この発明に係る眼底撮影装置の実施形態の一例を説明する。以下、第1の実施形態において、この発明の中心的な技術思想を説明し、第2の実施形態において、この発明の応用例を説明する。
〈第1の実施形態〉
図1に示す眼底撮影装置500は、一般に眼底カメラと呼ばれる装置であり、被検眼Eの眼底Efを撮影するために用いられる。
[構成]
眼底撮影装置500は、通常の眼底カメラと同様の光学系510を備えている。光学系510は、眼底Efの撮影を行うための各種の光学部材を含んで構成される。なお、光学系の具体例については第2の実施形態で説明する。
光学系510の照明光学系511は、眼底Efに照明光を投射する。特に、照明光学系511には、観察光源512と撮影光源513が設けられている。観察光源512は、眼底Efを観察する際に点灯されて観察照明光LOを出力する。観察光源512は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察照明光LOは、たとえば定常光(連続光)である。照明光学系511は、観察照明光LOを被検眼Eに導いて眼底Efに投射する。観察光源512は、操作部550により所定の操作が為されたことに対応して点灯/消灯される。観察光源512の動作制御は制御部520が行う。
撮影光源513は、眼底Efを撮影する際に点灯されて撮影照明光LPを出力する。撮影光源513は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影照明光LPは、たとえばフラッシュ光である。照明光学系511は、撮影照明光LPを被検眼Eに導いて眼底Efに投射する。なお、撮影光源513は、操作部550により所定の操作が為されたことに対応してフラッシュ光を出力する。撮影光源513の動作制御は制御部520が行う。
撮影光学系514は、観察照明光LOの眼底反射光LO′を受光する光学系である。また、撮影光学系514は、撮影照明光LPの眼底反射光LP′を受光する光学系である。撮影光学系514は、眼底反射光LO′、LP′を受光する撮像装置515を備えている。撮像装置515は、光電変換を行う撮像素子を備えている。この撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Devices)や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などが用いられる。撮像装置515は、この発明の「撮影手段」の一例である。
撮像装置515は、観察照明光LOの眼底反射光LO′を受光して電気信号を生成し、この電気信号を制御部520に送る。制御部520は、この電気信号に基づく画像を表示部540に表示させる。ここで、観察照明光LOが定常光である場合、撮像装置515は所定のフレームレートで眼底反射光LO′を受光して電気信号を出力する。制御部520は、当該フレームレートで表示部540に表示させる画像を切り替える。それにより、表示部540には、眼底Efの動画像が表示される。検者は、この動画像を観察しつつ、被検眼Eに対する光学系510のアライメント、眼底Efに対するピント合わせ、眼底Efの状態の確認などを行う。
また、撮像装置515は、撮影照明光LPの眼底反射光LP′を受光して電気信号を生成し、この電気信号を制御部520に送る。制御部520は、この電気信号に基づく画像を表示部540に表示させる。この画像は、たとえば診断用に参照される。また、制御部520は、画像記憶部(図示せず)を有し、当該画像を記憶するようになっている。
制御部520は、上記のように、観察光源512及び撮影光源513の制御や、表示部540の制御を行う。更に、制御部520は、眼底撮影装置500の各部の制御を行う。制御部520は、この発明の「制御手段」の一例である。
光量決定部530は、観察照明光LOの光量に基づいて撮影照明光LPの光量を決定する。そのために、光量決定部530の記憶部531には、観察照明光の光量と撮影照明光の光量とを関連付ける光量情報が予め記憶されている。
この光量情報の一例を図2に示す。光量情報531aは、観察照明光の光量(観察光量)に対して好適な撮影照明光の光量(撮影光量)を関連付けている。この実施形態では、0(小光量)〜10(大光量)のレベルの範囲で観察光量を変更可能であるとする。観察光量のレベルの変更は、たとえば操作部550を用いて手動で行われる。なお、前回の撮影時に適用された観察光量を自動設定することもできるし、また、デフォルトの観察光量(たとえばレベル5)を自動設定することもできる。観察光量の自動設定は制御部520が行う。
撮影光量は、たとえばW・s(ワット秒)を単位として表される。この実施形態では、たとえば0〜350W・sの範囲で撮影光量を変更可能であるとする。撮影光量のレベルの変更は、制御部520が行う。なお、操作部550を用いるなどして手動で撮影光量を変更することも可能である。
光量情報531aは、たとえば、眼底の観察及び撮影を含む多数の臨床データに基づいて作成することができる。一例として、過去に実施された多数の眼底撮影における観察光量と撮影光量との関係を統計的に処理することにより、観察光量の様々な値に対応する撮影光量の値を求める。具体的には、或る観察光量値について、対応する複数の撮影光量の値の統計値(平均値、中央値、最頻値、標準偏差等)を算出し、この統計値に基づいて当該観察光量値に対応する撮影光量値を決定することができる。図2の光量情報531aについては、観察光量の各レベルに対応する統計値を算出することにより作成することができる。なお、光量情報531aの作成方法は、これに限定されるものではなく、たとえば眼球モデル等に基づいて理論的に作成することも可能である。
この発明の「光量」は、上記のような光量やレベルには限定されず、光の強度などであってもよい。また、「光量」は、照明光の光量自体である必要はなく、当該光量の照明光を出力するために必要な各種の制御量(たとえばコンデンサに蓄積して光源に供給する電荷量など)であってもよい。
光量決定部530は、観察光量の値の入力を受け、この観察光量値に関連付けられた撮影光量値を光量情報531aに基づいて取得することにより、当該観察光量に対応する撮影光量を決定する。光量決定部530は、この発明の「決定手段」の例である。
表示部540は、制御部520の制御を受けて各種情報を表示する。表示部540は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなど、任意の表示デバイスを含んで構成される。表示部540は、この発明の「表示手段」の例である。
操作部550は、眼底撮影装置500を操作するため、更には眼底撮影装置500に各種情報を入力するために用いられる。操作部550は、たとえば、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、コントロールパネルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んで構成される。操作部550は、この発明の「操作手段」の例である。
なお、図1では、表示部540と操作部550とが別々に記載されているが、表示機能と操作機能(入力機能)とを一体化したデバイスを適用することも可能である。このようなデバイスとしては、ペンタブレットやタッチパネルディスプレイなどがある。
[動作態様]
眼底撮影装置500の動作態様を説明する。図3に示すフローチャートは、眼底撮影装置500の動作態様の一例を表している。
まず、観察光源512を点灯させて、観察照明光LOを被検眼Eに投射する(S1)。当初の観察光量としては、たとえばデフォルトの光量や、当該被検眼Eの前回の撮影時の光量が適用される。
観察照明光LOは眼底Efにて反射される。撮像装置515は、観察照明光LOの眼底反射光LO′を受光して信号を出力する。制御部520は、この信号に基づく眼底Efの画像(観察画像)を表示部540に表示させる(S2)。
検者は、表示された眼底Efの観察画像を観察しつつ、操作部550を操作してアライメントやピント合わせを行う(S3)。
このとき、検者は、必要に応じ(観察画像が見にくい場合など)、操作部550を操作して観察光量を調整する(S4)。制御部520は、観察光量の調整操作がなされる度毎に、観察光源512を制御して観察光量を変更するとともに、この新たな観察光量の値を光量決定部530に送る。光量決定部530は、光量情報531aに基づいて、この観察光量に関連付けられた撮影光量を取得する(S5)。なお、観察光量が変更されない場合、光量決定部530は、当初の観察光量に関連付けられた撮影光量を取得する。
