以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る眼底カメラの外観構成図である。
眼底カメラは、基台1と、基台1に対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離)方向(Z方向)に移動可能な移動台2と、移動台2に対して3次元方向に移動可能に設けられ後述する光学系を収納する撮影部(装置本体)3と、被検者の顔を支持するために基台1に固設された顔支持ユニット5を備える。撮影部3は、移動台2に設けられたXYZ駆動部6により、被検眼E(測定眼)に対して左右方向、上下方向(Y方向)及び前後方向に移動される。移動台2は、ジョイスティック4の操作により基台1上をXZ方向に移動される。また、回転ノブ4aを回転操作することにより、XYZ駆動部6がY駆動し撮影部3がY方向に移動される。なお、撮影部3の検者側には、前眼部像、眼底観察像、眼底撮影像を表示する表示部であるモニタ8が設けられている。また、モニタ8にはタッチパネル8aが取り付けられており、タッチパネル8aの操作により各種条件設定等を入力できるようになっている。モニタ8の周辺には、各種条件設定を行うためのスイッチ部90が配置されている(図2参照)。スイッチ部90の詳細な説明は後述する。
また、測定眼が右眼であるか左眼であるかを検出するための左右位置検出手段であるスイッチ9が、移動台2の左右の可動範囲で中間に位置される。スイッチ9には機械的スイッチが使用され、移動台2が左右に移動されるときにスイッチ9が切り換わることによって、測定眼が左眼であるか右眼であるかが判別される。これ以外にも、スイッチ9としてはフォトインタラプタ等の光学センサが使用され、基台1に対する移動台2の左右位置が光学的に検知されるようにしても良い。また、検者がスイッチ部90に図示を略す左右眼選択スイッチを設け、測定眼が左眼であるか右眼であるかが入力されるようにしても良い。
図2は、撮影部3に収納される光学系及び制御系の概略構成図である。光学系は、照明光学系10、眼底観察・撮影光学系30、フォーカス指標投影光学系40、アライメント指標投影光学系50、前眼部観察光学系60、固視標呈示光学系70から大別構成されている。
<照明光学系> 照明光学系10は、観察照明光学系と撮影照明光学系を有する。撮影照明光学系は、フラッシュランプ等の撮影光源14、コンデンサレンズ15、リング状の開口を有するリングスリット17、リレーレンズ18、ミラー19、中心部に黒点を有する黒点板20、リレーレンズ21、孔あきミラー22、対物レンズ25を有する。また、観察照明光学系は、ハロゲンランプ等の光源11、波長750nm以上の近赤外光を透過する赤外フィルタ12、コンデンサレンズ13、コンデンサレンズ13とリングスリット17との間に配置されたダイクロイックミラー16、リングスリット17から対物レンズ25までの光学系を有する。ダイクロイックミラー16は、赤外光を反射し可視光を透過する特性を持つ。
<眼底観察・撮影光学系> 眼底観察・撮影光学系30は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口近傍に位置する撮影絞り31、光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ32、結像レンズ33、眼底撮影時には挿脱機構39により光路から挿脱可能な跳ね上げミラー34を備え、撮影光学系と眼底観察光学系は対物レンズ25と撮影絞り31から結像レンズ33までの光学系を共用する。撮影絞り31は対物レンズ25に関して被検者眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置されている。フォーカシングレンズ32は、モータを備える移動機構49により光軸方向に移動される。35は可視域に感度を有する撮影用二次元撮像素子である。跳ね上げミラー34の反射方向の光路には、赤外光反射、可視光透過の特性を有するダイクロイックミラー37、リレーレンズ36、赤外域に感度を有する観察用二次元撮像素子38が配置されている。
