JP5126525B2 - 離型フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、優れた帯電防止性を有する離型フィルムに関するものであり、詳しくは、安定した帯電防止性を有し、かつ優れた耐溶剤性を有する離型フィルムに関する。
シリコーン樹脂を主として含む離型層を有する離型フィルムは、粘着用離型フィルム、接着剤用離型フィルム、樹脂成型用離型フィルム、表面保護用離型フィルム、セラミックシート等を成型する際のキャリヤーフィルム等として広く利用されている。シリコーン樹脂は、剥離強度が小さく、軽剥離性を有しており、一般離型フィルムとしても好適である。しかし、シリコーン樹脂はシリコーンの主鎖結合ならびに立体構造により電荷の漏洩が少なく、帯電しやすい性質を有している。そのため、シリコーン樹脂からなる離型層を有する離型フィルムは、摩擦や剥離により帯電しやすく、静電気により種々の障害を生ずる。例えば、離型フィルムとして各種樹脂の成型用のキャリアーフィルムとして用いる場合、樹脂を剥離した際や走行時の摩擦による帯電量が多くなり、ゴミなどの付着が起こり、これらは付着異物により成型樹脂表面に欠陥を生ずる。
そのため、離型フィルムに帯電防止性を付与する方策として、カチオン性化合物などを利用したイオン伝導型の帯電防止層(特許文献1)や、導電性の金属化合物を含有する帯電防止層(特許文献2)を基材フィルムと離型層の間に設けることが提案されている。さらに、帯電防止剤としてπ電子共役系導電性高分子を利用した帯電防止層が提案されている(特許文献3参照。)。
特開平10-315373号公報 特許第2801436号明細書 特開2005-153250号公報
しかし、特許文献1、2のようなイオン伝導型の帯電防止層は湿度依存性が強く、低湿度下ではキャリヤである水分が減少するため、表面固有抵抗が上昇し、帯電防止性能が不十分であるという問題が有った。そのため、例えば精密機器の保護フィルムなど低湿度下で使用される離型フィルムでは安定的な帯電性を得ることは困難であった。また、導電性の金属化合物を含有する帯電防止層を設けた場合、湿度依存性は少ないものの、離型層を形成するシリコーン樹脂の硬化を阻害し、離型層との密着性低下や剥離強度が重剥離化する場合があった。また、離型層に粒子を含むため、金属微粒子の脱落等による工程汚染、更には、離型フィルムの透明性の低下などの問題があった。
一方、特許文献3のように帯電防止剤としてπ電子共役系導電性高分子を用いる場合は、π電子共役系導電性高分子は湿度依存性が低く、低湿度下でも安定的な帯電防止性を有する。しかし、π電子共役系導電性高分子自体の耐溶剤性が乏しいため、帯電防止層の上に離型層を設けるため溶剤系の離型剤溶液をコートする際、帯電防止層の溶解や膨潤が生じ、離型層の密着性が低下し、ひいては帯電防止性能の低下が生じる問題があった。更には、離型層上に溶剤系の粘着剤や樹脂溶液を塗工した際に帯電防止層が溶解して剥離困難になる場合があった。
近年、精密機器の精密化は精緻を極めており、僅かの静電気でも障害になりうる。そのため、表面保護フィルムとしても、より高く、かつ安定した帯電防止性能が必要と考えられた。そこで、本発明の目的は、低湿度下においても剥離、摩擦帯電による静電気障害を克服するに十分な帯電防止性を有し、かつ耐溶剤性に優れる離型フィルムを提供することを課題とするにある。
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意研究した結果、酸化ケイ素膜とπ電子共役系導電性高分子とからなる帯電防止層において、顕著な耐溶剤性と高い帯電防止性を有することを見い出すことにより、ついに本発明を完成するに到った。即ち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
第1の発明は、基材フィルムと、離型層と、前記基材フィルムと前記離型層との間に帯電防止層とを有する離型フィルムであって、前記離型層がシリコーン樹脂を含み、前記帯電防止層が酸化ケイ素膜とπ電子共役系導電性高分子とを主たる構成成分とし、前記酸化ケイ素膜が、アルコキシド部分加水分解物を反応してなり、前記π電子共役系導電性高分子が帯電防止層中に40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする離型フィルムである。
の発明は、前記π電子共役系導電性高分子がチオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むものである前記離型フィルムである。
本発明の離型フィルムは、耐溶剤性に優れる帯電防止層を有する為、離型層上に溶剤を含む塗液を塗布することが可能であり、各種のキャリアーフィルムとして剥離性が良好である。また、帯電防止層がπ電子共役系導電性高分子を含有する為、低湿度下での帯電防止性にも優れ、工程中や剥離時の帯電によるゴミの付着等がなく、製品の歩留まりの向上に有効である。
本発明の離型フィルムは、基材フィルムと、離型層と、前記基材フィルムと前記離型層との間に帯電防止層とを有する離型フィルムであって、前記離型層がシリコーン樹脂を含有する組成物からなり、前記帯電防止層が酸化ケイ素膜とπ電子共役系導電性高分子とを主たる構成成分とすることを特徴とする。
(基材フィルム)