アライメント等が完了したら、検者は、操作部550を操作して、眼底Efの画像撮影を指示する(S6)。制御部520は、撮影光源513を制御し、ステップ5で取得された撮影光量の撮影照明光LP(フラッシュ光)を出力させる(S7)。
撮影照明光LPは眼底Efにて反射される。撮像装置515は、撮影照明光LPの眼底反射光LP′を受光して信号を出力する。制御部520は、この信号に基づく眼底Efの画像(撮影画像)を表示部540に表示させる(S8)。
検者は、表示された撮影画像を確認する(S9)。満足な撮影画像が得られた場合には(S9:Y)、検査を終了する。
一方、この撮影画像で満足できない場合、検者は、操作部550を操作して撮影光量を変更する(S10)。そして、検者は、操作部550を操作して、眼底Efの画像撮影を再度指示する(S6)。ステップ6〜ステップ10を満足な撮影画像が得られるまで繰り返し、検査は終了となる。以上で、眼底撮影装置500の動作態様の説明を終了する。
なお、上記の動作態様では、観察光量が変更される度毎に撮影光量を決定しているが、撮影光量を決定する処理を実行するタイミングはこれに限定されるものではない。たとえば、撮影の指示(ステップS6)がなされたことに対応して、この指示の直前の観察光量に応じた撮影光量を求め、この撮影光量の撮影照明光を出力して眼底Efを撮影するように構成することが可能である。なお、この場合には、撮影の指示から撮影照明光の出力までの時間差を小さくするために、処理性能の高いマイクロプロセッサを用いるなどの工夫を施すことが望ましい。
[作用・効果]
眼底撮影装置500の作用及び効果を説明する。
眼底撮影装置500の照明光学系511は、観察照明光LOと撮影照明光LPとを切り替えて眼底Efに投射し、撮影光学系514は、観察照明光LOの眼底反射光LO′や撮影照明光LPの眼底反射光LP′を受光して信号を出力する撮像装置515を有する。表示部540は、これらの信号に基づく眼底Efの画像を表示する。
光量決定部530は、眼底Efに投射された観察照明光LOの光量(観察光量)に基づいて撮影照明光LPの光量(撮影光量)を決定する。特に、光量決定部530は、記憶部531に予め記憶された光量情報531aを参照して撮影光量を決定する。
制御部520は、検者による撮影の指示を受けて、光量決定部530により決定された撮影光量の撮影照明光LPを眼底Efに投射させるように照明光学系511(撮影光源513)を制御する。
このように、眼底撮影装置500によれば、観察光量の設定値に応じた撮影光量を自動的に決定することができるので、眼底Efの撮影作業の容易化を図ることが可能である。
なお、自動的に決定された撮影光量が適当でなかった場合には、撮影光量を手動で調整することが可能である。この場合であっても、被検眼Eの状態が通常と大きく異なるようなケース(たとえば混濁が強い被検眼など)を除けば、撮影光量の調整量は一般に小さくて済む。したがって、試行錯誤して適切な撮影光量を探す必要のあった従来の装置と比較して、撮影光量の設定作業を容易に行うことができる。
〈第2の実施形態〉
この実施形態に係る眼科撮影装置の全体構成の一例を図4に示す。この眼科撮影装置は、眼底画像を撮影するための眼底カメラ1と、コンピュータ30とを含んで構成される。眼底カメラ1とコンピュータ30は、それぞれ異なる筐体を有している。眼底カメラ1は、この発明の「装置本体」の一例である。以下、眼底カメラ1及びコンピュータ30の構成をそれぞれ説明する。
[眼底カメラの構成]
眼底カメラ1の構成について、図4〜図8を参照しながら説明する。ここで、図5は眼底カメラ1の外観構成の一例を示している。また、図6〜図8は眼底カメラ1の光学系の構成の一例を示している。
眼底カメラ1は、図5に示すように、ベース2上に前後左右方向(水平方向)にスライド可能に搭載された架台3を備えている。架台3には、検者が各種操作を行うための操作パネル3aとジョイスティック4が設置されている。
オペレータ(検者)は、操作パネル3aを用いることにより、眼底カメラ1や眼科撮影装置に対して各種の動作を指示する。また、操作パネル3aは、装置の設定や情報入力に用いられる。
操作パネル3aの表示部14は、制御部11による制御にしたがって、各種の画面や情報を表示する。表示部14は、たとえばLCD等の表示デバイスによって構成される。操作部15には、たとえば、撮影画角(撮影倍率)の設定操作、観察光量や撮影光量の設定操作、被検者の選択操作などの各種操作を行うためのボタンやキー等が設けられている。また、操作パネル3aは、表示部14と操作部15とを一体的に構成したタッチパネルディスプレイ等のデバイスを備えていてもよい。
操作パネル3aは、特に、撮影条件を指定するために用いられる。なお、撮影条件とは、眼底を撮影する際に考慮される各種の条件を意味する。撮影条件の例としては、撮影に適用される光学フィルタ、撮影に使用される撮像装置、撮影種別、被検眼の状態などがある。光学フィルタ、撮像装置及び撮影種別については後述する。被検眼の状態としては、健常眼、白内障眼などの種別がある。また、被検眼の状態には、眼球の混濁位置や混濁度合いなど、被検眼の混濁状態を表す情報が含まれていてもよい。
撮影条件の指定は、たとえば、表示部14に表示された選択肢を操作部15を用いて指定することにより行う。また、撮影条件を指定するためのボタンやキーを操作部15に設けるようにしてもよい。
また、操作パネル3aは、撮影光量を手動で変更するためにも使用される。撮影光量の手動変更は、たとえば、専用のボタンやキーを用いて行う。また、撮影光量を変更するための画面を表示部14に表示させ、当該画面を参照しつつ操作部15を操作することにより撮影光量を指定できるように構成することも可能である。
このような操作パネル3aは、この発明の「指定手段」及び「操作手段」の一例として機能する。
また、検者は、ジョイスティック4を操作することによって、架台3をベース2上において3次元的に移動させることができる。ジョイスティック4の頂部には、眼底の撮影を指示するときなどに押下される操作ボタン4aが配設されている。
ベース2上には支柱5が立設されている。支柱5には、被検者の顎部を載置するための顎受け6aと、被検者の額が当接される額当て6bとが設けられている。また、支柱5には、被検眼Eを固視させるための光を発する外部固視灯7が設けられている。
架台3上には、眼底カメラ1の各種の光学系や制御系を格納する本体部8が搭載されている。なお、制御系は、ベース2や架台3の内部等に設けられていることもあるし、眼底カメラ1に接続されたコンピュータ30等の外部装置に設けられていることもある。
本体部8の側面には、眼底撮影に使用するフィルタを切り替えるためのフィルタ変更操作部3bが設けられている。フィルタ変更操作部3bは、たとえば、回転可能に形成されたノブによって構成される。フィルタ変更操作部3bを所望の位置まで回転させると、その回転位置に応じて後述のフィルタ部105、122に設けられた複数のフィルタのうちの所望の一つが光路上に配置される。また、フィルタ変更操作部3bを操作することにより、全てのフィルタを光路上から退避させることもできるし、フィルタ部105、122のいずれか一方における一つのフィルタを光路上に配置させつつ、他方における全てのフィルタを光路上から退避させることもできる。
フィルタ変更操作部3bが操作されると、その操作結果に応じた信号が制御部11に入力される。具体例としては、上記のようにフィルタ変更操作部3bがノブにより構成される場合、その回転位置を検出して制御部11に信号を入力するエンコーダをフィルタ変更操作部3bに設ける。なお、光学フィルタを変更するための構成は、このような電気的な構成に限定されるものではない。たとえば、歯車等を用いた機械的な機構によりフィルタを変更するように構成することが可能である。
本体部8の被検眼E側(図5の紙面左方向)には、被検眼Eに対峙して配置される対物レンズ部8aが設けられている。また、本体部8の検者側(図5の紙面右方向)には、被検眼Eの眼底を肉眼観察するための接眼レンズ部8bが設けられている。
更に、本体部8には、被検眼Eの眼底画像を撮影するための二つの撮像装置9、10が設けられている。撮像装置9、10は、それぞれ本体部8に対して着脱可能に形成されている。すなわち、様々な形態の撮像装置を適宜に本体部8に装着することができる。撮像装置9、10は、撮像装置自体の形態により特定されるものではなく、本体部8のどの部位に装着されているかによって特定される。
