JP5127372B2 - 蒸着装置 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸発又は昇華した蒸着材料を被成膜基板に付着させて有機EL素子等を製造するための蒸着装に関するものである。
有機EL素子を作製する際に用いられる蒸着装置は、一般的に、蒸着材料を加熱・蒸発させる蒸着源と、被成膜基板(基板)が設置されている真空チャンバーとを備えている。このような装置の一例として、一般にポイントソースやラインソースと呼ばれる蒸着源を用いるものがある。これらの蒸着源は、蒸着材料を充填する材料収容部に、蒸着材料を放出する開口部を配置した構成になっていることが多い。このような蒸着源を用いた有機EL素子の生産では、材料の交換時に真空チャンバーの真空を破らなければならないという課題がある。
また、一般に加熱温度により蒸着材料の流量を制御するため、成膜速度の制御性が悪く、基板やマスクに与える熱なども一定にすることができないため、基板、マスクの熱膨張を抑える、もしくは制御することが困難であるという課題がある。
これらの課題を解決するために、特許文献1のように、一般にノズルソースと呼ばれる蒸着源を用いる方法がある。これは、材料を入れる材料収容部を真空チャンバー外に設置し、材料収容部とチャンバー内を繋ぐ配管にバルブを設けて成膜速度を制御する方法である。このような方法により、材料の交換は真空を破らずに行うことができ、また、基板、マスクに与える熱も略一定にすることが可能となる。
特開2005−281808号公報
有機EL素子の製造において生産性と歩留まりを向上するためには、高い成膜速度で、膜厚を精度よく再現することが必要である。
しかしながら、ポイントソースやリニアソースによる蒸着では、成膜速度の安定した制御は困難である。また、ノズルソースを採用した場合においても、成膜速度の精度はバルブの開閉精度に依存しており、限界がある。特に材料収容部の加熱温度が高くなった場合、蒸着材料の蒸発速度は指数的に上昇するため、いずれの方法においてもさらに制御の安定性に課題が生じる。
本発明は、有機EL素子等を蒸着によって製造するにあたり、高い成膜速度で膜厚を精度よく再現することによって、生産性と歩留まりの向上を図ることができる蒸着装を提供することを目的とするものである。
本発明の蒸着装置は、蒸発又は昇華した蒸着材料を被成膜基板に付着させて成膜する蒸着装置において、成膜を行う成膜空間を有する真空チャンバーと、前記蒸着材料を充填する材料収容部と、前記材料収容部を加熱して前記蒸着材料を蒸発又は昇華させる手段と、1個の前記材料収容部から前記真空チャンバーの前記成膜空間に配置された前記被成膜基板に向けて前記蒸着材料を供給するためのコンダクタンスの異なる複数本の配管と、を備え、前記複数本の配管のうち、コンダクタンスの最も大きい配管に対して相対的にコンダクタンスの小さい配管に、前記蒸着材料の流れを流量制御又は開放・遮断する手段を設けることを特徴とする。
複数本の配管を通して真空チャンバーに蒸着材料を供給することにより、高い成膜速度を実現することができる。また、コンダクタンスの小さい配管に対して、蒸着材料の流量を制御(流量制御)する、もしくは流れを開放・遮断する手段を備えることにより、蒸着材料の流量を細かく制御することが可能になり、成膜速度を高精度に制御し、膜厚を精度よく再現することが可能となる。
これによって、有機EL素子を再現性よく、短時間で製造することができ、生産性と歩留まりの向上に貢献できる。
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は一実施形態による蒸着装置を示す摸式断面図である。この装置は、例えば有機EL素子(有機発光素子)の製造に用いられる。真空チャンバー1の成膜空間において、被成膜基板である基板2上の素子分離膜3にマスク4を当接し、蒸着源5から蒸発又は昇華した蒸着材料である有機化合物をマスク4を介して基板2上に被着させ、有機化合物膜を成膜する。
蒸着源5には、蒸着材料6を充填した材料収容部7と、配管8,9を加熱するための手段である不図示のヒーターが備えられている。基板2の所定位置にだけ有機化合物を蒸着させるためのマスク4は、基板2の蒸着源側で、基板2に当接又は近接するように配設される。図1では、マスク4を基板2上に設けられた素子分離膜3の上面とほぼ接触するように配置している。また、基板2の裏面に配置した不図示の基板保持機構により、基板2及びマスク4が保持される。真空チャンバー1内は排気系により1×10−4〜1×10−5Pa程度に排気されている。
