の入射面とするとともに、他方の面に太陽電池を縦姿勢で取付け、その透光部材の傾斜面を、入射した太陽光線の反射面としてなることが示されている。
また、本発明の有機半導体デバイスは、薄膜トランジスタ(TFT)であることが好ましい。薄膜トランジスタであることにより、膜が薄いため、有機半導体デバイスの小型化、軽量化を図ることができる。薄膜トランジスタの製造方法は特に限定されないが、有機半導体材料を種々の有機溶媒に溶かし、塗布法、スピンコート法、インクジェット法等により薄膜トランジスタを作製する溶接法の利用が好ましい。溶接法を用いれば、基板に紙やプラスチック等を用いることができるようになるため、有機半導体デバイスの軽量化、柔軟化が可能になる。本発明に係る有機半導体材料は、溶接法を用いる場合でも容易に基板上に配置することができるので、薄膜トランジスタの軽量化、柔軟化等を図る上で非常に有用である。
薄膜トランジスタの膜厚は、デバイスの構造、大きさに応じて適宜選択すればよい。例えば、20nm以上1000nm以下の膜厚が一般的に用いられているが、これに限定されるものではない。「薄膜」は、可能な限り薄い膜が好ましく、有機半導体に用いるに好ましい薄膜は、1nm以上1μm以下、好ましくは、5nm以上500nm以下、より好ましくは、10nm以上500nm以下の範囲の膜厚を有する。
また、本発明の有機半導体デバイスは、有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイスであることが好ましい。例えば、有機キャリア輸送層のみを有する発光デバイスであってもよいし、発光層のみを有する発光デバイスであってもよいし、有機キャリア輸送層および発光層を有する発光デバイスであってもよい。
有機キャリア輸送層を有することにより、キャリアが輸送層内を自由に動くので、半導体デバイスを製造する際に、電極等を形成し易くなる。また、発光層を有することにより、電圧印加時に陽極側から注入された正孔と陰極側から注入された電子とが再結合する場を提供することができる。さらに、有機キャリア輸送層および発光層を有することにより、キャリアが輸送層内を自由に動き、電圧印加時に陽極側から注入された正孔と陰極側から注入された電子とを発光層まで輸送することができ、有機半導体デバイスを発光させることができる。
上記有機キャリア輸送層とは、キャリアを発光層まで輸送する層である。有機キャリア輸送層としては、正孔輸送層と電子輸送層の2種類を挙げることができる。上記正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を発光層まで輸送する機能を有するものであり、上記電子輸送層は、陰極から注入された電子を発光層まで輸送する機能を有するものである。
また、上記発光層とは、発光材料を含む半導体層であって、電圧印加時に陽極側から正孔を、陰極側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供することができるものである。上記発光材料には、以下に示すような、各種低分子の発光材料、各種高分子の発光材料があり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
上記低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物等の従来公知の化合物を挙げることができる。
また、上記高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキルフェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)等の従来公知の化合物を挙げることができる。
また、有機キャリア輸送層に上記発光材料を包含させることで、発光層がなく有機キャリア輸送層を有する発光デバイスを製造することができる。
すなわち、正孔輸送層に発光材料を包含させた場合には、正孔輸送性発光層と電子輸送層とを含む発光デバイスとなる。また、電子輸送層に発光材料を包含させた場合には、電子輸送性発光層と正孔輸送層とを含む発光デバイスなる。この場合、正孔輸送性発光層と電子輸送層との界面付近、電子輸送性発光層と正孔輸送層との界面付近が、それぞれ発光層として機能する。
また、本発明の有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイスの具体例として、有機EL素子を例示することができる。なお、本発明の有機半導体材料を用いること以外の上記の有機EL素子の態様や製造方法としては、例えば、特開2006−199909に記載されている公知のものを例示することができる。具体的には、上記有機EL素子は、基板と、基板上に設けられた陽極層と、陽極上に設けられた本発明の有機半導体材料を含む半導体層と、当該半導体層上に設けられた陰極層と、各層を覆うように設けられた保護層とから構成することができる。
上記半導体層は、有機キャリア輸送層および/または発光層を有している。さらに、上記有機キャリア輸送層は、正孔輸送層と電子輸送層との2層を含んでいる。上記半導体層に有機キャリア輸送層および発光層を有している場合、当該半導体層は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順で陽極上に配置されている。上記正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を発光層まで輸送する機能を有するものであり、上記電子輸送層は、陰極から注入された電子を発光層まで輸送する機能を有するものである。
上記の構成によれば、陽極と陰極との間に通電(電圧を印加)すると、正孔輸送層中を正孔が、また、電子輸送層中を電子が移動し、発光層において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層では、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出することで発光する。
また、上記半導体層は、発光層がなく有機キャリア輸送層を有するものであってもよい。上記の構成によれば、当該有機キャリア輸送層に、上述の正孔輸送性発光層、電子輸送性発光層を用いることができる。この場合、正孔輸送性発光層と電子輸送層との界面付近、電子輸送性発光層と正孔輸送層との界面付近が、それぞれ発光層として機能する。正孔輸送性発光層を用いた場合には、陽極から正孔輸送性発光層に注入された正孔が電子輸送層によって閉じこめられ、また、電子輸送性発光層を用いた場合には、陰極から電子輸送性発光層に注入された電子が電子輸送性発光層に閉じこめられるため、いずれも正孔と電子との再結合効率を向上させることができるという利点がある。
また、上記半導体層は、有機キャリア輸送層がなく発光層を有するものであってもよい。上記の構成によれば、本発明の有機半導体材料と上述の発光材料とを含む発光層を用いることができる。
ここで、上記基板は、有機EL素子の支持体となるものであり、この基板上に上述した各層が配置されている。上記基板の構成材料としては、透光性を有し、光学特性が良好な材料を用いることができる。
このような材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような各種樹脂材料、各種ガラス材料等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
上記基板の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上10mm以下であるのがより好ましい。
上記陽極は、上記正孔輸送層に正孔を注入する電極である。また、この陽極は、上記発光層からの発光を視認し得るように、実質的に透明(無色透明、有色透明、半透明)とされている。このような陽極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
陽極の厚さは、特に限定されないが、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、50nm以上150nm以下であるのがより好ましい。陽極の厚さが薄すぎると、陽極としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、実用に適さなくなるおそれがある。
一方、上記陰極は、上記電子輸送層に電子を注入する電極である。このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
陰極の厚さは、1nm以上1μm以下であるのが好ましく、100nm以上400nm以下であるのがより好ましい。陰極の厚さが薄すぎると、陰極としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極が厚過ぎると、有機EL素子の発光効率が低下するおそれがある。
本発明の有機半導体材料は上記半導体層の正孔輸送層、発光層および電子輸送層の各層に用いることができる。したがって、本発明の有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイスは、上記半導体層のどれか1つの層に配置されているもの、複数の層に配置されているもの、または、全ての層に配置されているものを含む。
本発明の有機半導体材料を上述の半導体層の各層へ配置するには、真空蒸着法により配置することもできるが、上述したような溶接法を用いて半導体層の各層へ配置することが好ましい。上記溶接法を用いることで、軽量、柔軟性および大面積である有機EL素子を低コストで簡便に製造することができる。
なお、各層同士の間には、任意の目的の層が設けられていてもよい。例えば、正孔輸送層と陽極との間には、陽極からの正孔の注入効率を向上させる正孔注入層を設けることができる。また、電子輸送層と陰極との間には、陰極からの電子の注入効率を向上させる電子注入層等を設けることができる。このように、有機EL素子に正孔注入層および電子注入層を設ける場合には、この正孔注入層および電子注入層の構成材料として、本発明の有機半導体材料を用いることができる。
有機EL素子を構成する各層は保護層によって覆われていることが好ましい。この保護層は、有機EL素子を構成する各層を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。保護層を設けることにより、有機EL素子の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果が得られる。
上記保護層の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、保護層の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、保護層と各層との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、本発明の半導体デバイスの製造方法においては、上記有機半導体材料をアニール処理することが好ましい。これにより、溶接法を利用することができるn型材料の電子移動度の向上を図ることができる。
アニール処理とは、材料の融点(または分解点)以下まで温度を上げ、その後、時間をかけて徐々に冷却する処理のことをいう。アニール処理は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記有機半導体材料を、ガス、石油または電気を熱源としたバッチ式のアニール炉を用いて、80℃以上200℃以下で1時間処理する方法が好ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
一般式(1)で表される化合物を合成した実施例を以下に示す。
<(I)モノマーユニット(シクロペンタン縮環型チオフェン)の合成>
以下の反応式(D)に示すように、クロロ酢酸メチルを硫化ナトリウム九水和物と反応させることにより化合物1を収率47%で合成し、その後、2,3−ブタンジオンを用いたHinsberg脱水環化反応を行うことにより化合物2を収率50%で合成した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(E)に示すように、化合物2を脱炭酸臭素化することにより化合物3を収率84%で合成し、さらに、過酸化ベンゾイルを開始剤としてラジカル臭素化を行うことにより化合物4を収率80%で合成した。なお、それぞれの反応は、定量的に進行した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(F)に示すように、化合物4とマロン酸ジエステルとの分子内環化により化合物5を合成した。
Figure 0005131701
上記反応式(F)に示す反応は、表1に示す条件で行った。
Figure 0005131701
表1において、条件1では、化合物4 10gにトルエン−DMF溶媒96mlを加えて0.24mol/l(以下、「M」という)とした溶液と、マロン酸ジエチル3.66mlにトルエン溶媒75mlを加えて0.32Mとした溶液とを、60℃で反応させ、分子内環化により化合物5を収率22%で合成した。この条件では、マロン酸ジエチル同士がClaisen縮合反応をするため、化合物5の収率は低くなった。
条件2では、化合物4 20gにトルエン−DMF溶媒128mlを加えて0.37Mとした溶液と、マロン酸ジエチル7.30mlにトルエン溶媒100mlを加えて0.48Mとした溶液とを、70℃で反応させ、分子内環化により化合物5を収率32%で合成した。
