JP5116921B2 - 配線板用熱硬化性樹脂組成物とその成形体および多層プリント配線板 - Google Patents

配線板用熱硬化性樹脂組成物とその成形体および多層プリント配線板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に導体回路層と絶縁層とを交互にビルドアップした多層プリント配線板において、導体層との密着性や耐熱性に優れると共に、層間絶縁信頼性に優れた絶縁層を形成できる配線板用の熱硬化性樹脂組成物とその成形体、並びにこららを用いて作製した多層プリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、導体回路層と絶縁層とを交互にビルドアップした多層プリント配線板においては、絶縁層を構成する樹脂組成物としてエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。
このエポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂硬化剤としては、強靱性、耐熱性、耐湿性に効果のあるジシアンジアミドが知られているが、この硬化剤だけでは、硬化は比較的高温で長時間を必要としている。この改良として、ジシアンジアミドとイミダゾール化合物とからなる低温速硬化性の硬化剤系が提案されている。
【0003】
しかしながら、この硬化剤系では、その反応速度は速く、硬化後の塗膜には応力が残る。そのため、ガラスクロスを用いないで絶縁層をビルドアップする多層プリント配線板では、加熱による反りやクラック等の問題があった。
【0004】
また一方で、ジシアンジアミドは常温では固形であり、エポキシ樹脂を溶解する溶剤には常温でほとんど溶解せず、3本ロールミル等を用いて機械的に混練しても、エポキシ樹脂中に均一に分散させることは困難であった。そのため、かかるジシアンジアミドをエポキシ硬化剤として含有する樹脂組成物を、多層プリント配線板の層間絶縁材として用いると、ジシアンジアミドが粒としてエポキシ樹脂組成物中に残留し、均一な塗膜が得られず、エポキシ樹脂本来の特性の低下、とりわけ電気特性の低下を招くといった問題があった。
このような問題は、特にプリント配線板のさらなる多層化や高密度化が求められている最近の状況では顕著である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、ジシアンジアミドに起因した上記諸問題を解消し、均一な硬化塗膜が得られると共に、導体層との密着性や耐熱性、層間絶縁信頼性(耐湿性)等のエポキシ樹脂本来の優れた特性を示す絶縁層を形成できる配線板用の熱硬化性樹脂組成物とその成形体、並びにこれらを用いて作製した多層プリント配線板を提供することにある。
【0006】
【発明を解決するための手段】
さて、発明者は、エポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミドと同等に機能するジシアンジアミドのモノエポキシド付加体に着目した。しかしながら、このジシアンジアミドのモノエポキシド付加体は、液状化できるものの常温では再結晶しエポキシ樹脂組成物の均一な混合状態が得られないという欠点を有し、また、エポキシ樹脂の一般的溶剤であるメチルエチルケトンや酢酸エチル等に溶解して均一な混合状態を得ようとすると、粘度上昇による印刷性の低下(保存安定性の低下)を招くという欠点があることを知見した。
【0007】
そこで発明者は、さらに上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体は、ジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に容易に可溶で、しかもその溶剤によって液状化したエポキシ樹脂硬化剤は、保存安定性に優れ、エポキシ樹脂組成物中で安定した均一の混合状態にあることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物は、(A)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)ゴム成分、(C)粗化剤により分解もしくは溶解するフィラー成分、および(D)エポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミドのモノエポキシド付加体を含む樹脂組成物であって、前記ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、ジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解されて組成物中に均一に混合分散されていることを特徴とする。
【0009】
好適な態様において、前記エポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量が400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)と、エポキシ当量が400未満の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A2)とからなり、(A1)と(A2)のエポキシ樹脂の重量比は30:70〜90:10の範囲にあることが好ましい。
また、ゴム成分(B)として、エポキシ化ポリブタジエンを前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対し40重量部以下、好ましくは5〜30重量部の割合で含有し、フィラー成分(C)として、炭酸カルシウムを前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対し70重量部以下、好ましくは5〜50重量部の割合で含有することが好ましい。
前記ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し外枠量で1〜40重量部の割合で含むことが好ましい。
前記ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、当該付加体100重量部に対して100重量部以下の割合でジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解されていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミドのモノエポキシド付加体を用いている点に第1の特徴がある。