蒸着源5は、蒸着材料6を充填する材料収容部7が真空チャンバー1の外に設置され、1個の材料収容部7から複数本の配管8,9が真空チャンバー1内に繋がり、配管8、9を通って蒸着材料が基板2に到達する。
これらの配管は、図1に示すように、相対的にコンダクタンスが大きい配管8と小さい配管9を備える。また、3つ以上の異なるコンダクタンスを持つ配管を備えてもよい(図3参照)。
ただし、どのような配管の組み合わせにおいても、コンダクタンスの小さい配管に、蒸着材料の流れを流量制御する、もしくは流れを開放・遮断する手段である流量調整機構10を備える。
コンダクタンスの異なる配管は、コンダクタンス毎にそれぞれ何本備えていてもよい。そのうちの、コンダクタンスの小さい配管に、例えばバルブのような蒸着材料の流量制御、もしくは流れの開放・遮断を行う流量調整機構10を備える。流量調整機構10は、コンダクタンスが相対的に大きい配管に対して設定してもよいが、全ての配管に対して備えるか、又は1本以上の相対的にコンダクタンスが小さい配管に配置する。
本実施形態によれば、コンダクタンスの大きい配管8を備えることにより、蒸着材料の流量を高く保つことが可能になる。蒸着材料の流量は、加熱温度によって蒸着材料の流れを制御してもよく、バルブのような蒸着材料の流量を制御する手段を用いてもよい。
配管を流れる蒸着材料の流量の制御性は、加熱温度の制御性あるいはバルブの制御性によって制限されるが、複数本の配管と、配管内の流れの流量制御又は流れを開放・遮断するバルブ等を備えることにより、蒸着材料の流量を細かく制御することが可能になる。特に、コンダクタンスの小さい配管9を設置し、この配管9に対してバルブのよう流量調整機構10を備えることにより、この効果は大きくなる。このように、複数本の配管からの成膜速度の合成によって、高い成膜速度を安定に制御することが可能になる。
すなわち、コンダクタンスの大きい配管8によって高い成膜速度を保ち、コンダクタンスが小さくて、蒸着材料の流量を制御する、もしくは流れを開放・遮断する流量調整機構10を備えた配管9によって、微細な成膜速度の制御を行うことが可能となる。
材料収容部7は、真空チャンバー1の外に配置することが望ましい。蒸着材料が切れた場合に、真空を破らずに蒸着材料の再充填が可能となる。
次に、複数本の配管と、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構を持つことによる効果を説明する。図2の(a)は、長さ、径が等しい2本の配管18を持つ材料収容部17を示す。2本の配管18のうちの1本は、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構20としてバルブを備えている。
バルブの流量の制御精度は3%とし、配管1本当たりのある温度における最大流量を50l/sとし、また、2本の配管18からの流量の目標を70l/sとする。
バルブを持たない配管18は50l/sの流量を流し、バルブを持つ配管18は20l/sの流量をバルブによって制御する。材料の温度などの系の状態が理想的に一定に保たれるならば、この蒸着源は70±0.6l/sで流量を制御することができる。
図2の(b)は、流量調整機構120として上記と同様に3%の制御精度のバルブを持ち、最大流量が100l/sである配管118を1本だけ備えた材料収容部117を示す。流量の目標を70l/sとすると、この蒸着源は70±2.1l/sで流量を制御する。
以上から、複数本の配管と、少なくとも1本の配管に流量調整機構を備えることにより、流量の微細な制御が可能になることがわかる。
図3の(a)に示すように、全ての配管28が同じ径、長さの場合は、成膜速度を好適に制御できるように、適当な数の配管28に対して、例えばバルブのような蒸着材料の流れを流量制御する、もしくは流れの開放・遮断を行う流量調整機構30を備える。この場合も、全ての配管に対して流量調整機構30を備えてもよい。
なお、蒸着源の構造、蒸着源の数、有機化合物の種類、マスクの開口形状などを特に制限するものではない。例えば蒸着源の開口形状は、点状であっても、線状であってもよい。
また、図4に示すように、図1の装置の配管8,9を連結する連結空間(連結部)11を設け、連結空間11に、真空チャンバー1の成膜空間に蒸着材料を放出するための放出部12を備えてもよい。
