JP5109288B2 - 非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池 - Google Patents

非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池に関し、さらに詳しくは、負極活物質として、Si原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を含有する物質を用いた場合に、優れた充放電サイクル特性が得られる非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液に関する。
近年の電気製品の軽量化、小型化に伴い、高いエネルギー密度をもつリチウム二次電池の開発が進められている。また、リチウム二次電池の適用分野が拡大するにつれて電池特性のより一層の改善が要望されている。
このような状況において、金属リチウムを負極とする二次電池が、高容量化を達成できる電池として盛んに研究されている。しかしながら、金属リチウムには、充放電の繰り返しにより金属リチウムがデンドライト状に成長し、これが正極に達し電池内部での短絡が生じてしまうという問題があり、これが金属リチウムを負極とするリチウム二次電池を実用化する際の最大の障害となっている。
金属リチウムに代えて、負極にコークス、人造黒鉛又は天然黒鉛等のリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素質材料を用いた非水系電解液二次電池が提案されている。このような非水系電解液二次電池では、リチウムがデンドライト状に成長しないため、電池寿命と安全性とを向上させることができる。特に、人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系炭素質材料を用いた非水系電解液二次電池は、高容量化の要求に応え得るものとして注目されている。また、これらグラファイト類を負極として用いた場合、理論容量としては通常300mAh/g程度であることが知られている。
近年、より高い容量を得るために、例えば、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、鉛(Pb)などの合金からなる負極活物質が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
また、リチウムと合金化する材料を負極活物質に用いたリチウム二次電池について、充放電サイクル特性を向上させることが検討されている。例えば、特許文献2には、環内にS及び/又はOを含む複素環式化合物を非水系電解液に添加して、負極活物質の表面に被膜を形成し、充放電サイクル特性を向上させている。
しかし、この特許文献2では、飽和環状カーボネートと、炭素数3以上の置換基を少なくとも一つもつ非環状カーボネートとを同時に用いることの記載はなく、さらには、50サイクル以上の充放電サイクル特性についての記載がなく、実際には長期の充放電サイクルでの性能が不十分であった。
このようなことから、電池の更なる高性能化のために、負極活物質としてSi,Sn,Pbなどを用いた非水系電解液二次電池における長期の充放電サイクル特性の向上が求められている。
特開平11−176470号公報 特開2004−87284号公報
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、負極活物質として Si、Sn、Pb、或いはこれらの元素を含有する物質を用いた場合に、長期に亘り優れた充放電サイクル特性が得られる非水系電解液二次電池、及びそれに使用する非水系電解液を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、炭素数3以上のアルキル基又はフルオロアルキル基を少なくとも一つもつ鎖状カーボネートと、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートとを非水系電解液中に含有させることによって、それぞれ単独の使用では解決することができなかった上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明の要旨は、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる負極及び正極と非水系電解液とを備え、該負極がSi原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する負極活物質を含む非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、
下記一般式(1)
(式(1)中、nは3以上、mは1以上の整数であって、nとmの和が5以上であり、かつ水素原子の一部は、フッ素原子により置換されていても良く、フッ素原子の置換数は6以下である。)
で表される鎖状カーボネートと、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートとを含有することを特徴とする非水系電解液に存する。
本発明の別の要旨は、上記非水系電解液が供される非水系電解液二次電池、に存する。
本発明によれば、負極活物質としてSi原子、Sn原子及びPb原子よるなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する物質を用いた非水系電解液二次電池において、非水系電解液に特定の鎖状カーボネートと、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートとを共存させることにより、長期に亘り優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
上記特定の鎖状カーボネートと飽和環状カーボネート、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートとを含む本発明の非水系電解液により、充放電サイクル特性が向上する理由の詳細は明らかではないが、次のように推定される。
即ち、本発明においては、非水系電解液中に含まれる鎖状カーボネートが炭素数3以上のアルキル基又はフルオロアルキル基を有することにより、上記金属原子を含む負極活物質に対する活性が低いものとなり、これにより副反応が抑えられ、サイクル劣化が抑制される。また、この鎖状カーボネートのアルキル基又はフルオロアルキル基の合計の炭素数が5以上であることによっても、同様の効果が得られる。このようにして鎖状カーネートの副反応が抑制された状況で不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートによる良好な被膜が形成される。そして、飽和環状カーボネートにより、電解質の溶解性が高められることによっても充放電サイクル特性の向上が図れる。
なお、このような特定の鎖状カーボネートと、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートとを併用することによる本発明の効果は、負極活物質としてSi原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する物質を用いた場合に特有のものであり、後述の比較例5、6に示されるように、負極活物質として炭素材料を用いた場合には、このような長期充放電サイクル特性の向上効果は得られない。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定はされない。
[I.非水系電解液]
まず、本発明の非水系電解液について説明する。
本発明の非水系電解液は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極及び正極と非水系電解液とを備え、該負極がSi原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する負極活物質を含有する非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液である。
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を有する。更に、下記一般式(1)で表わされる化合物(以下適宜、「特定化合物」という。)と、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネート(以下適宜、「特定カーボネート」という。)とを、それぞれ少なくとも1種含有する。加えて、その他の成分(添加剤等)を含有していてもよい。
以下の記載では、まず特定化合物、飽和環状カーボネート及び特定カーボネートについて説明し、続いて電解質及び非水溶媒について説明した上で、その他の成分についても触れることにする。
〔I−1.特定化合物〕
本発明に係る特定化合物は、下記一般式(1)で表わされる鎖状カーボネートである。
(式(1)中、nは3以上、mは1以上の整数であって、nとmの和が5以上であり、かつ水素原子の一部は、フッ素原子により置換されていても良く、フッ素原子の置換数は6以下である。)
上記一般式(1)において、−CnH2n+1(以下「第1置換基」と称する場合がある。)の炭素数nは通常3以上、6以下、好ましくは5以下である。nがこの上限を上回ると、非水系電解液の粘性が上がる傾向がある。
