JP5126102B2 - 内燃機関の燃料供給装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関にて駆動される高圧燃料ポンプに対して、電動式の低圧燃料ポンプを利用して燃料を送り、高圧燃料ポンプにて加圧された燃料を内燃機関に供給する内燃機関の燃料供給装置に関する。
電動式の低圧燃料ポンプを利用して高圧燃料ポンプに燃料を送る燃料供給装置は周知である。この種の燃料供給装置として、内燃機関の始動開始からの燃圧の立ち上がりを監視することによって低圧燃料ポンプの故障を判定するものが知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2〜4が存在する。
特開2000−274322号公報 特開2005−307931号公報 特開平10−299600号公報 特開2006−233848号公報
特許文献1の燃料供給装置は内燃機関の始動時の燃圧の立ち上がりが遅い場合に低圧燃料ポンプの故障を検出するため、始動完了後の内燃機関の運転中に低圧燃料ポンプの故障を含む燃料供給系の異常を判定することができない。
そこで、本発明は、内燃機関の運転中に燃料供給系の異常を判定できる内燃機関の燃料供給装置を提供することを目的とする。
本発明の燃料供給装置は、内燃機関に供給する燃料の燃圧を調整可能な調整手段が設けられ、前記内燃機関にて駆動される高圧燃料ポンプに対して、電動式の低圧燃料ポンプを利用して燃料を送り、前記高圧燃料ポンプにて加圧された燃料を前記内燃機関に供給する内燃機関の燃料供給装置において、前記高圧燃料ポンプの下流側の燃圧を検出する燃圧検出手段と、前記燃圧検出手段が検出した燃圧と目標値との偏差が低減するように、前記偏差に応じた制御量を前記調整手段に与えることにより前記調整手段を制御する高圧ポンプ制御手段と、前記低圧燃料ポンプに対して与えるべき供給電力を前記高圧ポンプ制御手段が前記調整手段に与える前記制御量に基づいて算出する供給電力算出手段と、前記供給電力算出手段が算出した前記供給電力を前記低圧燃料ポンプへ供給することにより前記低圧燃料ポンプを制御する低圧ポンプ制御手段と、前記供給電力が前記内燃機関の運転状態毎に設定された所定値を超えた場合に前記内燃機関の燃料供給系に異常が生じたと判定する異常判定手段と、を備えるものである(請求項1)。
この燃料供給装置によれば、高圧燃料ポンプ下流側の燃圧と目標値との偏差に応じて変化する制御量に基づいて低圧燃料ポンプへ供給する供給電力が算出される。そのため、内燃機関の運転中に燃料供給系に異常が生じ、実際の燃圧と目標値との間の偏差が大きくなって制御量が想定外に増大した場合にはそれに伴って低圧燃料ポンプへの供給電力も想定外に増加する。従って、低圧燃料ポンプへの供給電力が所定値を超えたことに基づいて内燃機関の運転中における燃料供給系の異常を判定できる。
本発明の燃料供給装置の一態様においては、前記異常判定手段が前記燃料供給系の異常を判定した場合に、前記燃圧検出手段の検出結果に基づいて、前記異常に含まれる故障モードを特定する故障モード特定手段を備えてもよい(請求項2)。燃料供給系の異常に含まれる故障モードに応じて燃圧の状態が変わるため、燃圧検出手段の検出結果を参照することによって故障モードを特定することができる。
前記故障モード特定手段は、前記燃圧検出手段の検出結果と、前記低圧燃料ポンプが前記高圧燃料ポンプへ燃料を送る際のフィード圧の標準値とが同等である場合に、前記高圧燃料ポンプの故障を前記故障モードとして特定してもよい(請求項3)。高圧燃料ポンプが故障して機能不全に陥っている場合はフィード圧の標準値と同等の燃圧しか得られない。従って、高圧燃料ポンプ下流の燃圧がフィード圧の標準値と同等であるか否かを検査することにより高圧燃料ポンプの故障を故障モードとして特定することができる。なお、標準値は正常運転時におけるフィード圧であり運転状態毎に予め設定されている。本態様における「同等」は完全同一だけを意味するものではなく、完全同一の他にこれらの相違が所定範囲内に収まっている場合をも含む。