本発明の離型フィルムにおける基材フィルムとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂フィルムなどが挙げられる。これらの内、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム(CPP、OPP)が好ましく、熱寸法安定性や機械的強度、さらには成形性や経済性の面から、特にポリエステル樹脂フィルムが好ましい。基材フィルムは、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
本発明で用いる基材フィルムとして好適なポリエステル樹脂フィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどを用い、エステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステル樹脂からなるフィルムであり、好ましくは、係るポリエステル樹脂チップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記基材フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸することができる。さらに、二軸延伸後に220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
基材フィルムには、ハンドリング性(例えば、巻取り性)を付与するために、粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素などを含有させてもよい。
本発明で用いる基材フィルムは、単層フィルムであっても、表裏2種の層を積層したフィルムや、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層(もしくは裏層)の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。前記複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が特に好ましい。
基材フィルムの厚みは、素材により異なるが、ポリエステル樹脂フィルムを用いる場合には、下限は10μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上である。一方、厚みの上限は400μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりさらに好ましくは50μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、離型層や帯電防止層を形成する際の乾燥により離型フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
(帯電防止層)
本発明において、基材フィルムと離型層の間に、帯電防止層を設ける必要がある。帯電防止層は2層以上の複層であってもかまわないが生産性の観点から1層からなることが好ましい。本願発明の好ましい実施形態としては、基材フィルムの少なくとも一方の面に帯電防止層、離型層とを順次設けることであるが、本願発明の効果を妨げない範囲で必要であれば、基材フィルムと帯電防止層との間、もしくは帯電防止層と離型層との間に、反射防止層や紫外線吸収層などの機能層を設けることも可能である。
本発明における帯電防止層は、帯電防止剤およびバインダーを含む塗布液を塗布、乾燥して得られたものである。帯電防止剤としては、カチオン性化合物などのイオン伝導を利用した高分子や界面活性剤、導電性の金属化合物、π電子共役系導電性高分子などがあるが、本発明においては、低湿度下での帯電防止性の点からπ電子共役系導電性高分子を用いる。また、バインダーとしては各種樹脂が挙げられるが、本発明においては、酸化ケイ素膜を用いることを特徴とする。
本発明において帯電防止層は、酸化ケイ素膜とπ電子共役系導電性高分子とを主たる構成成分とする。ここで「主たる構成成分」とは、帯電防止層中の酸化ケイ素およびπ電子共役系導電性高分子合計含有量が50質量%以上であることをいい、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、本願発明の帯電防止層の好ましい実施態様としては、当該帯電防止層が酸化ケイ素膜とπ電子共役系導電性高分子からなるものである。帯電防止層中に酸化ケイ素膜およびπ電子共役系導電性高分子が少ない場合には、帯電防止性能および耐溶剤性が低下する傾向がある。
本発明において、π電子共役系導電性高分子を用いることで、低湿度下での帯電防止性を良好にすることが可能である。また、帯電防止層上に離型層が積層されると、経時もしくは環境変化に応じて帯電防止層中の水分状態が変化する場合があるが、π電子共役系導電性高分子の導電性は湿度依存性が低いため、このような状態変化が生じても安定的な帯電防止を発現することが可能となる。
π電子共役系導電性高分子としては、アニリンあるいはその誘導体を構成単位として含むアニリン系高分子、ピロールあるいはその誘導体を構成単位として含むピロール系高分子、アセチレンあるいはその誘導体を構成単位として含むアセチレン系高分子、チオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むチオフェン系高分子等が挙げられる。離型フィルムの用途によっては、例えば外部検査を要する部材や精密機器の表面保護フィルムもしくはキャリアーフィルムなど高い透明性が求められる場合がある。このような場合、π電子共役系導電性高分子としては窒素原子を有さないものが好ましく、中でもチオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むチオフェン系高分子は透明性の点から好適であり、特にポリアルキレンジオキシチオフェンが好適である。ポリアルキレンジオキシチオフェンとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリプロピレンジオキシチオフェン、ポリ(エチレン/プロピレン)ジオキシチオフェンなどが挙げられる。
