以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る走行制御装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る走行制御装置は、走行制御ECU(Electronic ControlUnit)1を備えている。走行制御ECU1は、路側装置2との間で路車間通信による双方向通信が可能とされている。同様に、走行制御ECU1は、他車両3A〜3Nにおける走行制御ECUとの間での車車間通信による双方向通信が可能とされている。このとき、走行制御ECU1では、複数の他車両3A〜3Nとの間の車車間通信が可能とされている。
走行制御ECU1は、CPU(Central ProcessingUnit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力ポートなどを備える電子制御ユニットであり、走行制御装置を統括制御している。また、走行制御ECU1は、通信部11、時間占有率算出部12、道路情報記憶部13、ボトルネック部絞込部14、目標時間占有率算出部15、走行履歴学習部16、および走行制御量算出部17を備えている。
路側装置2は、道路における信号の手前位置に設けられた光ビーコンからなり、路側装置2が設けられた道路位置を通過する車両の走行制御ECU1に対して、信号情報を送信する。信号情報には、路側装置2の前方に配設された対応信号の設置位置、点灯色、点灯色が変わるまでの時間等が含まれている。
他車両3A〜3Nには、それぞれ走行制御装置が設けられており、周辺の車両との間に自車両の存在を示す車両走行情報を送信している。走行制御ECU1では、他車両3A〜3Nのそれぞれから送信される車両の存在を示す車両情報、車両の速度を含む車両の走行状態に関する車両走行情報、および車両の走行履歴に関する走行履歴情報を受信している。また、走行制御ECU1においても、同様に、車両情報、車両走行情報、および走行履歴情報を他車両等に送信している。
通信部11は、路側装置2、および他車両3A〜3Nとの間での双方向通信を行っている。通信部11は、路側装置2から受信した信号情報および他車両3A〜3Nのそれぞれから受信した車両情報を時間占有率算出部12に出力する。また、通信部11は、他車両3A〜3Nのそれぞれから受信した車両走行情報および走行履歴情報を走行制御量算出部17に出力する。
時間占有率算出部12は、路側装置2から送信される信号情報に基づいて、車両が走行している位置を取得し、車両が走行する位置の周囲における道路に関する道路情報を道路情報記憶部13から読み出す。ここでの道路情報には、道路形状や道路の勾配等が含まれる。また、時間占有率算出部12は、道路情報記憶部13から読み出した道路情報に基づいて、車両の周囲の道路に走行制御区間を特定する。この走行制御区間を複数の領域、たとえば図2に示す領域a〜領域eの5つの領域に分割する。この車両の周囲の道路を分割して得られた領域が本発明の分割制御区間に相当する。
さらに、時間占有率算出部12は、通信部11から出力された車両情報に基づいて、車両の周囲の道路を分割して得られた5つの領域である領域a〜領域eにおけるそれぞれの車両台数および時間占有率を算出する。この時間占有率とは、各領域ごとに単位時間内に車両が存在した時間の割合を示すものである。時間占有率算出部12は、算出した各領域a〜領域eのそれぞれの時間占有率に関する時間占有率情報をボトルネック部絞込部14および目標時間占有率算出部15に出力する。
ボトルネック部絞込部14では、時間占有率算出部12から出力された時間占有率情報に基づいて、各領域a〜領域eにおけるそれぞれの時間占有率を比較し、ボトルネック部となるボトルネック領域を絞り込む。このボトルネック領域が本発明の特定分割制御区間に相当する。ボトルネック部絞込部14は、絞り込んだボトルネック領域に関するボトルネック部情報を目標時間占有率算出部15に出力する。
目標時間占有率算出部15は、時間占有率算出部12から出力された時間占有率情報およびボトルネック部絞込部14から出力されたボトルネック部情報に基づいて、各領域a〜領域eにおける目標時間占有率を算出する。目標時間占有率算出部15は、各領域a〜領域eにおける算出した目標時間占有率に関する目標時間占有率情報を走行制御量算出部17に出力する。
走行履歴学習部16は、走行制御ECU1が搭載される車両の走行履歴を学習し、学習した走行履歴を記憶している。走行制御量算出部17では、通信部11から出力された車両走行情報と走行履歴情報、目標時間占有率算出部15から出力された目標時間占有率情報、および走行履歴学習部16から取り出した走行履歴等に基づいて、自車両および車両情報を送信した他車両のすべてについての走行制御量を算出する。走行制御量算出部17は、算出した各他車両についての走行制御量に関する走行制御量情報を通信部11に出力する。通信部11では、出力された走行制御量情報に基づく各他車両の走行制御量を、対応する各他車両3A〜3Nに送信する。また、自車両については、算出した自車両の走行制御量に基づいて、走行制御を行う。
次に、本実施形態に係る走行制御装置における処理手順について説明する。図3は、走行制御装置における処理手順を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態に係る走行制御装置では、路側装置2から送信される信号情報を通信部11において受信し、時間占有率算出部12において、この信号情報に基づいて、車両の現在位置を取得する(S1)。車両の現在位置を取得したら、取得した現在位置の周囲の道路情報として、道路形状や勾配等を道路情報記憶部13から読み出して取得する(S1)。
続いて、交通情報を取得したか否かを判断する(S2)。ここでの交通情報は、路側装置2と車両との間における路車間通信によるインフラ情報または車両と他車両との間における車車通信による車車情報等が含まれる。その結果、交通情報を取得していないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。
