以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第一実施形態)
図1に本発明の第一実施形態に係る走行制御装置の概略構成図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る走行制御装置1は、車両の走行制御を行うものであり、車両に搭載されている。走行制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2、ナビゲーションシステム3、周囲検知部4、通信部5、自車検知センサ6を備えている。
ECU2は、制御装置の装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータを主体として構成されている。ECU2は、車両が走行する道路の車線ごとの車両密度を含む交通状態を取得し、車線のうち車両密度が高い車線へ車両を車線変更させる車線変更手段として機能する。
また、ECU2は、車両密度が高い車線へ車線変更した車両に対し、車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように車両の走行制御を行う走行制御手段として機能する。その際、ECU2は、例えば、先行車との車間距離を制御する車間距離制御を行い、車線の車両密度が臨界密度に近いほど車間距離を決定するフィードバックゲインを大きく設定する。また、ECU2は、例えば、車両密度が臨界密度以下となるように目標車間距離を設定して走行制御を行う。
ここで臨界密度とは、道路の交通流が自然流から渋滞流に相転移する車両密度をいう。例えば、図2に示すように、道路上に車両が少なく車両密度が小さいときには、自由流となり、法定速度など一定速度で車両が走行できるため車両密度の増加に従い交通流量が増加する。そして、車両密度が高くなると、車間距離が詰まっていき、車両密度の増加に従って交通流量が増加せずに低減し、渋滞流となる。このとき、交通流が自然流から渋滞流となる車両密度が臨界密度Dcである。また、車両密度の増加に従い交通流量が増加する場合もあるが渋滞流となり得る状態を準安定状態という。なお、図2の実線(自然流、準安定状態、渋滞流)は、交通流の発生する頻度の高い状態を線分で示したものであり、交通状況などによって実線から外れた交通流になることもある。
臨界密度は、例えば道路1km当たり20〜30台の車両密度であり、そのときの車間距離は30〜50m程度である。この臨界密度は、道路の車線数や形状、車両の種類や走行性能、交通ルールなどによって異なるため、走行位置、季節、曜日、時刻ごとに臨界密度を設定することが好ましい。これに伴い、臨界密度に応じた目標車間距離を設定する場合、走行位置、季節、曜日、時刻ごとに目標車間距離を設定して走行制御することが好ましい。このとき、走行位置、季節、曜日、時刻の全部について異なるごとに臨界密度若しくは目標車間距離を設定してもよいし、走行位置、季節、曜日、時刻の一部について異なるごとに臨界密度若しくは目標車間距離を設定してもよい。
ナビゲーションシステム3は、自車両の位置検知手段として機能するものであり、例えばGPS(Global Positioning System)機能及び道路情報を含む地図データベースを備えたものが用いられる。
周囲検知部4は、自車両の周囲の他車などの物体を検知するものであり、先行車両との車間距離を検知する車間距離検出手段、車線変更時の変更スペースを検出する手段として機能するものであり、例えばミリ波レーダ式やレーザレーダ式の距離検知器が用いられる。この周囲検知部4、車両の前部、側部、後部などに設けられ、車両の周囲に向けてミリ波やレーザなどを発信可能に構成される。
通信部5は、通信により周辺車両の位置情報を取得する車両位置取得手段として機能するものであり、例えば車々間通信機、路車間通信機(インフラ通信機)などが用いられる。この通信部5としては、通信により周辺車両の位置情報を取得できるものであればよく、通信方式、通信媒体などはいずれのものであってもよい。
自車検知センサ6は、自車両の車速情報などを検知するセンサであり、例えば車輪速センサが用いられる。車輪速センサにより車速情報を取得することができる。
走行制御装置1は、車速指示部11、走行駆動部12、制動部13、操舵部14を備えている。これらの車速指示部11、走行駆動部12、制動部13、操舵部14は、走行制御を実行するためのものである。
車速指示部11は、自車両の運転者に対し車速の増減を指示するものであり、例えば聴覚を通じて車速の増減を指示するスピーカ、ブザー、視覚を通じて車速の増減するモニタ、ランプなどの発光体などが用いられる。この車速指示部11は、ECU2からの制御信号に応じて作動し、例えば車両密度が臨界密度となるような車間距離を維持するために、車速を落とすように運転者に報知を行う。また、例えば、右側の車線へ車線変更するように運転者に報知を行う。