なお、チオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むチオフェン系高分子には、帯電防止性を更に良好なものとするためドーピング剤を、例えばチオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含む高分子100重量部に対し0.1重量部以上500以下重量部配合することができる。少ない場合には、電子移動が困難となるため帯電防止性能の低下の問題があり、逆に多い場合には、溶媒に対する分散性低下の問題がある。このドーピング剤としては、LiCl、R1‐300COOLi(R1‐30:炭素数1以上30以下の飽和炭化水素基)、R1‐30SOLi、R1‐30COONa、R1‐30SONa、R1‐30COOK、R1‐30SO3K、テトラエチルアンモニウム、I、BFNa、BFNa、HClO、CFSOH、FeCl、テトラシアノキノリン(TCNQ)、Na10Cl10、フタロシアニン、ポルフィリン、グルタミン酸、アルキルスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸Na(K、Li)塩、スチレン・スチレンスルホン酸Na(K、Li)塩共重合体、ポリスチレンスルホン酸アニオン、スチレンスルホン酸・スチレンスルホン酸アニオン共重合体等を挙げることができる。
本発明における帯電防止層は酸化ケイ素膜をバインダーとして構成される。本発明において、酸化ケイ素膜はシラノールの作用により三次元的なシロキサン網を形成している構造体をいう。本願発明の酸化ケイ素膜がかかる三次元構成を有していることは、具体的にはX線回折という評価方法により判定する事が可能である(参照文献:日本分析化学会編「高分子分析ハンドブック」朝倉書店、1985年1月25日、p119−121)。より具体的には、本願発明の帯電防止層をX線回折測定を行うと、散乱角(2θ)が10〜40°付近に酸化ケイ素膜の三次元構成を示すX線回折パターンを観察することができる。
上記のような構造を有する酸化ケイ素膜を形成する方法しては、アルコキシドの加水分解・縮合反応によるものや、シリカゾル表面に有機物を修飾させた有機無機ハイブリッドポリマーにおける架橋反応等を挙げることができる。
本発明において、酸化ケイ素膜を形成させる好ましい実施態様としては、酸化ケイ素膜をアルコキシドの加水分解・縮合反応によって形成する。酸化ケイ素膜を形成する際に必要な加水分解反応に作用する水分は、例えば基材フィルム表面に付着している水分、もしくは空気中の水分等で十分である。アルコキシドとしては例えば(ClSiO)n 等のクロルポリシロキサン、或は加水分解を起こし易いアルコキシシランやアルコキシポリシロキサン等を挙げることができる。このような化合物は、塗布前に水に作用させて部分加水分解させておくことが好ましく、特に側鎖及び末端基の8割以上が水酸基で置換された部分加水分解物としておくことが好ましい。
アルコキシドの加水分解・縮合反応は、例えばアルコキシシランで説明すると、温和な反応条件で、
の加水分解反応によってシラノールを生成し、このシラノール同士が
の縮合反応によって縮合し、これらが連鎖的に反応して三次元構造をもつ酸化ケイ素膜を形成する。この反応は室温ないし120℃以下の温度で十分に進行すると共に、反応副生成物はガス状となり、反応残渣のない利点をもつ。アルコキシドの部分加水物を基材フィルム表面に塗布すると、上述から理解できるように、温湿度の影響を受けて、π電子共役系導電性高分子包含しつつ、基材フィルムと強固に結合した三次元構造を形成する。これにより高い密着性を有する帯電防止層を形成する。
本願発明者は鋭意検討を行った結果、上記のようにバインダーとして酸化ケイ素膜を用いることで、π電子共役系導電性高分子を用いながら、高い耐溶剤性を示す帯電防止層を見い出し、本願発明に至ったのである。本願発明の帯電防止層が高い耐溶剤性を示す理由として本願発明者は以下のように考えている。上記アルコキシドの部分加水分解物を脱水縮合すると三次元網目構造を有する酸化ケイのガラス状膜が形成される。この酸化ケイ素膜の三次元構造がかご状のナノ構造体としてπ電子共役系導電性高分子を内包に適した空孔を提供する。さらには、π電子共役系導電性高分子が良好な導電性を発現するために、高分子鎖が出来る限り分断されないことが重要であるが、上記酸化ケイ素のガラス状膜が三次元的な網目構造を有することで、高分子鎖を分断されない状態でネットワークを形成する事が可能となる。これにより膜界面と内部に働くトンネル効果により電荷移動がスムーズに起こることで、他の樹脂との混合に比べ、優れた帯電防止性を発現することが可能となる。これにより、本発明の帯電防止層においてπ電子共役系導電性高分子は高い耐溶剤性と優れた帯電防止性を示す。上記の作用は、水に不溶で塗布液中に分散形態で存在するチオフェンおよびその誘導体からなチオフェン系高分子でより顕著な効果を示す。
