以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る眼底カメラの外観構成図である。
眼底カメラは、基台1と、基台1に対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離)方向(Z方向)に移動可能な移動台2と、移動台2に対して3次元方向に移動可能に設けられ後述する光学系を収納する撮影部(装置本体)3と、被検者の顔を支持するために基台1に固設された顔支持ユニット5を備える。撮影部3は、移動台2に設けられたXYZ駆動部6により、被検眼Eに対して左右方向、上下方向(Y方向)及び前後方向に移動される。移動台2は、ジョイスティック4の操作により基台1上をXZ方向に移動される。また、回転ノブ4aを回転操作することにより、XYZ駆動部6がY駆動し撮影部3がY方向に移動される。なお、撮影部3の検者側には、眼底観察像や眼底撮影像を表示するモニタ8が設けられている。
図2は、撮影部3に収納される光学系及び制御系の概略構成図である。光学系は、照明光学系10、眼底観察・撮影光学系30、フォーカス指標投影光学系40、アライメント指標投影光学系50、前眼部観察光学系60、固視標呈示光学系70から大別構成されている。
<照明光学系> 照明光学系10は、観察照明光学系と撮影照明光学系を有する。撮影照明光学系は、フラッシュランプ等の撮影光源14、コンデンサレンズ15、リング状の開口を有するリングスリット17、リレーレンズ18、ミラー19、中心部に黒点を有する黒点板20、リレーレンズ21、孔あきミラー22、対物レンズ25を有する。また、観察照明光学系は、ハロゲンランプ等の光源11、波長750nm以上の近赤外光を透過する赤外フィルタ12、コンデンサレンズ13、コンデンサレンズ13とリングスリット17との間に配置されたダイクロイックミラー16、リングスリット17から対物レンズ25までの光学系を有する。ダイクロイックミラー16は、赤外光を反射し可視光を透過する特性を持つ。
<眼底観察・撮影光学系> 眼底観察・撮影光学系30は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口近傍に位置する撮影絞り31、光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ32、結像レンズ33、眼底撮影時には挿脱機構39により光路から挿脱可能な跳ね上げミラー34を備え、撮影光学系と眼底観察光学系は対物レンズ25と撮影絞り31から結像レンズ33までの光学系を共用する。撮影絞り31は対物レンズ25に関して被検眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置されている。フォーカシングレンズ32は、モータを備える移動機構49により光軸方向に移動される。35は可視域に感度を有する撮影用二次元撮像素子である。跳ね上げミラー34の反射方向の光路には、赤外光反射、可視光透過の特性を有するダイクロイックミラー37、リレーレンズ36、赤外域に感度を有する観察用二次元撮像素子38が配置されている。
また、対物レンズ25と孔あきミラー22の間には、光路分岐部材としての挿脱可能なダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)24が斜設されている。ダイクロイックミラー24は、アライメント指標投影光学系50及び前眼部照明光源58の波長光(中心波長940nm)を反射し、眼底観察用照明の波長光及びフォーカス指標投影光学系40の光源波長(中心波長880nm)を含む波長900nm以下を透過する特性を有する。撮影時には、ダイクロイックミラー24は挿脱機構66により連動して跳ね上げられ、光路外に退避する。挿脱機構66は、ソレノイドとカム等により構成することができる。
観察用の光源11を発した光束は、赤外フィルタ12により赤外光束とされ、コンデンサレンズ13、ダイクロイックミラー16により反射されてリングスリット17を照明する。リングスリット17を透過した光は、リレーレンズ18、ミラー19、黒点板20、リレーレンズ21を経て孔あきミラー22に達する。孔あきミラー22で反射された光は、ダイクロイックミラー24を透過し、対物レンズ25により被検眼Eの瞳孔付近で一旦収束した後、拡散して被検眼眼底部を照明する。
また、眼底からの反射光は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34、ダイクロイックミラー37、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像する。