条件3では、化合物4 10gにTHF溶媒60mlを加えて0.38Mとした溶液と、マロン酸ジエチル3.66mlにTHF溶媒60mlを加えて0.4Mとした溶液とを、60℃で反応させ、分子内環化により化合物5を収率63%で合成した。条件1と条件3とを比較すると、トルエン−DMF溶媒をTHF溶媒に変えることにより、収率は約40%上がることが分かった。
条件4では、化合物4 5gにTHF溶媒200mlを加えて0.06Mとした溶液と、マロン酸ジエチル1.83mlにTHF溶媒20mlを加えて0.6Mとした溶液とを、65℃(還流)で反応させ、分子内環化により化合物5を収率73%で合成した。条件3と条件4とを比較すると、反応温度を60℃から65℃(還流)に変えることにより、収率は若干上がることが分かった。
条件5では、化合物4 10gにTHF溶媒200mlを加えて0.13Mとした溶液と、マロン酸ジエチル3.66mlにTHF溶媒20mlを加えて1.2Mとした溶液とを、65℃(還流)で反応させ、分子内環化により化合物5を収率67%で合成した。
条件6では、化合物4 20gにTHF溶媒200mlを加えて0.23Mとした溶液と、マロン酸ジエチル7.30mlにTHF溶媒20mlを加えて2.4Mとした溶液とを、65℃(還流)で反応させ、分子内環化により化合物5を収率64%で合成した。条件4と条件5,6とを比較すると、マロン酸ジエチルの濃度を高くすることにより、収率は若干下がることが分かった。マロン酸ジエチルの濃度を高くすると、反応系内のマロン酸ジエチルの量が多くなり、マロン酸ジエチル同士がClaisen縮合反応をするため、化合物5の収率は低くなる。
つまり、この反応では、マロン酸ジエチルの希薄溶液を用いて滴下時間を長くすることで、選択的に化合物5を生成することができる。したがって、温度、溶媒、溶液濃度を変化させた結果、温度や溶液濃度の変化では化合物5の収率には大きな影響はなく、溶媒の変化が最も影響することが分かる。なぜなら、この反応自体が極性反応であり、THFを溶媒として用いたことで、水素化ナトリウムがマロン酸ジエチルのα−水素を引き抜いた時に発生するアニオンが安定化されるためであると考えられる。
その後、以下の反応式(G)に示すように、水素化リチウムアルミニウムにより、化合物5のエステル基を還元することで、化合物6を収率74%で合成した。さらに、n−臭化ブチルを用いて、Williamsonのエーテル化を行うことで、化合物7を収率97%で定量的に合成した。
Figure 0005131701
<(II)一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRが水素原子、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物の合成>
以下の反応式(H)に示すように、N−ブロモスクシンイミドを用いて化合物7を臭素化し、化合物8を収率92%で合成した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(I)に示すように、化合物8にn−ブチルリチウムを反応させ、塩化トリブチルスズを用いてスズ化を行うことで化合物9を収率87%で合成した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(J)に示すように、化合物8と化合物9とをStilleカップリング反応させることで、化合物10を収率88%で合成した。その際、化合物10とスズとの分離が困難であるため、エタノールを用いて再結晶を行い精製した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(K)に示すように、N−ブロモスクシンイミドを用いて化合物10の臭素化を行い、化合物11を収率86%で合成した。その際、室温で反応を行うと、末端チオフェンのβ位が臭素で置換されたトリブロモ体やテトラブロモ体を生成したので、氷浴下で反応させることで化合物11を高収率で得ることができた。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(L)に示すように、化合物11にジシアノメチル基を導入し、化合物13を収率72%で合成した。
Figure 0005131701
また、以下の反応式(M)に示すように、N−ヨードスクシンイミドを用いて化合物10のヨウ素化を行い、化合物12を収率88%で合成した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(N)に示すように、化合物12にジシアノメチル基を導入し、化合物13を収率38%で合成した。
Figure 0005131701
ここで、反応式(L)に示すブロモ体からの化合物13の生成では、中程度の収率で反応が進行したのに対し、反応式(N)に示すヨード体からの化合物13の生成では低収率であった。低収率の原因としては、2N−HClを用いて酸化反応を行う際、遊離したヨウ素が酸化反応の邪魔をすることにより酸化反応が進行しにくかったからであると考えられる。そのため、一旦、カラムクロマトグラフィーで不純物を除去した後、再度2N−HClを加えて、TLC板で反応を追いながら終夜攪拌したところ、化合物13の精製を確認した。
ブロモ体およびヨード体の両方から化合物13を生成することが可能であるが、ヨード体から精製を行うと低収率であり、還流および攪拌時間を多く必要とするため、ブロモ体から化合物13を合成することが好ましいと分かった。
化合物13の精製は、カラムクロマトグラフィーで行い、再結晶はアセトン−アセトニトリル混合溶媒で行った。なお、カラムクロマトグラフィーでは低活性シリカゲルを用いた。
図1は、化合物13の再結晶後のMS,IRチャートを示すものである。MSチャートから化合物13の分子イオンピークがわかる。また、IRチャートから化合物13がニトリル基を有していることがわかる。
また、図2は、化合物13の再結晶後のH−NMRチャートを示すものである。H−NMRチャートから、シクロペンタン環およびチオフェン環由来の水素のピークは複雑化していた。つまり、MS,IRチャートから副生成物等は確認できないので、化合物13には幾何異性体が存在していることが分かった。
ここで、図3は、幾何異性体の構造を示すものである。図3に示すように、真ん中のチオフェンから見て両端のチオフェンが反対の向きにあるものをtrans−trans体とし、真ん中のチオフェンから見て両端のチオフェンが同じ向きと反対の向きにあるものをtrans−cis体とし、真ん中のチオフェンから見て両端のチオフェンが同じ向きにあるものをcis−cis体とした。さらに、同種核2D−NOE−NMR法(NOESY)により、trans−trans体とtrans−cis体とcis−cis体との存在比は、2:3:1であることがわかった。
なお、全ての幾何異性体は、同程度の結晶性を持つため、再結晶での分離が難しい。一方、化合物13の内側のβ位にメチル基を導入した化合物18(以下に示す)では、メチル基とシクロペンタン環のメチレン水素との相互作用により、末端のチオフェンの回転を制御することができ、化合物18を単一成分として得ることができる。
<(III)一般式(1)中、RおよびRがブトキシメチル基、RおよびRがメチル基、RおよびRが硫黄原子、a,bおよびcが1で表される化合物の合成>
以下の反応式(O)に示すように、route1では、3−メチルチオフェンにn−ブチルリチウムを反応させた後、塩化トリブチルスズを用いてスズ化を行い、化合物15を収率53%で合成した。しかし、route1では、5位に置換基を有する化合物の方が優先的に得られた。
また、route2では、3−メチルチオフェンからN−ブロモスクシンイミドを用いて臭素化を行い、化合物14を収率61%で合成した。化合物14にn−ブチルリチウムを反応させた後、塩化トリブチルスズをゆっくり滴下しスズ化を行い、化合物15を収率74%で合成した。route2では、2位に置換基を有する化合物の方が優先的に得られた。しかし、5位に置換基を有する化合物も少量得られた。
ここで、5位に置換基を有する化合物が得られる原因は、−78℃に冷却してn−ブチルリチウムを加えた後、室温まで昇温させて、再び−78℃に冷却して塩化トリブチルスズを加えたためであると考えられる。よって、室温まで昇温せずに、−78℃を保ったまま反応を行うことにより、5位に置換基を有する化合物の発生を制御することができると考えられる。なお、2位に置換基を有する化合物と5位に置換基を有する化合物とを分離精製することは難しい。よって、副生成物の発生がない以下の反応式(P)に示すroute3が好ましい。
Figure 0005131701
以下の反応式(P)に示すように、route3では、条件1として、化合物8にマグネシウムを大過剰用いたグリニヤー試薬を滴下し、溶媒にエーテル、触媒にNi(dppp)Clを用いて化合物16を収率12%で合成した。また、条件2として、化合物8にマグネシウムを大過剰用いたグリニヤー試薬を滴下し、溶媒にTHF、触媒にPd(dppf)Clを用いて化合物16を収率57%で合成した。
Figure 0005131701
条件1では、反応溶媒にエーテルを用いたため、還流させる時に溶媒を半分以上飛ばしてしまい、低収率となった。一方、条件2では、反応溶媒にTHFを用いたため、中程度の収率で化合物16を得ることができた。
その後、以下の反応式(Q)に示すように、N−ブロモスクシンイミドを用いて化合物16の臭素化を行い、化合物17を収率85%で合成した。
Figure 0005131701
その後、以下の反応式(R)に示すように、化合物17にジシアノメチル基を導入し、化合物18を収率63%で合成した。
Figure 0005131701
化合物18の精製は、カラムクロマトグラフィーで行い、再結晶はアセトン−アセトニトリル混合溶媒で行った。なお、カラムクロマトグラフィーでは低活性シリカゲルを用いた。
図4は、化合物18の再結晶後のMS,IRチャートを示すものである。MSチャートから化合物18の分子イオンピークがわかる。また、IRチャートから化合物18がニトリル基を有していることがわかる。
また、図5は、化合物18の再結晶後のH−NMRチャートを示すものである。H−NMRチャートから、アロマティック部分とシクロペンタン環のメチレン水素のピークは複雑化していなかった。つまり、MS,IRチャートから副生成物等は確認できず、また、異性体の存在も確認できないので、化合物18を単一成分として得ることができた。
<(IV)本発明に係る化合物13,18、および、非特許文献3に係る次に示す一般式(13)
Figure 0005131701
で表される構造を有する化合物(以下、「化合物30」という)の物性>
<電子吸収スペクトルの測定>
図6は、上記化合物における電子吸収スペクトルと吸収波長との関係を示すものである。化合物13、化合物18、および、化合物30の電子吸収スペクトルが最大となる吸収波長λmaxは、同程度であることがわかった。さらに、化合物13と化合物18とを比較して、メチル基を導入しても大きな影響がないことがわかった。ただし、化合物13において、吸収波長約426nmで電子吸収スペクトルのピークが見られる。これは、化合物13が幾何異性体混合物であり、trans−cis体とcis−cis体とは禁制遷移に由来するため、ピークに影響が出たと考えられる。一方、化合物18および化合物30では、trans−trans体の単一構造であるため、吸収波長約426nmで電子吸収スペクトルのピークが見られないと考えられる。
<CVの測定>
図7は、上記化合物におけるHOMO−LUMOのエネルギーについて示すものである。化合物13、化合物18、および、化合物30について、ベンゾニトリル溶媒を用いてCV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行い、酸化還元電位の半波値によりHOMO−LUMOのエネルギーのギャップを求めたところ、化合物13では1.35eV、化合物18では1.45eV、化合物30では1.46eVとなり、HOMO−LUMOのエネルギーのギャップに差がないことが分かった。また、メチル基を導入してもHOMO−LUMOのエネルギーのギャップに変化がないことが分かった。また、化合物30よりも化合物13、化合物18ではLUMOレベルが下がっており、電子注入が起こりやすくなると考えられる。また、一連の化合物の還元電位からn型のFETへの適応性について予測すると、還元されやすい順、すなわち、化合物13、化合物18、化合物30の順にFETへの適応性が優れていると考えられる。
なお、HOMOとは、中性状態の分子において電子で満たされている最もエネルギーの高い分子軌道をいい、LUMOとは、電子の入っていない最もエネルギーの低い分子軌道をいう。
<FET特性の評価>
上記化合物におけるFET特性の評価について、以下の方法でFET素子を作製した。まず、SiO基板を面積1×1cm程度の大きさに切り出し、裏面(下側の面)をフッ化水素酸で処理し、空気中で酸化されているシリカを取り除いた後、Auを真空蒸着することでゲート電極を作製した。次に、SiO基板表面上に0.4wt%に調製した上記化合物のクロロホルム溶液を用いてスピンコート法(回転しているSiO基板上に調整した上記化合物をパスツールを用いて滴下する方法)により有機薄膜を作製した(有機薄膜作製条件:2000rpm、30sec)。なお、SiO基板には、表面処理を施していないもの(以降、「未処理」と記載)と、オクチルトリクロロシランにより表面処理を施したもの(以降、「OTS処理」と記載)とを用いた。最後に、有機薄膜上にシャドウマスクを用いてAuを真空蒸着することでソース・ドレイン電極を作製した。今回作製したFET素子の設定はチャネル長50μm、チャネル幅1.5mmである。このようにして作製したFET素子はトップコンタクト型であり、図8は、その構造を示すものである。
