JP5126946B2 - 硫黄系ガス除去フィルタ及びそれを用いた硫黄系ガスの除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫黄系ガス除去フィルタ並びにそれを用いた硫黄系ガスの除去方法に関し、より詳しくは、硫黄系ガスと接触させて硫黄系ガスを除去する硫黄系ガス除去フィルタ並びにそれを用いた硫黄系ガスの除去方法に関する。
有害ガスを除去するために、従来から活性炭が使用されてきた。近年では、このような活性炭のガス除去能をより向上させるために、活性炭に金属化合物やハロゲン化合物等の添着物質を担持させた種々の硫黄系ガス除去材が開示されてきた。
例えば、特開平11−347398号公報(特許文献1)においては、活性炭にアルカリ金属炭酸塩を10〜30質量部担持させてなる酸性ガス除去材が開示されている。また、特開2001−276198号公報(特許文献2)においては、細孔直径500Å以上の細孔容積が0.1mL/g以上の活性炭に、ヨウ素及び/又はヨウ化物の1種以上を担持した硫黄系ガス除去材が開示されている。しかしながら、特許文献1〜2に記載のような従来の硫黄系ガス除去材においては、硫黄系ガス除去性能が必ずしも十分なものではなかった。また、これを使用した場合に、硫黄系ガスに対して長期に亘って十分な除去性能を発揮することができなかった。
特開平11−347398号公報 特開2001−276198号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、硫黄系ガスに対して十分に高い除去性能を発揮することができ、しかも硫黄系ガスに対して長期に亘って十分に高い除去性能を発揮することが可能な硫黄系ガス除去フィルタ並びにそれを用いた硫黄系ガスの除去方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、熱分解率80%以上でヨウ化アンモニウムを触媒熱分解して生成したヨウ素が多孔性担体に担持されてなる第一の硫黄系ガス除去材を備える前段フィルタと、活性炭素繊維と、該活性炭素繊維に担持されたアルカリ成分とからなる第二の硫黄系ガス除去材を備える後段フィルタとからなる硫黄系ガス除去フィルタにより、硫黄系ガスに対して十分に高い除去性能を発揮することができ、しかも硫黄系ガスに対して長期に亘って十分に高い除去性能を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の硫黄系ガス除去フィルタは、ガス流路中の硫黄系ガスと接触させて硫黄系ガスを除去する硫黄系ガス除去フィルタであって、
ガス流路の上流側に配置される前段フィルタと、ガス流路の下流側に配置される後段フィルタとからなり、
前記前段フィルタが、多孔性担体と、該多孔性担体に担持されたヨウ素とからなる第一の硫黄系ガス除去材を備えるものであり、前記ヨウ素が、前記多孔性担体を触媒としてヨウ化アンモニウムを熱分解率80%以上で触媒熱分解することにより生成されたものであり、且つ、
前記後段フィルタが、活性炭素繊維と、該活性炭素繊維に担持されたアルカリ成分とからなる第二の硫黄系ガス除去材を備えるものであること、
を特徴とするものである。
上記本発明にかかる多孔性担体としては、活性炭であることが好ましく、直径2nm以下のマイクロ孔に基づく細孔容量の割合が全細孔容量に対して90%以上の活性炭であることがより好ましい。
また、上記本発明にかかるヨウ素の担持量としては、前記多孔性担体100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。
また、上記本発明にかかるアルカリ成分としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、上記本発明にかかるアルカリ成分の担持量としては、前記活性炭素繊維100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。
また、本発明の硫黄系ガスの除去方法は、上記本発明の硫黄系ガス除去フィルタに、硫黄系ガスを接触させて硫黄系ガスを除去することを特徴とする方法である。
なお、本発明の硫黄系ガス除去フィルタによって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明にかかる前段フィルタは、熱分解率80%以上でヨウ化アンモニウムを触媒熱分解して生成されたヨウ素が活性炭に担持された第一の硫黄系ガス除去材を備えている。このようなヨウ化アンモニウムの触媒熱分解に関して検討すると、触媒熱分解においては、先ず、ヨウ化アンモニウム(NHI)が多孔性担体(触媒)により触媒熱分解されて、ヨウ化水素酸(HI)とアンモニア(NH)が生成される。このようなヨウ化水素酸は、強い還元性を有し、酸素含有雰囲気下において酸素によって容易に酸化される。このようにしてヨウ化水素酸が酸化されると、固体のヨウ素(I)が生成される。そして、生成されたヨウ素は、触媒として機能していた多孔性担体にそのまま担持される。なお、ヨウ化水素とともに生成されたアンモニアは極性の大きい物質であるため、非極性の性質をもつ多孔性担体には吸着し難く、熱により容易に離脱する。そのため、このようなヨウ化アンモニウムの触媒熱分解により、ヨウ素のみが多孔性担体に担持される。更に、本発明においては、このような触媒熱分解におけるヨウ化アンモニウムの熱分解率が80%以上であるため、十分な担持量でヨウ素が担持される。また、本発明においては、ヨウ素源として水等の溶媒に対する溶解度が大きいヨウ化アンモニウムを用いていることから、多孔性担体に含浸担持されたヨウ化アンモニウムは微細な粒子となって担持され、そして、その触媒熱分解によって生成されたヨウ素は更に十分に微細な粒子となって高度に分散された状態で多孔性担体に担持されるため、前記第一の硫黄系ガス除去材により十分に高度な硫黄系ガス除去性能が発揮されるものと推察される。