これにより、ジシアンジアミドを用いる場合に比べてエポキシ樹脂の熱硬化反応がマイルドになる。その結果、硬化塗膜の靱性や熱的安定性が向上し、力学的衝撃や熱衝撃によるクラック耐性に優れたものとなる。このことは、ジシアンジアミドを含むエポキシ樹脂組成物(比較例2)とジシアンジアミドのモノエポキシド付加体を含むエポキシ樹脂組成物(実施例1)の示差熱分析の測定結果(図1および図2)からも明らかである。
しかも、ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体はエポキシ樹脂との相溶性に優れ、得られる硬化物は、エポキシ樹脂本来の耐湿性(絶縁信頼性)や耐熱性、密着性に極めて優れた特性を示す。
【0011】
本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化剤としてのジシアンジアミドのモノエポキシド付加体を、ジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解させて均一混合物とした点に第2の特徴がある。
このような本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物によれば、保存安定性に優れているので、粘度上昇による印刷性の悪化がなく、得られる硬化塗膜は配合状態も分散状態も均一なものとなる。その結果、絶縁層表面の粗面化状態が均一となり、優れたピール強度を安定して得ることができる。
【0012】
以下、本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
まず、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型又はビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
本発明では、硬化塗膜が粗化剤により分解もしくは溶解され凹凸状の粗化面が得られるように、このエポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量が400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)と、エポキシ当量が400未満の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A2)とからなり、(A1)と(A2)のエポキシ樹脂の重量比は30:70〜90:10の範囲にあることが好ましい。
【0014】
ここで、上記(A1)成分は、エポキシ当量が400以上であり、粗化剤により分解もしくは溶解され易い水酸基を少なくとも1個以上有しており、また、エポキシ当量が大きいため架橋密度は比較的に低く、それ故に粗化剤により粗化され易い。一方、(A2)成分は、エポキシ当量が400未満で、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であり、水酸基は(A1)成分と比較して少ないかあるいは存在せず、また、架橋密度はエポキシ当量が小さいため高くなり、粗化剤により分解もしくは溶解され難い。従って、粗化剤により分解もしくは溶解される度合いのコントラストができ、粗面化処理により、樹脂絶縁層表面に凹凸状の表面構造を容易に形成できる。この樹脂絶縁層の凹凸状粗化面は、その上に形成される導体層のアンカーとして働く。従って、この上に無電解めっきや電解めっき等により導体層を形成した場合、樹脂絶縁層と導体層との密着強度が向上し、密着性に優れた多層プリント配線板を製造できる。また、上記樹脂絶縁層はエポキシ樹脂の硬化塗膜から形成されるため、耐熱性や電気絶縁性等に優れた多層プリント配線板が得られる。
【0015】
前記(A1)のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えばジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン900、エピクロン1050、東都化成社製のYD−011、ダウケミカル社製のD.E.R.661、旭化成エポキシ(株)製のアラルダイト6071、アラルダイト7072、AER−661、AER−664、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−012、ESA−014等が挙げられる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を臭素化したエポキシ当量400以上のブロム化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0016】
前記エポキシ当量が400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)は、使用するエポキシ樹脂成分100重量部中に30〜90重量部、好ましくは50〜80重量部含有される。エポキシ当量が400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)が、使用するエポキシ樹脂成分100重量部中に30重量部未満の割合で含有される場合、硬化した樹脂絶縁層を粗化剤により粗面化処理を行っても、樹脂絶縁層の表面に、その上に形成される導体層のアンカーとして充分に働く凹凸状の表面構造を形成し難くなるので好ましくない。一方、90重量部以上でははんだ耐熱性に問題が生じる。
【0017】
前記(A2)成分のエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が400未満で、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ化合物(エポキシオリゴマーを含む)を用いることができ、例えば、油化シェル社製のエピコート828、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、東都化成社製のエポトートYD−128等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、あるいはさらに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族環状型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
次に、本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物には、必須成分としてゴム成分(B)を含有させる。これにより、粗面化処理後の塗膜の応力緩和剤として密着強度を向上させることができる。ゴム成分の例としては、ポリブタジエンゴム(例えば出光興産社製R−45HT等)、ウレタン変性、マレイン化、エポキシ変性、(メタ)アクリロイル変性等の各種ポリブタジエンゴム誘導体(例えばエポキシ変性のダイセル化学工業製PB−3600等)、ニトリルゴム(例えばJSR社製のN280、N230S等)、CTBN(例えば宇部興産社製の1300−31等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)が挙げられる。