また、撮影光源14の発光により、眼底は可視光により照明され、眼底からの反射光は対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34を経て二次元撮像素子35に結像する。
<フォーカス指標投影光学系> フォーカス指標投影光学系40は、赤外光源41、スリット指標板42、このスリット指標板42に取り付けられた2つの偏角プリズム43、投影レンズ47、照明光学系10の光路に斜設されたスポットミラー44を備える。スポットミラー44はレバー45の先端に固着されていて、通常は光軸に斜設されるが、撮影時にはロータリソレノイド46の軸の回転で、光路外に退避させられる。なお、スポットミラー44は被検眼の眼底と共役な位置に配置される。光源41、スリット指標板42、H偏角プリズム43、投影レンズ47、スポットミラー44及びレバー45は、フォーカシングレンズ32と連動して移動機構49により光軸方向に移動される。また、フォーカス指標投影光学系40のスリット指標板42の光束は、偏角プリズム43及び投影レンズ47を介してスポットミラー44により反射された後、リレーレンズ21、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を経て被検眼Eの眼底に投影される。眼底のフォーカスが合っていないとき、スリット指標板42の指標像S1・S2は分離され、フォーカスが合っているときに一致して投影される。そして、被検眼Eの眼底上に投影されたフォーカス指標像S1・S2は、眼底観察用の撮像素子38によって眼底像と共に撮像される(図8参照)。
<アライメント指標投影光学系> アライメント用指標光束を投影するアライメント指標投影光学系50は、撮影光軸L1を中心に左右方向に対称に配置された赤外光源51とコリメーティングレンズ52を持つ第1指標投影光学系と、前述の第1指標投影光学系より狭い角度に配置された光軸を持ち光軸L1が通る垂直平面を挟んで左右対称に配置された第2指標投影光学系であって2つの赤外光源53を持つ第2指標投影光学系と、を備える。第1指標投影光学系は被検眼Eの角膜に無限遠の指標を投影し、第2指標投影光学系は被検眼Eの角膜に有限遠の指標を投影する構成となっている。なお、第2指標投影光学系は、投影される指標光束が被検眼の瞳孔にかからないように、第1指標投影光学系によりも下側に設けられている。
<前眼部観察光学系> 前眼部観察光学系60は、ダイクロイックミラー24の反射側に、フィールドレンズ61、ミラー62、絞り63、リレーレンズ64、赤外域の感度を持つ二次元撮像素子65を備える。また、二次元撮像素子65はアライメント指標検出用の撮像手段を兼ね、中心波長940nmの赤外光を発する前眼部照明光源58により照明された前眼部とアライメント指標が撮像される。前眼部照明光源58により照明された前眼部は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24及びフィールドレンズ61からリレーレンズ64の光学系を介して二次元撮像素子65により受光される。また、アライメント指標投影光学系50が持つ光源の点灯により、前眼部に投影されたアライメント指標が二次元撮像素子65に受光される。二次元撮像素子65の出力は制御部80に入力され、図6に示すようにモニタ8には二次元撮像素子65に撮像された前眼部像Fが表示される。なお、前眼部観察光学系60は、被検眼に対する装置本体のアライメント状態を検出する役割を兼用する。
また、孔あきミラー22の穴周辺には、図3に示すように、被検眼の角膜上に光学アライメント指標(ワーキングドットW1)を形成するための2つの赤外光源55(中心波長880nm)が光軸L1を中心に左右対称に配置される。なお、光源55としては、光ファイバの端面を孔あきミラー22の近傍位置に配置し、その光ファイバに赤外光を導くものとして構成することもできる。ここで、光源55による角膜反射光は、被検眼Eと撮影部3(装置本体)との作動距離が適切になったとき、眼底と略共役位置に配置された撮像素子38の撮像面上に結像するようになっている。上記の構成は、被検眼の眼底を観察しながらアライメントの微調整を行うための指標投影光学系として用いられる。この場合、眼底観察光学系30は、光源55による角膜反射像を撮像素子38に導く役割を兼用する。