対物レンズ25と孔あきミラー22の間には、眼底観察・撮影光学系30と前眼部観察光学系60とを分けるための光路分岐部材として、ダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)24が斜設されている。ダイクロイックミラー24は、アライメント指標投影光学系50からのアライメント光の波長及び前眼部照明光源58の波長光(中心波長940nm)を反射し、眼底観察用照明の波長光及びフォーカス指標投影光学系40の光源波長(中心波長880nm)を含む波長900nm以下を透過する特性を有する。
撮影時には、ダイクロイックミラー24は、挿脱機構66により回転軸24aを中心として前眼部観察光学系60(光軸L2)から遠ざかる方向に移動(回動)され、光路外に退避される。挿脱機構66は、ソレノイドとカム等により構成することができる。なお、本実施形態では回転軸24aは、斜設されているダイクロイックミラー24の前側端部に形成されているが、これに限るものではなく、ミラーが光路外に退避する際に前眼部観察光学系60から遠ざかる方向に退避することのできる構成であればよい。
また、ダイクロイックミラー24の退避位置には、退避されるダイクロイックミラー24と光路外で当接することにより、その回動を停止させると共に、衝突により発生する衝撃音と振動とを吸収するための停止部材26や、退避確認のためのフォトインタラプタ等からなるセンサ27が配置されている。
なお、ダイクロイックミラー24は、対物レンズ25と穴あきミラー22までの光軸L1上で、眼底共役となる位置を避けて配置することが好ましい。これにより、眼底撮影時においてダイクロイックミラー24の退避動作が被検者眼に確認され難くなくなるので、より被検者の瞬きの誘発を抑制できる。
また、図2において、ダイクロイックミラー24の挿入により生じる光軸ずれを補正するための図示なき補正部材を設けるようにしても良い。この場合には、回転軸24aを中心としてダイクロイックミラー24と補正部材とが一体で回動され、ミラーダウンにより共に光路外に退避される。
観察用の光源11を発した光束は、赤外フィルタ12により赤外光束とされ、コンデンサレンズ13、ダイクロイックミラー16により反射されてリングスリット17を照明する。リングスリット17を透過した光は、リレーレンズ18、ミラー19、黒点板20、リレーレンズ21を経て孔あきミラー22に達する。孔あきミラー22で反射された光は、ダイクロイックミラー24を透過し、対物レンズ25により被検者眼Eの瞳孔付近で一旦収束した後、拡散して被検者眼Eの眼底部を照明する。眼底からの反射光は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34、ダイクロイックミラー37、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像し、これにより眼底の観察像が得られる。
眼底の撮影時には、ダイクロイックミラー24は光路L1から退避され、撮影光源14の発光により眼底が可視光により照明され、眼底からの反射光は対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34を経て二次元撮像素子35に結像する。
<フォーカス指標投影光学系> フォーカス指標投影光学系40は、赤外光源41、スリット指標板42、このスリット指標板42に取り付けられた2つの偏角プリズム43、投影レンズ47、照明光学系10の光路に斜設されたスポットミラー44を備える。スポットミラー44はレバー45の先端に固着されていて、通常は光軸に斜設されるが、撮影時にはロータリソレノイド46の軸の回転で、光路外に退避させられる。なお、スポットミラー44は被検者眼Eの眼底と共役な位置に配置される。光源41、スリット指標板42、偏角プリズム43、投影レンズ47、スポットミラー44及びレバー45は、フォーカシングレンズ32と連動して移動機構49により光軸方向に移動される。また、フォーカス指標投影光学系40のスリット指標板42の光束は、偏角プリズム43及び投影レンズ47を介してスポットミラー44により反射された後、リレーレンズ21、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を経て被検者眼Eの眼底に投影される。眼底のフォーカスが合っていないとき、スリット指標板42の指標像は分離され、フォーカスが合っているときに一致して投影される。そして、被検者眼Eの眼底上に投影されたフォーカス指標像は、眼底観察用の撮像素子38によって眼底像と共に撮像される。