本発明において、第1置換基の炭素数nを3以上とする理由は、上記金属原子を含む負極活物質に対して、第1置換基の炭素数nをn≧3として鎖状カーボネートの活性を下げることにより、サイクル劣化を抑制するためである。また、分子量が小さいカーボネートは活性が高く、副反応によりサイクル劣化が生じやすいが、n≧3の第1置換基を有する鎖状カーボ ネートであれば、分子量が大きくなり、この問題が軽減される。
第1置換基としては、具体的には、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1、2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2、3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、などが挙げられる。これらの中でも特にn−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基が好ましい。
一方、上記一般式(1)において、−C2m+1(以下「第2置換基」と称する場合がある。)の炭素数mは1以上で、nとmの和が、通常5以上、好ましくは9以下、より好ましくは7以下となる整数である。n+mが、この下限を下回ると、この鎖状カーボネートの分子量が小さいことにより活性が高くなり、副反応によるサイクル劣化を生じやすい。n+mがこの上限を上回ると溶質が溶解しにくくなり、電解液化が困難となる。
第2置換基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1、2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2、3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、などが挙げられる。これらの中でも、特に、メチル基、エチル基が好ましい。
第1置換基及び/又は第2置換基の水素原子は、一部又は全部がフッ素原子により置換されていても良い。フッ素は耐酸化性が高いので置換元素として好ましい。鎖状カーボネート中のフッ素原子の置換数は特に制限はないが、6以下が好ましい。
一般式(1)で表される鎖状カーボネートの分子量は、通常132以上であり、通常188以下、好ましくは160以下である。分子量がこの上限を上回ると溶質が溶解しにくくなる傾向がある。
一般式(1)で表される鎖状カーボネートとしては、例えば、
ジ−n−プロピルカーボネート、
ジイソプロピルカーボネート、
n−プロピルイソプロピルカーボネート、
ジ−n−ブチルカーボネート、
ジ−i−プロピルカーボネート、
ジ−t−ブチルカーボネート、
n−ブチル−i−ブチルカーボネート、
n−ブチル−t−ブチルカーボネート、
i−ブチル−t−ブチルカーボネート、
n−ブチルメチルカーボネート、
i−ブチルメチルカーボネート、
t−ブチルメチルカーボネート、
エチル−n−プロピルカーボネート、
n−ブチルエチルカーボネート、
i−ブチルエチルカーボネート、
t−ブチルエチルカーボネート、
n−ブチル−n−プロピルカーボネート、
i−ブチル−n−プロピルカーボネート、
t−ブチル−n−プロピルカーボネート、
n−ブチル−i−プロピルカーボネート、
i−ブチル−i−プロピルカーボネート、
t−ブチル−i−プロピルカーボネート、などが挙げられる。
また、一般式(1)で表される鎖状カーボネートにおいて、水素原子がフッ素原子で置換された鎖状カーボネートとしては、例えば、
4−モノフルオロブチルメチルカーボネート、
4,4−ジフルオロブチルメチルカーボネート、
4,4,4−トリフルオロブチルカーボネート、
メチル−3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチルカーボネート、
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメチルカーボネート、
エチル−3−モノフルオロプロピルカーボネート、
3,3−ジフルオロプロピルエチルカーボネート、
エチル−3, 3,3−トリフルオロプロピルカーボネート、
エチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロカーボネート、
2−モノフルオロエチルプロピルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルプロピルカーボネート、
プロピル−2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチル−3,3,3−トリフルオロプロピルカーボネート、
3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル−2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、
3−モノフルオロプロピルプロピルカーボネート、
3,3−ジフルオロプロピルプロピルカーボネート、
プロピル−3,3,3−トリフルオロプロピルカーボネート、
3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピルプロピルカーボネート、
ビス−2−モノフルオロプロピルカーボネート、
ビス−2,2−ジフルオロプロピルカーボネート、
ビス−2,2,2−トリフルオロプロピルカーボネート、
ビス−3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピルカーボネート、などが挙げられる。
一般式(1)において、nとmが異なる整数である化合物、即ち非対称カーボネートが好ましく、それらの中で、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネートが電解液としての粘度、伝導度などの基礎特性の観点から好ましい。また、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネートがサイクル特性などの電池特性が良好である点から好ましい。これらの中でもエチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネートが特に好ましい。
一般式(1)で表される鎖状カーボネートは、非水系電解液中に1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
一般式(1)で表される鎖状カーボネートの配合量は、非水系電解液に対して、通常50体積%以上、好ましくは60体積%以上であり、この下限を下回るとリチウム塩の解離度が低下して、電解液の電気伝導率が低下することもある。また、配合量は、通常95体積%以下、好ましくは90体積%以下であり、この上限を上回ると電解液の粘度が上昇する傾向がある。
〔I−2.飽和環状カーボネート〕
上記一般式(1)で表される鎖状カーボネートと併用される飽和環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。また、これらの環状カーボネートの任意の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
上記環状カーボネートの任意の水素原子がフッ素原子で置換された化合物としては、例えば、
フルオロエチレンカーボネート、
クロロエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(ジクロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(トリクロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−4−クロロエチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−5−クロロエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート、等が挙げられる。
これらのうち、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネートが、誘電率が高いため溶質が溶解しやすく、電池にしたときにサイクル特性が良い点で好ましい。
これらの飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
この飽和環状カーボネートの配合量は、非水系電解液に対して、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上であり、この下限を下回ると溶質を溶かす際に溶けにくくなる傾向がある。また、通常50体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、この上限を上回ると電解液の粘度が上昇する傾向がある。
〔I−3.特定カーボネート〕
本発明に係る特定カーボネートは、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートである。即ち、本発明に係る特定カーボネートは、不飽和結合のみを有していてもよく、ハロゲン原子のみを有していてもよく、不飽和結合及びハロゲン原子の双方を有していてもよい。
