JP5109460B2 - 3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いられる新規微生物、該微生物を用いて3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを製造する方法および該3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドにより得られたポリマー - Google Patents

3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いられる新規微生物、該微生物を用いて3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを製造する方法および該3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドにより得られたポリマー Download PDF

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Description

本発明は、染料、農薬、医薬品その他有機合成品の中間体や、高性能耐熱性高分子ABポリベンゾオキサゾール(以下、AB−PBOと略す)のモノマー(以下、ABモノマーと略す)として有用な3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(以下、3,4−AHBALと略す)の製造に用いられる新規な微生物に関する。また、該微生物を用いて3,4−AHBALを低環境負荷で簡便安価に製造する方法に関する。さらに、該製造方法により得られた3,4−AHBALを原料として重合されたAB−PBOに関する。
なお、本明細書において「ABモノマー」とは、酸基(Acid)と塩基(Base)を有するモノマー化合物をいい、それを重合することにより得られたポリマーをABポリマーという。
従来、染料、農薬、医薬品その他有機合成品の中間体やABポリマー用原料としてアミノヒドロキシ安息香酸類が利用され、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸(以下、3,4−AHBAと略す)等が汎用されている。アミノヒドロキシ安息香酸類の製造方法としては、アミノヒドロキシ安息香酸類が3,4−AHBAの場合、原料である4−ヒドロキシ安息香酸やそのエステルを硝酸でニトロ化して3−ニトロ−4−ヒドロキシ安息香酸やその誘導体とし、その後、該中間体のニトロ基をパラジウムカーボンなどの還元剤で還元し、リン酸塩として単離する方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、電極還元する方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。また原料として4−ハロ安息香酸やそのエステルをもちいた場合、硝酸でニトロ化して3−ニトロ−4−クロロ安息香酸を得た後、ハロ基をアルカリ金属水酸化物で処理して3−ニトロ−4−ヒドロキシ安息香酸としこれを還元する方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
しかしながら、これらの方法ではいずれもニトロ化の際に生成するポリニトロ化物の危険性を回避するため、また生成物の純度を向上させるために単離、精製などの反応操作が数段階におよびコスト高になるという問題がある。また異性体生成による収率の大幅な低下といった問題点もある。
さらに、化学合成されたアミノヒドロキシ芳香族カルボン酸中の不純物の存在は、高分子量かつ曵糸性のあるAB−PBOのポリリン酸ドープの製造を妨げることが知られている。
また、化学合成されたアミノヒドロキシ芳香族アルデヒド中の不純物の存在は、高分子量のポリアゾメチンの重合を妨げる。
一方、生物の生合成経路を利用したアミノヒドロキシ安息香酸類の製造は安価で再生可能な原料を使用できるため環境低負荷型プロセスとして注目されている。また、生合成経路を利用した製造法は温和な条件で、かつ工学純度の高い精製物を取得することも可能であり、有用な方法と考えられる。
例えば、3−ヒドロキシアントラニル酸(HAA)(別に2−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸として知られている)は、放線菌の培養により製造されることが知られている。しかし、これを重合したポリマーの直線性が低く物性としては必ずしも満足のいくものではない(例えば、特許文献5参照)。さらに、その培養方法においては4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸を微生物により直接製造するのではなく2,3−ジヒドロキシ−3−アントラニル酸を培養により得て、それを化学的に変換することにより製造するものである。したがって、環境低負荷型プロセスとして完成されたものではない。
また、PBO類の原料として有用な3,4−AHBAを放線菌を用いて製造する方法も報告されている。(非特許文献1)。しかしながら、この3,4−AHBAは弱酸性からアルカリ性付近において不安定であるため、培養液中で酸化されダイマー化しやすく、収率が低くなるという問題がある。
さらに、本発明者の堀之内らにより、放線菌が生産する黄色色素であるグリキサゾンの生合成経路のうち3,4−AHBAの生合成に関与する遺伝子をクローニングし、該遺伝子を組み込んだ放線菌を培養することにより3,4−AHBAおよびそのアセチル誘導体を生産する方法が報告されている。併せて、該アセチル誘導体から3,4−AHBAを製造する方法も報告されている(特許文献6)。
また、堀之内らは、グリキサゾン生合成遺伝子クラスターのgriEおよびgriFと名付けた遺伝子産物の機能を解明し、griEおよびgriF破壊株では、3,4−AHBALが培養液中に蓄積されることを報告している(非特許文献2)。
PBO類は、高強度の特性を有する剛性ポリマーとしてよく知られており、上記のアミノヒドロキシ安息香酸類を原料として重合することで製造可能である。しかし、その化学触媒を用いた原料の製造方法は高価で危険な触媒を用いた過激な反応であり、しかもABモノマー前駆体の純度の高い安価な製造方法がないことが、これらポリマーの実用化を遅らせている原因となっている。
また、新規なPBOを製造するためにも新たなABモノマーの探索及び重合方法も求められていた。
米国特許4959492 米国特許5068384 米国特許4764263 特公平8−11745号公報 特開平7−309946号公報 特開2004−283163号公報 Yongfu Li et.al Tetrahedron Letters、41、p5181-5185(2000) Suzuki Hirokazu et.al Journal of Biological Chemistry, 281, p824-833(2006)
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、3,4−AHBAより反応性の良いAB−モノマーである3,4−AHBALを生産可能な微生物を提供し、該微生物を用いて低環境負荷で簡便に3,4−AHBALを製造する方法を提供することを目的とするものである。
さらに、本発明は上記微生物を用いた製造方法により得られる3,4−AHBALを原料として製造される新規なPBO類を提供することを目的とするものである。
さらに、本発明は新規なAB−モノマーである3,4−AHBALを原料として製造される新規なポリアゾメチンおよびこれを加熱してPBOを製造する方法を提供する事である。
本発明者らは、上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討を重ねた。その結果、グリキサゾンを生産する放線菌の代謝酵素群のうち、アロマティックカルボキシレートリダクターゼ(aromatic carboxylate reductase)をコードする遺伝子(griC,griD)と3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーター(3-amino-4-hydroxybenzoic acid transporter)をコードする遺伝子(griG)を遺伝子組換え技術により導入した菌株を作出することに成功した。次いで、該菌株のゲノム中のアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ(arylamine N-acetyltransferase)をコードする遺伝子(nat)を欠損した放線菌の作出にも成功した。
さらに、該組換え放線菌を3,4−AHBALの前駆体である3,4−AHBAを含んだ栄養培地で培養することにより3,4−AHBAL修飾体の副生を抑え高収率に3,4−AHBALを生産することを見出し、3,4−AHBALを低環境負荷で簡便に生産する方法を見出した。加えて、生成した3,4−AHBALを回収、精製し、重合することにより新規なポリマーを取得することに成功し、本発明を完成するに至った。加えて、生成した3,4−AHBALを回収、精製し、重合することによりポリアゾメチンを前駆体としてPBOを取得する事に成功し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、以下の発明を提供するものである。
(1)3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いられる微生物であって、アロマティックカルボキシレートリダクターゼ(aromatic carboxylate reductase)をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする微生物。
(2)上記アロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子が、放線菌のグリキサゾン生合成遺伝子クラスターに存在するgriCおよびgriDであることを特徴とする(1)に記載の微生物。
(3)3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーター(3-amino-4-hydroxybenzoic acid transporter)をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の微生物。
(4)上記3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーターをコードする遺伝子が、放線菌のグリキサゾン生合成遺伝子クラスターに存在するgriGであることを特徴とする(3)に記載の微生物。
(5)上記微生物のゲノム中のN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊されていることを特徴とする(3)または(4)に記載の微生物。
(6)上記N−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子がアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする(5)に記載の微生物。
(7)上記微生物が放線菌であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の微生物。
(8)上記放線菌がグリキサゾン生合成経路を有する放線菌であることを特徴とする(7)に記載の微生物。
(9)上記グリキサゾン生合成経路を有する放線菌がストレプトマイセス属の放線菌であることを特徴とする(8)に記載の微生物。
(10)上記ストレプトマイセス属の放線菌がストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)であることを特徴とする(9)に記載の微生物。
(11)上記ストレプトマイセス・グリセウスがストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350であることを特徴とする(10)に記載の微生物。
(12)上記ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350がストレプトマイセス グリセウス ΔNAT(pIJ702−griCDG)株(受領番号NITE AP−248)であることを特徴とする(11)に記載の微生物。