<固視標呈示光学系> 被検眼の視線を誘導するための固視標呈示光学系70は、赤色の光源74、開口穴が形成された8個の遮光板71を持つ遮光板71、リレーレンズ75を備え、ダイクロイックミラー37を介して跳ね上げミラー34から対物レンズ25までの観察光学系30の光路を共用する。8個の遮光板71は、図4に示すように、それぞれ開口穴71a〜71hを備える。ディスク板72はパルスモータ73により回転駆動され、各遮光板71が選択的に光源74の前に配置されると、固視標は図5(a)に示す様に、開口穴71a〜71hに対応して、光軸L2に対し8個の位置81L、81R、82〜87に呈示される。ディスク板72の初期回転位置は、遮光板76と投受光部を備えた光学式センサ77により検知されており、制御部80はそれぞれ開口穴71a〜71hを光源74の前に配置させるためにパルスモータ73の回転角度を制御する。それぞれ開口穴71a〜71hを光源74の前に配置させるためのパルス数は、予め制御部80に記憶されている。
固視標からの光束は、リレーレンズ75、ダイクロイックミラー37、跳ね上げミラー34、結像レンズ33、フォーカシングレンズ32、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を通過して被検眼眼底に集光し、被検者は所定の開口穴71a〜71hのいずれかからの光束を固視標として視認する。
固視標呈示光学系70は、眼底中心部を撮影する標準位置と眼底周辺部を撮影する周辺位置とに固視標の呈示位置を変更可能な構成となっている。すなわち、開口穴71bに対応する固視標位置81Rは、右眼の黄班、視神経乳頭をバランスよく含む眼底後極部付近を中心として撮影するときに使用するものであり、この固視標位置81Rが右眼撮影時の標準位置とされる。一方、開口穴71aに対応する固視標位置81Lは左眼の黄班、視神経乳頭をバランスよく含む眼底後極部付近を中心に撮影するときに使用するものであり、この固視標位置81Lが左眼撮影時の標準位置とされる。そして、開口穴71c〜71hに対応する固視標位置82〜87が周辺撮影用の位置とされる。図5(b)は、右眼の撮影において固視標を位置81R、位置82〜87にそれぞれ変えて撮影したときの眼底像の状態を説明する図であり、領域111R、112〜117がそれぞれ位置81R、位置82〜87に対応する。
<制御系> 二次元撮像素子65、38、35の出力は制御部80に接続されている。制御部80は二次元撮像素子65に撮像された前眼部画像からアライメント指標を検出処理し、二次元撮像素子38に撮像された眼底画像からフォーカス指標を検出処理する。また、制御部80はモニタ8に接続され、その表示画像を制御する。制御部80には、他に、XYZ駆動部6、移動機構49、挿脱機構39、挿脱機構66、パルスモータ73、回転ノブ4a、撮影スイッチ4b、各種のスイッチを持つスイッチ部84、記憶手段としてのメモリ85、各光源等が接続されている。なお、スイッチ部84には、眼底像のフォーカス調整を行うためのフォーカス調整スイッチ84a、被検眼に対する固視標の呈示位置を変更するための固視標呈示スイッチ84b、立体撮影用スイッチ84c等が配置されている。
以上のような構成を備える眼底カメラの動作について、眼底の中央位置を撮影する場合(標準撮影)と眼底の周辺位置を撮影する場合(周辺撮影)に分けて説明する。なお、以下の説明は右眼を撮影する場合である。
眼底中心部を撮影する場合、検者は、スイッチ84bにより固視標の呈示位置を眼底中心部撮影用に設定する。ここで、制御部80は、開口穴71bを持つ遮光板71を光源74の前に配置し、固視標位置を右眼の標準位置(略中央位置)とする。
まず、被検者の顔を顔支持ユニット5により支持する。初期段階では、ダイクロイックミラー24は撮影光学系30の光路に挿入されており、二次元撮像素子65に撮像された前眼部像がモニタ8に表示される。検者は、前眼部像がモニタ8に現れるようにジョイスティック4の操作により撮影部3を左右上下に移動する。前眼部像がモニタ8に現われるようになると、図6(a)に示すように、4つの指標像Ma,Mb,Mc,Mdも現われるようになる。なお、モニタ8の中央(画面中央)には、制御部80によってレチクルMと撮影可能な最小瞳孔径を表す円形マークPとが電子的に形成されている。ここで、眼底の中央部(後極部中心)を撮影するための標準撮影のアライメントは、図6(b)に示すように、被検眼の角膜頂点がアライメント合わせの基準となるレチクルMの中心と同心円状に位置するようにジョイスティック4を操作する。また、前後方向(作動距離方向)は、指標像のピントを合わせるように撮影部3を移動させる。このとき、検者は、被検眼の瞳孔径が最小瞳孔径を表す円形マークPよりも大きいかどうかを確認する。