前記故障モード特定手段は、前記内燃機関に対する燃料供給が中断される燃料カット運転の前後で前記燃圧検出手段が検出した燃圧が低下する場合に、前記内燃機関に至る燃料経路の燃料漏れを前記故障モードとして特定してもよい(請求項4)。燃料カット運転時には燃料経路に燃料が閉じ込められているので、燃料カット運転の前後で燃圧が低下することはない。その前後で燃圧が低下することは燃料経路に燃料漏れが生じていることを意味する。従って、燃料カット運転の前後における燃圧低下を監視することにより燃料漏れを故障モードとして特定することが可能になる。
前記故障モード特定手段は、前記高圧燃料ポンプが停止している場合において、前記燃圧検出手段が検出した燃圧が前記低圧燃料ポンプが前記高圧燃料ポンプへ燃料を送る際のフィード圧の標準値よりも高く、かつ前記内燃機関に対する燃料供給が中断される燃料カット運転の前後で前記燃圧検出手段が検出した燃圧が低下しない場合に、前記低圧燃料ポンプの故障を前記故障モードとして特定してもよい(請求項5)。燃料カット運転の前後で燃圧が低下しない場合は燃料経路に燃料が閉じ込められているので燃料漏れに該当しない。また、フィード圧の標準値よりも燃圧が高い場合は高圧燃料ポンプが機能していることが分かる。これらの状況下で供給電力が過剰になっているのは低圧燃料ポンプの故障により高圧燃料ポンプへの燃料供給の不足していることが予想される。従って、燃圧がフィード圧の標準値よりも高くかつ燃料カット運転の前後で燃圧が低下しないか否かを検査することにより低圧燃料ポンプの故障を故障モードとして特定できる。
低圧燃料ポンプが故障した状態で過剰な電力供給を続けると燃費悪化を招くし、また低圧燃料ポンプが燃料タンク内に設置される場合には低圧燃料ポンプの発熱に伴って燃料タンク内の燃料温度の上昇を招くおそれがある。そのため、前記故障モード特定手段が前記低圧燃料ポンプの故障を前記故障モードとして特定した場合に、前記低圧燃料ポンプに対する電力供給を停止させるフェールセーフ手段を更に備えてもよい(請求項6)。この場合には、低圧燃料ポンプが故障した状態で電力供給が継続することを回避できるため、上述した燃費悪化や燃料タンク内の燃料温度の上昇等の弊害を防止できる。
前記フェールセーフ手段は、前記低圧燃料ポンプに対する電力供給を停止させた状態で前記高圧燃料ポンプによる燃料供給が確保されるように、前記内燃機関の回転数及び機関温度をそれぞれ低下させ得る所定操作を行ってもよい(請求項7)。所定操作を行うことにより、高圧燃料ポンプの作動速度を低くし、かつ機関温度の上昇を抑えることができるため、高圧燃料ポンプ内におけるベーパーの発生を抑制できる。これにより、高圧燃料ポンプのみによる燃料供給を安定的に続行することが可能になる。このため、低圧燃料ポンプが故障した場合でも内燃機関の運転を中止せずに、一定の制限下で内燃機関の運転を確保可能である。所定操作は適宜設定してよい。例えば、内燃機関が自動変速機に連結された状態で車両に搭載される場合にあっては、自動変速機の変速比を高速側に変化させる操作を所定操作としてもよい。また、内燃機関に対する燃料噴射量(供給量)を一定値以下に制限する操作を所定操作としてもよい。更に、内燃機関に搭載された冷却装置の冷却力を高める操作、例えばラジエータファンを作動状態に維持することやサーモスタットの設定温度が可変の場合にその設定温度を低温側に変化させることを所定操作としてもよい。
以上説明したように、本発明の燃料供給装置によれば、高圧燃料ポンプ下流側の燃圧と目標値との偏差に応じて変化する制御量に基づいて低圧燃料ポンプへ供給する供給電力が算出されるため、内燃機関の運転中に燃料供給系に異常が生じ、実際の燃圧と目標値との間の偏差が大きくなって制御量が想定外に増大した場合にはそれに伴って低圧燃料ポンプへの供給電力も想定外に増加する。従って、低圧燃料ポンプへの供給電力が所定値を超えたことに基づいて内燃機関の運転中における燃料供給系の異常を判定できる。
本発明の一形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示した図。 図1に示した燃料供給装置の制御系の機能ブロック図。 図2の異常診断対策部が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