<アライメント指標投影光学系> アライメント用指標光束を投影するアライメント指標投影光学系50は、撮影光軸L1を中心に左右方向に対称に配置された赤外光源51とコリメーティングレンズ52を持つ第1指標投影光学系と、前述の第1指標投影光学系より狭い角度に配置された光軸を持ち光軸L1が通る垂直平面を挟んで左右対称に配置された第2指標投影光学系であって2つの赤外光源53を持つ第2指標投影光学系と、を備える。第1指標投影光学系は被検者眼Eの角膜に無限遠の指標を投影し、第2指標投影光学系は被検者眼Eの角膜に有限遠の指標を投影する構成となっている。なお、第2指標投影光学系は、投影される指標光束が被検者眼の瞳孔にかからないように、第1指標投影光学系によりも下側に設けられている。
<前眼部観察光学系> 前眼部観察光学系60は、ダイクロイックミラー24の反射側の光軸L2上に、フィールドレンズ61、ミラー62、絞り63、リレーレンズ64、赤外域の感度を持つ二次元撮像素子65を備える。また、二次元撮像素子65はアライメント指標検出用の撮像手段を兼ね、中心波長940nmの赤外光を発する前眼部照明光源58により照明された前眼部とアライメント指標が撮像される。前眼部照明光源58により照明された前眼部は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24及びフィールドレンズ61からリレーレンズ64の光学系を介して二次元撮像素子65により受光される。また、アライメント指標投影光学系50が持つ光源の点灯により、前眼部に投影されたアライメント指標が二次元撮像素子65に受光される。二次元撮像素子65の出力は画像処理手段(画像生成手段、表示制御手段を兼ねる)である制御部80に入力され、モニタ8には二次元撮像素子65に撮像された前眼部像Fが表示される(図3参照)。なお、前眼部観察光学系60は、被検者眼Eに対する装置本体のアライメント状態を検出する役割を兼用する。
<固視標呈示光学系> 被検者眼Eの視線を誘導するための固視標呈示光学系70は、赤色の光源74、開口穴が形成された複数の遮光板71を持つディスク板72、リレーレンズ75を備え、ダイクロイックミラー37を介して跳ね上げミラー34から対物レンズ25までの観察光学系30の光路を共用する。複数の遮光板71には、それぞれ異なる位置に開口穴が形成されている。ディスク板72はパルスモータ73により回転駆動され、各遮光板71が選択的に光源74の前に配置されることにより、固視標の呈示位置が変更される。各遮光板71を光源74の前に配置させるためのパルス数は、予め制御部80に記憶されている。固視標からの光束は、リレーレンズ75、ダイクロイックミラー37、跳ね上げミラー34、結像レンズ33、フォーカシングレンズ32、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を通過して被検者眼E眼底に集光し、被検者は開口からの光束を固視標として視認する。
<制御系> 前眼部観察光学系60の二次元撮像素子65、眼底観察・撮影光学系30の二次元撮像素子38、35の出力は制御部80に接続されている。表示制御手段である制御部80は二次元撮像素子65で撮像された前眼部像又は二次元撮像素子38で撮影された眼底観察像をモニタ8に表示させる。制御部80は、観察像(前眼部像又は眼底観察像)がモニタ8に表示されている状態で、二次元撮像素子35で得られた撮影画像を観察像の表示範囲よりも小さな表示領域にサムネイル画像として表示させる。表示領域の詳細な説明は後述する。また、制御部80は二次元撮像素子65で撮像された前眼部画像からアライメント指標を検出処理し、二次元撮像素子38で撮像された眼底画像からフォーカス指標を検出処理する。