また、二次元撮像素子65で撮像された4つの指標像Ma〜Mdが制御部80に入力されるようになると、制御部80は、予め設定されている受光素子上のアライメント基準位置O1(例えば、中央撮影においては、角膜頂点と撮影光軸とが一致する位置であって、受光素子の中心位置をアライメント基準位置O1とする)とし、これらの指標像によって検出されるアライメント検出結果に基づいて被検眼に対する装置本体のアライメント偏位量(位置ずれ)を算出する。制御部80は、指標像Ma,Mbの中間位置Cを求め、XY方向のアライメント基準位置O1に対する偏位量Δd1を求める(図7(a)参照)。なお、中間位置Cは角膜頂点位置とみなすことができる。そして、この偏位量Δd1がアライメント完了の所定の許容範囲Aに一定時間入っているかにより、XY方向のアライメントの適否を判定する。また、Z方向のアライメント偏位量は、指標像Ma,Mbの間隔と指標像Mc,Mdの間隔とを比較することにより算出される。なお、制御部80は、撮影部3が作動距離方向にずれた場合に、前述の無限遠指標Ma,Mbの間隔がほとんど変化しないのに対して、指標像Mc,Mdの像間隔が変化するという特性を利用して、被検眼に対する作動距離方向のアライメント偏位量を求める(詳しくは、特開平6−46999号参照)。Z方向についても、Z方向のアライメント基準位置に対する偏位量を求め、その偏位量がアライメント完了の許容範囲に一定時間入っているかにより、Z方向のアライメントの適否を判定する。
ここで、XYZ方向のアライメント状態が所定のアライメント完了の条件を満足していれば、制御部80はモニタ8の表示を前眼部像から眼底像に切換える。モニタ8の前眼部像と眼底画像との表示の切換えは、スイッチ部84のスイッチ操作でも可能である。なお、上記の操作において、制御部80によって算出されるアライメント偏位量に基づいてXYZ駆動部6を駆動制御することにより被検眼に対する撮影部3のアライメントを自動的に行うようにしても良い(いわゆるオートアライメント)。この場合、XYZ方向のアライメント状態が所定のアライメント完了の条件を満たすまで、オートアライメントが実行されるようにすればよい。
図8は、二次元撮像素子38の眼底像に切換えられたときの画面例であり、アライメント状態がある程度適正にされると、この眼底像では、光源55により形成される角膜反射光による2つの光学アライメント指標W1(光学ワーキングドット)が眼底観察画像に重畳して現われる。図8(a)は眼底像に切換えられた直後の画面例であり、図8(b)は微調整完了後の画面例である。ここで、145は眼底照明光学系10の光路に挿入されたレバー45によって観察光束が遮光されることによって撮像素子38上に形成された遮光領域である。なお、遮光領域の先端(光軸上)には、眼底に投影されたフォーカス指標像S1,S2が形成される。なお、現在の固視標の呈示位置を検者に対して報知するためのグラフィック表示やLED点灯を設けるようにしてもよい。
検者はこの眼底画像(図8(a)参照)を見ながら、光学アライメント指標W1が表示モニタ8の画面の中心に対して左右対称に電子的(電気的)に形成されたレチクルM1に一致するように、XY方向のアライメントの微調整を行うと共に、光学アライメント指標W1のピントがあった状態で画面上に表示されるようにZ方向のアライメントの微調整を行う。さらに、眼底像のフレア等を確認し、所望する状態で撮影できるように、さらにジョイスティック4の操作にてアライメント状態を微調整する。
また、本実施形態では、光学アライメント指標W1を用いなくとも、アライメントを行うことが可能となっている。図8に示すW2は、制御部80により電子的に表示(スーパインポーズ)された電子アライメント指標(電子ワーキングドット)であり、前述のように算出される被検眼に対する撮影部3のアライメント偏位量に基づいてその表示が制御されるものである。M2は表示モニタ8の画面上に電子的に表示されアライメントを行うための基準として用いられるレチクルであり、画面上の所定位置に固定表示される。本実施形態では、前述のように算出されるXY方向のアライメント基準位置O1に対する偏位量Δd1と、モニタ8に電子的に形成されたレチクルM2の形成位置とに基づいてアライメント指標W2の表示位置を制御する。なお、レチクルM2は、固視標の呈示位置が標準位置及び周辺位置にかかわらずモニタ8の画面上の所定位置に固定表示される。また、レチクルM2はアライメント調整を行う際に視認可能な位置であれば、画面上の何処に形成されていてもよいが、本実施形態では眼底観察を行いやすくするために、画面中心を避け、画面中心よりやや下方の遮蔽領域に形成するものとしている。
また、制御部80は装置本体が被検眼に対してXY方向に相対的に移動することにより変化する偏位量Δd1に基づいて、レチクルM2に対する電子アライメント指標W2の形成位置(表示位置)を逐次修正し表示し直していく。このため、検者は電子アライメント指標W2とレチクルM2とが一致するように装置本体をXY方向に移動させることにより、被検眼に対する装置本体のXY方向のアライメントの微調整を行うことができる(図8(b)参照)。