図1は本発明の一形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。内燃機関1は不図示の車両に走行用動力源として搭載される。内燃機関1は直列4気筒型で筒内直接噴射型の火花点火内燃機関として構成されている。燃料供給装置2は内燃機関1の気筒毎に設けられた燃料噴射弁3を備えていて、各燃料噴射弁3は先端部を気筒内に臨ませるようにして不図示のシリンダヘッドに取り付けられている。
各燃料噴射弁3による燃料供給を行うため、燃料供給装置2は燃料であるガソリンが貯留された燃料タンク5から燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプ6と、気筒内に供給する燃料の圧力(燃圧)を高圧化する高圧燃料ポンプ7と、高圧燃料ポンプ7から吐出された燃料を各燃料噴射弁3へ分配するデリバリパイプ8とを備えている。高圧燃料ポンプ7には低圧燃料ポンプ6の利用によって燃料が送られ、高圧燃料ポンプ7にて加圧された燃料はデリバリパイプ8を介して内燃機関1の気筒毎に分配される。
低圧燃料ポンプ6と高圧燃料ポンプ7とは低圧通路9によって結ばれており、その低圧通路9には燃料を濾過するフィルタ10と、ポンプ駆動に伴う燃料の脈動を減衰させるパルセーションダンパ11とがそれぞれ取り付けられている。低圧通路9には低圧燃料ポンプ6の下流から分岐する分岐通路12が接続されており、その分岐通路12には低圧通路9内の圧力が所定の上限値を超えることを防止するプレッシャーレギュレータ13が設けられている。高圧燃料ポンプ7とデリバリパイプ8とは高圧通路14にて結ばれている。
デリバリーパイプ8には余剰燃料を燃料タンク5に戻すリターン通路15が接続されている。リターン通路15にはリリーフバルブ16が取り付けられていて、そのリリーフバルブ16は燃圧が上限値を超えた場合にリターン通路15を開通させる。これにより、余剰燃料は燃料タンク5に戻される。リターン通路15は高圧燃料ポンプ7とも通じており、高圧燃料ポンプ7の余剰燃料もリターン通路15を介して燃料タンク5に戻される。
低圧燃料ポンプ6は燃料タンク5内に取り付けられている。低圧燃料ポンプ6は、その内部構造の図示を略したが、直流電動モータとそのモータにて駆動されるインペラーとを備えた周知の回転型電動式ポンプとして構成されている。
高圧燃料ポンプ7は内燃機関1のカムシャフト17から取り出した動力にて駆動される周知のプランジャ式ポンプとして構成されている。高圧燃料ポンプ7はポンプハウジング18に形成された吸入口18a及び吐出口18bを有しており、吸入口18aには低圧通路9が吐出口18bには高圧通路14がそれぞれ接続されている。ポンプハウジング18にはプランジャ20が往復自在に収容されるプランジャ室18cが形成されいて、このプランジャ室18cは吸入口18a及び吐出口18bのそれぞれと連通している。吸入口18aには電磁駆動式のスピル弁20が設けられており、吐出口18bには燃料の逆流を防止するチェックバルブ21が設けられている。高圧燃料ポンプ7には、カムシャフト17の回転をプランジャ20の往復運動に変換するプランジャ駆動装置23が設けられており、この駆動装置23はカムシャフト17に形成されたポンプ駆動カム24と、プランジャ20に連結されたカムフォロア25と、カムフォロア25をポンプ駆動カム24に押し付けるリターンスプリング26とを備えている。
高圧燃料ポンプ7は、内燃機関1の運転によりカムシャフト17が回転するとプランジャ20がプランジャ室18c内を往復運動する。プランジャ20の往復運動に合わせてスピル弁20の開閉動作が制御されることにより吐出量を調整することができる。スピル弁20はソレノイド27にて駆動される。ソレノイド27への通電が停止された場合に吸入口18aが開かれるように、スピル弁20には開弁スプリング28が取り付けられている。高圧燃料ポンプ7の圧縮行程中におけるスピル弁20の閉弁期間を増減させることにより、ポンプ下流の燃圧を変化させることができる。従って、図示のスピル弁20は本発明に係る調整手段に相当する。
