JP2005140948A - チオフェン化合物を含有する電子写真感光体 - Google Patents

チオフェン化合物を含有する電子写真感光体 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた電子輸送能を有する新規な電子輸送化合物を用いて、帯電性に優れ、高感度であり、且つ残留電位が小さく、更に繰返し使用してもそれらの特性の変化が少ない耐久性に優れた電子写真感光体を提供する。
【解決手段】 新規なチオフェン化合物を電子輸送剤として感光層に含有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特定のチオフェン化合物より成る有機電子輸送化合物、およびこのチオフェン化合物を含有した電子写真感光体に関する。また、本発明は、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
有機の電荷輸送化合物としては従来、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン等の共役二重結合を有する高分子化合物やピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、あるいはアミノ基を有するスチルベン系化合物等が数多く提案されており、電子写真感光体、有機薄膜電界発光素子やフォトセル等の利用が検討されている。しかし、これらの殆どがいわゆる正孔を輸送する化合物(p型半導体)である。
一方、電子を輸送する化合物(有機n型半導体)の例はあまり多くない。代表的なものとして2,4,7−トリニトロフルオレノン、特開昭60−69657号公報記載のフルオレニデンメタン化合物、特開平05−279582号公報記載のフルオレン化合物、特開昭61−233750号公報記載のアントキノジメタン及びアントロン化合物、特開平4−285670号公報記載のジフェノキノン化合物、特開平9−151157公報記載のナフトキノン化合物、特開平2−136861号公報記載及び特開平9−3061号公報記載のチオフェン化合物、特開平5−25136号公報記載のナフタレンジカルボン酸イミド化合物、特開平1−39098号公報、特開平5−25174号公報、米国特許第4442193号明細書、米国特許第5468583号明細書、特公平1−39098号公報及び特開平11−343290号公報等に記載のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物等が開示されている。
電子輸送材料を電子写真に使用出来れば、光を吸収して電荷を発生する電荷発生化合物を有する電荷発生層上に電子輸送化合物を含有する電荷輸送層を設けた正帯電で使用する積層感光体や電荷発生化合物と正孔輸送化合物と電子輸送化合物を混合した正負両帯電可能な単層感光体の設計が可能となる。
電子写真感光体に使用する際、正孔輸送化合物及び電子輸送化合物の何れの場合も求められる特性としては、1.電荷発生化合物とのエネルギー的マッチング、2.高い正孔/電子移動度、3.感光層を形成する際のバインダー及との相溶性、4.熱,光等に対する安定性、5.毒性を有さない等が挙げられる。
しかし、先に挙げた電子輸送化合物を含め、このような要求を全て満たす電子輸送化合物は現状では殆ど開発されていないのが現状である。一方、正孔輸送化合物は上記要求をかなり高いレベルですべて満足するものが数多く提案されている。よって現在迄に実用化に至った電子写真有機感光体の殆どは、電荷発生化合物を含有する電荷発生層上に、正孔輸送化合物を含有する電荷輸送層を上層とする負帯電用積層感光体である。
ところが負帯電では、正帯電に比べ帯電時にオゾン、窒素酸化物などの発生量が多く、それらが感光体表面に吸着するなどにより、電子写真感光体の物理劣化や化学劣化を引き起こしやすく、特にオゾンの発生量が多い事は人体、環境に与える影響の点で近年大きな問題として指摘されている。また感光体表面の負電荷は正電荷に比べ不安定であり,解像度の悪化や画像流れ等の原因の一つにもなっている。更に、負帯電用感光体における静電潜像の現像には正極性のトナーが必要となるが、正極性のトナーは強磁性体キャリア粒子に対する摩擦帯電系列からみて製造が難しくトナー設計のラチチュードが狭くなり、開発に大きな負荷がかかる。
そこで近年、先に述べたように有機電子輸送化合物を用いた、正帯電型の電子写真感光体の研究開発が活発に成されており近年数多く提案が成され,その一部は実用化されているものもある。しかし、実際は正孔輸送性化合物を用いた負帯電積層感光体に比べ感度が低く、また繰り返し使用時の電位変動や耐久性の面で追いついていないのが実状である。この原因の大部分が先に述べたように、電子輸送化合物が正孔輸送化合物に比べ電荷輸送化合物として要求される特性を全て高いレベルで満足するものがないからである。
一方、現在主流で使用されている負帯電用積層感光体でもいまだ少なからず大きな問題を抱えている。積層感光体の電荷発生層は、基本的に電荷発生化合物と結着剤より構成されている。一般的に電荷発生化合物は電荷輸送能に劣る為、光照射により電荷発生化合物で生じた正孔と電子のうち層界面近傍の電荷のみが電荷輸送層や下地層へ輸送され、残りは再結合やフリー電荷として電荷発生層中に残留してしまう。これは感光体の感度悪化、繰り返し使用時での電位変動または各種メモリー現象を引き起こす大きな原因となっている。このため電荷発生層は通常0.1〜1μm程の極薄膜で出来るだけ使用する必要があるが、それでも上記問題は十分改善されていないのが現状である。これに対して電荷発生層中の生成した電荷の抜けを良くする為に感光層中に正孔輸送化合物や電子輸送化合物を添加する方法が従来から提案されているがそれでも十分問題点を改善するに至っていない。その原因の一つには先に述べたように正孔輸送化合物に比べ電荷輸送化合物として要求される特性を全て高いレベルで満足するものがないからである。