一方、交通情報を取得していると判断した場合には、インフラ情報に含まれる信号タイミング情報や車両の周囲における車両台数や渋滞長などの交通情報等を取得する(S3)。続いて、車両の現在位置が走行制御区間であるか否かを判断する(S4)。その結果、走行制御区間でないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。
一方、車両の現在位置が走行制御区間であると判断した場合には、時間占有率算出部12において、信号の前後における総走行車両台数(台/km)を取得する(S5)。さらには、他車両3A〜3Nのそれぞれから送信された車両情報および車両の周囲の道路を分割して得られた5つの領域である領域a〜領域eにおけるそれぞれの時間占有率を算出する(S5)。ここで、時間占有率Oは、下記(1)式に基づいて算出することができる。
上記(1)式に基づいて、領域a〜領域eの各領域における時間占有率Oa〜Oeをそれぞれ算出する(S6)。
ここで、路車間通信、車車間通信等で得られる車間情報や速度情報等を用いるによって、時間占有率を補正することもできる。
続いて、ボトルネック部絞込部14では、ボトルネック部の絞込みを行う(S6)。ボトルネック部の絞込みとしては、領域a〜領域eのうち、もっとも時間占有率が高い領域をボトルネック部として絞り込む。
ボトルネック部の絞込みが済んだら、目標時間占有率算出部15において、目標時間占有率を算出する(S7)。目標時間占有率は、ボトルネック部の時間占有率を低下させて、時間占有率算出部12で算出した時間占有率を均等化するために求められるものであり、各領域a〜eに対して、それぞれ目標時間占有率Oatg〜Oetgが算出される。
このように、目標時間占有率を算出することにより、効果的に渋滞を解消することができる。たとえば、図4(a)に示すように、ボトルネック部が領域cとなって領域cの時間占有率がもっとも高く、領域cの前後における領域b,dにおいて時間占有率が続いて高く、さらに領域a,eにおいて時間占有率が低くなっているとする。この場合には、下記(2)式が成り立つ。
この場合には、ボトルネック部となる領域cよりも下流側の領域d,eでは、渋滞領域を抜け、車両が流れ始める。逆に、領域cよりも上流側の領域b,aでは、領域cのボトルネックにより、領域b、領域aの車両は次第に速度が落ち、渋滞の待ち行列が伸びていき、渋滞の解消が困難となる。
この点、たとえば図4(b)に示すように、時間占有率が高い領域cの時間占有率が低くなり、その分領域a,eの時間占有率が高くなるように目標時間占有率を設定する。このように、目標時間占有率を設定すると、領域cよりも下流側の領域d,eにおける早期発進や早期加速を促す。その一方で、領域cよりも上流側の領域b,aにおける加減速を滑らかにすることで、目標時間占有率に合わせた、渋滞の解消に寄与することができる。
目標時間占有率を算出したら、走行制御量算出部17において、自車両および各他車両3A〜3Nの走行制御量としての加減速度の算出を行う(S8)。各他車両3A〜3Nの加減速度は、ステップS7で算出した目標時間占有率および各他車両3A〜3Nのそれぞれから送信された車両走行情報に基づく各他車両3A〜3Nのそれぞれの車速と走行履歴によって算出する。また、自車両の加減速度は、ステップS7で算出した目標時間占有率、自車両の車速、および、走行履歴学習部16に記憶された自車両の走行履歴に基づいて算出する。ここでの自車両および各他車両の加減速度については後にさらに説明する。
それから、走行制御量算出部17は、算出した他車両3A〜3Nの減速度を通信部11に出力する。その後、通信部11は、各他車両3A〜3Nの加減速度を各他車両3A〜3Nに対してそれぞれ送信して指示する(S9)。
続いて、各領域a〜eのすべての領域において、ステップS7で算出した目標時間占有率が、ステップS5で算出した時間占有率(実時間占有率)以上となっているか否かを判断する(S10)。その結果、目標時間占有率が実時間占有率以上となっていると判断した場合には、そのまま走行制御処理を終了する。
一方、目標時間占有率が実時間占有率以上となっていないと判断した場合には、各領域内における総走行車両台数が各領域内における道路容量以上となっているか否かを判断する(S11)。ここでの道路容量とは、各領域において、走行制御を行うことができる車両台数の最大数であり、各領域の長さや車線数などの条件に応じて予め決められたものである。
その結果、各領域内における総走行車両台数が各領域内における道路容量以上となっていると判断した場合には、走行制御を行うことができないので、そのまま走行制御処理を終了する。また、各領域内における総走行車両台数が、各領域内における道路容量以上となっていないと判断した場合には、走行制御を行う余地があるので、ステップS8に戻り、自車両および各他車両3A〜3Nのそれぞれの加減速度を算出する。
このように、本実施形態に係る走行制御装置では、領域ごとの時間占有率を算出し、この時間占有率に基づいて決定されたボトルネック部の時間占有率を低下させて、時間占有率算出部12で算出した時間占有率を均等化するための目標時間占有率を算出する。この目標時間占有率を達成するように、各領域における車両の加減速度を算出し、この加減速度を各領域における車両に送信している。この時間占有率は、渋滞の原因としての寄与が大きいことから、ボトルネック部の時間占有率を低下させることにより、渋滞解消のために効果的となる加減速度を算出することができる。その結果、走行制御区間の渋滞を効果的に緩和することができる。
また、ボトルネック部の時間占有率を低下させて、各領域の時間占有率を均等化することにより、走行制御区間における各車両の速度変動を少なくすることができる。このため、走行制御区間における車両の渋滞停止時間を短くして、渋滞の緩和に寄与することができる。しかも、車両の発進・停止回数を減少させることができるので、排出される排気ガス量の低減を図ることもできる。さらに、渋滞点では、車両のアイドルストップ時間を一定量確保することができる。したがって、その分さらに排気ガス量の低減を図ることができる。
次に、自車両および各他車両の加減速度の算出について説明する。以下、自車両と他車両について、それぞれ第1車両〜第7車両として示す。ここで、自車両と他車両が第1車両〜第7車両のいずれであっても同様の制御が行われる。