低圧燃料ポンプ6及び高圧燃料ポンプ7のそれぞれの動作はエンジンコントロールユニット(ECU)30にて制御される。周知のように、ECU30は各種センサの出力情報を取得し、燃料噴射量や点火時期等の運転パラメータを演算し、各燃料噴射弁3や不図示の点火プラグ等の制御対象を動作させるコンピュータとして構成されている。図示を省略したが、ECU30には主演算装置として機能するマイクロプロセッサ及びその動作に必要な記憶装置等の周辺装置が内蔵されている。ECU30に接続される各種センサは多岐に亘るため本発明に関連するもののみを図示する。本発明に関連するセンサとしては、デリバリパイプ8内の圧力(燃圧)に応じた信号を出力する燃圧センサ31、内燃機関1の回転速度(機関回転数)に応じた信号を出力するクランク角センサ32及び内燃機関1内を循環する冷却水の温度(冷却水温)に応じた信号を出力する水温センサ33が設けられている。
図2は燃料供給装置2の制御系の機能ブロック図を示している。図示するように、ECU30は、高圧燃料ポンプ7を制御する高圧ポンプ制御部41と、低圧燃料ポンプ6を制御する低圧ポンプ制御部42と、これらの制御部41、42で使用される各種情報を読み書きできる記憶部43とを有している。
高圧ポンプ制御部41は燃圧センサ31から実際の燃圧Prを取得し、比較部45にて燃圧Prと目標値Ptとの偏差δを算出し、その偏差δを駆動デューティ算出部46に送る。燃圧の目標値Ptは目標値算出部47にて算出される。目標値算出部47は記憶部43に記憶されている現在の燃料噴射量Qを読み出して、その燃料噴射量Qに基づいて標準値Psを算出する。なお、燃料噴射量Qは機関回転数や負荷率等の各種物理量に基づいて別途演算される。駆動デューティ演算部46は偏差δに応じた制御量である駆動デューティDuを算出し、その駆動デューティDuを実行部48及び低圧ポンプ制御部42のそれぞれに送る。実行部48は駆動デューティDuでスピル弁20のソレノイド27に通電する。これにより、高圧燃料ポンプ7(のスピル弁20)は偏差δが低減する方向に制御されて、燃圧は運転状態に見合った目標値に落ち着く。
低圧ポンプ制御部42はクランク角センサ32から機関回転数Neを、水温センサ33から冷却水温Twをそれぞれ取得して供給電力算出部50にて低圧燃料ポンプ6に与える供給電力Wdを算出する。供給電力算出部50は、機関回転数Ne、冷却水温Tw及び記憶部43から読み出した燃料噴射量Qにて定義される運転状態と、駆動デューティー算出部46から受け取った駆動デューティDuとに基づいて供給電力Wdを算出する。この供給電力Wdは、高圧燃料ポンプ7による吐出不良を回避できるフィード圧を実現可能なできる限り小さな値として算出される。こうした供給電力Wdの算出は、記憶部43に記憶されている供給電力算出マップM1を読み出して、このマップM1を用いて行われる。
データ構造の図示を省略したが、供給電力算出マップM1は機関回転数Ne、冷却水温Tw、燃料噴射量Q及び駆動デューティDuをそれぞれ変数として供給電力Wdを与えるように構成されている。駆動デューティDuが大きいほど大きな供給電力Wdが与えられるようになっている。高圧燃料ポンプ7の吐出不良はその内部(プランジャ室18c)で燃料が沸騰してベーパーが発生することにより引き起こされる。こうした燃料の沸騰は高圧燃料ポンプ7内の圧力が燃料温度に対応した飽和蒸気圧未満になると発生するため、運転状態毎にベーパーの発生を防止し得るフィード圧の下限を、実機を利用して実験的に又は所定の演算モデルを利用したシュミュレーションにて調査し、そのフィード圧を実現する供給電力Wdを運転状態(機関回転数Ne、冷却水温Tw及び燃料噴射量Q)と駆動デューティDuとに関連づけて規定することによって、供給電力算出マップM1が作成されている。
供給電力算出部50は算出した供給電力Wdを実行部51と異常診断対策部52とに送る。実行部51は供給電力Wd相当の電力を低圧燃料ポンプ6(の直流モータ)に供給する。これにより、低圧燃料ポンプ6が駆動されて高圧燃料ポンプ7の吐出不良が生じないフィード圧を実現できる。