一に、従来の有機電子輸送化合物に比べ高い電子移動度を有し、化学的に安定で且つ有機溶剤に対する溶解性やバインダーとの相溶性に優れた新規な電子輸送化合物を提供することにある。
第二に、従来の電子輸送化合物を用いた電子写真感光体は、特に、感度が不十分であり、また残留電位が大きく、繰返し特性に劣っているという問題がある。そこでこのような問題点を解決する為に、優れた電子輸送能を有する新規な電子輸送化合物を用いて、帯電性に優れ、高感度であり、且つ残留電位が小さく、更に繰返し使用してもそれらの特性の変化が少ない耐久性に優れた電子写真感光体を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決すべき鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物が電子輸送化合物として極めて優れていることを見出し本発明に至った。
すなわち下記一般式(1)で示されるチオフェン化合物が極めて電子輸送能に優れ、且つ感光体として使用する際の電子輸送化合物に要求される特性を高いレベルで満足することを見出した。
Figure 2005140948
(式中、Wはチオフェン環またはベンゼン環を示す。R1またはR2はそれぞれ独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボン酸エステル基等を示し、p及びqは0〜3の間の整数を示す。Arは置換基を有してもよいアリール基を示す。
また、上記一般式(1)の電子輸送性化合物を電子写真感光体に使用した場合、帯電性に優れ、高感度であり、且つ残留電位が小さく、更に繰返し使用してもそれらの特性の変化が少ない耐久性に優れた電子写真感光体が提供出来る。
本発明の電子輸送能を有する新規なチオフェン化合物を用いる事により、正負何れの帯電系でも帯電性に優れ、高感度であり、且つ残留電位が小さく、更に繰返し使用してもそれらの特性の変化が少ない高感度で耐久性に優れた電子写真感光体を提供することが出来た。また、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する事も可能となった。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず本発明の一般式(1)の電子輸送化合物について説明する。上記一般式(1)におけるWは置換基を有しても良いチオフェン環または置換基を有してもよいベンゼン環を示す。R1またはR2はそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、オクチル基等のC1〜C10のアルキル基アルキル基、置換基を有しても良いメトキシ基、エトキシ基、プロポコシ基等のアルコキシ基、置換基を執してもよいメチルカルボン酸エステル基、エチルカルボン酸エステル基等のカルボン酸エステル基等を示し、p及びqは0〜3の間の整数を示す。Arは置換基を有しても良いフェニル、ナフチル、ピリジル、チエニル、フリル等のアリール基を示す。
上記一般式(1)のR1、R2及びArが有しても良い置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、ナフトキシ等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、フェニル、ナフチル、ピリジル、キノリル、チエニル、フリル等の複素環基、アセチル、ベンジル等のアシル基、トリフルオロメチルなどのハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、フェニルカルバモイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
尚、一般式(1)のArがベンゼン環で示される場合がより好ましい。
次に上記一般式(1)の化合物例を次の表1に挙げるがこれらに限定されるわけではない。
Figure 2005140948
Figure 2005140948
次に本発明の電子写真感光体の形態を以下に説明する。本発明の電子写真感光体の形態としては、
1.導電性基体上に電荷発生化合物と必要に応じて結着剤を含有する電荷発生層を下層とし、電子輸送化合物と必要に応じて結着剤を含有する電荷輸送層を上層とする積層構成の感光層を設けたもの、
2.導電性基体上に電荷発生化合物、電子輸送化合物及び正孔輸送化合物と必要に応じて結着剤を含有する単層構成の感光層を設けたもの、
3.導電性基体上に電荷発生化合物及び電子輸送化合物と必要に応じて正孔輸送化合物または/及び結着剤を含有する電荷発生層を下層とし、正孔輸送化合物と必要に応じて結着剤を含有する電荷輸送層を上層とする積層構成の感光層を設けたもの、
4.導電性基体上に電荷発生化合物及び電子輸送化合物と必要に応じて正孔輸送化合物または/及び結着剤を含有する電荷発生層を下層とし、電子輸送化合物と必要に応じて結着剤を含有する電荷輸送層を上層とする積層構成の感光層を設けたもの等が挙げられる。
感光層の形態が1.及び4.においては正帯電で、3.においては負帯電で2.において正負両帯電で使用することができる。
本発明における導電性支持体としては、例えば下記の形態のものを挙げることができる。