各撮像装置9、10は、CCDやCMOS等の撮像素子9a、10aを搭載したデジタルカメラであってもよいし、フィルム媒体に画像を形成する光学カメラであってもよい。図4や図6に示すように双方がデジタルカメラである場合、各撮像装置9、10は、その撮影画像のデータ(撮影信号)をそれぞれ接続線L1、L2を通じてコンピュータ30に送信する。コンピュータ30は、この撮影信号に基づいて撮影画像を表示したり、データベース化して保管するなどの処理を行う。撮像装置9、10は、この発明の「撮影手段」の一例として機能する。
撮像装置9、10は、たとえば異なる波長領域の光を受光する撮像素子9a、10aを具備していてもよい。たとえば、撮像装置9の撮像素子9aは可視領域の光を受光し、撮像装置10の撮像素子10aは可視領域及び赤外領域の光を受光するように構成することができる。
また、撮像装置9の撮像素子9aはカラー撮影に用いられるものとし、撮像装置10の撮像素子10aはモノクロ撮影に用いられるものとしてもよい。撮像装置9には、撮像素子9aの撮影感度(ISO感度)や撮影画素数などの撮影条件を変更する制御回路が設けられている。一方、撮像装置10には、撮像素子10aの撮影感度(ゲイン(Gain))や撮影画素数などの撮影条件を変更する制御回路が設けられている。
なお、この実施形態に係る眼底カメラ1には二台の撮像装置が設けられているが、一台又は三台以上の任意台数の撮像装置を設けた構成を適用することも可能である。
〔眼底カメラの光学系の構成〕
次に、眼底カメラ1の光学系の構成について図6を参照しながら説明する。眼底カメラ1の光学系は、照明光学系100と撮影光学系120とを有している。照明光学系100は、被検眼Eの眼底Efに照明光を投射するように作用する。撮影光学系120は、眼底Efに投射された照明光の反射光(眼底反射光)を接眼レンズ部8bや撮像装置9、10に導くように作用する。
(照明光学系)
照明光学系100は、観察光源101、コンデンサレンズ102、撮影光源103、コンデンサレンズ104、フィルタ部105、リング透光板107、ミラー108、LCD109、照明絞り110、リレーレンズ111、孔開きミラー112、対物レンズ113を含んで構成されている。
観察光源101は、眼底Efを肉眼や画像で観察するための観察照明光を出力する。観察照明光は、たとえば定常光(連続光)である。観察光源101は、たとえばハロゲンランプによって構成される。コンデンサレンズ102は、観察光源101から発せられた観察照明光を集光して平行光束にする。それにより、観察照明光は眼底Efをほぼ均等に照明するようになる。
撮影光源103は、眼底Efの撮影を行うときにフラッシュ発光される光源である。撮影光源103は、たとえばキセノンランプによって構成される。コンデンサレンズ104は、撮影光源103から発せられたフラッシュ光(撮影照明光)を集光して平行光束にする。それにより、撮影照明光を眼底Efをほぼ均等に照射するようになる。
フィルタ部105は、照明光学系100の光路上に選択的に配置される複数の光学フィルタを具備している。フィルタ部105は、たとえば図7に示すように、複数(7個)の光学フィルタ105a〜105gが円周方向に沿って配設された円板(ターレット)によって構成される。なお、符号105hは、円形状の孔部(若しくは透明板)を示す。光学フィルタ105a〜105h(記載簡略化のため、孔部105hも「光学フィルタ」と称することがある。)以外のフィルタ部105の領域は、光を透過させないようになっている。
フィルタ部105は、その中心位置に設けられた回転軸105Aを中心として回転可能に保持されている。回転軸105Aは、照明光学系100の光路上から外れた位置に設けられている。より具体的には、回転軸105Aは、自身を中心にフィルタ部105が回転したときに、光学フィルタ105a〜105hが択一的に光路上に挿入されるような位置に配設されている。
光学フィルタ105a〜105gについて説明する。光学フィルタ105a〜105gとしては、たとえば、カラー撮影用のフィルタ、FA(フルオレセイン蛍光造影撮影;可視蛍光撮影)用のエキサイタフィルタ、ICG(インドシアニングリーン蛍光造影撮影;赤外蛍光撮影)用のエキサイタフィルタ、自発蛍光撮影用のエキサイタフィルタ、レッドフリー撮影用のフィルタなどが用いられる。なお、これら以外にも、この眼科撮影装置による検査内容などに応じた任意の光学フィルタを用いることができる。
フィルタ部105は、前述したフィルタ変更操作部3bに対する操作に連動して回転し、光路上に配置される光学フィルタを切り替える。ここで、フィルタ変更操作部3bとフィルタ部105との連動の態様は任意である。たとえば、フィルタ変更操作部3bに対する回転動作を歯車などを介して伝達してフィルタ部105を回転させる機械的な機構により当該連動動作を実現することができる。また、フィルタ変更操作部3bの回転位置を検出するエンコーダと、このエンコーダからの出力信号に基づいてフィルタ部105を回転させるモータとを含む電気的構成により当該連動動作を実現することも可能である。
リング透光板107は、円環形状の透光領域からなるリング透光部107aを有する板状の光学部材である。リング透光板107は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置に、かつ、リング透光部107aの中心が照明光学系100の光軸に位置するようにして配設されている。ミラー108は、観察光源101や撮影光源103が発した照明光を撮影光学系120の光軸方向に反射させる。LCD109は、被検眼Eの固視を行うための固視標(内部固視標:図示せず)などを表示する。
照明絞り110は、照明光の一部を遮蔽する絞り部材である。照明絞り110は、照明光学系100の光軸方向に移動可能に構成されている。それにより、照明光が照射される眼底Ef上の範囲(照明領域)を調整することができる。このような照明絞り110を用いることにより、フレア防止などの効果が得られる。
孔開きミラー112は、照明光学系100の光軸と撮影光学系120の光軸とを合成する光学素子である。孔開きミラー112の中心領域には孔部112aが開口されている。照明光学系100の光軸と撮影光学系120の光軸は、孔部112aの略中心位置にて交差するようになっている。対物レンズ113は、本体部8の対物レンズ部8a内に設けられている。
このような構成を有する照明光学系100は、次のような態様で眼底Efを照明する。最初に、眼底観察を行う場合について説明する。まず、フィルタ変更操作部3bを操作して、観察方法に応じた光学フィルタ105a〜105hを光路上に配置させ、観察光源101から観察照明光を出力させる。観察照明光は、コンデンサレンズ102、104を介してリング透光板107を照射する。リング透光板107のリング透光部107aを通過した光は、ミラー108により反射され、LCD109、照明絞り110及びリレーレンズ111を経由して孔開きミラー112により反射される。孔開きミラー112により反射された観察照明光は、撮影光学系120の光軸方向に進行し、対物レンズ113により集束されて被検眼Eに入射して眼底Efを照明する。
このとき、リング透光板107が被検眼Eの瞳孔に共役な位置に配置されていることから、被検眼Eに入射する観察照明光のリング状の像が瞳孔上に形成される。観察照明光の眼底反射光は、この瞳孔上のリング状の像の中心暗部を通じて被検眼Eから出射する。このように、被検眼Eに入射する照明光と、その眼底反射光とを分離することにより、被検眼Eに入射する観察照明光が眼底反射光に与える影響を防止するようになっている。
次に、眼底Efを撮影する場合について説明する。まず、フィルタ変更操作部3bを操作して、撮影方法に応じた光学フィルタ105aを光路上に配置させ、操作ボタン4aを押下して撮影光源103から撮影照明光をフラッシュ発光させる。撮影照明光は、観察照明光と同様の経路を介して眼底Efに照射される。
(撮影光学系)
続いて、撮影光学系120について説明する。撮影光学系120は、対物レンズ113、孔開きミラー112(の孔部112a)、撮影絞り121、フィルタ部122、フォーカスレンズ124、変倍レンズ125、結像レンズ126、クイックリターンミラー127及び撮像装置9を含んで構成される。
照明光の眼底反射光は、前述のように、瞳孔上のリング状の像の中心暗部を通じて被検眼Eから出射する。被検眼Eから出射した眼底反射光は、孔開きミラー112の孔部112aを通じて撮影絞り121に入射する。孔開きミラー112は、照明光の角膜反射光を反射する。それにより、角膜反射光に起因するフレアの発生を防止するように作用する。
撮影絞り121は、大きさの異なる複数の円形の透光部が形成された板状の部材である。複数の透光部は、絞り値(F値)の異なる絞りを構成する。これら透光部は、図示しない駆動機構によって択一的に光路上に配置されるようになっている。
