以下図面を参照して、本開示における典型的な実施形態を説明する。
<1.第一実施形態>
先ず、図1を用いて本開示における第一実施形態の眼科装置を説明する。
<1−1.構成>
図1は本実施形態に係る第一実施形態の眼科装置100Aの外観構成図である。眼科装置100Aは、基台1と、移動台2と、撮像部3と、顔支持部5を有する。眼科装置100Aは被検者眼Eの眼底情報を取得する装置とされている。本実施形態においては、撮像部3を用いて、眼底情報として被検者眼Eの眼底像を取得する。移動台2は、基台1に対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離)方向(Z方向)に移動可能とされている。撮像部3(装置本体)は、移動台2に対して3次元方向に移動可能に設けられる。撮像部3は、後述する各種光学系を収納する。顔支持部5は、被検者眼Eの顔を支持するために基台1に固設されている。
眼科装置100Aは自動移動機構と手動移動機構とを有する。自動移動機構は電動機を有する。自動移動機構によって、被検者眼Eに対して撮像部3を相対移動できる。より具体的には、撮像部3はXYZ駆動部6を有する。XYZ駆動部6は移動台2に設けられる。XYZ駆動部6と移動台2とによって、撮像部3は、被検者眼Eに対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(Z方向)に移動される。手動移動機構は操作手段を有し、操作手段としてジョイスティック4(操作部材)を有する。ジョイスティック4の操作によって、被検者眼Eに対して撮像部3を相対的に移動させる。より具体的には、基台1上で移動台2をXZ方向に摺動させる図示無き摺動機構が設けられている。ジョイスティック4が操作されると、移動台2が摺動機構によって基台1上をXZ方向に摺動される。また、ジョイスティック4は回転ノブ4aと撮影スイッチ4bを有する。検者が回転ノブ4aを回転操作することにより、XYZ駆動部6がY駆動し撮像部3が上下方向に移動される。また、検者が撮影スイッチ4bを押すと、被検者眼Eの眼底ERの眼底像の取得が行われる。また、眼科装置100Aは表示手段としてモニタ8を有する。モニタ8は撮像部3の検者側に配置される。モニタ8には、眼底観察像、眼底撮影像、及び前眼部観察像等が表示される。なお、移動機構はこれに限るものでない。例えば、XYZ駆動部6のみで被検者眼Eに対する撮像部3の移動を行ってもよい。
図2は、撮像部3に収納される光学系及び制御系を説明する説明図である。図2において、撮像部3は、第1投光光学系10、第2投光光学系20、撮像光学系30、前眼部観察光学系40、及び図示なき固視標呈示光学系、を有する。なお、第1投光光学系10は光軸LAを有し、第2投光光学系20は光軸LBを有し、撮像光学系30は光軸LCを有し、前眼部観察光学系40は光軸LDを有するものとする。なお、図2の各々の光軸上にマル印(O印)で記した箇所は、対物レンズ31を介して被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置を指す。また、図2の各々の光軸上にバツ印(X印)で記した箇所は、対物レンズ31を介して被検者眼Eの眼底ERと共役となる位置を指す。マル印及びバツ印の意味は、後述する第二実施形態の眼科装置100Bの撮像部に収納される光学系についても同様である(図4参照)。なお、本開示における「共役」は、必ずしも厳密な共役のみを意味するものではない。例えば、被検者眼Eの構造(例えば、角膜頂点から瞳孔面までの距離、水晶体の厚さ)の違いによって共役関係が僅かにずれる可能性もある。このように、僅かにずれた共役関係も、本開示における「共役」に含まれる。
<1−2.撮像光学系>
本実施形態の撮像光学系30は、被検者眼Eの眼底を撮像するための光学系とされている。本実施形態の撮像光学系30は、眼底観察光学系80と眼底撮影光学系90を有する。本実施形態の眼底観察光学系80は、被検者眼Eの眼底ERを観察するために、赤外光(略無色)が投光された被検者眼Eの眼底ERを撮像するための光学系とされている。赤外光を投光するのは、被検者眼Eに対する撮像部3の位置合わせ等を行う観察時に、観察光によって被検者眼の瞳孔EPが縮瞳される現象を抑制するためである。本実施形態の眼底撮影光学系90は、被検者眼Eの眼底ERを撮影するために、可視光(昼白色又は青緑色)が投光された被検者眼Eの眼底ERを撮像するための光学系とされている。なお、眼底観察光学系80は光軸LC1を有し、眼底撮影光学系90は光軸LC2を有する。眼底撮影光学系90は、対物レンズ31、第1光路合成部32A、板ガラス33、第2光路合成部34、撮像絞り部35A、フォーカシングレンズ36、結像レンズ37、光路合成部38、視野絞り91、ミラー92、リレーレンズ93、バリアフィルタ部94、及び撮像素子95を有する。眼底観察光学系80の光軸LC1と眼底撮影光学系90の光軸LC2とは対物レンズ31から光路合成部38にかけて同軸とされる。換言するなら、眼底観察光学系80と眼底撮影光学系90とは、光路合成部38で合成され、対物レンズ31から光路合成部38の区間の光路を共用する。眼底観察光学系80は、眼底撮影光学系90と共用される対物レンズ31から光路合成部38までの部材のほか、ミラー81、リレーレンズ82、及び撮像素子83を有する。
第1光路合成部32Aは、第1投光光学系10と撮像光学系30の光路を合成する部材とされている。換言するなら、第1光路合成部32Aは、光軸LAと光軸LCとを同軸にする。第1光路合成部32Aとしてダイクロイックミラー、ダイクロイックプリズム等を用いてもよい。なお、本実施形態においては、対物レンズ31と,対物レンズ31を介した被検者眼Eの瞳孔EPの第1結像位置(図2において撮像絞り部35Aの箇所のマル印)と,の間に第1光路合成部32Aが設けられている。なお、第1結像位置とは、対物レンズ31を介して被検者眼Eの各部位と初めて共役となる位置を指す。前述した第1結像位置となる位置を、第1共役位置と呼ぶ場合もある。本実施形態では対物レンズ31と第2光路合成部34との間に第1光路合成部32Aが設けられている。本実施形態の第1光路合成部32Aはダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)とされており、ダイクロイックミラーは、撮像光学系30の光軸LCに対して斜設されている。
第1光路合成部32Aは、アライメント指標部250が発する光(赤外光)に対応した中心波長950nmの光、及び第1投光光学系10が発する光に対応した中心波長490nmの光を反射する。また、第1光路合成部32Aは、第2投光光学系20が発する光に対応した700〜880nm帯の波長域の光、および第1投光光学系10が投光した自発励起光によって生じた眼底からの自発蛍光を通過する特性を有する。つまり、本実施形態の第1光路合成部32Aは、中心波長490nm及び中心波長950nmの光を反射し、700〜880nm帯の波長域の光を通過する。なお、アライメント指標部250は撮像部3の外装部に設けられており、対物レンズ31を介さずに被検者眼Eに投光される。板ガラス33は、撮像光学系30に第1光路合成部32Aを挿入することで生じる光軸LCの軸ズレを戻す軸ズレ補償手段とされている。本実施形態の板ガラス33は、第1光路合成部32Aの厚さに対応している。本実施形態の板ガラス33は、観察及び撮影に用いる波長域の光を通過する。なお、第1光路合成部32Aは中心波長490nmの光を反射するが、中心波長からプラス側又はマイナス側に離れる波長値における反射特性は、適宜設定すればよい。後述する第二実施形態における第1光路合成部32B、及び第4光路合成部89も同様に、中心波長からプラス側又はマイナス側に離れる波長値における反射特性を、適宜設定すればよい。
本実施形態の第1光路合成部32A及び板ガラス33は、撮像光学系30に挿脱可能とされている。より詳しくは、撮像光学系30が有する挿脱手段270によって、第1光路合成部32A及び板ガラス33を撮像光学系30に対して挿脱可能としている。なお、挿脱手段270は、ソレノイドとカム等により構成してもよい。制御部200の制御によって、第1光路合成部32A及び板ガラス33は、観察時及び自発蛍光撮影時に光路に挿入され、カラー撮影時は光路から脱出される。第2光路合成部34は、対物レンズ31と撮像絞り部35Aとの間に設けられている。本実施形態の第2光路合成部34は、孔あきミラーであり、孔あきミラーは、撮像光学系30の光軸LCに対して斜設して設けられている。第2光路合成部34は、撮像光学系30と第2投光光学系20の光路を合成する合成部材とされている。換言するなら、第2光路合成部34は、光軸LBと光軸LCとを同軸にする。本実施形態の第2光路合成部34は、撮像光学系30の光束を、穴あきミラーの中央に設けられている開口部で通過させる。また、開口部の周囲に設けられるミラー箇所で、光軸LCに向かってくる第2投光光学系20からの光を、対物レンズ31の方向へ反射させる。