異常診断対策部52は燃料供給系の異常を診断しその対策を講ずるものであり、燃料供給系の異常を診断する診断部53と、その診断部53の診断結果に応じて内燃機関1の各部に対して所定操作を行うフェールセーフ部54とを備えている。診断部53は供給電力算出部50から受け取った供給電力Wdと、記憶部43に記憶されていて運転状態毎に設定された所定値Wthとを比較し、供給電力Wdが所定値Wthを超えている場合に燃料供給系に異常が生じたものと判定する。そして、診断部53は、異常に含まれる故障として予め想定された複数の故障モードのなかから一の故障モードを、燃圧センサ31が検出した燃圧Pr及びフィード圧の標準値Pth等を参照する後述の処理を実行することにより特定し、故障モード毎に対応付けられた故障信号Scをフェールセーフ部54に送る。フェールセーフ部54は診断部53から受け取った故障信号Scを参照し、故障モード毎に用意された所定操作を行うための制御信号Sg、Sfを、実行部51及び内燃機関1の各操作対象Xに送ることにより故障モード毎の対策を講ずるようにしている。本形態では、複数の故障モードとして、高圧燃料ポンプ7の故障、燃料漏れ及び低圧燃料ポンプ6の3つの故障モードが想定されており、これらの故障モード毎の対策が準備されている。
図3は、図2に示した異常診断対策部52が行う制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムは記憶部43に保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。
ステップS1では、供給電力算出部50が算出した供給電力Wdが所定値Wthを超えているか否かを判定する。所定値Wthは運転状態毎に設定された供給電力値であり、正常動作時の供給電力値に対応する。供給電力Wdがこの所定値Wthを超えている場合は駆動デューティDuが通常よりも大きい等を原因とした燃料供給系の異常の発生が予想される。そこで、こうした異常をもたらす故障モードを特定するため、ステップS1で供給電力Wdが所定値Wthを超えている場合はステップS2以降に処理を進める。そうでない場合はステップS1を再実行して、常に供給電力Wdを監視するようにする。
ステップS2では、燃圧センサ31が検出した高圧燃料ポンプ7下流の燃圧Prが、フィード圧の標準値Pthと同等であるか否かを判定する。この同等は、完全同一だけを意味するものではなく、完全同一の他にこれらの相違が所定範囲内に収まっている場合をも含む。標準値Pthは運転状態毎に設定された正常動作時のフィード圧に対応し、記憶部43に保持されている。燃圧Prがフィード圧と同等であれば高圧燃料ポンプ7が十分に機能していないことになる。そこで、燃圧Prが標準値Pthと同等である場合は高圧燃料ポンプ7の故障を故障モードとして特定し、ステップS3に進んで不図示のインジケータに高圧燃料ポンプ7の故障を意味する情報を表示させる。一方、燃圧Prが標準値Pthと同等でない場合、つまり燃圧Prが標準値Pthよりも高い場合は高圧燃料ポンプ7の故障以外の故障モードを特定するため、処理をステップS10に進める。
ステップS4では、内燃機関1に対する燃料供給、具体的には内燃機関1の気筒内への燃料噴射が中断されている燃料カット運転が実行されているか否かを判定する。燃料カット運転が実行されている場合はステップS5に進み、そうでない場合はステップS4を再実行する。
ステップS5では、燃料カット運転時の燃圧低下を正確に検査するため、低圧燃料ポンプ6を停止させる。続くステップS6で、燃料カット運転の前後で燃圧が低下したか否かを判定する。燃料カット運転時には燃料経路内に燃料が閉じ込められるため、燃料漏れがなければ燃圧は維持される。従って、燃圧が低下した場合には燃料経路の燃料漏れが予想される。そこで、ステップS6で燃圧が低下した場合には燃料漏れを故障モードとして特定し、ステップS7に進んで不図示のインジケータに燃料漏れを意味する情報を表示させる。そして、続くステップS8で、燃料漏れに伴う危険を回避するため、内燃機関1が停止するように燃料供給を停止させるとともに点火プラグの放電を中止させる。具体的には図2に示したように操作対象Xとしての燃料噴射弁3及び不図示の点火プラグのそれぞれに制御信号Sfを送る。一方、燃料カット運転の前後で燃圧低下が起こらない場合は、高圧燃料ポンプ7の故障表示を維持したまま、ステップS9に進み、低圧燃料ポンプ6の作動を再開させて今回のルーチンを終了する。