【0019】
本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物には、前記した各成分と共に、粗化剤により分解もしくは溶解するフィラー成分(C)を組み合わせて用いる。それによって、前記したように、粗面化処理による樹脂絶縁層表面の粗面化が容易となり、かつその凹凸形状を深くすることができ、導体層との密着強度をさらに上げることができる。ただし、エポキシ樹脂100重量部に対し70重量部を超えて含有させると、内部にボイドとして残ったり、電気絶縁性が悪くなるため、含有量としては70重量部以下、好ましくは50重量部以下とする。上記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーがあり、有機フィラーとしては、粉体エポキシ樹脂(例えばTEPIC等)、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂(例えば日本触媒社製M−30、S、MS等)、尿素樹脂、架橋アクリルポリマー(例えば綜研化学社製MR−2G、MR−7G等、積水化成品社製テクポリマー)などが挙げられ、一方、無機フィラーとしては、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、珪酸カルシウム、水酸化カルシウム、シリカなどが挙げられるが、特に炭酸カルシウムが好ましい。
【0020】
これらのフィラー成分は、その粒径を15μm以下、好ましくは7μm以下とする。この理由は、フィラーの粒径が15μmより大きくなると、絶縁層表面にブツが発生し、また粗面化処理においては大きなアンカーが発生し、平滑性や層間絶縁性、耐湿性の悪化を招くからである。
【0021】
次に、本発明の配線板用熱硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂と共に必須成分として用いるエポキシ樹脂硬化剤として、ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体が用いられる。特に本発明では、このジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、ジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解されて組成物中に均一に混合分散されている。
このジシアンジアミドのモノエポキシド付加体の使用量は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基量に対して、これら硬化剤中の活性水素量を0.3〜0.7当量とすることが好ましい。
また、このジシアンジアミドのモノエポキシド付加体は、当該付加体100重量部に対して100重量部以下、好ましくは20〜80重量部の割合でジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解されていることが好ましい。
このジシアンジアミドのモノエポキシド付加体は、ジシアンジアミドをモノエポキシ化合物と反応させて得られる。このようなジシアンジアミドの変性に使用し得るモノエポキシドは、エポキシ基を1個有する化合物であり、該化合物は、飽和もしくは不飽和の脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式化合物であることができ、さらに化合物中にエーテル基等の置換基を含んでいてもよい。エポキシ基を2個もしくはそれ以上有するエポキシ化合物、例えばジエポキシドは、付加体生成時にゲル化して硬化剤としての使用に耐えなくなる。
【0022】
モノエポキシドの好ましい具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル、キシリルグリシジルエーテル、クミルグリシジルエーテル、シミルグリシジルエーテル、p−セカンダリブチルフェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。一般的には、アリールグリシジルエーテルである。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤の具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミンなどの第3級アミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類又はこれらの有機酸塩類、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類を挙げることができる。これらの中で好ましい硬化促進剤はイミダゾール類、ホスフィン類である。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤を用いてコーティング方法に適した粘度に調整することが望ましいが、かかる溶剤の均一分散効果を損なわない範囲内で他の一般的な有機溶剤を用いることができる。
【0025】
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物には、所望の物性に応じて硫酸バリウム、硫化珪素、タルク、クレー、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、炭素繊維、雲母、石綿、金属粉等の公知・慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知・慣用の着色用顔料、消泡剤、密着性付与剤またはレベリング剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0026】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物またはその成形体を用いた多層プリント配線板について説明する。
(1)熱硬化性樹脂組成物による層間絶縁層の形成
まず、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、内層導体回路を形成した絶縁基材上にスクリーン印刷、カーテンコート、ロールコート、スプレーコートなど公知の方法を用いて塗布し、乾燥する。このときの乾燥条件は使用する溶剤により異なるが60〜150℃で5〜60分の範囲で選択される。