(13)放線菌のゲノム中の遺伝子griEおよびgriFが破壊されていることを特徴とする(7)〜(12)のいずれかに記載の微生物。
(14)放線菌のグリキサゾン生合遺伝子クラスターに存在する3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子griHおよびgriIが導入されていることを特徴とする(1)〜(6)および(13)のいずれかに記載の微生物。
(15)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の微生物を培養する工程;および培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを回収・精製する工程を包含することを特徴とする3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
(16)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の微生物を培養する工程;培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収する工程;3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を脱修飾する工程;および3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを精製する工程を包含することを特徴とする3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
(17)上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体が3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドであり、上記脱修飾が脱アセチル化であることを特徴とする(16)に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
(18)上記微生物を培養する工程において、培養液に3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体を添加することを特徴とする(15)または(16)に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
(19)上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体が3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸であることを特徴とする(18)に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
(20)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の微生物を培養する工程;および培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収・精製する工程を包含することを特徴とする3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
(21)上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体が3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドであることを特徴とする(20)に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
(22)上記微生物を培養する工程において、培養液に3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体を添加することを特徴とする(21)に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
(23)上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体が3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸であることを特徴とする(22)に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
(24)上記(15)〜(19)のいずれかに記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法により得られた3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを重合して得られることを特徴とするポリマー。
(25)上記(15)〜(19)のいずれかに記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法により得られた3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを有機溶剤中で重合することを特徴とするポリアゾメチンの製造方法。
(26)上記(25)に記載のポリアゾメチンの製造方法により得られたポリアゾメチンを空気中で加熱してオキサゾール環を形成することを特徴とするポリベンゾオキサゾールの製造方法。
本発明によって、染料、農薬、医薬品その他有機合成品の中間体やABモノマーとして有用である3,4−AHBALを簡便かつ安価に製造することができる。また、本発明は微生物を培養することにより3,4−AHBALを製造する方法、即ち環境低負荷型の地球環境に対して優しい製造方法であるため、産業の発展に益すること大である。
さらに、本発明によって得られた3,4−AHBALを重合することで新規なPBO類が得られる。さらに、本発明によって得られた3,4−AHBALを重合することで、ポリアゾメチンを前駆体とするPBOが得られる。これにより高強度、高弾性率、高耐熱性を有する新規なPBO繊維やPBOフィルムなどを提供することが可能となる。
〔本発明の背景〕
まず、本発明を完成させるに至るまでの背景について説明する。
土壌微生物である放線菌は抗生物質をはじめとする多種多様な二次代謝産物を生産することで知られるグラム陽性菌である。本発明者らは、この放線菌の二次代謝産物において黄色色素を見いだし、グリキサゾンと命名した。ここでいう、グリキサゾンは式(I)で表される構造単位をもっている。
その生合成経路も本発明者らが、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)のA−ファクター制御カスケードの解明過程において初めて見いだし、グリキサゾンの生合成がA−ファクター依存的であることも明らかにしている(Ohnishi Y., Yamazaki H., Kato J., Tomono A., and Horinouchi S. AdpA, a central transcriptional regulator in the A-factor regulatory cascade that leads to morphological development and secondary metabolism in Streptomyces griseus. Biosci. Biotechnol. Biochem. 69: 431-439)。
グリキサゾンの生合成経路は、ストレプトマイセス・グリセウス自身が生産し極微量で二次代謝・形態分化を誘導する微生物ホルモンであるA−ファクターがトリガーとなる。A−ファクターは細胞質に存在するレセプタータンパク質(ArpA)に結合することでその機能を発揮する。ArpAはリプレッサータイプのDNA結合蛋白であり、A−ファクターと結合することによってDNAから解離する。これによりAraCファミリーの転写活性化因子と相同性のあるAdpA(発明者が命名)が機能し、グリキサゾン生合成遺伝子クラスター群が転写される。グリキサゾン生合成遺伝子クラスターには、機能未知や機能が推定されるタンパク質も含め13の遺伝子がコードされていることが確認された。その遺伝子地図を図1に示した。なお、本発明の説明において、遺伝子名はgri*と示し、該遺伝子のコードするタンパク質はGri*と記載する(*は英文字を示す)。
さらに、グリキサゾン生合成遺伝子クラスターからの翻訳産物である幾つかのタンパク質の働きも、既に発明者により解明されてきた。そのうちgriH遺伝子産物(GriH)およびgriI遺伝子産物(GriI)は3,4-AHBA合成に関与している(特許文献6参照)。また、griF遺伝子産物(GriF)は銅イオンにより活性化されるo-アミノフェノール誘導体の酸化反応を触媒するo-アミノフェノールオキシダーゼとして、またgriE遺伝子産物(GriE)はo-アミノフェノールオキシダーゼとヘテロサブユニットを形成し、銅イオンをGriF分子内に取り込むためのシャペロン様タンパク質として同定された。両タンパク質は3,4-AHBALを酸化縮合して2アミノフェノキサジン-3-オン-8-カルボキシレート(2-aminophenoxazin-3-one-8-carbokylate、以下APOCと略す)に変換する酵素としてグリキサゾン生合成経路の重要な反応を司っている(非特許文献2参照)。
そして、今回、griC、griD遺伝子がグリキサゾン生合成系において3,4-AHBAから3,4-AHBALへの還元反応を触媒する酵素をコードする遺伝子であること、griG遺伝子が3,4-AHBAの細胞内への取込に関与するトランスポーターをコードする遺伝子であることを見出したことにより、3,4-AHBALの製造に用いられる微生物を構築し、当該微生物を用いて低環境負荷で簡便安価に3,4-AHBALを製造する方法を完成させるに至った。
〔3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いられる微生物〕
本発明に係る微生物は、3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いられる微生物であって、アロマティックカルボキシレートリダクターゼ(aromatic carboxylate reductase)をコードする遺伝子が導入されているものであればよい。アロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子が導入され、発現することにより3,4-AHBAから3,4-AHBALへの還元反応が促進され、効率よく3,4-AHBALを製造することが可能となる。
アロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子としては、3,4-AHBAから3,4-AHBALへの還元反応を触媒し得るタンパク質をコードするものであれば特に限定されないが、グリキサゾン生合成経路のアロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子が好ましい。
グリキサゾン生合成経路のアロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子としては、本発明者らがストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350株から取得したDNA断片中に見出したグリキサゾン生合成遺伝子クラスター(図1参照)に存在するgriCおよびgriDを挙げることができる。
本明細書において、「遺伝子」との用語は、「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。また、「遺伝子」には、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNA(mRNA等)が含まれる。
griCの塩基配列は配列番号1に、griC産物(GriC)のアミノ酸配列は配列番号2に示されている。同様に、griDの塩基配列は配列番号3に、griD産物(GriD)のアミノ酸配列は配列番号4に示されている。また、griC破壊株およびgriD破壊株はいずれもアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を失ったことから、GriCおよびGriDは両者が揃って初めてアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を発揮するものと考えられる。
