JP5131249B2 - 薄膜太陽電池 - Google Patents
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Description
一方、多結晶シリコンを用いた薄膜太陽電池としては、その構造として、a−Siを用いた薄膜太陽電池と同様にpin構造を採用することが多い。具体的には、透明電極が形成されたガラス基板上に多結晶シリコン薄膜からなるp層、i層、及びn層を順次積層するか、あるいは、ステンレス等の不透光性基板の上にn層、i層、及びp層を順次積層することにより構成される。
図13(a)に示すように、集電ホール306が形成されることによって露出したフィルム基板301の端面には、a−Si系膜303、透明電極304、及び背面電極305が順次成膜され、透明電極304と背面電極305とが接続される。一方、図13(b)に示すように、直列接続ホール307が形成されることによって露出したフィルム基板301の端面には、a−Si系膜303、透明電極304、及び背面電極305が順次成膜され、金属電極302と背面電極305とが接続される。
まず、脱ガスの影響によってセル特性が低下する一例として、直列接続ホールを形成した基板(参考例1)、及び直列接続ホールを形成しない基板(参考例2)を用い、その上に積層した薄膜よりなるセルを形成して、各特性を評価した結果を表1に示す。表1において、「VOC」は開放電圧値(V)を示し、「JSC」は短絡光電流密度(mA/cm2)を示し、「FF」はフィルファクターを示し、「Eff」は変換効率(%)を示す。
従って、フィルム基板上にa−Siや微結晶Siのような薄膜を成膜し、直列接続構造のセルを作製してなる薄膜太陽電池においては、通常1×1020atoms/cm3程度の酸素が薄膜中に混入することになる。
また、多結晶シリコンの吸収係数は、a−Siの吸収係数に比べると一桁程度小さいため、十分な光電流を得るには、薄膜の厚さを比較的厚くする必要がある。しかし、このように膜厚が厚いと、電界プロファイルが歪みやすく、内部電界0の領域が容易にできてしまう。特に、膜厚が1〜3μm程度に厚くされたi層においては、膜中酸素量が多いと、弱n型化することにより、キャリアを取り出せないデッドレイヤーがi層のn層側にでき(図11(b)参照)、短絡光電流密度(Jsc)が低下してしまう。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、直列接続構造をなす薄膜太陽電池であって、最下層セルにおけるn層の光吸収の低下を抑制し、変換効率が高いSCAF構造の薄膜太陽電池を提供することにある。
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、上記課題を解決するための本発明の請求項1に係る薄膜太陽電池は、絶縁性の基板上に第一電極、光電変換層、及び第二電極を順次形成してなり、前記基板の表面上の互いにパターニングされて隣合う単位光電変換部分を電気的に直列に接続する集電ホール及び直列接続ホールが前記基板を貫通するように形成された薄膜太陽電池において、前記光電変換層が、複数の非単結晶シリコン系薄膜からなるpin構造セルを一層又は複数層積層してなり、前記第一電極上に形成された最下層セルが、微結晶シリコン薄膜からなるi層を有し、前記最下層セルにおける前記i層の下層を膜厚200〜600nmの非晶質シリコン系材料とし、前記下層が、n層と、該n層に実質的に真性なn/i界面層との積層構造であり、前記n/i界面層が前記n層と前記i層との間に設けられ、該n/i界面層の膜厚が100nm〜380nmであることを特徴とする。
したがって、非晶質シリコン系材料よりなる前記下層の膜厚を200〜600nmとすることで、光吸収の低下を抑制し、変換効率が高い薄膜太陽電池を提供することができる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る薄膜太陽電池のセル構成を示す模式的な断面図である。本実施形態の薄膜太陽電池は、絶縁性のフィルム基板1上に、少なくとも第一電極、光電変換層、及び第二電極を順次形成してなる。具体的には、図1に示すように、フィルム基板1と、フィルム基板1の両面に形成された金属電極2,3と、第一電極としての金属電極2上に形成された光電変換層4と、光電変換層4上に順次形成された第二電極としての透明電極8及び集電電極9とを有する。光電変換層4は、金属電極2側から順に下層5、i層6、及びp層7からなる。光電変換層4は、一層又は複数層積層されてなる。なお、本実施形態においては、下層5としてn層5aを採用している。また、図示はしないが、フィルム基板1には、集電ホール及び直列接続ホールが形成されている。これら集電ホール及び直列接続ホールの端面においては、フィルム基板1が露出しているため、大気中の水分を吸収し、成膜中に脱ガスとして水蒸気が放出される。