本発明においてπ電子共役系導電性高分子が帯電防止層中に10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上、60質量%以下である。特に、π電子共役系導電性高分子が帯電防止層中に20質量%以上80質量%以下である場合は、密着性および帯電防止性とがより高度に両立することができる。なお、前記ドーピン剤を用いる場合は、本願に規定するπ電子共役系導電性高分子の帯電防止層中の含有量には、導電性高分子と前記ドーピング剤の合計量のことである。アルコキシドの部分加水物は、帯電防止層中に10質量%以上90質量%以下で混合することが好ましく、20質量%以上80質量%以下で混合することがより好ましく、40質量%以上60質量%以下で混合することがさらに好ましい。特に、帯電防止層中に、アルコキシドの部分加水物が、20質量%以上80質量%以下で混合する場合は、密着性および帯電防止性とがより高度に両立することができる。少ない場合には、酸化ケイ素膜の網目構造にπ電子共役系導電性高分子が満たされない空孔が生じ、π電子共役系導電性高分子のネットワークが形成されず、帯電防止性能の低下の傾向がある。逆に多い場合には、酸化ケイ素膜の空孔以上にπ電子共役系導電性高分子が存在することとなり耐溶剤性が低下する不足の傾向がある。
また、本願発明者は、分散性の点からも上記酸化ケイ素とπ電子共役系導電性高分子とは良好な組み合わせであることを見出した。一般に分散溶液中でπ電子共役系導電性高分子は安定な状態で分散している。係るπ電子共役系導電性高分子分散溶液を、例えば有機溶媒で溶解したバインダーと混合すると、溶液の極性が変化し、安定な分散が得られない場合がある。また、混合する溶液が水系であっても、例えば水系ポリエステル樹脂や水系ウレタン樹脂のように水系樹脂バインダーを溶解した水系溶液と混合する場合は、溶液の電荷状態(pHなど)が変化するため、安定した分散が得にくく、バインダー樹脂が凝集、沈降する場合がある。これに対して、上記アルコキシドの部分加水物を含有する溶液中では、π電子共役系導電性高分子は親和性が良好であり、望ましい分散性を示す。そのため、本願発明での安定した帯電防止性に寄与する。
本発明においては、アルコキシドの部分加水物とπ電子共役系導電性高分子を含む組成物を含む塗布液を基材上に塗布、乾燥して帯電防止層を設けるが、塗布液の固形分濃度は0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、特に0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。塗布量を一定とした場合は、固形分濃度が低い場合には帯電防止性能の低下の問題があり、逆に高い場合には透明性低下の問題がある。
塗布液の固形分濃度は、水や公知の有機溶剤を用いて調整することが可能である。上記有機溶媒しては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルプロピレングリコール、エチルプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類などが好ましく用いられる。これらの有機溶媒は、水と任意の割合で混合して用いることができる。混合の例としては、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、水/イソプロパノール、水/メチルプロピレングリコール、水/エチルプロピレングリコールなどが挙げられる。その混合割合は、限定するものではないが、水/有機溶媒=1/10〜10/1程度が好ましい。溶剤の使用割合は特に制限されないが、通常、π電子共役系導電性高分子100重量部に対して、1000〜20000重量部である。溶剤の使用量が極端に多い場合は、得られる本発明における帯電防止層の塗布性が悪くなる恐れがある。この場合、帯電防止層にピンホールが発生しやすくなり、得られた離型フィルムの導電性が著しく低下、すなわち帯電防止性が低下する恐れがある。逆に、溶剤の使用量が極端に少ない場合は、このπ電子共役系導電性高分子の上記溶剤への溶解性又は分散性が不十分となり、得られる帯電防止層の表面が平坦になりにくくなる恐れがある。
本発明における帯電防止層は、外観向上のために界面活性剤を用いてもかまわない。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を用いることができる。
帯電防止層には、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、滑剤、色素、紫外線吸収剤、架橋剤、シランカップリング剤、等を混合しても良い。
基材フィルム表面に帯電防止層を積層する方法としては、グラビアロールコーティング法、リバースロールコーティング法、ナイフコータ法、ディップコート法、スピンコート法などがあるが、導電性組成物に適したコート法は特に制限はない。また、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。
帯電防止層を形成する乾燥温度としては、通常60℃以上150℃以下であり、好ましくは90℃以上140℃以下である。この温度が低すぎると、時間が長くなり、生産性が低下するので好ましくない。一方、この温度が高すぎると、フィルムの平面性に問題が生じるようになり、好ましくない。
帯電防止層の塗工量は、乾燥後重量として、好ましくは0.005g/m以上、より好ましくは0.015g/m以上である。この塗工量が0.005g/m未満の場合得られる離型フィルムの帯電防止性が劣る傾向にある。逆に上限は0.05g/mであり、これを超える場合は透明性が低下する場合がある。