撮像絞り部35Aは、第2光路合成部34とフォーカシングレンズ36との間に配置される。撮像絞り部35Aは、撮像光学系30の光軸LC上、かつ、対物レンズ31を介して被検者眼Eの瞳孔EPの第1結像位置(共役位置)に設けられている。撮像絞り部35Aは、撮像光学系30の光束を抑制する開口絞りとして作用する。なお、被検者眼Eの構造には個人差があるため、被検者眼Eとの共役位置は、眼の構造の統計データ、公知のグルストランド模型眼のデータ等を用いて規定してもよい。フォーカシングレンズ36は、被検者眼Eの眼底ERと,撮像素子95(撮像素子83)と,を共役の位置関係にするために用いられる。フォーカシングレンズ36は、駆動手段271によって、撮像光学系30の光軸LCの軸方向に移動可能とされている。フォーカシングレンズ36が軸方向に移動することで、被検者眼Eの視度(ディオプター値)によらず、被検者眼Eの眼底ERと撮像素子95(撮像素子83)とを共役の位置関係にできる。
光路合成部38は、眼底観察光学系80と眼底撮影光学系90の光路とを合成する合成部材とされている。換言するなら、光路合成部38は、光軸LC1と光軸LC2とを同軸にする。本実施形態の眼科装置100Aの光路合成部38はミラーであり、挿脱手段272によって眼底撮影光学系90の光路に対して挿脱可能とされている。なお、挿脱手段272は、ソレノイドとカム等により構成してもよい。また、光路合成部38はミラーに限るものでなく、ダイクロイックミラー又はハーフミラーをはじめとする他の光路合成部材を用いてもよい。バリアフィルタ部94はリレーレンズ93と撮像素子95との間に設けられる。本実施形態のバリアフィルタ部94は、被検者眼Eから対物レンズ31に入射する光から、自発蛍光を取り出して撮像素子95で受光するために用いられる。本実施形態のバリアフィルタ部94は、700〜850nm帯の波長域の光を通過し、700〜850nmを含めない波長域の光を減光又は遮光する特性を有している。バリアフィルタ部94の特性はこれに限るものでなく、撮像素子95で撮像する蛍光に対応した波長特性を設定すればよい。例えば、バリアフィルタ部94の特性は、被検者眼Eに投光する蛍光用励起光の波長に対応した波長特性を設定すればよい。また、本実施形態のバリアフィルタ部94は、挿脱手段273によって、撮像光学系30(眼底撮影光学系90)の光路に対して挿脱可能とされている。挿脱手段273として、ソレノイド等を用いてもよい。また、本実施形態の第1光路合成部32Aは700〜880nm帯の波長域の光を通過させるため、第1光路合成部32Aはバリアフィルタ部94と同等のフィルタ特性を有するといえる。したがって、バリアフィルタの作用を第1光路合成部32Aが備えることとして、バリアフィルタ(バリアフィルタ部94)を撮像光学系30に独立して配置しない構成としてもよい。
また、本実施形態のバリアフィルタ部94が配置される位置において、700〜850nm帯の波長域の光のみを通過させるバリアフィルタ部94と、400〜700nm帯の波長域の光のみを通過させる図示なきカラーフィルタとを、前述した挿脱手段273を用いて入れ替え可能な形態としてもよい。400〜700nm帯の波長域の光のみを透過させるバンドパスフィルタを用いることで、バンドパスフィルタ(及びバリアフィルタ部94)を用いない場合に対して、撮像素子95で色再現性を向上した被検者眼Eのカラー画像を取得できる。なお、バンドパスフィルタを投光光路(本実施形態においては第2投光光学系20)に挿脱可能に設けてもよい。撮像素子95は、撮像光学系30(眼底撮影光学系90)の基端に設けられる。本実施形態の撮像素子95は、被検者眼Eの自発蛍光撮影及び通常カラー撮影を行う受光手段(被検者眼Eからの光を受光する)として用いられる。撮像素子95は、被検者眼Eの眼底ERと共役となる位置に設けられる。撮像素子95は、可視光及び赤外光に感度を有する2次元撮像素子とされている。なお、本実施形態の撮像素子95は、撮像素子95で自発蛍光撮影と通常カラー撮影とを行うため、赤色、青色、緑色のカラーフィルタを受光部の直前にベイヤ配列で設けたカラーイメージセンサとされている。例えば、自発蛍光撮影(及び蛍光撮影)のみを行う場合、カラーフィルタを省いたモノクロイメージセンサを用いてもよい。
光路合成部38で眼底観察光学系80と眼底撮影光学系90との共用光路から分岐(合成)される眼底観察光学系80の基端には、撮像素子83が設けられる。本実施形態の撮像素子95は、被検者眼Eの眼底ERの観察を行う受光手段(被検者眼Eの眼底からの光を受光する)として用いられる。撮像素子95は、被検者眼Eの眼底ERと共役となる位置に設けられる。撮像素子95は、少なくとも赤外光に感度を有する2次元撮像素子とされる。本実施形態の撮像素子95はモノクロイメージセンサとされている。なお、撮像素子83及び前述した撮像素子95に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いてもよい。
<1−3.前眼部観察光学系>
本実施形態の前眼部観察光学系40は、被検者眼Eの前眼部を観察するために、被検者眼Eの前眼部を撮像するための光学系とされている。前眼部観察光学系40は、対物レンズ31、第1光路合成部32A、第3光路合成部11、フィールドレンズ41、リレーレンズ42、及び撮像素子43を有する。なお、前眼部観察光学系40と第1投光光学系10とは、第3光路合成部11で合成され、対物レンズ31から第3光路合成部11の区間の光路を共用している。換言するなら、第3光路合成部11は、光軸LAと光軸LDとを同軸とする。前眼部観察光学系40の基端に撮像素子43が設けられる。本実施形態の撮像素子43を含む前眼部観察光学系40は、撮像光学系30とは異なる手法で被検者眼Eの眼情報を取得する受光手段とされている。本実施形態の撮像素子43は、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置に設けられている。アライメント指標部250の光源から出射され、被検者眼Eの前眼部の位置で反射した光(中心波長950nm)は、対物レンズ31から入光した後に、第1光路合成部32A及び第3光路合成部11で反射して撮像素子43で受光される。したがって、撮像素子43で被検者眼Eの前眼部像が撮像される。撮像素子43は、少なくとも赤外光に感度を有する2次元撮像素子とされる。例えば、撮像素子43と撮像素子83とを同一特性の部材としてもよい。第3光路合成部11の説明は後述する。
<1−4.第1投光光学系>
本実施形態の第1投光光学系10は、被検者眼Eの自発蛍光眼底像を取得するために、被検者眼Eの眼底ERに自発蛍光励起光(青緑色)を投光するための光学系とされている。本実施形態の第1投光光学系10は、対物レンズ31、第1光路合成部32A、第3光路合成部11、第1光束制限部12、光束制限部13、及び第1光源14を有する。光束制限部13は被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置に設けられている。より詳しくは、光束制限部13は、対物レンズ31を介して被検者眼Eの瞳孔EPの第1結像位置に設けられている。光束制限部13は、孔が開いた板状の部材で形成されており、開口部13Aがリング形状(円環形状)とされる(図6(a)参照)。なお、図6(a)においては、第1光源14のLED(14A〜14D)を点線で示している。第1光源14については後述する。第1光源14のLEDから射出された光は、一部が遮光され、一部は光束制限部13の開口部を通過する(図6(b)参照)。なお、本実施形態においては軸対照とされているため、距離T1及び距離T2は他の開口部の方向についても同様である。なお、ガラス板にエッチング等の処理を行うことによって光束制限部13を形成してもよい。
また、本実施形態においては、光束制限部13と第1光源14とを組み合わせる態様としたが、これに限るものでは無い。例えば、光束制限部13を有する第1光源14を用いてもよい。図9は第1光源14の実施形態の変容例であり、本実施形態においては、第1光源14の射出開口の寸法を、前述した図6の実施形態に相当する構造としたものである。図9の実施形態においては、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置において、光軸LAからの距離T1及び射出開口部の距離T2が図6の実施形態と同じとされている。図9の実施形態の光源はLEDであり、距離T2以下の射出開口部を有するLEDを選定し、当該LEDの射出開口部の端部(光軸LA側)が、光軸LAから距離T1となるように支基14E(回路基板等)に配置したものとされる。したがって、図9に記した実施形態の第1光源14は、光束制限部13を備えている。図9の実施形態においては、LEDのフレーム又は開口支基が光束制限部13を形成している。なお、いわゆるレンズ付きLEDと呼ばれる、レンズ機能(光束変化手段)を含むLEDの放射角度特性によって、光束制限部13を含む第1光源14としてもよいことは言うまでもない。
なお、光束制限部13を含む第1光源14の配置位置は被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置に設けることに限らない。例えば、本実施形態の距離T1よりも長い距離T1Aとし、射出開口部の端部(射出側)を被検者眼Eの瞳孔EPよりも角膜EC側となる位置に配置させてもよい。つまり、被検者眼Eの瞳孔EPの位置で、投光光束(図3における光束PA及び光束PB)と撮像光束(図3における光束S)とが重ならないようにすればよい。なお、光束制限部13及び第1光源14、光束制限部13を含む第1光源14の実施形態は本実施形態に限るものでは無い。例えば、光軸LAから離れる方向に距離T2を長くしてもよい。但しこの場合、被検者眼Eの虹彩で遮光され易くなると考えられる。また、第1光源14の光源部に、射出開口が距離T2よりも小さくなるLEDを選定し、当該LEDを複数個用いて、マトリックス状,ハニカム状に並べてもよい。