また、制御部80には入力手段として、各種のスイッチを持つスイッチ部90と、タッチパネル8aとが接続されている。 スイッチ部90には、初期状態で眼底の中央位置を撮影する眼底撮影モードと、被検者眼の前眼部を撮影する前眼部撮影モード等の各種撮影モードを設定するための撮影モードスイッチ91と、眼底撮影モードが設定された状態で被検者眼に対する固視標の呈示パターンを設定するための固視位置入力手段である固視標呈示スイッチ92、光源14のからの撮影光量を増減させる光量調節手段である光量調節スイッチ93等、各種測定情報を設定するためのスイッチが配置されている。
また、制御部80には記憶手段としてのメモリ85が接続されている。メモリ85には二次元撮像素子35で撮影された撮影画像と共に、入力手段であるスイッチ部90又はタッチパネル8aの操作で予め入力された被検者のID情報と、撮影眼に関する左右眼情報、固視標の呈示位置の情報、光源14の撮影光量の情報、撮影日時等の測定情報とが関連付けられて複数記憶される。制御部80はID情報に基づいて、メモリ85に記憶されている撮影画像からID情報に対応する撮影画像を選択的に読み出して、サムネイル画像としてモニタ8に表示させる。又は、制御部80はモニタ8に表示されている被検者眼(観察中の被検者眼)に関するID情報と測定情報とが合致する撮影画像をメモリ85から選択的に呼び出して、サムネイル画像としてモニタ8に表示させる。
他にも、制御部80には、XYZ駆動部6、移動機構49、挿脱機構39、挿脱機構66、パルスモータ73、回転ノブ4a、撮影スイッチ4b、各光源等が接続されている。
次に、以上のような構成を備える眼底カメラの動作を説明する。ここでは、右眼の眼底の中央位置(後極部中心)を撮影する場合を説明する。
検者は測定に際して被検者の顔を顔支持ユニット5により支持し、被検者の右眼を撮影するため、ジョイスティック4の操作で撮影部3を被検者に対して右側に移動させる。このとき、撮影部3がスイッチ9を越えて右側に移動されることによって、スイッチ9から入力信号が入力され、制御部80は測定眼が右眼であると判定する。
次に検者はスイッチ部90の操作で測定情報を入力する。撮影モードスイッチ91により眼底撮影モードが選択された初期状態では、固視標の呈示位置は自動的に中央位置に設定される。制御部80は、中央位置に開口穴を持つ遮光板71を光源74の前に配置させ、固視標の呈示位置を右眼の略中央位置となるように設定する。なお、測定情報の入力はタッチパネル8a上のアイコン110の選択により表示される図示を略す入力画面の操作で行う事もできる。
次に、検者は入力手段により被検者のID情報(識別情報)を入力する。入力手段としてはタッチパネル8の他、外部接続されたテンキーによるID情報入力、バーコードリーダでID情報が記録されたバーコードを読み込む方法などがある。
画像生成手段である制御部80は、入力されたID情報とメモリ85に予め記憶されている撮影画像に付されたID情報とを照合する。入力されたID情報と同一のID情報を有する撮影画像がある場合は、制御部80は、該当する撮影画像の縮小画像(履歴サムネイル画像)生成し、前眼部像とともにモニタ8上に表示させる(図3参照)。
なお、撮影画像は画像圧縮処理が施されて、所定の形式(例えば、JPEGフォーマット)でメモリ85に記録されている。制御部80はこの撮影画像の画素情報を縮小させて解像度の小さな(低い)履歴サムネイル画像を生成している。
固視標呈示光学系70で誘導された被検者眼が二次元撮像素子65で撮影されると、前眼部像Fがモニタ8に表示される。そして、指標像Ma〜Mdが検出されると、自動アライメントが可能になる。制御部80は、指標像Ma,Mbの中間位置を角膜頂点位置とし、予め撮像素子65上に設定されているアライメント基準位置に対する指標像Ma,Mbによって求められる角膜頂点位置のアライメント状態(変位量)を検出する。そして制御部80は、検出結果に基づいて撮影部3が所定のアライメント許容範囲内に位置するようにXY方向のアライメントを行う。また、制御部80は無限遠光による指標像Ma,Mbの間隔と、有限遠光による指標像Mc,Mdの間隔とを比較することにより、Z方向のアライメント状態を検出して撮影部3のZ方向のアライメントを行う。