走行駆動部12は、車両の走行駆動を行う走行駆動手段として機能するものであり、例えばエンジンECU、スロットルモータ、インジェクタなどにより構成される。この走行駆動部12は、ECU2の走行駆動信号を受けて作動し、その走行駆動信号に応じた車両走行駆動を実行する。
制動部13は、車両の制動を行う制動手段として機能するものであり、例えばブレーキECU、ブレーキ油圧を調整する電磁弁、ブレーキ油圧を生成するポンプモータにより構成される。この制動部13は、ECU2の制動指令信号を受けて作動し、その制動指令信号に応じた車両制動を実行する。
操舵部14は、車両の操舵を行う操舵手段として機能するものであり、例えばステアリングECU、電動パワーステアリングシステムの電動モータにより構成される。この操舵部14は、ECU2の操舵指令信号を受けて作動し、その操舵指令信号に応じたハンドル操舵を実行する。なお、車両が操舵を含む自動運転機能を備えていない場合には、操舵部14の設置は省略される。
車速指示部11は運転支援によって走行制御を実行するものであり、走行駆動部12、制動部13及び操舵部14は、制御介入によって走行制御を実行するものである。なお、走行制御装置1が運転支援のみによって走行制御を実行する場合には、走行駆動部12、制動部13及び操舵部14の設置を省略する場合がある。一方、走行制御装置1が制御介入のみによって走行制御を実行する場合には、車速指示部11の設置を省略する場合がある。
次に、本実施形態に係る走行制御装置の動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。この図3における制御処理は、例えばECU2によって所定の周期で繰り返し実行される。図4は、本実施形態に係る走行制御装置を作動させた場合の車両の挙動を示す模式図である。
まず、図3のS10に示すように、交通情報取得処理が行われる。交通情報取得処理は、現在の自車両が走行する道路の交通流の状態を取得する処理である。この交通情報取得処理では、道路の車線ごとの交通流の状態が取得される。例えば、三車線の道路であれば、それぞれの車線ごとの交通流の状態が取得される。例えば、図2に示す交通流マップを用い、車両密度、交通流量に基づいて現在の交通流の状態が自然流であるか、準安定状態であるか、または渋滞流であるかが演算される。
交通流マップは、予めECU2に設定されるものを用いればよい。また、自車両の現在位置における交通流マップが登録されている場合には、その登録される交通流マップを用いることが好ましい。この場合、その地点の道路特性に合致した交通流マップを用いることにより、適切な交通流の状態を取得することができる。
道路の車両密度は、例えば車々間通信や路車間通信により取得した他車の位置情報に基づいて算出すればよい。また、車両密度の情報を通信により取得した場合には、その車両密度を用いてもよい。道路の交通流量は、車両密度に対し走行速度を乗じて算出すればよい。また、交通流量の情報を通信により取得した場合には、その交通流量を用いてもよい。
そして、S12に移行し、周辺車両情報取得処理が行われる。周辺車両情報取得処理は、自車両の周辺の他車両の走行状態の情報を取得する処理である。例えば、周囲検知部4により、自車両の前後を走行する車両や隣接車線を走行する車両の位置情報が取得される。また、通信部5により、自車両の前後を走行する車両や隣接車線を走行する車両の位置情報を取得してもよい。
そして、S14に移行し、移動候補点設定処理が行われる。移動候補点設定処理は、自車両が車線変更する移動先の候補点を設定する処理である。例えば、自車両が移動可能な範囲において、隣接する車線に車線変更可能なスペースがある場合にその地点が移動候補点として設定される。例えば、図4に示すように、自車両M1が三車線の道路の中央の車線を走行している場合、右の隣接車線の前方位置と後方位置、左の隣接車線の前方位置と後方位置の四箇所が移動候補点p1〜p4として設定される。
そして、S16に移行し、交通流演算処理が行われる。交通流演算処理は、移動候補点における交通流状態を演算する処理である。例えば、移動候補点における車両密度と走行速度に基づき交通流マップを用いて移動候補点における交通流状態、すなわち自然流であるか、準安定状態であるか、渋滞流であるかが判断される。移動候補点における車両密度と走行速度は、S10にて取得した車両密度と走行速度を用いてもよいし、新たに周辺の車両情報に基づいて演算して取得してもよい。