フィルタ部122は、撮影光学系120の光路上に選択的に配置される複数の光学フィルタを具備している。このフィルタ部122は、たとえば図8に示すように、複数(7個)の光学フィルタ122a〜122gが円周方向に沿って配設されたターレットによって構成される。なお、符号122hは、円形状の孔部(若しくは透明板)を示す。光学フィルタ122a〜122h(孔部122hを「光学フィルタ」と称することがある。)以外のフィルタ部122の領域は、光を透過させないようになっている。
フィルタ部122は、その中心位置に設けられた回転軸122Aを中心として回転可能に保持されている。回転軸122Aは、撮影光学系120の光路上から外れた位置に配設されている。より具体的には、回転軸122Aは、自身を中心にフィルタ部122が回転したときに、光学フィルタ122a〜122hが択一的に光路上に挿入されるような位置に配設されている。
光学フィルタ122a〜122gとしては、たとえば、カラー撮影用のフィルタ、FA用のバリアフィルタ、ICG用のバリアフィルタ、自発蛍光撮影用のバリアフィルタなどが用いられる。なお、これら以外にも、当該眼科撮影装置による検査内容などに応じた任意の光学フィルタを用いることができる。
フィルタ部122は、前述したフィルタ変更操作部3bに対する操作に連動して回転し、光路上に配置される光学フィルタを切り替えるように動作する。フィルタ変更操作部3bとフィルタ部122との連動の態様は、フィルタ部122の場合と同様に任意である。
この実施形態では、フィルタ変更操作部3bを操作したことに対応し、フィルタ部105、122の双方が連動して光学フィルタを変更するようになっているが、各フィルタ部105、122についてそれぞれフィルタ変更操作部を設ける構成を採用することも可能である。
また、後述のように、光学フィルタ105a〜105gと光学フィルタ122a〜122gとを、それぞれこの順序で組み合わせて使用する場合、一方の光学フィルタは円形状の孔部又は透明板であってもよい。たとえば、組み合わせて使用される光学フィルタ105e、122eのうちの一方を、透過光に影響を与えない孔部や透明板とすることができる。なお、一方を孔部や透明板にする代わりに、他方の光学フィルタと、孔部(透明板)105h又は孔部(透明板)122hとを組み合わせて使用するように制御することも可能である。たとえば、光学フィルタ122eを孔部等にする代わりに、光学フィルタ105eと光学フィルタ122hとを組み合わせるように制御を行うことができる。
フォーカスレンズ124は、後述するフォーカスレンズ駆動部17によって撮影光学系120の光軸方向に移動可能とされている。それにより、眼底観察時や眼底撮影時においてフォーカスを合わせることができる。また、変倍レンズ125は、後述する変倍レンズ駆動部16により光路上に挿脱されて画角(倍率)を変更するように作用する。また、結像レンズ126は、被検眼Eからの眼底反射光を撮像装置9の撮像素子9a上に結像させるように作用する。
クイックリターンミラー127は、図示しない駆動機構によって回動軸127a周りに回動可能に設けられている。撮像装置9で眼底を撮影する場合、光路上に斜設されているクイックリターンミラー127を上方に跳ね上げて、眼底反射光を撮像装置9に導くようになっている。一方、撮像装置10による眼底撮影時や、検者の肉眼による眼底観察時には、クイックリターンミラー127を光路上に斜設配置させた状態で、眼底反射光を上方に向けて反射するようになっている。
撮影光学系120には、更に、クイックリターンミラー127により反射された眼底反射光を案内するための、フィールドレンズ(視野レンズ)128、切換ミラー129、接眼レンズ130、リレーレンズ131、反射ミラー132、撮影レンズ133及び撮像装置10が設けられている。
切換ミラー129は、クイックリターンミラー127と同様に、回動軸129a周りに回動可能とされている。この切換ミラー129は、肉眼による眼底観察時には光路上に斜設された状態で眼底反射光を接眼レンズ130に向けて反射する。
また、撮像装置10を用いて眼底画像を撮影するときには、切換ミラー129を光路上から退避して、眼底反射光を撮像素子10aに向けて導く。この眼底反射光は、リレーレンズ131を経由して反射ミラー132により反射され、撮影レンズ133によって撮像素子10aに結像されることになる。
〔眼底カメラの制御系の構成〕
眼底カメラ1の制御系の構成について、図4を参照しながら説明する。眼底カメラ1には、前述した構成部分以外に、制御部11、記憶部12、通信部13及び変倍レンズ駆動部16が設けられている。以下、これら各部を中心とする制御系について説明する。
(制御部)
制御部11は、眼底カメラ1の各部の動作を制御する。具体的には、制御部11は、観察光源101及び撮影光源103の点灯/消灯の制御や照明光量の制御を行う。また、制御部11は、通信部13によるデータの送信・受信動作の制御や、変倍レンズ駆動部16及びフォーカスレンズ駆動部17の動作制御を行う。また、制御部11は、各撮像装置9、10の撮影感度や撮影画素数の制御を行う。また、制御部11は、操作パネル3aの制御、すなわち、表示部14による表示動作の制御や、操作部15に対する操作に応じた眼底カメラ1の動作制御を行う。また、制御部11は、情報を記憶部12に記憶させたり、記憶部12に記憶されている情報を読み出したりする。また、制御部11は、必要に応じて各種の演算処理を行う。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含んで構成されている。更に制御部11には、このマイクロプロセッサに上述の動作を実行させるコンピュータプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)やハードディスクドライブ等の記憶装置が設けられている。
(記憶部)
記憶部12は、眼底カメラ1による動作や処理に供される各種の情報を記憶する。記憶部12は、たとえばRAM(Random Access Memory)やROMやハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成される。
(通信部)
通信部13は、コンピュータ30との間の双方向のデータ通信を行う。通信部13としては、たとえばUSB(Universal Serial Bus)などの任意の規格に準拠した通信インターフェイスを用いることができる。図4においては、接続線Lを通じてUSB等に準拠したデータ通信を行うようになっている。なお、接続線L1、L2は、撮像装置9、10から出力される撮影信号をコンピュータ30に伝送するためのケーブルである。
(変倍レンズ駆動部)
変倍レンズ駆動部16は、撮影光学系120の光路上に変倍レンズ125を挿脱させる駆動機構である。変倍レンズ駆動部16は、たとえば、駆動力を発生するモータ等のアクチュエータと、発生された駆動力を変倍レンズ125に伝達する歯車等の伝達機構とを含んで構成される。また、ソレノイド等を用いて変倍レンズ駆動部16を構成することもできる。
(フォーカスレンズ駆動部)
フォーカスレンズ駆動部17は、撮影光学系120の光軸方向に沿ってフォーカスレンズ124を移動させる駆動機構である。フォーカスレンズ駆動部17は、たとえば、駆動力を発生するモータ等のアクチュエータと、発生された駆動力をフォーカスレンズ124に伝達する歯車等の伝達機構とを含んで構成される。
[コンピュータの構成]
コンピュータ30の構成について、図4及び図9を参照しながら説明する。図9は、コンピュータ30のハードウェア構成の一例を表している。
〔コンピュータのハードウェア構成〕
コンピュータ30は、マイクロプロセッサ41、主記憶装置42、外部記憶装置43、画像記憶装置44、表示デバイス45、操作デバイス46及び通信インターフェイス47を含んで構成される。これら各部41〜47は、バス(Bus)48を介して互いに接続されている。
マイクロプロセッサ41は、CPU等を含んで構成され、コンピュータ30に関する各種の演算処理や制御処理を実行する。主記憶装置42は、RAM等によって構成されている。外部記憶装置43は、マイクロプロセッサ41に後述の処理を実行させる各種のコンピュータプログラムやデータを記憶するハードディスクドライブやROM等によって構成されている。マイクロプロセッサ41は、外部記憶装置43に記憶されたコンピュータプログラムやデータを主記憶装置42に展開することにより後述の処理を実行する。