第1光源14は第1投光光学系の基端に設けられている。本実施形態の第1光源14は、自発蛍光撮影を行うための励起光の光源とされる。本実施形態の第1光源は、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置と、被検者眼Eの角膜ECの頂点と共役となる位置との間に設けられている。本実施形態の第1光源はLED(Light Emitting Diode)であり、複数個のLED(14A〜14D)の各々を、第1投光光学系10の光軸LAから離間させて配置している(図5参照)。また、本実施形態の第1光源14は、複数個のLEDを第1投光光学系10の光軸LAを中心として円環状に配置させている。本実施形態の第1光源14は、複数個のLEDを第1投光光学系10の光軸LAを中心として軸対象に配置させている。本実施形態の第1光源は、中心波長が490nmとされるLEDを用いている。また、同一種類のLEDを4つ用いている。なお、第1光源14はLEDに限るものでは無い。例えば、クセノンフラッシュランプと光学フィルタとを組み合わせて設けてもよい。
光束制限部13と第1光路合成部32Aとの間に第1光束制限部12が設けられている。本実施形態の第1光束制限部12は、被検者眼Eの水晶体部で生じる可能性のある不要な光(反射光又は蛍光)を抑制する不要光抑制手段とされている。本実施形態の第1光束制限部12は被検者眼Eの水晶体ELの後端部(網膜側)と共役となる位置に設けられている。本実施形態の第1光束制限部12は、孔が開いた板状の部材で形成されており、開口部12Aがリング形状(円環形状)とされる(図7参照)。
本実施形態の第1光源14を射出した光は、光束制限部13、第1光束制限部12、第3光路合成部11、及び対物レンズ31を通過して、被検者眼Eに投光される。なお、第1光源14から射出されて第1光路合成部32Aに向かう光は、第1光路合成部32Aを構成するダイクロイックミラーの特性によって、対物レンズ31の方向に反射される。第1光源14を射出された光は、第1光路合成部32Aで反射されることで、第1投光光学系10の光軸LAと撮像光学系30の光軸LCとが同軸となって、被検者眼Eに投光される。なお、第1投光光学系10によって被検者眼Eに投光される光の波長(第1波長λ1)は中心波長490nmの光とされている。本実施形態の眼科装置100Aは、第1波長λ1の光を蛍光励起光として被検者眼Eに投光することで、被検者眼Eで生じた自発蛍光を撮像光学系30の撮像素子95で撮像する。なお、本実施形態の眼科装置100Aは、バリアフィルタ部94を通過する700〜850nm帯の波長域の光を被検者眼Eで生じた自発蛍光として撮像素子95で撮像する。つまり、第1光源14を用いた中心波長490nmの光を励起光として、バリアフィルタ部94を介して撮像素子95で被検者眼Eの眼底情報を取得する。第1光源を用いる場合には、被検者眼Eの眼底情報として自発蛍光像を取得する。
なお、第3光路合成部11は、第1光束制限部12と第1光路合成部32Aとの間に設けられている。つまり、被検者眼Eの水晶体後面EL1共役位置と眼底ER共役位置との間に設けられている。第3光路合成部11は、第1投光光学系の光軸LAに対して斜設されている。第3光路合成部11は、第1投光光学系10と前眼部観察光学系40の光路を合成する部材とされている。換言するなら、第3光路合成部11は、光軸LAと光軸LDとを同軸とする。本実施形態では、第3光路合成部11としてダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)を用いている。第3光路合成部11は、アライメント指標部250が発する光に対応した中心波長950nmの光を反射し、第1光源14が発する光に対応した中心波長490nmの光を通過する特性を有する。つまり、本実施形態の第3光路合成部11、中心波長950nmの光を反射し、中心波長490nm帯の波長域の光を通過する。第3光路合成部11の特性によって、第1光源14から第1光路合成部32Aに進む光は、第3光路合成部11を通過する。一方、対物レンズ31から入射し、第1光路合成部32Aから第3光路合成部11の方向に進む光は、第3光路合成部11で反射し、撮像素子43の方向へ進む。このように、本実施形態の眼科装置100Aは、撮像光学系30から分岐し、被検者眼Eの眼底ERへ投光する光路に、被検者眼Eの眼底ERとは異なる部位を撮像する撮像光学系が共用されている。したがって、撮像部3を簡素化することができる。
<1−5.第二投光光学系>
本実施形態の第2投光光学系20は、被検者眼Eの眼底ERの観察像及びカラー撮影像を取得するために、被検者眼Eの眼底ERに赤外光又は可視光(昼白色光)を投光するための光学系とされている。つまり、被検者眼Eの眼底情報を得るために、第1投光光学系が投光する光(第1波長の光)とは異なる第2波長の光を被検者眼Eへ投光する。第2投光光学系20は、観察照明光学系50、撮影照明光学系60、指標投影光学系70を有する。本実施形態の観察照明光学系50は、被検者眼Eの眼底ERに赤外光を投光するための光学系とされている。本実施形態の撮影照明光学系60は、被検者眼Eの眼底ERに可視光(昼白色光)を投光するための光学系とされている。本実施形態の指標投影光学系70は、被検者眼Eの眼底ERにフォーカシング用の指標を投影するための光学系とされている。フォーカシング用の指標(光)は赤外光とされている。観察照明光学系50は光軸LB1を有し、撮影照明光学系60は光軸LB2を有し、指標投影光学系70は光軸LB3を有する。
本実施形態の撮影照明光学系60は、対物レンズ31、第1光路合成部32A、板ガラス33、第2光路合成部34、第3光束制限部21、リレーレンズ22、黒点板23、フォーカス指標合成部24、リレーレンズ25、光束制限部26、第4光束制限部27、及び第2光源28を有する。本実施形態の撮影照明光学系60は、第1投光光学系とは異なる波長の光を投光して、被検者眼Eの通常カラー撮影を行うための投光手段とされる。撮影照明光学系60の基端に第2光源28が配置される。本実施形態の第2光源28は、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる第2結像位置と、角膜ECと共役となる第2結像位置との間に配置される。なお、第2結像位置(第2共役位置)とは、対物レンズ31とリレーレンズ(リレーレンズ22,リレーレンズ25)とを介して、被検者眼Eと2回目の共役となる位置である。本実施形態の第2光源28は、クセノンフラッシュランプを用いている。本実施形態のフラッシュランプは、管が円環状に曲げられており、第2光源28の点灯形状は円環状とされている。また、本実施形態のクセノンフラッシュランプは、発光部に透明な材料(硬質ガラス又は石英ガラス)を用いているため、後述する観察照明光学系の基端に設けられる光源52を射出した光は、第2光源28を通過(透光)する。なお、本実施形態の撮影照明光学系60は、第2光源28を用いて、少なくとも400〜700nm帯の波長域を含む光(第1波長λ1とは異なる第2波長λ2)を被検者眼Eに投光する。
第2光源28と光束制限部26との間に第4光束制限部27が配置される。第4光束制限部27は、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置に設けられる。本実施形態の第4光束制限部27は、被検者眼Eの眼内で生じる可能性のある不要な光(反射光又は蛍光)を抑制する不要光抑制手段とされている。第4光束制限部27は、孔が開いた板状の部材で形成されており、開口部がリング形状(円環形状)とされる。第4光束制限部27とリレーレンズ25との間に光束制限部26が配置される。光束制限部26は、対物レンズ31を介して被検者眼Eの水晶体ELの後端EL1(網膜側)と共役となる位置に設けられる。本実施形態の光束制限部26は、被検者眼Eの水晶体部で生じる可能性のある不要な光(反射光又は蛍光)を抑制する不要光抑制手段とされている。光束制限部26は、孔が開いた板状の部材で形成されており、開口部がリング形状(円環形状)とされる。リレーレンズ25は光束制限部26とフォーカス指標合成部24の間に位置される。第4光束制限部27を通過した光はリレーレンズ25によって略平行光となり、第2光路合成部34の方向に進む。
フォーカス指標合成部24は、リレーレンズ25と黒点板23との間に設けられる。フォーカス指標合成部24は、第2投光光学系20の光軸LBに対して斜設されている。フォーカス指標合成部24は、第2投光光学系20の軸外から第2投光光学系20の軸に向かうフォーカス指標(赤外光)を第2光路合成部の方向へと反射する。フォーカス指標合成部24は、指標投影光学系70の光路と第2投光光学系20の光路とを合成する。換言するなら、フォーカス指標合成部24は、光軸LB3と光軸LBとを同軸とする。なお、フォーカス指標合成部24は、図示なきアクチュエータ及び駆動機構によって、第2投光光学系20に挿脱可能とされている。また、フォーカス指標合成部24は、リレーレンズ25と黒点板23との間で第2投光光学系の光軸LBの方向に移動可能とされている。フォーカス指標合成部24は、撮像光学系30のフォーカシングレンズ36の軸方向移動と連動して、第2投光光学系の軸方向に移動する。なお、指標投影光学系70に設けられているフォーカス指標光(赤外光)の光源部とフォーカス指標合成部24とは1つのユニットで構成されている。したがって、フォーカス指標合成部24が軸方向に移動することで、対物レンズ31を介して被検者眼Eの眼底ERに投影されるフォーカス指標の投影位置(結像位置)が変わる。換言するなら、フォーカス指標合成部24が光軸方向に移動することで、撮像光学系30の光軸LCの光軸方向の異なる位置にフォーカス指標が投影される(例えば、特開昭55−96138号公報を参照)。