次いで、乾燥後、必要に応じて熱硬化を行い、層間絶縁層を形成する。このときの熱硬化条件は130℃〜200℃で15〜90分の範囲で選択される。
【0027】
(2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物の成形体による層間絶縁層の形成
▲1▼成形体の調製
成形体を構成する樹脂組成物には、機械的強度、可とう性を向上させる成分として本発明の樹脂組成物を構成する(A)成分以外に、フェノキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリシアネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等を配合することができる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0028】
このような本発明の熱硬化性樹脂組成物は、有機溶剤で稀釈され、フィルムコーター等で支持フィルムまたは支持金属箔上に塗布し乾燥され、フィルム状の成形体または樹脂付き銅箔が作製される。
ここで、支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。支持金属泊としては、銅箔などが挙げられる。
なお、このような支持体は、各種前処理(マッド、コロナ処理)を行っても良く、支持体の厚さは5〜100μmが一般的である。
また、この成形体は、保護フィルム等にて貼着保護され、シート状またはロール状で保管されることが望ましい。
【0029】
▲2▼フィルム状成形体による層間絶縁層の形成
まず、上述のようにして調製したフィルム状成形体を、内層導体回路を形成した絶縁基材上に、加熱減圧下でラミネートして張り合わせ、さらに加圧することにより基板のより優れた平滑性が得られる。ラミネート条件としては、温度70〜150℃、圧着圧力1〜10kgf/cm2が一般的である。
次いで、ラミネート後、必要に応じ熱硬化を行い、層間絶縁層を形成する。このときの熱硬化条件は130℃〜200℃で15〜90分の範囲で選択される。なお、樹脂付き銅箔を用いる配線板の製法については後述する。
【0030】
(3)ビルドアップ配線板の製造
まず、上述のようにして形成した層間絶縁層の所定位置に、スルーホール及びバイアホール部をドリルまたはレーザーで穴開けし、次いで、かかる絶縁層表面を粗化剤処理して微細な凹凸を形成する。この際、必要に応じて粗化剤処理前に接着性を安定させるためバフによる物理研磨を行っても良い。
ここで、絶縁層表面の粗化方法としては、絶縁層が形成された基板を酸化剤等の溶液中に浸漬するか、酸化剤等の溶液をスプレーするなどの手段によって実施することができる。また各種プラズマ処理などで実施することもできる。またこれらの処理は併用して用いてもよい。なお、粗化剤の具体例としては、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、メトキシプロパノール等の有機溶剤、また苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ性水溶液、硫酸、塩酸などの酸性水溶液を用いることができる。
【0031】
次いで、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき、もしくは無電解・電解めっき等の湿式めっきにより導体層を形成し、パターンエッチングにて導体回路を形成する。
このようにして導体回路を形成した基板は、必要に応じてアニール処理することにより、熱硬化性樹脂の硬化が進行させ導体層のピール強度をさらに向上させることができる。
そしてさらに、必要に応じてこれらの工程を数回繰り返すことにより、所望の多層プリント配線板を得る。
【0032】
(3’)樹脂付き銅箔によるビルドアップ配線板の製造
まず、上記(2)で調製した樹脂付き銅箔を、内層回路が形成された基板上に真空プレスで積層し、所定のスルーホール及びバイアホール部をドリルまたはレーザーで穴開けを行い、スルホール及びバイアホール内をデスミア処理し微細な凹凸を形成する。この凹凸の形成方法は、上述した層間絶縁層の粗化方法と同様である。
【0033】
次いで、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき、もしくは無電解・電解めっき等の湿式めっきにより導体層を形成し、パターンエッチングにて導体回路を形成する。
このようにして導体回路を形成した基板は、必要に応じてアニール処理することにより、熱硬化性樹脂の硬化が進行させ導体層のピール強度をさらに向上させることができる。
そしてさらに、必要に応じてこれらの工程を数回繰り返すことにより、所望の多層プリント配線板を得る。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
(実施例1〜2、比較例1〜3)
まず、表1に示す成分組成(質量部)にて各成分と溶剤等を混合し、三本ロールミルにて均一分散させた後、希釈溶剤にて粘度調整を行い、所望の硬化性樹脂組成物を調製した。
かかる硬化性樹脂組成物の調製に当たっては、エピコート1001、YDCN−704については、予めカルビトールアセテートにて室温で液状になるようにそれぞれ調整し、DICYモノエポキシド付加体については、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルをDICYモノエポキシド付加体100重量部に対して60重量部の割合で配合し室温で液状になるように調整し、このようにして調整した各樹脂溶液を使用した。
各成分の均一分散は、各組成物溶液に消泡剤としてKS−66を0.5重量部、印刷性を考えてアエロジル#200を3重量部それぞれ添加し、混合した後、三本ロール混練機にて混練することにより行った。
また、硬化性樹脂組成物は、カルビトールアセテートを用いてスクリーン印刷が可能な粘度(20Pa・s)に希釈した。
なお、表1中のDICYとDICYモノエポキシド付加体の使用量は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基量に対して、これら硬化剤中の活性水素量が同じになるように調整した。
【0035】
このようにして得られた実施例1〜2および比較例1〜3の硬化性樹脂組成物について、印刷性、硬化性、ドリリング加工性、ピール強度およびはんだ耐熱性を評価した。
その評価方法は以下のとおりである。
(印刷性)
回路の形成された10枚の試験基板(300×300mm)上に、硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷(PET製150meshスクリーン)にて塗布し、スクリーン製版のクロス部分の目詰まりを目視にて観察し評価した。また、加熱硬化(150℃×30分)した後の硬化塗膜の表面状態を目視にて観察し評価した。