そして、S18に移行し、移動候補点における交通流が全て自由流であるか否かが判断される。S18にて移動候補点における交通流が全て自由流であると判断された場合には、車線変更を実行することなく制御処理を終了する。一方、S18にて移動候補点におけるいずれかの交通流が自由流でないと判断された場合には、移動候補点において準安定状態の交通流があるか否かが判断される(S20)。
S20にて移動候補点において準安定状態の交通流がないと判断された場合には、渋滞流となっている移動候補点が選択される。その際、複数の移動候補点で渋滞流となっている場合には、最も後方の移動候補点が選択される(S24)。
一方、S20にて移動候補点において準安定状態の交通流があると判断された場合には、準安定状態の移動候補点のうち車両密度の高い(最も臨界状態に近い)移動候補点が選択される(S22)。その際、現在走行している自車線が準安定状態であって他の車線よりも車両密度が高い場合には、移動候補点を選択せず、車線変更しないことが好ましい。
そして、S26に移行し、車線変更が実行される。すなわち、移動候補点が選択された場合には、その選択された移動候補点へのレーンチェンジが行われる。具体的には、ECU2から走行駆動部12、制動部13、操舵部14に制御信号が出力され、目標位置となる移動候補点に車両が移動するように走行制御、操舵制御が行われる。また、制御介入せずに運転支援を行う場合には、ECU2から車速指示部11に制御信号が出力され、目標位置となる移動候補点に車両を移動させるように運転者に対し指示が与えられる。
そして、S28に移行し、追従制御が行われる。この追従制御は、交通流が渋滞流である場合、車両密度が臨界密度以下となるように先行車との車間距離をとって車両走行させて実行される。これにより、車間距離が十分に長くとられるため、渋滞が解消され先行車が加速した際に即座に加速できるため、渋滞を早期に解消することができる。
また、交通流が渋滞流である場合に、目標車間距離を通常渋滞流における平均車間距離よりも長い距離に設定し、その目標車間距離となるように走行制御を実行してもよい。この場合も、車間距離が通常の渋滞時より長くとられるため、渋滞が解消され先行車が加速した際に自車両の加速が早めに行え、渋滞を早期に解消することができる。また、車間距離が臨界密度状態より短くされるため、隣り車線などからの割り込みを抑制できる。
一方、交通流が準安定状態である場合には、道路の車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように車両の走行制御が行われる。例えば、制御介入により走行制御する場合、車両密度が高くなって臨界密度に近づくほど目標車間距離を短くならないように設定される。また、運転支援により走行制御する場合、車両密度が高くなって臨界密度に近づくほど車速を落とすように運転者に報知する回数を多くすればよい。
このとき、車両密度が臨界密度に近いほど車間距離を決定するフィードバックゲインを大きく設定することが好ましい。この場合、先行車との車間距離が目標車間距離に厳格に維持され、車間距離が瞬間的に短くなり過ぎることを抑制することができる。
また、この車間距離制御において、車両密度が臨界密度以下となるように目標車間距離を設定して走行制御を行うことが好ましい。この場合、車両密度が高くなって自然渋滞になりそうなときでも車間距離が過剰に狭められることを防止できる。このため、車両のブレーキ操作があってもそのブレーキ操作が後方の車両へ伝播しにくくなるため、交通流が渋滞流となることを抑制又は回避することができる。S28の処理を終えたら、一連の走行制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係る走行制御装置によれば、車両密度が高い車線へ車両を車線変更させ、車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように車両の走行制御を行う。このため、渋滞しそうな車線に車両を車線変更させて渋滞発生を抑制し、または渋滞を緩和させることができる。
また、車両密度が臨界密度以下となるように目標車間距離を設定して走行制御することにより、車両密度が高くなって自然渋滞になりそうなときでも車間距離が過剰に狭められることを防止できる。これにより、車両のブレーキ操作があってもそのブレーキ操作が後方の車両へ伝播しにくくなるため、交通流が渋滞流となることを抑制又は回避することができる。また、交通流が渋滞流となった場合には、臨界密度以下となる車間距離をとって車両走行させることにより、先行車の加速に応じて即座に車両を加速することができるため、その渋滞を早期に解消することができる。
(第二実施形態)
次に本発明の第二実施形態に係る走行制御装置について説明する。