宿主微生物に導入されるgriC遺伝子は配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子に限定されるものではなく、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる遺伝子であればよい。
また、宿主微生物に導入されるgriC遺伝子は、GriDが共存する場合にアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を有する限りにおいて、GriCの変異体をコードする遺伝子であってもよい。GriCの変異体をコードする遺伝子としては、例えば、「配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、GriDが共存する場合にアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」を挙げることができる。
同様に、宿主微生物に導入されるgriD遺伝子は配列番号3に示される塩基配列からなる遺伝子に限定されるものではなく、配列番号4に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる遺伝子であればよい。
また、GriCが共存する場合にアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を有する限りにおいて、GriDの変異体をコードする遺伝子であってもよい。GriCの変異体をコードする遺伝子としては、例えば、「配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、GriCが共存する場合にアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」を挙げることができる。
ここで「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。
タンパク質のアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このタンパク質の構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけでなく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有する。好ましくは、サイレント置換、付加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチド活性を変化させない。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
griCおよびgriDの宿主微生物への導入は、griCおよびgriDを、それぞれ別々の発現ベクターに挿入して宿主微生物に導入していてもよく、1つの発現ベクター内で別々のプロモーターの支配下に挿入して宿主微生物に導入していてもよく、1つの発現ベクター内で1つのプロモーターの支配下に挿入して宿主微生物に導入していてもよい。
griCおよびgriDは同一の転写単位に存在することが発明者らにより見出されているので、1つの発現ベクター内で1つのプロモーターの支配下に挿入して宿主微生物に導入することが好ましい。この場合、配列番号9に示されるgriCおよびgriDの両遺伝子全長の塩基配列からなるDNA断片を発現ベクターのプロモーターの下流に挿入すればよい。ただし、1つのプロモーターの支配下に挿入されるDNA断片は、GriCとGriDとをコードする遺伝子であれば配列番号9に示される塩基配列からなる遺伝子に限定されない。さらに、1つのプロモーターの下流に挿入されるDNA断片がコードするGriCおよびGriDは、両者が共存してアロマティックカルボキシレートリダクターゼ活性を有する限りにおいて、GriCおよびGriDの少なくとも一方が変異体であってもよいことを当業者は容易に理解する。
本発明に係る微生物は、アロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子が導入されていることに加えて、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーター(3-amino-4-hydroxybenzoic acid transporter)をコードする遺伝子が導入されていることが好ましい。3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーターをコードする遺伝子が導入され、発現することにより培地中の3,4-AHBAが効率よく宿主細胞内に取り込まれ、より効率よく3,4-AHBALを製造することが可能となる。
3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーターをコードする遺伝子としては、細胞外の3,4-AHBAを細胞内に取り込むことができるタンパク質をコードするものであれば特に限定されないが、グリキサゾン生合成経路の3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーターをコードする遺伝子が好ましい。
グリキサゾン生合成経路の3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーターをコードする遺伝子としては、本発明者らがストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350株から取得したDNA断片中に見出したグリキサゾン生合成遺伝子クラスター(図1参照)に存在するgriGを挙げることができる。
griGの塩基配列は配列番号5に、griG産物(GriG)のアミノ酸配列は配列番号6に示されている。
宿主微生物に導入されるgriG遺伝子は配列番号5に示される塩基配列からなる遺伝子に限定されるものではなく、配列番号6に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる遺伝子であればよい。
また、宿主微生物に導入されるgriG遺伝子は、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーター活性を有する限りにおいて、GriGの変異体をコードする遺伝子であってもよい。GriGの変異体をコードする遺伝子としては、例えば、「配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子」を挙げることができる。
griGの宿主微生物への導入は、griCおよびgriDの導入に用いた発現ベクターと異なる発現ベクターにgriGを挿入して宿主微生物に導入してもよく、griCおよびgriDの導入に用いた発現ベクターにさらにgriGを挿入して宿主微生物に導入してもよい。後者の場合には、griCおよびgriDを支配するプロモーターと異なるプロモーターの支配下にgriGを挿入することが好ましい。
本発明に係る微生物は、さらに、当該微生物ゲノム中のN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊されていることが好ましい。宿主微生物ゲノム中のN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊されていることにより、アセチル化した3,4-AHBALの副生を抑制することができ、高純度の3,4-AHBALを効率よく製造することが可能となる。
N−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子としては、3,4-AHBALから3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを生成する活性を有しているタンパク質をコードするものであれば特に限定されないが、3,4-AHBALのアミノ基にアセチル基が結合した修飾体はアリルアミン構造をとっていることから、アリルアミン構造に特異的なアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が好ましい。なお、用いる宿主微生物により、破壊する対象のN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が異なることは言うまでもない。
宿主微生物は、アロマティックカルボキシレートリダクターゼが発現可能に導入でき、3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いることができるものであれば限定されない。なお「微生物」は微小で肉眼では観察できない生物の総称であり、藻類、酵母、カビ、細菌、原虫などが含まれる。
宿主微生物としては、細菌が好ましく、例えば、放線菌、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。なかでも放線菌が好ましい。放線菌は、菌糸状の形態をとり得る細菌の総称であり、主として土壌中に存在する。放線菌のなかでもグリキサゾン生合成経路を有する放線菌がさらに好ましい。グリキサゾン生合成経路を有する放線菌としてはトレプトマイセス属(Streptomyces)の放線菌を挙げることができる。トレプトマイセス属(Streptomyces)の放線菌は抗生物質生産菌として当業者に周知である。本発明者らはストレプトマイシン生産菌として知られているストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)を宿主微生物として選択し、3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを生産可能な微生物を構築した。より具体的には、本発明者らはストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350株を宿主細胞として用いている。
宿主微生物としてストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350株を用いた場合、ストレプトマイセス・グリセウスのゲノム中のアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(以下、natと記載する)の塩基配列は配列番号7に、当該遺伝子産物のアミノ酸配列は配列番号8に示される。
ここで「遺伝子が破壊されている」とは、遺伝子の正常な機能が損なわれていることを意味し、遺伝子の翻訳産物であるタンパク質が生産されない、または、本来の機能を有しない異常なタンパク質が生産されることが意図される。したがって、ゲノムレベルで遺伝子が破壊されていてもよく、転写レベルや翻訳レベルで遺伝子の正常な機能が損なわれていてもよい。
遺伝子を破壊する方法としては特に限定されず、用いる宿主微生物に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。本発明者らは相同組み換えによる遺伝子破壊法を用いてストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350株のnat遺伝子を破壊している(実施例3参照)。これ以外の方法としては、例えば、紫外線や放射線(例えばX線)を照射する方法を挙げることができる。また、公知の変異原性物質、例えば強力なアルキル化剤であるN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンやエチルメタンスルホン酸等で処理する方法を挙げることができる。
遺伝子を宿主細胞に導入する方法も特に限定されず、用いる宿主微生物に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。即ち、宿主に適した発現ベクターを選択し、導入する遺伝子を挿入した当該発現ベクターを構築して、宿主細胞に導入すればよい。
発現ベクターとしては、放線菌由来のプラスミド、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来プラスミド等を利用することができる。