また、図3に示すように、モニタ8の中央(画面中央)には、制御部80によってレチクルMと撮影可能な最小瞳孔径を表す円形マークPとが電子的に形成されている。また、モニタ8上の左側にはサムネイル画像を表示するための表示領域100が用意されている(サムネイル画像の表示領域100は観察像の表示範囲よりも小さい)。表示領域100は、モニタ8に表示されている観察像の一部分に重畳されていてもよいし、表示領域100と観察像の表示領域とが画面上、区分けされていてもよい。表示制御手段である制御部80は、現在観察中の被検者のID情報と測定情報(例えば、左右眼情報等)に該当する過去の撮影画像をメモリ85から呼び出し、呼び出した撮影画像に対応する履歴サムネイル画像を表示領域100に並べて表示させる。なお、本実施形態では5つの履歴サムネイル画像101〜105を表示させるものとしている。(該当する眼底画像が無い場合には、履歴サムネイル画像は表示されない)。
該当する撮影画像が表示可能数よりも多く抽出された場合は、測定情報として記録されている撮影日時に基づき、撮影日時が新しい順から履歴サムネイル画像が表示されるようにする。
なお、ここでは、表示領域100がモニタ8上の左側に用意されているが、表示領域100は、被検者眼Eと装置本体3とのアライメントがされた状態で、二次元撮像素子65で撮影された被検者眼の瞼及び瞳孔(輝点)に重ならないように、モニタ8の画面上の左右または上下側の位置に用意されれば良い。
なお、表示領域100はモニタ8の全体の表示領域の1/2以下であることが好ましい。これにより、検者は観察画像を確認しやすい状態で、サムネイル画像の確認ができる。また、表示領域100には、比較のために履歴サムネイル画像と後述する撮影サムネイル画像の少なくとも2つのサムネイル画像が表示されれば良く、その為、サムネイル画像のサイズはモニタ8の全体の表示領域の1/4以下のサイズであることが好ましい。
XYZ方向のアライメント状態が所定のアライメント完了の条件を満足していれば、制御部80はモニタ8の表示を前眼部像から眼底像に自動的に切換える。モニタ8の前眼部像と眼底画像との表示の切換えは、スイッチ部90のスイッチ操作でも可能である。
図4(a)に、二次元撮像素子38で撮像された眼底像(眼底の観察像)がモニタ8に表示された例を示す。眼底照明光学系10の光路に挿入されたレバー45によって観察光束が遮光されることによって撮像素子38上に遮光領域145が表示され、遮光領域の先端(光軸上)に、眼底に投影されたフォーカス指標像S1,S2が形成される。なお、現在の固視標の呈示位置を検者に対して報知するためのグラフィック表示やLED点灯を設けるようにしてもよい。検者はこの眼底画像を見ながら眼底像のフレア等を確認し、所望する状態で撮影できるように、さらにジョイスティック4の操作にてアライメント状態を微調整する。眼底像が表示されているモニタ8上の左側には、前述同様に表示領域100に履歴サムネイル101〜105が表示される。
被検者眼Eと撮影部3とのアライメントが完了すると、制御部80は二次元撮像素子38で撮像された眼底画像からフォーカス指標S1、S2を検出し、検出結果に基づいてフォーカシングレンズ32、及びフォーカス指標投影光学系を光軸方向に移動させフォーカス調整を行う。眼底撮影は、アライメント、及びフォーカスの調整の完了後、撮影スイッチ4bからのトリガ信号、または自動的に行われる。
制御部80は、撮影光源14を発光させて眼底を可視光により照明する。また、制御部80は挿脱機構66の駆動により、回転軸24aを中心として、前眼部観察光学系60から遠ざかるようにダイクロイックミラー24を回動させる。