本実施形態に係る走行制御装置は、第一実施形態に係る走行制御装置と同様に自車両を車両密度が高い車線へ車線変更させ車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように走行制御するものであるが、車両の運転者の追従技能を加味して車線変更による自車両誘導を行う点で第一実施形態に係る走行制御装置と異なっている。
本実施形態に係る走行制御装置のハード構成は、図1に示す第一実施形態に係る走行制御装置と同様なものを用いることができる。その際、ECU2は、車線変更先の他車の運転者の追従技能レベルを推定する追従技能レベル推定手段として機能する。例えば、他車の車速情報が通信部5を通じて取得され、他車の車速又は車間の変化状態に基づいて他車の運転者の追従技能レベルが推定される。
また、ECU2は、車線変更先の他車の運転者の追従技能レベル及び他車のパワーウエイトレシオの少なくとも一方を考慮して車線変更位置を選定する車線変更手段として機能する。他車のパワーウエイトレシオは、トルクが負担する車重であって、他車との通信などによりその情報を取得すればよい。車線変更先の他車の運転者の追従技能レベル及び他車のパワーウエイトレシオの少なくとも一方を考慮して車線変更位置を選定することにより、自車両の車線変更先を適切に選定することができる。また、その車線変更先の交通流の状態を適切に判定することができる。従って、適切な渋滞発生の抑制、適切な渋滞緩和が行える。
図5は、本実施形態に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。この図5における制御処理は、例えばECU2によって所定の周期で繰り返し実行される。
まず、図5のS50に示すように、交通情報取得処理が行われる。交通情報取得処理は、現在の自車両が走行する道路の交通流の状態を取得する処理である。この交通情報取得処理では、道路の車線ごとの交通流の状態が取得される。例えば、三車線の道路であれば、それぞれの車線ごとの交通流の状態が取得される。このS50の交通情報取得処理は、図3のS10と同様に行えばよい。
そして、S52に移行し、周辺車両情報取得処理が行われる。周辺車両情報取得処理は、自車両の周辺の他車両の走行状態の情報を取得する処理である。例えば、周囲検知部4により、自車両の前後を走行する車両や隣接車線を走行する車両の位置情報が取得される。また、通信部5により、自車両の前後を走行する車両や隣接車線を走行する車両の位置情報を取得してもよい。このS52の周辺車両情報取得処理は、図3のS12と同様に行えばよい。
そして、S54に移行し、追従技能レベル推定処理が行われる。追従技能レベル推定処理は、車両の運転者の追従走行の技能レベルを推定する処理である。例えば、周辺の車両の走行速度、車間変化状態の情報を取得し、それらの情報に基づいて運転者の追従技能レベルが推定される。具体的には、車両走行における速度振幅増幅率を演算し、その速度振幅増幅率が大きいほど追従技能レベルが低いと判断される。車両の速度振幅(速度の増減の振幅)をAv、先行車の速度増減をAv1とすると、速度振幅増幅率Aは、次の式(1)により算出される。
A=Av/Av1 …(1)
また、速度振幅増幅率に代えて、減速増加率によって追従技能レベルを判断してもよい。すなわち、車両走行における減速増加率を演算し、その減速増加率が大きいほど追従技能レベルが低いと判断される。一定区間(例えば、1km)内の車両最低速度をVmin、一定区間内の先行車の最低速度をVmin1とすると、減速増加率Bは、次の式(2)により算出される。
B=1−Vmin/Vmin1 …(2)
また、速度振幅増幅率及び減速増加率に基づいて追従技能レベルを判断してもよい。
そして、S56に移行し、相関係数算出処理が行われる。相関係数算出処理は、S54により推定した追従技能レベルの値と実際の運転者の追従技能レベルとの相関関係を示す相関係数を算出する処理である。例えば、推定した追従技能レベルの値と実際の運転者の追従技能レベルとの相関関係に応じて、相関係数が0〜1の範囲で設定される。推定された追従技術レベルが低い場合、1台で走行していても速度ばらつきが大きいときには、相関係数が低く設定される。一方、先行車の加減速の変化に対し車速調整が下手なときには、相関係数が高く設定される。これらの設定は、車両の車速状態とその周辺の車両の車速状態に基づいて行えばよい。
そして、S58に移行し、パワーウエイトレシオ取得処理が行われる。パワーウエイトレシオ取得処理は、周辺車両のパワーウエイトレシオ(トルクが負担する車重)を取得する処理である。例えば、通信部5による車々間通信を通じて他車からパワーウエイトレシオの情報を受信して取得すればよい。なお、このS58の処理を省略する場合もある。
そして、S60に移行し、移動候補点設定処理が行われる。移動候補点設定処理は、自車両が車線変更する移動先の候補点を設定する処理である。例えば、自車両が移動可能な範囲において、隣接する車線に車線変更可能なスペースがある場合にその地点が移動候補点として設定される。このS60の処理は、図3のS14と同様に行えばよい。