次に、このような第一の硫黄系ガス除去材の硫黄系ガス除去メカニズムについて検討すると、多孔性担体に担持されたヨウ素は、SO及びHS等の硫黄系ガスに対して強酸化剤として作用し、硫黄系ガスを酸化する。そのため、例えば、SOは硫酸(HSO)に酸化され、HSは硫黄(S)に酸化される。そして、このようにして酸化された硫酸(HSO)や硫黄(S)等の成分は、多孔性担体に捕捉され、除去される。一方、硫黄系ガスを酸化するとヨウ素はヨウ化水素酸となるが、上述のように、ヨウ化水素酸は酸素によって容易に酸化されてヨウ素に戻る。そのため、硫黄系ガスを除去した後においても、例えば空気の存在等により、硫黄ガス除去性能を容易に再生させることができる。このように、第一の硫黄系ガス除去材は、硫黄ガスの除去メカニズムが触媒的で当初より高いガス浄化性能を発揮でき、しかも硫黄系ガスの除去時に上述のような循環系が構成されるため、SOやHS等の硫黄系ガスが酸化されてできた硫酸や硫黄等の成分が活性炭上に過度に蓄積されない限り、十分に高い除去性能を持続、発揮することが可能となる。そのため、本発明においては、前段フィルタによって長期に亘り硫黄系ガスを十分に除去することが可能となるものと推察される。
また、本発明にかかる後段フィルタは、アルカリ成分を担持した活性炭素繊維を備えている。このような活性炭素繊維はマクロ孔及びメソ孔を持たないものであるため、硫黄系ガスの吸着速度が速い。そのため、本発明においては、前段フィルタから微量に漏れ出た硫黄系ガスを後段フィルタに吸着させることが可能となるため、非常に高度な硫黄系ガス除去性能が発揮される。そして、本発明の硫黄系ガス除去フィルタは、上述のような前段フィルタ及び後段フィルタを備えるものであるため、硫黄系ガスに対して十分に高い除去性能(高除去率)を発揮することができ、しかも硫黄系ガスに対して長期に亘って十分に高い除去性能を発揮(長寿命化)することが可能となるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、硫黄系ガスに対して十分に高い除去性能を発揮することができ、しかも硫黄系ガスに対して長期に亘って十分に高い除去性能を発揮することが可能な硫黄系ガス除去フィルタ並びにそれを用いた硫黄系ガスの除去方法を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の硫黄系ガス除去フィルタについて説明する。すなわち、本発明の硫黄系ガス除去フィルタは、ガス流路中の硫黄系ガスと接触させて硫黄系ガスを除去する硫黄系ガス除去フィルタであって、
ガス流路の上流側に配置される前段フィルタと、ガス流路の下流側に配置される後段フィルタとからなり、
前記前段フィルタが、多孔性担体と、該多孔性担体に担持されたヨウ素とからなる第一の硫黄系ガス除去材を備えるものであり、前記ヨウ素が、前記多孔性担体を触媒としてヨウ化アンモニウムを熱分解率80%以上で触媒熱分解することにより生成されたものであり、且つ、
前記後段フィルタが、活性炭素繊維と、該活性炭素繊維に担持されたアルカリ成分とからなる第二の硫黄系ガス除去材を備えるものであること、
を特徴とするものである。
以下、図面を参照しながら好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の硫黄系ガス除去フィルタとして好適な形態の硫黄系ガス除去フィルタがケース内に配置された状態を示す概略縦断面図であり、図2は、図1に示す硫黄系ガス除去フィルタの点線で囲まれた領域Zの内部を拡大して模式的に示す模式図である。
硫黄系ガス除去フィルタ1は、前段フィルタ11と、後段フィルタ12とを備える。また、硫黄系ガス除去フィルタ1は、ガス管等に接続可能な開口部2a及び2bが設けられたケース2の内部に配置されている。本実施形態においては、開口部2aからケース2内に導入されたガスは、その全てが硫黄系ガス除去フィルタ1を通過した後、開口部2bから排出されるような構造となっている。そして、硫黄系ガス除去フィルタ1は、ガス流路の上流側に前段フィルタ11を備え、下流側に後段フィルタ12を備える構造となっている。なお、図1中の矢印A及びAは、それぞれ入ガス及び出ガスのガス流を示す。
また、前段フィルタ11は、第一の硫黄系ガス除去材20を備え、第一の硫黄系ガス除去材20は、枠体21と、メッシュ材22とによって構成される容器内に充填されている。本実施形態においては、前記容器中に第一の硫黄系ガス除去材20をより均等に充填させるためのメッシュ状の仕切り板23が配置されている。また、後段フィルタ12は、プリーツ状に成形された第二の硫黄系ガス除去材24を備え、第二の硫黄系ガス除去材24は、そのプリーツ形状を維持するためにスペーサ25に接着されている。なお、本実施形態においては、ケース2としては、縦200mm、横200mm、高さ150mmの大きさのPP製のものを用いた。