走行制御量算出部17は、通信部11から出力された他車両の走行履歴と走行履歴学習部16に記憶された自車両の走行履歴、および目標時間占有率算出部15から出力された目標時間占有率情報に基づいて自車両および各他車両の加減速度を算出する。ここで、走行制御量算出部17では、まず、各車両の走行履歴に基づいて、各車両の走行パターンを移動距離−時間特性として推定する。
たとえば、走行制御区間に第1信号および第2信号の2つの信号があり、この2つの信号の間に、カーブ区間が存在し、走行制御区間を7台の車両が通過するとする。また、自車両が第3車両M3であるとする。この場合に、7台の車両の走行パターンとして、図5(a)に示す各車両M1〜M7の移動距離−時間特性が推定されたとする。このとき、図5(a)に示すように、第1信号S1の青信号期間に車両が1台通過する場合には、他車両である車両M1のように、スムーズな走行を行うことができる。
また、第1信号の青信号期間に第2車両M2〜第7車両M7の6台の車両が第1信号S1を通過するとする。この場合、図5(a)に示す移動距離−時間特性では、第2車両M2がカーブ区間で減速すると、先行車両となる第2車両M2の減速による停止波が後続の第3車両M3〜第7車両M7に順次伝播する。その結果、第3車両M3〜第7車両M7が第2信号S2に到達する時間が遅くなることとなる。
これに対して、走行制御量算出部17では、目標時間占有率を均等化するために、第2車両M2がカーブ区間の手前位置で減速した場合には、早めに第2車両M2の減速度を大きくする移動距離−時間特性としている。この場合、第2車両M2はカーブ手前位置で減速されて移動距離が短くなることから、第3車両M3に対する停止波の伝播が小さくなる。第3車両M3に対する停止波の伝播が小さくなることから、順次、第4車両M4、第5車両M5に対する停止波の伝播が小さくなり、第7車両M7では、カーブ手前位置における減速がない状態でカーブ区間を通過することができるようになる。
このため、図5(a)に示す例では、第2信号S2の位置に第6車両M6が到達するときには、第2信号S2が赤信号期間となってしまっているのに対して、図5(b)に示す例では、第2信号S2が青信号期間のうちに第6車両M6が第2信号S2の位置に到達し、赤信号期間に入る前に第6車両が第2信号S2を通過することができる。このように、第6車両M6が第2信号S2を通過する例に見られるように、走行制御区間全体における車両の発進回数および停止回数を減少させることができる。その結果として、第2信号S2のスループットを向上させることができるので、渋滞の緩和を図ることができるとともに、排気ガスの排出量を低減することができる。
次に、第2の実施形態に係る走行制御装置について説明する。本実施形態に係る走行制御装置では、走行制御量算出部17における処理が上記第1の実施形態と比較して主に異なる。本実施形態に係る走行制御装置では、複数の車両が走行する場合に、先行車両の走行パターンが、先行車両が発進した後に減速するパターンであるときに、後続車両の発進タイミングを、走行パターン取得手段で取得した走行パターンにおける後続車両の発進タイミングよりも遅らせる走行制御を行っている。
続いて、本実施形態に係る走行制御装置における処理手順を説明する。図6は、本実施形態に係る走行制御装置における処理手順を示すフローチャート、図7は図6に続く処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、本実施形態に係る走行制御装置では、路側装置2から送信される信号情報を通信部11において受信し、時間占有率算出部12において、この信号情報に基づいて、車両の現在位置を取得する(S21)。車両の現在位置を取得したら、取得した現在位置の周囲の道路情報として、道路形状や勾配等を道路情報記憶部13から読み出して取得する(S21)。
続いて、交通情報を取得したか否かを判断する(S22)。その結果、交通情報を取得していないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。一方、交通情報を取得していると判断した場合には、インフラ情報に含まれる信号タイミング情報や車両の周囲における車両台数や渋滞長などの交通情報等を取得する(S23)。続いて、車両の現在位置が走行制御区間であるか否かを判断する(S24)。その結果、走行制御区間でないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。
一方、車両の現在位置が走行制御区間であると判断した場合には、時間占有率算出部12において、信号の前後における総走行車両台数を取得する(S25)。さらには、他車両3A〜3Nのそれぞれから送信された車両情報および車両の周囲の道路を分割して得られた5つの領域である領域a〜領域eにおけるそれぞれの時間占有率を算出する(S25)。ここまでは、上記第1の実施形態と同様の手順によって行われる。
さらには、自車両が信号によって停止中であるか否かを判断する(S26)。その結果、信号によって停止中でないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。ここで、自車両が信号以外で停止した場合、たとえば先行車両に追従して停止した場合には、先行車両が発進したか否かで判断してもよい。
また、信号によって停止中であると判断した場合には、信号が赤から青に変わってからの自車両の発進タイミングである車両が発進するまでの発進時間Txを取得する(S27)。発進時間Txは、通信部11から出力された車両走行情報と走行履歴情報、目標時間占有率算出部15から出力された目標時間占有率情報、および走行履歴学習部16から取り出した走行履歴に基づいて算出することによって取得する。また、この発進時間Txは、走行制御区間における時間占有率に基づいて決定することもできるが、その例については後に説明する。
こうして、発進時間Txを取得したら、先行車両が発進したか否かを判断する(S28)。その結果、先行車両がないと判断した場合や先行車両があり、その先行車両が発進していないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。また、先行車両があり、その先行車両が発進したと判断した場合には、先行車両の移動距離を算出する(S29)。ここで、先行車両の移動距離は、車間センサで検出した先行車両との距離の変化と自車両の速度に基づいて算出される先行車両の速度と、先行車両の走行時間に基づいて算出する。