100は制御部80により電子的に表示されたインジケータ(アライメントバー)であり、被検眼に対する作動距離方向(Z方向)のアライメント偏位量を表現するために用いられるアライメント視標である。本実施形態では、制御部80は、前述のように算出されるZ方向のアライメント基準位置に対する偏位量に基づいてインジケータの表示本数を表示制御する。この場合、前方向にアライメントずれがあればインジケータ101aに対して上方向にインジケータを延ばすように表示制御し、奥方向にアライメントずれがあればインジケータ101aに対して下方向にインジケータを延ばすように表示制御するようなことが考えられる。ここで、検者は、インジケータ101aのみが表示されるように装置本体をZ方向に移動させることにより、被検眼に対する装置本体のZ方向のアライメントの微調整を行う(図8(b)参照)。
なお、本実施形態においては、被検眼の眼底像が表示されたモニタ8の画面上に、光学的に表示される光学アライメント指標(ワーキングドットW1)と電子的に表示される電子アライメント指標(ワーキングドットW2)とを同時または切り換え表示するように併用して表示させる構成とすることにより、例えば以下のような表示制御が可能となる。なお、本実施形態において、光学アライメント指標W1と電子アライメント指標W2のモニタ8の画面上への表示は、制御部80により表示制御されるようになっている。また、本実施形態において、光学アライメント指標W1は赤外光源55を持つ指標投影光学系と眼底観察光学系30による光学的手法によってモニタ8の画面上に形成(発生)されたものであり、電子アライメント指標W2は制御部80により電子的にモニタ8の画面上に形成(発生)されたものである。
図9(a)は、二次元撮像素子38の眼底像に切換えられたときの画面例であり、画面上には、電子アライメント指標W2が表示され、光学アライメント指標W1は表示されていない状態となっている。なお、制御部80は、赤外光源55を消灯させておくことによりあえてモニタ8の画面上に光学アライメント指標W1が表示させない状態にしている。これは、光学アライメント指標W1と電子アライメント指標W2が同時に画面上に表示されることで、アライメント調整を行う検者に紛らわしさを感じさせ、アライメント調整が煩わしくなくなるのを防止するためである。
ここで、検者は、モニタ8を見ながら、電子アライメント指標W2とレチクルM2とが一致するように装置本体をXY方向に移動させることにより、被検眼に対する装置本体のXY方向のアライメントの微調整を行う。また、制御部80は、上記のように算出される上下左右方向のアライメント偏位量が所定の許容偏位量内になって所定時間が経過したら、赤外光源55を点灯(少なくともモニタ8に表示される側の光源を点灯)させることにより、モニタ8の画面上に光学アライメント指標W1を表示させると共に、これに連動して電子アライメント指標W2の表示状態を変化させる(例えば、色を変える、点滅表示等の強調表示や表示を無くす)。なお、本実施形態では、XY方向におけるアライメント条件(微調整)を満たしたと判定される程度、すなわち、電子アライメント指標W2がレチクルM2の枠内に収まる程度のアライメント偏位量になった場合に、赤外光源55が点灯するとともに、電子アライメント指標W2の色が変化するようになっている。
図9(b)は、XY方向のアライメントの微調整が完了した際のモニタの表示画面を示す図である。M3は、制御部80によりモニタ8に電子的に表示されたマークであり、検者に対して光学アライメント指標W1の発生位置を知らせる役割を有する。また、モニタ8に表示された光学アライメント指標W1とマークM3との位置関係に基づいて(例えば、マークM3によって指定された位置に光学アライメント指標W1があるかどうかによって)、XY方向のアライメント微調整が適切に行われていることを検者に確認させることも可能である。このため、モニタ8の画面上に表示された光学アライメント指標W1を検者が探す手間が省けたり、XY方向のアライメント微調整の適否確認を検者が行うことできるので、周辺撮影等、光学アライメント指標W1の発生位置が固視位置によって変化する場合に、特に有効である。
ここで、検者は、モニタ8を見ながら、被検眼に対する装置本体の作動距離が適切でない場合にぼけたように表示される光学アライメント指標W1に対して、アライメント指標W1のピントがあった状態で画面上に表示されるように、Z方向のアライメントの微調整を行う。なお、Z方向のアライメントの微調整の間に、被検眼が動いてXY方向のアライメントがずれてしまい、制御部80にて算出されるXY方向のアライメント偏位量が許容偏位量を超えたような場合には、光源55の消灯により光学アライメント指標W1の表示が消去され、電子アライメント指標W2の表示状態が以前の状態に戻る(例えば、色が変っていれば元の色に戻る。このような場合には、検者は再度XY方向のアライメントの微調整を行えばよい。