画像記憶装置44は、撮像装置9、10により撮影された画像の画像データが記憶される。また、画像記憶装置44には、各被検者の検査情報が記憶される。この検査情報は、撮影画像の画像データや、撮影時の設定状態を示す情報や、その他のカルテ情報などを含んでいる。これらの情報は、各被検者の識別情報(患者ID、患者氏名等の被検者識別情報)によって検索可能な状態で記憶されている。
画像記憶装置44は、ハードディスクドライブ等の大容量の記憶装置を含んで構成される。なお、図9に示す例では、外部記憶装置43と画像記憶装置44とをそれぞれ個別に設けているが、これらを単一のハードディスクドライブ等により構成してもよい。また、画像記憶装置44は、コンピュータ30に内蔵されている必要はなく、たとえば、コンピュータ30によりアクセス可能なサーバやNAS(Network Attached Storage)等により構成することもできる。
表示デバイス45は、マイクロプロセッサ41により制御されて、各種の画面や画像などを表示する。表示デバイス45は、たとえばLCDやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどの表示装置により構成される。
操作デバイス46は、コンピュータ30や眼底カメラ1を操作するための情報入力を行うための装置である。操作デバイス46は、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、コントロールパネルなどの任意の入力装置(操作装置)によって構成される。
なお、この実施形態においては、表示デバイス45と操作デバイス46とを別々に記載しているが、たとえばタッチパネル方式のLCDやペンタブレットのように、表示機能と操作機能とを一体化させた機器を適用することも可能である。
通信インターフェイス47は、接続線L、L1、L2を介してデータ通信を行うための装置である。通信インターフェイス47には、接続線Lを介するデータ通信用のUSB等の規格に準拠した通信インターフェイスが含まれている。更に、通信インターフェイス47は、接続線L1、L2を通じて撮像装置9、10からの撮影信号を受信するための通信インターフェイスを含んでいる。
なお、コンピュータ30側から撮像装置9、10を直接に制御する場合、通信インターフェイス47は、接続線L1、L2を介して制御信号を送信するための通信インターフェイスを具備する。
また、コンピュータ30は、医療機関内の情報システムに接続されている場合がある。その場合、通信インターフェイス47は、LANカード等のネットワークインターフェイス等を含んで構成される。また、モデム等の通信機器を設けて、インターネット等の広域通信を行えるようにしてもよい。
〔コンピュータの機能的構成〕
以上のようなハードウェア構成を有するコンピュータ30の機能的構成について、図4を参照しながら説明する。コンピュータ30には、データ処理部31、表示部35、操作部36、画像データ記憶部37及び通信部38が設けられている。
(表示部、操作部、画像データ記憶部、通信部)
まず、表示部35、操作部36、画像データ記憶部37及び通信部38について説明する。表示部35は、図9の表示デバイス45を含んで構成される。表示部35は、データ処理部31により制御されて、撮像装置9、10からの撮影信号に基づく眼底画像や、眼底カメラ1の設定に関する情報などの各種情報を表示する。表示部35は、この発明の「表示手段」の一例として機能する。
操作部36は、図9の操作デバイス46を含んで構成される。ユーザによる操作を受けると、操作部36は、その操作内容に応じた信号をデータ処理部31に入力する。データ処理部31は、この信号に基づいて、当該操作に対応する動作をコンピュータ30に実行させる。操作部36は、この発明の「指定手段」及び「操作手段」の一例である。
画像データ記憶部37は、眼底カメラ1により撮影された眼底画像等の各種画像の画像データを記憶する。画像データ記憶部37は、図9の画像記憶装置44を含んで構成される。
通信部38は、眼底カメラ1等の装置の間でデータ通信を行う。通信部38は、図9の通信インターフェイス47により構成される。通信部38は、眼底カメラ1の通信部13とともに、この発明の「通信手段」の一例として機能する。
(データ処理部)
データ処理部31は、各種のデータ処理を実行する。特に、データ処理部31は、眼底カメラ1による画像撮影及びその撮影画像に関する各種のデータ処理を行う。データ処理部31は、たとえば、マイクロプロセッサ41、主記憶装置42及び外部記憶装置43を含んで構成される。
データ処理部31には、記憶部32、制御部33及び光量決定部34が設けられている。制御部33は、コンピュータ30の各部の動作制御を行う。
記憶部32は、データ処理に供される各種の情報を記憶している。特に、記憶部32は、図10〜図14に示す情報を予め記憶している。ここで、図10〜図12に示す情報32a〜32cを「関連情報」と称する。
また、図13に示す情報32dを「光量テーブル」と称し、図14に示す情報32d′を「光量グラフ」と称する。光量テーブル32d及び光量グラフ32d′は、この発明の「光量情報」の一例である。なお、光量テーブル32dと光量グラフ32d′は、同じ内容の情報であるので、これらのうちの一方のみが記憶部32に記憶されていれば十分である。記憶部32は、この発明の「記憶手段」の一例として機能する。
図10に示す関連情報32aは、光学フィルタ105a〜105h、122a〜122hと、撮影種別と、プロシジャ(procedure)とを関連付ける情報である。ここで、撮影種別とは、撮影方法の種類を示すものであり、カラー撮影、FA撮影、ICG撮影、自発蛍光撮影、グリーン撮影、ブルー撮影などがある。また、プロシジャとは、当該撮影種別において適用される撮影手順(使用する撮像装置9、10やその設定状態等)の種別を意味している。
この実施形態では、2つのフィルタ部105、122の光学フィルタは、次のような組合せで使用されるものとする:(1)光学フィルタ105h、122h(孔部/透明板)は、カラー撮影時に使用される;(2)光学フィルタ105a、122aは、FA撮影時に使用される;(3)光学フィルタ105b、122bは、ICG撮影時に使用される;(4)光学フィルタ105c、122cは、自発蛍光撮影時に使用される;(5)光学フィルタ105d、122dは、グリーン撮影時に使用される;(6)光学フィルタ105e、122eは、ブルー撮影時に使用される。なお、この構成を適用する場合、光学フィルタ122d、122eとして孔部又は透明板が用いられる。また、図示は省略するが、光学フィルタ105f、122fや光学フィルタ105g、122gは、それぞれ、たとえばレッドフリー撮影などの他の撮影種別において使用される。
また、図10の関連情報32aにおける「フィルタ8」は光学フィルタ105h、122hの組合せを示し、「フィルタ1」は光学フィルタ105a、122aの組合せを示し、「フィルタ2」は光学フィルタ105b、122bの組合せを示し、「フィルタ3」は光学フィルタ105c、122cの組合せを示し、「フィルタ4」は光学フィルタ105d、122dの組合せを示し、「フィルタ5」は光学フィルタ105e、122eの組合せを示す(図示しない「フィルタ6」は光学フィルタ105f、122fの組合せを示し、「フィルタ7」は光学フィルタ105g、122gの組合せを示す)。
関連情報32aは、各光学フィルタ(の組合せ)について、撮影種別とプロシジャを次のように関連付けている:(1)フィルタ8に対して、撮影種別「カラー」とプロシジャ「カラー用」を関連付ける;(2)フィルタ1に対して、撮影種別「FA」とプロシジャ「B/W用−1」を関連付ける;(3)フィルタ2に対して、撮影種別「ICG」とプロシジャ「B/W用−2」を関連付ける;(4)フィルタ3に対して、撮影種別「自発蛍光」とプロシジャ「B/W用−2」を関連付ける;(5)フィルタ4に対して、撮影種別「グリーン」とプロシジャ「B/W用−1」を関連付ける;(6)フィルタ5に対して、撮影種別「ブルー」とプロシジャ「B/W用−1」を関連付ける(以降省略)。
ここで、「B/W」とは、「Black/White」すなわちモノクロ撮影を意味している。また、「B/W用−1」、「B/W用−2」は、それぞれ、モノクロ撮影おける第1のプロシジャ、第2のプロシジャを意味している。
次に、図11に示す関連情報32bについて説明する。この関連情報32bは、プロシジャと、撮像装置9、10のいずれか一方と、撮影時における撮像装置の設定とを関連付けるものである。換言すると、関連情報32bは、各プロシジャの名称に対して、その内容を関連付けている。