続いて、先行車両の移動距離−時間特性を算出する(S30)。先行車両、自車両、および後続車両の移動距離−時間特性は、算出した先行車両の移動距離と、走行履歴記憶手段に記憶された走行履歴や道路状況に基づいて算出される。ここでの道路状況とは、道路の形状、道幅、道路を占める車両数等を意味する。また、さらには、自車両および後続車両の移動距離−時間特性を算出する。自車両および後続車両の移動距離−時間特性は、両車両の発進時間および両車両の走行履歴記憶手段に記憶された走行履歴や道路状況に基づいて仮算出される。
たとえば、図2に示す領域aおよび領域bの間に、第1信号が存在する場合の走行パターンを推定することを想定する。また、この第1信号を通過する第2車両M2〜第4車両M4が、それぞれ先行車両、自車両、および後続車両であると想定する。
このとき、図8に示すように、第2車両M2〜第4車両M4の移動距離−時間特性が推定されたとする。この特性を推定するにあたり、減速タイミングは道路状況から、または第2車両M2〜第4車両M4の車間距離、各車両の車速、発進時の遅れ等の走行履歴から移動距離−時間特性を推定してもよいし、プローグ情報から得られた平均的な特性を用いてもよい。
この場合、ここで推定された第2車両M2〜第4車両M4の移動距離−時間特性に基づいて、第2車両M2が減速した場合に、その減速量が第3車両M3および第4車両M4に伝播する際の最大伝播速度Vwav−maxを定義する。この最大伝播速度Vwav−maxは、領域aから領域bに移動する車両の少なくとも1台が停止に至る値と定義する。この例の場合、第2車両M2の減速開始から第4車両M4が停止に至ると仮定する。図8中、第1信号の赤信号時間SR1および第2信号の赤信号時間SR2を示している。
このときの最大伝播速度Vwav−maxは、下記(3)式によって求めることができる。
ここで、l1:第2車両の減速開始位置
l2:第3車両の減速開始位置
t1:第2車両の減速開始タイミング
t2:第3車両の減速開始タイミング
それから、図7に示すフローに進み、自車両の発進時間Txとなったか否かを判断する(S31)。その結果、自車両の発進時間Txとなっていないと判断した場合には、そのまま走行処理制御を終了する。一方、自車両の発進時間となっていると判断した場合には、先行車両に追従する追従走行を行う(S32)。
ここで、先行車両への追従走行を行いながら、ステップS30で仮算出した自車両の移動距離−時間特性の追加補正を行う(S33)。ここでの追加補正では、実際の自車両の走行状態に基づいて、仮算出された自車両の移動距離−時間特性を補正する。その後、先行車両が減速したか否かを判断する(S34)。
その結果、先行車両が減速していないと判断した場合には、そのまま走行制御装置による処理を終了する。一方、先行車両が減速したと判断した場合には、先行車両の減速量を算出する(S35)。また、走行制御ECU1は、図9に示す先行車両と自車両との相対速度毎の車間距離と減速度との関係を示すマップを記憶している。先行車両の減速量は、車間センサで検出された自車両と先行車両との車間距離の減少量を図9に示すマップに参照して求められる。ここで、減速開始点と減速量と減速開始時間とから、何台目の車両が停止に至るかがわかる。
それから、最大伝播速度Vwav−maxとなる際の演算開始ポイントとなっているか否かを判断する(S36)。演算開始ポイントは、図10に示すように、先行車両である第2車両M2が減速を開始した時点t1とする。ここで、減速を開始し、かつ減速度レベル(A)を超えたときに演算開始ポイントとすることもできる。その結果、演算開始ポイントとなってない場合には、走行制御装置による処理を終了する。減速度レベル(A)とは、第2車両M2の移動距離−時間特性の傾きM2(A)を示し、この場合、後続の第4車両M4が停止に至ると予測された値である。
また、演算開始ポイントとなっている場合には、先行車両の減速量を推定する。それから、先行車両の加減速量に基づいて、先行車両の移動距離の時間変化における傾きM2(A)を求める(S37)。この傾きは、図10に示す第2車両M2の車速VM2が減少傾向となる傾きM2(A)となる。続いて、自車両および後続車両についても、先行車両と同様の手順によって、図8に示す移動距離の時間変化における傾きの変わる変化点t2、t3を仮の点として求める(S37)。
続いて、自車両である第3車両M3の走行パターンとして推定される移動距離−時間特性により、第3車両M3が停止となるか否かを判断する(S38)。その結果、第3車両M3が停止となると判断した場合には、先ほど求めた減速を開始する点を、変化点t2より手前の点として、この点から減速を開始するとともに、第3車両M3の加速を調整して、第3車両M3の停止を回避する(S39)。または、変化点t2後のタイミングで減速を開始する場合、第3車両M3の減速を調整し、同様に第3車両M3の停止を回避する。
第3車両M3の加速を制限するにあたっては、たとえば、図11(a)に示すように、最大伝播速度Vwav−maxの演算開始ポイントt1において、第3車両M3が変化点t2において停止すると推定されたとする。この場合には、図11(b)に示すように、変化点t2よりも前の時間から、第3車両M3の加速制限を行うとともに滑らかな減速を行い、第3車両M3の車速VM3′のような停止を回避する速度変化となる移動距離−時間特性を推定する。加速制限および滑らかな減速開始タイミングは、たとえば最大伝播速度Vwav−maxの演算開始ポイントt1のタイミングとする。
このときの第3車両M3の加減速量は、最大伝播速度Vwav−maxから伝播速度Vwav−1の傾きを満足するものとなる。伝播速度Vwav−1の傾きは、領域aから領域bへ移動する車両のすべてが停止しないことを基準として算出することができる。ここで、交通量が多く、停止または発進を行う車両が頻発する場合には、停止または発進を行う車両および停止または発進の頻度が最小になるように、伝播速度Vwav−1の傾きを算出する。