蒸着源は、複数の有機化合物を同時に蒸着する共蒸着源であってもよい。
(参考例1)
図1に示す蒸着装置を用いて以下の蒸着方法によって基板上に有機EL素子を製造した。蒸着源5の材料収容部7は、コンダクタンスの大きい配管8を1本と、コンダクタンスの小さい配管9を2本備える。
目標成膜速度は20[Å/s]とした。コンダクタンスの大きい配管8は、この配管の直上の成膜速度を19[Å/s]前後に保つ。配管8における蒸着材料の流量は材料収容部7の加熱温度のみによって制御されるが、加熱温度は略一定とした。コンダクタンスの小さい配管9は、目標成膜速度をコンダクタンスの大きい配管8の直上において1[Å/s]となるようにした。配管9は、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構10としてニードルバルブを設置した。
基板2には、無アルカリガラスの0.5mm厚でサイズが400mm×500mmのガラス基板を用いた。この基板2上に定法によって薄膜トランジスタ(TFT)と電極配線がマトリクス状に形成されている。一つの画素の大きさは30μm×120μmとし、有機EL素子の表示領域が350mm×450mmとなるように基板中央に配置した。基板2は蒸着源5から200[mm]の距離に置いた。また、基板2は略一定の速度で搬送しながら真空蒸着した。成膜速度は不図示の膜厚レートセンサーで観測し、ニードルバルブへフィードバックして制御を行った。
有機EL素子の作製工程を説明する。まず、発光領域が画素の中心部に25μm×100μmになるように、TFTを備えたガラス基板上にアノード電極を形成した。次に、本実施例の蒸着装置及び公知の蒸着マスク、発光材料を用いて真空蒸着することで、発光材料の成膜速度を20[Å/s]±2%で制御することが可能になった。以上により、基板上の画素内及び基板面内において発光層の膜厚を精度よく制御することが可能になり、高品位な有機EL素子が得られた。
(参考例2)
図3の(a)に示す蒸着源を用いて基板上に有機EL素子を製造した。蒸着源は、材料収容部27にコンダクタンスを等しくした配管28を6本備えた。これらは材料収容部27の上面の中心から等距離、等間隔に配置した。6本の配管28のうちの2本に対して、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構30としてニードルバルブを設置した。
目標成膜速度は20[Å/s]とした。ニードルバルブを持たない配管は、目標成膜速度を、材料収容部27の上面の中心の直上において1本当り4.5[Å/s]とした。この配管の蒸着材料の流量は材料収容部の加熱温度のみによって制御されるが、加熱温度は略一定とした。
ニードルバルブを持つ配管は、目標成膜速度を、材料収容部27の中心の直上において1本当り1.0[Å/s]とした。
蒸着源以外の構成は、参考例1と同様のものを用いた。
参考例の蒸着装置及び公知の蒸着マスク、発光材料を用いて真空蒸着することで、発光材料の成膜速度を20[Å/s]±2%で制御することが可能になった。以上により、基板上の画素内及び基板面内において発光層の膜厚を精度よく制御することが可能になり、高品位な有機EL素子が得られた。
図3の(b)に示す蒸着源を用いて基板上に有機EL素子を製造した。蒸着源は、材料収容部37にコンダクタンスの大きい配管38を1本と、コンダクタンスを中程度に設定した配管39aを1本と、コンダクタンスの小さい配管39bを1本備えた。
目標成膜速度は20[Å/s]とした。コンダクタンスの大きい配管38は、この配管38の直上の成膜速度を15[Å/s]前後に保つ。この配管38の蒸着材料の流量は材料収容部37の加熱温度のみによって制御されるが、加熱温度は略一定とした。
コンダクタンスを中程度に設定した配管39aは、目標成膜速度をコンダクタンスの大きい配管38の直上において4.5[Å/s]となるようにした。配管39aは、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構40としてニードルバルブを備える。
コンダクタンスの小さい配管39bは、目標成膜速度をコンダクタンスの大きい配管38の直上において0.5[Å/s]となるようにした。配管39bは、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構40としてニードルバルブを備える。
蒸着源以外の構成は、参考例1と同様のものを用いた。