不飽和結合を有するカーボネート(これを適宜「不飽和カーボネート」と略称する。)としては、炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合等の炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネートであればその他に制限は無く、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有するカーボネートも、不飽和結合を有するカーボネートに含まれるものとする。
不飽和カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート誘導体類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート誘導体類の具体例としては、
ビニレンカーボネート、
メチルビニレンカーボネート、
4,5−ジメチルビニレンカーボネート、
フェニルビニレンカーボネート、
4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類の具体例としては、
ビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、等が挙げられる。
フェニルカーボネート類の具体例としては、
ジフェニルカーボネート、
エチルフェニルカーボネート、
メチルフェニルカーボネート、
t−ブチルフェニルカーボネート、等が挙げられる。
ビニルカーボネート類の具体例としては、
ジビニルカーボネート、
メチルビニルカーボネート、等が挙げられる。
アリルカーボネート類の具体例としては、
ジアリルカーボネート、
アリルメチルカーボネート、等が挙げられる。
これらの不飽和カーボネートの中でも、特定カーボネートとしては、ビニレンカーボネート誘導体類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類が好ましく、特に、ビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートは、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
一方、ハロゲン原子を有するカーボネート(これを適宜「ハロゲン化カーボネート」と略称する。)としては、ハロゲン原子を有するものであれば、その他に特に制限は無く、任意のハロゲン化カーボネートを用いることができる。
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。この中でも、好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、フッ素原子が特に好ましい。また、ハロゲン化カーボネートが有するハロゲン原子の数も、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下、好ましくは4以下である。ハロゲン化カーボネートが複数のハロゲン原子を有する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
ハロゲン化カーボネートの例としては、エチレンカーボネート誘導体類、ジメチルカーボネート誘導体類、エチルメチルカーボネート誘導体類、ジエチルカーボネート誘導体類等が挙げられる。
エチレンカーボネート誘導体類の具体例としては、
フルオロエチレンカーボネート、
クロロエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(ジクロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(トリクロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−4−クロロエチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−5−クロロエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート、等が挙げられる。
ジメチルカーボネート誘導体類の具体例としては、
フルオロメチルメチルカーボネート、
ジフルオロメチルメチルカーボネート、
トリフルオロメチルメチルカーボネート、
ビス(フルオロメチル)カーボネート、
ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、
ビス(トリフルオロ)メチルカーボネート、
クロロメチルメチルカーボネート、
ジクロロメチルメチルカーボネート、
トリクロロメチルメチルカーボネート、
ビス(クロロメチル)カーボネート、
ビス(ジクロロ)メチルカーボネート、
ビス(トリクロロ)メチルカーボネート、等が挙げられる。
エチルメチルカーボネート誘導体類の具体例としては、
2−フルオロエチルメチルカーボネート、
エチルフルオロメチルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、
2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、
エチルジフルオロメチルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、
2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、
エチルトリフルオロメチルカーボネート、
2−クロロエチルメチルカーボネート、
エチルクロロメチルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルメチルカーボネート、
2−クロロエチルクロロメチルカーボネート、
エチルジクロロメチルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルメチルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルクロロメチルカーボネート、
2−クロロエチルジクロロメチルカーボネート、
エチルトリクロロメチルカーボネート、等が挙げられる。
ジエチルカーボネート誘導体類の具体例としては、
エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、
ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、
2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、
ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、
エチル−(2−クロロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2−ジクロロエチル)カーボネート、
ビス(2−クロロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2,2−トリクロロエチル)カーボネート、
2,2−ジクロロエチル−2’−クロロエチルカーボネート、
ビス(2,2−ジクロロエチル)カーボネート、
2,2,2−トリクロロエチル−2’−クロロエチルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチル−2’,2’−ジクロロエチルカーボネート、
ビス(2,2,2−トリクロロエチル)カーボネート、等が挙げられる。
これらのハロゲン化カーボネートの中でも、フッ素原子を有するカーボネートが好ましく、フッ素原子を有するエチレンカーボネート誘導体類が更に好ましく、特にフルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートは、界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
更に、特定カーボネートとしては、不飽和結合とハロゲン原子とを共に有するカーボネート(これを適宜「ハロゲン化不飽和カーボネート」と略称する。)を用いることもできる。ハロゲン化不飽和カーボネートとしては、特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のハロゲン化不飽和カーボネートを用いることができる。
ハロゲン化不飽和カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート誘導体類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類、アリルカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート誘導体類の具体例としては、
フルオロビニレンカーボネート、
4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、
4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、
クロロビニレンカーボネート、
4−クロロ−5−メチルビニレンカーボネート、
4−クロロ−5−フェニルビニレンカーボネート、等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類の具体例としては、
4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、等が挙げられる。