その後、またはステップS38で第3車両M3が停止とならないと判断した場合には、後続車両である第4車両M4の走行パターンとして推定される移動距離−時間特性により、第4車両M4が停止となるか否かを判断する(S40)。その結果、第4車両M4が停止となると判断した場合には、第3車両M3が停止となると判断した場合と同様、第4車両M4の加速を制限して、第4車両M4の停止を回避する(S41)。あるいは、第4車両M4の発進タイミングTsを取得された発進時間Tx+補正値αとして遅らせることにより、第4車両M4の停止を回避する(S41)このときの補正値αは、伝播速度Vwav−1にしたがって設定する。また、第4車両M4が停止とならないと判断した場合には、第4車両M4の発進タイミングTsを、取得した発進時間Txに設定する(S42)。こうして、走行制御装置による処理を終了する。
このように、本実施形態に係る走行制御装置においては、第2車両M2の移動距離−時間特性が、発進した後に減速する場合に、第3車両M3および第4車両M4の移動距離−時間特性を推定することで、停止、発進を回避することができる。上記手法によれば、信号を通過する車両の減速開始点、減速量、減速時間、車速、車間距離が分かれば後続車両の何台目が停止するか推定することができ、各車両を適切な加減速に調整することで、停止、発進を回避することができる。また、対象車両のすべてを停止、発進回避するように、先頭車両の加減速を調整すれば、後続車両は先頭車両の挙動に従い、すべての車両の停止、発進の回避が可能となる。いま、走行制御区間における車両停止位置に配置された第1信号および第2信号の2つの信号があり、この2つの信号の間にカーブ区間が存在し、走行制御区間を5台の車両が通過するとする。この場合に、図12(a)に示す各車両M1〜M5の走行パターンが推定されたとする。このとき、図12(a)に示すように、第1信号S1の青信号期間に車両が1台通過する場合には、上記の第1の実施形態と同様、第1車両M1のように、スムーズな走行を行うことができる。
また、第1信号の青信号期間に第2車両M2〜第5車両M5の4台の車両が第1信号S1を通過するとする。ここで、第2車両M2がカーブ区間で減速すると、第2車両M2の減速による停止波が後続の第3車両M3〜第5車両M5に順次伝播する。その結果、第3車両M3〜第5車両M5が第2信号S2に到達する時間が遅くなることとなる。
これに対して、走行制御量算出部17では、図12(b)に示すように、第3車両M3〜第5車両M5の発進タイミングを遅らせる走行制御量を算出している。このため、第3車両M3がカーブ区間に到達する時間も遅くなる。その結果、第2車両M2からの停止波の伝播を小さくすることができ、第3車両M3、第4車両M4でのカーブ区間での減速量は少なくなり、第5車両M5は、カーブ手前位置における減速が少ない状態でカーブ区間を通過することができるようになるため、各車両M3〜M5の減速量を少なくすることができる。その結果として、第2信号S2のスループットを向上させることができるとともに、第2信号S2に到達する時間も上記に比べて早くすることが可能である。また、渋滞の緩和を図ることができるとともに、排気ガスの排出量を低減することができる。また、赤信号時間が分かれば、同様の制御を用いて、赤信号停止時間手前で減速を開始し、適切な減速により、赤信号で停止せずに信号を通過することも可能となる。
続いて、発進時間Txを時間占有率に基づいて決定する場合について説明する。発進時間Txを時間占有率に基づいて決定するにあたり、図13に示すマップを参照し、発進時間Txを時間占有率に応じて調整してもよい。
具体的に、図13に示すマップから、時間占有率が相対的に小さい第1範囲EAでは、第1時間t1〜第3時間t3と比べて削減効果に差異がない場合は、発進時間Txを相対的に長い第3時間t3としてもよい。また、時間占有率が第1範囲EAよりも大きい第2範囲EBでは、発進時間Txを削減効果のもっとも大きい第1時間t1とする。さらに、時間占有率が第2範囲EBよりも大きい第3範囲ECでは、第1時間t1〜第3時間t3と比べて削減効果に差異がない場合は、早く台数をさばくため、発進時間Txを第3時間t3より短い第1時間t1としてもよい。
このように、発進時間Txを時間占有率に応じて調整することにより、走行制御区間における平均旅行速度を向上させることができるとともに、排出される排気ガス量を低減することができる。さらには、発進タイミングを情報提供する際に、時間占有率に応じた適切な情報提供を行うことで、ドライバへのわずらわしさを防止するとともに、排出ガス低減を両立させることが可能となる。図14(a)は、発進時間Txを調整した場合と調整しない場合の時間占有率に対する平均旅行速度の関係を示すグラフ、(b)は、発進時間Txを調整した場合の時間占有率に対する排気ガスに含まれる二酸化炭素の削減率との関係を示すグラフである。また、時間占有率にしたがって効果の大きい領域は対象車両の発信時間Txをすべて統一させ、全車同時発進させることで排出ガスの排出量をより低減することも可能となる。
また、一例として、図14(a)中、走行制御区間において、発進時間Txを時間占有率に応じて調整する走行制御を行った場合の平均旅行速度をグラフX11に示し、この走行制御を行わなかった場合の平均旅行速度をグラフX12に示す。また、図14(b)中、発進時間を遅らせる時間が第1時間t1である場合の二酸化炭素の削減量をグラフX21に示し、発進時間を遅らせる時間が第2時間t2である場合の二酸化炭素の削減量をグラフX22に示す。さらに、発進時間を遅らせる時間が第3時間t3である場合の二酸化炭素の削減量をグラフX23に示し、発進時間Txを時間占有率に応じて調整する走行制御を行わなかった場合の二酸化炭素の削減量をグラフX24に示す。
図14(a)に示すように、走行制御区間において、発進時間Txを時間占有率に応じて調整する走行制御を行った場合のグラフX11は、この走行制御を行わなかった場合のグラフX12と比較して、時間占有率によって、平均旅行速度が高い場合と低い場合に分かれる場合がある。この結果から、発進時間Txを時間占有率に応じて調整する走行制御を行うことにより、適切な支援を行うことが可能となる。また、図14(b)に示すように、発進時間を遅らせる時間が第1時間t1〜第3時間t3のそれぞれのグラフX21〜X23のいずれにおいても、発進時間を調整しない場合のグラフX24よりも二酸化炭素削減量が多くなることとなった。
