JP3669663B2 - 多層プリント配線板用層間絶縁接着剤 - Google Patents

多層プリント配線板用層間絶縁接着剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多層プリント配線板用層間絶縁剤に関し、特に高耐熱性、高電気特性、難燃性、保存安定性にすぐれ、かつ、100℃以上の高温で速やかに硬化し得るエポキシ樹脂系層間絶縁接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多層プリント配線板を製造する場合、回路が形成された内層回路基板上にガラスクロス基材にエポキシ樹脂を含浸して半硬化させたプリプレグシートを1枚以上重ね、更にその上に銅箔を重ね熱板プレスにて加圧一体成形するという工程を経ている。しかし、この工程ではプリプレグ中の含浸樹脂を熱により再流動させ一定圧力下で硬化させるため、均一に硬化成形させるためには1〜1.5時間は必要である。このように製造工程が長くかかる上に、多層積層プレス及びガラスクロスプリプレグのコスト等により高コストとなっている。加えてガラスクロスに樹脂を含浸させる方法のため、回路層間の厚みがガラスクロスにより制限され多層プリント配線板全体の極薄化も困難であった。
近年、これらの問題を解決するため、熱板プレスによる加熱加圧成形を行わず、層間絶縁材にガラスクロスを用いない、ビルドアップ方式による多層プリント配線板の技術が改めて注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記熱板プレスで成形する方法に対して、簡素化されたビルドアップ方式により多層プリント配線板を低コストで製造する方法を種々検討している。
ビルドアップ方式による多層プリント配線板において、フィルム状の層間絶縁樹脂層を用いた場合、内層回路板の絶縁基板と回路と段差を無くし、その表面を平滑化するために、内層回路板にアンダーコート剤を塗布することが一般化してきた。この代表的な例として、内層回路板に塗布されたアンダーコート剤が未硬化、半硬化または硬化した状態において、層間絶縁接着剤をコートした銅箔をラミネートし、一体硬化することにより多層プリント配線板を得る。このような方法により、内層回路板の回路による段差が小さくなるため、層間絶縁接着剤をコートした銅箔のラミネートが容易であり、また内層回路板の銅箔残存率を考慮する必要も少なくなる。
【0004】
このようなプロセスにおいて、銅箔にコートされた層間絶縁接着剤がラミネート成形時に軟化し過ぎて層間厚を確保できない。熱硬化時に溶融粘度が下がり過ぎて皺が発生する。また、その保存時に硬化反応が進行して、アンダーコート剤が塗布された内層回路板にラミネートしたとき一体成形が良好に行われないと言う問題が生じている。更に、層間絶縁接着剤にガラス繊維基材が使用されていないため、難燃化が困難という問題点もあるが、これらの点については本出願人による特願平7−228433号、等により既に解決されている。しかし、以前の発明では多層プリント配線板の高密度化に伴う、ビルドアップ材に要求される耐熱性を十分に満足するものではない。本発明はかかる問題を改善するために検討し、完成されたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の(イ)、(ロ)及び(ハ)成分を必須成分として含有することを特徴とする多層プリント配線板用層間絶縁接着剤に関するものである。
(イ)重量平均分子量が10〜10であり、末端が水酸基変性のポリエーテルサルフォン
(ロ)エポキシ当量500以下のエポキシ樹脂
(ハ)エポキシ樹脂硬化剤
本発明において、(イ)成分の重量平均分子量10〜10末端が水酸基変性のポリエーテルサルフォンは、成形時の絶縁接着剤の軟化を小さくし、ラミネート後の絶縁層の厚みを維持すること、絶縁層に可撓性を付与すること、絶縁層の高耐熱化の目的で配合されているが、更に難燃性、電気特性をも向上させると予想する。この高分子量ポリエーテルサルフォンの割合は絶縁接着剤全体に対して10〜90重量%である。10重量%より少ないと、ラミネート成形時の加熱により軟化し過ぎて層間厚みを確保できない。また、熱硬化時に溶融粘度が下がり過ぎて皺が発生するなどの問題が生じる。一方、90重量%より多いと、接着剤組成物が堅く弾力性に欠けるため、ラミネート成形時の凹凸への追従性、密着性が悪く、成形ボイド発生の原因となる。また、この高分子量ポリエーテルサルフォンの末端が水酸基で変性されていれば、エポキシ樹脂との反応性も良いことから熱硬化後にポリエーテルサルフォンとエポキシ樹脂との相分離を抑えるとともに、硬化物の耐熱性も向上させる。このため上記変性が行われていることが望ましい。
【0006】
上記高分子量ポリエーテルサルフォン単独では、ロールラミネート時の塗れ性、密着性に欠けること、ラミネート後の接着性が十分でないこと、ホットメルト法では基材の破壊を招くこと、及び銅箔にコートするために溶剤に溶解して所定温度のワニスとしたときに、粘度が高く、コート時の塗れ性や作業性が良くない。このような欠点を改善するためにエポキシ当量500以下のエポキシ樹脂(ロ)を配合する。この配合割合は樹脂全体の10〜90重量%である。10重量%以下では上記の効果が期待できず、また、90重量%以上では前記高分子量ポリエーテルサルフォンの効果が期待できなくなる。
【0007】
(ロ)成分のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等があるが、上記の目的の他、難燃性付与のためには臭素化率20%以上である臭素化エポキシ樹脂が好ましい。臭素化率20%未満であると、得られた多層プリント配線板が難燃性V−0を達成することが出来ない。臭素化したものを使用すれば、多層プリント配線板の難燃化がより効果的に行われる。
【0008】