放線菌由来のプラスミドとしては、例えば、pIJ702が挙げられる。大腸菌由来のプラスミドとしては、例えば、pBR322,pBR325,pUC18,pUC118が挙げられる。枯草菌由来のプラスミドとしては、例えば、pUB110,pTP5,pC194が挙げられる。酵母由来プラスミドとしては、例えば、pSH19,pSH15が挙げられる。
発現ベクターには、所望により当該技術分野で公知の、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン等を付加することができる。
宿主に発現ベクターを導入する方法(形質転換方法)としては、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、以下に記載の文献を参照することができる。Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,69巻,2110(1972); Gene,17巻,107(1982);Molecular & General Genetics,168巻,111(1979);Methods in Enzymology,194巻,182-187(1991);Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,75巻,1929(1978);細胞工学別冊8 新 細胞工学実験プロトコール.263-267(1995)(秀潤社発行);および Virology,52巻,456(1973)。
本発明に係る微生物の好適な実施形態の1つとして、ストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350のnat破壊株を宿主とし、griC、griDおよびgriGが導入された微生物を挙げることができる。即ち、GriGの発現量が増強されていることにより、3,4-AHBALの前駆体である3,4-AHBAを培養液中から宿主細胞内への取り込みが亢進し、GriCおよびGriDの発現量が増強されていることにより3,4-AHBAから3,4-AHBALへの還元反応が亢進する。さらに、natが破壊されていることにより、3,4-AHBALがアセチル化することを抑えることができ、純度の高い3,4-AHBALを製造することができる。
本発明者らは、ストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350のnat破壊株を宿主とし、griC、griDおよびgriGが導入されたストレプトマイセス グリセウスΔNAT(pIJ702-griCDG)株を作製し、当該株を用いて3,4-AHBALを効率よく製造できることを実証している(実施例参照)。なお、当該ストレプトマイセス グリセウスΔNAT(pIJ702-griCDG)株は独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センターに、平成18年6月30日に寄託されており、その受領番号はNITE AP−248である。
本発明に係る微生物は、さらに放線菌のゲノム中の遺伝子griFが破壊されていることが好ましい。前述のように、本発明者らはgriF遺伝子産物(GriF)が銅イオンにより活性化されるo-アミノフェノール誘導体の酸化反応を触媒するo-アミノフェノールオキシダーゼであること、またgriE遺伝子産物(GriE)はo-アミノフェノールオキシダーゼとヘテロサブユニットを形成し、銅イオンをGriF分子内に取り込むためのシャペロン様タンパク質であることを同定している(非特許文献2参照)。即ち、GriFおよびGriEは、3,4-AHBALからグリキサゾンを生合成する経路に関与している。したがって、o-アミノフェノールオキシダーゼをコードするgriFが破壊されていることにより、3,4-AHBALからグリキサゾンへの反応の進行を抑制することができ、3,4-AHBALの蓄積が亢進する。
griFの破壊株は、少なくともgriFが破壊されていればよいが、griFおよびgriEの両遺伝子が破壊されていることが好ましい。griFおよびgriEの破壊については、非特許文献2を参照することにより実施することができる。なお、griFおよびgriEの塩基配列は、一連の塩基配列としてアクセッション番号AB214954で登録されている。
本発明に係る微生物は、さらに、放線菌のグリキサゾン生合成遺伝子クラスターに存在する遺伝子griHおよびgriIが導入されていることが好ましい。前述のように、本発明者らはgriH遺伝子産物(GriH)およびgriI遺伝子産物(GriI)が3,4-AHBA合成に関与していることを見出している(特許文献6参照)。したがって、griHおよびgriIが導入され、発現することにより3,4-AHBALの前駆体である3,4-AHBAを効率よく生産でき、それを還元することにより3,4-AHBALを大量に製造することが可能となる。
griHおよびgriIは同一の転写単位に存在するので、1つの発現ベクター内で1つのプロモーターの支配下に挿入して宿主微生物に導入することが好ましい。griHおよびgriIの発現ベクター構築、宿主への導入については特許文献6を参照することにより実施することができる。また、griHおよびgriIの塩基配列、アミノ酸配列は特許文献6の配列表に記載されている。
即ち、本発明に係る微生物のより好適な実施形態は、ストレプトマイセス・グリセウス NBRC13350のnatおよびgriF破壊株を宿主とし、griC、griD、griG、griHおよびgriIが導入された微生物である。
〔3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法、および、3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法〕
本発明に係る3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法は、上述の本発明に係る微生物を培養する工程;および培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを回収・精製する工程を包含するものであればよい。
また、本発明に係る3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法は、上述の本発明に係る微生物を培養する工程;培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収する工程;3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を脱修飾する工程;および3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを精製する工程を包含するものであってもよい。
本発明に係る3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法は、上述の本発明に係る微生物を培養する工程;および培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収・精製する工程を包含するものであればよい。
微生物を培養する工程では、当該微生物が生育可能で、3,4-AHBALを蓄積できるものであればどのような培地でも用いることができる。
例えば、上述のストレプトマイセス・グリセウスΔNAT(pIJ702-griCDG)株を用いる場合は、ストレプトマイセス・グリセウスΔNAT(pIJ702-griCDG)株が生育可能で、3,4-AHBALを蓄積できるものであればよい。好適な培地として、炭素源、窒素源、無機イオン、さらに必要に応じて硝酸塩、リン酸塩やビタミン類などを含有するものが挙げられる。炭素源としてはグルコース、フラクトースのような単糖類からデキストリン、可溶性澱粉のような高分子多糖類まで用いることができる。また、αケトグルタル酸やオキザロ酢酸のような有機酸、アスパラギン酸やグルタミン酸のようなアミノ酸も利用可能である。好ましくは3,4-AHBAL前駆体である3,4-AHBAのベンゼン骨格を形成させるためにアスパラギン酸を添加するのが良い。
窒素源としては種々の窒素源が利用可能である。無機窒素源としては硫安や硝酸アンモニウム等が用いることができる。有機窒素源としてはポリペプトン、トリプトン、肉エキス、酵母エキスなどが利用可能である。
具体的には、例えば、SMM培地(ブドウ糖0.9%、L-アスパラギン0.9%、硫安0.2%、食塩0.01%、KH2PO40.034%、K2SO4 0.005%、MgSO4・7H2O 0.002%、CaCl2・2H2O 0.001%、微量金属塩溶液1%[40 mg ZnCl2, 200 mg FeCl3・6H2O, 10 mg CuCl2・2H2O, 10 mg MnCl2・4H2O, 10 mg Na2B4O7・10H2O, 10 mg (NH4)6Mo7O24・2H2O / l]、10 mM Trizma base、pH7.2)などを挙げることができる。
培養条件は、用いる微生物に応じて最適の条件を適宜選択すればよい。ストレプトマイセス・グリセウスΔNAT(pIJ702-griCDG)株の場合は、好気条件下、25℃〜30℃にて培養し、3,4-AHBALの生産量が最大になる時点まで行うことが好ましい。
微生物を培養する工程において、3,4-AHBALの生産量を向上させるために、グリキサゾン生合成経路における3,4-AHBALの前駆体を培地中に添加することが好ましい。3,4-AHBALの前駆体としては、アスパラギン酸、3,4-AHBAなどが挙げられ、特に好ましくは3,4-AHBAである。
なお、グリキサゾン合成経路を有しない宿主微生物を用いる場合には、宿主微生物自身が3,4-AHBAを合成することができないので、培地への3,4-AHBAの添加は必須となる。
3,4-AHBALの前駆体を培地中に添加する時期は特に限定されず、培養開始時に添加してもよく、培養中に添加してもよく、培養開始時と培養中に添加してもよい。添加回数や添加量も特に限定されないが、用いる微生物に応じて添加時期、添加回数および添加量の最適条件を決定することが好ましい。
培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを回収・精製する工程、または培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収する工程、または培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収・精製する工程で用いる回収方法は、公知の方法から適宜選択すればよいが、菌体を遠心分離や膜ろ過等の方法により除去した培養液上清から回収することが好ましい。菌体を除去した培養液上清からの3,4-AHBALおよび3,4-AHBAL修飾体の回収には、例えば各種の有機溶媒による2層分配による抽出方法を好適に用いることができる。具体的には、例えば酢酸エチルを等量添加することにより、有機溶媒層に3,4-AHBALおよび3,4-AHBAL修飾体を抽出することができる。さらに酸性pH水溶液、例えばpH1以下の水溶液と該酢酸エチル抽出液を混合し、3,4-AHBALのみを水層に抽出し、酢酸エチル層に3,4-AHBAL修飾体(アセチルアミノ体)を抽出することができる。その後、アルカリで中和した水槽から再度酢酸エチルで3,4-AHBALを抽出することができる。一方、前述の酢酸エチル抽出液を減圧乾燥等の方法により濃縮することにより3,4-AHBALの修飾体を回収することができる。
この濃縮液から多孔性吸着剤により精製することで、3,4-AHBALおよび3,4-AHBAL修飾体の精製標品を取得することができる。ここで言う多孔性吸着剤とは、表面積の大きな多孔質の固形吸着剤であり、具体的には、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、ボーキサイト、マグネシア、活性白度、アクリル系合成吸着剤等に代表される親水性吸着剤、木炭、骨炭、活性炭、芳香族系合成吸着剤等に代表される疎水性吸着剤を挙げることができるがこれに限られるものではない。好ましくはシリカゲルやシリカゲルにオクタデシルシリル基(ODS基)を導入した担体を用い、カラムクロマトグラフィーのような通常用いられる精製手段により3,4-AHBALおよび3,4-AHBAL修飾体画分を取得することができる。さらに、減圧乾固して精製3,4-AHBALおよび3,4-AHBAL修飾体粉末を取得することができる。