本発明の薄膜太陽電池を作製する装置としては、CVD3室、スパッタ2室からなる作製装置を用いる。CVD室の電極サイズは625cm2であり、約25cm幅のフィルム基板1上に20cm□の薄膜太陽電池を作製することができる。各部屋はフィルム基板1を挟んで完全に封止することが可能であり、成膜と搬送を交互に繰り返すステッピングロール成膜法によりセルを作製することができる。
<第一電極の形成>
まず、図2(a)〜(b)に示すように、フィルム基板1に直列接続ホール11を形成した。
次に、図2(d)に示すように、第三電極層3の形成と集電ホール10の形成との間に、第一電極層2を所定の形状にレーザー加工して、第一電極2をパターニングした。
その後、図1及び図2(e)に示すように、第一電極層2上に光電変換層4を形成する。第一電極層2上に形成される光電変換層4は、まず、第1のCVD室にフィルム基板1を送り、3分間の脱ガスの後にCVD装置により第一電極層2上にn層5aが形成される。n層5aの材料としては、「微結晶シリコン(Si)」、「アモルファスシリコン(a−Si)」、及び「アモルファスシリコンオキサイド(a−SiO)」をそれぞれ採用し、異なるn層5aが形成されたフィルム基板1を3種類作製した。
n層5aに微結晶Siを採用したセル、及びn層5aにa−Siを採用したセルは、ともに主ガスとしてモノシランを用い、希釈ガスとして水素を用い、ドーピングガスとしてホスフィンを用いた。n層5aにa−SiOを採用したセルはさらに主ガスとしてCO2を添加することにより成膜した。3種類のn層5aとも成膜速度60nm/分の成膜速度で形成した。
次に、真空引きの後に、第2のCVD室に、n層5aが形成された各フィルム基板1を送り、膜厚1μmのi層6をn層5a上にそれぞれ成膜した。このときの成膜温度は200〜250℃とし、主ガスとしてモノシランを用い、希釈ガスとして水素を用いて成膜した。
その後、真空引きの後に、第3のCVD室に、n層5a及びi層6が形成された各フィルム基板1を送り、膜厚20nmの微結晶Siのp層をi層上にそれぞれ形成した。このときの成膜温度は150〜200℃とし、主ガスとしてモノシランを用い、希釈ガスとして水素を用い、ドーピングガスとしてジボランを用いて成膜した。
その後、図1及び図2(f)に示すように、真空引き、大気開放した後に、n層5a、i層6及びp層7からなる光電変換層4が形成されたフィルム基板1を搬出し、小型スパッタ装置で約70nmの透明電極8を第二電極としてp層7上にそれぞれマスク成膜する。
以上のようにして作製された3種類の薄膜太陽電池について、膜中酸素濃度、光吸収の低下、短絡光電流密度、変換効率、及びJSCの低下分について以下のとおり考察した。
<膜厚と膜中酸素濃度との関係>
図3は、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのn層の膜厚と、最下層セルのi層の膜中酸素濃度との関係を示すグラフである。膜中酸素濃度は、深さ方向にプロファイルを持っているので、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)装置を用いて最下層セルのi層中の平均酸素濃度を測定した。
次に、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのn層の吸収係数データ、及びシミュレーションプログラムを用いてn層の光吸収の低下を導出した。シミュレーションプログラムとしては、入射光の散乱による光閉じ込めを考慮したシミュレーションプログラムを用いた。各種n層を適用したときに、本シミュレーション結果と実際の太陽電池の分光感度特性が良く一致することは別途確認済みである。