フェニルカーボネート類の具体例としては、
フルオロメチルフェニルカーボネート、
2−フルオロエチルフェニルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルフェニルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルフェニルカーボネート、
クロロメチルフェニルカーボネート、
2−クロロエチルフェニルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルフェニルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルフェニルカーボネート、等が挙げられる。
ビニルカーボネート類の具体例としては、
フルオロメチルビニルカーボネート、
2−フルオロエチルビニルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルビニルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルビニルカーボネート、
クロロメチルビニルカーボネート、
2−クロロエチルビニルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルビニルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルビニルカーボネート、等が挙げられる。
アリルカーボネート類の具体例としては、
フルオロメチルアリルカーボネート、
2−フルオロエチルアリルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルアリルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルアリルカーボネート、
クロロメチルアリルカーボネート、
2−クロロエチルアリルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルアリルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルアリルカーボネート、等が挙げられる。
上述したハロゲン化不飽和カーボネートの例の中でも、特定カーボネートとしては、単独で用いた場合に効果が高いビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、並びにこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種以上のものを用いることが特に好ましい。
なお、特定カーボネートの分子量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは80以上、また、通常250以下、好ましくは150以下である。分子量が大き過ぎると、非水系電解液に対する特定カーボネートの溶解性が低下し、本発明の効果を十分に発現し難くなる場合がある。
また、特定カーボネートの製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
以上説明した特定カーボネートについても、本発明の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。なお、本発明の非水系電解液において、前記一般式(1)で表される鎖状カーボネートや、前記飽和環状カーボネートが、更に特定カーボネートに該当する場合には、必ずしも他の特定カーボネートを使用する必要はない。
また、本発明の非水系電解液に対する特定カーボネートの配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下の濃度で含有させることが望ましい。この範囲の下限を下回ると、本発明の非水系電解液を非水系電解液二次電池に用いた場合に、その非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現し難くなる場合があり、また、特定カーボネートの比率が大き過ぎると、本発明の非水系電解液を非水系電解液二次電池に用いた場合に、その非水系電解液二次電池の高温保存特性及びトリクル充電特性が低下する傾向があり、特に、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下する場合がある。
〔I−4.非水溶媒〕
本発明の非水系電解液が含有する非水溶媒としては、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、任意のものを用いることができる。なお、非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
通常使用される非水溶媒の例としては、
環状カーボネート、
鎖状カーボネート、
鎖状及び環状カルボン酸エステル、
鎖状及び環状エーテル類、
含リン有機溶媒、
含硫黄有機溶媒、などが挙げられる。
環状カーボネートの種類に特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、前述の特定カーボネートに該当するカーボネート以外では、
エチレンカーボネート、
プロピレンカーボネート、
ブチレンカーボネート、が挙げられる。
これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが、誘電率が高いため溶質が溶解し易く、非水系電解液二次電池にしたときにサイクル特性が良いという点で好ましい。従って、本発明の非水系電解液は、非水溶媒として、前述の特定カーボネートに該当するカーボネートの他に、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含むことが好ましい。
また、鎖状カーボネートの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、前述の特定カーボネートに該当するカーボネート以外では、
ジメチルカーボネート、
エチルメチルカーボネート、
ジエチルカーボネート、
メチル−n−プロピルカーボネート、
エチル−n−プロピルカーボネート、
ジ−n−プロピルカーボネート、等が挙げられる。
従って、本発明の非水系電解液は、非水溶媒として、前述の特定カーボネートに該当するカーボネートの他に、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特にジエチルカーボネートが非水形電解液二次電池にしたときにサイクル特性が良い点で好ましい。
更に、鎖状カルボン酸エステルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、
酢酸メチル、
酢酸エチル、
酢酸−n−プロピル、
酢酸−i−プロピル、
酢酸−n−ブチル、
酢酸−i−ブチル、
酢酸−t−ブチル、
プロピオン酸メチル、
プロピオン酸エチル、
プロピオン酸−n−プロピル、
プロピオン酸−i−プロピル、
プロピオン酸−n−ブチル、
プロピオン酸−i−ブチル、
プロピオン酸−t−ブチル、等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルがより好ましい。
また、環状カルボン酸エステルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、
γ−ブチロラクトン、
γ−バレロラクトン、
δ−バレロラクトン、等が挙げられる。
これらの中でも、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
更に、鎖状エーテルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、
ジメトキシメタン、
ジメトキシエタン、
ジエトキシメタン、
ジエトキシエタン、
エトキシメトキシメタン、
エトキシメトキシエタン、等が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンがより好ましい。
また、環状エーテルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、
テトラヒドロフラン、
2−メチルテトラヒドロフラン、等が挙げられる。
更に、含リン有機溶媒の種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、
リン酸トリメチル、
リン酸トリエチル、
リン酸トリフェニル、等のリン酸エステル類;
亜リン酸トリメチル、
亜リン酸トリエチル、
亜リン酸トリフェニル、等の亜リン酸エステル類;
トリメチルホスフィンオキシド、
トリエチルホスフィンオキシド、
トリフェニルホスフィンオキシド、等のホスフィンオキシド類、などが挙げられる。
また、含硫黄有機溶媒の種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、
エチレンサルファイト、
1,3−プロパンスルトン、
1,4−ブタンスルトン、
メタンスルホン酸メチル、
ブスルファン、
スルホラン、
スルホレン、
ジメチルスルホン、
ジフェニルスルホン、
メチルフェニルスルホン、
ジブチルジスルフィド、
ジシクロヘキシルジスルフィド、
テトラメチルチウラムモノスルフイド、