(硬化性)
上記のようにして硬化塗膜を形成した試験基板について、その基板を平板上に置いて浮いている部分の高さを測定することにより、硬化による反りの状態を評価した。また、手作業にて反りを修正したときの硬化塗膜表面の状態を光学顕微鏡にて観察し評価した。
(ドリリング加工性)
上記のようにして硬化塗膜を形成した試験基板について、ドリル加工を行い、加工した穴部分の塗膜状態を光学顕微鏡にて観察し評価した。
(ピール強度)
上記のようにして硬化塗膜を形成した試験基板を、粗化剤を用いて粗面化処理を行った。この粗面化処理は、溶剤+アルカリで膨潤させたあと、酸化剤を用いて粗面化をする方法とした。次いで、その粗面化した面に、無電解銅めっき、電解銅めっきを行ってめっき厚25μmの導体を形成してプリント配線板を作成した。こうして作成したプリント配線板のピール強度は、導体と絶縁材との密着性をJIS C 6481に準拠して測定し評価した。
(はんだ耐熱性)
上記のようにして作成したプリント配線板について、導体表面にロジン系フラックスを塗布した後、280℃のはんだ槽で30秒間フロートさせ、導体と絶縁材の層間の膨れについて目視にて観察し評価した。
【0036】
その結果を表2に示す。この表2から明らかなように、DICYを用いた比較例2および3では、スクリーン印刷法においてスクリーンの目詰まりを招くと共に、硬化後の塗膜表面には粒が発生し、硬化後の基板の反りは大きく修正によるクラックが発生した。しかもドリリング加工性においては、際の部分にクラックの発生が確認された。その点、本発明の樹脂組成物にかかる実施例1および2では、印刷性、硬化性およびドリリング加工性に優れ、比較例のような異常は確認されなかった。
また、プリント配線板としての評価においては、実施例1,2と比較例1,3を比較すると、粗化剤により分解もしくは溶解するフィラー成分およびゴム成分を必須成分とすることにより、ピール強度が向上することが確認された。一方、はんだ耐熱性については、比較例1と比較例3を比較すると、ピール強度は同等であるものの、はんだ耐熱試験において比較例3では膨れが発生した。これは硬化塗膜の組成均一性の違いと考えられ、これはジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解したDICYモノエポキシド付加体を使用したことによる効果と思われる。従って、実施例1,2の評価にかかるプリント配線板では、ピール強度およびはんだ耐熱性に優れることが確認された。
【0037】
【表1】
Figure 0005116921
【0038】
【表2】
Figure 0005116921
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、樹脂絶縁層の形成に用いられる配線板用熱硬化性樹脂組成物として、ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体をジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解して液状化したものを用いているので、印刷性や硬化性に優れて均一な塗膜を形成でき、導体層との密着性や耐熱性、層間絶縁信頼性(耐湿性)等のエポキシ樹脂本来の優れた特性を示す絶縁層を形成した多層プリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ジシアンジアミドを含むエポキシ樹脂組成物の示差熱分析結果を示す図である。
【図2】ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体を含むエポキシ樹脂組成物の示差熱分析結果を示す図である。

Claims (8)

  1. (A)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)ゴム成分、(C)粗化剤により分解もしくは溶解するフィラー成分、および(D)エポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミドのモノエポキシド付加体を含む樹脂組成物であって、前記ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、ジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解されて組成物中に均一に混合分散されていることを特徴とする配線板用熱硬化性樹脂組成物。
  2. エポキシ樹脂(A)が、エポキシ当量が400以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)と、エポキシ当量が400未満の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A2)とからなり、(A1)と(A2)のエポキシ樹脂の重量比は30:70〜90:10の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物。
  3. ゴム成分(B)としてエポキシ化ポリブタジエンを前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対し40重量部以下の割合で含有し、フィラー成分(C)として炭酸カルシウムを前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対し70重量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し外枠量で1〜40重量部の割合で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記ジシアンジアミドのモノエポキシド付加体(D)は、当該付加体100重量部に対して100重量部以下の割合でジエチレングリコール系またはジプロピレングリコール系のエーテル系溶剤に溶解されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム上に塗布乾燥し、フィルム化してなる成形体。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物を支持銅箔上に塗布乾燥し、樹脂付き銅箔としてなる成形体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の配線板用熱硬化性樹脂組成物または成形体を使用して作製した多層プリント配線板。
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