(離型層)
本発明において、基材フィルムの少なくとも片面に有する帯電防止層上に直接、あるいは他の層を介して離型層を設ける必要がある。本発明の離型層では、剥離強度の点からシリコーン樹脂を含むことを特徴とする。本発明の好ましい実施態様としては、離型層の主成分としてシリコーン樹脂を含むことである。ここで、「主成分とする」とは、離型層の構成成分のうち50質量%以上、好ましくは80質量%以上がシリコーン樹脂であることをいう。
本発明における離型層を構成するのに好適なシリコーン樹脂は、例えば縮合反応系、付加反応系、ラジカル反応系、紫外線もしくは電子線硬化系、シリルイソシアネートの加アルコール反応系などいずれの反応系のものも用いることができる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくてもラジカルによる架橋反応が起こる。上記縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端OH基を持つポリジメチルシロキサンと末端に−H基をもつポリジメチルシロキサン(ヒドロキシポリジメチルシロキサン)を有機錫触媒(例えば有機錫アシレート触媒)を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとヒドロキシポリジメチルシロキサンを白金触媒を用い付加反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、アクリル基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させこれでエポキシ基を開環させて架橋させるもの、ビニルシロキサンヘのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。加アルコール反応型シリコーンとは、ケイ素官能型シリルイソシアネートとアルコールの反応を利用するものである。該シリルイソシアネートはアルコールと速やかに反応するが安定なウレタン化合物の形成は無くSi−N結合が開裂し、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。これらのなかで、経済性およびフィルムの平面性維持の観点から低温硬化可能な付加反応系、紫外線反応系が好ましい。
シリコーン樹脂としてはその重合度が50以上50,000以下程度のものが望ましい。本発明では、上記例示のものに限定される訳ではなく、これらの一部は市販品として入手可能であり、その具体例としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSP7015、LTC750、LTC310、LTC851:信越化学(株)製のKS−774、−778、−841、−837、X−62−2087、−2113、X−24−8301、X−22−343、−160C:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(株)製のTPR−6712、−6500、−6700、XS−58−707、−619、YSR−3022、TUV5000:松本製薬(株)製のSIC−003、SI−130、−220、−310、−400を好適に用いることができる。
離型層を形成するための塗布液は、例えば、離型剤としてのシリコーン樹脂及び触媒を溶媒に加え塗布液を調合する。溶媒としては、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪酸炭化水素、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、およびメチルエチルケトンなどが挙げられる。基材フィルム表面に塗布する場合の塗布性を考慮すると、限定するものではないが実用上好ましくはトルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒である。帯電防止層上に直接塗布する場合には、帯電防止層の親水性が高い為、より好ましくはトルエン、メチルエチルケトン、およびn−ヘプタンの混合溶媒である。塗布後のヌケやモヤを防ぐ為に、この容量混合比はトルエン/メチルエチルケトン/n−ヘプタンが、25〜45体積%/25〜45体積%/10〜50体積%であることが好ましい。上記の塗布液を基材フィルム上に塗布する。
基材フィルムおよび/または帯電防止層と離型層との間の密着性を向上させるため、本発明の目的を阻害しない量で、離型層を形成するための塗布液中にアンカー剤を添加してもよい。かかるアンカー剤としては、シランカップリング剤を好ましく用いることができる。シランカップリング剤としては、一般式Y−Si−Xで示されるものを挙げることができる。ここで、Yはアミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基またはメルカプト基等で代表される官能基を有する有機基で、Xはアルコキシ基で代表される加水分解性の官能基を示す。
また、離型層のヌケやハジキを防止させるため、本発明の目的を阻害しない量で、離型層を形成するための塗布液中に界面活性剤を添加してもよい。さらには、本発明の目的を阻害しない量で、離型層を形成するための塗布液中には必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、滑剤などを含有させてもよい。