そして、S62に移行し、補正処理が行われる。補正処理は、周辺車両の運転者の追従技能レベルなどに応じて道路の車両密度を補正する処理である。例えば、補正前の車両密度をm0、比率を調整する係数をk1、速度振幅増幅率をA、減速増加率をBとすると、補正した車両密度mは、次の式(3)により算出される。
m=m0・((A−1)・k1+1)・((B−1)・k1+1) …(3)
この車両密度の補正は、移動候補点の先行車及び後続車に対し行われる。ただし、後続車に対する補正処理については、係数k1の値を先行車の場合よりも小さくすることが好ましい。
さらに、パワーウエイトレシオに応じて車両密度を補正することが好ましい。例えば、補正前の車両密度をm0、一般車両の平均パワーウエイトレシオをr0、先行車又は後続車のパワーウエイトレシオをrとすると、補正した車両密度mは、次の式(4)により算出される。
m=m0・r0/r …(4)
このS62の補正処理において、車両密度を運転者の追従技能レベル及びパワーウエイトレシオに応じて補正してもよいし、追従技能レベルとパワーウエイトレシオのいずれか一方に応じて補正してもよい。
そして、S64に移行し、移動候補点の交通流の状態が判定される。例えば、移動候補点における車両密度と走行速度に基づき交通流マップを用いて移動候補点における交通流状態、すなわち自然流であるか、準安定状態であるか、渋滞流であるかが判断される。このとき、移動候補点における車両密度は、S62にて補正したものが用いられる。走行速度は、S10にて取得した車両密度と走行速度を用いてもよいし、新たに周辺の車両情報に基づいて演算して取得してもよい。
そして、車線変更処理及び追従制御処理が順次行われる(S66)。このS66の車線変更処理及び追従制御処理は、図3のS18〜28と同様に行われ、例えば、まず移動候補点における交通流が全て自由流であるか否かが判断される。移動候補点における交通流が全て自由流であると判断された場合には、車線変更を実行することなく制御処理を終了する。一方、移動候補点におけるいずれかの交通流が自由流でないと判断された場合には、移動候補点において準安定状態の交通流があるか否かが判断される。そして、移動候補点において準安定状態の交通流がないと判断された場合には、渋滞流となっている移動候補点が選択される。その際、複数の移動候補点で渋滞流となっている場合には、最も後方の移動候補点が選択される。一方、移動候補点において準安定状態の交通流があると判断された場合には、準安定状態の移動候補点のうち車両密度の高い(最も臨界状態に近い)移動候補点が選択される。その際、現在走行している自車線が準安定状態であって他の車線よりも車両密度が高い場合には、移動候補点を選択せず、車線変更しないことが好ましい。
そして、車線変更が実行される。すなわち、移動候補点が選択された場合には、その選択された移動候補点へのレーンチェンジが行われる。具体的には、ECU2から走行駆動部12、制動部13、操舵部14に制御信号が出力され、目標位置となる移動候補点に車両が移動するように走行制御、操舵制御が行われる。また、制御介入せずに運転支援を行う場合には、ECU2から車速指示部11に制御信号が出力され、目標位置となる移動候補点に車両を移動させるように運転者に対し指示が与えられる。
次いで、追従制御が行われる。この追従制御は、交通流が渋滞流である場合、車両密度が臨界密度以下となるように先行車との車間距離をとって車両走行させて実行される。これにより、車間距離が十分に長くとられるため、渋滞が解消され先行車が加速した際に即座に加速できるため、渋滞を早期に解消することができる。
また、交通流が渋滞流である場合に、目標車間距離を通常渋滞流における平均車間距離よりも長い距離に設定し、その目標車間距離となるように走行制御を実行してもよい。この場合も、車間距離が通常の渋滞時より長くとられるため、渋滞が解消され先行車が加速した際に自車両の加速が早めに行え、渋滞を早期に解消することができる。また、車間距離が臨界密度状態より短くされるため、隣り車線などからの割り込みを抑制できる。
一方、交通流が準安定状態である場合には、道路の車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように車両の走行制御が行われる。例えば、制御介入により走行制御する場合、車両密度が高くなって臨界密度に近づくほど目標車間距離を短くならないように設定される。また、運転支援により走行制御する場合、車両密度が高くなって臨界密度に近づくほど車速を落とすように運転者に報知する回数を多くすればよい。