より具体的に説明すると、関連情報32bは、次のような関連付けを定義している:(1)プロシジャ「カラー用」に対して、撮像装置「撮像装置−A」と設定「#1」を関連付ける;(2)プロシジャ「B/W用−1」に対して、撮像装置「撮像装置−B」と設定「#1」を関連付ける;(3)プロシジャ「B/W用−2」に対して、撮像装置「撮像装置−B」と設定「#2」を関連付ける(以降省略)。
ここで、「撮像装置−A」は撮像装置9を示し、「撮像装置−B」は撮像装置10を示している。これらの情報「撮像装置−A」、「撮像装置−B」は、それぞれ撮像装置9、10の識別情報として予め定義されているものとする。また、設定「#1」、「#2」は、それぞれ、当該撮像装置における第1の設定、第2の設定をそれぞれ示している。
次に、図12に示す関連情報32cについて説明する。この関連情報32cは、撮像装置及びその設定に対し、当該設定の内容を関連付けるものである。この設定内容には、たとえば撮像素子9a、10aの撮影感度や撮影画素数、更には光量情報などが含まれている。
関連情報32cは、次のような関連付けを定義している:(1)設定「撮像装置−A、#1」に対して、撮影感度「ISO200」と、撮影画素数「2000x1500」と、光量情報「#3」とを関連付ける;(2)設定「撮像装置−B、#1」に対して、撮影感度「Gain 6」と、撮影画素数「1600x1200」と、光量情報「#2」とを関連付ける;(3)設定「撮像装置−B、#2」に対して、撮影感度「Gain 12」と、撮影画素数「1600x1200」と、光量情報「#1」とを関連付ける(以降省略)。なお、識別情報「#1」〜「#3」は、以下の光量テーブル32dにより定義される複数の光量情報を識別するための情報である。
次に、図13に示す光量テーブル32dについて説明する。光量テーブル32dには、観察光量と撮影光量とを関連付ける三系列の光量情報#1〜#3が記録されている。各光量情報#1〜#3は、観察光量の各レベル0〜10に対して撮影光量を関連付けている。
光量テーブル32dから容易に分かるように、光量情報#1は高感度の撮影条件下において用いられ、光量情報#3は低感度の撮影条件下において用いられる。すなわち、或る観察光量(たとえばレベル7)について、光量情報#1、#2、#3の順に撮影光量が大きくなっていくので、撮影光量の小さな光量情報#1は高感度の撮影条件下で用いられ、撮影光量の大きな光量情報#3は低感度の撮影条件下で用いられることが分かる。
図14に示す光量グラフ32d′は、図13の光量テーブル32dをグラフで表現したものである。光量グラフ32d′には、グラフT1〜T3が定義されている。グラフT1、T2、T3は、それぞれ、光量テーブル32dの光量情報#1、#2、#3に対応している。
光量テーブル32dや光量グラフ32d′は、たとえば、第1の実施形態の光量情報531aと同様に、眼底の観察及び撮影を含む多数の臨床データに基づいて作成することもできるし、眼球モデル等に基づいて理論的に作成することもできる。
光量決定部34は、観察光量の値の入力を受け、この観察光量値に関連付けられた撮影光量値を記憶部32に記憶された情報に基づいて取得することにより、当該観察光量に対応する撮影光量を決定する。光量決定部34及び記憶部32は、この発明の「決定手段」の一例である。
[動作態様]
以上のような構成を有する眼科撮影装置の動作態様を説明する。図15〜図17に示すフローチャートは、この眼科撮影装置の動作態様の一例を表している。これらのフローチャートに示す動作態様は、光学フィルタの選択に応じて撮影光量を決定して眼底撮影を行うときに適用される。
まず、ユーザが、眼底カメラ1のフィルタ変更操作部3bを操作して、光学フィルタ105a〜105h、122a〜122hの(前述の組合せの)選択を行う(S21)。フィルタ部105、122は、選択された光学フィルタをそれぞれの光路上に配置させる(S22)。
また、フィルタ変更操作部3bは、ステップS21の操作結果に応じた信号を制御部11に入力する。制御部11は、この信号に基づいて、当該操作結果、すなわち光学フィルタの選択結果を示す信号(操作信号)を生成する。そして、通信部13を制御し、この操作信号を接続線Lを介してコンピュータ30に送信する(S23)。
眼底カメラ1から送信された操作信号は、コンピュータ30の通信部38により受信されてデータ処理部31に入力される。制御部33は、当該操作信号を光量決定部34に送るとともに、関連情報32a〜33cと光量テーブル32d(又は光量グラフ32d′)を記憶部32から読み出して光量決定部34に送る。
光量決定部34は、関連情報32aを参照し、当該操作信号に示す光学フィルタの選択結果に関連付けられた撮影種別とプロシジャを選択する(S24)。制御部33は、選択された撮影種別を示す情報(撮影種別情報)として、当該撮影種別の名称(略称)を表示部35に表示させる(S25)。
次に、光量決定部34は、関連情報32bを参照し、ステップS24で選択されたプロシジャに対応する撮像装置とその設定とを選択する(S26)。更に、光量決定部34は、関連情報32cを参照し、ステップS26での選択結果に対応する撮影感度と撮影画素数と光量情報とを選択する(S27)。
制御部33は、通信部38を制御して、ステップS26にて選択された撮像装置の識別情報と、ステップS27にて選択された撮影感度と撮影画素数の情報を、接続線Lを介して眼底カメラ1に送信する(S28)。
眼底カメラ1の通信部13は、撮像装置の識別情報、撮影感度の情報及び撮影画素数の情報を受信して制御部11に入力する。制御部11は、この識別情報により特定される撮像装置9又は撮像装置10を制御して、撮像素子9a又は撮像素子10aの撮影感度と撮影画素数をそれぞれ設定する(S29)。
撮像装置9又は撮像装置10の設定が終了すると、制御部11は、撮影可能な状態になったことを示す情報を呈示させる(S30)。このとき、たとえば、その旨を示すメッセージを表示部14に表示させることができる。また、眼底カメラ1の所定部位(たとえば操作ボタン4a)にLED(Light Emitting Diode)等の報知用光源を設け、この報知用光源を点灯させてもよい。また、設定が終了したことを示す信号をコンピュータ30に送信し、コンピュータ30の表示部35に同様の情報を呈示させることも可能である。
次に、コンピュータ30の制御部33は、観察光量と撮影光量との連係制御を行うか判断する(S31)。この判断は、たとえば次のようにして行われる。ステップS31より前の任意の段階に、検者が操作部15、36等を操作して連係制御を行うか否かを選択するようにし、制御部33は、この選択結果に応じて連動制御の実施の有無を判断する。
〔連係制御を行わない場合〕
連係制御を行わないと判断された場合(S31:N)、検者は、操作部15により観察光源101を点灯させて、観察照明光を被検眼Eに投射する(S32)。当初の観察光量としては、たとえばデフォルトの光量や前回の撮影時の光量が適用される。
観察照明光は眼底Efにて反射される。ステップS26で選択された撮像装置は、観察照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する。制御部11は、この信号に基づく眼底Efの観察画像を表示部14に表示させる(S33)。なお、眼底Efの観察画像を取得する代わりに、接眼レンズ130を介して肉眼で眼底Efを観察するようにしてもよい。
検者は、眼底Efを観察しつつ、操作部15を操作してアライメントやピント合わせを行う(S34)。このとき、検者は、必要に応じ(観察画像が見にくい場合など)、操作部15を操作して観察光量を調整する(S35)。
アライメント等が完了したら、検者は、操作部15を操作することにより、必要に応じて撮影光量を調整した後に、眼底Efの画像撮影を指示する(S36)。制御部11は、撮影光源103を制御して撮影照明光(フラッシュ光)を出力させる(S37)。
撮影照明光は眼底Efにて反射される。ステップS26で選択された撮像装置は、撮影照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する。制御部11は、通信部13を制御して、撮像装置が出力した信号(眼底Efの撮影画像の画像データ)をコンピュータ30に送信する(S38)。
コンピュータ30の制御部33は、通信部38が受信した画像データを画像データ記憶部37に記憶させる(S39)。また、制御部33は、この画像データに基づく眼底Efの撮影画像を表示部35に表示させる(S40)。検者は、表示された撮影画像を確認する(S41)。満足な撮影画像が得られた場合には(S41:Y)、検査を終了する。