FET素子の性能は、ゲートに電位をかけた状態でソース・ドレイン間に電位をかけた時に流れた電流量に依存する。この電流値を測定することでFETの特性である移動度を決めることができる。移動度は、絶縁体としてのSiOにゲート電界を印加した結果、有機半導体層中に生じるキャリア種の電気的特性を表現する式(a)から求めることができる。
Id=ZμCi(Vg−Vt)/2L・・・(a)
ここで、Idは飽和したソース・ドレイン電流値、Zはチャネル幅、Ciは絶縁体の電気容量、Vgはゲート電位、Vtはしきい電位、Lはチャネル長であり、μが決定する移動度(cm/Vs)である。Ciは用いたSiO絶縁膜の誘電率、Z、LはFET素子の素子構造よりに決まり、Id、VgはFET素子の電流値の測定時に決まり、VtはId、Vgから求めることができる。式(a)に各値を代入することで、それぞれのゲート電位での移動度を算出することができる。
以上のことを用いて測定を行い、上記化合物におけるFET特性についての評価を行った。まず、化合物13の測定を行った。図9は、スピンコート法の条件およびFET特性の結果を示すものである。なお、未処理SiO基板とOTS処理したSiO基板とを用いてFET素子の作製を行い測定したが、顕著な違いが見られなかった。また、p型とn型両方のFET特性の評価を行った。
図9において、上段では、p型のFET特性を調べるために、負のゲート電圧をかけて測定を行い、下段では、n型FET特性を調べるために、正のゲート電圧をかけて評価を行った。
以上より、p型のVd−IdおよびVg−Idの測定では、FET挙動は見られなかった。一方、n型のVd−IdおよびVg−Idの測定では、流れる電流量はかなり小さいが、FET挙動が見られた。式(a)により、μ=5.3×10−6(cm/Vs)、on/off ratio=9、Vth=7Vであった。
次に、化合物13と同様に、化合物18の測定を行った。図10は、スピンコート法の条件およびFET特性の結果を示すものである。
図10において、p型およびn型のVd−IdおよびVg−Idの測定では、FET挙動は見られなかった。これは、化合物13に比べてメチル基を導入したことで結晶性が高くなったため製膜性が低下することで、連続した半導体チャネルの形成が阻害され、電流が流れにくくなったためである。また、未処理のSiO基板とOTS処理したSiO基板でFET素子の作製を行い測定したが、両方の基板においてもFET挙動は確認できなかった。
以上より、化合物18では、n型のFET挙動を示すのに十分なLUMOエネルギーレベルであり、電荷注入が起こりやすくなっているが、基板上で均一の膜を形成できないためにFET挙動を示さなかったと考えられる。
次に、化合物13,18と同様に、化合物30の測定を行った。図11は、スピンコート法の条件およびFET特性の結果を示すものである。
図11に示すように、化合物30は、若干ではあるが、n型のFET挙動を示した。化合物18に比べると製膜性は高く、綺麗な膜が形成できた。また、未処理のSiO基板とOTS処理したSiO基板でFET素子の作製を行い測定したが、両方の基板においてFET挙動に変化はなかった。式(a)により、μ=2.87×10−7(cm/Vs)、on/off ratio=111、Vth=−166Vであった。
次に、上記化合物におけるアニール処理をした後のFET特性の評価について、以下の方法でOTFT(有機薄膜トランジスタ)素子を作製した。まず、n−ドープのSi/SiO基板に、電子線リソグラフィーによりチャネル長10μm、チャネル幅20mmの櫛形電極を作製し、Crを2nm、Auを50nm蒸着することで金電極を作製した。そして、0.4wt%に調製した上記化合物のクロロホルム溶液のスピンコート法を用いて、電極上に有機薄膜を作製し、チャネル長10μm、チャネル幅2cmでFET特性の評価を行った。
図12は、そのボトムコンタクト型のOTFT素子を示すものである。図13は、化合物13について、80℃で1時間アニール処理をした後の、n型のVd−IdおよびVg−Idの測定結果を示すものである。図13に示すように、化合物13はFET挙動を示した。式(a)により、μ=1.28×10−3(cm/Vs)であった。また、化合物13と同様に、化合物30の測定を行ったところ、μ=3.2×10−4(cm/Vs)であった。
また、アニール処理の条件を変えた場合のFET特性(移動度、on/off比および閾値電圧)について表2に示す。
Figure 0005131701
以上より、アニール処理をすることで、移動度の向上を図ることができると考えられる。
さらに、FET素子をアニール処理(熱処理)することによるFET素子の特性(移動度およびon/off比)評価として、アニール処理なしでのFET特性、および、50℃,100℃,150℃,200℃でのアニール処理後のFET特性を評価した。以下に測定結果を示す。
表3は、反応式(B)で合成された一般式(1)で表される化合物13(ブチル誘導体)の再測定結果を示している。
Figure 0005131701
表4は、反応式(S)で合成された一般式(1)で表される化合物27a(ヘキシル誘導体)の測定結果を示している。
Figure 0005131701
なお、表3,4の測定結果から、未処理基板での測定では再現性および性能が劣るため、表5以降の測定では、OTS処理基板のみを用いた。
表5は、反応式(S)で合成された一般式(1)で表される化合物27b(オクチル誘導体)の測定結果を示している。
Figure 0005131701
表6は、反応式(S)で合成された一般式(1)で表される化合物27c(デシル誘導体)の測定結果を示している。
Figure 0005131701
表7は、反応式(T)で合成された一般式(1)で表される化合物32(セレノフェン置換、ヘキシル誘導体)の測定結果を示している。
Figure 0005131701
表8は、反応式(U)で合成された一般式(1)で表される化合物38(セレノフェン置換、オクチル誘導体)の測定結果を示している。
Figure 0005131701
<伝導度の測定>
化合物13、化合物18の伝導度を、ペレットを用いた2端子法により測定し、非特許文献1に係る次に示す一般式(14)
Figure 0005131701
で表される構造を有する化合物(以下、「化合物20」という)、化合物30の値との比較を行った。化合物20では無置換のチオフェンを導入し、3量体を形成することで分極の寄与が大きく、そのため分子間の相互作用も大きくなり、伝導度が高いと考えられる。その際の伝導度は1.7×10−6(S/cm)であった。また、化合物30では、かさの高いブトキシメチル基を有することで分子間の相互作用が弱まり、伝導度が低いと考えられる。その際の伝導度は10−11(S/cm)以下であった。一方、化合物13、化合物18では、化合物30と同様に、伝導度は10−11(S/cm)以下であった。
<(V)結論>
本発明において、高い伝導性を示す無置換チオフェンまたはセレノフェンと、高い溶解性を示すモノマーユニット(シクロペンタン縮環型チオフェン)である化合物7とを組み合わせたハイブリッド体の合成に成功した。化合物13ではH−NMRにより幾何異性体が確認され、化合物18では幾何異性体を制御するためにメチル基を導入した。また、これらの化合物における電子吸収スペクトルの測定、CVによる酸化還元電位の測定、FET特性の評価、および、伝導度の測定を行った。
電子吸収スペクトルの測定により、キノイド構造を有することで、吸収領域が近赤外領域にまで伸びていることが分かった。また、化合物13と、メチル基を導入した化合物18とについては、吸収波長の位置に大きな変化は見られなかったが、化合物13では420nm付近に特徴的な吸収が確認され、該吸収は幾何異性体に由来していると推測された。
また、CVの測定により、化合物13,18が共に両性のレドックス特性であることが分かり、LUMOレベルの低さから電荷の注入が起こりやすく、n型のFET特性を示す可能性が示唆された。
また、FET特性の評価により、化合物13ではn型のFET挙動が見られた。そのFET挙動から、化合物13では化合物30よりも高い移動度を示すことが分かった。化合物18では、化合物13よりも移動度が低く、化合物13ほどはFET挙動が見られなかった。その理由として、基板上で結晶化が見られ、均一な膜を形成できなかったためであると考えられる。
ここで、化合物18において均一な膜を形成できなかったのは、化合物13に比べてメチル基を導入したことで、結晶性が高くなり製膜性が低下したため、連続した半導体チャネルの形成が阻害され、電流が流れにくくなったからであると推測される。従って、均一な膜の形成さえできれば、化合物18も本発明の有機半導体材料として利用可能であると考えられる。
以上より、化合物13は、化合物30と同様の溶解性を有し、さらに、n型のFET特性を示したため、溶接法が可能なn型のFET材料として有用である。
一方、化合物18は、化合物30と同様の溶解性を有するため、溶接法を適用可能な化合物であるといえる。また、上述のように、n型のFET挙動を示すのに十分なLUMOエネルギーレベルを有し、電荷注入が起こりやすくなっている。そのため、基板上で均一な膜を形成することができれば、化合物13と同様に、n型のFET特性を示すと考えられる。したがって、溶接法が可能なn型のFET材料として有用であると考えられる。
<(VI)化合物1〜18,23〜38の具体的な合成方法>
反応式(A)〜(R)中の化合物1〜18、および、反応式(S)〜(U)中の化合物23〜38の合成は、具体的には以下のような操作で行うことができた。以下の操作において、不活性ガス下の反応や測定には無水蒸留した溶媒を用い、その他の反応や操作においては市販一級または特級の溶媒を用いた。また、試薬は必要に応じて無水蒸留等で精製し、その他は市販一級または特級の試薬を用いた。カラムクロマトグラフィーによる精製にはダイソーゲルIR−60(シリカゲル、活性)、MERCK Art 1097 Aluminiumoxide 90(アルミナ、活性)、TLCにはSilicagel 60F254(MERCK)を用いた。溶媒の留去にはロータリーエバポレーターを用いた。以下に、使用した分析機器および測定機器を示す。
液体クロマトグラフィー分析(以下、「L.C.」という)は、日本分析工業 LC-08型,LC-9204型を用いて行った。融点測定(以下、「m.p.」という)は、柳本 微量融点測定装置MP-3S(未補正値)を用いて行った。核磁気共鳴分光(以下、「1H-NMR」という)は、日立 RS-1200核磁気共鳴装置(60MHz,σ値,ppm,内部基準 TMS)、日本電子 LAMBDA-NMR(395.75MHz,σ値,ppm,内部基準 TMS)を用いて行った。質量分析(以下、「MS」という)は、MALDI-MS KRATOS ANALYYTICAL KOMPACT MALDI、島津 GCMS-QP5050型質量分析装置を用いて行った。元素分析(以下、「Anal.」という)は、Parkin Elmer 2400CHN型元素分析計(依頼分析)を用いて行った。紫外可視吸収スペクトル測定(以下、「U.V.」という)は、島津 分光光度計UV-3100型を用いて行った。サイクリックボルタモグラム法による電気化学的測定(以下、「CV」という)は、Hokuto Denko HA-301 potentiostat、Hokuto Denko HB-104 function generatorを用いて行った。
<化合物1>
クロロ酢酸メチル(300ml,3.42mol)のメタノール(800ml)溶液に、硫化ナトリウム九水和物(400g,1.67mol)の水溶液(700ml)を3時間かけて滴下し、4時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、メタノールを除去した。塩化メチレン(200ml×3)で抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物を減圧蒸留(95℃以上106℃以下,7mmHg)により、化合物1(138g,0.79mol,47%)を無色透明油状物として得た。
化合物1は、H-NMR(60MHz,CDCl3) δ3.37(s,4H),3.72(s,6H)という測定結果であった。
<化合物2>
窒素雰囲気下、水浴上でナトリウム(40g,1.74mol)をエタノール(500ml)に溶解させた。これに2,3−ブタンジオン(50ml,0.57mol)と化合物1(83ml,0.57mol)とのエタノール(500ml)溶液を2時間かけて滴下した。室温で18時間攪拌後、2N水酸化ナトリウム水溶液(200ml)を加え、4時間還流させた。反応終了後、エタノールを除去し、酸性になるまで5N濃塩酸を加え、析出した茶色の固体をろ取した。これを水(100ml×3)で洗浄し、さらにヒーターで乾燥させることにより、粗精製の化合物2(56.5g,0.28mol,50%)を茶色の固体として得た。
化合物2は、特に精製することなく、化合物3を合成するために用いた。
<化合物3>