ところで、眼底からの反射光による光束は、対物レンズ25側から絞り31に向けて収束される。本実施形態ではダイクロイックミラー24は、前側端部に回転軸24aを持ち絞り31側(後側)を振る構成としているため、ダイクロイックミラー24を光路(反射光の光束)から退避させた際に、ダイクロイックミラーの跳ね返りが生じていても反射光に重なることがほとんどない。このため、ミラーの跳ね返りを考慮する必要なく撮影用のフラッシュ光を照射することができ、ミラーの写りこみを抑制しつつ、タイミングよく撮影を行うことが可能となる。なお、跳ね上げミラー34付近における反射光の光束径は、ダイクロイックミラー24付近の反射光の光束径に比べ小さくなっているため、退避方向によらず跳ね返りによる写りこみは生じ難い。
挿脱機構66の駆動によりダイクロイックミラー24が、挿脱機構39の駆動により跳ね上げミラー34がそれぞれ瞬間的に光軸L1上から退避され、センサ27にてダイクロイックミラー24の退避、及び図示なきセンサにて跳ね上げミラー34の退避が検知されると、制御部80は撮影光源14を点灯させ、フラッシュ光を被検眼Eに向けて照射させる。眼底からの反射光は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33を経て二次元撮像素子35に結像する。撮影終了後はダイクロイックミラー24及び撥ね上げミラー34は光軸L1上に戻される。
制御部80は、二次元撮像素子35の撮影により得られた撮影画像を縮小させて解像度が低い縮小画像(以下、撮影サムネイル画像120を生成し、表示領域100に表示させる。これにより、表示領域100に表示されていた履歴サムネイル画像は表示位置が1つずつ移動される。このとき、履歴サムネイル画像105は表示領域100上に表示されなくなる。そこで、表示領域の表示位置を上下にスクロールさせる図示を略すアイコンを設けるようにしても良い。
また、制御部80は撮影サムネイル画像120を生成すると同時に、撮影画像に画像圧縮処理を施し、タッチパネル8a又はスイッチ部90により設定された測定情報と共に、メモリ85に記憶させる。
生成された撮影サムネイル画像120の容量が小さいので、撮影の直後に表示領域100に遅滞なく表示される。また、撮影サムネイル画像120は、撮影の失敗、フレアの有無、眼底での撮影位置が十分に分かる程度のサイズで表示される。その為、検者は撮影サムネイル画像120と履歴サムネイル画像との比較から、撮影画像の可否を直ぐに判断することができる。
撮影の失敗等で撮影画像を消去する場合は、選択手段であるタッチパネル8a(又はスイッチ部90)の所定の操作で、表示領域100に表示された複数のサムネイル画像のうち少なくとも一つが選択される。消去手段である制御部80は、選択されたサムネイル画像に対応する撮影画像をメモリ85から消去する。また、撮影によりモニタ8の表示が(眼底観察像から眼底撮影像へと)切換らないため、検者は直ぐに再撮影など次の動作に移ることができる。
以上のように、モニタ8上に眼底観察像(又は前眼部像)と撮影サムネイル画像120が表示されることで、検者は直ぐに撮影画像の可否を確認できるようになり、次の動作にスムーズに移ることができるようになる。
上記では、ID情報が一致する履歴サムネイル画像が表示領域100に表示される場合を説明したが、ID情報と測定情報(左右眼情報,固視標の表示位置情報、光源14の輝度レベル情報等)の組合せで、撮影画像に基づく履歴サムネイル画像が抽出されると便利である。
例えば、左右眼情報を利用する場合は、撮影部3が被検者眼に対して左右に移動され、スイッチ9から左右眼情報が入力されると、制御部80はID情報と左右眼情報の両方が一致する撮影画像をメモリ85から抽出して、該当する履歴サムネイル画像を表示領域100に表示させる。つまり、図4(b)に示すように、スイッチ9からの入力信号が左眼のときは左眼の履歴サムネイル画像のみを表示領域100に表示させ、右眼のときは右眼の履歴サムネイル画像のみを表示領域100に表示させる。
又は、図4(c)に示すように、制御部80はID情報が一致する履歴サムネイル画像を抽出して表示領域100に表示させた状態で、スイッチ9からの左右眼情報に連動させて、左右眼情報と一致する履歴サムネイル画像の表示位置の枠色を変える。
このように、測定情報を利用して履歴サムネイル画像を表示させることで、検者はより簡単に適切な撮影画像が得られたかの判断をできるようになる。