3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を脱修飾する工程では、修飾された3,4-AHBALの修飾基を除去して、3,4-AHBALを取得できる方法であればどのような方法を用いてもよい。好ましくはアセチル誘導体(以下、3,4-Ac-AHBALと略す)の脱アセチル反応である。アセチル化とは、3,4-AHBALのアミノ基がアセチル化されていることであり、脱アセチル化とは3位のアセチルアミノ基からアセチル基を脱離させる反応のことをいう。
使用される塩基としては、脱アセチル化反応が進行するものであれば特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウムなどの強塩基を用いることが、脱アセチル化の反応性を高めることができるという点で好ましい。これらの塩基は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種類以上を組み合わせて使用してもよい。塩基の使用量は、脱アセチル化反応が進行する量であれば特に限定はないが、原料である3,4-Ac-AHBALの0.5〜100モル倍、好ましくは0.8〜10モル倍、さらに好ましくは1〜5モル倍である。
一方、脱アセチル化反応に用いられる酸類としては、3,4-Ac-AHBALの脱アセチル化反応が進行するものであれば特に限定はないが、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの強酸を用いることが脱アセチル化の反応性を高めることができるという点で好ましい。これらの酸類は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種類以上を組み合わせて使用してもよい。酸類の使用量は、脱アセチル化反応が進行する量であれば特に限定はないが、原料である3,4-Ac-AHBALの0.5〜100モル倍、好ましくは0.8〜10モル倍、さらに好ましくは1〜5モル倍である。
塩基または酸を用いた3,4-Ac-AHBALの脱アセチル化反応は、通常、空気雰囲気中、常圧で撹拌しながら行われる。反応温度は脱アセチル化が進行する温度であれば特に限定はないが10〜100℃、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜100℃である。また反応時間は、脱アセチル化が進行する時間であれば特に限定はないが、0.01〜100時間、好ましくは0.05〜10時間、さらに好ましくは0.1〜5時間である。通常、原料である3,4-Ac-AHBALは塩基性水溶液または酸性水溶液に対する溶解性が低いが、脱アセチル化が進み3,4-AHBALが生成してくると、塩基性水溶液または酸性水溶液に対する溶解性が向上してくるので、この溶解度の変化が反応進行の目安の一つになる。
本発明において、3,4-Ac-AHBALが塩基を用いて脱アセチル化された場合には、酸化的にダイマー化されやすいなど構造的に不安定であるという問題がある。そのため、脱アセチル化処理した後、該処理液に酸類を加えることによって3,4-AHBALのアミノ基を該酸類と反応させ、塩化合物として安定化させることが好ましい。ここで使用される酸類としては、3,4-Ac-AHBALの塩を形成するものであれば特に限定はないが、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの強酸を用いることが好ましい。また、使用される酸類の量は、3,4-Ac-AHBALの塩を形成するのに十分な量であれば特に限定はないが、脱アセチル化反応に要した塩基および3,4-Ac-AHBALの総量に対して、0.5〜100モル倍、好ましくは0.8〜50モル倍、さらに好ましくは1〜10モル倍である。
脱修飾後の3,4-AHBALの精製工程においては、3,4-Ac-AHBALを脱アセチル化処理した反応処理液から3,4-AHBALを分離回収する方法として多孔性吸着剤に接触させる方法を用いることができる。多孔性吸着剤としては、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、ボーキサイト、マグネシア、活性白度、アクリル系合成吸着剤等に代表される親水性吸着剤、木炭、骨炭、活性炭、芳香族系合成吸着剤等に代表される疎水性吸着剤を挙げることができるがこれに限られるものではない。好ましくはシリカゲルやシリカゲルにオクタデシルシリル基(ODS基)を導入した担体と該反応処理液を接触させた後、バッチ処理やカラムクロマトグラフィーの手法により不純物と3,4-AHBALを分離することができる。
〔3,4−AHBALから合成したポリアゾメチンを前駆体とする、PBO重合〕
精製された3,4-AHBALを有機溶剤中で反応させることにより、ポリアゾメチンを合成することができる。有機溶剤としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、メタノール、エタノール、アニソール等を用いることができる。また、これらの溶媒にトルエン、ベンゼンを加えて反応させても良い。また、これらの溶媒にモレキュラーシーブのような脱水材を加えても良い。反応温度は、室温〜150℃の範囲であることが好ましく、反応温度の最高温度は、溶媒の沸点によって制限される。反応終了時のポリマー濃度が1〜70wt%になるように、溶媒に対する溶解度を考慮して、有機溶剤中の3,4-AHBALの濃度が調整される。ポリアゾメチン重合反応溶液を基板上にキャストした後、高温または真空下で溶媒を除去する。これを200〜400℃で加熱することにより目的のPBOが得られる。反応式を、以下に示す。但し、nは10以上の整数である。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、特に言及しない限り、「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1:グリキサゾン生合成遺伝子の解析〕
(1)グリキサゾン非生産のUV変異株の取得
約3×10個のストレプトマイセス・グリセウスの胞子を10mlの10%グリセロールに懸濁し、直径9cmの滅菌したガラスシャーレに入れた。長さ5cmの細い鉄線をスターラーバーとし、マグネチックスターラーにより撹拌しつつ30cm上空よりUVランプを50秒照射し、生存率0.5%で変異処理を行った。変異処理した胞子をYMPD寒天培地(酵母エキス0.2%、肉エキス0.2%、ペプトン0.4%、食塩0.5%、MgSO4・7H2O 0.2%、ブドウ糖1%、寒天2% pH7.2)にプレーティングし、28℃で5〜7日培養した。
このうち正常に胞子形成を行う約5300個のコロニーを、滅菌した爪楊枝を用いてグリキサゾン生産寒天培地(ブドウ糖0.9%、L-アスパラギン0.9%、硫安0.2%、食塩0.01%、K2SO4 0.005%、MgSO4・7H2O 0.002%、CaCl2・2H2O 0.001%、微量金属塩溶液1%[40 mg ZnCl2, 200 mg FeCl3・6H2O, 10 mg CuCl2・2H2O, 10 mg MnCl2・4H2O, 10 mg Na2B4O7・10H2O, 10 mg (NH4)6Mo7O24・2H2O/l]、10 mM Trizma base、寒天2% pH7.2)に植菌し、28℃で3〜4日培養した。グリキサゾンは黄色を呈するため、グリキサゾン生産寒天培地上では視覚的にグリキサゾン非生産変異株を選択できる。約10数株の候補株について詳細に検討し、生育・形態分化ならびにストレプトマイシン生産に異常のないグリキサゾン非生産変異株を1株取得し、M31株と命名した。
(2)ショットガンクローニングによるグリキサゾン生合成遺伝子群の取得
ストレプトマイセス・グリセウス野生株(NBRC13350株)の染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分消化し、6-10Kbの断片をアガロースゲル電気泳動により回収した。このDNA断片群と、制限酵素BglIIで消化後アルカリフォスファターゼ処理により5'末端の脱リン酸を行った放線菌ベクターpIJ702とをライゲーションした。この染色体DNAライブラリーをM31株に導入して約6000個の形質転換株を得た。
これらの形質転換体のうち2600株をグリキサゾン生産寒天培地上に植菌し28℃で3〜4日培養することによって、黄色色素生産能が回復した形質転換体2株を得た。これら2株よりプラスミドDNAを回収し制限酵素処理を行った結果、それぞれ約12 Kb、約7.5Kbの挿入断片をもつことが明らかになった。また、両挿入断片の制限酵素地図より両者は共通の配列を含んでいることが示された。約7.5Kbの挿入断片をもつプラスミド(pAYP20)よりプローブを調製し、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーションを含む一般的な手法により、その周辺のDNA断片をクローニングし、計約15Kbのグリキサゾン生合成遺伝子群を含むDNA断片を取得した。グリキサゾン生合成遺伝子群の遺伝子地図を図1に示した。
(3)griC、griDおよびgriGの遺伝子解析
取得したグリキサゾン生合成遺伝子群を含むDNA断片の塩基配列をダイデオキシ法(Messing, Methods in Enzymol., 101, 20-78, (1983))により決定した。配列解析および転写解析等によって、グリキサゾン生合成に関与すると推定される13種の遺伝子が同定された。そのうちの3つの遺伝子をgriC、griDおよびgriGと命名した。griCの塩基配列およびgriC産物(GriC)の推定アミノ酸配列を配列番号1および2に示した。同様にgriDの塩基配列およびgriD産物(GriD)の推定アミノ酸配列を配列番号3および4に、griGの塩基配列およびgriG産物(GriG)の推定アミノ酸配列を配列番号5および6に、それぞれ示した。
(I) griC,griD遺伝子破壊株の作製
上記GriCの推定アミノ酸配列を解析したところ、図2に示したように他のAMP結合性のタンパク質と同様にAMP結合モチーフを有していることが確認された。また、上記GriDの推定アミノ酸配列を解析したところ、図3に示したように他の微生物由来アルデヒドデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と高い相同性を有していることが明らかとなった。
近年ノカルディア属放線菌が生産するAMP結合モチーフを有する新たなアルデヒドデヒドロゲナーゼが安息香酸を還元することが報告されたが(Aimin He, Tao Li, Lacy Daniels, Ian Fotheringham, and John P. N. Rosazza. Nocardia sp. Carboxylic Acid Reductase: Cloning, Expression, and Characterization of a New Aldehyde Oxidoreductase Family. Applied and Environmental Microbiology, 70, 1874-1881 (2004))、GriCおよびGriDはそれぞれ部分的にこのアルデヒドデヒドロゲナーゼと相同性を有していた。それゆえ、GriCおよびGriDはサブユニットとして会合することにより3,4-AHBAを還元して3,4-AHBALを合成する反応を触媒する酵素であると予想した。
そこで、griC遺伝子およびgriD遺伝子の機能を確認するため放線菌の野生株であるストレプトマイセス・グリセウスのgriC遺伝子およびgriD遺伝子の破壊株をそれぞれ作製した。即ち、griC遺伝子破壊株においては、グリキサゾン生合成遺伝子群のgriC上流の遺伝子からgriCの一部までを含む断片とgriCの途中から下流までの遺伝子を含む断片とをそれぞれサブクローニングした後、マルチクローニングサイトを含んだリンカーを介して連結した。この連結した断片のすぐ隣に抗生物質耐性遺伝子を組み込んでgriC破壊用プラスミドを作製した。griD遺伝子破壊株においては、グリキサゾン生合成遺伝子群のgriD上流の遺伝子からgriDの一部まで含む断片とgriDの途中から下流までの遺伝子を含む断片とをそれぞれサブクローニングした後、マルチクローニングサイトを含んだリンカーを介して連結した。この連結した断片のすぐ隣に抗生物質耐性遺伝子を組み込んでgriD破壊用プラスミドを作製した。