フォーカス指標合成部24とリレーレンズ22との間に黒点板23が設けられる。黒点板23はガラス板であり、ガラス板の表面の、第2投光光学系20の光軸LBが通過する位置に小丸黒点が形成されている。黒点板23は、第2投光光学系20が投光する光が対物レンズ31を通過する際に、対物レンズ31の表面又は内面で反射する光が撮像素子95に向かって進み、アーチファクトが撮影画像に写り込む現象を抑制する(例えば、特公昭47−44645号公報を参照)。なお、対物レンズ31をはじめとするレンズに励起光を投光(透光)しても蛍光が発生しないと考えられている。したがって、黒点板23は非蛍光撮影におけるアーチファクト(光学系の部材の反射による写り込み)の抑制に効くと考えられる。続けてリレーレンズ22を説明する。黒点板23と第3光束制限部21との間にリレーレンズ22が設けられる。リレーレンズ22は、リレーレンズ25で略平行光にされた光束(第4光束制限部を通過した投光光束)を、リレーレンズ22と第2光路合成部34との間に一度結像させる。第3光束制限部21は、リレーレンズ22と第2光路合成部34との間に設けられる。本実施形態の第3光束制限部21は、被検者眼Eの角膜ECの頂点と共役となる位置に設けられる。第3光束制限部21は、孔が開いた板状の部材で形成されており、開口部がリング形状(円環形状)とされる。なお、撮影照明光学系60の光軸LB1上に位置される第1光路合成部32Aは、第2光源を用いた撮影の際には、光軸LB1から脱出(退避)される。
続けて観察照明光学系50について説明する。観察照明光学系50の光軸LB1と撮影照明光学系60の光軸LB2とは同軸とされている。本実施形態の観察照明光学系50は、被検者眼Eの眼底ERに赤外光(第1波長λ1とは異なる第2波長λ2)を投光する。観察照明光学系50は、対物レンズ31から第2光源までの部材を撮影照明光学系60と共用する。差分箇所を説明する。観察照明光学系50の基端に光源52が設けられる。本実施形態の光源52は、ハロゲンランプとされている。本実施形態において、光源52は、少なくとも赤外光を射出すればよい。例えば、光源52を赤外LEDとしてもよい。光源52と第2光源58との間にコンデンサレンズ51が設けられる。コンデンサレンズ51は、光源52が射出する光を集光して第2光源の方向へと導く。なお、本実施形態のコンデンサレンズには赤外波長(赤外光成分)のみを通過させるコーティング処理がなされている。本実施形態においては、赤外波長として、700〜880nmの波長域の光を通過させる。第2光源の発光部は透明な材質で形成されているため、コンデンサレンズ51で集光される光は、第2光源を透過して第4光束制限部に進む。なお、第1光路合成部32Aは700〜880nm帯の波長帯の光を通過するため、観察照明光学系50の光軸LB2上に位置される第1光路合成部32Aは、第2光源を用いた観察の際には、光軸LB1に挿入されたままとされる。
以上説明したように、本実施形態の眼科装置100Bの撮影部3Aは、眼底観察、通常カラー撮影、自発蛍光撮影、及び前眼部観察を行う撮像手段を有する。眼底観察は、観察照明光学系50(第2投光光学系20)を用いて700〜880nm帯の波長域の光を被検者眼Eに投光し、眼底観察光学系80(撮像光学系30)を用いて700〜880nm帯の波長域の光を眼底観察像として取得する。また、通常カラー撮影は、撮影照明光学系60(第2投光光学系20)を用いて400〜700nm帯の波長域の光を被検者眼Eに投光し、眼底撮影光学系90(撮像光学系30)を用いて400〜700nm帯の波長域の光を眼底撮影像として取得する。また、自発蛍光撮影は、第1投光光学系10を用いて中心波長490nmの光を自発蛍光励起光として被検者眼Eに投光し、眼底撮影光学系90(撮像光学系30)を用いて700〜850nm帯の波長域の光を自発蛍光眼底像として取得する。なお前眼部観察は、アライメント指標部250の光源を用いて中心波長950nmの光を被検者眼Eに投光し、前眼部観察光学系40を用いて中心波長950nmの光を被検者眼Eの前眼部観察像として取得する。
<1−6.不要光除去について>
続けて、図3を用いて本実施形態による不要光(不要な部位からの蛍光及び反射光)の除去手法について説明する。図3は、被検者眼Eの前眼部及び眼内における、第1投光光学系10による投光光束(光束PA及び光束PB)と、撮像光学系30の撮像光束(光束S)の状態を説明するための概念図である。なお、図3(a)は、第1投光光学系10に第1光束制限部12を設けた場合であり、図3(b)は、第1投光光学系10に第1光束制限部12を設けない場合である。像Aは光束制限部13の像である。像Bは第1光束制限部12の像である。像C1及び像C2は第1光源14の像である。像Dは撮像絞り部35の像である。なお、図3において、第1光源14の箇所を、離間し、かつ幅を有する面光源として像C1及び像C2としている。既に説明したように、第1光路合成部32Aによって、第1投光光学系10の光軸LAと撮像光学系30の光軸LCとは同軸とされる。したがって、同軸上に像A、像B、像C(像C1及び像C2)、像Dが配置される。実線は撮像光学系30で撮像に用いる撮像光束(光束S)を示している。図3で示すように、周辺部(ER1,ER2)を含めて眼底ERを発した光は、撮像絞り部35A(像D)で光束が絞られ、撮像絞り部35A(像D)を通過した光束は、光束が広がりつつ対物レンズ31へ入射される。
点線は第1投光光学系10で眼底ERへの投光に用いる投光光束(光束PA,光束PB)を示している。図3に示すように、第1光源14の像となる像C(像C1及び像C2)の位置で一旦集光された後、第1光源14の光は、像Cの位置から眼底ERの方向へと進む。像Cの位置から眼底に向かう第1光源14の光束は、光束制限部13(像A)によって光束の広がりが制限されている。また、図3(a)においては、像Cの位置から眼底に向かう第1光源14の光束は、光束制限部13(像A)で光束の広がりが制限されるのに加えて、第1光束制限部12(像B)によっても光束の広がりが制限される。図3(a)と図3(b)とを対比すると、被検者眼Eの水晶体ELの内部で、投光光束(光束PA,光束PB)と撮像光束(光束S)とが交わる領域Uが、第1光束制限部12(像B)の有無によって変化する。より詳しくは、図3(b)においては、投光光束(光束PB)と撮像光束(光束S)とが交わる領域Uが生じている。
被検者眼Eへ励起光を投光した際に、被検者眼Eで自発蛍光が発生する部位は、眼底ERに限るものでは無いとされている。本実施形態によれば、撮像光学系30の撮像絞り部35(像D)と第1投光光学系10の光束制限部13(像A)とによって、被検者眼Eの眼内における投光光束(光束PA,光束PB)と撮像光束(光束S)との交わりを抑制する。また、本実施形態では、被検者眼Eの水晶体EL内で自発蛍光が発生する可能性があることに着目し、第1光束制限部12(像B)によって、水晶体EL部で発生する自発蛍光が眼底ERの自発蛍光像に重畳する不都合を抑制する。より詳しくは、図3(b)における領域Uの箇所を低減させる。これによって、眼底ER以外の部位で生じる不要な蛍光又は反射を抑制し、好適な眼底像(眼底蛍光情報)を得る。また、本実施形態では、被検者眼Eの瞳孔EPから角膜ECの頂点までの間に第1光源14(像C)を設けることで、第1光源14(像C)を発した光を効率よく光束制限部13(像A)を通過させることができ、被検者眼Eの眼底に効率よく投光できる。
なお、水晶体EL部で発生する自発蛍光の度合いは、被検者眼Eの眼内の構造によって変わると考えられる。例えば、水晶体ELが厚いと、水晶体EL部で発生する自発蛍光が重畳し易いと考えられる。また、水晶体EL部の混濁度合いによっても自発蛍光の重畳度合いが変化すると考えられる。また、使用する自発蛍光励起光の波長によっても水晶体EL部で発生する自発蛍光の度合いが変化すると考えられる。更には、撮像光学系30の画角(眼底ERから自発蛍光を取得する網膜の範囲)によっても、水晶体EL部で生じる自発蛍光の写り込みの度合いが変化すると考えられる。したがって、第1投光光学系10に第1光束制限部12及び光束制限部13を備えなくてもよい場合も考えられる。また、第1光束制限部12と光束制限部13の少なくともいずれかを第1投光光学系10の光路に挿脱可能にしてもよい。また、更には、第1光束制限部12と光束制限部13の少なくともいずれかをアイリス絞り等の光束変化手段としてもよい。また、本実施形態においては、第1光束制限部12を被検者眼Eの水晶体後面EL1と共役となる位置に設けたが、これに限るものでは無い。被検者眼Eの瞳孔EPと眼底ERとの間に設ければよい。つまり、第1光束制限部12によって、撮像光学系30の光軸LCから離間した位置から光軸LCの方向に向かう投光光束を制限すればよい。