このとき、車両密度が臨界密度に近いほど車間距離を決定するフィードバックゲインを大きく設定することが好ましい。この場合、先行車との車間距離が目標車間距離に厳格に維持され、車間距離が瞬間的に短くなり過ぎることを抑制することができる。
また、この車間距離制御において、車両密度が臨界密度以下となるように目標車間距離を設定して走行制御を行うことが好ましい。この場合、車両密度が高くなって自然渋滞になりそうなときでも車間距離が過剰に狭められることを防止できる。このため、車両のブレーキ操作があってもそのブレーキ操作が後方の車両へ伝播しにくくなるため、交通流が渋滞流となることを抑制又は回避することができる。S66の処理を終えたら、一連の走行制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係る走行制御装置によれば、第一実施形態に係る走行制御装置と同様な作用効果が得られるほか、車線変更先の車両密度を運転者の追従技能レベル、車両のパワーウエイトレシオに応じて補正することにより、自車両の車線変更先を適切に選定することができる。また、その車線変更先の交通流の状態を適切に判定することができる。従って、適切な渋滞発生の抑制、適切な渋滞緩和が行える。
(第三実施形態)
次に本発明の実施形態に係る走行制御システムについて説明する。
本実施形態に係る走行制御システムは、複数の車両を隊列走行させて走行制御を行う走行制御システムであって、例えば、隊列走行する各車両に搭載される複数の走行制御装置によって構成される。
各車両に搭載される走行制御装置は、第一実施形態又は第二実施形態に係る走行制御装置を用いることができる。その際、走行制御装置は、車群を組む車両に対し隊列走行させる走行制御手段を備えて構成される。隊列走行させる走行制御の手法としては、例えば、車々間通信などにより互いの位置を認識し合い、所定の車間距離を維持する追従制御によって隊列走行が行われる。
例えば、図6に示すように、自車両M1が他の車両M2、M3と共に車群を組んで隊列走行している場合、車両密度が高い車線へ各車両M1〜M3を車線変更させ車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように走行制御する。
図7は、本実施形態に係る走行制御システムの動作を示すフローチャートである。この図7における制御処理は、例えばECU2によって所定の周期で繰り返し実行される。
まず、図7のS70に示すように、移動候補点設定処理が行われる。移動候補点設定処理は、車群を組んでいる車両が車線変更する移動先の候補点を設定する処理である。例えば、自車両が移動可能な範囲において、隣接する車線に車線変更可能なスペースがある場合にその地点が移動候補点として設定される。
例えば、図6に示すように、車群を組んでいる車両M1〜M3が三車線の道路の中央の車線を走行している場合、右の隣接車線の前方位置と後方位置、左の隣接車線の前方位置と後方位置の四箇所が移動候補点p1〜p4として設定される。
なお、移動候補点設定処理に用いられる道路の車線ごとの交通流の情報や周辺車両の位置情報などは、図3のS10、S12と同様な処理を行うことによって取得しておけばよい。
そして、S72に移行し、移動候補点における交通流が全て自由流であるか否かが判断される。S72にて移動候補点における交通流が全て自由流であると判断された場合には、車線変更を実行することなく車群による隊列走行が行われる(S74)。一方、S72にて移動候補点におけるいずれかの交通流が自由流でないと判断された場合には、移動候補点において準安定状態の交通流があるか否かが判断される(S76)。
S76にて移動候補点において準安定状態の交通流がないと判断された場合には、移動候補点において渋滞流の交通流があるか否かが判断される(S82)。このS82にて移動候補点において渋滞流の交通流があると判断された場合には、車両の移動先の割り当て処理が行われる。この車両移動先の割り当て処理は、渋滞流の移動候補点へ移動する車両を割り当てる処理である。例えば、移動候補点に対し近い車両をその移動候補点へ移動する車両として割り当てればよい。
一方、S82にて移動候補点において渋滞流の交通流がないと判断された場合には、S86に移行する。S86では、車群を組んでいる車両の移動先が全車割り当てられたか否かが判断される。S86にて車群を組んでいる車両の移動先が全車割り当てられたと判断された場合には、S88に移行する。一方、S86にて車群を組んでいる車両の移動先が全車割り当てられていないと判断された場合には、S70に戻る。
ところで、S76にて移動候補点において準安定状態の交通流があると判断された場合には、移動候補点へ移動する車両の割り当て処理が行われる。この車両の割り当て処理は、準安定状態の移動点候補へ移動する車両の割り当てを行う処理である。例えば、例えば、移動候補点に対し近い車両をその移動候補点へ移動する車両として割り当てればよい。