これらの結果から分かるように、発進時間を時間占有率に応じて調整することにより、交通状況に応じてさらに好適に平均旅行速度を向上させることができるとともに、二酸化炭素を効果的に削減することができる。また、二酸化炭素削減に重点をおくか、ドライバに与えるわずらわしさの低減への寄与に重点を置くかなど、交通状況に応じて適切な支援が可能となる。
他方、二酸化炭素の削減量は、信号における青色を表示する時間のサイクル(以下「青時間サイクル」という)に依存する。ここで時間占有率と二酸化炭素の削減量について、青時間サイクルによる影響を表すグラフを図15に示す。図15においては、青時間サイクルがもっとも短い場合をグラフX31に示し、この場合よりも青時間サイクルが長い場合をグラフX32に示し、さらに青時間サイクルが長い場合をグラフX33に示す。図15から分かるように、青時間サイクルが延びれば、その分制御区間を走行する車両の走行台数が増大するため、二酸化炭素の削減量のピークは、時間占有率が大きくなる側に移動する。
さらに、時間の経過とともに制御区間を走行する車両台数が増える場合には、二酸化炭素の削減量のピークが目減りする。図16(a)は、時間経過とともに増加する制御区間を走行する車両台数の増加量の影響を表すグラフである。図16(a)において、時間経過とともに増加する車両台数の増加量がもっとも少ない場合をグラフX43に示し、この場合よりも車両台数の増加量が多い場合をグラフX42に示し、この場合よりもさらに車両台数の増加量が多い場合をグラフX41に示す。図16(a)から分かるように、時間経過とともに増加する車両台数の増加量が多くなる場合には、二酸化炭素の削減量ピークが目減りすることとなる。これらの青時間サイクルや経過時間に伴う車両台数の増加量に応じて、発進時間Txを調整することもできる。これらの調整を行うことにより、さらに好適に平均旅行速度を向上させたり二酸化炭素を効果的に削減することができる。
また、発進を促す情報を提供した場合、ドライバによってはあわててアクセルを踏み込む場合がある。このとき、図16(b)に本実施形態のアクセル開度の経時変化L11および従来におけるアクセル開度の経時変化L12を示す。また、領域L13は、本実施形態におけるアクセル開度変化L11と従来におけるアクセル開度の経時変化L12とを比較した場合の余分な燃料噴射量の差に相当する。図16(b)に示すように、前方の交通状況およびアクセルの加速度量から、アクセル開度の経時変化を経時変化L12から経時変化L11として経時変化を滑らかにすることで安全性も確保することが可能となる。
さらに、信号が赤信号から青信号に変わった場合におけるアクセル開度による車速の変化を図16(c)に示す。たとえば、図16(c)に示すように、信号情報が時刻t11まで青信号であった際に時刻t11で黄信号となり、時刻t12で赤信号となる。さらに、時刻t14で青信号となる場合を想定する。また、車速は時刻t11から減少し、時刻t12で0となり、時刻t4から上昇するとする。ここで、時刻t13で信号が青に変わる情報提供がなされる。いま、時刻t14の段階で前方の交通状況にしたがい、アクセルを有効と判断し、図16(b)に示す経時変化でアクセル開度を調整した場合、本実施形態におけるアクセル開度の経時変化L11では、時刻t14から車両が発進し、滑らかな加速を行うこととなる。一方、従来におけるアクセル開度の経時変化では、時刻t14から車両が急な発進をし、急加速を行うこととなる。このように、発進時における二酸化炭素の削減に寄与するとともに、車両を安全に運行させることが可能となる。
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態について具体的に説明する前に、本実施形態に係る走行制御装置の概要について説明する。本実施形態に係る走行制御装置では、走行制御区間に第1信号および第2信号の2つの信号があり、走行制御区間を6台の車両が通過するとする。また、各車両における走行制御では、減速フューエルカット領域の拡大や減速回生量を増加させて燃費を向上させるために減速制御を行っている。
この場合、図17(a)に示すように、第1信号S1の青信号期間に車両が1台通過する場合には、上記の第1の実施形態と同様、車両M1のように、スムーズな走行を行うことができる。
また、第4車両M4が減速回生のために第1信号S1を通過した後に減速するとする。第3車両M4が減速すると、第5車両M5および第6車両M6に対して停止波の伝播が生じ、たとえば第6車両が第1信号S1の赤信号期間に第1信号S1の位置に到達してしまうことがある。この場合には、第4車両M4の単体で見れば回生量の向上により、燃費向上等の目的を果たすことができるが、第6車両M6が第1信号S1の位置で停止してしまうことから、走行制御区間を走行する第1車両M1〜第6車両M6の全体で見ると、燃費の低下となってしまう。
そこで、第4車両M4が単独走行と同様の制御によって減速回生を行うと、第6車両M6が第1信号S1の赤信号期間に第1信号S1の位置に到達してしまうような場合には、図17(b)に示すように、第4車両M4の減速量を低減させるようにする。第4車両M4の減速量を低減させると、停止波の伝播が減少し、第6車両M6に対する停止波の伝播は起こらなくなり、第6車両M6が第1信号S1の青信号期間に第1信号S1を通過できるようになる。その結果、渋滞の緩和に寄与するとともに、第4車両M4の単体で見れば燃費の向上が少なくなるが、走行制御区間を走行する第1車両M1〜第6車両M6の全体で見ると、燃費を向上させることができる。また、仮に第6車両M6がアイドルストップ対応車両であり、第1信号S1の赤信号期間に十分アイドルストップ可能である場合には、第4車両M4の減速回生を優先させることもできる。