なお、本実施形態の眼科装置100Aは、被検者眼Eの第1結像位置に第1光源14を設けることで、自発蛍光に用いる第1光源14の光を効率よく眼底ERに導いている。例えば、第2投光光学系20は、リレーレンズ(リレーレンズ22及びリレーレンズ25)でリレーした光路に、対物レンズ31の内面反射を抑制するための黒点板23を設けている。したがって、第2投光光学系20の第2光源28は瞳孔EPの第2結像位置よりも先に設けられている。第2投光光学系20の第2光源28を発した光は数々のレンズ群及び数々の光束制限部を通過する必要があり、減光される。一方、第1投光光学系10の第1光源14から発せられる光は、例えば、前述した黒点板23もリレーレンズも通過する必要が無い。したがって、第1光源14から発せられる光は、効率よく被検者眼Eの眼底ERに投光できる。
また、本実施形態の眼科装置100Aは、眼底ERに投光する投光光学系を複数種備えている。第1投光光学系を、光量を要し易い(非蛍光撮影時に被検者眼Eへ投光する光量よりも大きい光量の投光が必要とされ易い)蛍光撮影用の投光光学系としている。また、第2投光光学系20を、多機能な投光光学系としている。例えば、第2投光光学系に、非蛍光撮影において不具合となり易い対物レンズ31の表面及び内面の反射を抑制する黒点板23を備えている。また、第2投光光学系に、被検者眼Eの眼底ERへフォーカシング用の専用指標を投影する指標投影光学系70を備えている。また、更には、第2投光光学系に、被検者眼Eの角膜ECで反射する不要な反射光を抑制するための第3光束制限部21を備えている。また、更には、第2投光光学系に、被検者眼Eの眼底ERを赤外光で観察する眼底観察光学系80を備えている。このように、複数の投光光路から種類の異なる光の入れ方(光束)で被検者眼Eの眼底ERに投光することで、例えば、蛍光撮影を行うために複雑又は高額な光源が必要となることを抑制できる。したがって、簡素な構成であっても好適な眼底像を取得できる。
非蛍光撮影と蛍光撮影との組み合わせを含む複数の波長を投光し、各々投光波長に対応した被検者眼Eの眼底ERを撮像する場合、各々投光波長によって眼底ERの反射光量(蛍光量)が異なる。また、各々投光波長によって、眼底ER以外の部位で発生する不要な光(反射光又は蛍光)は異なる。更には、対物レンズ31を共用して、本実施形態に記載したフォーカシング用の指標投影及び前眼部撮像を搭載することで、投光光学系の光路が複雑となる。したがって、被検者眼Eの眼底ERへ投光するための投光光学系の開口数(Numerical Aperture,NA)は、対物レンズ31を共用する各々の光学的機能の光学部材の配置又は各光学的機能を構成する光学部材を組み立てる際に調整するための調整性を配慮した部品配置(レンズのパワー配分)によって左右される場合がある。本実施形態の眼科装置100Aは、被検者眼Eの眼底ERに投光する投光光学系を複数設けることで、1つの投光光学系で被検者眼Eの眼底ERに投光する場合に対して、投光光学系の開口数(NA)の自由度が増す。したがって、被検者眼Eに投光する波長によって好適な開口数(NA)の投光光学系を用いて投光可能となり、光源から射出された光を効率よく被検者眼Eへ投光できる。例えば、1つの投光光学系のみを用いる場合に対して、光源の選択肢が増える。より詳しくは、本実施形態の第1投光光学系10のNAは、第2投光光学系20のNAよりも大きい数値とされている。したがって、第1投光光学系10に用いる光源の種類の選択肢が増すと共に、光源自体を低容量化できる。したがって、非蛍光撮影が可能な投光光学系のNAに縛られず、蛍光撮影が可能な安価な眼科装置100Aを提供できる。特に、蛍光励起光の光源としてLEDを用いる場合、本実施形態の第1投光光学系10はNAが大きいため、LEDの選択肢が増えて好適とされる。また、例えば、第2投光光学系から自発蛍光励起光を投光する場合、励起光生成用のフィルタ、及びフィルタ挿脱用の駆動機構を第2投光光学系に備える必要がある。一方、本実施形態においては、第1投光光学系10の第1光源14はLEDであり、第1光源14自体が蛍光励起光の波長で点灯する。つまり、自発蛍光励起光を投光する投光光学系に、自発蛍光励起光を生成するためのフィルタ及び駆動機構を設ける必要がない。したがって、故障し難く、安価な眼科装置100Aを提供できる。
<1−7.制御系>
撮像素子43、撮像素子83、撮像素子95、挿脱手段270、駆動手段271、挿脱手段272、挿脱手段273は、及び制御部200に接続されている。制御部200は、撮像素子43が撮像した前眼部観察像、撮像素子83が撮像した眼底観察像、及び撮像素子95が撮像した眼底撮影像をモニタ8に表示する。即ち、制御部200は、撮像画像の表示制御手段となる。制御部200には他に、XYZ駆動部6、移動機構210、挿脱機構220、回転ノブ4a、撮影スイッチ4b、各種のスイッチを持つスイッチ部230、記憶手段240としてのメモリ、及び各光源等が接続されている。
<1−8.使用方法>
以上のような構成を備える眼科装置100Aの使用方法について説明する。先ずは自発蛍光撮影について説明する。電源が投入されると、制御部200は、固視標の呈示位置、等の初期化動作を行う。なお、固視標の呈示位置は、検者がスイッチ部230に設けられた所定の視線方向変更スイッチを操作することで変更可能である。初期段階では、撮像光学系30の光路に第1光路合成部32Aと光路合成部38が挿入され、第2投光光学系20の光路にフォーカス指標合成部24が挿入されている。
初期化動作が完了すると、制御部200は、アライメント指標部250の光源を点灯する。被検者眼Eの前眼部に赤外光が投光される。制御部200は、被検者眼Eの前眼部を撮像した撮像素子43の出力信号に基づいてモニタ8に前眼部観察像を表示する。検者は、スイッチ部230に設けられた撮影モード選択スイッチを操作して、自発蛍光撮影モードを選択する。制御部200は、検者が自発蛍光撮影モードを選択したことを検出すると、バリアフィルタ部94を撮像光学系30(眼底撮影光学系90)の光路に挿入する。
検者は、被検者の顔を顔支持部5により支持させる。検者は、モニタ8に表示される前眼部観察像を観察しながら、ジョイスティック4を操作して撮像部3を左右上下に移動させ、被検者眼Eと撮像部3の位置合わせを行う。検者は、スイッチ部230に設けられている図示なき切り換えスイッチを押す。制御部200は、切り換えスイッチが押されたことを検出すると、モニタ8への表示に用いる信号を、撮像素子43の出力信号から撮像素子83の出力信号へと切り換える。この制御に伴い、モニタ8に表示される画像は、撮像素子43の出力信号に基づく前眼部観察像から、撮像素子83の出力信号に基づく眼底観察像へと変更される。また、制御部200は、光源52Aを点灯する。検者は、眼底観察像に重畳するフォーカス指標を確認し、スイッチ部に設けられた所定のフォーカシングノブを操作してフォーカス合わせを行う。制御部200はスイッチ部の操作を検出して結像レンズ37及びフォーカス指標合成部を軸方向に駆動する。検者がフォーカス合わせを行うと、被検者眼Eの眼底ERと撮像素子95(撮像素子83)とが共役の位置関係になる。
続けて、検者は撮影スイッチ4bを押す。制御部200は、撮影スイッチ4bが押されたことを検出すると撮影開始信号を出力する。制御部200は、光路合成部38及びフォーカス指標合成部24を撮像光学系30の光路から外すと共に、アライメント指標部250の光源及び光源52Aを消灯する。続けて制御部200は、第1光源14を点灯させて被検者眼Eの眼底ERに自発蛍光用の励起光を投光する。眼底ER等で生じた自発蛍光は、対物レンズ31、バリアフィルタ部94等の撮像光学系30の光学部品を介して撮像素子95で受光される。制御部200は、撮像素子95の出力信号に基づいてモニタ8に自発蛍光眼底像を表示する。また、制御部200は、撮像素子95の出力信号に基づいて生成した自発蛍光眼底像の画像データを記憶手段240に記憶する。
続けて通常カラー撮影について説明する。なお通常カラー撮影とは、一般的な眼底撮像として広く用いられている眼底カラー撮影であり、400〜700nm帯の波長域の光を投光し、該波長域の反射光を撮影する可視光撮影をさす。前述した初期動作が完了すると、制御部200は、アライメント指標部250の光源を点灯する。被検者眼Eには前眼部照明光(赤外光)が投光される。制御部200は、被検者眼Eの前眼部を撮像した撮像素子43の出力信号に基づいてモニタ8に前眼部観察像を表示する。検者は、スイッチ部230に設けられた撮影モード選択スイッチを操作して、通常カラー撮影モードを選択する。なお、通常カラー撮影モードが選択されたため、バリアフィルタ部94は撮像光学系30(眼底撮影光学系90)の光路外へと退避されたままとなる。
検者は、被検者の顔を顔支持部5により支持させる。検者は、モニタ8に表示される前眼部観察像を観察しながら、ジョイスティック4を操作して撮像部3を左右上下に移動させ、被検者眼Eと撮像部3の位置合わせを行う。検者は、スイッチ部230に設けられている図示なき切り換えスイッチを押す。制御部200は、切り換えスイッチが押されたことを検出すると、モニタ8への表示に用いる信号を、撮像素子43の出力信号から撮像素子83の出力信号へと切り換える。この制御に伴い、モニタ8に表示される画像は、撮像素子43の出力信号に基づく前眼部観察像から、撮像素子83の出力信号に基づく眼底観察像へと変更される。また、制御部200は、光源52Aを点灯する。検者は、眼底観察像に重畳するフォーカス指標を確認し、スイッチ部に設けられた所定のフォーカシングノブを操作してフォーカス合わせを行う。制御部200はスイッチ部の操作を検出して結像レンズ37及びフォーカス指標合成部を軸方向に駆動する。検者がフォーカス合わせを行うと、被検者眼Eの眼底ERと撮像素子95(撮像素子83)とが共役の位置関係になる。