光源14の輝度レベル情報を利用する場合は、制御部80はID情報と光量調節スイッチ93の操作による光源14の輝度レベル情報の両方が一致する撮影画像をメモリ85から抽出して、履歴サムネイル画像を表示領域100に表示させる。このようにすると、検者は過去の撮影画像の輝度レベルに簡単に合わせることができるようになる。
また、上記では、表示領域100に5つのサムネイル画像が表示される場合を示したが、表示領域100に用意されるサムネイル画像の設定は変更可能であると都合が良い。例えば、タッチパネル8a又はスイッチ部90に用意された表示領域変更手段の操作により表示領域100に表示されるサムネイル画像の数又はサイズを変更可能にする。このようにすると、検者の使い勝手が良くなる。
また、表示領域100に表示された撮影(履歴)サムネイル画像を利用して、撮影画像の単独表示、2画面表示をすることもできる。例えば、タッチパネル8a(スイッチ部90)の操作によりモニタ8の表示を単独表示又は2画面表示に設定しておく。眼底撮影がされて表示領域100に撮影サムネイル画像120が表示されると、検者はその撮影サムネイル画像120を確認して拡大表示するかを判断する。
単独表示が設定されている場合において、撮影サムネイル画像120がタッチパネル8a(又はスイッチ部90)により選択されると、メモリ85から該当する撮影画像が呼び出されてモニタ8に拡大表示される。図5(a)に単独表示の例を示す。
2画面表示が設定されている場合は、検者は比較したい2つの撮影(履歴)サムネイル画像をタッチパネル8aの操作で選択する。制御部80は選択されたサムネイル画像の撮影画像を呼び出して、モニタ8の左側と右側とに分けて撮影画像を拡大表示させる。図5(b)は2画面表示の例である。なお2画面表示では、撮影(履歴)サムネイル画像に重ねて、撮影日時などの測定情報が表示されると、検者が被検者眼の経過観察をする上で便利である。
このように撮影(履歴)サムネイル画像を利用して、簡単に撮影画像の確認又は複数の撮影画像の比較等が出来るようになる。
また、上記では眼底撮影モードで眼底の中央を撮影する場合を説明したが、眼底撮影モードが設定された状態で固視灯呈示スイッチ92により固視標の呈示パターン(呈示位置、呈示箇所の数)を設定することで、眼底の周辺(眼底の異なる位置)での撮影ができる。周辺撮影では、固視標呈示スイッチ92で設定された固視標の呈示位置(呈示箇所の数)に合わせて、表示領域100に表示されるサムネイル画像の数が設定されるようにしても良い。固視灯の呈示箇所の数と表示位置の数とを一致させることで、周辺撮影時に撮影のし忘れが防止される。また、撮影箇所を一目で把握できるようになる。
また、周辺撮影において、ID情報と固視標の呈示位置情報とが一致する撮影画像データがある場合には、該当する履歴サムネイル画像が表示位置に表示されると良い。このようにすると、検者は固視灯の呈示位置が適切であるかの確認ができるようになる。
また、撮影モードスイッチ91により前眼部撮影モードに設定された場合には、制御部80は表示領域100にメモリ85に記憶されている被検者眼の前眼部像の撮影(履歴)サムネイル画像を表示させる。これにより、前眼部像の撮影をする場合にも履歴サムネイル画像との比較により前眼部像が適切に撮影されたかの確認ができるようになる。
なお、前眼部撮影モードが選択されると、制御部80は、補正レンズ55を光軸L1上に配置させる。補正レンズ55としては眼底観察時に眼底にある焦点を被検者眼Eの角膜上に位置させるパワーを有する凸レンズが使用され、これにより眼底観察・撮影光学系30を利用して、前眼部撮影が行われる。
以上説明したように、本発明によれば、観察像(前眼部像、眼底像など)と同一の画面上に撮影画像に基づき生成されたサムネイル画像が表示されることで、撮影画像を直ぐに確認でき、撮影画像の管理も容易となる。そして、一連の撮影動作を円滑に行う事ができるようになり、使い勝手の良い装置を提供できることが可能になる。
また、以上のような構成は、撮影時に、観察光学系(前眼部観察光学系又は眼底観察光学系)と撮影光学系との光路を区分けする眼科撮影装置に適用する事が出来る。