水酸化ナトリウム(11.5g,0.29mol)を水(300ml)に溶解させ、化合物2(25g,0.12mol)を加えた。溶液を65℃、pH7以上8以下に保ちながら、臭素(46.8g,15ml,0.29mol)を3時間かけて滴下し、65℃で1時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液が酸性になるまで2N塩酸を加え、セライトを用いて固形物をろ別した後、固形物を塩化メチレン(200ml×3)で洗浄した。次に、ろ液を塩化メチレンで(150ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物得をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン,バッチ:塩化メチレン)でRf0.7の成分を分取することにより、化合物3(27.6g,0.10mol,82%)を淡黄色油状物として得た。
化合物3は、H-NMR(60MHz,CDCl3) δ2.15(s,6H)という測定結果であった。
<化合物4>
窒素雰囲気下、化合物3(20g,74mmol)の四塩化炭素(130ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(26g,0.15mol)、過酸化ベンゾイル(1.79g,7.39mmol)を加えた。反応混合物をハロゲンランプ照射下、5時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、セライトを用いて固形物をろ別し、固形物を四塩化炭素(100ml×3)で洗浄した。溶媒除去後、得られた黄色固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン,バッチ:塩化メチレン)でRf0.2の成分を分取し、ヘキサンから再結晶することにより、化合物4(27.6g,87%)を無色板状晶として得た。
化合物4は、H-NMR(60MHz,CDCl3) δ4.55(s,4H)という測定結果であった。
<化合物5>
窒素雰囲気下、化合物4(5g,11.7mmol)、水素化ナトリウム(60% in oil,1.05g,26.3mmol)のTHF(200ml)溶液を還流させ、マロン酸ジエチル(1.83ml,12.1mmol)のTHF(20ml)溶液を3時間かけて滴下し、30分間攪拌した。反応終了後、氷冷下で水を加えた。セライトを用いて固形物をろ別し、固形物を塩化メチレン(100ml×3)で洗浄後、ろ液を塩化メチレン(100ml×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色の固形物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=1:1,バッチ:塩化メチレン)でRf0.5の成分を分取し、ヘキサンから再結晶することにより、化合物5(3.65g,8.57mmol,73%)を無色板状結晶として得た。
化合物5は、H-NMR(60MHz,CDCl3
δ1.25(t,J=7Hz,6H),3.24(s,4H),4.20(q,J=7Hz,4H)
という測定結果であった。
<化合物6>
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(1.79g,47mmol)のTHF(100ml)溶液を加え、氷冷下、化合物5(5g,11.7mmol)のTHF(23ml)溶液を1時間かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、氷冷下で酢酸エチル(28ml)、水(4ml)、1N塩酸(4ml)を順に加えた。セライトを用いて固形物をろ別し、固形物をアセトン(100ml×3)で洗浄後、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた白色固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,酢酸エチル,バッチ:アセトン)でRf0.5の成分を分取し、酢酸エチル:クロロホルム=1:4の混合溶液から再結晶することにより、化合物6(3.65g,8.57mmol,73%)を無色針状結晶として得た。
化合物6は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ2.28(t,J=5.12Hz,2H),2.62(s,4H),3.77(d,J=4.88Hz,4H),6.79(s,2H)
という測定結果であった。
<化合物7>
窒素雰囲気下、化合物6(2.5g,13.6mmol)のDMF(30ml)溶液に、水素化ナトリウム(60% in oil,2.2g,55.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。氷冷下、n−臭化ブチル(4.95g,3,9ml,32.8mmol)を1時間かけて滴下し、室温で24時間攪拌した。反応終了後、水を加えヘキサン(150ml×3)で抽出後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,塩化メチレン)でRf0.8の成分を分取することにより、化合物7(3.92g,13mmol,97%)を無色油状物として得た。
化合物7は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.91(t,J=7.56Hz,6H),1.37(sext,J=7.32Hz,4H),1.54(quint,J=6.36Hz,4H),
2.59(s,4H),3.37(s,4H),3.41(t,J=6.60Hz,4H),6.73(s,2H)
という測定結果であった。
<化合物8>
化合物7(1.0g,3.38mmol)のDMF(50ml)に溶液に、N−ブロモスクシンイミド(1.58g,8.88mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)を加え、30分間攪拌した。ヘキサン(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた橙色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,塩化メチレン)でRf0.9の成分を分取することにより、化合物8(1.40g,3.08mmol,91%)を淡黄色油状物として得た。
化合物8は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.91(t,J=7.32Hz,6H),1.25(sext,J=7.56Hz,4H),1.53(quint,J=6.40Hz,4H),
2.54(s,4H),3.35(s,4H),3.41(t,J=6.56Hz,4H)
という測定結果であった。
<化合物9>
窒素雰囲気下、チオフェン(0.94ml,11.9mmol)のTHF(20ml)溶液を−78℃に冷却後、1.6M n−BuLi(7.70ml,12.0mmol)をゆっくり滴下した。室温まで昇温しながら、1時間攪拌後、再び−78℃に冷却し、塩化トリブチルスズ(3.30ml,12.1mmol)を加え、2時間攪拌した。その後、水(80ml)を加え、塩化メチレン(100ml×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,ヘキサン)をした後、液体クロマトグラフィー(JAIGEL,1H/2H,クロロホルム)で精製することにより、化合物9(2.00g,5.36mmol,45%)を黄色油状物として得た。
化合物9は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.89(t,J=7.32Hz,9H),1.10(t,J=8.32Hz,6H),1.33(sext,J=7.32Hz,6H),
1.53-1.61(m,6H),7.20(dd,J=0.50,3.16Hz,1H),7.26(dd,J=3.16,4.40Hz,1H),
7.66(dd,J=0.50,4.40Hz,1H)
という測定結果であった。
<化合物10>
窒素雰囲気下、化合物8(150mg,0.33mmol)と化合物9(295mg,0.79mmol)との無水トルエン(60ml)に溶液に、30分間アルゴンガスを吹き込み脱気した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(91mg,0.79μmol)を加え、13時間還流した。反応終了後、室温まで冷却した後、セライトを用いてろ別し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた赤色の固形物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,クロロホルム)でRf0.9の成分を分取した後、エタノールで再結晶することにより、化合物10(133mg,0.29mmol,88%)を淡黄色固体として得た。
化合物10は、融点:101-102℃;H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.91(t,J=7.60Hz,6H),1.36(sext,J=7.30Hz,4H),1.53(quint,J=6.30Hz,4H),
2.75(s,4H),3.43(t,J=6.6Hz,4H),3.44(s,4H),7.02(dd,J=3.68,5.16Hz,2H),
7.10(dd,J=0.96,3.68Hz,2H),7.21(dd,J=0.96,5.16Hz,2H);
MS(MALDI-TOF)m/z=459.91(M)(calcd.=460.16);
Anal.Calcd for C25H32O2S3:C,65.17;H,7.00%;
Found:C,65.01;H,6.94%
という測定結果であった。
<化合物11>
氷浴下、化合物10(200mg,0.43mmol)のクロロホルム(20ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(235mg,1.04mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,クロロホルム)でRf0.9の成分を分取し、エタノールで再結晶することにより、化合物11(133mg,0.15mmol,71%)を黄色固体として得た。
化合物11は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.91(t,J=7.60Hz,6H),1.36(sext,J=7.30Hz,4H),1.53(quint,J=6.30Hz,4H),
2.69(s,4H),3.41-3.44(m,8H),6.82(d,J=4.16Hz,2H),6.95(d,J=3.92Hz,2H);
MS(DI)m/z=615(M)(calcd.=615)
という測定結果であった。
<化合物12>
化合物10(100mg,0.22mmol)のクロロホルム(10ml)溶液に、N−ヨードスクシンイミド(77mg,0.43mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=1:1)でRf0.8の成分を分取し、エタノールで再結晶することにより、化合物12(273mg,0.38mmol,88%)を黄色固体として得た。
化合物12は、融点:85-87℃;H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.89(t,J=7.30Hz,6H),1.36(sext,J=7.60Hz,4H),1.53(quint,J=5.20Hz,4H),
2.69(s,4H),3.41-3.43(m,8H),6.75(d,J=3.92Hz,2H),7.15(d,J=3.92Hz,2H)
という測定結果であった。
<化合物13>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,112mg,4.67mmol)、マロノニトリル(152mg,2.30mmol)をTHF(45ml)溶液に加え、室温で30分間攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(26mg,23μmol)、dppf(26mg,47μmol)を加え、化合物11(143mg,0.23mmol)のTHF(15ml)溶液を20分間かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.6の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物13(271mg,0.44mmol,72%)を緑色固体として得た。
また、上記の合成方法とは別の合成方法としては、窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,112mg,4.67mmol)、マロノニトリル(152mg,2.30mmol)をTHF(45ml)溶液に加え、室温で30分間攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(26mg,23μmol)、dppf(26mg,47μmol)を加え、化合物12(280mg,0.39mmol)のTHF(15ml)溶液を20分間かけて滴下し、22時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、2時間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.6の成分を分取し、溶媒除去後、H−NMR,IRにより、化合物13の生成を確認した。