以上のようなアライメント操作によりXYZ方向のアライメントの微調整が完了後、フォーカス調整を行い、撮影スイッチ4bを押すことにより眼底撮影を行う。
以上のような表示制御により、眼底観察像を観察しながら、電子アライメント指標W2を用いてXY方向(上下左右)のアライメント(位置合せ)を行い、光学アライメント指標W1を用いてZ方向(前後)のアライメントを行うことができるので、上下左右方向を含めた全体のアライメントを容易に行うことができる。また、Z方向のアライメント微調整において、前述のようなインジケータ100の表示制御を行う必要がないため(インジケータ100の表示制御の構成を簡略化できる場合を含む)、制御系の構成を簡略化させることも可能である。
なお、以上の説明において、制御部80により算出されるXY方向のアライメント偏位量に基づいて光学アライメント指標(光学ワーキングドットW1)の表示/非表示を制御することにより、光学アライメント指標の表示状態を制御するものとしたが、これに限るものではない。例えば、光学アライメント指標は常時点灯されていても良い。
また、モニタ8の画面上への光学アライメント指標(光学ワーキングドットW1)の表示/非表示を制御する場合、光源55の点灯/消灯に限るものではなく、光源55の前に移動可能な遮光部材を配置して被検眼に指標光束が投影されるのを制御するようなことも考えられる。
また、被検眼に対するアライメントが適正に行われても、被検眼に呈示する固視標の呈示位置に応じて光学アライメント指標の表示位置が変化するので、固視標の呈示位置に応じて前述のマークM3の表示位置を変更するのが好ましい(例えば、図11(b)参照)。この場合、XY方向のアライメント微調整が適正に行われた際の光学アライメント指標の表示位置を参考に、マークM3の表示位置を設定するようなことが考えられる。さらに、算出されるXY方向のアライメント偏位量に基づいてマークM3の表示状態を制御させる(本実施形態では、アライメント偏位量が所定の許容偏位量であるか否かによって、マークM3の表示/非表示を制御)ことにより、検者にとって光学アライメント指標を用いるタイミングが分かりやすくなり、アライメント作業が容易となる。なお、固視標の呈示位置によっては、被検眼に対するアライメントが適正に行われた際に光学アライメント指標と電子アライメント指標が重なってしまい、アライメント判定がしづらくなる可能性がある。そこで、そのような場合には、モニタ8の画面上の電子アライメント指標の表示状態を変化させるようにしてもよい。例えば、制御部80は、XY方向のアライメント微調整が完了したら電子アライメント指標W2及びレチクルM2を非表示の状態とし、光学アライメント指標W1を表示させた状態とすることが考えられる。他の手法としては、レチクルM2及び電子アライメント指標の表示位置を通常の所定位置からずらした状態でモニタ8に表示し、被検眼に対する装置本体のアライメント偏位量を表現するようなことが考えられる。
なお、以上のような説明において、モニタ8の画面上に被検眼の眼底観察像が表示された状態でアライメントを行う場合に,上記のように電子アライメント指標(電子ワーキングドットW2)と光学アライメント指標(光学ワーキングドットW1)を併用するか否かを選択できるようにしてもよい。この場合、例えば、検者の好みに合わせて、上記のような併用パターンと、前述のような電子的に表示された電子アライメント指標(ワーキングドットW2とインジケータ100)によってXYZ方向における被検眼に対する装置本体のアライメント偏位量を表現するパターンとを選択可能とするような構成が考えられる。
なお、ワーキングドットW2やインジケータ100等の電子アライメント指標を用いて被検眼に対するZ方向のアライメントの微調整を行い、光学アライメント指標W1のボケ具合の変化を利用して被検眼に対するZ方向のより微妙なアライメント微調整を行うようなこともできる。これにより、被検眼を観察しながらの被検眼に対するアライメントの微調整を素早く正確に行うことが可能となる。
なお、以上のような構成によれば、制御部80にて算出されたXY方向のアライメント偏位量が所定の許容偏位量を上回る場合であっても、レチクルM2に対して遠ざけた位置に電子アライメント指標W2を表示させることも可能である。図10は、眼底観察時に被検眼に対して装置本体が下方向にずれてしまった場合の画面例である。この場合、光学アライメント指標W1はアライメントずれによる偏位量が大きいため、表示モニタ8上から消えてしまっている。このような場合、例えば、制御部80により電子アライメント指標W2を表示モニタ8の下縁付近に表示させるようにすることにより、検者は、眼底像を観察しながらアライメントが下方向にずれていることを確認することができる。