これらの破壊用プラスミドより一本鎖環状DNAを調製し、野生株であるストレプトマイセス・グリセウスにプロトプラスト法により一本鎖環状DNAを導入し、プラスミドが相同組換えにより染色体上に組み込まれた株を、抗生物質耐性を指標に選抜した。さらに、抗生物質を抜いた培地でこれらの株を数回植え継ぎした後、相同組換えにより、薬剤耐性遺伝子およびベクター部分が欠落するとともに野生型のgriCあるいはgriD遺伝子が、欠失型の遺伝子と置換したgriCあるいはgriD破壊株(ストレプトマイセス・グリセウスΔgriC株あるいはΔgriD株)を、薬剤感受性を指標に取得した。なお、目的の遺伝子破壊が相同組換えにより正しく起こっていることはサザンハイブリダイゼーションにより確認した。
griC遺伝子を破壊したΔgriC株、およびgriD遺伝子を破壊したΔgriD株は、いずれも3,4-AHBAを培地中に蓄積するようになったが、3,4-AHBALを培地中へ蓄積することができなかった。また、3,4-AHBAを培地へ添加しても3,4-AHBALを合成することができなかった。
(II) griC、griD遺伝子のセルフクローニング株作製
さらにgriC遺伝子およびgriD遺伝子の機能を探るため、放線菌での該遺伝子の発現を検討した。即ち、griC遺伝子およびgriD遺伝子を発現させた組換えストレプトマイセス・グリセウス株(griC、griD遺伝子のセルフクローニング株)を作製した。本組換え株は、組換えプラスミドpIJ702-griCDを野生株であるストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350
にプロトプラスト法により導入したものである。なお、組換えプラスミドpIJ702-griCDの構築については後述する。
得られたセルフクローニング株(形質転換株)を3,4-AHBA含有培地で培養した結果、非形質転換株に比べ3,4-AHBALの蓄積量が向上することを見出した。以上の結果より、griC遺伝子およびgriD遺伝子がコードするのは3,4-AHBAに高い特異性を有するアロマティックカルボキシレートリダクターゼであることが確認された。
(III) griG遺伝子産物の同定
上記griG産物の推定アミノ酸配列が、図4に示したように他の安息香酸トランスポーターのアミノ酸配列と相同性を有することが確認された。そこで、上記3-1に記載したgriC、griD遺伝子破壊株の作製と同様の操作により、griG遺伝子を破壊したストレプトマイセス・グリセウスΔgriG株を作製した。即ち、グリキサゾン生合成遺伝子群のgriG上流の遺伝子からgriGの一部まで含む断片とgriGの途中から下流までの遺伝子を含む断片とをそれぞれサブクローニングした後、マルチクローニングサイトを含んだリンカーを介して連結した。このマルチクローニングリンカー部位に抗生物質耐性遺伝子を組み込んでgriG破壊用プラスミドを作製した。この破壊用プラスミドより一本鎖線状DNAを調製し、野生株であるストレプトマイセス・グリセウスにプロトプラスト法により一本鎖線状DNAを導入した。相同組換えにより染色体上のgriG遺伝子が抗生物質耐性遺伝子を挿入することによって破壊したgriG遺伝子と入れ代わった株を、抗生物質耐性を指標に選抜した。目的の遺伝子破壊が相同組換えにより正しく起こっていることはサザンハイブリダイゼーションにより確認した。
ストレプトマイセス・グリセウスΔgriG株はグリキサゾンの合成能力を失っており、かつ3,4-AHBA修飾体、3,4-AHBALおよびその修飾体、さらにAPOCの合成も殆ど停止することが確認された。また、ΔgriG株においては培地に添加した3,4-AHBAの菌体内への取り込みが極端に低下していることを示唆する結果が得られた。
次いでgriC、griD遺伝子とgriG遺伝子とを共発現させた組換えストレプトマイセス・グリセウス株を作製した。本組換え株は、組換えプラスミドpIJ702-griCDGを野生株であるストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350にプロトプラスト法により導入したものである。なお、組換えプラスミドpIJ702-griCDGの構築については後述する。
griC、griD遺伝子とgriG遺伝子とを共発現させた組換え株は、griC、griD遺伝子のみを発現させた組換え株に比べ、3,4-AHBAの添加培地において3,4-AHBAから3,4-AHBALへの変換を促進することが確認された。以上の結果より、griG遺伝子産物であるGriGはグリキサゾン生合成経路において一度菌体外へ排出された3,4-AHBAを再度菌体内へ取り込むためのトランスポーターとして機能していることが確認された。
〔実施例2:アリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼの解析〕
放線菌により3,4-AHBAおよび3,4-AHBALを培養中に生産する場合、それぞれのアミノ基にアセチル基が結合した修飾体が副生する。このアミノ基を含んだ部分の領域はアリルアミン構造をとっていることから、アミノ基はアリルアミン構造に特異的なアセチルトランスフェラーゼにより修飾されている可能性が予想された。3,4-AHBALの製造において培養液中の副生物量が少ない方が工程の簡略化が期待できるため、副生物の少ない宿主の造成を検討した。
放線菌ではアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼとしての酵素活性が確認された遺伝子の報告が無かったため、他の微生物起源のアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子情報からプローブを作製し、ストレプトマイセス・グリセウスのゲノムDNAよりアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ(nat)ホモログ遺伝子をPCRによりクローニングした。
(1)nat遺伝子のクローニング、発現ベクターの構築および形質転換体の取得
ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350のnat遺伝子のクローニングを行った。ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350をLB培地(100ml仕込/500ml容坂口フラスコ)に植菌し30℃で24時間振とう培養を行った。得られた培養液から遠心分離により菌体を回収した。得られた菌体から市販のDNA抽出キット(MagExtractor -Genome-;東洋紡製)を用いてgenome DNAを抽出した。本DNAを鋳型とし、配列番号10(5'-GCATATGACTCTCGACCTCGAC-3')および配列番号11(5'-GCTCGAGTCACTCCGGCAGCCGGAC-3')のオリゴDNA(プライマー)と市販のKODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡製)により説明書に添付の方法でPCRを行い、nat遺伝子を増幅した。増幅したDNA断片は、市販のPCR精製キット(MagExtractorR -PCR & Gel Clean up-東洋紡製)で精製後、市販のPCRクローニング用プラスミドベクターpCR4Blunt-TOPO(Invitrogen社製)と連結し、大腸菌JM109のコンピテントセル(東洋紡製)を形質転換した。形質転換体から得られた組換えプラスミドのDNAシークエンスを確認後、制限酵素NdeI(東洋紡製)とXhoI(東洋紡製)で処理し、nat遺伝子を含む断片をアガロースゲル電気泳動により分離・回収した。一方、大腸菌用プラスミドベクターpET-16b(Novagen社製)も同じ制限酵素で処理した後、両者を市販のライゲーションキット(東洋紡製)で連結し、大腸菌BL21(DE3)/pLysSを形質転換し、Natを発現する形質転換体を取得した。なお、この組換えプラスミドはnat遺伝子発現ベクターとしてpET16b-SgNATと命名した。
上記により得られたストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350のnat遺伝子の塩基配列を配列番号7に、nat遺伝子産物の推定アミノ酸配列を配列番号8に示した。図5に示したように、配列番号8に示される推定アミノ酸配列を他起源アリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と比較した結果、高い相同性が確認された。
(2)nat遺伝子産物(Nat)の発現および精製
得られた組換え大腸菌(大腸菌BL21(DE3)/pLysS pET16b-SgNAT)を50μg/mlアンピシリンと34μg/mlクロラムフェニコールを含んだLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.4:30ml仕込み/500ml容坂口フラスコ)に植菌し、30℃で一晩振とう培養した。この培養液を50μg/mlアンピシリン、34μg/mlクロラムフェニコールおよび1%のラクトースを含んだLB培地(120ml/2L容坂口フラスコ仕込み)に10%植菌し、26.5℃で24時間振とう培養した後、遠心分離により菌体を回収した。回収した菌体をNAT抽出緩衝液(20%グリセロール、0.5M NaCl、15mM 2-メルカプトエタノールを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液pH8.0)に懸濁した後、終濃度1mg/mlとなるようリゾチームを加え、超音波処理により菌体を破砕した。この菌体破砕液から遠心分離により不溶性画分を除去した。さらに回収した上清液に終濃度0.1%となるようポリエチレンイミンを添加し、生じた不溶性画分を再び遠心分離により除去して回収した上清液をNat粗酵素液とした。
上記の粗酵素液に終濃度10mMとなるようイミダゾールを添加した。本粗酵素液を10mMイミダゾール(pH8.0)で平衡化したHisTrap HPカラム(GEヘルスケアーバイオサイエンス社製)に供し、洗浄液I(20mMイミダゾール、pH8.0)および洗浄液II(100mMリン酸ナトリウム,15mM 2-メルカプトエタノール,50mMイミダゾール、pH8.0)で洗浄した後、溶出用のリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.0(100mMリン酸ナトリウム,15mM 2-メルカプトエタノール,250mMイミダゾール)にて溶出した。得られた精製NatはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動において均一なバンドを示し、推定される分子量は約32キロダルトンであった。この値は、配列番号8に示されるアミノ酸配列から推定される分子量と一致した。
(3)精製NatのアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ活性測定および基質特性
アリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ活性の測定は以下の方法で行った。即ち、0.1mlの活性測定液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、2mMアセチル-CoA、1mM3,4-AHBA,pH7.0)に酵素液0.01mlを加え、30℃、20分間反応させた。この反応液をTSKgel-ODSカラム(東ソー社製)を用いたHPLCで分析し、アセチル化された産物を定量して酵素活性を算出した。
基質特性評価は3,4-AHBAの代わりに各種のアセチル受容体を基質として添加し、アリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ活性測定時と同様に反応させた。この反応液に、等量の20%トリクロロ酢酸を加えて反応を停止した。反応停止液にさらに4倍量の5%ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液を添加し、残存するアセチル受容体とカップリングさせた。この時生じる色素量を450nmの吸光度で測定し、残存するアシルアクセプターの量を算出することで、酵素反応時に消失したアセチルアクセプター量を逆算して酵素活性を算出した。