ステップS10では、燃料カット運転が実行されているか否かを判定し、燃料カット運転が実行されている場合はステップS11に進み、そうでない場合はステップS10を再実行する。ステップS11では、燃料カット時の燃圧低下を正確に検査するため、高圧燃料ポンプ7のスピル弁20への通電を停止して開弁状態に維持することにより高圧燃料ポンプ7の機能を停止させる。続くステップS12では、燃料カット運転の前後で燃圧が低下したか否かを判定する。燃料カット運転の前後で燃圧が低下した場合は燃料経路の燃料漏れが予想されるため、燃料漏れを故障モードとして特定する。そして、ステップS13に進んで不図示のインジケータに燃料漏れを意味する情報を表示させる。
ステップS13では、燃料漏れに伴う危険を回避するため、内燃機関1が停止するように燃料供給を停止させるとともに点火プラグの放電を中止させる。具体的には図2に示したように操作対象Xとしての燃料噴射弁3及び不図示の点火プラグのそれぞれに制御信号Sfを送る。一方、燃料カット運転の前後で燃圧低下が起こらない場合は、異常をもたらす故障モードとして低圧燃料ポンプ6の故障が推認される。そこで、ステップS12で否定的判定がされた場合は、低圧燃料ポンプ6の故障を故障モードとして特定する。そして、ステップS15に進んで、低圧燃料ポンプ6の故障を意味する情報をインジケータに表示させる。
ステップS16では、低圧燃料ポンプ6に対する過剰な電力供給の継続に伴う燃費悪化及び低圧燃料ポンプ6の発熱に伴う燃料タンク5内の燃料温度の上昇を回避するため、低圧燃料ポンプ6に対する電力供給を停止させる。具体的には図2に示すようにフェールセーフ部54が実行部51に対して制御信号Sgを送ることにより、低圧燃料ポンプ6への電力供給が停止される。
ステップS17では、通常の運転モードから内燃機関1の出力を制限する退避運転モードへ切り替える。低圧燃料ポンプ6が停止した状態でもプランジャ20の移動速度(内燃機関1の回転数)が低く、燃料温度(機関温度)が低い条件下においては高圧燃料ポンプ7の自給作用を利用して内燃機関1に対する燃料供給を継続できる。そこで、退避運転モードでは、高圧燃料ポンプ7の自給作用を確保する条件を整えるため機関回転数及び機関温度をそれぞれ低下させる所定操作を実行する。ステップS17の退避運転モードにおける所定操作としては、(1)内燃機関1に連結される不図示の自動変速機の変速比を高速側に変化させる操作、(2)機関回転数の高回転化を制限するため燃料噴射量(供給量)を一定以下に制限する操作、及び(3)機関温度としての冷却水温を低下させるため不図示のラジエータファンを作動状態に維持する操作が行われる。これにより、高圧燃料ポンプ7のみによる燃料供給を安定的に続行することが可能になるので、低圧燃料ポンプ6が故障した場合でも内燃機関1の運転を中止せずに、一定の制限下で内燃機関1の運転を確保することができる。
以上の形態において、燃圧センサ31が本発明に係る燃圧検出手段に、高圧ポンプ制御部41が本発明に係る高圧ポンプ制御手段に、低圧ポンプ制御部42が本発明に係る低圧ポンプ制御手段に、供給電力算出部50が本発明に係る供給電力算出手段に、それぞれ相当する。また、異常診断対策部52は図3の制御ルーチンを実行することにより本発明に係る異常判定手段、故障モード特定手段及びフェールセーフ手段としてそれぞれ機能する。そして、異常診断対策部52の診断部53が本発明に係る異常判定手段及び故障モード特定手段に相当し、フェールセーフ部54が本発明に係るフェールセーフ手段に相当する。
