JP5110052B2 - アクチュエータ装置及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置 - Google Patents

アクチュエータ装置及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置 Download PDF

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Description

本発明は、振動板と、振動板上に形成された下電極、圧電体層、上電極からなる圧電素子を備えたアクチュエータ装置及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置に関する。
電圧を印加することにより変位する圧電素子を具備するアクチュエータ装置は、例えば、液滴を噴射する液体噴射ヘッド等に搭載され、このような液体噴射ヘッドとしては、例えば、ノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが知られている。そして、インクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータ装置を搭載したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータ装置を搭載したものの2種類が実用化されている。
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。また、後者の不都合を解消すべく、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
このような圧電素子を構成する圧電材料層の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。この場合、圧電材料層を焼成する際に、圧電材料層の鉛成分が、シリコン(Si)からなる流路形成基板の表面に設けられて振動板を構成する酸化シリコン膜に拡散してしまう。そして、この鉛成分の拡散によって酸化シリコンの融点が降下し、圧電材料層の焼成時の熱により溶融してしまうという問題がある。このような問題を解決するために、例えば、酸化シリコン膜上に振動板を構成する酸化ジルコニウム膜を設け、この酸化ジルコニウム膜上に圧電材料層を設けることで、圧電材料層から酸化シリコン膜への鉛成分の拡散を防止したものがある。(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、酸化ジルコニウム膜は、酸化シリコン膜との密着性が低く、振動板の剥がれ等が発生するという問題がある。すなわち、酸化ジルコニウム膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウム膜を形成後、このジルコニウム膜を熱酸化することによって形成される。そして、このように形成されたジルコニウム膜は、多結晶構造となるが、その結晶は団子状となることが多く、柱状結晶を含む場合でもその割合は低くなってしまうため、酸化シリコン膜との密着性が低く、酸化ジルコニウム膜の剥がれ等が発生するという問題がある。なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、他の装置に搭載されるアクチュエータ装置においても同様に存在する。
特開平11−204849号公報(図1、図2、第5頁)
本発明は、このような事情に鑑み、振動板の剥がれを防止して耐久性及び信頼性を向上したアクチュエータ装置及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、振動板と、該振動板上に下電極、圧電体層
及び上電極からなる圧電素子とを具備するアクチュエータ装置であって、前記振動板が、
酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜を少なくとも含み、該絶縁体膜の結晶
(−111)面が厚さ方向に優先配向していることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第1の態様では、絶縁体膜の品質が向上し、振動板の剥がれが防止される。また、絶縁体膜の品質が向上することで、この絶縁体膜上に形成される圧電体層等の各層の品
質が安定する。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記絶縁体膜の結晶が柱状であることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第2の態様では、絶縁体膜の結晶が下面から上面まで連続的な柱状となることで、下層及び上層との密着性が向上する。
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記絶縁体膜の結晶が単斜晶であることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第3の態様では、絶縁体膜の結晶が(−111)面に良好に配向する。
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記絶縁体膜の膜厚が200nm以上であり、且つ結晶粒径が20nm〜100nmであることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第4の態様では、絶縁体膜と、その上層及び下層との密着性がより確実に向上する。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記絶縁体膜の応力が、−150〜−300[MPa]の範囲内であることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第5の態様では、絶縁体膜の剥がれを確実に防止できる。また、圧電素子の駆動による振動板の変位低下が防止される。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記振動板が、酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜を含み、前記絶縁体膜が前記弾性膜上に設けられていることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第6の態様では、絶縁体膜の下層が、酸化シリコンからなる弾性膜であっても密着性が向上する。
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかのアクチュエータ装置と、該アクチュエータ装置が一方面側に設けられると共に、液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第7の態様では、耐久性及び信頼性を向上した液体噴射ヘッドを実現することができる。
本発明の第8の態様は、第7の態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる第8の態様では、耐久性及び信頼性を向上した液体噴射装置を実現することができる。