次に、(ハ)成分のエポキシ樹脂硬化剤は、アミン化合物、イミダゾール化合物、酸無水物など、特に限定されるものではないが、イミダゾール化合物は配合量が少なくてもエポキシ樹脂を十分に硬化させることができ、臭素化エポキシ樹脂の難燃性を発揮できるので好ましいものである。イミダゾール化合物は、融点130℃以上の常温で固形であり、エポキシ樹脂への溶解性が小さく、150℃以上の高温になって、エポキシ樹脂と速やかに反応するものが特に好ましい。具体的には2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチル−イミダゾール)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、あるいはトリアジン付加型イミダゾール等がある。これらのイミダゾールは微粉末としてエポキシ樹脂ワニス中に均一に分散される。エポキシ樹脂との相溶性が小さいので、常温〜100℃では反応が進行せず、従って保存安定性を良好に保つことができる。そしてラミネート硬化時に150℃以上に加熱すると、エポキシ樹脂と反応し、均一な硬化物が得られる。
【0009】
その他硬化剤として、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルブテニルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、三フッ化ホウ素のアミン錯体、ジシアンジアミド又はその誘導体などが挙げられ、これらをエポキシアダクト化したものやマイクロカプセル化したものも使用できる。
上記エポキシ樹脂及び硬化剤の他に、エポキシ樹脂や硬化剤と反応する成分を配合することができる。例えば、エポキシ反応性希釈剤(一官能型としてフェニルグリシジルエーテルなど、二官能型としてレゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテルなど、三官能型としてグリセロールトリグリシジルエーテルなど)、レゾール型又はノボラック型フェノール系樹脂、イソシアネート化合物などである。
【0010】
上記成分の他に、線膨張率、耐熱性、耐燃性などの向上のために、溶融シリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、硫酸バリウム、マイカ、タルク、ホワイトカーボン、Eガラス微粉末などを樹脂分に対して40重量%以下配合しても良い。40重量%より多く配合すると、接着剤の粘性が高くなり、内層回路間への埋込性が低下するようになる。
さらに、銅箔や内層回路基板との密着力を高めたり、耐湿性を向上させるためにエポキシシラン等のシランカップリング剤あるいはチタネート系カップリング剤、ボイドを防ぐための消泡剤、あるいは液状又は微粉末タイプの難燃剤の添加も可能である。
【0011】
溶剤としては、接着剤を銅箔に塗布し乾燥した後において、接着剤中に残らないものを選択しなければならない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、シクロヘキサノン、ジメチルフォルムアミド(DMF)などが用いられる。
層間絶縁接着剤付き銅箔は、接着剤成分を所定の溶剤に所定の濃度で溶解した接着剤ワニスを銅箔のアンカー面に塗工した後、80℃〜130℃の乾燥を行って接着剤中に溶剤が残らないようにして作製する。その接着剤層の厚みは15〜120μmが好ましい。15μmより薄いと層間絶縁性が不十分となることがあり、120μmより厚いと層間絶縁性は問題ないが、作製が容易でなく、また多層板の厚みを薄くするという本発明の目的に合わなくなる。
【0012】
この層間絶縁接着剤付き銅箔は、通常ドライフィルムラミネーターにより内層回路基板にラミネートし硬化させて、容易に外層回路を有する多層プリント配線板を形成することができる。
次に、内層回路基板の回路による段差を無くすために用いられるアンダーコート剤について述べる。アンダーコート剤は通常層間絶縁接着剤と一体硬化させるために、これと同種の材料が使用される。従って、本発明においてはエポキシ樹脂、好ましくは臭素化エポキシ樹脂を主成分とするものが使用される。ただし、溶剤に溶解したワニスでもよく、熱又は光により反応する反応性希釈剤に溶解したワニスでもよい。かかるアンダーコート剤ワニスを内層回路板に塗布し、次いで加熱して溶剤の蒸発あるいは反応によりタックフリー化ないしプレポリマー化、又は光照射して反応によるタックフリー化ないしプレポリマー化する。
【0013】
【実施例】
<実施例1>
末端水酸基変性ポリエーテルサルフォン(平均分子量24000)100重量部(以下、配合量は全て重量部を表す)、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂200部(エポキシ当量285、日本化薬(株)製 BREN−S)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量175、大日本インキ化学(株)製 エピクロン830)100部とをMEKとDMFの混合溶媒に攪拌し溶解した。そこへ硬化剤として2−メチルイミダゾール5部、チタネート系カップリング剤(味の素(株)製 KR−46B)0.2部、硫酸バリウム20部を添加して接着剤ワニスを作製した。
【0014】
以下、図1に示す工程にて多層プリント配線板を作製した。
前記接着剤ワニスを厚さ18μmの銅箔(1)のアンカー面に乾燥後の厚みが50μmとなるようにローラーコーターにて塗布し、乾燥して絶縁接着剤付き銅箔(3)を得た(a)。
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量470、重量平均分子量約900)100部をグリシジルメタクリレート40部に溶解し、これに硬化剤として2−メチルイミダゾール3部と光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア651)1.2部を添加し、十分攪拌してアンダーコート剤とした。
【0015】
更に、基材厚0.1mm、銅箔厚35μmのガラスエポキシ両面銅張積層板をパターン加工して内層回路板を得た。銅箔表面を黒化処理した後、上記アンダーコート剤をカーテンコーターにより厚さ約40μmに塗工した。その後、UVコンベア機にて80W/cm高圧水銀灯2本で約2J/cm2 の条件で紫外線照射し、アンダーコート剤をタックフリー化した。