一方、この撮影画像で満足できない場合、検者は、眼底カメラ1の操作部15を操作して撮影光量を変更する(S42)。そして、検者は、操作部15を操作して、眼底Efの画像撮影を再度指示する(S36)。ステップ36〜ステップ42を満足な撮影画像が得られるまで繰り返し、検査は終了となる。以上で、観察光量と撮影光量の連係制御を行わない場合の処理は終了となる。
〔連係制御を行う場合〕
連係制御を行うと判断された場合(S31:Y)、検者は、操作部15により観察光源512を点灯させて、観察照明光を被検眼Eに投射する(S51)。当初の観察光量としては、たとえばデフォルトの光量や、当該被検眼Eの前回の撮影時の光量が適用される。
観察照明光は眼底Efにて反射される。ステップS26で選択された撮像装置は、観察照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する。制御部11は、この信号に基づく眼底Efの観察画像を表示部14に表示させる(S52)。なお、眼底Efの観察画像を取得する代わりに、接眼レンズ130を介して肉眼で眼底Efを観察してもよい。
検者は、眼底Efを観察しつつ、操作部15を操作してアライメントやピント合わせを行う(S53)。
このとき、検者は、必要に応じ(観察画像が見にくい場合など)、操作部15を操作して観察光量を調整する(S54)。制御部11は、観察光量の調整操作がなされる度毎に、観察光源512を制御して観察光量を変更するとともに、通信部13を制御して、新たな観察光量のレベルを表す情報をコンピュータ30に送る(S55)。
コンピュータ30の光量決定部34は、光量テーブル32d(又は光量グラフ32d′)に基づいて、新たな観察光量のレベルに関連付けられた撮影光量を取得する(S56)。なお、観察光量が変更されない場合、光量決定部34は、当初の観察光量に関連付けられた撮影光量を取得する。
制御部33は、通信部38を制御し、ステップ56で取得された撮影光量の情報を眼底カメラ1に送信する(S57)。眼底カメラ1の制御部11は、この撮影光量の情報に基づいて撮影光源103を制御して撮影光量を設定する(S58)。
アライメント等が完了したら、検者は、操作部15を操作して、眼底Efの画像撮影を指示する(S59)。制御部11は、撮影光源103を制御し、ステップ58で設定された撮影光量の撮影照明光(フラッシュ光)を出力させる(S60)。
撮影照明光は眼底Efにて反射される。ステップS26で選択された撮像装置は、撮影照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する。制御部11は、通信部13を制御して、撮像装置が出力した信号(眼底Efの撮影画像の画像データ)をコンピュータ30に送信する(S61)。
コンピュータ30の制御部33は、通信部38が受信した画像データを画像データ記憶部37に記憶させる(S62)。また、制御部33は、この画像データに基づく眼底Efの撮影画像を表示部35に表示させる(S63)。検者は、表示された撮影画像を確認する(S64)。満足な撮影画像が得られた場合には(S64:Y)、検査を終了する。
一方、この撮影画像で満足できない場合、検者は、眼底カメラ1の操作部15を操作して撮影光量を変更する(S65)。そして、検者は、操作部15を操作して、眼底Efの画像撮影を再度指示する(S59)。ステップ59〜ステップ65を満足な撮影画像が得られるまで繰り返し、検査は終了となる。以上で、観察光量と撮影光量の連係制御を行う場合の処理は終了となる。
なお、上記の動作態様では、観察光量が変更される度毎に撮影光量を決定しているが、撮影光量を決定する処理を実行するタイミングはこれに限定されるものではない。たとえば、撮影の指示(ステップS59)がなされたことに対応して、この指示の直前の観察光量に応じた撮影光量を求め、この撮影光量の撮影照明光を出力して眼底Efを撮影するように構成することが可能である。なお、この場合には、撮影の指示から撮影照明光の出力までの時間差を小さくするために、処理性能の高いマイクロプロセッサ41を用いるなどの工夫を施すことが望ましい。
[作用・効果]
この実施形態に係る眼底撮影装置の作用及び効果を説明する。
この眼底撮影装置の照明光学系100は、観察照明光と撮影照明光とを切り替えて眼底Efに投射し、撮影光学系120は、観察照明光の眼底反射光や撮影照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する撮像装置9、10を有する。撮像装置9、10は、切り替えて使用される。表示部14や表示部35は、これらの信号に基づく眼底Efの画像を表示する。
光量決定部34は、眼底Efに投射された観察照明光の光量(観察光量)に基づいて撮影照明光の光量(撮影光量)を決定する。特に、光量決定部34は、記憶部32に予め記憶された光量テーブル32dや光量グラフ32d′(光量情報)を参照して撮影光量を決定する。
制御部33は、検者による撮影の指示を受けて、光量決定部34により決定された撮影光量の撮影照明光を眼底Efに投射させるように照明光学系100(撮影光源103)を制御する。
このような眼底撮影装置によれば、観察光量の設定値に応じた撮影光量を自動的に決定することができるので、眼底Efの撮影作業の容易化を図ることが可能である。
なお、自動的に決定された撮影光量が適当でなかった場合には、撮影光量を手動で調整することが可能である。この場合であっても、被検眼Eの状態が通常と大きく異なるようなケース(たとえば混濁が強い被検眼など)を除けば、撮影光量の調整量は一般に小さくて済む。したがって、試行錯誤して適切な撮影光量を探す必要のあった従来の装置と比較して、撮影光量の設定作業を容易に行うことができる。
また、この眼底撮影装置は、次のような作用及び効果を奏する。照明光学系100には、その光路上に挿入可能な複数の光学フィルタ105a〜105hが設けられている。光学フィルタ105a〜105hは、照明光学系100の光路上に択一的に配置される。また、撮影光学系120には、その光路上に挿入可能な複数の光学フィルタ122a〜122hが設けられている。光学フィルタ122a〜122hは、撮影光学系120の光路上に択一的に配置される。
更に、記憶部32には、関連情報32a〜32c及び光学情報32d、32d′が予め記憶されている。撮影に使用される光学フィルタが指定されると、光量決定部34は、まず、指定された光学フィルタに応じた撮影種別及びプロシジャを特定し(関連情報32a)、このプロシジャに応じた撮像装置及び設定を特定し(関連情報32b)、この設定に応じた撮影感度、撮影画素数及び光量情報を特定する(関連情報32c)。更に、光量決定部34は、特定された光量情報に基づいて、適宜に設定される観察光量に応じた撮影光量を決定する。
眼底カメラ1は、指定された光学フィルタを光路上に配置させ、特定された撮像装置の撮影感度や撮影画素数の設定を行い、決定された撮影光量の撮影照明光を撮影光源103に出力させることにより、眼底Efの撮影を行う。
このような眼底撮影装置によれば、指定された光学フィルタに応じた光量情報を自動的に選択し、この光量情報を参照して観察光量に応じた撮影光量を決定することができるので、撮影に使用する光学フィルタに応じた撮影光量を容易に設定できるという利点がある。
また、この眼底撮影装置は、装置本体としての眼底カメラ1と、コンピュータ30とが個別の筐体を有している。眼底カメラ1側で観察光量が設定されると、この観察光量の設定値がコンピュータ30に送信される。コンピュータ30は、この観察光量に応じた撮影光量を決定し、この撮影光量の値を眼底カメラ1に送信する。眼底カメラ1は、この撮影光量の撮影照明光を使用して眼底Efの撮影を行う。
このような眼底撮影装置によれば、眼底カメラ1(装置本体)とコンピュータ30とがそれぞれ個別の筐体として構成されている場合であっても、観察光量に応じた撮影光量を容易に設定することが可能である。
特に、眼底カメラ1側を操作している状態においてコンピュータ30が撮影光量を自動的に決定するようになっている。よって、検者は眼底カメラ1を操作するだけでよいので、コンピュータ30側に眼を移すことなく検査に集中できるというメリットもある。
また、この眼底撮影装置によれば、撮影光量を自動的に決定する処理を実行するか否かを選択することができる。被検眼の状態などを勘案して撮影光量の自動決定を実行させるか判断できるので、装置の利便性の向上を図ることができる。
[変形例]
上記の眼底撮影装置は、指定された光学フィルタに応じた光量情報を選択的に使用して撮影光量を決定するように構成されているが、この発明に係る眼底撮影装置はこれに限定されるものではない。
たとえば、複数の撮影条件のうちから任意の撮影条件を指定可能に構成されている場合において、指定された撮影条件に応じた光学情報を選択的に使用して撮影光量を決定するように構成するように構成することが可能である。