本実施例の蒸着装置及び公知の蒸着マスク、発光材料を用いて真空蒸着することで、発光材料の成膜速度を20[Å/s]±2%で制御することが可能になった。以上により、基板上の画素内及び基板面内において発光層の膜厚を精度よく制御することが可能になり、高品位な有機EL素子が得られた。
図3の(b)に示す蒸着源を用いて基板上に有機EL素子を製造した。蒸着源は、材料収容部37にコンダクタンスの大きい配管38を1本と、コンダクタンスを中程度に設定した配管39aを1本と、コンダクタンスの小さい配管39bを1本備える。
目標成膜速度は20[Å/s]とした。コンダクタンスの大きい配管38は、この配管38の直上の成膜速度を15[Å/s]前後に保つ。配管38の蒸着材料の流量は材料収容部37の加熱温度のみによって制御されるが、加熱温度は略一定とした。
コンダクタンスを中程度に設定した配管39aは、目標成膜速度をコンダクタンスの大きい配管38の直上において5[Å/s]となるようにした。配管39aは、流れの開放・遮断を行う流量調整機構40としてニードルバルブを備える。
コンダクタンスの小さい配管39bは、目標成膜速度をコンダクタンスの大きい配管38の直上において0.2[Å/s]となるようにした。配管39bは、流れの開放・遮断を行う流量調整機構40としてニードルバルブを備える。
蒸着源以外の構成は、参考例1と同様のものを用いた。
本実施例の蒸着装置及び公知の蒸着マスク、発光材料を用いて真空蒸着した。このとき、成膜速度が20.3[Å/s]になった場合にニードルバルブを遮断し、19.7[Å/s]となった場合にニードルバルブの開放を行った。この結果、成膜速度を20[Å/s]±2%で制御することが可能になった。以上により、基板上の画素内及び基板面内において発光層の膜厚を精度よく制御することが可能になり、高品位な有機EL素子が得られた。
(比較例1)
図2の(b)に示す蒸着源を用いて基板上に有機EL素子を製造した。蒸着源は、材料収容部117に配管118を1本のみ備えた。この配管118は、蒸着材料の流量を制御する流量調整機構120としてニードルバルブを設置した。目標成膜速度は20[Å/s]とした。蒸着源以外の構成は、参考例1と同様のものを用いた。
本比較例の蒸着装置及び公知の蒸着マスク、発光材料を用いて真空蒸着したところ、発光材料の成膜速度は20[Å/s]±5%でバラツキが生じた。蒸着後、蒸着した発光層の膜厚を計測するとガラス基板面内に膜厚ムラがあり、得られた有機EL素子に表示ムラが生じた。
参考例1による蒸着装置を示す模式断面図である。 図1の蒸着源を従来例と比較して示す図である。 蒸着源を示し、(a)は参考例2の蒸着源の説明図、(b)は実施例1の蒸着源説明である。 参考例1の一変形例を示す図である。
1 真空チャンバー
2 基板
3 素子分離膜
4 マスク
5 蒸着源
6 蒸着材料
7 材料収容部
8、9、18、28、38、39a、39b 配管
10、20、30、40 流量調整機構
11 連結空間
12 放出部

Claims (4)

  1. 蒸発又は昇華した蒸着材料を被成膜基板に付着させて成膜する蒸着装置において、
    成膜を行う成膜空間を有する真空チャンバーと、
    前記蒸着材料を充填する材料収容部と、
    前記材料収容部を加熱して前記蒸着材料を蒸発又は昇華させる手段と、
    1個の前記材料収容部から前記真空チャンバーの前記成膜空間に配置された前記被成膜基板に向けて前記蒸着材料を供給するためのコンダクタンスの異なる複数本の配管と、を備え、
    前記複数本の配管のうち、コンダクタンスの最も大きい配管に対して相対的にコンダクタンスの小さい配管に、前記蒸着材料の流れを流量制御又は開放・遮断する手段を設けることを特徴とする蒸着装置。
  2. 前記複数本の配管を連結する連結部と、
    前記連結部から前記蒸着材料を前記真空チャンバーの前記成膜空間に放出する放出部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
  3. 前記複数の配管を加熱する手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着装置。
  4. 前記材料収容部を前記真空チャンバーの外に配置することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の蒸着装置。
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