さらに、上記の合成方法とは別の合成方法としては、窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,112mg,4.67mmol)、マロノニトリル(152mg,2.30mmol)をTHF(45ml)溶液に加え、室温で30分間攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(26mg,23μmol)、dppf(26mg,47μmol)を加え、化合物11(143mg,0.23mmol)のTHF(15ml)溶液を20分間かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、飽和臭素水(10ml)を加え、30分間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、H−NMR,IRにより化合物13の生成は確認されなかった。
化合物13は、融点:300℃で分解;H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.91(t,J=7.56Hz,6H),1.36(sext,J=7.56Hz,4H),1.53(quint,J=5.20Hz,4H),
2.83-2.92(m,4H),3.42-3.48(m,4H),7.22-7.24(dd,J=2.96,5.64Hz,1H),
7.32-7.36(dd,J=4.64,5.88Hz,1H),7.40-7.42(dd,J=2.68,5.64Hz,1H);
7.52-7.55(dd,J=4.64,5.60Hz,1H);
MS(DI)m/z=586(M)(calcd.=586);IR(KBr)2208.8cm-1;
Anal.Calcd for C31H30N4O2S3:C,63.45;H,5.15;N,9.55%;
Found:C,63.44;H,5.25;N,9.39%
という測定結果であった。
<化合物14>
3−メチルチオフェン(19.6g,0.20mol)のDMF(65ml)溶液に、氷浴下で、N−ブロモスクシンイミド(35.6g,0.20mol)のDMF(90ml)溶液を1時間かけてゆっくり滴下し、室温で12時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)を加え、30分間攪拌した。ヘキサン(100ml×3)で抽出後、水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた透明油状物を減圧蒸留(45-62℃,15mmHg)により、化合物14(21.7g,122mmol,61%)を無色透明油状物として得た。
化合物14は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ2.19(s,3H),6.77(d,J=5.60Hz,1H),7.15(d,J=5.64,1H);
MS(DI)m/z=176(M)(calcd.=176)
という測定結果であった。
<化合物15>
窒素雰囲気下、3−メチルチオフェン(379mg,3.87mmol)のTHF(20ml)溶液を−78℃に冷却後、1.6M n−BuLi(2.50ml,4.08mmol)をゆっくり滴下した。室温まで昇温しながら、1時間攪拌後再び−78℃に冷却し、塩化トリブチルスズ(1.10ml,4.08mmol)を加え、2時間攪拌した。その後、水(80ml)を加え、塩化メチレン(100ml×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,ヘキサン)をした後Rf0.6の成分を分取し、溶媒除去後、H−NMRで確認したところ、化合物15と5-Tributhylstannyl-3-methylthiopheneとを1:4の比率のmixture(800mg,2.06mmol)として得た。
また、上記の合成方法とは別の合成方法としては、窒素雰囲気下、化合物14(685mg,3.87mmol)のTHF(20ml)溶液を−78℃に冷却後、1.6M n−BuLi(2.40ml,3.84mmol)をゆっくり滴下した。室温まで昇温しながら、1時間攪拌後再び−78℃に冷却し、塩化トリブチルスズ(1.10ml,4.08mmol)を加え、2時間攪拌した。その後、水(80ml)を加え、塩化メチレン(100ml×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,ヘキサン)をした後Rf0.6の成分を分取し、溶媒除去後、H−NMRで確認したところ、化合物15と5-Tributhylstannyl-3-methylthiopheneとを7:1の比率のmixture(1.11g,2.86mmol)として得た。
化合物15は、5-Tributhylstannyl-3-methylthiopheneとの混合物であったので、化合物18を合成するために用いることはできなかった。
<化合物16>
窒素雰囲気下、マグネシウム(600mg,24.7mmol)のみを入れ乾燥させた。次に、THF(45ml)溶液に必要に応じて1,2−ジブロモエタン(0.1ml,1.16mmol)を加え,化合物14(2.31ml,20.5mmol)をゆっくり滴下し、3時間還流させグリニヤー試薬を調整した。
窒素雰囲気下、化合物8(1.42g,3.12mmol)のTHF(45ml)溶液にPd(dppf)Clを加え攪拌した後、調製したグリニヤー試薬を約30ml滴下ろう斗にトランスファーし、ゆっくり滴下した。12時間還流した後、氷浴下で飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を加え、セライトろ過した後、クロロホルム(100ml×3)で抽出後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300ml),飽和食塩水(300ml),水(300ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.2の成分を分取し、エタノールで再結晶することにより、化合物16(860mg,1.76mmol,57%)を黄色針状結晶として得た。
化合物16は、融点:63-64℃;H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.89(t,J=7.36Hz,6H),1.36(sext,J=7.56Hz,4H),1.53(quint,J=6.60Hz,4H),
2.39(s,6H),2.73(s,4H),3.40-3.43(m,8H),6.86(d,J=5.36Hz,2H),
7.16(d,J=5.24Hz,2H);MS(DI)m/z=488(M)(calcd.=488);
Anal.Calcd forC27H36O2S3:C,66.35;H,7.42%;
Found:C,66.36;H,7.41%
という測定結果であった。
<化合物17>
化合物16(743mg,1.52mmol)のクロロホルム(30ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(541mg,3.04mmol)のDMF(20ml)溶液を1時間かけてゆっくり滴下し、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.6の成分を分取し、エタノールで再結晶することにより、化合物17(837mg,1.29mmol,85%)を黄色油状物として得た。
化合物17は、H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.90(t,J=7.36Hz,6H),1.36(sext,J=7.56Hz,4H),1.53(quint,J=6.60Hz,4H),
2.30(s,6H),2.68(s,4H),3.39-3.42(m,8H),6.81(s,2H);
MS(DI)m/z=646(M)(calcd.=646)
という測定結果であった。
<化合物18>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,112mg,4.67mmol)、マロノニトリル(154mg,2.34mmol)をTHF(45ml)溶液に加え、室温で30分間攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(27mg,23.4μmol)、dppf(27mg,46.8μmol)を加え、化合物17(151mg,0.23mmol)のTHF(15ml)溶液を20分間かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分間攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.6の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物18(90mg,0.146mmol,63%)を緑色固体として得た。
化合物18は、融点:300℃で分解;H-NMR(400MHz,CDCl3
δ0.91(t,J=7.32Hz,6H),1.35(sext,J=7.56Hz,4H),1.53(quint,J=6.60Hz,4H),
2.56(d,J=0.72Hz,6H),2.96(s,4H),3.43-3.48(m,8H),7.15(d,J=0.96Hz,2H);
MS(MALDI-TOF)m/z=613.81(M)(calcd.=614.18);IR(KBr)2208.8cm-1;
Anal.Calcd for C33H34N4O2S3:C,64.46;H,5.57;N,9.11%;
Found:C,64.36;H,5.59;N,9.04%
という測定結果であった。
<化合物23>
窒素雰囲気下、化合物5(500mg,1.17mmol)と化合物9(962mg,2.58mmol)との無水トルエン(30ml)溶液に、30分間アルゴンガスを吹き込み脱気した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(14mg,12.1μmol)を加え、20時間還流した。反応終了後、室温まで冷却した後、セライトを用いてろ別し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた黄色の固形物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.3の成分を分取した後、ヘキサン−塩化メチレン混合溶媒で再結晶することにより、化合物23(422mg,0.98mmol,83%)を板状淡黄色固体として得た。
化合物23は、融点:112-113 ℃;H-NMR(60 MHz, CDCl3)
δ 1.26(t, J=7.20 Hz, 6H), 3.50(s, 4H), 4.23(q, J=7.20 Hz, 4H),
7.02(dd, J=3.60, 5.20 Hz, 2H), 7.10(dd, J=1.60, 3.60 Hz, 2H),
7.24(dd, J=1.60, 5.20 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 13.9, 35.8, 61.9, 65.5, 123.6, 124.5, 125.3, 127.7, 136.4, 140.5, 170.9;
MS (DI) m/z=432(M) (calcd.=432);
Anal. Calcd for C21H20O4S3: C, 58.31; H, 4.66%;
Found: C, 58.25; H, 4.72%
という測定結果であった。
<化合物24>
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(140mg,3.70mmol)のTHF(25ml)溶液を加え、氷冷下、化合物23(400mg,0.93mmol)のTHF(25ml)溶液を1時間かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、氷冷下で酢酸エチル(28ml)、水(4ml)、1N塩酸(4ml)を順に加えた。セライトを用いて固形物をろ別し、固形物をアセトン(100ml×3)で洗浄後、溶媒を除去することにより、粗精製の化合物24を黄土色固体として得た。
化合物24は、特に精製することなく、化合物25a,化合物25b,化合物25cを合成するために用いた。
<化合物25a>
窒素雰囲気下、化合物24(100mg,0.29mmol)のDMF(20ml)溶液に、水素化ナトリウム(60% in oil,41mg,1.72mmol)を加え室温で30分攪拌した。氷冷下、n−臭化ヘキシル(117mg,0.10ml,6.25mmol)を1時間かけてゆっくり滴下し、室温で24時間攪拌した。水を加えて反応を終了させた後、ヘキサン(150ml×3)で抽出し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.4の成分を分取し、エタノールで再結晶することにより、化合物25(103mg,0.20mmol,70%)を針状淡黄色固体として得た。