本発明における離型層の塗工量は、0.005g/m以上、好ましくは0.05g/m以上である。この塗工量が0.005g/m未満の場合は表面を均一に覆うことができない為、離型フィルムの離型性が劣る傾向にある。逆に上限は0.2g/mであり、塗工量が多い場合には離型層の絶縁効果により離型フィルムの帯電防止性が低下する傾向にある。
本発明において、離型層を形成する際の塗布方法は特に限定されないが、上記有機溶媒でシリコーン樹脂および触媒を溶解した塗布液を用い、ダイレクトグラビアコーター、マイクログラビアコーター、リバースグラビアコーター、ダイレクトキスコーター、リバースキスコーター、コンマコーター、ダイコーター、バー・ロットタイプの塗布装置等によって塗布することによって得られる。この中でも、マイクログラビアコーター、ダイレクトキスコーター、リバースキスコーターを用いると、シリコーン系樹脂被膜の厚みの均一性が良好となり塗布ムラの発生が少ないので好ましい。
離型層を形成する乾燥温度としては、通常60℃以上150℃以下であり、好ましくは90℃以上140℃以下である。この温度が低すぎると、シリコーン樹脂の硬化性が不良となり、裏移り等の問題が発生しやすくなる。一方、この温度が高すぎると、フィルムの平面性に問題が生じるようになり、好ましくない。
本発明において離型層を形成する際に、シリコーン樹脂種に応じて紫外線照射を行ってもよい。紫外線の照射量はシリコーン樹脂が硬化する量であれば良く、通常高圧水銀ランプや無電極ランプ(例えばフュージョン(株)製Hバルブ)等により、単位面積あたりの照射エネルギーが1mJ/cm以上1000mJ/cm以下であり、好ましくは10mJ/cm以上500mJ/cm以下である。この照射エネルギーが低すぎると、シリコーン樹脂の硬化性が不良となり、裏移り等の問題が発生しやすくなる。一方、この照射エネルギーが高すぎると、照射熱でフィルムの平面性に問題が生じるようになり、好ましくない。
(離型フィルム)
本発明において離型フィルムは、離型性を有する。好ましい離型性とは、被着体に離型層の一部または全てが移行することなく、被着体から離型フィルムが容易に剥離できることである。離型性は、シリコーン樹脂種の変更、および離型層の厚みにより調整することが可能である。
本発明において離型フィルムは帯電防止性を有する。具体的には、表面抵抗値が1010Ω/□以下であることが必要であり、さらにキャリアーフィルムや精密機器の保護フィルムなど、より静電気の影響が大きい用途の場合は、好ましくは10Ω/□以下であることが必要であり。帯電防止性は、帯電防止層の厚み、および帯電防止層中におけるπ電子共役系導電性高分子の単位面積あたりの存在量により調整することが可能である。表面抵抗値が高い場合には、離型フィルムを剥離もしくは繰り出した際に摩擦帯電し、周囲からゴミの付着等が発生し、キャリアーフィルムとして用いた場合に歩留まりが不良となる。また、離型フィルムを剥離した際に剥離帯電が発生し、剥離が困難になる場合がある。
本発明において離型フィルムは耐溶剤性を有する。耐溶剤性を有すことで、離型層表面に溶剤系の粘着剤をコートする場合や樹脂成型用に用いる場合、塗布される塗液に含有される有機溶剤で帯電防止層や離型層表面が溶解せず、高い密着性を発揮し、ひいては帯電防止性を維持できる事である。耐溶剤性の簡易評価法としては、離型層表面を有機溶剤でふき取り、剥離性もしくは帯電防止性の低下が見られない事を確認する手法がある。
本発明において離型フィルムは、基材フィルムおよび/または帯電防止層と離型層との間に優れた密着性を有することが好ましい。特に、離型フィルムは作成後の経時で未反応のシリコーン樹脂がブリードする為、経時での密着性が必要である。好ましい密着性とは、23℃、湿度60%の条件下において半年以上経過しても品質が安定することであり、簡易的には、離型フィルムを60℃、湿度90%の条件下において48時間経過させる加速試験により、上記評価に要する期間を短縮させる事ができる。
例えば、部材や機器の外観観察を保護フィルム上から行う用途においては、本発明の離型フィルムは透明性を有することが好ましい。好ましい透明性とは、剥離前における被着体の外観検査等で、視認性を低下させない程度の着色や濁り(ヘイズ)がないことである。本願発明の離型フィルムのヘイズは、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%いかでることがさらに好ましく、4.7%であれば特に好ましい。透明性は、帯電防止層中におけるπ電子共役系導電性高分子の単位面積あたりの質量により調整することが可能である。また、透明性の高い離型フィルムを得るには、π電子共役系導電性高分子としてチオフェン系高分子を用いることが好ましい。
本発明において離型フィルムの離型層を形成していない反対面は、用途や目的に応じて各種の機能を付与しても構わない。例えば、本発明の離型層や帯電防止層、更には、易滑層、易接着層、着色層、紫外線吸収層などが挙げられる。
以下に、本発明の実施例および比較例示すが、本発明はこの例によって何ら制限されるものではない。また本発明に用いる評価法を以下に示す。
(1)離型層との密着性
離型層形成後、温度60℃、湿度90%の条件下において48時間経過した離型フィルムについて、離型層表面をキムワイプ(クレシア(株)製、WIPRS S200)で強く10回擦り、離型層面の曇りや離型層の脱落を目視により観察し、下記の判定基準で評価した。
◎:曇りや脱落が全く無い
○:曇りおよび脱落が見られる
△:曇りおよび脱落が多く見られる
×:曇りが多く見られ、脱落もかなり多く起こる
(2)離型フィルムのヘイズ