但し、本発明は上記形態に限定されるものではなく本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記形態では、機関温度として冷却水温Twを用いたが、機関温度としては潤滑油温を用いることもできる。内燃機関に搭載された冷却装置のサーモスタットが可変式の場合には、低圧燃料ポンプの故障を特定した場合に内燃機関に搭載された冷却装置の冷却力を高めるために、上述したラジエータファンを作動状態に維持することの代わりに又はこれとともにサーモスタットの設定温度を低温側に変化させることを所定操作としてもよい。
1 内燃機関
6 低圧燃料ポンプ
7 高圧燃料ポンプ
20 スピル弁(調整手段)
30 ECU
31 燃圧センサ(燃圧検出手段)
41 高圧ポンプ制御部(高圧ポンプ制御手段)
42 低圧ポンプ制御部(低圧ポンプ制御手段)
50 供給電力算出部(供給電力算出手段)
52 異常診断対策部(異常判定手段、故障モード特定手段、フェールセーフ手段)
53 診断部(異常判定手段、故障モード特定手段)
54 フェールセーフ部(フェールセーフ手段)
Du 駆動デューティ(制御量)

Claims (7)

  1. 内燃機関に供給する燃料の燃圧を調整可能な調整手段が設けられ、前記内燃機関にて駆動される高圧燃料ポンプに対して、電動式の低圧燃料ポンプを利用して燃料を送り、前記高圧燃料ポンプにて加圧された燃料を前記内燃機関に供給する内燃機関の燃料供給装置において、
    前記高圧燃料ポンプの下流側の燃圧を検出する燃圧検出手段と、前記燃圧検出手段が検出した燃圧と目標値との偏差が低減するように、前記偏差に応じた制御量を前記調整手段に与えることにより前記調整手段を制御する高圧ポンプ制御手段と、前記低圧燃料ポンプに対して与えるべき供給電力を前記高圧ポンプ制御手段が前記調整手段に与える前記制御量に基づいて算出する供給電力算出手段と、前記供給電力算出手段が算出した前記供給電力を前記低圧燃料ポンプへ供給することにより前記低圧燃料ポンプを制御する低圧ポンプ制御手段と、前記供給電力が前記内燃機関の運転状態毎に設定された所定値を超えた場合に前記内燃機関の燃料供給系に異常が生じたと判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
  2. 前記異常判定手段が前記燃料供給系の異常を判定した場合に、前記燃圧検出手段の検出結果に基づいて、前記異常に含まれる故障モードを特定する故障モード特定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
  3. 前記故障モード特定手段は、前記燃圧検出手段の検出結果と、前記低圧燃料ポンプが前記高圧燃料ポンプへ燃料を送る際のフィード圧の標準値とが同等である場合に、前記高圧燃料ポンプの故障を前記故障モードとして特定する請求項2に記載の燃料供給装置。
  4. 前記故障モード特定手段は、前記内燃機関に対する燃料供給が中断される燃料カット運転の前後で前記燃圧検出手段が検出した燃圧が低下する場合に、前記内燃機関に至る燃料経路の燃料漏れを前記故障モードとして特定する請求2又は3に記載の燃料供給装置。
  5. 前記故障モード特定手段は、前記高圧燃料ポンプが停止している場合において、前記燃圧検出手段が検出した燃圧が前記低圧燃料ポンプが前記高圧燃料ポンプへ燃料を送る際のフィード圧の標準値よりも高く、かつ前記内燃機関に対する燃料供給が中断される燃料カット運転の前後で前記燃圧検出手段が検出した燃圧が低下しない場合に、前記低圧燃料ポンプの故障を前記故障モードとして特定する請求項2〜4のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
  6. 前記故障モード特定手段が前記低圧燃料ポンプの故障を前記故障モードとして特定した場合に、前記低圧燃料ポンプに対する電力供給を停止させるフェールセーフ手段を更に備える請求項5に記載の燃料供給装置。
  7. 前記フェールセーフ手段は、前記低圧燃料ポンプに対する電力供給を停止させた状態で前記高圧燃料ポンプによる燃料供給が確保されるように、前記内燃機関の回転数及び機関温度をそれぞれ低下させ得る所定操作を行う請求項6に記載の燃料供給装置。
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