かかるアンダーコート剤の層を有する内層回路板上に上記絶縁接着剤付き銅箔を、温度100℃、圧力4Kg/cm2 、ラミネートスピード 0.8m/分の条件により、硬質ロールを用いて上記絶縁接着剤付き銅箔をラミネートし、150℃、30分間加熱硬化させ多層プリント配線板を作製した。
【0016】
<実施例2〜3>
層間絶縁接着剤及びアンダーコート剤に使用するイミダゾールを2−メチルイミダゾールから2−フェニル−4−メチルイミダゾール、又は2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールにそれぞれ替えた以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
【0017】
<実施例4>
末端水酸基変性ポリエーテルサルフォン(平均分子量24000)100部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂70部(エポキシ当量285、日本化薬(株)製 BREN−S)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量175、大日本インキ化学(株)製 エピクロン830)30部とを実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
【0018】
<実施例5>
末端水酸基変性ポリエーテルサルフォン(平均分子量24000)100部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂70部(エポキシ当量285、日本化薬(株)製 BREN−S)、アミノフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量107、住友化学(株)製 ELM−100)35部とをMEKに攪拌し溶解した。そこへ硬化剤としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸35部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール0.5部、チタネート系カップリング剤(味の素(株)製 KR−46B)0.2部、硫酸バリウム20部を添加して接着剤ワニスを作製し、実施例1と同様にして多層プリント配線板を作製した。
【0019】
<比較例1>
臭素化フェノキシ樹脂(臭素化率25%、平均分子量30000)100部)とビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量175、大日本インキ化学(株)製 エピクロン830)50部を使用した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0020】
得られた多層プリント配線板について、表面平滑性、吸湿半田耐熱性、ピール強度及び難燃性を測定し、表1に示す結果を得た。
Figure 0003669663
【0021】
(測定方法)
内層回路板試験片:線間150μmピッチ、クリアランスホール1.0mmφ
1.表面平滑性:JIS B 0601 R(max)
2.吸湿半田耐熱性
吸湿条件:プレッシャークッカー処理、125℃、2.3気圧、30分
試験条件:n=5で、全てが280℃、120秒間で膨れが無かった場合を○とした。
3.ピール強度:JIS C 6486による
4.動的粘弾性測定の損失正接による。
【0022】
【発明の効果】
本発明の多層プリント配線板用層間絶縁接着剤は、ワニスの状態あるいは銅箔にコートした状態において、保存性にすぐれ、アンダーコート剤が塗工された内層回路基板にラミネートしたとき一体硬化が良好に行われるので、得られた多層プリント配線板は特に耐熱性に優れ、電気特性はもちろんのこと、難燃性、耐湿性等において優れた特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の多層プリント配線板(ー例)を作製する工程を示す概略断面図
【符号の説明】
1 内層回路板
2 内層回路
3 アンダーコート剤
4 熱硬化型絶縁接着剤
5 銅箔
6 硬質ロール
7 多層プリント配線板

Claims (5)

  1. 下記の(イ)、(ロ)及び(ハ)成分を必須成分として含有することを特徴とする多層プリント配線板用層間絶縁接着剤。
    (イ)重量平均分子量が10〜10であり、末端が水酸基変性のポリエーテルサルフォン
    (ロ)エポキシ当量500以下のエポキシ樹脂
    (ハ)エポキシ樹脂硬化剤
  2. 前記(イ)の成分が、(イ)成分及び(ロ)成分の合計重量の10〜90重量%である請求項1に記載の多層プリント配線板用層間絶縁接着剤。
  3. 前記(ロ)の成分が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂およびアミノフェノール型エポキシ樹脂から選ばれた1種または2種以上のもので、(イ)成分及び(ロ)成分の合計重量の10〜90重量%である請求項1または2に記載の多層プリント配線板用層間絶縁接着剤。
  4. 前記エポキシ樹脂硬化剤が、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチル)イミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4、5−ヒドロキシメチルイミダゾールおよびトリアジン付加型イミダゾールから選ばれた1種または2種以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の多層プリント配線板用層間絶縁接着剤。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の層間絶縁接着剤を銅箔にコートしてなる多層プリント配線板用層間絶縁接着剤付き銅箔。
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