N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、
N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、等が挙げられる。
これらの中でも、環状カーボネートであるエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを用いることが好ましく、更にこれらと鎖状カーボネートとを併用することが好ましい。
このように環状カーボネートと鎖状カーボネートとを非水溶媒として併用する場合、本発明の非水系電解液中の非水溶媒中に占める鎖状カーボネートの好適な含有量は、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、また、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。一方、本発明の非水系電解液中の非水溶媒中に占める環状カーボネートの好適な含有量は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。鎖状カーボネートの割合が少な過ぎると、本発明の非水系電解液の粘度が上昇する場合があり、鎖状カーボネートの割合が多過ぎると、電解質であるリチウム塩の解離度が低下して、本発明の非水系電解液の電気伝導率が低下する場合がある。
〔I−5.非水溶媒の成分配合比〕
本発明において非水溶媒は、前記一般式(1)で示される鎖状カーボネート(特定化合物)と、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネート(特定カーボネート)とを含有する。このうち、特定カーボネートは、非水系電解液に対して、いわば添加剤のような形で加えるため、ここでは特定化合物と飽和環状カーボネート(以下これを「非水溶媒」と総称することがある)の配合比について述べる。
非水溶媒の好ましい組み合わせの例としては、次の(i),(ii)が挙げられる。
(i)特定化合物と、飽和環状カーボネートとの組み合わせ
(ii)特定化合物と、飽和環状カーボネートと、前記その他の鎖状カーボネートの組み合わせ
前述の如く、本発明の非水系電解液中の前記一般式(1)で示される特定化合物の好適な含有量は、通常50体積%以上、好ましくは60体積%以上で、通常95体積%以下、好ましくは90体積%以下であり、本発明の非水系電解液中の前記飽和環状カーボネートの好適な含有量は通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上で、通常50体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、非水系電解液中にその他の鎖状カーボネートを含む場合であっても、特定化合物と飽和環状 カーボネートとの体積比は、好ましくは50:50〜95:5、より好ましくは60:40〜90:10である。この範囲よりも鎖状カーボネートが少なすぎると電解液の粘度が上昇し、多すぎるとリチウム塩の解離度が低下して、電解液の電気伝導率が低下することがある。
また、特定化合物と飽和環状カーボネートの合計に対する、その他の鎖状カーボネートの体積比は、通常30体積%以下、好ましくは、25体積%以下である。非水系電解液中にその他の鎖状カーボネートを含有させることにより、特定化合物と飽和環状カーボネートのみでは溶質が溶けにくい場合においても溶けやすくするという効果が奏されるが、その含有割合がこの上限を超えるとサイクル特性が悪化することもある。
本発明において、特に好ましい非水溶媒の組み合わせとその体積比は次の通りであるが、本発明は以下のものに限定されるものではない。
(1) エチレンカーボネート(EC)とエチル−n−プロピルカーボネート(EPC)
EC:EPC=10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜30:70
(2) ECとジプロピルカーボネート(DPC)
EC:DPC=10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜30:70
(3) ECとエチル−n−ブチルカーボネート(EBC)
EC:EBC=10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜30:70
(4) フルオロエチレンカーボネート(FEC)とECとエチル-n-プロピルカーボネート(EPC)
FEC:EC:EPC=5:5:90〜25:25:50、より好ましくは、10:10:80〜20:20:60
(5) FECとEPC
FEC:EPC=10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜30:70
(6) FECとDPC
FEC:DPC=10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜30:70
(7) FECとEBC
FEC:EBC=10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜30:70
また、上記(1)〜(3)の組み合わせに、更にその他の鎖状カーボネートであるジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を組み合わせても良く、例えば次のような組み合わせと体積比のものが挙げられる。
(8) EC+EPC+DEC
EC:EPC:DEC=10〜40:40〜80:10〜30
(9) EC+DPC+DEC
EC:DPC:DEC=10〜40:40〜80:10〜30
(10) FEC+EPC+DEC
FEC:EPC:DEC=10〜40:40〜80:10〜30
(11) FEC+DPC+DEC
FEC:DPC:DEC=10〜40:40〜80:10〜30
なお、上記の好適な組み合わせ例において、EPC、DPC、EBCは、そのアルキル基の水素原子がフッ素原子で置換されたものであっても良い。
そして、上記の組み合わせに、前述の通り、特定カーボネートを非水系電解液に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、上限は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下の範囲で加えるのが好ましい。この範囲の理由については前述の通りである。
〔I−6.電解質〕
本発明の非水系電解液に用いる電解質に制限は無く、目的とする非水系電解液二次電池に電解質として用いられるものであれば公知のものを任意に採用することができる。本発明の非水系電解液をリチウム二次電池に用いる場合には、通常は、電解質としてリチウム塩を用いる。
電解質の具体例としては、
LiClO
LiAsF
LiPF
LiCO
LiBF、等の無機リチウム塩;
LiCFSO
LiN(CFSO
LiN(CSO
リチウム1,3−ヘキサフルオロプロパンジスルホニルイミド、
リチウム1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミド、
LiN(CFSO)(CSO)、
LiC(CFSO
LiPF(CF
LiPF(C
LiPF(CFSO
LiPF(CSO
LiBF(CF
LiBF(C
LiBF(CFSO
LiBF(CSO、等の含フッ素有機リチウム塩;
リチウムビス(オキサラト)ボレート、
リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート
リチウムジフルオロオキサラトボレート;
等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩;
KPF
NaPF
NaBF
NaCFSO、等のナトリウム塩又はカリウム塩、などが挙げられる。
これらのうち、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミドが好ましく、特にLiPF、LiBFが好ましい。
また、電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、特定の無機リチウム塩の2種を併用したり、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩とを併用したりすると、トリクル充電時のガス発生が抑制され、若しくは高温保存後の劣化が抑制されるので好ましい。特に、LiPFとLiBFとの併用や、LiPF、LiBF等の無機リチウム塩と、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO等の含フッ素有機リチウム塩とを併用することが好ましい。
更に、LiPFとLiBFとを併用する場合、電解質全体に対してLiBFが通常0.01重量%以上、20重量%以下の比率で含有されていることが好ましい。LiBFは解離度が低く、比率が高過ぎると電解液の抵抗を高くする場合がある。
一方、LiPF、LiBF等の無機リチウム塩と、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、電解質全体に占める無機リチウム塩の割合は、通常70重量%以上、99重量%以下の範囲であることが望ましい。一般に含フッ素有機リチウム塩は無機リチウム塩と比較して分子量が大きく、比率が高過ぎると電解液全体に占める溶媒の比率が低下し電解液の抵抗を高くする場合がある。