結果を表1に示した。本アリルアミンN-アセチルトランスフェラーゼは3,4-AHBAおよび2-アミノ-4-メチルフェノールに対する特異性が最も高かった。本結果より、今回単離したnat遺伝子はアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼをコードし、かつ3,4-AHBAおよび3,4-AHBALの修飾に関与していることが示された。
〔実施例3:アリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子破壊株(Δnat株)の作製〕
(1)nat遺伝子破壊用ベクターの構築
上記実施例2(1)で取得したnat遺伝子、並びにその上流とおよび下流のgenome DNAの塩基配列解析に基づいて、以下の配列番号12〜15のプライマーを合成した。
配列番号12:5'-GCATATGGTTGTTGACGGCGACCAC-3'
配列番号13:5'-GAAGCTTCGGGCGAAGTACGCGTCG-3'
配列番号14:5'-GCATATGCTGCAGAAGCTTCGGCATCCGGCTCCCTG-3'
配列番号15:5'-GCCCAGTTCGTCGGTGAC-3'
実施例2(1)で取得したストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350のgenome DNAを鋳型とし、配列番号12と配列番号13とのプライマーの組合せでPCRを行い、nat遺伝子のN末端から上流の一部を含む約2Kbの増幅断片を得た。また同様に配列番号14と配列番号15とのプライマーの組合せでPCRを行いnat遺伝子下流からC末端までの一部を含む約2Kbの増幅断片を得た。それぞれのPCR増幅断片は、PCR精製キット(東洋紡製)で精製後、pCR4Blunt-TOPO(Invitrogen社製)と連結して組換えプラスミドを作成した。このとき得られた組換えプラスミドでnat遺伝子のN末端から上流の一部を含むプラスミドをpΔNAT-up、nat遺伝子の下流の一部からC末端領域を含むプラスミドをpΔNAT-downと命名した。
得られた組換えプラスミドpΔNAT-upは制限酵素NdeIとHindIII(東洋紡製)で切断し、アガロースゲル電気泳動により分離してnat遺伝子を含む断片を回収した。一方、pΔNAT-downも同様にNdeIとHindIIIで切断し、アガロースゲル電気泳動により分離してベクターに由来する大断片を回収した。この両DNA断片をライゲーションキットにより連結して組換えプラスミドpΔNAT1を構築した。さらにクレブシラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)のトランスポゾン5(Tn5)からカナマイシン耐性遺伝子をコードする約1.1KbのHindIII断片をpΔNAT1のHindIII部位へ挿入しnat遺伝子破壊用プラスミドpΔNAT2を取得した。
なお、nat遺伝子破壊用ベクター構築の概略を図6に示した。この組換えプラスミドにはnat遺伝子の約0.7Kb分の欠失が生じている。
(2)pΔNAT2によるnat遺伝子破壊株の取得
上記pΔNAT2の溶液に1/10液量の2N NaOH溶液を加え、37℃で5分間放置しDNAをアルカリ変性した。この溶液に5M酢酸アンモニウム溶液、pH4.5を1/10量添加して中和した後、エタノール沈殿により1本鎖に変性したp△NAT2を回収した。
ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350へのpΔNAT2の導入はD.A. Hopwoodらの方法(Genetic manipulation of Streptomyces -A laboratory manual, 1985 The John Innes Foundation, Norwich)に従ったプロトプラスト形質転換法で行った。形質転換には変性したpΔNAT2 1μgを用い、再生培地上でネオマイシン耐性を指標に形質転換株を1次選抜した。その後ネオマイシンを含まないSMM液体培地(ブドウ糖0.9%、L-アスパラギン0.9%、硫安0.2%、食塩0.01%、KH2PO40.034%、K2SO4 0.005%、MgSO4・7H2O 0.002%、CaCl2・2H2O 0.001%、微量金属塩溶液1%[40 mg ZnCl2, 200 mg FeCl3・6H2O, 10 mg CuCl2・2H2O, 10 mg MnCl2・4H2O, 10 mg Na2B4O7・10H2O, 10 mg (NH4)6Mo7O24・2H2O / l]、10 mM Trizma base、pH7.2)で3回植え継ぎした後、ネオマイシン耐性を維持している株からnat遺伝子破壊株を選抜し、ストレプトマイセス・グリセウスΔNATと命名した。なお、野生型nat遺伝子が欠失型nat遺伝子と正しく置換されていることは、図7に示したようにサザンハイブリダイゼーションによって確認した。
〔実施例4:griC、griDおよびgriGの共発現ベクター構築〕
実施例1(3)で得たグリキサゾン代謝遺伝子群の解析結果に基づいて、griC、griDおよびgriG各遺伝子の共発現ベクターを構築した。なお、griC、griDおよびgriGの共発現ベクター構築の概略を図8に示した。
(1)組換えプラスミドpIJ702-griCDの構築
上記実施例2(1)で取得したストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350のgenome DNAを鋳型とし、配列番号16(5'-GCATGCTCCTCATCGATGATC-3')と配列番号17(5'-AGATCTTCAGCGCCGGGCCACGAC-3')とのプライマーの組合せでPCRを行い、griCとgriDの両遺伝子全長約2.4Kbの断片を増幅した。増幅したDNA断片は、PCR精製キット(東洋紡製)で精製後、pCR4Blunt-TOPO(Invitrogen社製)に結合し、組換えプラスミドpCR-griCDを得た。得られたpCR-griCDを制限酵素SphI(東洋紡製)とBglII(東洋紡製)で2重切断した後、アガロースゲル電気泳動によりgriC遺伝子およびgriD遺伝子を含んだ約2.4Kbの断片を分離・回収した。なお、griCとgriDの両遺伝子全長の塩基配列を配列番号9に示した。
一方、放線菌用発現ベクターpIJ702(Katz, E., Thompson, C. J. & Hopwood, D. A. Cloning and expression of the tyrosinase gene from Streptomyces antibioticus in Streptomyces lividans. J. Gen. Microbiol. 129, 2703-2714 (1983))からチロシナーゼ遺伝子(melC1, melC2)のコーディング領域を欠失させ、その部位にSphI, BglII, EcoRI部位を含むリンカーを導入してpIJ702ΔmelCを構築した。このpIJ702ΔmelCをSphIとBglIIで処理・回収し、上記のgriC遺伝子およびgriD遺伝子を含むDNA断片とライゲーションキットにより結合した。得られた組換えプラスミドはpIJ702から誘導したpIJ702ΔmelC中のチロシナーゼオペロン(melC)プロモーター下流にgriC、griD遺伝子が挿入されており、pIJ702-griCDと命名した。
(2)組換えプラスミドpIJ702-melCの構築
放線菌用発現ベクターであるプラスミドpIJ702を鋳型とし、配列番号18(5'-CTGCAGAAGCTTGAATTCTGATCACGTCAGTTTTC-3')と配列番号19(5'-AAGCTTCTGCAGTTGTAGATCTCGTCGAAG-3')とのプライマーの組合せでPCRを行い、melCプロモーター領域約0.5Kbを増幅した。この増幅断片を制限酵素HindIIIとPstI(東洋紡製)で2重切断した。一方、同じ制限酵素でプラスミドpUC19を切断後、上記melCプロモータ領域を含むDNA断片とライゲーションキットにより連結し、得られた組換えプラスミドをpUC703と命名した。
次いで、pUC703を制限酵素EcoRI(東洋紡製)とBglIIで2重切断し、melCプロモーター領域を含むDNA断片をアガロースゲル電気泳動により分離・回収した。一方、放線菌用発現ベクターpIJ702ΔmelCも同じ制限酵素で処理・回収し、melCプロモーターを含むDNA断片とライゲーションキットにより結合して、組換えプラスミドpIJ702-melCを得た。
(3)組換えプラスミドpIJ702-griGの構築
上記(2)で得た組換えプラスミドpUC703を制限酵素SphIで消化した後,T4 DNA polymerase(東洋紡製)で平滑末端化し、続いて制限酵素BglIIで切断し、アガロースゲル電気泳動により分離回収して直鎖状のプラスミドを得た。
ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350のgenome DNAを鋳型とし、配列番号20(5'-CATGTACGCAGTACTCGCC-3')と配列番号21(5'-CTCGAGAGATCTTCAACGAGTTCTGCCTG-3')とのプライマーの組合せでPCRを行い、griG遺伝子全長約1.4Kbの断片を増幅した。得られた増幅断片はPCR精製キットで精製後、制限酵素BglII処理を行い、先に得られた直鎖プラスミドとライゲーションキットにより連結して組換えプラスミドpUC703-griGを得た。さらにpUC703-griGを制限酵素EcoRIとBglIIで切断し、griG遺伝子を含む領域をアガロースゲル電気泳動により分離・回収した。一方、pIJ702ΔmelCも同じ制限酵素処理を行った後、アガロースゲル電気泳動で複製領域を含む断片を回収した後、前述のgriG断片とライゲーションキットにより連結し、組換えプラスミドpIJ702-griGを構築した。
(4)組換えプラスミドpIJ702-griCDGの構築
上記(3)で得たpIJ702-griGを制限酵素NdeIとBglIIで切断した後、griG遺伝子を含む断片をアガロースゲル電気泳動で分離・回収した。また、上記(1)で得たpIJ702-griCDも同様に制限酵素NdeIとBglIIで切断し、griC、griD遺伝子を含むDNA断片をアガロースゲル電気泳動により分離・回収した。この両DNA断片をライゲーションキットにより連結し、griC、griDおよびgriG遺伝子が同時に発現できる組換えプラスミドpIJ702-griCDGを構築した。
〔実施例5:3,4-AHBALの発酵生産〕
(1)3,4-AHBALの生産菌の作製
上記実施例4で構築した組換えプラスミドpIJ702-griCDGで、上記実施例3で得たnat遺伝子欠損株であるストレプトマイセス・グリセウスΔNATを形質転換して3,4-AHBAL生産菌を作製した。なお、ストレプトマイセス・グリセウスΔNATの形質転換は、上記実施例3(2)に記載した方法で実施した。
(2)3,4-AHBALおよびその修飾体の生産
上記の組換えストレプトマイセス・グリセウスΔNAT株を100mlのSMM培地へ植菌し、26.5℃で24時間振とう培養を行った。その後、終濃度1.53mg/ml(10mM)の3,4-AHBAを添加して2日間振とう培養を継続した。この培養液をTSKgel-ODSカラム(東ソー社製)を用いたHPLCで分析した。その際の分析用の溶媒は水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の混合溶媒で分離した。その結果、3,4-AHBALおよびそのアセチル誘導体は図9に示したチャートのように分離した。また、図10に示したように、本組換えストレプトマイセス・グリセウスΔNAT株を用いた場合、その培養液あたりに生産された3,4-AHBAL類のうち、3,4-AHBAL含有比率は約85%となり、アセチル修飾体の副生を抑制することで高純度の3,4-AHBALの生産が可能であった。
〔実施例6:3,4-AHBALおよびアセチル誘導体の精製〕
実施例5で得られた培養液から遠心分離により菌体を除去した後、等量の酢酸エチルを添加し、分液ロート中で十分混合して2層分配した後、有機溶媒層に3,4-AHBALとそのアセチル誘導体を回収した。次いで、回収した酢酸エチルに等量の0.1N HClを添加し十分混合した後、培養液からの抽出と同様にして2層分配し、3,4-AHBALを水層に、アセチルアミノ誘導体を酢酸エチル層に回収した。3,4-AHBAL溶液は1N NaOHで中和した後、再度等量の酢酸エチルを添加混合した後、酢酸エチル層に3,4-AHBALを抽出した。その後減圧乾燥により濃縮した後、分取用のODSカラムクロマトにより精製3,4-AHBAL画分を取得した。最初に分取したアセチルアミノ誘導体はそのまま減圧乾固して回収した。