離型層形成後、日本電色製HAZE METER NDH2000 を用いて JIS K7136 に示される測定法に準拠して、ヘイズを測定した。
(3)剥離強度
離型フィルム表面に粘着テープ(日東電工(株)製、商品名「31B」)を貼り合わせ、5kgの荷重をかけた後、温度23℃、湿度50%の条件下で20時間放置した。粘着テープを貼り合わせた離型フィルムを幅25mm、長さ150mmの短冊状に裁断した。剥離強度の測定は、引っ張り試験機(東洋測機(株)製、テンシロンUTM)を用いて測定した。粘着テープの一端を固定し、離型フィルムの一端を把持し、離型フィルム側を300 mm/minの速度でT字剥離強度を測定した。
(4)帯電防止性
離型フィルムを温度23℃、湿度15%の条件下で24時間調湿後、離型層表面の表面抵抗値を表面抵抗測定器(シムコジャパン(株)製、ワークサーフェイステスター ST-3)を用いて測定し、下記の判定基準で評価した。
◎:表面抵抗値が10〜10Ω/□
○:表面抵抗値が10〜10Ω/□
△:表面抵抗値が1010〜1011Ω/□
×:表面抵抗値が1012Ω/□以上
(5)耐溶剤性
離型層形成後、温度60℃、湿度90%の条件下において48時間経過した離型フィルムについて、離型層表面をキムワイプ(クレシア(株)製、WIPRS S200)で強く10回擦り、離型層面の曇りや離型層の脱落を目視により観察し、下記の判定基準で評価した。
◎:曇りや脱落が全く無い
○:曇りおよび脱落が見られる
△:曇りおよび脱落が多く見られる
×:曇りが多く見られ、脱落もかなり多く起こる
(アルコキシド部分加水分解物(A)の調製)
アルコキシシラン(コルコート(株)製、商品名「エチルシリケート40」)を100質量部、2%塩酸水溶液を3質量部、50%エタノール水溶液を400質量部混合した。この混合溶液を25℃で2時間攪拌して加水分解を実施し、これをアルコシキド部分加水分解物(A)とした。これをイソプロピルアルコールで希釈して、アルコキシド部分加水分解物(A)を2質量%含有する溶液を作製した。
実施例1
π電子共役系導電性高分子としてチオフェン系高分子であるポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフォネートを1.2質量%の割合で含有する水分散体(スタルク(株)製、商品名「バイトロンP」)と、アルコキシド部分加水物(A)を2質量%の割合で含有する溶液とを固形分比率として6:4になるよう混合し、更に固形分濃度が0.5質量%になるように、イソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で希釈して帯電防止層形成用塗布液(A)を調製した。この帯電防止層形成用塗布液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「E5100」)の表面に乾燥後の塗工量が0.04g/m2となるようにライン速度100m/minでダイレクトグラビアコーターで塗布し、次いで、130℃の乾燥炉で乾燥を行い、帯電防止層を積層した。
さらに、付加型硬化シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名「LTC-851」)100質量部、硬化触媒(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名「BY24-835」)3質量部をトルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2.2質量%の離型剤溶液を調製した。この離型剤溶液を帯電防止層表面に、乾燥後の塗工量が0.11g/m2となるようにライン速度100m/minでリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、130℃の乾燥炉で乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン(株)製Hバルブ)にて紫外線照射を行い、離型層を形成し、離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。実施例1で得られたフィルムは表に示すとおり、何れの物性も満足できる性能を有していた。特に帯電防止性、密着性および耐溶剤性について優れた性能を発現した。
実施例2
π電子共役系導電性高分子としてアニリン系高分子であるポリアニリンスルホン酸を1.9質量%の割合で含有する水分散体と、アルコキシド部分加水物(A)を2質量%の割合で含有する溶液とを固形分比率として6:4になるよう混合し、更に固形分濃度が0.5質量%になるように、イソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で希釈した帯電防止層形成用塗布液(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、アニリン系高分子由来の着色による透明性低下以外は良好であった。
実施例3
π電子共役系導電性高分子としてピロール系高分子である3-メチル-4-ピロールカルボン酸エチルと3-メチル-4-ピロールカルボン酸ブチルの共重合体(ティーエーケミカル(株)製、商品名「SSPY」)を1.9質量%の割合で含有する水分散体と、アルコキシド部分加水物(A)を2質量%の割合で含有する溶液とを固形分比率として6:4になるよう混合し、更に固形分濃度が0.5質量%になるように、イソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で希釈した帯電防止層形成用塗布液(C)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、ピロール系高分子由来の着色による透明性低下以外は良好であった。