それでは、本発明の第3の実施形態について具体的に説明する。本実施形態に係る走行制御装置では、走行制御量算出部17における処理が上記第1の実施形態と比較して主に異なる。また、車車間通信で送受信される車車情報には、各車両の充電状態であるバッテリの充電率(state of charge、以下「SOC」という)に関するSOC情報が含まれる。この充填状態は、車両の設けられた充電量センサで検出される。さらに、本実施形態に係る走行制御装置による走行制御が行われる車両には、減速回生による充電を行う充電装置が設けられている。減速回生による充電は、オルタネータで行うこともできる。また、電気自動車であれば、モータ回生によって行うことができる。これらのオルタネータを用いたオルタネータ発電やモータを用いたモータ発電では、それぞれの減速回生量は、車種等によって異なる。
さらに、走行制御ECU1は、加減速度態様変更しきい値を記憶している。走行制御ECU1は、時間占有率が加減速度態様変更しきい値未満である場合には、走行制御を行う際、車両の加減速度量が小さめで変動が少ない円滑加減速度とする。その一方で、時間占有率が加減速度態様変更しきい値以上である場合には、車両の加減速度量が大きめでドライバのアクセルに機敏に対応する敏感加減速度とする。
ここで、円滑加減速度とは、走行制御区間内を安全かつ燃費最良で通過可能な速度パターンの最大値、または安全かつ平均旅行時間と燃費最良とを両立させた速度パターンをいい、本発明の走行パターンとして、燃費向上を図る回生のための加減速パターンである燃費優先パターンに相当する。また、敏感加減速度とは、走行制御区間を安全かつ最短時間で通過可能な走行パターンの最大値をいい、本発明の走行制御区間を短時間で走行可能となる通過時間優先パターンに相当する。円滑加減速度と敏感加減速度とを比較すると、図18に示すように、いずれの場合も制限速度Vlimの範囲内での加減速が行われるものであり、車速が0から制限速度Vlimに到達するまでの加速度は、敏感加減速度Vseの方が円滑加減速度Vswよりも大きく、車速が制限速度Vlimから0に到達するまでの減速度も、敏感加減速度の方が円滑加減速度よりも大きくされている。
この円滑加減速度と敏感加減速度との関係から、図19に示すように、加減速度態様変更しきい値THが設定される。そして、時間占有率が加減速度態様変更しきい値TH未満である場合に、円滑加減速度として滑らかな加減速を実現する制御を行う。また、時間占有率が加減速度態様変更しきい値TH以上の場合には、敏感加減速度としてキビキビした加減速を実現する制御を行う。図19は、対象車両区間における二酸化炭素排出量特性であり、日時、季節、車種等によって異なる。また、交通センサスをベースとしたプローブ情報などにより、傾向が大きく異なる場合には、異なる傾向ごとに図19の時間占有率−二酸化炭素排出量特性データを更新する。この二酸化炭素排出量特性データは、各車両が保持しており、データ更新が必要なときには、路車間通信を用いてデータを更新してもよい。
次に、本実施形態に係る走行制御装置における処理手順を説明する。図20は、本実施形態に係る走行制御装置における処理手順を示すフローチャートである。図20に示すように、本実施形態に係る走行制御装置では、路側装置2から送信される信号情報を通信部11において受信し、時間占有率算出部12において、この信号情報に基づいて、車両の現在位置を取得する(S51)。車両の現在位置を取得したら、取得した現在位置の周囲の道路情報として、道路形状や勾配等を道路情報記憶部13から読み出して取得する(S51)。
続いて、交通情報を取得したか否かを判断する(S52)。その結果、交通情報を取得していないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。一方、交通情報を取得していると判断した場合には、インフラ情報に含まれる信号タイミング情報や車両の周囲における車両台数や渋滞長などの交通情報等を取得する(S53)。続いて、車両の現在位置が走行制御区間であるか否かを判断する(S54)。その結果、走行制御区間でないと判断した場合には、そのまま走行制御装置における処理を終了する。
一方、車両の現在位置が走行制御区間であると判断した場合には、時間占有率算出部12において、信号の前後における総走行車両台数を取得する(S55)。さらには、他車両3A〜3Nのそれぞれから送信された車両情報および車両の周囲の道路を分割して得られた5つの領域である領域a〜領域eにおけるそれぞれの時間占有率を算出する(S56)。ここまでは、上記第1の実施形態と同様の手順で行われる。
次に、対象となる走行制御区間は、円滑加速区間となっているか否かを判断する(S57)。円滑加速区間となっているか否かは、算出した時間占有率が加減速度態様変更しきい値未満であるか否かによって判断する。その結果、算出した時間占有率が加減速度態様変更しきい値以上であり、円滑加速区間となっていないと判断した場合には、敏感加速度による走行制御を行うとして、自車両および他車両の加減速度を算出する(S58)。そして、算出した加減速度によって自車両を走行制御するとともに他車両の加減速度を他車両に送信して、走行制御処理を終了する。
一方、算出した時間占有率が加減速度態様変更しきい値未満であり、円滑加速区間となっていると判断した場合には、走行制御区間を走行する各車両のSOCを検出する(S59)。ここでのSOCの検出は、車車間通信または路車間通信によって行うことができる。それから、検出した各車両のSOCと、図21(a)〜(c)に示す関係に基づいて、各車両の要求減速度Gを算出する(S60)。
ここで、図21(a)は時間経過とSOCとの関係を示すグラフ、(b)は、要求SOCと減速回生量との関係を示すグラフ、(c)は減速回生量と減速度との関係を示すグラフである。各車両では、充電状態が十分となるための目標SOCがそれぞれ設定されている。ここで、検出したSOCを図21(a)のグラフに参照することにより、検出したSOCと目標SOCとの差である要求SOC(ΔSOC)が求められる。この要求SOCを図21(b)に示すグラフに参照することにより、要求SOCに必要な減速回生量である要求減速回生量が求められる。この要求減速回生量を図21(c)に示すグラフに参照して、要求減速度Gが算出される。
こうして、各車両についての要求減速度Gを算出したら、各車両についての移動距離−時間特性を推定する。ここでの移動距離−時間特性は、たとえば図17(a)に示す停止波の伝播を含む特性が推定される。続いて、推定した各車両の移動距離−時間特性に基づいて、第2車両M2〜第6車両M6のすべての車両が最初の青信号で通過可能であるか否かを判断する(S61)。