ここで、検者がジョイスティック4を用いて装置本体を上方向に移動させることにより、眼底像を観察しながらアライメントの調整を行うことができる。すなわち、本実施形態においては、前眼部像を撮像するための専用の撮像素子65によって被検眼前眼部に対するアライメントずれ情報を眼底観察時においても検出することができる。そのため、この検出結果を利用して、XY方向の大きなアライメントずれに対応するように表示モニタ8の表示画面上の縁付近に電子アライメント指標W2を表示させることにより、眼底画像を観察しながらXY方向の大きなアライメントずれを修正することが可能である。なお、Z方向のアライメントにおいてもずれ量が大きいと、光学アライメント指標W1は表示モニタ8上から消えてしまうが、被検眼前眼部に対するZ方向のアライメントずれ情報の検出結果を利用して、Z方向に大きなアライメントずれを検出した場合に、これをインジケータ100によって表現することにより、眼底像を観察しながらZ方向の大きなアライメントずれを修正することが可能となる。
次に、眼底像のフォーカス調整を行う。この場合、検者は、モニタ8に表示される眼底像を見ながらフォーカス調整スイッチ84aを操作することにより、マニュアル操作でフォーカス調整を行う。制御部80は、フォーカススイッチ84aからの入力信号に基づいて、移動機構49を駆動させフォーカシングレンズ32を前後に移動させる。そして、所望する部位が良好に観察できていれば、撮影スイッチ4bを押すことにより撮影が実行される。制御部80は、挿脱機構39を駆動させることにより跳ね上げミラー34を光路から離脱させ、挿脱機構66を駆動することによりダイクロイックミラー24を光路から離脱させると共に、撮影光源14を発光する。このとき、二次元撮像素子35によって眼底像が撮影され、メモリ85に撮影された画像データが記憶される。そして、制御部80は、モニタ8の表示画面を二次元撮像素子35で撮影されたカラーの眼底画像に切換える。
次に、被検眼の眼底周辺部を撮影する場合について説明する。この場合、検者は、スイッチ84bにより、固視標の呈示位置を眼底周辺用の任意の呈示位置に設定する。周辺撮影の場合、周辺撮影用の固視標の方向に視線が誘導される。このため、周辺撮影に適するようにアライメントを行った状態(例えば、被検眼の瞳孔中心付近と撮影光軸L1とが一致するようにアライメントを行う)においては、眼底観察像における光学アライメント指標W1及び前眼部観察で検出される指標像の位置も標準撮影(略中央撮影)の位置に対してずれた位置になる(図11及び図12参照)。
ここでは、スイッチ84bにより開口穴71fを光源74の前に配置させることにより、図5に示すような、右眼における乳頭を中心とする領域115を撮影する場合について説明する。このとき、適正なアライメント状態が維持されていても、前眼部撮影光学系の撮像素子65によって撮像される指標像Ma、Mb、Mc、Mdの受光位置は、図12に示すように、標準撮影(中央撮影)の状態に対してずれた状態となる。そこで、本実施形態においては、前述のように被検眼の瞳孔中心付近に撮影光軸L1が通るるようにアライメントを行って眼底周辺部を撮影する場合には、被検眼の視線方向の変化を考慮して、前眼部像によるアライメント偏位量を算出する際の基準となるアライメント基準位置を固視標の呈示位置に応じて変更して被検眼に対するアライメントずれを算出する。図12において、O1は標準撮影時におけるアライメント基準位置であり、O2は周辺撮影として固視灯位置を変化させ、図5に示す領域115を撮影するとした際における撮像素子65上のアライメント基準位置を示しており、アライメント基準位置O1に対してΔDだけずれた位置にある。すなわち、制御部80は、前眼部の撮像による被検眼に対する装置本体のアライメントずれの算出において、固視標の呈示位置の変化に対して各々設定されたアライメント基準位置に被検眼の角膜頂点が位置するときにアライメントが適正であると検出されるように、アライメント偏位量の算出にオフセット処理を施す。
このような場合、眼底周辺撮影をする際の固視標の各呈示位置(82〜87)に対応できるように、それぞれアライメント基準位置を予め設定しておきメモリ85に記憶させておく。そして、制御部80は、前述のようにアライメント基準位置がそれぞれ記憶されたメモリ85から固視標の現在の呈示位置に対応するアライメント基準位置を取得する。
なお、メモリ85に記憶されるアライメント基準位置情報は一つとしておき、異なる固視標の呈示位置に応じて所定の演算により、変更した固視標の呈示位置に応じたアライメント基準位置を求め、取得することもできる。このような方法を用いれば、固視標の呈示位置を上下左右に任意に移動させるような機構を用いて固視標の呈示位置を任意に選択した場合でも、アライメント基準位置を取得することができる。