先ず、前段フィルタ11について説明する。前段フィルタ11が備える第一の硫黄系ガス除去材20は、多孔性担体と、前記多孔性担体に担持されたヨウ素とからなる第一の硫黄系ガス除去材を備えるものであり、前記多孔性担体に担持された前記ヨウ素は、前記多孔性担体を触媒としてヨウ化アンモニウムを熱分解率80%以上で触媒熱分解することにより生成されたものである。
このような多孔性担体としては特に制限されず、ガス除去材等に用いられる公知の多孔性の担体(例えば活性炭、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ等)を適宜用いることができる。このような多孔性担体の中でも、より高い硫黄系ガス除去性能が得られるという観点から、活性炭が好ましい。また、このような活性炭としては特に制限されず、公知の活性炭を適宜用いることができ、中でも、直径2nm以下のマイクロ孔に基づく細孔容量の割合が全細孔容量に対して90%以上の活性炭を用いることが好ましい。このような条件を満たす活性炭は、マイクロ孔の占める割合が多いため、硫黄系ガスを細孔内に吸着・濃縮する作用が強く、ヨウ素の触媒的作用を促進できるとともに、反応により生成された硫酸や硫黄等の硫黄成分を強固に保持することができることから、より高い硫黄系ガス除去性能を発揮できる傾向にある。また、このような活性炭としては、市販のもの(例えば、市販のヤシ殻活性炭等)を用いてもよい。また、上述のような、直径2nm以下のマイクロ孔に基づく細孔容量の割合が全細孔容量に対して90%以上の活性炭としては、例えば、ヤシ殻活性炭が挙げられる。なお、前記細孔容量は、いわゆる窒素ガス吸着法により求めることができる。
また、このような活性炭の形状としては特に制限されないが、粒子状、粉砕状、ペレット状のものであることが好ましい。また、粒子状の活性炭を用いる場合においては、活性炭の粒子径は1〜5mm程度であることが好ましい。更に、このような活性炭としては、より高い硫黄系ガス除去能を発揮させるという観点から、比表面積が500〜2000m/gのものが好ましい。
また、前記多孔性担体に担持されたヨウ素は、ヨウ化アンモニウムを触媒熱分解することにより生成されたものである。本発明にいう「触媒熱分解」とは、ヨウ化アンモニウムの担持された多孔質多孔体を加熱することによって、多孔性担体を触媒として進行するヨウ化アンモニウムの熱分解反応をいい、これによりヨウ素が生成されて、触媒として機能していた前記多孔性担体にそのまま担持される。このような触媒熱分解の具体的な反応は以下の通りである。すなわち、ヨウ化アンモニウムの担持された多孔性担体を加熱することにより、先ず、ヨウ化アンモニウムが分解されてヨウ化水素酸(HI)とアンモニア(NH)が生成され、次いで、ヨウ化水素酸が酸素によって酸化されることで固体のヨウ素(I)が生成される。なお、生成された固体のヨウ素は多孔性担体にそのまま担持される。
また、本発明にかかるヨウ素は、ヨウ化アンモニウムの熱分解率が80%(より好ましくは90%)以上となる触媒熱分解により生成されたものである。このような熱分解率が前記下限未満では、固体のヨウ素(I)が十分に生成されず、前記活性炭に担持されるヨウ素の量が少なくなって、得られる硫黄系ガス除去材の除去性能が低下する。なお、本発明においては、このように熱分解率80%以上となるヨウ化アンモニウムの触媒熱分解によりヨウ素が生成されているため、ヨウ素の粒成長が十分に防止されて、生成されたヨウ素が十分に微細な粒子となり、多孔性担体に高度に分散された状態で担持されるとともに、ガス拡散の障壁となるヨウ化アンモニウムが熱分解によって消失するため、得られる第一の硫黄系ガス除去材が十分に高い除去性能を発揮できるものと推察される。
さらに、本発明においては、前記多孔性担体に担持される前記ヨウ素の担持量は、前記多孔性担体100質量部に対して10〜100(より好ましくは20〜60)質量部である。このようなヨウ素の担持量が前記下限未満では、硫黄系ガスの除去性能が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持量が多くなりすぎて多孔性担体が閉塞してしまい、却って除去性能が低下する傾向にある。
また、第一の硫黄系ガス除去材20の大きさとしては、平均粒径が5〜8メッシュであることが好ましい。このような平均粒径が前記下限未満では、メッシュ材22を用いて枠体内に第一の硫黄系ガス除去材20を保持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前段フィルタの表面積が小さくなって、硫黄系ガス浄化性能が低下する傾向にある。なお、ここにいう粒径とは、粒子が球形で無い場合には、原則として、その粒子の最小直径と最大直径との平均値をいうものとする。
また、このような第一の硫黄系ガス除去材によって硫黄系ガスを除去する際には、前記ヨウ素が硫黄系ガスに対して強酸化剤として作用し、硫黄系ガスを酸化し、その酸化によって生成された反応物を多孔性担体が捕捉して硫黄系ガスを除去する。なお、ヨウ素は硫黄系ガスを酸化するとヨウ化水素酸となるが、ヨウ化水素酸は、上述のように酸素の存在によって容易に酸化されてヨウ素に戻る。例えば、SOガスを除去する場合を例にとると、SOガスを除去する際に下記反応式(1)及び(2):