図4に示すように、微結晶Siを最下層セルのn層に採用した薄膜太陽電池に比べて非晶質シリコン系材料を最下層セルのn層に採用した薄膜太陽電池の方が、最下層セルのn層の膜厚の増加に伴って光吸収の低下率が小さくなっていることが分かる。これは、n層に入射する長波長光に対して、非晶質シリコン系材料の方が光吸収が小さいことに起因する。特に、a−SiOは光吸収の低下が微結晶Siの約半分になっている。そしてこれは、a−Si系ワイドギャップ合金材料の適用が有効であることを示唆している。
図5は、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのn層の膜厚と、短絡光電流密度及び変換効率との関係を示すグラフであり、図5(a)は、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのn層の膜厚と、短絡光電流密度との関係を示すグラフであり、図5(b)は、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのn層の膜厚と、変換効率との関係を示すグラフである。
このように、図3〜図5に示す結果から、非晶質シリコン系材料を用いてn層の膜厚を200nm〜600nmとすることが有効であると結論する。
図6は、図3〜図5の結果に基づいて、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのi層の膜中酸素濃度と、酸素に起因したJsc低下率との関係を示すグラフである。具体的には、3種類の薄膜太陽電池における最下層セルのn層について、光学吸収以外の低下成分を導出し、最下層セルのi層の膜中酸素量に対してプロットした。
したがって、図6における酸素起因のJscの低下率を10%以下程度とすることが妥当な条件と考えられ、i層中の酸素濃度としては4×1019atoms/cm3以下とすることが妥当と考えられる。
図8は、本発明に係る薄膜太陽電池の第2の実施形態における構造を示す断面図である。
図8に示すように、本実施形態は、i層6と第一電極2との間に形成される下層5をn層5a及びn/i界面層5bの二層構造とした点が、前述の第1の実施形態と異なる。
このような構成をなす本実施形態の薄膜太陽電池について、上述の第1の実施形態と同様に、n/i界面層5bの膜厚による依存性を調べた。なお、本実施形態においては、n層5aの材料をa−SiOとし、n/i界面層5bの材料をa−Siとした。また、n/i界面層5bは、モノシランを原料ガス、水素を希釈ガスとし、ドーピングガスを添加せずに成膜した。さらに、保護層としての条件を揃えるため、n層5aと、n/i界面層5bとの膜厚の合計を一定値(400nm)とした。
2,3 金属電極
4 光電変換層
5 下層
5a n層
5b n/i界面層
6 i層
7 p層
8 透明電極
9 集電電極
10 集電ホール
11 直列接続ホール
Claims (3)
- 絶縁性の基板上に第一電極、光電変換層、及び第二電極を順次形成してなり、前記基板の表面上の互いにパターニングされて隣合う単位光電変換部分を電気的に直列に接続する集電ホール及び直列接続ホールが前記基板を貫通するように形成された薄膜太陽電池において、
前記光電変換層が、複数の非単結晶シリコン系薄膜からなるpin構造セルを一層又は複数層積層してなり、前記第一電極上に形成された最下層セルが、微結晶シリコン薄膜からなるi層を有し、前記最下層セルにおける前記i層の下層を膜厚200〜600nmの非晶質シリコン系材料とし、
前記下層が、n層と、該n層に実質的に真性なn/i界面層との積層構造であり、前記n/i界面層が前記n層と前記i層との間に設けられ、該n/i界面層の膜厚が100nm〜380nmであることを特徴とする薄膜太陽電池。 - 前記非晶質シリコン系材料が、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンオキサイド、アモルファスシリコンカーバイド、アモルファスシリコンナイトライド、アモルファスシリコンオキシカーバイド、アモルファスシリコンオキシナイトライドのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
- 前記最下層セルのi層中の酸素濃度が、4×1019atoms/cm3以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜太陽電池。
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