続けて、検者は撮影スイッチ4bを押す。制御部200は、撮影スイッチ4bが押されたことを検出すると撮影開始信号を出力する。制御部200は、第1光路合成部32A、光路合成部38、及びフォーカス指標合成部24を撮像光学系30の光路から外す(退避する)と共に、アライメント指標部250の光源及び光源52Aを消灯する。続けて制御部200は、第2光源28を点灯させて被検者眼Eの眼底ERに広帯域の可視光(400〜700nm帯の波長域)を投光する。通常の可視光が眼底ERで反射した光は、対物レンズ31等の撮像光学系30の光学部品を介して撮像素子95で受光される。制御部200は、撮像素子95の出力信号に基づいてモニタ8に通常カラー眼底像を表示する。また、制御部200は、撮像素子95の出力信号に基づいて生成した通常カラー眼底像の画像データを記憶手段240に記憶する。
<2.第二実施形態>
続けて、図4を用いて第二実施形態の眼科装置を説明する。
<2−1.構成>
なお、第一実施形態の眼科装置100Aと第二実施形態の眼科装置100Bとは撮像部が異なるのみである。したがって、第二実施形態の眼科装置100Bの撮像部3B(光学系及び制御系)を説明する。なお、第一実施形態として開示した眼科装置100Aの図2と同一の符号の箇所は、同一の部材を示すものとして、説明を省略する。第二実施形態の眼科装置100Bの光学系は、第1投光光学系10、第2投光光学系20、撮像光学系30、前眼部観察光学系40、固視標呈示光学系、を有する。
<2−2.撮像光学系>
本実施形態の撮像光学系30は、被検者眼Eの眼底を撮像するための光学系とされている。なお、本実施形態の撮像光学系30は、赤外光(略無色)が投光された被検者眼Eの眼底ERの観察する光学系と、可視光(青緑色)が投光された被検者眼Eの眼底ERの撮影をするための光学系とを兼用されている。本実施形態の撮像光学系30は、対物レンズ31、第4光路合成部89、第1光路合成部32B、撮像絞り部35B、フォーカシングレンズ36、結像レンズ37、光路合成部87、バリアフィルタ部94、及び撮像素子95を有する。光路合成部87は、撮像光学系30と固視標呈示光学系の光路を合成する。換言するなら、光路合成部87は、光軸LCと固視標呈示光学系の光軸とを同軸とする。本実施形態の光路合成部87はダイクロイックプリズムを用いる。ダイクロイックプリズムは、結像レンズ37からバリアフィルタ部94に向けて進む光に対して、500〜650nm帯の波長域を含まない光を通過させる。また、ダイクロイックプリズムは、撮像光学系30の光軸LCと交差する方向からダイクロイックプリズムに進む500〜650nm帯の波長域の光を対物レンズ31の方向へ反射する。つまり、つまり、本実施形態の光路合成部87は、500〜650nm帯の波長域の光を反射し、500〜650nm帯の波長域以外の光を通過する。なお、固視標呈示光学系の基端に固視標呈示部86が設けられている。本実施形態の固視標呈示部86はLCD(Liquid Crystal Display)とされている。LCDによって、固視標呈示部86はドットマトリクス状に点灯可能な呈示面を有する。LCDに含まれるバックライトによって、固視標呈示部86から500〜650nm帯の波長域の光が射出される。固視標呈示部86から射出された光(呈示像)は、光路合成部87で反射された後、結像レンズ37、対物レンズ31等を介して被検者眼Eの眼底ERに投影される。
なお、本実施形態の撮像光学系30は、光路合成部87、バリアフィルタ部94、撮像素子95、及び固視標呈示部86を1つのモジュール260として構成している。前述した第一実施形態の眼科装置100Aは、フォーカシングレンズ36を撮像光学系30の光軸LCの軸方向に動かすことで、被検者眼Eの眼底ERに対するフォーカシングを行う。一方、本実施形態の眼科装置100Bは、フォーカシングレンズ36を撮像光学系30の光軸LCの軸方向には動かさず、駆動手段274によってモジュール260を撮像光学系30の光軸LCの軸方向に動かすことで、被検者眼Eの眼底ERに対するフォーカシングを行う。つまり、被検者眼Eに固視標を提示する固視標呈示部86と、被検者眼Eの眼底ERを撮像する撮像素子95とを1つの部材に固定配置して1つのモジュール260とし、モジュール260を撮像光学系30の他の部材に対して相対変位させることで、被検者眼Eの眼底ERに対するフォーカシングを行う。本実施形態のフォーカシング手法は、第一実施形態に示したフォーカシングレンズ36を動かす手法に対して、モジュール260を動かす移動距離が短くとも、幅広い被検者眼Eの視度(ディオプター値)に対応できる。したがって、本実施形態の撮像光学系30(撮像部3B)を小型化できる。
また、本実施形態においては、撮像素子95を、光源52Bを用いる観察(赤外光)と、第1光源14を用いる撮影(可視光)とで共用する。より詳しくは、後述する第2投光光学系20によって投光され、被検者眼Eで反射した赤外光(中心波長850nm)を、バリアフィルタ部94(700〜850nm帯通過)を介して撮像素子95で撮像する。また、後述する第1投光光学系10によって被検者眼Eで発生した蛍光(自発蛍光)を、バリアフィルタ部94(700〜850nm帯通過)を介して撮像素子95で撮像する。したがって、1つの撮像素子95で被検者眼Eの眼底ERの観察及び撮影を行うものとしている。これによって、撮像部3Bを簡素化でき、安価な眼科装置100Bを提供できる。
<2−3.第1投光光学系>
本実施形態の第1投光光学系10は、被検者眼Eの自発蛍光眼底像を取得するために、被検者眼Eの眼底ERに自発蛍光励起光(青緑色)を投光するための光学系とされている。本実施形態の第1投光光学系10は、対物レンズ31、第4光路合成部89、第1光路合成部32B、第1光束制限部12、光束制限部13、及び第1光源14を有する。第1光路合成部32Bはダイクロイックミラーであり、第1光路合成部32Bは、第1投光光学系10が発する光に対応した中心波長490nmの光を反射し、第2投光光学系20が発する光に対応した中心波長850nmの光、及び固視標呈示部86が発する500〜650nmの波長域の光を通過する特性を有する。したがって、本実施形態の第1光路合成部32Bは、中心波長490nmの光を反射し、500〜880nm帯の波長域の光を通過する特性とされている。なお、光束制限部13は被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる第1結像位置に設けられている。光束制限部13と第1光路合成部32Bとの間に第1光束制限部12が設けられている。本実施形態では、第1光束制限部12は、被検者眼Eの水晶体後面EL1と共役となる位置に設けられている。第1光路合成部32Bは、対物レンズ31と被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる第一結像位置との間に設けられている。第1光源14を射出した光は、光束制限部13と第1光束制限部12の開口部を通過した後、第1光路合成部32Bで対物レンズ31の方向に反射され、第4光路合成部89と対物レンズ31を通過して被検者眼Eに投光される。なお、本実施形態のバリアフィルタ部94の作用を、第1光路合成部32Bに持たせてもよい。
<2−4.第2投光光学系>
本実施形態の第2投光光学系20は、被検者眼Eの眼底ERの観察像を取得するために、被検者眼Eの眼底ERに赤外光(略無色)を投光するための光学系とされている。本実施形態の第2投光光学系20は、対物レンズ31、第4光路合成部89、第1光路合成部32B、撮像絞り部35B、及び光源52Bを有する。第2投光光学系20の光軸LBは、撮像光学系30の光軸LCと同軸とされている。本実施形態の光源52Bは赤外光を射出する光源を用いている。光源52Bの光源は、複数個のLEDで構成されている。各々のLEDは光軸(光軸LB,光軸LC)から離れた位置に配置される。また、本実施形態の光源52Bは、中心波長850nmの光を射出する光源とされている。また、本実施形態の撮像絞り部35Bは板状の部材とされており、板350と第1孔351と第2孔352とを有する(図8参照)。板350は支基である。第1孔351の孔の中心は撮像光学系30の光軸LCと同位置とされており、撮像光学系30の撮像光束を通過させる。第2孔352は第2投光光学系20の投光光束を通過させる。本実施形態の第2孔352は複数の孔(352A〜352F)で構成されており、光源52Bを構成するLEDの数に対応した6つの孔が設けられている。板350の中心に第1孔351が設けられ、第1孔351の周辺に第2孔352が設けられている。なお、第1孔351と第2孔352とは板350によって分離されており、光源52Bを射出した光は第2孔352の開口部のみを通過する構造とされている。また、対物レンズ31の方向から撮像絞り部35Bに進んでくる撮像光学系30の撮像光束は、第1孔351のみ撮像素子95に達する構造とされている。