また、本発明の非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、本発明の効果を著しく行なわない限り任意であるが、通常0.5mol・dm−3以上、好ましくは0.6mol・dm−3以上、より好ましくは0.8mol・dm−3以上、また、通常3mol・dm−3以下、好ましくは2mol・dm−3以下、より好ましくは1.5mol・dm−3以下の範囲である。この濃度が低過ぎると、非水系電解液の電気伝導率が不十分となる場合があり、濃度が高過ぎると、粘度上昇のため電気伝導率が低下し、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池の性能が低下する場合がある。
〔I−7.添加剤〕
本発明の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していることが好ましい。添加剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。なお、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
添加剤の例としては、過充電防止剤や、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤などが挙げられる。
過充電防止剤の具体例としては、
ビフェニル、
アルキルビフェニル、
ターフェニル、
ターフェニルの部分水素化体、
シクロヘキシルベンゼン、
t−ブチルベンゼン、
t−アミルベンゼン、
ジフェニルエーテル、
ジベンゾフラン、等の芳香族化合物;
2−フルオロビフェニル、
o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、
p−シクロヘキシルフルオロベンゼン、等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;
2,4−ジフルオロアニソール、
2,5−ジフルオロアニソール、
2,6−ジフルオロアニオール、等の含フッ素アニソール化合物、などが挙げられる。
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液が過充電防止剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して通常0.1重量%以上、5重量%以下の範囲とすることが望ましい。非水系電解液に過充電防止剤を含有させることによって、過充電による非水系電解液二次電池の破裂・発火を抑制することができ、非水系電解液二次電池の安全性が向上するので好ましい。
一方、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、
コハク酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸の無水物;
エリスリタンカーボネート、
スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、等の特定カーボネートに該当するもの以外のカーボネート化合物;
エチレンサルファイト、
1,3−プロパンスルトン、
1,4−ブタンスルトン、
メタンスルホン酸メチル、
ブスルファン、
スルホラン、
スルホレン、
ジメチルスルホン、
ジフェニルスルホン、
メチルフェニルスルホン、
ジブチルジスルフィド、
ジシクロヘキシルジスルフィド、
テトラメチルチウラムモノスルフイド、
N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、
N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、等の含硫黄化合物;
1−メチル−2−ピロリジノン、
1−メチル−2−ピペリドン、
3−メチル−2−オキサゾリジノン、
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、
N−メチルスクシイミド、等の含窒素化合物;
ヘプタン、
オクタン、
シクロヘプタン、等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、
ジフルオロベンゼン、
ベンゾトリフルオライド、等の含フッ素芳香族化合物などが挙げられる。
なお、これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液が助剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して通常0.1重量%以上、5重量%以下の範囲とすることが好ましい。
[II.非水系電解液二次電池]
本発明の非水系電解液二次電池、即ちリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極及び正極と非水系電解液とを備え、負極がSi原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する負極活物質を含有するとともに、非水系電解液が上述の本発明の非水系電解液であることを特徴とするものである。
〔II−1.電池構成〕
本発明の非水系電解液二次電池は、負極及び非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
〔II−2.非水系電解液〕
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
〔II−3.負極〕
本発明の非水系電解液二次電池における負極は、Si(ケイ素)原子、Sn(スズ)原子及びPb(鉛)原子(これらを以下「特定金属元素」という場合がある。)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する負極活物質を含有する。
特定金属元素から選ばれる少なくとも一種の原子を有する負極活物質の例としては、何れか一種の特定金属元素の金属単体、二種以上の特定金属元素からなる合金、一種又は二種以上の特定金属元素とその他の一種又は二種以上の金属元素とからなる合金、並びに、一種又は二種以上の特定金属元素を含有する化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
一種又は二種以上の特定金属元素を含有する化合物の例としては、一種又は二種以上の特定金属元素を含有する炭化物、酸化物、窒化物、硫化物、燐化物等の複合化合物が挙げられる。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばSiやSnでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えばSnでは、SnとSi、Sn、Pb以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位重量当りの容量が大きいことから、何れか一種の特定金属元素の金属単体、二種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、Si及び/又はSnの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位重量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位重量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、Si及び/又はSnを含有する以下の化合物も好ましい。
・Si及び/又はSnと酸素との元素比が通常0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.1の、Si及び/又はSnの酸化物。
・Si及び/又はSnと窒素との元素比が通常0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.1の、Si及び/又はSnの窒化物。
・Si及び/又はSnと炭素との元素比が通常0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.1の、Si及び/又はSnの炭化物。
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液二次電池における負極は、常法に従って製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