+SO+2HO→HSO+2HI (1)
2HI+1/2O→I+HO (2)
で示される反応が交互に起こる循環系が構成される。そのため、本発明においては、硫黄系ガスが酸化されて生成された反応物(上記例ではHSO)が多孔性担体に過度に蓄積されない限り、十分に高い除去性能を維持、発揮することが可能である。
また、このような第一の硫黄系ガス除去材20を製造するための好適な方法としては、ヨウ化アンモニウムと溶媒とを含有する溶液を、多孔性担体に含浸、担持してヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を得る工程と、
酸素含有雰囲気下、前記ヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を80〜115℃で5時間以上加熱して、前記多孔性担体を触媒としてヨウ化アンモニウムを触媒熱分解させてヨウ素を生成し、前記多孔性担体に前記ヨウ素を担持せしめて硫黄系ガス除去材を得る工程と、
を含む方法が挙げられる。以下、各工程に分けて説明する。
第一の硫黄系ガス除去材20を製造するための好適な方法においては、先ず、ヨウ化アンモニウムと溶媒とを含有する溶液を、多孔性担体に含浸、担持してヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を得る(第1の工程)。
このような溶媒としては、ヨウ化アンモニウムを溶解させることが可能なものであればよく、特に制限されず、水、有機溶媒等を適宜用いることができる。このような溶媒としては、加熱工程において溶媒を蒸発させて容易に除去できるという観点から、水、メタノール、エタノール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記溶液中の前記ヨウ化アンモニウムの含有量は特に制限されないが、5〜60質量%であることが好ましい。このようなヨウ化アンモニウムの含有量が前記下限未満では、硫黄系ガス除去材の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性炭上に担持されたヨウ化アンモニウムの粒子が粗大化し、その触媒熱分解で生成したヨウ素の分散性も低下して、十分なガス除去性能が得られなくなる傾向にある。
さらに、第1の工程においては、ヨウ素の担持量が多孔性担体100質量部に対して10〜100質量部となるようにして前記溶液を多孔性担体に含浸、担持させることが好ましい。なお、ここにいう「ヨウ素の担持量」は、後述する触媒熱分解により生成されるヨウ素の量を基準とする。
第一の硫黄系ガス除去材を製造するための好適な方法においては、次に、酸素含有雰囲気下、前記ヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を80〜115℃で5時間以上加熱して、前記多孔性担体を触媒としてヨウ化アンモニウムを触媒熱分解させてヨウ素を生成し、前記多孔性担体に前記ヨウ素を担持せしめて硫黄系ガス除去材を得る(第2工程)。
ここにいう「酸素含有雰囲気」としては、酸素の濃度が16容量%以上(より好ましくは18〜30容量%程度)のガス雰囲気が好ましい。このような酸素濃度が前記下限未満では、ヨウ素の生成効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コストが上昇し、不経済となる傾向にある。すなわち、このような酸素濃度のガス雰囲気下でヨウ化アンモニウムを触媒熱分解することで、ヨウ化アンモニウムの熱分解により生成されるヨウ化水素酸(HI)を効率よく酸化してヨウ素を効率よく生成することが可能となる。
また、このような加熱中の雰囲気を酸素含有雰囲気とする方法としては特に制限されず、例えば、解放系において、大気中で加熱する方法を採用してもよく、あるいは、酸素を含有するガス(例えば空気)を流通させながら加熱する方法を採用してもよい。また、このような加熱中の雰囲気を酸素含有雰囲気とする方法の中でも、より効率よく触媒熱分解を進行させるために、空気を流通しながら前記ヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を加熱することが好ましい。このようにして空気を流通させながら加熱を行うことで、加熱中に蒸発した溶媒及びヨウ化アンモニウムの触媒熱分解で生成されたアンモニアが多孔性担体の細孔内に滞留することが防止されるとともに、多孔性担体の細孔内の酸素濃度の低下が十分に防止されるため、前記細孔内において前記触媒熱分解が効率よく進行し、ヨウ素がより効率よく生成される傾向にある。また、このようにして空気を流通させる方法は特に制限されず、例えば、公知の強制換気機能を有する装置を用いて空気を流通させる方法を採用してもよい。