比較例1
π電子共役系導電性高分子としてチオフェン系高分子であるポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフォネートを1.2質量%の割合で含有する水分散体(スタルク(株)製、商品名「バイトロンP」)と、ポリエステル系樹脂溶液(東洋紡(株)製、商品名「バイロナールMD1200」、固形分濃度1.2質量%)とを固形分比率として6:4になるよう混合し、さらにイソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で固形分濃度が1質量%になるように希釈した帯電防止層形成用塗布液(D)を用いること以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、耐溶剤性が実施例に比べ劣っていた。
比較例2
帯電防止剤としてアンチモンドープ型酸化亜鉛のイソプロピルアルコール分散液(日産化学(株)製、商品名「セルナックスCX-Z210IP」固形分濃度20質量%)とアルコキシド部分加水物(A)を2質量%の割合で含有する溶液を固形分比率として7:3になるよう混合し、更に固形分濃度が0.5質量%になるように、イソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で希釈した帯電防止層形成用塗布液(E)を用いること以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、離型層の密着性低下、およびヘイズ上昇により透明性に劣っていた。更には、離型層の硬化阻害と思われる重剥離化が見られた。
比較例3
帯電防止剤としてアニオン型高分子帯電防止剤であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム(三洋化成(株)製、商品名「ケミスタットSA−9」)を用い、更に固形分濃度が0.5質量%になるように、イソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で希釈した帯電防止層形成用塗布液(F)を用いた以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、キャリアである水分が乾燥により減少し、低湿度下でイオンの伝導が阻害されるため、帯電防止性能に劣っていた。また、離型層の密着性についても劣っていた。
比較例4
アルコキシド部分加水物(A)を2質量%の割合で含有する溶液を、固形分濃度が1質量%になるようにイソプロピルアルコール/純水(=6:4)溶液で希釈した塗布液(G)を用いること以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、帯電防止性不良であった。
比較例5
帯電防止層を設けないこと以外は実施例1と様にして離型フィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、帯電防止層を有さないため、帯電防止性不良であった。
実施例4、5、参考例1〜4
表1に記載の様にπ電子共役系導電性高分子としてチオフェン系高分子であるポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフォネートの帯電防止層中に含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。得られたフィルムの評価結果は表1に示すように、π共役系導電性高分子の含有量が少ない場合には帯電防止性や密着性がやや不良になる傾向があり、逆に、多い場合には耐溶剤性や密着性が不良になる傾向があった。
本発明の離型フィルムは、低湿度下においても十分な帯電防止性を有し、優れた耐溶剤性を有し、離型フィルムとしても好適である。また、剥離強度が小さく、一般離型フィルムとしても好適である。例えば、粘着用離型フィルム、接着剤用離型フィルム、樹脂成型用離型フィルム、表面保護用離型フィルム、セラミックシート等を成型する際のキャリヤーフィルム等として広く利用可能である。また、本願発明の好ましい態様として、高い透明性を有しており、例えば部材、機器、精密機械などを検査する際に用いられる表面保護フィルムとしても好適に使用できる。

Claims (2)

  1. 基材フィルムと、離型層と、前記基材フィルムと前記離型層との間に帯電防止層とを有する離型フィルムであって、
    前記離型層がシリコーン樹脂を含み、
    前記帯電防止層が酸化ケイ素膜とπ電子共役系導電性高分子とを主たる構成成分とし、
    前記酸化ケイ素膜が、アルコキシド部分加水分解物を反応してなり、
    前記π電子共役系導電性高分子が帯電防止層中に40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする
    離型フィルム。
  2. 前記π電子共役系導電性高分子がチオフェンあるいはその誘導体を構成単位として含むことを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
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