また、負極集電体の重量を低減させて電池の重量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、重量も自在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70重量%以上、特に75重量%以上、また、通常97重量%以下、特に95重量%以下であることが好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に結着剤等の含有量が不足することにより、得られる負極の強度が不足する傾向にある。なお、二以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3重量%以上、特に5重量%以上、また、通常30重量%以下、特に25重量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となる。なお、二以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100重量部に対して通常0.5重量部以上、特に1重量部以上、また、通常10重量部以下、特に8重量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となる。なお、二以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5重量%以上、5重量%以下の範囲で用いることが好ましい。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電剤や結着剤、増粘剤を混合して、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類などの有機溶媒を、水に対して30重量%以下程度まで添加することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、好ましくは1g・cm−3以上、より好ましくは1.2g・cm−3以上、更に好ましくは1.3g・cm−3以上であり、上限として2g・cm−3以下、好ましくは1.9g・cm−3以下、よりに好ましくは1.8g・cm−3以下、更に好ましくは1.7g・cm−3以下の範囲である。この範囲を上回ると活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
〔II−4.正極〕
本発明の非水系電解液二次電池における正極は、通常の非水系電解液二次電池と同様、正極活物質を含有してなる。
正極活物質としては、遷移金属の酸化物、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)、遷移金属の硫化物、金属酸化物等の無機化合物、リチウム金属、リチウム合金若しくはそれらの複合体が挙げられる。具体的には、MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物;LiCoO又は基本組成がLiCoOであるリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO又は基本組成がLiNiOであるリチウムニッケル複合酸化物、LiMn、LiMnO又は基本組成がLiMn、LiMnOであるリチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物;TiS、FeS等の遷移金属硫化物;SnO、SiO等の金属酸化物が挙げられる。中でも、リチウム遷移金属複合酸化物、具体的には、特にLiCoO又は基本組成がLiCoOであるリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO又は基本組成がLiNiOであるリチウムニッケル複合酸化物、LiMn、LiMnO又は基本組成がLiMn、LiMnOであるリチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、高容量と高サイクル特性とを両立させ得るので好適に用いられる。また、リチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト、ニッケル又はマンガンの一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等の他の金属で置換することにより、その構造を安定化させることができるので好ましい。これらの正極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液二次電池における正極は、常法に従って製造することが可能である。具体的に、正極の製造方法としては、例えば、上述の正極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法、圧縮成形してペレット電極とする方法、正極用の集電体(以下「正極集電体」という場合がある。)上に活物質を塗布して正極活物質層を形成する方法(塗布法)、正極集電体上に蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の正極活物質を含有する薄膜層(正極活物質層)を形成する方法等が挙げられるが、通常は、塗布法を用いて正極活物質層を形成する。
塗布法を用いる場合、上述の正極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを正極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、正極集電体上に正極活物質層を形成する。
正極集電体の材質としては、アルミニウム、チタン及びタンタル、並びにこれらのうち一種又は二種以上を含む合金等が挙げられる。中でも、アルミニウム及びその合金が好ましい。
正極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。正極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることになり、逆に薄過ぎると、取り扱いが困難になることがある。
なお、表面に形成される正極活物質層との結着効果を向上させるため、これら正極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
また、正極集電体の重量を低減させて電池の重量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの正極集電体を使用することもできる。このタイプの正極集電体は、その開口率を変更することで、重量も自在に変更可能である。また、このタイプの正極集電体の両面に正極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、正極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、正極活物質層と正極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
正極活物質層には、通常、導電性を高めるために導電材を含有させる。導電材の種類に特に制限はないが、具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料などを挙げることができる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質層中の導電材の割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。導電材の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であれば良い。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合あり、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電剤、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合溶媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、また、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
スラリーの粘度は、集電体上に塗布が可能な粘度であれば特に制限されず、塗布が可能な粘度となるように、スラリーの調製時に溶媒の使用量等を変えて適宜調整すればよい。
得られたスラリーを上述の正極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されないが、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
正極活物質層の密度は、好ましくは1.5g・cm−3以上、より好ましくは2g・cm−3、更に好ましくは2.2g・cm−3以上であり、また上限は、好ましくは3.5g・cm−3以下、より好ましくは3g・cm−3以下、更に好ましくは2.8g・cm−3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
〔II−5.セパレータ〕
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、保液性に優れた多孔性シート又は不織布等を用いるのが好ましい。
セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。セパレータが薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合があり、厚過ぎるとレート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上であり、通常90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは75%以下である。空孔率が小さ過ぎると膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向にある。また、大き過ぎるとセパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下であり、通常0.05μm以上である。平均孔径が大き過ぎると短絡が生じ易くなり、小さ過ぎると膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