例えば、撮像絞り部35Bで投光光束(第2投光光学系20)と撮像光束(撮像光学系30)とを各々好適に通過させるために、撮像絞り部35Bに光軸(光軸LB,光軸LC)方向に延びるバリア(障壁)を形成してもよい。本実施形態の撮像絞り部35Bは、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置に設けられている。光源52Bを射出した光(赤外光)は、撮像絞り部35Bの第2孔352(投光手段部)を通過した後、第1光路合成部32B、第4光路合成部89、対物レンズ31の順で通過して被検者眼Eに投光される。なお、被検者眼Eで反射した光源52Bの光は、対物レンズ31、第4光路合成部89、第1光路合成部32B、撮像絞り部35Bの第1孔351(撮像手段部)の順で通過した後、撮像光学系30のその他の光学部材を介して撮像素子95で撮像される。本実施形態では、撮像絞り部35Bを第2投光光学系20と撮像光学系30とで兼用することで、簡素な構成ながらも、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置で、投光光束と撮像光束とを好適に分離できる。したがって、不要な反射光を抑制した好適な眼底像を取得できる。
<2−5.前眼部観察光学系>
続けて本実施形態の前眼部観察光学系40について説明する。本実施形態の前眼部観察光学系40は、被検者眼Eの前眼部を観察するために、被検者眼Eの前眼部を撮像するための光学系とされている。前眼部観察光学系40は、対物レンズ31、第4光路合成部89、ミラー45、フィールドレンズ41、リレーレンズ42、及び撮像素子43を有する。第4光路合成部89は、前眼部観察光学系40と撮像光学系30とを合成する部材とされている、換言するなら、第4光路合成部89は、光軸LDと光軸LCとを同軸とする。第4光路合成部89は、対物レンズ31と第1光路合成部32Bとの間に設けられている。本実施形態の第4光路合成部89はダイクロイックミラーであり、アライメント指標部250の光源の波長に対応した中心波長950nmの波長を反射し、第1光源14の光に対応した中心波長490nmの光、自発蛍光と光源52Bの光に対応した700〜850nm帯の波長域の光、及び固視標呈示部86が発する光に対応した500〜650nm帯の波長域の光を通過させる特性を有している。したがって、本実施形態の第4光路合成部89は、中心波長950nmの光を反射し、490〜850nm帯の波長域の光を通過する特性とされている。したがって、アライメント指標部250の光源を発した光は、被検者眼Eの前眼部で反射した後、対物レンズ31、第4光路合成部89、ミラー45、フィールドレンズ41、リレーレンズ42の順で介して撮像素子43で撮像される。したがって、赤外光で照明された被検者眼Eの前眼部像を撮像素子43で取得する。
以上説明したように、本実施形態の眼科装置100Bの撮像部3Bは、眼底観察、自発蛍光撮影、及び前眼部観察を行う撮像手段を有する。眼底観察は、第2投光光学系20を用いて中心波長850nm帯の波長域の光を被検者眼Eに投光し、撮像光学系30を用いて中心波長880nm帯の波長域の光を眼底観察像として取得する。また、自発蛍光撮影は、第1投光光学系10を用いて中心波長490nmの光を自発蛍光励起光として被検者眼Eに投光し、撮像光学系30を用いて700〜850nm帯の波長域の光を自発蛍光眼底像として取得する。なお、前眼部観察は、アライメント指標部250の光源を用いて中心波長950nmの光を被検者眼Eに投光し、前眼部観察光学系40を用いて中心波長950nmの光を被検者眼Eの前眼部観察像として取得する。
<2−6.不要光除去について>
続けて本実施形態の不要光の除去手法について説明する。第一実施形態の眼科装置100Aと本実施形態の眼科装置100Bとでは被検者眼Eと同じ共役位置に第1光源14が設けられている。光束制限部13、第1光束制限部12、撮像絞り部35(35A,35B)の共役位置の関係も、第一実施形態と第二実施形態とで同様とされている。したがって、第一実施形態で説明したように、被検者眼Eの眼内で生じる不要光を好適に除去することができる(図3参照)。また、本実施形態においても、第1投光光学系10の光路とは異なる方向から第2投光光学系20にて被検者眼Eに光を投光して撮像光学系30で被検者眼Eの眼底ERを撮像する。したがって、第1投光光学系10とは異なる光学特性で被検者眼Eの眼底ERを撮像できる。第二実施形態においては、第2投光光学系20の不要光の除去機構を簡素化したことで、眼科装置100Bの撮像部3をより簡素化できる。例えば、撮像部3を小型化でき、眼科装置100Bを安価に提供できる。第二実施形態においては、第2投光光学系20と撮像光学系30とを用いて被検者眼Eの眼底を赤外光で観察し、第1投光光学系10と撮像光学系30とを用いて被検者眼Eの眼底を蛍光撮影する。第1投光光学系10とは異なる位置で撮像光学系30から分岐した前眼部観察光学系40で被検者眼Eの前眼部像を観察できる。したがって、被検者眼Eに対するアライメントを好適に行うことができ、簡素な光源であっても、不要光の低減された被検者眼Eの眼底ERの蛍光像を好適に取得できる。
なお、本実施形態においては、バリアフィルタ部94の特性を700〜850nm帯通過としているが、これに限るものでは無い。例えば、自発蛍光の撮像時に、アライメント指標部250(中心波長950nm)の光源及び光源52B(中心波長850nm)を消灯する制御とするのであるならば、バリアフィルタ部94の特性を、700nm以上の光を通過するロングパスフィルターの特性としてもよい。また、本実施形態においては、第1光源14に、中心波長490nmで点灯する光源を用いているがこれに限るものでは無い。例えば中心波長475nmの光源を用いてもよい。また、例えば、第1投光光学系10を用いて500〜600nm帯の波長域の光を自発蛍光励起光として投光し、撮像光学系30を用いて650−750nmの光を自発蛍光として撮像してもよい。
<2−7.使用方法>
以上のような構成を備える眼底カメラの使用方法について説明する。先ずは自発蛍光撮影について説明する。電源が投入されると、制御部200は、固視標の呈示位置、等の初期化動作を行う。なお、固視標の呈示位置は、検者がスイッチ部230に設けられた所定の視線方向変更スイッチを操作することで変更可能である。
初期化動作が完了すると、制御部200は、アライメント指標部250の光源を点灯する。被検者眼Eの前眼部に赤外光が投光される。制御部200は、被検者眼Eの前眼部を撮像した撮像素子43の出力信号に基づいてモニタ8に前眼部観察像を表示する。検者は、被検者の顔を顔支持部5により支持させる。検者は、モニタ8に表示される前眼部観察像を観察しながら、ジョイスティック4を操作して撮像部3を左右上下に移動させ、被検者眼Eと撮像部3の位置合わせを行う。検者は、スイッチ部230に設けられている図示なき切り換えスイッチを押す。制御部200は、切り換えスイッチが押されたことを検出すると、モニタ8への表示に用いる信号を、撮像素子43の出力信号から撮像素子83の出力信号へと切り換える。この制御に伴い、モニタ8に表示される画像は、撮像素子43の出力信号に基づく前眼部観察像から、撮像素子83の出力信号に基づく眼底観察像へと変更される。また、制御部200は、光源52Bを点灯する。
検者は、モニタ8に表示される眼底観察像(赤外観察像)のピント具合(合焦具合)を観察し、スイッチ部に設けられた所定のフォーカシングノブを操作してフォーカス合わせを行う。制御部200はスイッチ部の操作を検出してモジュール260を軸方向に駆動する。検者がフォーカス合わせを行うと、被検者眼Eの眼底ERと撮像素子95とが共役の位置関係になる。続けて、検者は撮影スイッチ4bを押す。制御部200は、撮影スイッチ4bが押されたことを検出すると撮影開始信号を出力する。制御部200は、前眼部観察照明及び光源52Bを消灯する。続けて制御部200は、第1光源14を点灯させて被検者眼Eの眼底ERに自発蛍光用の励起光を投光する。眼底ERで生じた自発蛍光は、対物レンズ31、バリアフィルタ部94等の撮像光学系30の光学部品を介して撮像素子95で受光される。制御部200は、撮像素子95の出力信号に基づいてモニタ8に自発蛍光眼底像を表示する。また、制御部200は、撮像素子95の出力信号に基づいて生成した自発蛍光眼底像の画像データを記憶手段240に記憶する。
<3.作用及び効果>
本実施形態の眼科装置100は、被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる位置を通過する眼底ERからの光束を制限する撮像絞り部35Aを、対物レンズ31と撮像素子95との間に配置する。また、対物レンズ31と撮像絞り部35Aとを介して被検者眼Eの眼底像を撮像素子95で撮像する撮像光学系30を備える。更に、第1光源14を有して、第1光源が出射する第1の波長(波長λ1)の光であり、かつ被検者眼Eの瞳孔EPを通過する光束が制限された光を自発蛍光励起光として、対物レンズ31を介して被検者眼Eに投光する第1投光光学系10を備える。ここで、撮像光学系30と第1投光光学系10とで少なくとも一部の光路を共用するための第1光路合成部32Aとを備えて、撮像光学系30の対物レンズ31と被検者眼Eの瞳孔EPと共役となる共役位置の間に第1光路合成部32Aを設ける態様とされる。かかる態様によって、第1光源14の光を効率よく眼底ERに投光すると共に、不要光(つまり、不要な部位からの蛍光及び反射光)の影響が低減された好適な眼底像を取得できる。一例として、大光量が必要とされる自発蛍光の撮影においても、光源を簡素な構成とすることができる。また、被検者眼Eからの光が撮像絞り部35Aによって制限される作用と、第1投光光学系10の光が瞳孔EPを通過する際に制限される作用との相乗効果によって、被検者眼Eの眼内で生じる不要な部位からの蛍光及び反射光を好適に抑制できる。