また、前記ヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を加熱する際の温度条件としては、80〜115℃(より好ましくは90〜110℃)である。このような加熱温度が前記下限未満では、触媒熱分解反応を効率的に行うことが困難となるとともに溶媒の蒸発速度が低下して、製造効率が低下する。他方、このような加熱温度が前記上限を超えると、ヨウ化アンモニウムの触媒熱分解で生成されたヨウ素の融点(約114℃)を大きく超えた温度となり、生成されたヨウ素が溶融するとともに粒成長が起こり、得られる硫黄系ガス除去材の除去性能が低下する。なお、ヨウ素の沸点を超える温度(約184℃以上の温度)で加熱すると、ヨウ素の蒸散が顕著となりヨウ素の担持量が低下するため製造効率や経済性が低下するばかりか、ヨウ素による加熱装置の腐食が問題となる。
さらに、前記ヨウ化アンモニウム担持多孔性担体を加熱する際の加熱時間は、5時間以上(より好ましくは6〜48時間、更に好ましくは10〜24時間)であることが好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では、加熱時間が不十分でヨウ化アンモニウムの触媒熱分解が十分に進まず、熱分解率を80%以上とすることができない。他方、このような加熱時間が前記上限を超えると、これ以上の加熱により経済性が低下する傾向にある。
また、本発明においては、上記酸素含有雰囲気下、上記加熱温度及び加熱時間の条件でヨウ化アンモニウムを触媒熱分解させるため、ヨウ化アンモニウムの熱分解率が80%以上となる。そして、このような触媒熱分解により、十分な担持量でヨウ素が担持されるとともに、ヨウ素の粒成長が十分に防止され、十分に微細な粒子となって高度に分散された状態で多孔性担体に担持されるため、得られる第一の硫黄系ガス除去材が十分に高い除去性能を発揮できるものと推察される。
また、枠体21としては特に制限されず、第一の硫黄系ガス除去材を充填させることが可能な公知のものを適宜用いることができる。また、枠体の形状等も特に制限されず、目的とする設計に合わせて適宜変更して使用することができる。メッシュ材22としては特に制限されず、第一の硫黄系ガス除去材を保持することが可能なものであればよい。このような枠体21及びメッシュ材22としては、前記多孔性担体に担持されたヨウ素が強い酸化性を有する物質であることから、その材質が耐薬品性の高い材質からなるものが好ましく、フッ素樹脂(PTFEやPFA等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)からなるものが好ましい。また、メッシュ材22のメッシュサイズとしては、活性炭を確実に保持でき、かつ、外部から流入する異物による目詰まりが無いように、100〜200メッシュであることが好ましい。また、仕切り板23としては特に制限されないが、メッシュ材22と同様のものを用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、メッシュ材22としては、150メッシュのPTFEからなる縦200mm、横200mmの大きさのものを用いている。
このような前段フィルタ11の充填高さ(図2中のh)は、前段フィルタの設計(形状や充填する第一の硫黄系ガス除去材の量など)等によってその好適な範囲が異なるものであるため一概には言えないが、硫黄系ガスの除去効率と第一の硫黄系ガス除去材の圧力損失との関係から、側面の大きさが縦200mm、横200mmである場合においては30mm程度であることが好ましい。なお、本実施形態において、前段フィルタ11は、縦200mm、横200mm、充填高さ(h)30mmの大きさのものであり、前段フィルタ中に600gの第一の硫黄系ガス除去材20が充填されている。
次に、後段フィルタについて説明する。後段フィルタ12は、プリーツ状に成形されたシート状の第二の硫黄系ガス除去材24を備えるものである。本実施形態においては、第二の硫黄系ガス除去材24は、そのプリーツ形状を維持するためにスペーサ25に接着されている。
このような第二の硫黄系ガス除去材24は、プリーツ状に成形されたシート状の活性炭素繊維と、該活性炭素繊維に担持されたアルカリ成分とからなるものである。このような活性炭素繊維としては、特に制限されず、公知の活性炭素繊維を適宜用いることができ、例えば、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、フェノール系、レーヨン系等の繊維を炭化し、賦活した活性炭素繊維からなるシートを挙げることができる。なお、本実施形態においては、このような活性炭素繊維としては、ピッチ系の活性炭素繊維シートを用いている。
また、このような活性炭素繊維の目付量としては、活性炭素繊維の形状等によっても異なるものであり、特に制限されないが、プリーツ状に形成されたシート形状のものとする場合には、100〜400g/mであることが好ましく、200〜300g/mであることがより好ましい。このような目付量が前記下限未満では硫黄系ガスの吸着性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、厚みが大きくなるため、プリーツの谷間が密着して圧力損失が増加する傾向にある。
さらに、前記活性炭素繊維をプリーツ状とする場合においては、ピッチ(図2中のP)は、目付量の数値をXとした場合に、X/20mm〜X/10mmとすることが好ましい。このようなピッチが前記下限未満では、活性炭素繊維のプリーツの谷間が密着して圧力損失が増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ろ過面積が減少し、ガス除去性能が低下する傾向にある。