その一例として、複数の撮影条件を選択的に指定する指定手段と、複数の撮影条件のそれぞれに対応する光量情報を予め記憶する記憶手段と、指定手段により指定された撮影条件に対応する光量情報を選択的に使用して撮影照明光の光量を取得する決定手段とを備える眼底撮影装置を適用することができる。
このような眼底撮影装置によれば、指定された撮影条件に応じた光量情報を自動的に選択し、この光量情報を参照して観察光量に応じた撮影光量を決定することができるので、撮影条件に応じた撮影光量を容易に設定できるという利点がある。以下、このような眼底撮影装置の例を説明する。
第1の例として、複数の撮像装置を備える眼底撮影装置に適用可能な構成を説明する。この眼底撮影装置は、観察照明光と撮影照明光とを切り替えて眼底に投射する照明光学系と、これら照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する複数の撮像装置を含む撮影光学系とを備える。この照明光学系は、たとえば上記照明光学系100と同様に構成される。また、この撮影光学系は、たとえば上記撮影光学系120と同様に構成される。なお、撮影光学系120には二つの撮像装置9、10が設けられているが、撮影光学系に搭載される撮像装置の個数は三つ以上であってもよい。
また、この眼底撮影装置は、複数の撮像装置のそれぞれに対応する光量情報を予め記憶する記憶手段を有する。この記憶手段は、たとえばハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成される。この記憶手段には、複数の撮像装置のそれぞれに対応付けられた光量情報が記憶されている。すなわち、撮像装置の個数をN(≧2)とすると、記憶手段には、第iの撮像装置に対応する第iの光量情報が記憶されている(i=1、2、・・・、N)。なお、全ての光量情報が重複する場合を除いて、第iの光量情報と第jの光量情報とが重複していてもよい(i≠j)。
また、この眼底撮影装置は、複数の撮像装置を選択的に指定する指定手段を有する。この指定手段は、たとえば上記の操作部15のような操作デバイスにより構成される。
更に、この眼底撮影装置は、指定手段により指定された撮像装置に対応する光量情報に基づいて観察光量に応じた撮影光量を決定する決定手段と、この撮影光量の撮影照明光を投射させるとともに、指定された撮像装置に撮影照明光の眼底反射光を受光させる制御手段を備える。
たとえば、第iの撮像装置が指定されたときに、決定手段は、第iの撮像装置に対応付けられた第iの光量情報を選択し、この第iの光量情報に基づいて観察光量に応じた撮影光量を決定する。制御手段は、照明光学系を制御して、この撮影光量の撮影照明光を出力させる。更に、制御手段は、撮影光学系を制御して、第iの撮像装置に撮影照明光の眼底反射光を受光させる(すなわち、第iの撮像装置を用いて眼底撮影を行わせる)。
このような眼底撮影装置によれば、複数の撮像装置を選択的に使用可能な構成において、使用される撮像装置に応じた光量情報を自動的に選択し、この光量情報を参照して観察光量に応じた撮影光量を決定して撮影を行うことができるので、撮像装置に応じた撮影光量を容易に設定することが可能である。
第2の例として、複数の撮影種別を選択的に実施可能な眼底撮影装置に適用できる構成を説明する。ここで、撮影種別とは、前述のように撮影方法の種類を示すものであり、カラー撮影、FA撮影、ICG撮影、自発蛍光撮影、グリーン撮影、ブルー撮影などがある。
この眼底撮影装置は、観察照明光と撮影照明光とを切り替えて眼底に投射する照明光学系と、これら照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する撮影手段を含む撮影光学系とを備える。
また、この眼底撮影装置は、複数の撮影種別のそれぞれに対応する光量情報を予め記憶する記憶手段を有する。この記憶手段には、複数の撮影種別のそれぞれに対応付けられた光量情報が記憶されている。すなわち、撮影種別の個数をN(≧2)とすると、記憶手段には、第iの撮影種別に対応する第iの光量情報が記憶されている(i=1、2、・・・、N)。なお、全ての光量情報が重複する場合を除いて、第iの光量情報と第jの光量情報とが重複していてもよい(i≠j)。
また、この眼底撮影装置は、複数の撮影種別を選択的に指定する指定手段を有する。
更に、この眼底撮影装置は、指定手段により指定された撮影種別に対応する光量情報に基づいて観察光量に応じた撮影光量を決定する決定手段と、この撮影光量の撮影照明光を投射させるように照明光学系を制御するとともに、指定された撮影種別を実施させるように照明光学系や撮影光学系を制御する制御手段を備える。この光学系の制御としては、たとえば、光学フィルタを光路上に配置させる動作の制御、使用する撮像装置の選択する動作の制御、撮像装置の撮影感度や撮影画素数を設定する動作の制御などがある。
このような眼底撮影装置によれば、複数の撮影種別を選択的に使用可能な構成において、適用される撮影種別に応じた光量情報を自動的に選択し、この光量情報を参照して観察光量に応じた撮影光量を決定して撮影を行うことができるので、撮影種別に応じた撮影光量を容易に設定することが可能である。
第3の例として、被検眼の状態に応じて撮影態様を変更するように構成された眼底撮影装置がある。ここで、被検眼の状態としては、瞳孔径、混濁の有無、混濁の度合いや位置、眼底による光の反射率などがある。
この眼底撮影装置は、観察照明光と撮影照明光とを切り替えて眼底に投射する照明光学系と、これら照明光の眼底反射光を受光して信号を出力する撮影手段を含む撮影光学系とを備える。
また、この眼底撮影装置は、眼底の複数の状態のそれぞれに対応する光量情報を予め記憶する記憶手段を有する。この記憶手段には、眼底の複数の状態のそれぞれに対応付けられた光量情報が記憶されている。すなわち、眼底の状態の数をN(≧2)とすると、記憶手段には、第iの状態に対応する第iの光量情報が記憶されている(i=1、2、・・・、N)。なお、全ての光量情報が重複する場合を除いて、第iの光量情報と第jの光量情報とが重複していてもよい(i≠j)。
また、この眼底撮影装置は、眼底の複数の状態を選択的に指定する指定手段を有する。
更に、この眼底撮影装置は、指定手段により指定された眼底の状態に対応する光量情報に基づいて観察光量に応じた撮影光量を決定する決定手段と、この撮影光量の撮影照明光を投射させるように照明光学系を制御する制御手段を備える。
このような眼底撮影装置によれば、眼底の複数の状態を選択的に使用可能な構成において、指定された状態に応じた光量情報を自動的に選択し、この光量情報を参照して観察光量に応じた撮影光量を決定して撮影を行うことができるので、眼底の状態に応じた撮影光量を容易に設定することが可能である。
蛍光撮影を実施する場合について説明する。蛍光撮影は、被検者に蛍光剤を静注して血管を造影することにより、眼底血管の状態の詳細な把握を目的とする検査である。蛍光撮影においては、蛍光剤を静注後、まず、大きな観察光量で眼底を観察して蛍光剤の流入を待つ。蛍光剤が流入してきたら観察光量を一気に小さくする。これは、初期には蛍光剤の血中濃度が高く、強い蛍光が発せられるため、蛍光剤が観察野に流入する前後において光量に大きな差が生じることによる。
なお、蛍光剤が観察野に流入してくるところを撮影したい場合には、静注からの経過時間を参照して、流入前から撮影を開始する。本例では、フラッシュ光を断続的に出力して経時的な静止画像を撮影するものとする。
上記のように蛍光剤の流入前後において観察光量が大きく変化することに対応し、撮影光量も大きく変化させる必要がある。このときの撮影光量の調整作業は難しく、調整に失敗した場合には再検査を行うこともあった。
この実施形態に係る眼底撮影装置によれば、観察光量に応じた撮影光量が自動的に設定されて撮影を行うことができるので、撮影光量の調整作業の容易化を図ることができ、更に失敗の可能性も低くなる。
また、蛍光撮影においては、蛍光剤の血中濃度が時々刻々と変化する状況下で、観察光量を適宜に調整しつつタイミングを見計らって複数回の撮影を行う。従来、検者は、観察光量の調整、眼底の観察、撮影光量の調整、撮影画像の確認など、様々な作業を並行的に進めながら検査を行っていた。そのため、撮影光量の設定を間違えたり、撮影タイミングを逃したりといった事態が発生するおそれがあった。
この実施形態に係る眼底撮影装置によれば、撮影の指示の直前の観察光量に応じた撮影光量を自動的に設定して撮影を行うことができるので、蛍光撮影の作業を好適に支援することができ、上記の事態が発生する可能性の低減を図ることができる。