化合物25aは、融点:65-66 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.85-0.89(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.25-1.52(m, 12H), 1.53-1.58(m,4H),
2.75(s, 4H), 3.41-3.44(m, 8H), 7.00-7.03(dd, J=3.64, 5.12 Hz, 2H),
7.09-7.11(dd, J=1.00, 3.64 Hz, 2H), 7.21-7.22(dd, J=1.00, 5.12 Hz, 2H); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 25.8, 29.5, 31.6, 34.4, 55.2, 71.5, 73.8, 123.2, 124.1, 125.1, 127.6, 137.2, 143.8;
MS (DI) m/z=516(M) (calcd.=516);
Anal. Calcd for C29H40O2S3: C, 67.39; H, 7.80%;
Found: C, 67.31; H, 7.63%
という測定結果であった。
<化合物26a>
氷浴下、化合物25(293mg,0.57mmol)のクロロホルム(30ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(201mg,1.13mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.5の成分を分取し、塩化メチレン−アセトニトリル混合溶媒で再結晶することにより、化合物26a(380mg,0.56mmol,99%)を針状黄色固体として得た。
化合物26aは、H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.88(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.26-1.28(m, 12H), 1.53-1.56(m, 4H), 2.69(s, 4H), 3.40-3.43(m, 8H), 6.82(d, J=3.92, 2H), 6.95(d, J=3.88 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 25.8, 29.4, 31.6, 34.2, 55.4, 71.4, 73.7, 110,9, 123.2, 124.5, 130.4, 138.5, 144.2;
MS (DI) m/z=674 (M+2) (calcd.=674);
Anal. Calcd for C29H38Br2O2S3: C, 51.63; H, 5.68%;
Found: C, 51.60; H, 5.54%
という測定結果であった。
<化合物27a>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,71mg,2.96mmol)マロノニトリル(98mg,1.48mmol)をTHF(20ml)溶液に加え、室温で30分攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(17mg,14.7μmol)、dppf(17mg,30.7μmol)を加え、化合物26a(100mg,0.15mmol)のTHF(30ml)溶液を20分かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.5の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物27a(60mg,0.98mmol,63%)を緑色固体として得た。
化合物27aは、融点:300 ℃ で分解; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.25-1.30(m, 12H), 1.53-1.56 (m, 4H),
2.83-2.92(m, 4H), 3.42-3.46(m, 8H), 7.21-7.26(m, 2H),
7.33-7.36(dd, J=5.60, 8.28 Hz, 2H), 7.41-7.43(dd, J=2.92, 5.60 Hz, 2H),
7.52-7.56(dd, J=5.60, 8.28 Hz, 2H;
MS (DI) m/z=642 (M) (calcd.=642); IR ( KBr ) 2206.8 cm-1;
Anal. Calcd for C35H38N4O2S3: C, 65.39; H, 5.96; N, 8.71%; Found: C, 65.44; H, 5.94; N, 8.62%
という測定結果であった。
<化合物25b>
窒素雰囲気下、化合物24(260mg,0.75mmol)のDMF(50ml)溶液に、水素化ナトリウム(60% in oil,179mg,7.47mmol)を加え室温で30分攪拌した。氷冷下、n−臭化オクチル(474mg,0.43ml,2.46mmol)を1時間かけてゆっくり滴下し、室温で24時間攪拌した。水を加えて反応を終了させた後、クロロホルム(150ml×3)で抽出し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.5の成分を分取し、エタノールと塩化メチレンとの混合溶媒で再結晶することにより、化合物25b(340mg,0.59mmol,80%)を淡黄色針状結晶として得た。
化合物25bは、融点: 83-84 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.25-1.33(m, 20H), 1.52-1.57(m, 4H), 2.75(s, 4H), 3.41-3.43(m, 8H), 7.02(dd, J=3.68, 5.16 Hz, 2H), 7.10(dd, J=0.96, 3.64Hz, 2H), 7.21(dd, J=1.00, 5.12 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.1, 22.6, 26.2, 29.3, 29.4, 29.5, 31.8, 34.4, 55.2, 71.5, 73.8, 123.2, 124.1, 125.1, 127.6, 137.2, 143.8;
MS (DI) m/z=572(M) (calcd.=572);
Anal. Calcd for C33H48O2S3: C, 69.18; H, 8.44%;
Found: C, 69.32; H, 8.38%
という測定結果であった。
<化合物26b>
氷浴下、化合物25b(312mg,0.55mmol)のクロロホルム(50ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(194mg,1.09mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.4の成分を分取することにより、化合物26b(378mg,0.52mmol,99%)を淡黄色針状結晶として得た。
化合物26bは、H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.26-1.31(m, 20H), 1.53-1.56(m, 4H), 2.69(s, 4H), 3.40-3.43(m, 8H), 6.83(d, J=3.88, 2H), 6.96(d, J=3.92 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ14.1, 22.6, 26.2, 29.3, 29.4, 29.5, 31.8, 34.2, 55.4, 71.5, 73.7, 110.9, 123.1, 124.5, 130.4, 138.5, 144.2;
MS (DI) m/z=730 (M+2) (calcd.=730)
という測定結果であった。
<化合物27b>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,248mg,10.3mmol)マロノニトリル(341mg,5.18mmol)をTHF(20ml)溶液に加え、室温で30分攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(35 mg,30.3μmol)、dppf(35mg,63.2μmol)を加え、化合物26b(378mg,0.52mmol)のTHF(30ml)溶液を20分かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル, クロロホルム)でRf0.4の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物27b(267mg,0.38mmol,73%)を緑色固体として得た。
化合物27bは、融点:300 ℃ で分解; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.24-1.30(m, 20H), 1.54-1.57(m, 4H),
2.83-2.93(m, 4H), 3.44-3.47(m, 8H), 7.23-7.26(m, 2H),
7.33-7.36(m, 8.28 Hz, 2H), 7.41-7.43(m, 2H), 7.52-7.56(m, 2H);
MS (DI) m/z=699 (M) (calcd.=699); IR ( KBr ) 2206.57 cm-1 ;
Anal. Calcd for C39H46N4O2S3: C, 67.01; H, 6.63; N, 8.02%;
Found: C, 67.16; H, 6.73; N, 7.92%
という測定結果であった。
<化合物25c>
窒素雰囲気下、化合物24(443mg,1.32mmol)のDMF(50ml)溶液に、水素化ナトリウム(60% in oil,317mg,13.2mmol)を加え室温で30分攪拌した。氷冷下、n−臭化デシル(875mg,0.82ml,3.96mmol)を1時間かけてゆっくり滴下し、室温で24時間攪拌した。水を加えて反応を終了させた後、塩化メチレン(150ml×3)で抽出し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサン:塩化メチレン=1:1)でRf0.4の成分を分取し、アセトニトリル−塩化メチレン混合溶媒で再結晶することにより、化合物25c(598mg,0.95mmol,72%)を淡黄色針状結晶として得た。
化合物25cは、融点: 73-74 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.25-1.35(m, 28H), 1.51-1.56(m,4H), 2.75(s, 4H), 3.40-3.45(m, 8H), 7.01(dd, J=3.68, 5.12 Hz, 2H),
7.10(dd, J=1.24, 3.68 Hz, 2H), 7.21(dd, J=1.24, 5.12 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.1, 22.6, 26.1, 29.3, 29.4, 29.5, 29.5, 29.6, 31.4, 34.4, 55.2, 71.4, 73.8, 123.2, 124.1 125.0, 127.6, 137.2, 143.8;
MS (DI) m/z=629 (M) (calcd.=629);
Anal. Calcd for C37H56O2S3: C, 70.65; H, 8.97%;
Found: C, 70.61; H, 9.16%
という測定結果であった。
<化合物26c>
氷浴下、化合物25c(400mg,0.64mmol)のクロロホルム(60ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(226mg,1.27mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=1:1)でRf0.6の成分を分取することにより、化合物26c(449mg,0.57mmol,90%)を淡黄色針状結晶として得た。
化合物26cは、H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.60 Hz, 6H), 1.25-1.35(m, 28H), 1.53-1.56(m,4H), 2.69(s, 4H), 3.40-3.43(m, 8H), 6.83(d, J=3.92 Hz, 2H), 6.96(d, J=3.92 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.1, 22.6, 26.2, 29.3, 29.4, 29.5, 29.6, 29.6, 31.9, 34.2, 55.4, 71.5, 73.7, 110.9, 123.2, 124.6, 130.4, 138.5, 144.2;
MS (DI) m/z=786 (M+2) (calcd.=786);
Anal. Calcd for C37H54Br2O2S3: C, 56.48; H, 6.92%;
Found: C, 56.56; H, 6.98%
という測定結果であった。