また、前記活性炭素繊維をプリーツ状とする場合においては、折幅(図2中h)は30〜50mmとすることが好ましい。このような折幅が前記下限未満では、ろ過面積が減少し、ガス除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性炭素繊維のプリーツの谷間が密着して圧力損失が増加する傾向にある。なお、本実施形態においては、縦200mm、横200mm、折幅(h)50mm、ピッチ(P)24mmのプリーツ状に成形された活性炭素繊維のシートを用いている。
また、前記活性炭素繊維のシートの厚みとしては、後段フィルタ12の設計等によっても異なるものであり特に制限されないが、圧力損失の増加を防止し、効率よく硫黄系ガスを除去するという観点から、活性炭素繊維を縦200mm、横200mmのプリーツ状のシートとする場合には、1〜5mm程度であることが好ましい。
また、前記活性炭素繊維に担持されたアルカリ成分は特に制限されず、アルカリ金属を含むものであればよく、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物等が挙げられ、効率よく硫黄系ガスを吸着するという観点から、アルカリ金属の炭酸塩を用いることが好ましく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
また、このようなアルカリ成分の担持量としては特に制限されないが、前記活性炭素繊維100質量部に対して1〜100質量部とすることが好ましく、5〜60質量部とすることがより好ましい。アルカリ成分の担持量が前記下限未満では、硫黄系ガスの吸着性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持量に比例した硫黄系ガスの吸着性能が得られなくなるばかりか、活性炭素繊維の細孔が閉塞して却って除去性能が低下する傾向にある。なお、前記活性炭素繊維に前記アルカリ成分を担持させる方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記アルカリ成分を含有する水溶液を、活性炭素繊維に吸水させ、これを乾燥する方法等が挙げられる。
また、スペーサ25は、第二の硫黄系ガス除去材24を接着して、第二の硫黄系ガス除去材24の形状を保持することができるものであれば特に制限されず、公知の材料からなるものを適宜用いることができる。なお、このようなスペーサ25と、第二の硫黄系ガス除去材とを接着する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができるが、ホットメルト樹脂を用いて接着することが好ましい。
なお、このような後段フィルタ12によれば、活性炭素繊維がマクロ孔及びメソ孔を持たないものであるため、硫黄系ガスの吸着速度が速く、また、アルカリ成分が中和・吸収剤のように作用するため、容易に硫黄系ガスを吸着除去することが可能である。従って、上述のような前段フィルタ11及び後段フィルタ12を備える硫黄系除去フィルタ1は、十分に高い除去性能を発揮でき、しかも長期に亘り十分に高い硫黄系ガス除去性能を維持、発揮することが可能なものとなる。
以上、本発明の硫黄系ガス除去フィルタの好適な実施形態について説明したが、本発明の硫黄系ガス除去フィルタは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、前段フィルタとして縦200mm、横200mm、高さ30mmの大きさのものを用いているが、本発明においては、前段フィルタは第一の硫黄系ガス除去材を備えていればよく、形成させるフィルタの設計は特に制限されず、種々の形状及び大きさにすることができる。なお、本発明においては、枠体やメッシュ材を用いずにペレット状に成型した第一の硫黄系ガス除去材をそのまま前段フィルタとしてもよい。
また、上記実施形態においては、後段フィルタ12に用いる活性炭素繊維がプリーツ状に成形されたものであるが、本発明にかかる活性炭素繊維の形状は特に制限されず、目的とする設計に応じて適宜変更することができ、ハニカム形状や平板形状等としてもよい。また、後段フィルタ12の大きさも特に制限されず、目的とする設計に応じて適宜変更することができる。また、上記実施形態においては、硫黄系ガス除去フィルタ1は、図2に示すように前段フィルタ11と後段フィルタ12とが密接した状態で配置されたものとなっているが、本発明の硫黄系ガス除去フィルタにおいては、前段フィルタがガス流路の上流側に配置され、後段フィルタがガス流路の下流側に配置されていればよく、前段フィルタと後段フィルタが離れて配置された構造としてもよい。
なお、このような本発明の硫黄系ガス除去フィルタは、上述のように、硫黄系ガスに対して十分に高い除去性能を発揮することができ、しかも長期に亘ってその性能を発揮することができるものであるため、例えば、燃料電池用の硫黄系ガス除去フィルタ、ゴミ焼却、ボイラー等の燃焼排ガス浄化用の硫黄系ガス除去フィルタ等に好適に利用することができ、特に、燃料電池用の硫黄系ガス除去フィルタとして好適に用いられる。
次に、本発明の硫黄系ガスの除去方法について説明する。本発明の硫黄系ガス除去方法は、上記本発明の硫黄系ガス除去フィルタに、硫黄系ガスを接触させて硫黄系ガスを除去することを特徴とする方法である。