実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 本発明に係るジルコニウム層のX線回折測定結果を示す図。 本発明に係る酸化ジルコニウム層のX線回折測定結果を示す図。 本発明に係る酸化ジルコニウム層の断面を示すSEM像。 本発明に係る酸化ジルコニウム層の表面を示すSEM像。 本発明に係る酸化ジルコニウム層の表面を示すSEM像。 一実施形態に係る記録装置の概略図。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ装置を備えたインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成し酸化シリコン(SiO2)からなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する保護基板のリザーバ部と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、後述するマスク膜51を介して接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム(ZrO2)、例えば、本実施形態では、単斜晶の酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が形成されている。そして、この絶縁体膜55は、その結晶が(−111)に優先配向しており、且つ本実施形態では、結晶が柱状に形成されている。これにより、絶縁体膜55の弾性膜50との密着性を向上することができ、振動板の剥離等の発生を防止することができる。また、この絶縁体膜55上に形成される各層の品質を安定化させることができる。したがって、耐久性及び信頼性を向上したインクジェット式記録ヘッドを実現することができる。
なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。例えば、本実施形態では、酸化ジルコニウムの結晶の(−111)面が絶縁体膜55の表面側を向いている状態となっている。また、結晶が柱状である膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して膜を形成している状態をいう。
また、このような絶縁体膜55は、少なくとも200nm以上の厚さで形成されていることが好ましく、例えば、本実施形態では、約400nmの厚さで形成されている。なお、この絶縁体膜55は、詳しくは後述するが、圧電体層を形成する際に、弾性膜50への鉛成分の拡散を防止する役割を果たしている。そして、絶縁体膜55が200nm以上の厚さで形成されていれば、弾性膜50への鉛成分の拡散を確実に防止することができる。
また、絶縁体膜55の厚さに応じて、酸化ジルコニウムの結晶粒径を適宜調整するのが好ましいが、例えば、20nm〜100nm程度であることが好ましい。これにより、絶縁体膜55の弾性膜50との密着性がさらに向上する。さらに、絶縁体膜55の応力は、−150〜−300[MPa]の範囲、すなわち、引張り方向の応力が150〜300[MPa]の範囲であることが好ましい。この程度の応力とすれば、絶縁体膜55にクラック等が発生することがなく、歩留まりが大幅に向上する。
なお、このような絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、本実施形態では、弾性膜、絶縁体膜及び下電極膜が振動板として作用するが、勿論、弾性膜及び絶縁体膜のみが振動板として作用するようにしてもよい。
そして、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
また、流路形成基板10上の圧電素子300側の面には、圧電素子300に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電素子保持部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。さらに、保護基板30には、流路形成基板10の連通部13に対応する領域にリザーバ部32が設けられている。このリザーバ部32は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の並設方向に沿って設けられており、上述したように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に下電極膜60の一部及びリード電極90の先端部が露出され、これら下電極膜60及びリード電極90には、図示しないが、駆動ICから延設される接続配線の一端が接続される。
なお、保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動ICからの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。なお、図3〜図5は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜52を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板10として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、まず、弾性膜50上に、スパッタ法、例えば、本実施形態では、DCスパッタ法によりジルコニウム層を形成する。このとき、ジルコニウム層は、その表面の(002)面配向度が80%以上、特に、90%以上となるように形成するのが好ましい。なお、「配向度」とは、X線回折広角法によってジルコニウム層を測定した際に生じる回折強度の比率をいう。具体的には、ジルコニウム層をX線回折広角法により測定すると、(100)面、(002)面及び(101)面に相当する回折強度のピークが発生する。そして、「(002)面配向度」とは、これら各面に相当するピーク強度の和に対する(002)面に相当するピーク強度の比率を意味する。
また、このように(002)面配向度が80%以上であるジルコニウム層を得るためには、DCスパッタ法でジルコニウム層を形成する際の出力を500[W]以下とすることが好ましい。さらに、スパッタ圧力は0.5[Pa]以下とするのが好ましい。このように成膜条件を適宜選択してDCスパッタ法によりジルコニウム層を形成することにより、表面の(002)面配向度が80%以上であるジルコニウム層を確実に形成することができる。
そして、このように(002)面配向度が80%以上であるジルコニウム層を熱酸化することにより、(−111)面に優先配向した酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成することができる。具体的には、例えば、850〜1000[℃]に加熱した拡散炉内に、例えば、300[mm/min]以上、好ましくは500[mm/min]以上のスピード(ロードスピード)で、流路形成基板用ウェハ110を挿入してジルコニウム層を熱酸化させる。
これにより、(−111)面に優先配向した酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が形成される。また、このように形成した絶縁体膜55を構成する酸化ジルコニウムの結晶は、下面から上面まで連続的な柱状結晶となる。
ここで、所定基板上に下記表1のスパッタ条件で形成したジルコニウム層のX線回折測定結果を図6に示す。また、このジルコニウム層を下記表1の熱酸化条件で熱酸化して形成した酸化ジルコニウム層のX線回折結果を図7に示す。さらに、図8に、この酸化ジルコニウム層の断面SEM像を示す。
Figure 0005110052
図6に示すように、このジルコニウム層では、回折強度の(002)面に相当するピークは極めて大きいのに対し、(100)面及び(101)面に相当するピークは極めて小さく実質的に零に近い程度であった。すなわち、回折強度のピークが実質的に(002)面に相当する位置にしか発生しておらず、このジルコニウム層の(002)面配向度が極めて高いことが確認された。なお、(002)面配向度は、具体的には、約99.7%であった。また、図7に示すように、このジルコニウム層を熱酸化して形成した酸化ジルコニウム層では、回折強度のピークが実質的に(−111)に相当する位置にしか発生しておらず、この酸化ジルコニウム層の結晶が(−111)面に優先配向していることが確認された。