そして、S80に移行し、車群を組んでいる車両の移動先が全車割り当てられたか否かが判断される。S80にて車群を組んでいる車両の移動先が全車割り当てられていないと判断された場合には、S82に移行する。一方、S86にて車群を組んでいる車両の移動先が全車割り当てられたと判断された場合には、S88に戻る。
S88では、車線変更処理及び追従制御処理が順次行われる。このS88の車線変更処理及び追従制御処理は、車群を組んでいる車両を準安定状態又は渋滞流の移動候補点へ車線変更によって移動させ、渋滞を緩和又は回避すべく車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように走行制御する処理である。
例えば、図6において、移動候補点p1の交通流が準安定状態、移動候補点p2の交通流が準安定状態、移動候補点p3の交通流が渋滞流、移動候補点p4の交通流が自由流であって、車両M1の移動先として移動候補点p1が割り当てられ、車両M2の移動先として移動候補点p3が割り当てられ、車両M3の移動先として移動候補点p2が割り当てられている場合、車両M1〜M3は、割り当てられている移動候補点へ車線変更によって移動していく。この車線変更処理は、図2のS26と同様にして行えばよい。
そして、それぞれの移動候補点において、追従制御が行われる。この追従制御は、交通流が渋滞流である場合、車両密度が臨界密度以下となるように先行車との車間距離をとって車両走行させて実行される。これにより、車間距離が十分に長くとられるため、渋滞が解消され先行車が加速した際に即座に加速できるため、渋滞を早期に解消することができる。
また、交通流が渋滞流である場合に、目標車間距離を通常渋滞流における平均車間距離よりも長い距離に設定し、その目標車間距離となるように走行制御を実行してもよい。この場合も、車間距離が通常の渋滞時より長くとられるため、渋滞が解消され先行車が加速した際に自車両の加速が早めに行え、渋滞を早期に解消することができる。また、車間距離が臨界密度状態より短くされるため、隣り車線などからの割り込みを抑制できる。
一方、交通流が準安定状態である場合には、道路の車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように車両の走行制御が行われる。例えば、制御介入により走行制御する場合、車両密度が高くなって臨界密度に近づくほど目標車間距離を短くならないように設定される。また、運転支援により走行制御する場合、車両密度が高くなって臨界密度に近づくほど車速を落とすように運転者に報知する回数を多くすればよい。
このとき、車両密度が臨界密度に近いほど車間距離を決定するフィードバックゲインを大きく設定することが好ましい。この場合、先行車との車間距離が目標車間距離に厳格に維持され、車間距離が瞬間的に短くなり過ぎることを抑制することができる。
また、この車間距離制御において、車両密度が臨界密度以下となるように目標車間距離を設定して走行制御を行うことが好ましい。この場合、車両密度が高くなって自然渋滞になりそうなときでも車間距離が過剰に狭められることを防止できる。このため、車両のブレーキ操作があってもそのブレーキ操作が後方の車両へ伝播しにくくなるため、交通流が渋滞流となることを抑制又は回避することができる。S88の処理を終えたら、一連の走行制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係る走行制御システムによれば、複数の車両が車群を組んで走行している場合に、その複数の車両について、車両密度が高い車線へ車両を車線変更させ、車両密度が臨界密度に近づくほど車間距離が短くなりにくくなるように車両の走行制御を行う。このため、渋滞しそうな車線に車両を車線変更させて渋滞発生を抑制し、または渋滞を緩和させることができる。その際、渋滞の発生しそうな箇所へ複数の車両を移動させて走行制御することにより、渋滞の発生を効果的に抑制することができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る走行制御装置及び走行制御システムの一例を説明したものであり、本発明に係る走行制御装置及び走行制御システムは本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る走行制御装置及び走行制御システムは、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る走行制御装置及び走行制御システムを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。