(1)アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、銅等の金属や合金を板形状またはドラム形状にしたもの、
(2)ガラス、樹脂、紙等の非導電性支持体や前記(1)の導電性支持体上にアルミニウム、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属を蒸着もしくはラミネートすることにより薄膜形成したもの
(3)ガラス、樹脂、紙等の非導電性支持体や前記(1)の導電性支持体上に導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性化合物の層を蒸着あるいは塗布することにより形成したもの等。
本発明において用いられる電荷発生化合物としては、例えばこれ迄に既知の次の様な化合物が挙げられる。(1)モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ系顔料、(2)金属フタロシアニン、非金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、(3)インジゴ、チオインジゴ等のインジゴ系顔料、(4)ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミド等のペリレン系顔料、(5)アンスラキノン、ピレンキノン等の多環キノン系顔料、(6)スクワリリウム色素、(7)ピリリウム塩、チアピリリウム塩類、(8)トリフェニルメタン系色素、(9)セレン、非晶質のシリコーン等の無機物質等。
これ等の電荷発生化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また本発明において用いられる正孔輸送化合物としてはこれ迄に既知の化合物が挙げられ、例えば各種ブタジエン系化合物、各種トリアリールアミン系化合物、各種ヒドラゾン系化合物、各種スチルベン系化合物、各種ピラゾリン系化合物、各種オキサゾール系化合物、各種チアゾール系化合物、各種トリアリールメタン系化合物等の低分子化合物等の他に、ポリシラン系化合物や特開平9−272735や特開平9−62019などの電荷輸送性樹脂等である。
これ等の正孔輸送化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生層と電荷輸送層との積層構成で形成される感光層(実施形態1)を有する本発明の電子写真感光体を作成するには、電荷発生物質を適当な結着剤に分散し、これを導電性支持体上に浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法等のコーティング法塗工または、蒸着、スパッタ、CVD等の乾式法で薄膜を形成することによっても形成することができる。
電荷発生層中に含有する樹脂は80重量%以下、好ましくは40重量%以下とする。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下、特には0.01〜2μmの範囲の薄膜層とすることが好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤または他の電荷発生化合物を必要に応じて添加することもできる。
次いで、電子輸送化合物(前記一般式(1)で表されるナフタレンアミジンイミド化合物)を適当な溶媒に単独もしくは適当なバインダー樹脂とともに溶解もしくは分散せしめた電荷輸送層用塗液を電荷発生層上に塗布し乾燥させることにより電子輸送層を形成すればよい。
電荷輸送層は、上述の電荷発生層と電気的の接続されており、電界の存在下で電荷発生層から注入された電荷キヤリアを受け取ると共に、これ等の電荷キヤリアを表面まで輸送する機能を有している。この電荷輸送層は電荷キヤリアを輸送する限界があるので必要以上に膜厚を厚くすることができないが、5〜40μm、特には7〜30μmの範囲が好ましい。また、結着剤と電子輸送物質との配合割合は、結着剤100重量部あたり電子輸送物質を10〜500重量部とすることが好ましく、更に好ましくは結着剤100重量部あたり電子輸送物質を30〜150重量部とすることが好ましい。
更に、電荷輸送層中に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤または他の公知の電子輸送化合物を必要に応じて添加することもできる。
このような電荷輸送層の形成は、適当な有機溶媒を用い、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法等のコーティング法を用いて行うことができる。
上記電荷発生層及び電荷輸送層に使用される結着剤としては、広範囲な結着性樹脂から選択でき、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスツレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂が挙げられるが、これ等に限定されるものではない。これ等の樹脂は単独またはコポリマーとして1種または2種以上混合して用いてもよい。
また電荷発生層及び電荷輸送層作成時に使用される各塗液に用いられる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルメタン等を挙げることができる。