さらには、図8に示すように、結晶が(−111)面に優先配向する酸化ジルコニウム層では、団子状の結晶は見られず、ほぼ全ての結晶が柱状となっていることを確認できる。
これらの結果から明らかなように、(002)面配向度が比較的高いジルコニウム層を熱酸化することで、柱状結晶で(−111)面に優先配向した酸化ジルコニウム層(絶縁体膜55)を形成することができる。
また、ジルコニウム層の(002)面配向度を調整することで、(−111)面に優先配向した酸化ジルコニウム層(絶縁体膜55)を形成することができると共に、酸化ジルコニウム層(絶縁体膜55)の結晶粒径を制御することもできる。図9は(002)面配向度が99.7%であるジルコニウム層を熱酸化して形成した酸化ジルコニウム層の表面のSEM像であり、図10は(002)面配向度が90%であるジルコニウム層を熱酸化して形成した酸化ジルコニウム層の表面のSEM像である。図9に示すSEM像から分かるように、(002)面配向度が99.7%であるジルコニウム層を熱酸化して酸化ジルコニウム層を形成した場合、酸化ジルコニウムの平均結晶粒径は約100nm程度であった。一方、(002)面配向度が約90%であるジルコニウム層を熱酸化して形成した酸化ジルコニウム層の場合、図10に示すSEM像から分かるように、平均結晶粒径は約50nm程度であり、(002)面配向度が99.7%であるジルコニウム層を熱酸化した場合よりも小さくなっていた。
すなわち、酸化ジルコニウムの結晶粒径は、熱酸化前のジルコニウム層の(002)面配向度によって変化し、ジルコニウム層の(002)面配向度を高くするほど、酸化ジルコニウムの平均結晶粒径は大きくなる。したがって、ジルコニウム層の(002)面配向度を調整することで、絶縁体膜55を構成する酸化ジルコニウムの平均結晶粒径を制御でき、例えば、20nm〜100nm程度の範囲であれば確実に制御することができる。
なお、このような絶縁体膜55を形成した後は、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。次いで、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成している。なお、このように圧電体層70を形成すると、焼成時に圧電体層70の鉛成分が弾性膜50に拡散する虞があるが、圧電体層70の下側には酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が設けられているため、圧電体層70の鉛成分が弾性膜50に拡散することはない。
次いで、図4(a)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。次に、リード電極90を形成する。具体的には、図4(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなる金属層91を形成する。その後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して金属層91を各圧電素子300毎にパターニングすることでリード電極90が形成される。
次に、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接合する。なお、この保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するため、保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図4(d)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、更に弗化硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、約70μm厚になるように流路形成基板用ウェハ110をエッチング加工した。次いで、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜51を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、このマスク膜51を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチングすることにより、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。
なお、その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。また、上述した実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図11は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図11に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
また、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを例示して本発明を説明したが、液体噴射ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本発明は、広く液体噴射ヘッドの全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射するものにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。また、本発明は、液体噴射ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)に搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、あらゆる装置に搭載されるアクチュエータ装置に適用できることは言うまでもない。
10…流路形成基板、12…圧力発生室、20…ノズルプレート、21…ノズル開口、30…保護基板、31…圧電素子保持部、32…リザーバ部、40…コンプライアンス基板、50…弾性膜、55…絶縁体膜、60…下電極膜、70…圧電体膜、80…上電極膜、100…リザーバ、110…流路形成基板用ウェハ、130…保護基板用ウェハ、300…圧電素子。

Claims (6)

  1. 振動板と、該振動板上に下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備するアクチュエータ装置であって、
    前記振動板が、酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜と、該弾性膜上に形成された酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜を少なくとも含み、該絶縁体膜の結晶は(−111)面が厚さ方向に優先配向していることを特徴とするアクチュエータ装置。
  2. 請求項1において、前記絶縁体膜の結晶が柱状であることを特徴とするアクチュエータ装置。
  3. 請求項1又は2において、前記絶縁体膜の結晶が単斜晶であることを特徴とするアクチュエータ装置。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記絶縁体膜の応力が、−150〜−300[MPa]の範囲内であることを特徴とするアクチュエータ装置。
  5. 請求項1〜4の何れかのアクチュエータ装置と、該アクチュエータ装置が一方面側に設けられると共に、液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  6. 請求項5の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
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