本発明の硫黄系ガス除去方法においては、上記本発明の硫黄系ガス除去フィルタを用いているため、硫黄系ガスを除去する際には、先ず、硫黄系ガスが上流側に配置された前段フィルタに接触する。このような前段フィルタにおいては、ヨウ素が硫黄系ガスに対して強酸化剤として作用するため、容易に硫黄系ガスを酸化でき、その酸化によって生成された反応物は容易に活性炭に捕捉されて除去される。そして、前段フィルタにより除去されずに僅かに漏れ出た硫黄系ガスがある場合には、その硫黄系ガスは後段フィルタに接触することとなる。このような後段フィルタにおいては、活性炭素繊維がマクロ孔及びメソ孔を持たないものであるため、硫黄系ガスの吸着速度が速く、硫黄系ガスを容易に吸着して除去できる。そのため、本発明の硫黄系ガスの除去方法によれば、効率よく硫黄系ガスを浄化することが可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
上記において説明した図1及び図2に示す構成の硫黄系ガス除去フィルタを製造した。なお、前段フィルタ及び後段フィルタの構成は以下に示す通りである。
[前段フィルタ11]
第一の硫黄系ガス除去材(ヨウ素担持活性炭)の使用量:600g
第一の硫黄系ガス除去材の粒径:2.8〜4.7mm(6.5〜4メッシュ)
フィルタ体格:縦200mm、横200mm、高さ(h)30mm
メッシュ材22:PTFE、100メッシュ
[後段フィルタ12]
第二の硫黄系ガス除去材(炭酸カリウム添着活性炭素繊維)
フィルタ体格:縦200mm、横200mm、折幅(h)50mm、ピッチ(P)24mm。
また、第一の硫黄系ガス除去材は以下のようにして製造した。すなわち、先ず、ヨウ化アンモニウム40質量部を水70質量部に溶かしてヨウ化アンモニウム水溶液を調製した。次に、前記ヨウ化アンモニウム水溶液110質量部を、粒径2.8〜4.7mmのヤシガラ活性炭(キャタラー社製商品名「GA−5」:比表面積1000m/g)100質量部に含浸させて、ヨウ化アンモニウム担持活性炭を得た。次いで、前記ヨウ化アンモニウム担持活性炭を、強制換気機能を有する熱風乾燥機(容量0.22m)中に入れ、加熱時のガス雰囲気中の酸素濃度が20容量%以上となるように換気風量を1.5m/minとして空気を流入しながら、105℃の温度条件で48時間加熱して、第一の硫黄系ガス除去材(ヨウ素担持活性炭)を得た。なお、熱分解率は100%であり、ヨウ素の担持量は活性炭100質量部に対して35質量部であった。
また、第二の硫黄系ガス除去材は以下のようにして製造した。すなわち、先ず、ひだ折り加工してプリーツ状に成形されたピッチ系の活性炭素繊維(縦200mm、横200mm、折幅(h)50mm、ピッチ(P)24mm、シートの厚み3mm)を調製した。次に、前記活性炭素繊維100質量部に対して、炭酸カリウム水溶液(KCO:10質量部、水:30質量部)をスプレーで噴霧して炭酸カリウムを担持せしめ、第二の硫黄系ガス除去材(炭酸カリウム添着活性炭素繊維)を得た。なお、後段フィルタにおいては、このようにして形成された第二の硫黄系ガス除去材を厚紙からなるスペーサにホットメルト樹脂を用いて接着せしめ、プリーツ形状が維持されるようにした。
(比較例1)
前段フィルタの第一の硫黄系ガス除去材の代わりに炭酸カリウムを担持せしめた活性炭(炭酸カリウム担持活性炭)を用いた以外は実施例1と同様にして比較のための硫黄系ガス除去フィルタを製造した。
なお、炭酸カリウム担持活性炭は以下のようにして製造した。すなわち、先ず、炭酸カリウム40質量部を水70質量部に溶かして炭酸カリウム水溶液を調製した。次に、前記炭酸カリウム水溶液110質量部を、粒径2.8〜4.7mmのヤシガラ活性炭(キャタラー社製商品名「GA−5」:比表面積1000m/g)100質量部に含浸させて、炭酸カリウム担持活性炭を得た。次いで、前記炭酸カリウム担持活性炭を、強制換気機能を持たない通常の乾燥機(容量0.077m)を用いて、105℃で17時間加熱して炭酸カリウム担持活性炭を得た。なお、炭酸カリウムの担持量は活性炭100質量部に対して40質量部であり、フィルタへの使用量は600gとした。
<実施例1及び比較例1で得られた硫黄系ガスフィルタの性能の評価>
〈SO除去性能試験〉
実施例1及び比較例1で得られた硫黄系ガス除去フィルタをそれぞれ用い、各硫黄系ガス除去フィルタのSO除去性能を試験した。すなわち、図1に示す開口部2aから濃度5ppmのSOを含む空気(23℃、相対湿度50%RH:入ガスA)をガス流量が4m/minで流し、硫黄系ガス除去フィルタ1を通過させた後、開口部2bから排出される出ガス(A)中のSOの濃度を測定した。ガスの通過時間と出ガス中のSOの濃度との関係を示すグラフを図3に示す。
図3に示す結果からも明らかなように、本発明の硫黄系ガス除去フィルタ(実施例1)においては、当初から高度な硫黄系ガス除去性能を示し且つ長期に亘り十分に高い硫黄系ガス除去性能を発揮できることが確認された。これに対して、比較のための硫黄系ガス除去フィルタ(比較例1)においては、時間の経過とともに出ガス中のSOの濃度が高くなっており、硫黄系ガス除去性能が十分なものとならないことが分かった。
〈HS除去性能試験〉