電子輸送化合物(前記一般式(1)で表されるチオフェン化合物)を少なくとも含有する電荷発生層と電荷輸送層との積層構成で形成される感光層(実施形態(3)または(4))を有する本発明の電子写真感光体を作成するには、電荷発生化合物を適当な結着剤に分散した液に前記一般式(1)で示されるチオフェン化合物化合物を添加した塗工液を先の実施形態(1)の場合と同様な方法で導電性支持体上塗布し薄膜を形成する。結着剤と電荷発生化合物との配合割合は、結着剤100重量部あたり電荷発生化合物を0.5〜500重量部とすることが好ましく、更に好ましくは結着剤100重量部あたり電荷発生化合物を50〜400重量部とすることが好ましい。また、結着剤とチオフェン化合物との配合割合は、結着剤100重量部あたりチオフェン化合物を10〜500重量部とすることが好ましく、結着剤100重量部あたりチオフェン化合物を50〜400重量部とすることが更に好ましい。また、電荷発生層の膜厚は10μm以下、特には0.05〜5μmの範囲のとすることが好ましい。
更に、電荷発生層中に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、公知の正孔輸送化合物または他の公知の電子輸送化合物を必要に応じて添加することもできる。
尚、この場合の電荷発生化合物として好ましいのは、一般的に電子輸送能に乏しいとされている(P型半導体)電荷発生化合物であり、その中でも特に好ましくは例えばフタロシアニン系顔料が挙げられる。
次いで、電子輸送化合物または正孔輸送化合物を適当な溶媒に単独もしくは適当なバインダー樹脂とともに溶解もしくは分散せしめた電荷輸送層用塗液を電荷発生層上に塗布し乾燥させることにより電子輸送層を形成すればよい。
電荷輸送層は、上述の実施形態(1)と同様に5〜40μm、特には7〜30μmの範囲が好ましく、結着剤と電子輸送化合物または正孔輸送化合物との配合割合は、結着剤100重量部あたり電子輸送物質を10〜500重量部とすることが好ましく、更に好ましくは結着剤100重量部あたり電子輸送物質を30〜150重量部とすることが好ましい。
更に、電荷輸送層中に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤または他の公知の電子輸送化合物または正孔輸送化合物を必要に応じて添加することもできる。
また、上記電荷発生層及び電荷輸送層に使用される結着剤及び電荷発生層及び電荷輸送層作成時に使用される各塗液に用いられる溶媒は実施形態1と同様である。
また、単層構成の感光層を有する本発明の電子写真感光体を作成(実施形態2)するには、電荷発生化合物、前記一般式(1)で表されるチオフェン化合物及び正孔輸送化合物を適当な溶媒に適当なバインダー樹脂とともに溶解もしくは分散せしめ、その感光層用塗液を導電性基体上に塗布し乾燥させることにより感光層を形成すればよく、電荷発生化合物、前記一般式(1)で表されるチオフェン化合物及び正孔輸送化合物がバインダー樹脂に含有される割合としては、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生化合物を0.5〜50重量部、チオフェン化合物を5〜200重量部及び正孔輸送化合物を5〜200重量部とすることが好ましく、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生化合物を1〜10重量部、チオフェン化合物を30〜120重量部及び正孔輸送化合物を30〜120重量部である場合が更に好ましい。
更に、感光層中に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、公知の正孔輸送化合物または他の公知の電子輸送化合物を必要に応じて添加することもできる。
この際用いられる樹脂、塗工溶剤及び塗布方法は先の積層構成の感光体を使用する再に説明したものの中から任意に選択し使用することができる。
さらに、本発明の電子写真感光体においては、導電性基体と感光層との間に下引き層を設けてもよく、この下引き層は接着層またはバリヤ層として機能するものであり、前記のバインダー樹脂のほかに、例えばポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カゼイン、N−アルコキシアルキルナイロン等の樹脂をそのまま、又は酸化錫、インジウム或いは酸化チタンなどを分散させたもの、酸化アルミニウム或いは酸化ケイ素などの蒸着膜等が用いられる。下引き層の膜厚は2μm以下が好ましい。
また、感光層上には保護層を設けてもよく、保護層の材料としては、結着樹脂をそのまま使用するか、又は酸化錫や酸化インジウムなどの低抵抗物質や電子あるいは正孔輸送化合物をバインダー樹脂に含有させたものが適当である。この際の結着樹脂としては先に述べた結着樹脂や硬化性樹脂などが挙げられる。更に、有機プラズマ重合膜も使用でき、その有機プラズマ重合膜は、必要に応じて適宜酸素、窒素、ハロゲン、周期率表の第III族、第V族原子を含んでいても良い。
(実施例及び比較例)
以下に本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが特にこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
まず導電層用の塗料を以下の手順で調整した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(質量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部およびシリコーン化合物(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調整した。この塗料を30φのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、150℃で30分乾燥して、膜厚15μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調整した。この塗料を前記の導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、100℃で20分間乾燥して、0.5μmの中間層を形成した。
CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2°において9.0°、14.2°、23.9°及び、28.2°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン顔料を1.2部、ポリビニルブチラ−ル(商品名エスレックBX−1、積水化学(株)製)1.0部及びシクロヘキサノン35部、φ1mmガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で3時間分散して、その後にテトラヒドロフラン60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬塗布方法で塗布して105℃で10分間乾燥し、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送化合物として例示化合物NO.5を4部及びビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量25,000)6部をモノクロロベンゼン38gに溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷発生層の上に浸漬塗布方法で塗布して110℃で60分間乾燥し、膜厚18μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた電子写真用感光体をドラム感光体試験装置(ジェンテック社製の「シンシア−59」)を用いて電子写真特性を測定した。
測定方法は、ドラム感光体を暗所下60rpmで回転させながら、コロナ放電により正帯電させ、電位プローブ位置での電位Vが+700vになるように一次電流を制御した。ここで,光源としてハロゲンランプを用い、フィルターで単色光(775nm)としたものを照射し、表面電位がV0の1/2に減少するまでの露光量を求め、半減露光量E1/2 として感度とした。更に帯電/露光後に波長700nmの発光ダイオードにより15μJ/cm2 のエネルギーを与えて除電する前露光工程を入れ、この電位を残留電位(Vr)とした。
更に、上記プロセスを1000回繰り返し、直後に同様な電位測定を行い、繰り返し安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(実施例2〜10)(比較例1〜8)
実施例1の電荷輸送物質を表2に示されるように変えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し同様な評価を行った。それらの結果を表2に示す。但し、電子輸送物質(A−1)〜(A−8)は下記の表3に示す。
Figure 2005140948
(実施例11)
電荷発生化合物としてCuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2°において7.4°及び28.2°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を2部、正孔輸送化合物として下記表5に示す化合物(H−1)を50部、電子輸送化合物として例示化合物No.5を40部、結着剤としてビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量45,000)を100重量部および溶媒として800重量部のテトラヒドロフランをボールミルで30時間混合分散して単層型感光層用塗布液を調整した。この調整液を陽極酸化したアルミニウム管上に塗布した後、110℃で60分間乾燥することにより膜厚16μmの単層型電子写真用感光体を作製した。
得られた電子写真用感光体をドラム感光体試験装置(ジェンテック社製の「シンシア−59」)を用いて電子写真特性を測定した。
測定方法は、ドラム感光体を暗所下60rpmで回転させながら、コロナ放電により正帯電させ、電位プローブ位置での電位Vが+700vになるように一次電流を制御した。ここで,光源としてハロゲンランプを用い、フィルターで単色光(775nm)としたものを照射し、表面電位がVの1/2に減少するまでの露光量を求め、半減露光量E1/2 として感度を評価した。更に帯電/露光後に波長700nmの発光ダイオードにより20μJ/cm2 のエネルギーを与えて除電する前露光工程を入れ、この電位を残留電位(Vr)とした。
更に、上記プロセスを500回繰り返し、直後に同様な電位測定を行い、繰り返し安定性を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2005140948
(実施例11〜20)(比較例9〜16)
実施例10の電子輸送化合物または正孔輸送化合物を表4に示されるように変えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し同様な評価を行った。それらの結果を表5に示す。
Figure 2005140948
Figure 2005140948
(実施例21)
実施例1と同様にアルミニウムシリンダー上導電層、中間層を形成した。
次にCuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2°において7.4°、16.6°、25.5°、及び28.2°に強いピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料を3部、ポリビニルブチラ−ル(商品名エスレックBH−S、積水化学(株)製)3部、例示化合物No.5の電子輸送化合物1部、表5の正孔輸送性化合物(A−3)1部、テトラヒドロフラン25部およびシクロヘキサノン10部、φ1mmガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で15時間分散して、その後にテトラヒドロフラン60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬塗布方法で塗布して115℃で10分間乾燥し、膜厚0.6μmの電荷発生層を形成した。
次に、正孔輸送化合物として表5の(H−2)の化合物50部及びビスフェノールZ型ポリカーボネート(粘度平均分子量35000)60部をモノクロロベンゼン350gに溶解し、この液を前記の電荷発生層の上に浸漬塗布方法で塗布して100℃で60分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
この感光体をレーザービームプリンター(LASER SHOT LBP-930:キヤノン製)の改造機において常温常湿下(23℃、55%RH)(N/N)で、初期暗部電位(Vd)が−700(V)になるように帯電設定をし、これに波長780(nm)のレーザー光を照射して−700(V)の電位を−200(V)まで下げるのに必要な光量(EΔ500)を測定し感度とした。さらに、20(μJ/cm^2)の光量を照射した場合の電位を残留電位(Vr)として初期特性を測定した。尚、その他の条件は、転写電流:+5.5μA、プロセススピード:106mm/secで行った。
次に新たに上記と同様の方法で作成した感光体を、上記と同様の改造機において、初期暗部電位(Vd)/初期明部電位(Vl)が−700(V)/−200(V)になるように帯電および像露光光量を設定し、常温低湿下(23℃、10%RH)(N/L)で連続2000枚の通紙耐久を行って、初期と耐久直後の暗部電位と明部電位の変動量の絶対値(│ΔVd│と│ΔVl│)を測定した。
更に、白色光に対するフォトメモリーの測定として、同様の感光体を上記と同様の改造機のシリンダーに貼り付けてN/Nで、初期暗部電位(Vd)/初期明部電位(Vl)が−700(V)/−200(V)になるように帯電および像露光光量を設定し、次に、この電子写真感光体に暗部と明部が出来るようにマスキングし、蛍光灯下で3000lux、20分間光照射した後、5分間放置し、同様に電位を測定し暗部電位の初期との変化量の絶対値(ΔVd1)をフォトメモリーとして測定した。
それらの結果を表6に示す。
(実施例21〜32)(比較例19〜28)
実施例19の電子輸送化合物および正孔輸送化合物を表7に示されるように変えた以外は、実施例19と同様にして電子写真感光体を作成し同様な評価を行った。それらの結果を表6に示す。
Figure 2005140948

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で示されるチオフェン化合物。
    Figure 2005140948
    (式中、Wはチオフェン環またはベンゼン環を示す。R1またはR2はそれぞれ独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボン酸エステル基等を示し、p及びqは0〜3の間の整数を示す。Arは置換基を有してもよいアリール基を示す。
  2. 上記一般式(1)のArが置換基を有してもよいベンゼン環で示される請求項1記載のチオフェン化合物。
  3. 請求項1〜2に記載の一般式(1)のチオフェン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
  4. 導電性基体上に直接又は下引き層を介して、電荷発生層、電子輸送性化合物を含有する電荷輸送層を順次積層して構成される電子写真用感光体において、該電荷輸送層に請求項1〜2に記載の一般式(1)のチオフェン化合物を少なくとも一種類含有させることを特徴とする電子写真用感光体。
  5. 導電性基体上に直接又は下引き層を介して、電荷発生層、正孔あるいは電子輸送能を有する化合物を含有する電荷輸送層を順次積層して構成される電子写真用感光体において、該電荷発生層に請求項1〜2に記載の一般式(1)のチオフェン化合物を少なくとも一種類含有させることを特徴とする電子写真用感光体。
  6. 導電性基体上に直接又は下引き層を介して単層の感光層を設けてなり、その感光層は少なくとも電荷発生化合物、正孔輸送化合物及び電子輸送化合物が結着剤中に分散され、かつ、該電子輸送化合物が少なくとも請求項1〜2に記載の一般式(1)のチオフェン化合物であることを特徴とする単層型電子写真用感光体。
  7. 請求項3〜6の何れかに記載の電子写真感光体、及び帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  8. 請求項3〜6の何れかに記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及びクリーニング手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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