〔実施例7:3,4-AHBALアセチルアミノ誘導体の脱アセチル化および3,4-AHBAL画分の回収〕
攪拌器、温度計および冷却管を装備した反応フラスコに実施例6で取得した3,4-AHBALアセチルアミノ誘導体粗精製物の全量と1N HClを3.0ml入れ、98℃加熱還流下、2時間撹拌した。反応終了後、反応処理液は薄い褐色を示していた。反応液を室温まで冷却したのち該反応液に活性炭粉末0.15gを入れた。室温で30分間、活性炭粉末を撹拌した後、該活性炭粉末をフィルター濾過することによって無色の上清を回収した。回収した上清をロータリーエバポレーターによって減圧濃縮して脱アセチル化された精製3,4-AHBAL画分を取得した。
〔実施例8:3,4−AHBALからのポリアゾメチンの製造〕
3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド13.615gおよびモレキュラーシーブス3.250gをN−メチルピロリドン18ml中で、窒素気流下20℃、24時間撹拌した。得られたポリアゾメチンの還元粘度は0.2dl/gであった。
〔実施例9:ポリアゾメチンからのPBOの製造〕
上記実施例で重合したアゾメチン溶液を5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上に流延した。その後、室温にて24時間3mmHg、次いで100℃、200℃にて各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。このプレートを空気中で350℃、1時間加熱してポリベンザゾールへの転換を行い、白色の樹脂が得られた。
本発明によって、染料、農薬、医薬品その他有機合成品の中間体やAB-PBOのモノマーとして有用である3,4-AHBALを簡便安価に製造することができる。さらに、本発明によって得られた3,4-AHBALを重合することで新規なPBO類が得られる。これにより高強度、高弾性率、高耐熱性を有するPBO繊維やPBOフィルムなどを安価に提供することが可能となる。なおかつ、本発明によって、環境低負荷型の地球環境に対して優しい製造方法を提供できるので、産業の発展に大いに寄与できる。
グリキサゾン生合成遺伝子クラスターの遺伝地図を示す図である。 griC産物の推定アミノ酸配列を他の微生物由来AMP結合性タンパク質のアミノ酸配列と比較した結果を示す図である。 griD産物の推定アミノ酸配列を他の微生物由来アルデヒドデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と比較した結果を示す図である。 griG産物の推定アミノ酸配列を他の安息香酸トランスポーターのアミノ酸配列と比較した結果を示す図である。 ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350のnat遺伝子産物の推定アミノ酸配列と、他起源アリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列とを比較した結果を示す図である。 nat遺伝子破壊用ベクター構築の概略を示す図である。 nat遺伝子破壊株確認のサザンハイブリダイゼーション結果を示す図である。 griC、griDおよびgriGの共発現ベクター構築の概略を示す図である。 培養液のHPLC分析結果を示すチャートである。 培養液中の3,4-AHBALと修飾3,4-AHBALの含量を示すグラフである。

Claims (25)

  1. 3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造に用いられる微生物であって、
    アロマティックカルボキシレートリダクターゼ(aromatic carboxylate reductase)をコードする遺伝子が導入されており、
    上記アロマティックカルボキシレートリダクターゼをコードする遺伝子が、放線菌のグリキサゾン生合成遺伝子クラスターに存在するgriCおよびgriDであることを特徴とする微生物。
  2. 3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーター(3-amino-4-hydroxybenzoic acid transporter)をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  3. 上記3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸トランスポーターをコードする遺伝子が、放線菌のグリキサゾン生合成遺伝子クラスターに存在するgriGであることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  4. 上記微生物のゲノム中のN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊されていることを特徴とする請求項またはに記載の微生物。
  5. 上記N−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子がアリルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  6. 上記微生物が放線菌であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微生物。
  7. 上記放線菌がグリキサゾン生合成経路を有する放線菌であることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  8. 上記グリキサゾン生合成経路を有する放線菌がストレプトマイセス属の放線菌であることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  9. 上記ストレプトマイセス属の放線菌がストレプトマイセス・グリセウス(Streptomycesgriseus)であることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  10. 上記ストレプトマイセス・グリセウスがストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350であることを特徴とする請求項に記載の微生物。
  11. 上記ストレプトマイセス・グリセウスNBRC13350がストレプトマイセス グリセウス ΔNAT(pIJ702−griCDG)株(受領番号NITE AP−248)であることを特徴とする請求項10に記載の微生物。
  12. 放線菌のゲノム中の遺伝子griFが破壊されていることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載の微生物。
  13. 放線菌のグリキサゾン生合遺伝子クラスターに存在する3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子griHおよびgriIが導入されていることを特徴とする請求項1〜および12のいずれか1項に記載の微生物。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程;および
    培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを回収・精製する工程
    を包含することを特徴とする3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程;
    培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収する工程;
    3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を脱修飾する工程;および
    3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを精製する工程
    を包含することを特徴とする3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
  16. 上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体が3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドであり、上記脱修飾が脱アセチル化であることを特徴とする請求項15に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
  17. 上記微生物を培養する工程において、培養液に3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体を添加することを特徴とする請求項14または15に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
  18. 上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体が3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸であることを特徴とする請求項17に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
  19. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程;および
    培養液から3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体を回収・精製する工程を包含することを特徴とする3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
  20. 上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体が3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドであることを特徴とする請求項19に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
  21. 上記微生物を培養する工程において、培養液に3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体を添加することを特徴とする請求項20に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
  22. 上記3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの前駆体が3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸であることを特徴とする請求項21に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド修飾体の製造方法。
  23. 請求項1418のいずれか1項に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法により得られた3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを重合して得られることを特徴とするポリマー。
  24. 請求項1418のいずれか1項に記載の3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法により得られた3−アミノ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドを有機溶剤中で重合することを特徴とするポリアゾメチンの製造方法。
  25. 請求項24に記載のポリアゾメチンの製造方法により得られたポリアゾメチンを空気中で加熱してオキサゾール環を形成することを特徴とするポリベンゾオキサゾールの製造方法。
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