<化合物27c>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,122mg,5.08mmol)マロノニトリル(168mg,2.54mmol)をTHF(20ml)溶液に加え、室温で30分攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(29mg,25.4μmol)、dppf(29mg,52.3μmol)を加え、化合物26c(200mg,0.25mmol)のTHF(30ml)溶液を20分かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.3の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物27c(140mg,0.19mmol,73%)を緑色固体として得た。
化合物27cは、融点:300 ℃ で分解; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=5.88 Hz, 6H), 1.24-1.30(m, 28H), 1.53-1.56(m, 4H),
2.83-2.92(m, 4H), 3.42-3.46(m, 8H), 7.22-7.28(m, 2H), 7.32-7.36(m, 2H), 7.40-7.43(m, 2H), 7.52-7.55(m, 2H);
MS (DI) m/z=754 (M) (calcd.=754); IR ( KBr ) 2206.8 cm-1
という測定結果であった。
<化合物28>
窒素雰囲気下、アルコール体(400mg,2.17mmol)のDMF(30ml)溶液に、水素化ナトリウム(60% in oil,208mg,8.68mmol)を加え室温で30分攪拌した。氷冷下、n−臭化ヘキシル(1.08g,0.96ml,6.51mmol)を1時間かけて滴下し、室温で20時間攪拌した。反応終了後、水を加えた。ヘキサン(150ml×3)で抽出後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,塩化メチレン)でRf0.7の成分を分取することで化合物28(824mg,2.01mmol,93%)を無色油状物として得た。
化合物28は、H-NMR(400 MHz, CDCl3)
δ 0.88(t, J=7.16 Hz, 6 H), 1.25-1.35(m, 12 H), 1.50-1.57(m, 4 H),
2.59(s, 4 H), 3.37(s, 4 H), 3.40(t, J=6.60 Hz, 4 H), 6.73(s, 2 H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 25.8, 29.5, 31.6, 33.2.4, 55.3, 71.4, 73.6, 114.6, 147.0;
MS (DI) m/z =352(M) (calcd.=352)
という測定結果であった。
<化合物29>
化合物28(1.04g,2.84mmol)のクロロホルム(30ml)−DMF(10ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(1.11g,6.23mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた淡黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=1:1)でRf0.9の成分を分取することにより、化合物29(1.36g,2.67mmol,94%)を淡黄色油状物として得た。
化合物29は、H-NMR(400 MHz, CDCl3)
δ 0.89(t, J=6.80 Hz, 6H), 1.25-1.31(m, 12H), 1.54(quint, J=7.60 Hz, 4H), 2.59(s, 4H), 3.35(s, 4H), 3.40(t, J=6.80 Hz, 4 H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 25.8, 29.4, 31.6, 34.4, 54.5, 71.4, 73.5, 101.4, 147.3;
MS (DI) m/z =510(M) (calcd.=510)
という測定結果であった。
<化合物30>
窒素雰囲気下、化合物29(1.0g,1.97mmol)と化合物33(1.83g,4.33mmol)の無水トルエン(60ml)溶液に、30分間アルゴンガスを吹き込み脱気した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(228mg,0.19mmol)を加え、20時間環流した。反応終了後、室温まで冷却した後、セライトを用いてろ別し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られたオレンジ色の固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.5の成分を分取した後、エタノール−ヘキサン混合溶媒で再結晶することにより、化合物30(661mg,1.07mmol,55%)を淡黄色針状結晶として得た。
化合物30は、融点:74-75 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.80 Hz, 6H), 1.26-1.29(m, 12H), 1.52-1.56(m,4H), 2.71(s, 4H), 3.41-3.44(m, 8H), 7.24-7.27(m, 4H), 7.92(dd, J=1.48, 5.36 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 25.8, 29.4, 31.6, 34.4, 55.2, 71.4, 73.8, 125.1, 127.5, 129.6, 130.0, 141.8, 144.0;
MS (DI) m/z=612(M) (calcd.=612);
Anal. Calcd for C29H40O2SSe2: C, 57.04; H, 6.60%;
Found: C, 57.04; H, 6.63%
という測定結果であった。
<化合物31>
氷浴下、化合物30(200mg,0.32mmol)のクロロホルム(40ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(116mg,0.65mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=1:1)でRf0.5の成分を分取し、エタノール−ヘキサン混合溶媒で再結晶することにより、化合物31(230mg,0.29mmol,92%)を黄色針状結晶として得た。
化合物31は、融点:64-65 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.88(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.26-1.34(m, 12H), 1.51-1.56(m, 4H), 2.63(s, 4H), 3.40-3.43(m, 8H), 6.94(d, J=4.12, 2H), 7.16(d, J=4.12 Hz, 2H) ;
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 25.8, 29.4, 31.6, 34.1, 55.4, 71.5, 73.7, 114.6, 124.8, 127.0, 133.4, 143.4, 144.4;
MS (DI) m/z=768 (M+2) (calcd.=768);
Anal. Calcd for C29H38Br2O2SSe2: C, 45.33; H, 4.98%;
Found: C, 45.25; H, 5.05%
という測定結果であった。
<化合物32>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,81mg,3.38mmol)マロノニトリル(112mg,1.70mmol)をTHF(20ml)溶液に加え、室温で30分攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(19mg,17.0μmol)、dppf(19mg,35.2μmol)を加え、化合物31(130mg,0.17mmol)のTHF(30ml)溶液を20分かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.5の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物32(79mg,99.4μmol,63%)を緑色固体として得た。
化合物32は、融点:300 ℃ で分解; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87 (t, J=6.40 Hz, 6H), 1.25-1.34 (m, 12H), 1.53-1.57 (m, 4H),
2.75-2.92 (m, 4H), 3.43-3.47 (m, 8H), 7.22-7.26 (m, 2H), 7.36-7.39 (m, 2H), 7.41-7.43 (m, 2H), 7.60-7.63 (m, 2H);
MS (DI) m/z=642 (M) (calcd.=642); IR ( KBr ) 2206.57 cm-1 ;
Anal. Calcd for C35H38N4O2SSe2: C, 57.06; H, 5.20; N, 7.61%;
Found: C, 57.06; H, 5.38; N, 7.69%
という測定結果であった。
<化合物33>
窒素雰囲気下、セレノフェン(2.00g,15.3mmol)を無水THF(15ml)に溶解し、−78℃に冷却した。n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(1.57M,9.95ml,15.7mmol)を滴下し室温まで昇温させた。15分間撹拌した後、−20℃に冷却し、トリブチルチンクロライド(4.84ml,17.9mmol)を滴下した。室温で24時間撹拌した後、水(20ml)を加えた。反応溶液をヘキサン(30ml×3)で抽出し、水(30ml×1)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で留去した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン、Rf=0.9)で精製し淡黄色液体を得た(6.46g,100%)。
化合物33は、1H-NMR(CDCl3, 400 MHz)
δ0.90( t, J = 7.3 Hz, 9H), 1.10 (t, J = 8.1 Hz, 6H),
1.34 (sexi, J = 7.3 Hz, 6H), 1.57 (quint, J = 8.1 Hz, 6H),
7.48-7.51 (m, 2H), 8.35 (dd, J = 1.0 Hz, 4.9 Hz, 1H)
<化合物34>
窒素雰囲気下、アルコール体(400mg,2.17mmol)のDMF(30ml)溶液に、水素化ナトリウム(60% in oil,208mg,8.68mmol)を加え室温で30分攪拌した。氷冷下、n−臭化オクチル(1.08g,0.96ml,6.51mmol)を1時間かけて滴下し、室温で24時間攪拌した。反応終了後、水を加えた。ヘキサン(150ml×3)で抽出後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,塩化メチレン)でRf0.7の成分を分取することで化合物34(564mg,1.38mmol,99%)を無色油状物として得た。
化合物34は、H-NMR(400 MHz, CDCl3)
δ 0.88(t, J=7.08 Hz, 6 H), 1.24-1.27(m, 20 H), 1.53(m, 4 H), 2.59(s, 4 H), 3.36(s, 4 H), 3.39(t, J=6.84 Hz, 4 H), 6.73(s, 2 H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.0, 22.6, 26.1, 29.3, 29.4, 29.5, 31.8, 33.2, 55.3, 71.4, 73.6, 114.6, 147.0;
MS (DI) m/z =408(M) (calcd.=408)
という測定結果であった。
<化合物35>
化合物34(895mg,2.19mmol)のDMF(40ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(780mg,4.38mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られたき淡黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=3:1)でRf0.3の成分を分取することにより、化合物35(1.00g,1.77mmol,89%)を淡黄色油状物として得た。
化合物35は、H-NMR(400 MHz, CDCl3)
δ 0.88(t, J=6.40 Hz, 6H), 1.25-1.30(m, 20H), 1.52-1.57(m, 4H), 2.54(s, 4H), 3.34(s, 4H), 3.40 (t, J=6.80 Hz, 4 H)