また、本実施形態の眼科装置100は、第2光源28を有して、第2光源28が発した光を用いて第1の波長(波長λ1)とは異なる第2の波長(波長λ2)の光で被検者眼Eの眼底に投光する第2投光光学系20を備える。ここで、第2投光光学系20は、第1投光光学系10とは異なる方向から、第1光路合成部32Aによって撮像光学系30と第1投光光学系10とで少なくとも一部の光路が共用される共用光路に向けて進み、第2光源28の光を共用光路と対物レンズ31とを介して被検者眼Eの眼底ERに投光する態様とされる。かかる態様によって、第1の波長による撮像とは異なる投光光学系の特性を用いて、第2の波長を被検者眼Eに投光することによって眼底像を好適に撮像することができる。一例として、第2の波長に赤外光を用いることによって、被検者を不快にさせることなく、被検者眼Eに対する位置合わせを速やかに行うことができる。また、開口数(NA)が異なる投光光学系を用いて被検者眼Eの眼底を撮像できるため、光源を簡素な構成とすることができ、安価な装置を提供できる。
また、本実施形態の眼科装置100は、撮像光学系30と第2投光光学系20との少なくとも一部の光路を共用するための第2光路合成部34であって、対物レンズ31を介して被検者眼Eの瞳孔と共役となる位置に設けられる第2光路合成部34を備える。ここで、第2投光光学系20は、第2光路合成部34と第2光源28との間に設けられ、第2光源28が発した光の被検者眼Eの角膜ECを透過する光束を制限する第3光束制限部21を備える態様とされる。かかる態様によって、第1の波長とは異なる第2の波長の光を各々異なる光学系を用いて投光しても、被検者眼Eの眼内で生じる不要な蛍光及び反射光が低減された眼底像を得ることができる。一例として、第2の波長に通常のカラー眼底撮影を行う帯域の広い可視光(例えば400〜700nm)を用いることとしても、不要な反射光が生じ易いカラー眼底像を好適に取得できる
また、本実施形態の眼科装置100は、第2投光光学系20の第3光束制限部21と第2光源28との間に設けられ、第2光源28が発した光であって被検者眼Eの瞳孔EPを通過する光束を制限する第4光束制限部27を備える態様とされる。かかる態様によって、第2投光光学系20は、被検者眼Eの角膜ECと瞳孔EPとの各々共役位置に置かれた光束制限部を介して第2光源28の光を被検者眼Eの眼底ERへと投光するため、自発蛍光を撮影するため第1の波長とは異なる第2波長の光であっても、被検者眼Eの眼内で生じる不要な蛍光及び反射光が低減された眼底像を得ることができる。また、第2光源を第4光束制限部27よりも遠ざけた位置に配置させたことで生まれる第3光束制限部21と第2光源28との間の光路に、例えば、対物レンズ31で生じる不要な反射を低減する黒点板23を配置することができ、不要光の低減された好適な眼底像を得ることができる。
また、本実施形態の眼科装置100の撮像光学系30は、対物レンズ31と被検者眼Eの水晶体後面EL1と共役となる共役位置との間に第1光路合成部32Aを設けている。また、第1投光光学系10は、第1光源14と第1光路合成部32Aとの間に設けられ、第1光源14が発した光の光束を制限する第1光束制限部12を備える態様とされる。かかる態様によって、第1投光光学系10の瞳孔EPと共役となる位置よりも眼底ERと共役となる位置側に第1光源の光の光束を制限する光束制限部を配置し易くなる。したがって、簡素な構成であっても、第1光源14の光を効率よく被検者眼Eの眼底ERに投光できると共に、被検者眼Eの眼底以外の部位で生じる不要な蛍光及び反射光を好適に抑制できる。
また、本実施形態の眼科装置100の撮像光学系30は、第1投光光学系10によって被検者眼Eの眼底ERで発生した自発蛍光を撮像素子95で撮像するためのバリアフィルタ部94であって、撮像絞り部35Aと撮像素子95との間にバリアフィルタ部94)を備える態様とされる。かかる態様によって、一例として、第1光路合成部32Aを安価に製造でき、安価な眼科装置100を提供できる。また、対物レンズ31から撮像絞り部35Aの間に複雑な構成を要することなく、安価な眼科装置を提供できる。
また、本実施形態の眼科装置100の第1光路合成部32Aを、第1投光光学系10によって被検者眼Eの眼底ERで発生した自発蛍光を撮像素子95で撮像するためのバリアフィルタとしての光学特性を備える態様としてもよい。かかる態様によって、例えば、撮像光学系30に第1光路合成部32Aを挿脱可能な構成とする場合に対して、第1光路合成部32Aを撮像光学系30の光路に挿入するだけで好適な自発蛍光像を取得することができる。複雑な構造を要することなく安価な眼科装置を提供できる。また、可動箇所を少なくすることができ、故障しにくい眼科装置を提供できる。
また、本実施形態の眼科装置100は、第1光路合成部32Aと第1光源14との間に第3光路合成部11を設ける。また、第3光路合成部11によって第1投光光学系10から分岐した光路に設けられた受光手段で、被検者眼Eの眼底ERとは異なる部位の画像を取得する態様とされる。かかる態様によって、例えば、被検者眼Eの前眼部像を取得することで、眼底像を取得するためのアライメント操作が容易になる。したがって、簡単な操作で第1光源14を用いて好適な蛍光眼底像を取得できる。
また、本実施形態の眼科装置100は、対物レンズ31と第1光路合成部32Aとの間に第4光路合成部89を設ける。また、第4光路合成部89によって撮像光学系30から分岐した光路に設けられた受光手段で、被検者眼Eの眼底ERとは異なる部位の画像を取得する態様とされる。かかる態様によって、例えば、被検者眼Eの前眼部像を取得することで、眼底像を取得するためのアライメント操作が容易になる。したがって、簡単な操作で第1光源14を用いて好適な蛍光眼底像を取得できる。
なお、本実施形態の眼科装置100は、第1光束制限部12と,対物レンズ31を介して被検者眼Eの角膜ECと共役になる位置と,の間に第1光源14を配置する態様とされる。かかる態様によって、第1光源の光を効率よく被検者眼の眼底へ投光できる。一例として、簡素な光源にでき、安価な眼科装置を提供できる。
なお、本実施形態においては、前眼部観察光学系40で被検者眼Eの眼底ERとは異なる部位(前眼部)を撮像する構成としているが、これに限るものでは無い。前眼部観察光学系40の替わり光干渉の技術を用いた網膜断層画像を取得する光学系を用いてもよい。なお、前眼部の断層画像を取得してもよい。この場合、光干渉に用いる光源の波長に対応させて、第3光路合成部11及び第1光路合成部32等の光路合成部材の特性を適宜変更することは言うまでもない。かかる形態とすることで、簡素な構成であっても、断層画像を含む好適な眼底像を取得できる眼科装置を提供できる。また、本実施形態の撮像部3のみの形態とし、即ち、手持ち型の眼科装置としてもよい。本実施形態の光学系によって、光源を発した光を効率よく被検者眼Eの眼底に導くことで、簡素な構成であっても好適な眼底像を取得できる手持ち型の眼科装置を提供できる。
また、本実施形態においては第1投光光学系10を自発蛍光撮影用の励起光を投光するための光学系としたが、第1投光光学系10で自発蛍光励起光以外の光を投光してもよい。例えばFAG蛍光撮影用の励起光の投光に用いてもよい。もしくは、ICG蛍光撮影用の励起光の投光に用いてもよい。また、第1投光光学系10を、レッドフリー撮影等の特定波長によるフィルタ撮影、又は、400〜700nm帯の光を投光する通常カラー撮影用の照明光の投光に用いてもよい。また、第1光源14の箇所に複数種類の光源を並べ、第1光源14の位置から複数波長の光を選択的に射出可能にしてもよい。例えば、波長の異なるLEDを交互に並べてもよい。また、本実施形態の第1光束制限部12及び光束制限部13において、光束を制限する開口箇所に分光特性を備えてもよい。光束制限部に分光特性を設けることで、第1光源14の射出波長に対応させて、光束制限領域を変化させることができる。例えば、エッチング処理にて分光透過率の異なる領域を形成させればよい。かかる形態とすることで、第1光束制限部12及び光束制限部13等の光束制限部を挿脱又は開口径を可変させることなく、投光する波長に応じて投光する光束の径を変化できる。したがって、簡素な構成であっても好適な眼底像を取得できる眼科装置を提供できる。
また、本実施形態においては第1投光光学系10から自発蛍光用の励起光を投光し、第2投光光学系20から赤外光又は通常カラー撮影光を投光する態様としたが、第2投光光学系20からFAG蛍光撮影用又はICG蛍光撮影用の励起光を投光してもよい。異なる投光方法の投光光学系を用いることで、簡素な構成であっても好適な眼底像を取得できる眼科装置を提供できる。例えば、光量を要する自発蛍光の投光光学系を、本実施形態の第1投光光学系10の態様とすることで、眼科装置の光源を簡素な構成とできる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。