〔II−6.外装体〕
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1〜12及び比較例1〜6]
以下の手順で非水系電解液二次電池を組み立て、その評価を行ない、得られた結果を表1に示した。
〔負極の作製〕
〈ケイ素合金負極の作製:実施例1〜12、比較例1〜4〉
負極活物質として、非炭素材料であるケイ素73.2重量部及び銅8.1重量部と、人造黒鉛粉末(ティムカル社製商品名「KS−6」)12.2重量部とを用い、これらにポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidenefluoride):以下「PVDF」と略する。)を12重量部含有するN−メチルピロリドン溶液54.2重量部、及び、N−メチルピロリドン50重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー状とした。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、一旦自然乾燥した後、最終的には85℃で一昼夜減圧乾燥した。その後、電極密度が1.5g・cm−3程度となるようにプレスし、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて負極(ケイ素合金負極)とした。
〈グラファイト負極の作製:比較例5〜6〉
負極活物質として、人造黒鉛粉末(ティムカル社製商品名「KS−6」)100重量部を用い、これにPVDFを12重量部含有するN−メチルピロリドン溶液83.5重量部、及び、N−メチルピロリドン50重量部を加え、ディスパーサーで混合してスラリー状とした。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、 一旦自然乾燥した後、最終的には85℃で一昼夜減圧乾燥した。その後、電極密度が1.5g・cm−3程度となるようにプレスし、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて負極(グラファイト負極)とした。
〔正極の作製〕
正極活物質としてLiCoO(日本化学工業社製「C5」)85重量部を用い、これにカーボンブラック(電気化学工業社製商品名「デンカブラック」)6重量部、ポリフッ化ビニリデンKF−1000(呉羽化学社製商品名「KF−1000」)9重量部を加えて混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散してスラリー状とした。得られたスラリーを、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、用いる負極の理論容量の9割となるように均一に塗布し、100℃で12時間乾燥した後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて正極とした。
[非水系電解液の調製]
表1に示す組成の非水溶媒(非水溶媒、特定化合物、特定カーボネートの混合溶媒)に、LiPFを1モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水系電解液を調製した。
なお、表1中の略号の意味は次の通りである。
EC:エチレンカーボネート(飽和環状カーボネート)
FEC:フルオロエチレンカーボネート(飽和環状カーボネート及び特定カーボネート;F置換数1)
DFEC:4,5−ジフルオロエチレンカーボネート(飽和環状カーボネート及び特定カーボネート;F置換数2)
EPC:エチル-n-プロピルカーボネート(特定化合物;n=3, m=2)
DPC:ジプロピルカーボネート(特定化合物;n=m=3)
PTFEC:n-プロピルトリフルオロエチルカーボネート(特定化合物及び特定カーボネート;n=3, m=2, F置換数3)
EMFPC:エチル-3-モノフルオロプロピルカーボネート(特定化合物、及び特定カーボネート;n=3, m=2, F置換数1)
DEC:ジエチルカーボネート(その他の鎖状カーボネート)
DMC:ジメチルカーボネート(その他の鎖状カーボネート)
EMC:エチルメチルカーボネート(その他の鎖状カーボネート)
[コイン型セルの作製]
上記の正極及び負極と、各実施例及び比較例で調製した電解液を用いて、正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に正極を収容し、その上に電解液を含浸させたポリエチレン製のセパレータを介して負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封し、コイン型セルを作製した。
[コイン型セルの評価]
25℃において、充電終止電圧4.2V−3mA、充電終了電流0.15mAの定電流定電圧充電と、放電終止電圧3.0V−3mAの定電流放電とを1サイクルとして、50サイクル充放電を実施した。この時の、1サイクル目、10サイクル目及び50サイクル目の放電容量を測定し、それぞれのサイクルにおける放電容量維持率を下記式で算出した。なお、容量はいずれも負極活物質単位重量当りの容量とした。
放電容量維持率(%)={(10又は50サイクル目の放電容量)
/(1サイクル目の放電容量)}×100
表1より次のことが明らかである。
比較例1、2は、非水電解液に特定カーボネートを含まず、また比較例3、4は、非水系電解液に特定化合物と特定カーボネート含まないため、いずれもサイクル後の放電容量維持率が低い。
比較例5〜6は、負極活物質として炭素材料を用いたものであり、比較例5の非水系電解液は特定化合物を含まず、比較例6の非水系電解液は特定化合物を含む。しかしながら、比較例5と6を比較した場合、負極活物質が炭素材料であるため、特定化合物を用いた場合でもサイクル後の放電容量維持率が向上しない。これにより、炭素材料を負極活物質に用いた場合には、特定化合物によるサイクル特性の向上効果が得られないことがわかる。
これに対して、上記金属原子を有する負極活物質を用い、非水系電解液中に特定化合物と、飽和環状カーボネートと、特定カーボネートとを含む実施例1〜12では、サイクル特性が良好である。
本発明の非水系電解液二次電池は、長期の充放電サイクル特性に優れているため、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ、電力のロードレベリング等の電源をはじめ、電気自転車、電気スクーター、電気自動車等に用いることができる。

Claims (6)

  1. リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる負極及び正極と非水系電解液とを備え、該負極がSi原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する負極活物質を含む非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が、下記一般式(1)
    [式(1)中、nは3以上、mは1以上の整数であって、nとmの和が5以上であり、かつ水素原子の一部は、フッ素原子により置換されていても良く、フッ素原子の置換数は6以下である。]
    で表される鎖状カーボネートと、飽和環状カーボネートと、不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートとを含有することを特徴とする非水系電解液二次電池
  2. 一般式(1)において、nとmが互いに異なる整数であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池
  3. 飽和環状カーボネートがエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水系電解液二次電池
  4. 不飽和結合及びハロゲン原子のうち少なくとも一方を有するカーボネートの濃度が、0.01重量%以上、70重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか項に記載の非水系電解液二次電池
  5. 不飽和結合及びハロゲン原子の少なくとも一方を有するカーボネートが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、及びジフルオロエチレンカーボネート、並びにこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種以上のカーボネートであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の非水系電解液二次電池
  6. 非水系電解液が、さらにジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエ
    チルカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請
    求項1〜5の何れか1項に記載の非水系電解液二次電池
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