入ガス(A)として濃度5ppmのSOを含む空気の代わりに濃度5ppmのHSを含む空気を流した以外は、上述のSO除去性能試験と同様の方法を採用して、出ガス(A)中のHSの濃度を測定した。ガスの通過時間と出ガス中のHSの濃度との関係を示すグラフを図4に示す。
図4に示す結果からも明らかなように、本発明の硫黄系ガス除去フィルタ(実施例1)においては、HSに対して当初から高度な硫黄系ガス除去性能を示し、且つ、長期に亘り十分に高い硫黄系ガス除去性能を発揮できることが確認された。これに対して、比較のための硫黄系ガス除去フィルタ(比較例1)においては、HSに対する除去性能が当初から十分なものとならないことが分かった。
(比較例2)
第一の硫黄系ガス除去材の代わりに比較用ヨウ素添着活性炭(ヨウ素が熱分解率28.0%のヨウ化アンモニウムの触媒熱分解により生成されたもの)を用いた以外は実施例1と同様にして比較のための硫黄系ガス除去フィルタを製造した。
なお、比較用ヨウ素添着活性炭は、加熱時間を3時間とした以外は実施例1で採用した第一の硫黄系ガス除去材の製造方法と同様の方法で調製した。また、この際の熱分解率は28.0%であり、ヨウ素の担持量は活性炭100質量部に対して9.8質量部であり、フィルタへのヨウ素添着活性炭の使用量は600gとした。
比較例2で得られた硫黄系ガス除去フィルタに対して、上記の方法と同様の方法を採用してSO除去性能試験及びHS除去性能試験を行った。このような試験の結果、比較例2で得られた硫黄系ガス除去フィルタは、実施例1で得られた硫黄系ガス除去フィルタと比較して、SO及びHSの除去性能が十分なものとはならなかった。
以上説明したように、本発明によれば、硫黄系ガスに対して十分に高い除去性能を発揮することができ、しかも硫黄系ガスに対して長期に亘って十分に高い除去性能を発揮することが可能な硫黄系ガス除去フィルタ並びにそれを用いた硫黄系ガスの除去方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明の硫黄系ガス除去フィルタは、硫黄系ガスの除去性能を長期に亘って発揮できるものであるため、燃料電池用の硫黄系ガス除去フィルタ、ゴミ焼却、ボイラー等の燃焼排ガス浄化用の硫黄系ガス除去フィルタ等に特に有用である。
本発明の硫黄系ガス除去フィルタとして好適な形態の硫黄系ガス除去フィルタがケース内に配置された状態を示す概略縦断面図である。 図1に示す硫黄系ガス除去フィルタの点線で囲まれた領域Zの内部を拡大して示す模式図である。 実施例1及び比較例1で得られた各硫黄系ガスフィルタに対して通過させたガスの通過時間と出ガス中のSOの濃度との関係を示すグラフである。 実施例1及び比較例1で得られた各硫黄系ガスフィルタに対して通過させたガスの通過時間と出ガス中のHSの濃度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1…硫黄系ガス除去フィルタ、2…ケース、2a…開口部(ガス入口)、2b…開口部(ガス出口)、11…前段フィルタ、12…後段フィルタ、20…第一の硫黄系ガス除去材、21…枠体、22…メッシュ材、23…仕切り板、24…第二の硫黄系ガス除去材、25…スペーサ。

Claims (7)

  1. ガス流路中の硫黄系ガスと接触させて硫黄系ガスを除去する硫黄系ガス除去フィルタであって、
    ガス流路の上流側に配置される前段フィルタと、ガス流路の下流側に配置される後段フィルタとからなり、
    前記前段フィルタが、多孔性担体と、該多孔性担体に担持されたヨウ素とからなる第一の硫黄系ガス除去材を備えるものであり、前記ヨウ素が、前記多孔性担体を触媒としてヨウ化アンモニウムを熱分解率80%以上で触媒熱分解することにより生成されたものであり、且つ、
    前記後段フィルタが、活性炭素繊維と、該活性炭素繊維に担持されたアルカリ成分とからなる第二の硫黄系ガス除去材を備えるものであること、
    を特徴とする硫黄系ガス除去フィルタ。
  2. 前記多孔性担体が、活性炭であることを特徴とする請求項1に記載の硫黄系ガス除去フィルタ。
  3. 前記多孔性担体が、直径2nm以下のマイクロ孔に基づく細孔容量の割合が全細孔容量に対して90%以上の活性炭であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硫黄系ガス除去フィルタ。
  4. 前記ヨウ素の担持量が、前記多孔性担体100質量部に対して10〜100質量部であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の硫黄系ガス除去フィルタ。
  5. 前記アルカリ成分が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の硫黄系ガス除去フィルタ。
  6. 前記アルカリ成分の担持量が、前記活性炭素繊維100質量部に対して1〜100質量部であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の硫黄系ガス除去フィルタ。
  7. 請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の硫黄系ガス除去フィルタに、硫黄系ガスを接触させて硫黄系ガスを除去することを特徴とする硫黄系ガスの除去方法。
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