という測定結果であった。
<化合物36>
窒素雰囲気下、化合物35(1.0g,1.77mmol)と化合物33(1.65g,3.89mmol)の無水トルエン(50ml)溶液に、30分間アルゴンガスを吹き込み脱気した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(204mg,0.18mmol)を加え、20時間環流した。反応終了後、室温まで冷却した後、セライトを用いてろ別し、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られたオレンジ色の固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.3の成分を分取した後、エタノール−ヘキサン混合溶媒で再結晶することにより、化合物36(520mg,0.78mmol,60%)を黄色針状結晶として得た。
化合物36は、融点:69-70 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=6.84 Hz, 6H), 1.26-1.35(m, 20H), 1.52-1.57(m,4H), 2.71(s, 4H), 3.39-3.43(m, 8H), 7.23-7.27(m, 4H), 7.92(dd, J=1.24, 5.16 Hz, 2H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.1, 22.6, 26.1, 29.3, 29.4, 29.5, 31.8, 34.3, 55.2, 71.5, 73.8, 125.1, 127.5, 129.6, 130.0, 141.8, 144.0;
MS (DI) m/z=668(M) (calcd.=668);
Anal. Calcd for C33H48O2SSe2: C, 59.45; H, 7.26%;
Found: C, 59.33; H, 7.32%
という測定結果であった。
<化合物37>
氷浴下、化合物36(161mg,0.24mmol)のクロロホルム(40 ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(85mg,4.82mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン:塩化メチレン=2:1)でRf0.7の成分を分取し、エタノール−ヘキサン混合溶媒で再結晶することにより、化合物37(172mg,0.21mmol,89%)を黄色針状結晶として得た。
化合物37は、融点:61-62 ℃; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87(t, J=7.08 Hz, 6H), 1.26-1.34(m, 20H), 1.51-1.55(m, 4H), 2.63(s, 4H), 3.40-3.43(m, 8H), 6.94(d, J=4.16, 2H), 7.16(d, J=4.16 Hz, 2H) ;
13C-NMR(100 MHz, CDCl3
δ 14.1, 22.6, 26.2, 29.3, 29.4, 29.5, 31.8, 34.1, 55.4, 71.5, 73.7, 114.6, 124.8, 127.0, 133.4, 143.4, 144.4;
MS(MALDI-TOF)m/z=824(M+2)(calcd.=824); C33H46Br2O2SSe2: C, 48.07; H, 5.62%; Found: C, 47.98; H, 5.66%
という測定結果であった。
<化合物38>
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60% in oil,58 mg,1.96mmol)マロノニトリル(65mg,0.98mmol)をTHF(20ml)溶液に加え、室温で30分攪拌した。反応容器を遮光し、Pd(PPh(1mg,0.98μmol)、dppf(1mg,1.80μmol)を加え、化合物37(81mg,98.2μmol)のTHF(30ml)溶液を20分かけて滴下し、20時間還流した。反応終了後、2N塩酸水溶液を加え、30分攪拌した。クロロホルム(50ml×3)で抽出後、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒除去後、得られた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(10%低活性シリカゲル,クロロホルム)でRf0.5の成分を分取し、アセトン−アセトニトリルで再結晶することにより、化合物38(48mg,0.06mmol,61%)を緑色固体として得た。
化合物38は、融点:300 ℃ で分解; H-NMR(400 MHz, CDCl3
δ 0.87 (t, J=5.40 Hz, 6H), 1.25-1.30 (m, 20H), 1.53-1.57 (m, 4H),
2.74-2.92 (m, 4H), 3.43-3.46 (m, 8H), 7.22-7.26 (m, 2H), 7.36-7.39 (m, 2H), 7.46-7.50 (m, 2H), 7.60-7.63 (m, 2H);
MS (DI) m/z=794 (M) (calcd.=794); IR ( KBr ) 2206.57 cm-1
という測定結果であった。
本発明の有機半導体材料は、以上のように、一般式(1)
Figure 0005131701
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および/または硫黄原子に置換されていてもよく、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよいアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がアリール基に置換されたアルキル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表し、R,Rはそれぞれ独立して硫黄原子またはセレン原子を表し、a,bおよびcは整数を表す)で表される化合物を含むものである。
それゆえ、上記構成によれば、上記化合物がシクロペンタン縮環型チオフェンを有しているので、溶解性の低下を防ぐことができる。また、シクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンをシクロペンタン縮環型チオフェンの末端に導入しているので、伝導性の低下を防ぐことができる。
また、上記構成によれば、上記化合物が電子を吸引するシアノ基により極性構造を持つため、n型トランジスタ動作が可能となり、大気中でも安定に駆動可能となるという効果を奏する。
すなわち、上記構成によれば、可溶性部分であるシクロペンタン縮環型チオフェンと、分子間の重なりを大きくできる部分であるシクロペンタン縮環型でないチオフェンまたはセレノフェンと、極性を有するシアノ基とを組み合わせた構造を取るため、溶接法を利用可能で、大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料を提供することができるという効果を奏する。
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。
以上のように、本発明では、有機半導体材料の溶解性、伝導性、および電子移動度を向上させることができるため、溶接法を利用可能で大気中でも安定にn型トランジスタ動作が可能な有機半導体材料を提供することが可能となる。そのため、本発明は、トランジスタ、有機FETデバイス、ダイオード、コンデンサ、薄膜光電変換素子、色素増感太陽電池、薄膜トランジスタ(TFT)、有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイス、有機ELデバイス等の分野に広く応用することが可能である。

Claims (19)

  1. 一般式(1)
    Figure 0005131701
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子および/または硫黄原子に置換されていてもよく、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよいアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の水素原子がアリール基に置換されたアルキル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表し、R,Rはそれぞれ独立して硫黄原子またはセレン原子を表し、a,bおよびcは整数を表す)で表される化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。
  2. 上記官能基の炭素数が1以上18以下であり、かつ、a+b+cが6以下であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の有機半導体材料。
  3. 上記RとRとが同一の原子または官能基であり、上記RとRとが同一の原子または官能基であり、上記RとRとが同一の原子であって、かつ、a=cであることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の有機半導体材料。
  4. 一般式(1)中、RおよびRは硫黄原子を表すことを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  5. 一般式(1)中、RおよびRはブトキシメチル基、RおよびRは水素原子、RおよびRは硫黄原子を表すことを特徴とする請求の範囲第4項に記載の有機半導体材料。
  6. 一般式(1)中、RおよびRはブトキシメチル基、RおよびRはメチル基、RおよびRは硫黄原子を表すことを特徴とする請求の範囲第4項に記載の有機半導体材料。
  7. 電子移動度が10−3cm/Vs以上であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  8. 上記有機半導体材料がn型トランジスタ材料であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  9. 請求の範囲第8項に記載の有機半導体材料と、p型トランジスタ材料とを含む両性トランジスタ材料であることを特徴とする有機半導体材料。
  10. 大気中で駆動可能であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第9項のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  11. 常温で駆動可能であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の有機半導体材料。
  12. 常圧で駆動可能であることを特徴とする請求の範囲第10項または第11項に記載の有機半導体材料。
  13. アニール処理されていることを特徴とする請求の範囲第1項〜第12項のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
  14. 請求の範囲第1項から第13項のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする有機半導体デバイス。
  15. 有機キャリア輸送層および/または発光層を有する発光デバイスであることを特徴とする請求の範囲第14項に記載の有機半導体デバイス。
  16. 有機半導体層を有する薄膜トランジスタであることを特徴とする請求の範囲第14項または第15項に記載の有機半導体デバイス。
  17. 請求の範囲第1項から第13項のいずれか1項に記載の有機半導体材料を溶接法により基板に配置する工程を含む有機半導体デバイスの製造方法。
  18. 請求の範囲第1項から第13項のいずれか1項に記載の有機半導体材料を製造する方法であって、
    一般式(2)
    Figure 0005131701
    (式中、R,Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、R,R10はそれぞれ独立してハロゲン原子を表す)で表される化合物と、
    一般式(3)
    Figure 0005131701
    (式中、R11はアルキル基を表し、R12は硫黄原子またはセレン原子を表す)で表される化合物とを反応させて、
    一般式(4)
    Figure 0005131701
    (式中、R,Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、R12は硫黄原子またはセレン原子を表す)で表される化合物を製造し、
    その後に、該一般式(4)で表される化合物のエステル基を還元処理する工程を含むことを特徴とする有機半導体材料の製造方法。
  19. 一般式(2)中、RおよびRはエチル基、RおよびR10は臭素原子、一般式(3)中、R11はブチル基、R12は硫黄原子、一般式(4)中、RおよびRはエチル基、R12は硫黄原子を表すことを特徴とする請求の範囲第18項に記載の有機半導体材料の製造方法。
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