なお、固視標の呈示位置に対応するアライメント基準位置を設定する場合、アライメント微調整が完了した際に、所望する眼底像が適正に撮影できる位置に撮影光軸L1が位置するようにアライメント基準位置を設定すればよい。眼底中央の撮影においては、例えば、撮影光学系の光軸L1と撮像素子65の撮像面が交わる点をXY方向のアライメント基準位置とするようなことが考えられる。一方、眼底周辺部の撮影においては、アライメントが完了した際に、検者が所望する位置の眼底像が観察でき、かつ、瞳孔による観察光束のケラレが許容範囲内となる位置に撮影光軸L1が位置するようにアライメント基準位置を設定すればよい。
したがって、制御部80は、メモリ85から現在の固視標の呈示位置(開口穴71f)に対応するアライメント基準位置を取得し、取得したアライメント基準位置と制御部80にて検出されるアライメント検出結果に基づいて被検眼に対する装置本体のアライメント偏位量を算出する。すなわち、制御部80は、撮像素子65で撮像された4つの指標像に基づいて図5の領域115を撮影する場合に決定される新たなアライメント基準位置O2に対する偏位量(位置ずれを求める)を求める。ここで、制御部80は、指標像Ma,Mbの中間位置Cを求め、XY方向のアライメント基準位置O2に対する偏位量Δd2を求める(図7(b)参照)。そして、この偏位量Δd2がアライメント完了の所定の許容範囲Aに一定時間入っているか否かにより、XY方向のアライメントの適否を判定する。また、Z方向についても、Z方向のアライメント基準位置に対する偏位量を求め、その偏位量がアライメント完了の許容範囲に一定時間入っているかにより、Z方向のアライメントの適否を判定する。
検者は、はじめに前眼部表示状態でのアライメントを行う場合、例えば、被検眼の瞳孔中心がレチクルMの中心と同心円状に位置するようにジョイスティック4を操作する。
そして、XYZ方向のアライメント状態が所定のアライメント完了の条件を満足していれば、制御部80はモニタ8の表示を前眼部像から眼底像に切換える。
図13は、二次元撮像素子38によって得られた眼底像に切換えられたときの画面例であり、アライメント状態がある程度適正にされている状態を示している。
電子アライメント指標W2において、制御部80は、眼底周辺部の所定の領域115を撮影する場合のアライメント基準位置O2に対するアライメント偏位量Δd2に基づいて電子アライメント指標W2の表示位置を制御する。すなわち、制御部80は、眼底領域115を撮影するためのアライメント基準位置O2に対する偏位量Δd2が許容範囲内として検出される際に、固定表示されているレチクルM2に対して偏位量Δd2を考慮した画面上の位置に電子アライメント指標W2を電子的に表示する。
検者は、前述した中央撮影時のアライメント操作と同様に、電子アライメント指標W2とレチクルM2とが合致するようにXY方向のアライメントを調整することにより、被検眼に対する装置本体のXY方向のアライメントの微調整を行うことができる(図11参照)。
また、制御部80は、モニタ8上のインジケータ100によってZ方向のアライメントずれを表現することにより、検者は、インジケータ101aのみが表示されるようにZ方向のアライメントを調整することにより、被検眼に対する装置本体のZ方向のアライメントの微調整を行うことができる(図11(b)参照)。
このような操作により、アライメントの微調整が完了したら、眼底像のフォーカス調整を行う。そして、所望する部位が良好に観察できていれば、撮影スイッチ4bを押すことにより撮影が実行される。制御部80は、挿脱機構39を駆動させることにより跳ね上げミラー34を光路から離脱させ、挿脱機構66を駆動することによりダイクロイックミラー24を光路から離脱させると共に、撮影光源14を発光する。モニタ8の表示は制御部80によって二次元撮像素子35で撮影されたカラーの眼底画像に切換えられる。
以上のような構成により、眼底周辺部を撮影する場合であっても被検眼の眼底像を観察しながらのアライメント調整を容易に行うことができる。
なお、以上の説明においては、被検眼前眼部にアライメント用指標光束を投影する指標投影光学系50を設け、被検眼前眼部を撮像する撮像素子65に受光されたアライメント用指標光束の被検眼前眼部からの反射光の受光位置を検出することにより被検眼に対する装置本体のアライメント状態を検出するような構成としたが、これに限るものではない。例えば、撮像素子65によって撮像される瞳孔の位置や光量レベルから被検眼の瞳孔中心を画像処理により抽出することにより、被検眼に対する装置本体のアライメント状態を検出するようにしてもよい。この場合、固視標の呈示位置の変更にかかわらずアライメント基準位置を一定としておき、アライメント偏位量を検出すればよい。