その結果、第2車両M2〜第6車両M6のすべての車両が最初の青信号で通過可能であると判断した場合には、ステップS60で算出した要求減速度に応じた加減速度によって自車両を走行制御するとともに他車両の加減速度を他車両に送信して(S62)、走行制御処理を終了する。一方、停止波の伝播により、第2車両M2〜第6車両M6のすべての車両が最初の青信号で通過可能でないと判断した場合には、要求減速度を変更する(S63)。
要求減速度を変更する際にあたり、たとえば、各車両の移動距離−時間特性として図22に示すように、第4車両M4および第5車両M5の要求SOCを満足させるとともに、第6車両M6を通過させる加減速度となる移動距離−時間特性に変更する。いま、変更前の第4車両M4〜第6車両M6の移動距離−時間特性を図22(a)に示し、変更後の第4車両M4〜第6車両M6の移動距離−時間特性を図22(b)に示す。
図22(b)に示すように、第4車両M4および第5車両M5の移動距離−時間特性として、変更前の移動距離−時間特性と比較して、減速タイミングを早めるとともに、減速量を小さくする。このとき、減速回生量は、図22(a)に示す領域R4Aと領域R5A、および図22(b)に示す領域R4Bと領域R5Bとなる。第4車両M4および第5車両M5の変更後の移動距離−時間特性としては、この領域R4Aと領域R4Bとが同一面積となるとともに、領域R5Aと領域R5Bとが同一面積となるように移動距離−時間特性を調整する。さらには、第6車両M6に対して停止波の伝播が生じない程度の減速度となるように移動距離−時間特性を調整して変更する。
その後、改めて推定した各車両の移動距離−時間特性に基づいて、第2車両M2〜第6車両M6のすべての車両が最初の青信号で通過可能であるか否かを判断する(S64)。その結果、第2車両M2〜第6車両M6のすべての車両が最初の青信号で通過可能であると判断した場合には、ステップS64で変更した要求減速度に応じた加減速度によって自車両を走行制御するとともに他車両の加減速度を他車両に送信して(S65)、走行制御処理を終了する。
一方、第2車両M2〜第6車両M6のすべての車両が最初の青信号で通過可能でないと判断した場合には、優先順位付けに従った加減速度を算出して、移動距離−時間特性を変更する。優先順位としては、諸条件に応じて車両を通過させて二酸化炭素の削減量を増やすことを優先するか、減速回生量を増やすことで二酸化炭素の削減量を増やすことを優先するかを判断し、この判断に基づいて優先順位を決定する。前者はすべての車種に適用し、後者は主にハイブリッド(HV)車両、アイドルストップ車両に効果が大きい。
たとえば、図17(a)に示す移動距離−時間特性が推定されている場合に、第4車両M4〜第6車両M6の移動距離−時間特性を変更するにあたり、車両を通過させて二酸化炭素の削減量を増やすことを優先する場合について説明する。この場合には、第4車両M4および第5車両M5の減速量を減少させ、第4車両M4〜第6車両M6のすべての車両を通過させるようにする。
一方、減速回生量を増やすことを優先させる場合について説明する。たとえば、第5車両M5が経済走行(高い燃費による走行)を行っている場合には、第5車両M5について、エネルギー回収を優先させるのが好適となる。この場合には、第5車両M5の減速回生量が第4車両M4の減速回生量よりも多くなるように第4車両M4の減速開始点から手前に第5車両M5の減速を開始し、移動距離−時間特性を変更する。こうして、変更した移動距離−時間特性に基づく加減速量を求め、この加減速量に基づいて自車両を走行制御するとともに他車両の加減速度を他車両に送信して(S66)、走行制御処理を終了する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、複数の車両のうちの1台の走行制御ECUで車両の加減速度を算出しているが、車両以外の基地局等で車両の加減速度を算出する態様とすることもできる。また、目標時間占有率を各車両に伝達し、各車両のそれぞれで走行制御量を算出する態様とすることもできる。さらに、走行制御量としては、車両の加減速度を用いているが、その他の制御量、たとえば操舵角など制御する態様とすることもできる。
他方、上記実施形態では車車間通信によって他車両の走行情報を取得しているが、基地局等を介した路車間通信によって他車両の走行情報などを取得する態様とすることもできる。ボトルネック部を絞り込む際、走行制御区間における信号の点灯色変化のタイミングや走行制御区間内の車両台数を加味することもできる。
また、時間占有率を算出するにあたり、走行制御区間に側道が接続されている場合には、側道から流入する車両の台数等を加味して時間占有率を算出する態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では、信号の前後における渋滞の緩和について説明したが、自然渋滞が発生する場所等に対する渋滞の緩和に適用することもできる。また、上記実施形態では、他車両の車両情報を車車間通信によって取得しているが、各種センサを用いて取得することもできる。
さらに、上記実施形態では、時間占有率が高い走行区間について、発進タイミングの調整や回生量の調整を行うようにしているが、時間占有率を用いることなく、走行区間における車両の台数が所定値以上である場合などに発進タイミングの調整や回生量の調整を行う態様とすることもできる。また、第2の実施形態における発進時間Txや第3の実施形態における敏感加減速度や円滑加減速度については、乗用車や貨物車などの車種等に応じた数値をそれぞれ設定する態様とすることもできる。
他方、上記実施形態では、路側装置2から道路情報を取得するようにしているが、ナビゲーションシステムから道路情報を取得する態様とすることもできる。ここで、ナビゲーションシステムからは、車両の現在位置、周囲の道路形状や勾配などの情報を取得することができる。さらには、道路情報は、交通情報を取得可能であるVICS(登録商標)(VehicleInformation and Communication Systems)や自車位置取得可能なGPS(Global Positioning System)情報を参考とすることもできる。